――地球は23世紀に入ると、平時であった時間よりも、戦争状態である方が当たり前となっていた。度重なる宇宙人の侵略で、人々はそれに慣れてしまい、生存競争にも抵抗感を無くしていた。


――宇宙科学研究所

「まさかこうも立て続けに宇宙人が襲ってくるとはな。それにしても、やけにスムーズに戦争状態に移行したな?」

「今回は政府中枢が制圧されたからね。話し合い云々以前の問題だよ。政府機能は麻痺したし、独自に対応するしかないって事だろうね」

箒とシャルは暗黒星団帝国の襲来の際には、宇宙科学研究所に居た。ベガ星連合軍はもはや風前の灯火であり、もう少しで打倒できると思われた矢先の出来事であり、これには宇門博士も予想外であった。彼らをどうこうする以前に、暗黒星団帝国を打倒しなければならぬからだ。

「しかし、ここからどうやって突破するのだ?」

「僕たちのISは火力は上がってるけど、ロボ相手の長期戦は難しいからね……。大介さんが戻ればいいんだけど……」

「ベガ星連合軍は直に崩壊するし、送別会の準備もしてたというのに、おのれ暗黒星団帝国!」

そう。デューク・フリードとその妹のグレース・マリア・フリードはベガ星連合軍を倒した暁には、フリード星への帰還が予定されていた。だが、暗黒星団帝国の侵攻でその予定がぶっ飛び、ゲリラ活動を開始せざるを得なくなっていた。それを箒はすごく気にしているのだ。だが、マジンガーZやグレートマジンガーを凌ぐパワーを持つスーパーロボットであるグレンダイザーの戦力を宛てにしなければならぬ状況故、仕方のない事なのだが。

「IS学園には連絡したのか?」

「したよ。今は鈴が戻って交渉中。だけど、上手く行くかなぁ?いくら実験代わりとは言え、代表候補生や代表を複数人送り込むなんて、各国が納得するとは思えないし……」

「一夏は行きたがるだろうが、あいつの戦力は接近戦オンリーに等しいからなぁ」

「うん。一夏は経験も不足してるし、かと言ってヒーローの助力を嫌うしねぇ」

――織斑一夏は幼少期の経験から、スーパーヒーローを嫌う傾向がある。IS学園事件の後、南光太郎がヒーローであることに驚きつつも、懐疑の目を向け、千冬に厳しく叱責されている。命の恩人に対して、無礼な態度を取ったからだ。一夏は無礼を詫びたものの、その後は彼の助力を出来るだけ拒んだ。これは彼の持論に依るもので、千冬も困る傾向なのだ。

「あいつは幼少期の経験が過酷だったからな……。それで自分の力で誰かを守る事に執着しているのだ。たまには私や皆を、光太郎さん達を頼って欲しいのだが……。千冬さんしかあいつに命令できんし……」

箒は異世界に行った事で、想い人である織斑一夏を客観的に見る事が出来るようになり、一夏がスーパーヒーローというモノを嫌悪するようになった理由を考察出来るようになった。箒は一夏のそんな危うい側面を心配していた。一夏は姉が自分の人生を支えてくれたという恩義から、千冬の弟であることに誇りを感じているし、両親への情愛はない。そして、姉を守れるようにと、力を渇望している。それは箒とも共通している事項でもある。

「確かにね。一夏は千冬さんの弟である事を多分に意識してるし、ヒーローの力に頼ることを嫌ってる。それで千冬さんに叱責されたんだよ。ほら、光太郎さんと甲児さんが助けに来てくれたあの事件の後……」

「だいたい想像はつく。あいつの事だ、光太郎さん達に『あんたらの助けはいらない』とでも豪語したんだろう?」

「そう。それで千冬さんに叱責されたよ。光太郎さんだって、好きで改造人間になったわけじゃないからね」

そう。仮面ライダー達とて、その力は望んで手に入れた力ではない。老いることが無くなり、半分は不老不死と言ってもいい、その姿。一夏が叱責を受けたのは、ヒーローは『泣くことも、笑いもしない人間じゃない存在』と彼らの前で言ったためである。その時の様子を思いだしたらしく、シャルは気まずそうであった。ヒーローとて人間である。それは改造人間である仮面ライダーの心の支えである。一夏当人も後で光太郎に自分の非を詫びていたが、千冬は光太郎に『馬鹿な弟がご迷惑をおかけしました』と真っ先に実弟の軽薄さを謝罪し、一夏を厳しく叱責した。その戒めのためもあり、一夏は派遣されないだろうと予測する。

「その事もあるから、一夏は外されるだろうね。多分、楯無さんか簪じゃないかな?」

「あいつは勢いでモノを言う癖があるからな……それに姉さんと違って、ヒーローモノは特段好きではなかったが、そこまで行ってしまうとは……中二病かかってるな、あいつ」

「箒も年取ったね」

「二年くらいここで働いてるからな。もう普通なら19歳位になってるはずだ。楯無さんが来ると言っても、ISの性能がなぁ。ミステリアス・レイディでは苦戦はまぬがれんだろう」

「楯無さん自体は生徒中の最高練度なんだけどねぇ。相性が良いとはいえない相手に当たる場合が多いしね」

「かと言って、この世界には『爬虫人』を素手で撲殺できる超人がわんさかいるんだぞ?楯無さんが来てもなぁ……」


更識楯無は先のとおりにIS学園の生徒としては最強を誇るが、戦績自体はいいとはいえない。しかもこの世界の超人のレベルは『素手でMSを壊せるか、爬虫人を撲殺できる』かの水準に達しており、楯無が来たところで、戦力として当てになるのか、と箒は懸念する。シャルもその辺はわかっているため、一緒になって悩む。そこに、敵襲来の警報が発令される。

「敵だと!?どこのどいつですか!?」

「百鬼帝国だ!迎撃を頼む!ネオゲッターロボに出動を要請するから、時間稼ぎをしてくれ!」

「了解!」

箒とシャルのこの戦いの初陣がここで生起した。混乱に乗じて百鬼帝国が行動を起こし、ネオゲッターロボの出動までの時間をかせぐという役目のために。



――ここで、ネオゲッターロボについてもう一度説明する必要があるだろう。ネオゲッターロボとは、ネイサ―という組織に転じた神隼人が設計したゲッターロボである。名に反してゲッター線は使用しておらず、プラズマエネルギーを主動力源とする。これは早乙女研究所の事故で、『ゲッター線開発の禁止』が成されている影響である。ゲッターロボ號が敵の手で完成されていた事を鑑みて、ゲッターロボGの特徴と組み合わせる事で設計変更された経緯がある。なので、各形態はGと號の折衷型のデザインと武装を持つ。パイロットは一文字號、橘翔、大道剴の三人。翔は早乙女ミチルを除けば、初のゲッターロボ乗りである。彼らはパルチザンに合流しており、神隼人の指令で、宇宙科学研究所へ向かった。それは黒江達が戦いを起こす、およそ数十分ほど前の事であった。この後、ネオゲッターチームにバトルチームとボルテスチームが合流し、見事、宇宙科学研究所の危機を救った。宇宙科学研究所はパルチザンの勢力下に置かれ、重要な反攻拠点として活用されていく。

――パルチザン 本部

「あれが隼人がスカウトした若い奴らか。どうなんだ?ゲッターチェンジの練度は」

「俺たちを除けば、最高の練度だ。まだ拓馬のゲッターアークは修理中だしな」

「まさか平行時空の自分のガキにあうたぁ、思わんかったぜ……。で、拓馬と獏以外にアークに乗れる奴はいんのかよ」

「お前がいるだろ」

「自分のガキと一緒にゲッターに乗れって?一気に年食った気分だぜ。甲児や鉄也達に笑われるぜ」

「お前だって、押しかけ女房が来て、いつの間にか子供出来てたなんて想像もしてなかっただろうが。お相子だ」

「うっ……。ドラゴンの復活までには時間がかかるんだろう?なら戦ってやるさ、早乙女博士の最後の遺産でな」

平行時空の自分のもとに押しかけてきた女性が自分の子を宿してしまい、育てていた事、その女性が百鬼帝国の生き残りに殺害されたという事実、そして恐竜帝国の帝王(といっても、この世界では更に上位者の大魔神ユラーがいたので、実質は中間管理職だったが。巴武蔵の自爆でユラーは死に、秘密を知るゴールも百鬼帝国に殺害されたため、ユラーの存在は恐竜帝国からも忘れ去られたが、拓馬の世界ではゴールが名実共に支配者であった)ゴールの遺児で、人間とのハーフの『カムイ』が人類を地球に留めるためにの最終兵器のデータを持っている事を知らされた竜馬は複雑そうであった。別世界の自らの最期、ゲッターロボの行き着くべき先。更に、ドラゴンの進化の理由……全てが繋がるのだ。ゲッターロボという因果で。薄ら恐ろしさを感じるが、竜馬は昔年の闘志を取り戻しつつあった。早乙女博士の残した最後のゲッターロボであるという『ゲッターロボアーク』を乗機にして戦う覚悟が。封印された真ゲッターロボの復活と、地下に眠るゲッターロボGの『真ゲッターロボG』としての目覚めは起こるだろうが、それがいつかどうかは分からない。それまでは借り物であろうとも別のゲッターロボで戦うと。それは弁慶の死後、ふさぎこんでいた竜馬に再び『活力』が漲ってきた証かも知れなかった。

「それだけ言えれば大丈夫だな。弁慶も草葉の陰で喜んでるさ」

「そうだな……」

初代チームの補充要員であった車弁慶は竜馬らとゲッターチェンジ可能な男だった。子供好きの快男児であったが、ドラゴンと一体化してしまったと思われ、事実上の死亡扱いである。竜馬と隼人は彼の死を悼み、ゲッターロボ三号機に乗る席を彼の帰還のために用意するなどの弔いを行っている。初代ゲッターロボをベースにしたカスタム機に乗る(武装やデザインは竜馬のアイデア)手はずとなっているものの、また、三人でゲッターチェンジしたい気持ちを持っているのが竜馬の言葉の端々から分かる。

「なぁ、隼人。弁慶がもし帰ってきたら、やろうぜ。俺達でゲッターチェンジを」

「そのつもりだ」

隼人は竜馬を安心させるような微笑を見せた。それは隼人なりの竜馬への気遣いであった。竜馬は実の妹を交通事故で亡くし、二人の戦友に死なれたことから、最近は言動に寂しさを滲ませるようになっていた。隼人は竜馬に弁慶の死を乗り越えて欲しいのだ。無論、ゲッター線に取り込まれた以上、取り込まれた当時と変わらぬ姿で帰還する可能性も残っている。それ故に隼人はパイロットとしての訓練を続けているのだ。竜馬と隼人がゲッターパイロットとしての自己を捨てていないのは、弁慶の奇跡の生還を待ち望んでいるからである。








――この時の地球圏は指揮系統を寸断された地球連邦軍が各自でゲリラ化して抵抗する状況にあった。暗黒星団帝国は帝都である東京とロンドンの制圧に全力を費やし、その他の地域は政治中枢の制圧に留めていた。これは地球連邦軍の機動部隊と真っ向から対峙する事を暗黒星団帝国側が恐れたという事情が多分にあり、マジンカイザーや真ゲッターロボという『宇宙制覇可能か?』と思わせる超兵器を、天敵たるヤマト同様に恐れ、日本の各研究所を優先して制圧しにかかった。だが、各研究所はスーパーロボットを既にパルチザンへ向かわせていたり、ゲリラ化しており、暗黒星団帝国は当初から思わぬ躓きを犯していたのである。そんな状況下に置かれていた地球圏の人々はパルチザンとして戦いに赴く者が大半であった。『座して死を待つよりは、戦って死んだほうがいい』という思想が根付いていたからだ。この状況を目の当たりにした、出向中にこの戦争に遭遇した、あるウィッチは自国で起きている『自主退役』の動きを大いに嘆き、『この心意気こそ今の連合軍には必要なのに、屁理屈を捏ねて逃げている野郎どもはウィッチにあらず!』との手記を残したという。


――これはウィッチ世界はネウロイとの生存競争が常態化した世界故、良心的兵役拒否者や徴兵逃れをした者は、たとえウィッチであろうとも、国レベルで迫害を受けるのが通例である。これは『力があるのに、何故戦わないのだ!』という考えや価値観が普及している故で、それは戦争の形態が人類同士の戦争へ移行しても同じだった。良心的兵役拒否や徴兵逃れを行ったウィッチはエタヒニン同様の扱いで、どの国からも謂れ無き迫害を受ける。(表向きは志願制であっても、街の人々の間で迫害を受ける)それに疑問を抱いた者の多くがティターンズに入隊し、連合軍を倒すための戦闘に一役買っているという皮肉が横たわっている。ウィッチ世界の不文律がティターンズの登場により矛盾が拡大し、結果的に彼らの首を締めているのが現状である。この戦争により、ウィッチという希少性の高い人種の人口比率に『良心的兵役拒否及び、徴兵逃れ』をする者の比率が加わった結果、ウィッチの世代交代は円滑に進まなくなり、『1944年に軍役志願済みである者』達が長く一線級戦力として奮戦する羽目になるのであった。一線級のウィッチが大戦世代からの世代交代を完全に果たすのは、割り切って戦争を行える価値観を持つ1950年代生まれが軍に志願してくる1960年代中頃であることからも、良心的兵役拒否や徴兵逃れが発生するだけで、ウィッチの確保が難しくなった表れであった。そのため、1945年に20代から10代後半であった世代は『大戦を戦い抜いた、歴代でも精強な世代』として後世の歴史書に記録された。


――大統領専用避難艇基地

古代進達、ヤマト幹部らは大統領専用避難艇まで辿り着いたが、敵の追撃がそこにも及んでしまい、避難艇が起動し、上昇態勢に入った瞬間に森雪が外に投げ出されてしまう。古代は必死に雪の腕を掴むが、やがて力尽き、雪を離してしまう。

「古代君……!」

「ゆ、雪ぃぃぃぃぃぃぃ!!」

古代は投げ出され、落下してゆく雪の名を絶叫する。この戦いにおいての古代の痛恨事であった。この時に大統領専用艇に乗り込んだのは、古代進ら幹部クルーの他に、宮藤芳佳と菅野直枝、ティアナ・ランスター、フェイト・T・ハラオウン、スバル・ナカジマがおり、佐渡酒造が彼らともども意図的に仮死状態にして、監視の目を誤魔化し、宇宙戦艦ヤマトが秘匿されている『小惑星イカルス』にオートパイロットで向かった。また、この時に投げ出された森雪は捕虜となり、技術将校『アルフォン』の下に身柄を提供された。その情報は後日、パルチザンのもとに届き、彼らは森雪の奪還作戦を展開していくのである。






――そして、そんな地球圏の惨状に呼応するかのように、地下で眠るゲッタードラゴンが目覚めの咆哮を上げ、その繭にヒビが入っていく。それはゲッタードラゴン自身の体にも及んでいく……。脱皮する昆虫か甲殻類のように、ドラゴンのボディが装甲ごと剥がれ落ち、そこから真ゲッターのような形状を持つ新たなボディが姿を現す。頭部がパカっと割れ、形状がより鋭角的になった新たな頭部も出現していく。そして、そのドラゴン号のコックピットにいたのは……。

「直に目覚める時がくるぞ、真ゲッタードラゴン。俺達の帰還は竜馬達の危機の時だ」

なんと、車弁慶であった。竜馬の願いにゲッター線が応えたのだ。ゲッタードラゴンは今や真ゲッタードラゴンと言っていいほどの進化を遂げたのだ。そのエネルギー量はあの真ゲッターロボをも更に超越するほどで、ゲッター線増幅炉が進化して『真・増幅炉』というべき炉心へパワーアップした賜物だった。そしてその様子を遙かなる時の中から見つめる一人の男がいる。ゲッターエンペラーと呼ばれし超弩級ゲッターロボの中枢部に鎮座する、早乙女博士。

『これがドラゴンの新たな姿なのだ、ベンケイ君……その力で地球圏を守り給え……」

ゲッターエンペラーとは、遙かなる未来における究極最強のゲッターロボである。皇帝の名を冠し、そのサイズは星系サイズに達している。その敵対者をすべて滅ぼす姿から、敵からは悪鬼に例えられるほどの無慈悲さを持つ。地球人類とそれに友好的な種族以外をすべて無慈悲に殲滅する目的は『神をも凌駕する敵に挑むため』である。ある世界では『ヒャッハー!!地球人以外皆殺しじゃーーー!!』という思考で同様のことをなそうとしていたので、思考が多少は理性的になっているということだろう。早乙女博士は遙かなる未来で往時の姿と記憶を保ったまま、ゲッターエンペラーの中枢部に鎮座する。そして、ドラゴンの目覚めを当然ながら知っている。その名も『真ゲッターロボG』。またの名を真ゲッタードラゴンという事も。エンペラーが見つめるは暗黒星団帝国との戦い。エンペラーがドラゴンの進化を促進させたかのような言動……。それはエンペラーが各平行時空で地球圏が滅ぼされそうなタイミングで、その時々の人類に力を貸していたのかもしれない。この西暦2200年代の地球が『今がその時』なのかもしれない


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.