――パルチザンは艦を手に入れたわけだが、ここで、各スーパーロボの消息も明らかとなった。

「鉄也さんはゴッドを?」

「ああ。グレートはカイザー化させた後も調整中だし、動かせるのがゴッドしかなかったしな」

「藤原は?」

「あの後、上官殴ったとかで左遷させられて、トリントン送りになったそうな」

「お、おう……」

獣戦機隊はメカトピア戦争後に藤原忍がまたまた一悶着起こしたため、僻地に左遷させられた事が判明した。コレも彼の反骨心に由来するものであるので、ほぼ全員が納得した。ダンガイオーチームはと言うと、月でベガ星連合軍と交戦していたし、グレンダイザーは宇宙科学研究所で待機していたのが幸いし、ゲリラ活動を開始した。その他には、新ゲッターチームも北海道のパルチザンの援護のために戦っている事、フェイトが平行時空にも連絡し、明神タケルとゴッドマーズが馳せ参じてくれそうだとの事だ。時空管理局も表立っては動かないが、極秘に物資や人員などを援助してくれるので、当面は弾と食料には不自由しない。

「ナデシコは?」

「ルリちゃんがナデシコの後継艦を動かしてくれるそうだが、まだかかるそうだ。コウさんからの連絡で裏取った」

「あれから色々あったもんなぁ」

――西暦2201年は概ね平和であったが、木星移民者の一派が火星を中心に動乱を本格化させた。ナデシコはその平定に一役買ったものの、放棄され、喪失した。しかし予想外の活躍から、後継艦計画が早期に立ち上がった。予定には組み込まれていたが、予定が早まったのである。その名もナデシコB。第二世代型ナデシコ級の実験艦である。月ドックで造船が開始されていたが、宇宙戦艦ヤマトと暗黒星団帝国の衝突を期に突貫工事で造られた。この時点では70%ほどの完成率であった。甲児が言及したのはそれだ。

「ルリちゃんでしたっけ?12、3で軍の少佐なんて信じられませんよ。僕たちの仲間にドイツ軍の少佐してる子がいるんですけど、その子でも15歳は行ってますから」

「ルリちゃんの場合はハッキング能力とマスコット的役目を天秤にかけた結果だしな。軍人としての能力は未知数だ。ユリカ艦長みたいな素養があるか、今の時点だとなんとも言えねーな」

「剣の奴はゴッドを持って来んのか、グレートカイザーで来るのかはわからないのか、兜」

「たぶんゴッドだろう。グレートカイザーは正直言って、まだまだ未解析のところも多いんだ。進化させて間もないし、ゲリラ戦に使うには予備パーツが少なすぎる。ゴッドならサポート体制整ってるからな」

「……お前らのマジンガーって、人外の超兵器って思ってたが、意外にこういう事気にしてんだなぁ」

「スーパーロボットも兵器にゃ違いねーからね。ゲッターみたいに神の領域にはまだ達してないよ」

黒江に甲児は意外な一言を返す。忘れられがちだが、スーパーロボットとてたいていは『超強力兵器』の枠に収まる。真ゲッターやマジンカイザーのように、自己進化と自己修復能力を持つほうが異常なのだ。黒江は『そういやそうだよな……」と納得したようだ。

「健一達はどうやって食いつなげてたんだ?」

「ああ、大二郎がカルチャーセンターで剣道教室初めてな。俺も顔出してるんだ。俺も講座持ってる身だけど」

剛兄弟の内、上の二人はカルチャーセンターの講師をして収入を得ていたのがここで判明した。ボルテスのパイロットというネームバリューもあって講座は盛況らしく、食いはぐれる心配はなかったとのこと。

「そうでごわず。この時世でけっこう賑わってるですわ」

「そうだったのか」

「知らなかったのか、甲児」

「アメリカに行ってた事もあって、そういうのに目通す機会が無くてさ。最近はベガ星連合軍とのドンパチで忙しかったし」

「そうか。しかし最近は異世界との交流も始まってたのに、また戦争だってんだから嫌になるぜ」

「お前は宇宙人との交流を夢見てたものな。例のマジンガーZの復元計画の方はうまく行ったのか?」

「ああ、ドラえもんの道具でアイアンカッターの残骸から全体復元液で復元して貰ったあとに強化改造して、概ね順調にいってたよ。装甲はニューZにしたし、ジェネレーターも新型に変えた。あとは実働試験を残すのみだったんだ。カイザーは政府の命令で封印される予定だったから、Zとゴッドを使い分ける予定だったんだが、お流れ。俺はカイザーを持ちだして脱出に成功したってわけ」

――マジンガーZの復活は間近であったが、暗黒星団帝国に光子力研究所が制圧されたためと、甲児が封印前最後のオーバーホールを終えたばかりのカイザーで脱出したためにお流れとなったという事情はなんとも複雑さを一同に感じさせた。だが、マジンガーZとカイザーとでは、基礎スペックの高いカイザーのほうが頼れる存在であるのは変わりはない。甲児としても、複雑な思いなのが窺えた。

「それじゃ早く光子力研究所を取り戻さないとな」

「ああ。今日はもう遅いから寝よう。明日からゲリラ戦だから忙しくなるぞ」

「ああ。おやすみ」

一同は談話室から出て、好きな個室に別れてていった。休息のために。ゲリラ戦が開始される前の一コマであった。










――なのは達は暗黒星団帝国パトロール隊を蹴散らしたが、その矢先にジオン残党軍を発見してしまう。

「…まずいですよ大尉」

「どうした?」

「ジオンです!!」

隊の通信車両を操縦する兵士がアムロに報告する。どうやら暗黒星団帝国以外の敵影を捉えたようだ。熱量や音響からして旧・ジオン軍のモビルスーツだと兵士は報告する。

「敵の機種はザクの後期型に熱帯仕様のドムに……待ってください。コイツは厄介だ。グフ・カスタムですよ!!」

「チィッ!今は人類同士で争いあう時では無いというのに!」

アムロは混乱に乗じて現れたジオン残党軍をこう罵った。自らの理想や大義に殉じるのはかってだが、こんな地球全体の危機の時にまで、自らの思惑でテロ行為を行うのはエゴに過ぎない。

ジャベリンを率いてHi-νガンダムが動く。ライフルを構えて迎撃態勢を取る。

『グフは俺が引き受ける!!みんなは他の連中に当たれ!』

『了解!!』

アムロはジオン軍の慣習をよく知っていた。ジオン軍の生き残り達はたいていザクかドムで来るが、グフというのは珍しい。生産台数もそうだが、戦後の残存数から行って希少であり、操縦者はたいていは古参の熟練者及び、部隊エースの乗機であったからだ。著名なのは一年戦争中のアムロ自身が戦った「蒼き巨星」ランバ・ラルや、東南アジア戦線の「ノリス・パッカード」、オセアニア戦線の「荒野の迅雷」ヴィッシュ・ドナヒューの獅子奮迅ぶりは連邦軍に恐怖として身に染みており、グフ系列のMSは、旧式ながら連邦軍が最も恐れる機体の一つなのだ。

「少佐、、私も行きます!」

「わかった。無茶はするなよ」

「ありがとうございます!!」

アムロは戦いに参加しようとするなのはを止めなかった。彼女の性格をよく知っていたからだろう。こうしてなのはは都合、数年ぶりにMS戦に参加した。



――一年戦争からもう年月が経ったという事を微塵も感じさせないジオン地上軍東アジア方面軍の残党は自らの戦いを始めた。一番旧式のザクは足止め役として、ドムとグフで斬り込む。ドム・トローペンの熱核ジェットエンジンによるホバーが唸りを上げて連邦軍の最新鋭機に往年の恐怖を呼び覚ます。ドム系統の真価はシュツルムファウストやバズーカによる火力だけでなく、縦横無尽に地上を駆けるその機動性だ。その機動性は新型機にも十分に通じる。ドムトローペンは最新鋭のはずのジャベリンを翻弄し、格闘戦に持ち込む。ヒートサーベルとビーム・サーベルがぶつかり合い、火花を散らす。

こうなると後はパイロットの実力の問題だ。モビルスーツのパイロットの真価が問われるのはこの白兵戦闘の瞬間なのだ。

「おぉぉぉぉっ!!」

ジャベリンのパイロットは剣戟を行いながらとっておきのショットランサーの照準を合わせる。この瞬間が最も緊張させられる。

「いけ!」

ドムのヒートサーベルを足で蹴り飛ばすと、すぐに背中のショットランサーをせり出し、撃った。いかにドムの重装甲であろうが、ガンダリウム合金さえ貫くショットランサーは防げない。穂先が回転しながらチタン合金製の装甲をぶち抜いていき……。電気系統に深刻なダメージを負ったドム・トローペンはモノアイが消え、糸の切れたあやつり人形のようにその場に倒れ伏す。

「ふう。ショットランサーがあって助かったぜ」

ジャベリンのパイロットは愛機の性能と武装に感謝して次の敵に当たった。



――なのははここでショッキングな邂逅を体験する。それは……。

「ほう。魔導師のお出ましか……ん?アレは高町か。……因果だな」

此頃には数年前のフェイトとヴィータのケースがジオン残党軍に知れ渡っており、時空管理局にいた元ジオン軍兵士が合流するケースが出てきているので、彼らもミッドチルダの事は知っていたし、ミッド・ベルカ式双方の魔法の事も知っていた。なので対策は行われていた。グフ・カスタムを駆るこのパイロットもその一人。一年戦争終結時にミッドチルダに飛ばされ、手に職をつける為に時空管理局に入局した。それから数年後に教導隊に入り、数年間は教官をしていた。その時の教え子の一人がなのはだったのだ。

『……久しぶりだな高町。俺を覚えているか?』

彼は外部スピーカーをオンにして、久しぶりに教え子との対面をした。皮肉にも敵として。

「その声はまさか……教官!?なんでここに!?それにどうしてジオン軍のモビルスーツを……!?」

『言っただろうそもそも俺は地球人だ。昔はジオンの軍人だったのさ。ア・バオア・クー戦の際の事故でミッドに来たが、ジオン軍人としての志は捨てていない。で、こっちと国交ができたときに帰って復隊した。それだけだ』

なのはは驚愕のあまり声が出なかった。かつての教官の一人が旧ジオン軍の軍人で、モビルスーツのパイロットで、敵として立ち塞がった。それが心を激しく揺さぶっていた。

「やめて下さい教官!こんな戦いなんて……!!」

『甘いぞ高町!!戦いにあるのは、生か死だ!教えたろう!!』

彼はグフ・カスタムのシールドについている「6銃身75mmガトリング砲」を作動させ、なのはに向けて斉射した。車のエンジンのような鋭い音と共に弾が打ち出され、薬莢が飛び散る。なのはは咄嗟にプロテクションEXを発動させ、防いだ。と、言っても応急処置的なものなので、モビルスーツレベルの火砲相手ではせいぜい数回の防御が限度だ。

「くっ!!」

なのはは咄嗟に離脱し、ビルの間を塗って飛行するが、グフ・カスタムは実に器用だった。、ヒートワイヤーを使い、三次元的な機動を見せ、なのはを猛追し、なのはの弱点を把握していた。推力はあるが小回りがきかない点を熟知しているからこそ、彼女の大推力が発揮出来ないであろう場所へ追い込むのだ。

『連邦の白いヤツといえどすぐにはこれまい。それまでにお前には落ちてもらうぞ』


「くっ!!」

なのはは焦りながらも「ディバインシューター」を放つが、グフ・カスタムのヒートサーベルで切り払われてしまう。

『誘導弾の使い方が甘いぞ、高町。これなら空間認識能力の高いパイロットなら新兵でも見きれる』

彼はグフ・カスタムの性能を存分に引き出し、なのはを追い詰めていく。最短砲撃魔法程度なら、ビーム・スプレーガン程度の威力だ。グフ・カスタムのシールドで十分防げるし、スターライトブレイカーやディバインバスターは一定の時間、隙が生まれるので見切る事は容易い。ジオン軍の誇る白兵戦闘用モビルスーツの面目躍如であった。

(まさか教官がジオンの軍人だったなんて……そっちでも腕が立つなんて反則じゃん!!)

なのはは愚痴るが、彼にとってはこちらの方が本職なのだ。なのはの動きはMSで言えば、ジム・ライトアーマーやドム系によく似ている。一撃離脱戦法を主体にし、小回りが効かない。それを見知っている者が相手になった時、なのはは意外な脆さを見せる。接近戦に取り組んだのはそのためだ。

『なのは、下がれ!』

『アムロ少佐!』

HI-νガンダムがグフ・カスタムのサーベルをビームサーベルで受け止め、なのはを離脱させ、MS戦に入る。こうなると機体性能よりもパイロットの腕に依存する。サーベル同士がぶつかり合い、剣戟を展開する。アムロは歴代のガンダム乗りの中でも格闘戦を好む。そのため、まさにMS同士の剣戟の見本といえる戦いとなった。

『まさか連邦の白い悪魔と殺れるとはな!』

『今は人類同士で争ってる場合ではないだろう!いつまでジオンの大義に拘っている!』

『今更、ジオンの大義云々には拘ってはいないさ!これは俺の個人的な戦いだ!』

サーベル同士をぶつけあう両者。火花が散り、空気を震わす。現役軍用MSで横綱格の一角を担うHI-νに引けをとらない格闘戦を展開できる辺り、ザクUJ型をベースにしたグフ系統の素性の良さが分かる。ビルがヒートサーベルでまっ二つにされ、それを軽く跳躍して避けるHI-ν。アムロの操縦技術と、実戦慣れ度がよく分かる。なのはは、双方のレベルに舌を巻く。


――彼女は、かつての教官の本職がむしろMSパイロットで、この分野でアムロと渡り合えるレベルの技能があったというのは、反則気味だと感じていた。自分は確かに空戦での才覚は自認しているが、格闘戦ではフェイトに比べてセンスは落ちると自覚している。アムロやジュドーのように、戦いでオールマイティーな才能がある者らを羨しく思っている。それ故に、苦手な分野に手を出したのも事実だ。

『隊長、時間です』

『分かった。アムロ・レイ、そこにいる俺の管理局時代の教え子に言っておけ。まだまだ空戦の組み立て方が青いと』

『いいだろう』

アムロを倒そうとは思ってはいないようで、数十分の格闘戦を行った後、撤退していった。アムロもその一言で事を悟ったようである。管理局にも地球人がかなりいる事は分かっているが、元ジオン軍人もいた事がここで判明した。アムロは戦争屋の因果というのをつくづく感じ、なのはに言う。

『辛いだろうが、これも戦争屋の因果というものだ。彼が良心的な軍人だったのが救いだな……』

――ジオン軍人には、大義に溺れるあまりに非道な行為に走った者もかなりに登る。良心的な軍人というと、たいていはジオン軍人で、非道なのは連邦軍人というステレオタイプが有名だが、連邦軍にも良心的な軍人はいるし、狂気に走ったジオン軍人もかなりいる。人というのは、戦争の中で正気を保てるとは限らないのだ。歴史上の多くの軍隊で、虐殺行為は行われた。騎士や武士の時代であってもだ。戦争という非日常でも、己を見失わない生き方ができるか。グフ・カスタムを駆った彼の姿はなのはに、そう語りかけてくるようだった。


――地球連邦軍はこのように、各地でゲリラ化し、独自に抵抗を開始していた。その中心になったのは、またもロンド・ベル隊であり、彼らが地球連邦軍の抵抗のシンボルとして祭り上げられるのも無理かしらぬ事だった。抵抗を呼びかける、パルチザンの通信を、爆撃で破壊された軍施設内に残された食料を盗み……もとい調達しており、その通信室で偶然にも傍受していたのはルナマリア・ホークだった。彼女は戦後、アナハイム・エレクトロニクスのテストパイロットとして生計を立てており、ある機体のテストのために、月から地球へ降りてきていた。暗黒星団帝国に抗するべく、パルチザンへ合流するために、施設から程近い、戦闘で破壊され、放棄された地球連邦軍の駐屯地へ足を運んだ。このまま黙って見ているだけでは元・ザフトレッド(ルナマリア・ホークやアスラン・ザラ達が属するようになる時代においてはザフトは士官教育を受けるための学校があり、卒業成績順で制服が異なっている。赤服は優秀者の証)の名が廃るというもの。今や私服代りのザフトの軍服で行動していたのも幸いし、何か無いかと格納庫を物色していると一機のモビルスーツの姿があった。

「これは……Z系のMS?でも、小型化されてるわね……。ん?マニュアルだ……何々?」

その機体は一見するとZガンダム系統に見えた。しかし全長が15、6m前後に小型化されてており、サナリィ製ガンダムとアナハイムガンダムの特徴が入り交じる試作機であるのが分かる。

「サナリィがZ系の小型化を意図して、Z系のとある機体のパーツをアナハイムから取り寄せたうえで改修してた機体みたいね。正式な型式番号は無し、動力源はミノフスキードライブ?大盤振る舞いね」

それはZ系の戦術的優位性を小型MSに持ち込めないかと意図し、試作されていた機体だった。サナリィは可変MSの小型化を目論んでいたものの、ノウハウが不足していた。そこでアナハイムからZガンダム系の機体を取り寄せ、パーツ状態から再構築する手法で試作されていた。武装は専用武装が未完成なのが多く、従来の武装がとりあえず載せられていた。

「ロングメガバスター……か。まぁいいか。とりあえずここにおいてても破壊されちゃうし、持ちだそう」


起動させると、背部の可変後退翼を備えるフライングアーマーの翼部からミノフスキードライブの余剰エネルギーが翼を包むように吹き出す。ミノフスキードライブのこの問題は解決には至ってないのが窺える。

「んじゃ行きますか!」

MS形態のまま飛び出す。だが、サイズと動力源の差でZZガンダムをも凌ぐ加速力を発揮、ルナマリアはその制御に難儀したのは言うまでもない。



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