さて、コスモパルサーとコスモファルコン派などの次世代型戦闘機の試作機群はCEでの戦いで試験的に実戦投入されていた。
両者は無重力下テストを行っていたわけであるが、同地でなし崩し的に実戦投入された。
その時期からテストに関わっているのが、かつての旧・国連時代のエースパイロットとして名を知られ、
元・太陽戦隊サンバルカンの初代リーダーにして、
「バルイーグル」であった大鷲龍介(おおわしりゅうすけ)であった。彼は太陽戦隊を離れた後、1980年代でNASAの宇宙飛行士として訓練を受けていたが、
ある日、未来における国連の後身である、地球連邦政府からの要請に答え、地球連邦軍大佐としての身分を得た。
(ただし、彼は太陽戦隊サンバルカンの一員であった事により、特例によりバルカンブレスは手放しておらず、変身は可能)
そしてその後は彼は3機の暫定的なテストパイロットの一人として開発に関わっていたのだ。未来へ正式に赴任する前の未来での住居を探すためと、
コスモタイガーなどの訓練を受けていた際のこの事態であった。

「さて、出撃か」
「大佐、相手はザフトの残りの艦隊だそうです」
「そうか、コイツらのテストには丁度いい相手だ。全機出撃準備!!」

号令を発すると、対艦・対空装備を施されたコスモパルサーに乗り込む。
今回はコスモパルサーのテストとしてルナツー上層部は見ており、パルサーの方が出撃準備が整っていたための措置である。

−この時期のコスモパルサーは新コスモタイガーをベースに機体バランス確認、空力テスト・ウェポンシステムの実証用に改造されただけの代物であったが、
急遽の実戦装備が施された。そのためにこの段階では、新コスモタイガーの原型が色濃く残っており、翼のミサイルパイロンはまだ下部のみであった。
エンジンは新コスモタイガー用の既存のものがまだ流用されていたが、次世代型高硬度・軽量素材のを構造材に使っており、
その恩恵で、コスモタイガーUを超える速度と加速性はこの時点でも確保されており、新型の強みが発揮されていた。

「行くぞ!コスモパルサー、発進!」

機体そのものは機体バランス・空力確認のために従来機を改装した段階のヒヨコであるが、
将来の大空を担うべき若鷲となりうる代物である。一個小隊が一筋の矢となり、ザフトの残存兵力を穿った。

 

 

 

−ザフト 偵察艦隊 ナスカ級

この艦隊はハリソン・マディンの駆るF91によって戦力を削られ、ボアズ要塞に撤退しようとしていた。
だが、そこに更なる凶報が舞い込んできた。
しかしモビルスーツよりは「落としやすい」モビルアーマー(宇宙戦闘機)であることに安堵し、残存の直掩機の「シグー」を撃滅に向かわせるが……。

「がぁぁぁっ!?」

先陣を切っていた一機のシグーが突然細切れにされて爆発する。他の機も何が起こったのか理解できずにいると、
矢のような速さの『モビルアーマー』の一個編隊の姿が見えてきた。

「な、なんだあれは!?」
「モビルアーマーだと!?」

それは彼等の常識からすれば宇宙戦闘機などの代名詞的な言葉である「モビルアーマー」にしか思えないシルエットを持つ機体であった。
見ると、大気圏内用航空機と同じような翼が付けられている。宇宙ではミサイル兵器の運搬機能以外の用を足さず、無駄なようにも思える。だが……。

「な、何!?攻撃を避けやがった!?」

彼等には決して信じられない光景であった。「モビルアーマーでモビルスーツに対抗可能な腕を持つパイロットなど今の連合にはいない」というのが常識であり、
練度が開戦時より遥かに低下した地球連合軍のパイロットたちはザフト兵にとって「烏合の衆」に過ぎないはず。実際、モビルスーツが登場した後は数でザフトを圧しているが、
個々を見れば大した事ない練度の兵士が多い。それが少数精鋭のザフト兵等の自信の現れでもあった。

だが、目の前の機体は地球連合軍のものに似ているが、全く別の勢力のものである。しかもそれがザフトと比べても技術的優位にあると判明するのはすぐであった。

「全機、攻撃開始!!戦艦を落とすぞ!!」

大鷲はその「名は体を現す」の通りに驚くべき操縦術を見せつけた。追いすがる護衛機を
コスモパルサーの性能で置き去りにし、ナスカ級とローラシア級の艦隊に対し、2199年当時最新鋭の対艦ミサイルを発射すべく、攻撃コースに入る。

 

「撃ち落せェ――っ!!」

各艦の58mmCIWSが火を噴くが、コスモパルサーは外宇宙航行艦艇の主力対空兵装「パルスレーザー砲」にある程度耐えるような防弾装備を備えているため、さしものCIWSの弾幕も効き目は薄い。装甲に弾かれ、意にも介されない。

「馬鹿な!?CIWSが効かんだと!?」

地球連合軍の主力モビルスーツも当たれば粉砕されて然るべき威力を持つ58mmCIWSを気にしない戦闘機。それが第二の衝撃。更に驚いたのはコスモパルサーが強引な推力偏向でモビルスーツ並の方向転換を見せ、凄まじいスピードで通り過ぎていき、更にあっという間に下方へ回りこみ、急上昇攻撃をかけてきたことであった。

「敵機、接近!!なっ、後部からです!」
「馬鹿な……速すぎる!!方向転換急げ!!」
「間に合いません〜!!」

ナスカ級は下部にも武装を備えているが、前部に集中している。その盲点を大鷲はついたのだ。サンバルカン時代にコスモパルサーより遥かに大型のコズモバルカンを駆っていたのと、旧国連時代に既に最高レベルの腕を誇ると評された(匹敵する腕を持つ者は現バルイーグルの飛羽高之しかいない)のもあって、
一流の空戦機動を見せた。

ロー・ヨー・ヨーを行った後、そこから反転し、シャンデルで斜めに上方宙返りし速度を高度に変え、
ナスカ級の兵装がついていない後方から全速力で接近しつつ、全力でミサイルと大口径(コスモタイガーのものよりも更に口径が大きい)パルスレーザーを一斉射した。
白色彗星帝国の大戦艦クラスすら一撃で轟沈させられるほどのミサイルと数秒間のパルスレーザーの掃射。
それだけで十分だった。

「行けっ!!」

一発のミサイルが後方に吸い込まれた瞬間、ナスカ級はまるで風船を壊すかのように膨れ上がり、船体が爆発で破裂する。

大鷲が見せたこの、鷲のごとき機動は映像を見ていたキラ達にも衝撃を与え、感嘆の声で溢れかえった。
だが、その歓声の最中、地球連合軍本隊がボアズ攻撃を行うという報がルナツー所属のパトロール艦からもたらされる。

―コズミック・イラの次なる運命が動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

−地球連邦軍の艦艇は本土防衛艦隊を中心に波動エンジン搭載艦が旧式のマゼラン級宇宙戦艦やM-21741式宇宙戦艦(金剛型宇宙戦艦)を代換する形で多数が配備されていた。
白色彗星帝国との戦役で多数が失われたもの、残存艦艇を中心に建て直しに成功し、今では改良型が続々と竣工し、戦役で失われた分の補填は数年で完了していた。
コズミック・イラに衝撃をもたらしたのはその内のルナツーに駐留していた内惑星防衛艦隊所属、あるいはその予定の艦船であった。

「よし!とどめをさしてやれ、目標は敵の旗艦だ!」

アンドロメダU級「ネメシス」は現在、地球連邦軍最大口径を誇る51cmショックカノンを砲撃戦で撃ち負けた地球連合軍に向けて連射する。宇宙で有数の威力を誇るショックカノンに惑星間航行がやっとこさの地球連合軍の艦船が耐えられるはずはなく、生き残った護衛艦ものとも三艦まとめて装甲を貫通され、敢え無く爆沈していく。

「敵影、ありません」
「よし。帰投する。全艦に打電」
「了解」

この時、辛うじて『彼女』の魔手から逃れた地球連合軍の兵士たちは戦後、地球連邦軍が用いた艦艇群を「宇宙の魔物」だと称した。それはあながち間違ってはいないだろう。
駆逐艦にさえ彼等の船では、全ての点で到底太刀打ちできる代物ではないのだから。
戦果が一隻の砲塔を破壊しただけというのは、地球連合軍にとっては屈辱そのものであったが、
ボアズ攻略を控えている彼等にとって、これ以上の安易な戦力の損失は避けたく、地球連合軍は当面の間、ルナツーへ手出しを控えた。
ザフトも、ボアズやヤキン・ドゥーエに戦力を結集させている都合上、ルナツーに安易に手出しして戦力を失うわけにはいかず、当面は二要塞の防衛に専念した。

−ルナツーでは三隻同盟の艦船への修理と一部改装が終わり、彼等は地球連邦軍へ謝意を示した。ネモUやネロなどの第二世代機(ジャベリンと比べ旧式なのでジェガンまでの情報は開示していたもの、さすがに現行機のジェガンを提供するわけにはいかないので、
モビルスーツを補充の効かないM1アストレイ(国そのものが制圧されているため、モビルスーツの補充が効かないのに窮した彼等の要請に応じての搭乗員と整備員を出向という形で有償提供した)の補充戦力として与えた。母艦の准ホワイトベース級(改ペガサス級)
強襲揚陸艦ごと彼等の行動に同行(偵察・監視の役目もある)させた。その他の艦船も数隻ほど同行させる。

「脱走艦、亡国の船である我々に補給と修理をして下さり、ありがとうございます。それにまさか戦力を貸してさせていただくとは……」
「我々もあなたがたに情報の提供を受けている。この位の事は当然である。気になされるな」

三隻同盟側の代表者達は正規軍である連邦軍との折衝を円滑に行うため、マリュー・ラミアスなどの軍隊出身者達。
そしてルナツー側は基地司令官や駐留艦隊の中で最上級将校のキム・キャビロフである。連邦軍は三隻同盟の味方として振る舞う事で、この世界で生き残る術を模索していた。
恩を売っておけば、後々にいい方に作用するからという政治的判断も含まれており、
善意の中に自らの隠れた思惑を仕込むところに、長年の軍閥抗争で手馴れている連邦軍のしたたかさが垣間見えた。

この時、アークエンジェルらに同行させた連邦軍艦艇は准ホワイトベース級の改装艦で、
最後のグレイファントムの姉妹艦として作られた「トロイホース」、主力戦艦級「比叡」、
ラー・カイラム級機動戦艦「ナポレオン・ボナパルト」、
手空きであった主力戦艦改級戦闘空母第八番艦「レキシントン」と新型の巡洋艦「阿賀野」と「能登」(次期主力巡洋艦の第一次建造分)と、
駆逐艦少数などの連邦軍としては比較的少数の艦艇。それらはアークエンジェルらへの『協力』とルナツーへの状況の逐次報告の任を負い、出港した。

 

 

−大鷲龍介らコスモパルサー隊はレキシントンへの着艦と同艦への臨時配属を命じられ、見事なアプローチで着艦した。
それら宇宙戦闘機が高性能化が進んだというモビルスーツと共存しているという光景に三隻同盟所属のパイロットたちは関心を寄せる。

「へえ……わかりやすい宇宙空母だなぁ」

三隻同盟の面々は海上の空母を再現したように、甲板に艦載機が並んでいる主力戦艦改級戦闘空母へ口々に感想を述べる。
戦艦のような艦砲と空母特有のアングルド・デッキが共存するのは大昔の造船関係者達が夢見た「戦艦空母」、「航空戦艦」を連想させるが、それらの理想形とも言える造形美を感じさせる。

「どういう事?」
「ああいう並べ方は大昔の原子力空母とかで割と当たり前だったんだが、宇宙艦じゃ内部に収める方式が当たり前になってるから宇宙艦じゃ見ないと思ってたが……」

露天駐機は地球連邦軍の波動エンジン空母では当たり前に行われていた。飛行甲板に至るまでの重力制御が完璧である事と、搭載機数を多くするための策である。
そもそもは戦艦を改設計した戦闘空母として作られている都合上、格納庫容積は区間を最大限に活用してもコスモタイガー換算で70機(露天駐機15機含む)で留まっている。
その手頃なサイズの空母における艦載機搭載数は満足の行く数では無いのが地球連邦軍の悩みの種。そのため新規に大型の戦闘空母が設計される事になり、
そのテストケースとしてヤマトの三番艦「信濃」が建造されるに至るのだが、それはまた別の話。

艦隊の速度は一番足が遅いクサナギ(イズモ級宇宙戦艦)に合わせる形となり、連邦軍水雷戦隊が前衛、三隻同盟を含めた戦艦と空母が後衛の形の陣形である。

「さて……これだけの味方がついたとは言え……この戦争がどうなるかは`神のみぞ知る`……だな」

艦隊でひときわ目立つ塗装の戦艦「エターナル」(連邦軍はこのど派手さにめまいを感じたとか。)の艦橋で艦長の「アンドリュー・バルトフェルド」は、
エターナルすらドンガメでしか無いほどの速度を誇る異世界の軍艦に対し、心強さと不安を同時に感じていた。

−彼等の戦力は圧倒的だ。それこそザフトや連合が束になっても返り討ちにできるほどに……。
だが、あの科学力は知ればどの国も喉から手が出るほどに欲しがるだろう。この世界の人間が安易に『禁断の果実』に手を出さないことを祈るしか無いか。

 

バルトフェルドはこう独白した。彼は平時は学者であるので、地球連邦軍の軍備が卓越した超オーバーテクノロジーによるものであることを技術者並に理解していた。
恒星間航行やワープすら可能とする「波動エンジン」、核融合炉やそれ以上の動力機関(ミノフスキードライブ)で動くモビルスーツは現在の全世界の技術を併せても、
実現はおろかデッドコピーすら作るのが困難な代物。この世界にとってそれらは神話のアダムとイブがエデンの楽園を追放されるきっかけとなった
「禁断の果実」(知恵を意味する)といえるほどに危険な誘惑である。
特に極右のプラント現議長のパトリック・ザラや地球連合を裏で支配する「ロゴス」や「ブルーコスモス」が知れば如何なる手段を用いても入手に奔走するのは目に見えている。
安易にそれらオーバーテクノロジーに手を出そうなら彼等がその超・軍備で罰を与えるだろう。彼はその点を深く憂慮していた。
だが、その憂慮も虚しく、彼の祖国がその禁断の果実に手を出してしまった事を知るのは、ここより2年後の事である。

 

 

 

 

 
−地球連合軍はザフトの前線要塞「ボアズ」へ侵攻を開始した。それはかつての地球連邦軍とジオン公国軍の関係に似ていたが、違いがあった。連邦軍はソーラーシステムという奇策で勝利を勝ち取ったのに対し、地球連合軍は核ミサイル攻撃隊を切り札として投入する所であった。

「地球軍がボアズに侵攻したか……だが、彼等に勝算はあるのか?ボアズは最前線基地で、新鋭モビルスーツも配備されているはずなんだが」

バルトフェルドは脱走前に本国で配備が開始された新型機「ゲイツ」の事を思い出す。性能は地球連合軍の主力機「ストライクダガー」を全般的に越えており、練度も連合軍のパイロットを上回る。それでいてなぜ……と地球連合軍の作戦を感くぐる。

『個々の練度で超えていても連携は上手く取れない場合がある。我々の世界でのジオン軍が敗北した原因の一つだ。ザフトに階級が無いのならそれはなおさら顕著に現れる。マシーンが良くとも全てがそれで決まるわけではないし、練度が低くともだめだ』

連邦軍側は一度の好戦でプラントの弱点を見抜いていた。パイロット同士の連携が上手くないという事は個々に撃破される危険性が大きくなる。再末期のジオン軍がエースの大半がキマイラ隊を始めとする精鋭部隊に回された結果、頼みのベテランは旧型を好み、決戦機たるゲルググに余り乗らなかった(大半が学徒兵)がために前線を一点突破する連携が巧みな連邦軍に翻弄され、各個撃破されていった。ギガノス帝国は元々が地球連邦の将校が国家として独立させた月面都市であるので、その傾向が現れなかったが、戦線での兵器の性能差が開きすぎたのが仇となった。連合軍は1年戦争時の地球連邦軍同様に、戦線をガンダムタイプの機体で蹴散らし、そこをモビルアーマー隊に突入させる戦法を取るとも知っていた。それはやり方は違えど、類似の方法を過去に自分たちがとったからこそ言える言葉であった

『どうするのです?別働隊が核を搭載しているとしてもニュートロンジャマーで核ミサイルは使えないはずなのですよ』

マリュー・ラミアスが連邦軍側に異議を唱える。核はニュートロンジャマーという核分裂を阻害する装置で封じられており、いくらザフトがカウンターとなるキャンセラーを開発したとは言え、それはフリーダムとジャスティス以外には搭載されていないはずの門外不出の技術のはずだからだ。

『プラント内部に意図的にそれを地球連合軍に流す者が中枢にいたとすれば?』
『ありえなくはない話ですが……』
『ではラウ・ル・クルーゼが流したとしたら?』

バルトフェルドの言葉に通信の全員がうなづく。ムウ・ラ・フラガによればラウ・ル・クルーゼは彼曰く「ムウの父のクローン」だという。それが真実だというのなら、ラウ・ル・クルーゼはコーディネーターではなくナチュラルということになる。

『彼ならやりそうなことですが……ナチュラルなのにザフト最高のエースに登りつめることが出来たのは何故ですか。ムウの家の血筋の遺伝子が良かったとかでは説明がつきませんが』
『単に遺伝子的優秀性などでは説明はつかん。だが、我々の世界で実証されている`ニュータイプ`なら説明がつく』
『ニュータイプ?』

連邦軍はラウ・ル・クルーゼがナチュラルでありながら、コーディネーターで固められたザフトの更にエースパイロットに君臨した理由に、未来世界で定着したニュータイプの概念で説明した。それは人の革新の可能性の一つ。だが、戦争で使われれば圧倒的な存在して君臨する。認識能力が爆発的に優れているがため、パイロットとして最適であり、ニュータイプ専用兵器が造られるきっかけともなったと。それは遺伝子的に息子であるムウ・ラ・フラガも持っているはずである。

当のムウ本人は「ニュータイプねぇ……それが俺とクルーゼがパイロットとして優れ、俺がアレを使える理由か……」と感心したりであったとか。

−ニュータイプが然るべき高性能機に乗った場合、戦場はそれに支配される。渡り合えるのは百戦錬磨のベテランか、同等か、それを上回る能力があるニュータイプである。

特にニュータイプかつベテランのパイロットがエース機に乗った場合は同等のパイロットとエース機でなければ倒せない。

 

それはシャア・アズナブルのサザビーに対するアムロ・レイのνガンダムで証明されている。いくらキラ・ヤマトとフリーダム`ガンダム`(連邦側は少なくともそう呼んでいる)が
この世界で一騎当千の能力を持つといっても、同等の能力を持つモビルスーツには未知数でしか無い。
ルナツーの地球連邦軍でクルーゼとパイロットとしての腕、マシーンの面でも確実に渡り合えるのは、ウッソ・エヴィンとV2アサルトバスター、ハリソン・マディンとF91位なものだ。

―連邦側で最高の性能を持ち、核融合炉よりも更に大出力を誇る動力機関「ミノフスキードライブ」を持つV2ガンダムを手足のように操るのがキラ達よりも更に年下の少年である事に、
三隻同盟のパイロット達は口々に驚きを口にしていた。

「あのモビルスーツ……V2とかいうの動かしてんのはまだガキだってんだろ?
まったく、あいつらみたいなの見てるとコーディネーターの優位性ってのなんて馬鹿らしくなってくるぜ」

三隻同盟の中ではプラントの出身であるディアッカ・エルスマンは模擬戦でウッソにいいように弄ばれ、連戦連敗した口である。
ウッソはザンスカール帝国の高性能機相手に生き残ってきた猛者であり、それにディアッカの愛機で、砲戦支援型であるバスターも、
フリーダムをすら超える大火力を持つV2アサルトバスターの能力の前には霞んでしまう。

「……だな。父上は頑なにコーディネーターの優位性を説いているが
実はナチュラルがコーディネーターの上に立っていることなど知らないんだろうな……ニュータイプ能力か……」

アスランも、プラントの隠された真実と、父親の滑稽までの極右的行動の矛盾にため息をつきながらも、
人の可能性はコーディネーターやナチュラルの垣根など無意味である事に感嘆する。

「ニュータイプ、人の革新……か。会ってみたいな……アムロ・レイって人に」

キラは連邦軍で`生ける伝説`と化し、
自分と同じような経緯でモビルスーツのパイロットになったという、`初代ガンダム`のパイロットであったアムロ・レイに会いたいという気持ちを吐露する。
別の世界の可能性を垣間見た事でキラは、人の可能性は遺伝子的な問題で縛られるものではないという気持ちを新たにした。

 

 

そして……

−連邦軍護衛艦隊前衛 パトロール艦

「艦長!前方に核爆発のエネルギー反応を感知しました」
「そうか……彼等はやったようだな」

地球連合軍が敵になんら躊躇なく、核を使用した事に不快感を露にする連邦軍。その攻撃隊のパイロット達の通信が傍受できたが、
それはコーディネーターを完全に滅亡させる事を悦びとしているかのような言葉で溢れていた。

『核弾頭の信管作動確認……くたばりやがれ宇宙の化物!!』
『青き清浄なる世界のために!!』
『我らに仇名す人間の姿をした化物に死を!!』

……などという、侮蔑と罵倒に溢れた言葉を叫びながら核を花火のように撃ちまくる地球連合軍。純粋水爆に代表される反応弾の前世代核兵器の「汚い水爆」は宇宙に汚物を増やしたのだ。
数多のザフトの人間を原子に返しながら。

「ザフトもコロニーレーザーのような兵器を建造しているというし……この世界は狂ってるよ。集団発狂組合ってか」

ザフトの最終兵器は連邦軍の優れた情報収集力の前にその姿を晒していた。
例えミラージュコロイドで隠していてもOTMなどのオーバーテクノロジーの索敵網はそれに資材を運ぶ船などの存在を察知していた
ハッキングで得られたガンマ線レーザー兵器という情報に連邦軍は、
波動エンジン搭載艦などの高級艦艇でなければレーザーに耐えられないこの兵器の荒療治な方法での相殺法を考えていた。

それは発射されたレーザーを、それに匹敵する、あるいはそれを超えるエネルギー量を持つ攻撃で相殺するか、
レーザー発振機を事前に粉砕するというもの。理論上はレーザーのエネルギー源は原爆、もしくは水爆と思われるので、その爆発で得られるエネルギーで発射されるレーザーに匹敵するか、
発振されるレーザーと同一位相かつ、凌駕するエネルギー量なら相殺は可能だ。連邦軍は自身のエネルギー兵器の中で最高峰の波動砲やマクロスキャノンを使うつもりであるが、
おそらくは発振機を破壊したほうが早いだろう。その作戦のため、極秘にネメシスやマクロス13などが出港する。パトリック・ザラは、異世界の人間によって、
地球を討とうとする自身に思いもよらぬ「罰」が下されることなど露知らずに秘密兵器の存在にほくそ笑んでいたという。

 

「さて……奴さん達のこの馬鹿げた戦争を止めてやるか」

地球連邦軍は長年に渡りほぼ内戦などに明け暮れ、宇宙人やハ虫人類の一種族との生存競争も行なってきた。
その過程で「人の革新」たる、ニュータイプという概念が確立された。
それ故、遺伝子操作されただけの人間が新人類を名乗り、地球人同士で争うこの世界の現状に呆れのため息をつくのだ。
地球連邦軍の思惑、3隻同盟の思い、そして連合とザフトの殲滅戦。
次なる戦いではそれらが入り混じることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

−プラントでは後々に繋がる技術開発が行われていた。それは次世代型モビルスーツの開発。
先だった戦闘で辛うじて鹵獲した一機のモビルスーツを解析し、そのデータを反映させていた。
そのモビルスーツは地球連邦軍が機関故障などの要因で放棄した「RGM−119`ジェムズガン`」であった。
これ幸いとザフトが入手し、OSに残されていたデータがザフトのモビルスーツ開発に影響を与えていた。

「これ良いな。次世代型に反映させちまおうぜ」

…という具合で、ザフトの次世代型の量産型機体は彼等本来の独自のデザインからはかけ離れた、
「ジオン軍」などのモビルスーツに酷似した外観を持つに至り、肖像権侵害モノの「ザク」
「グフ」、「ドム」が造られる事になる。(後にシン・アスカらからその事を教えられた元・`ツィマッド社`、`ジオニック`社出身の
エンジニア達は「肖像権侵害だ!!」と憤慨したとか)

更にザフトは同時期に開発中の「ZGMF-X10A」の量産型を再設計、解析されたデータ上の装備「ファンネル」を再現しようと目論見、
当時最先端のドラグーン・システムを搭載する方向へ改正していた。だが、この世界のこの時点の技術ではファンネルの有機的な動きを
再現することは不可能であり、かつてのジオン軍のブラウ・ブロと同レベル(それでもこの世界の有線式砲台兵器よりは機敏)に
留まった。また、この機体はその目指した高性能さが仇となり、開発が戦時に間に合わずに終わった。
しかし数年後に進歩した技術でカスタマイズとチューンアップが施され、生みの親である「プラント」に仇なす存在となる。
その名は「ストライクフリーダム」……。

 

そんなプラントの涙苦しい努力は哀れにも自らの首を絞める結果となることは2199年でシン・アスカらの存在によって実証される。
彼等にしてみれば「ナチュラルを薙ぎ払う為に生み出し叡智が、逆に自分らを薙ぎ払う」という事実は卒倒ものであろう。
事実、これから「フリーダム」も「ジャスティス」も「エターナル」もその結果となるのだから。

 

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