――かつて、ドラえもんとのび太が放逐した『バイバイン』がかかった栗饅頭。それから約、二百年が経過した23世紀。地球の高性能宇宙望遠鏡が捉えたその映像に、天文学者は度肝を抜かれた。銀河系を隔てる事、約90000光年。その空域で発見された、成長過程にある矮小銀河の抗生物質が栗饅頭であるからだ。


――デザリウム帝国(暗黒星団帝国)との戦いの最中であるので、観測作業は途絶えていたが、その銀河のもとになったのが、実はのび太が食いきれなかった栗まんじゅうである事が通達されたのは、厚木基地攻撃作戦が予定日を立てられたある日のことだった。

――移動本部 ブリーディングルーム

「ええええええ!?く、栗まんじゅう銀河ぁ!?」

驚天動地で腰を抜かしたのは、シャルロット・デュノアだった。最近に発見された伴銀河の生みの親はのび太とドラえもんであるからだ。他の面々……兜甲児、篠ノ之箒、葵豹馬、流竜馬も一様に驚いている。のび太は説明を始める。そもそも、何故栗まんじゅう銀河ができたのか、を。

「あれは98年の秋ごろだったかな……その日のおやつが栗まんじゅうで、最後の一個を食べきっちゃうのもったいなくて、ドラえもんに頼んで『バイバイン』を出してもらったんです」

「おお、ガキの頃に読んだことあるぜ。たしか、1つの物体が5分毎に2つに増えるって仕組みだったな」

豹馬の一言にのび太は頷く。その仕組みなので、『食べ切らないと増殖が止まらない』という重大な点に焦ったのび太は満腹になってしまい、しずか、スネ夫、ジャイアンに食べてもらうようにするが、それでも一個残ってしまい、窮した彼はゴミ箱に捨てるが、1時間で4000個にも達する増殖力は、ゴミ箱のキャパシティを大きく超え、庭に溢れ出すほどになり、ドラえもんがそれを知ると、宇宙に放逐するしかないという判断のもと、宇宙に放逐されたのが事の発端であるのだと。

「当時、ドラえもんは『一日で地球を覆い尽くす』と言ってました。それから二百年で銀河になるのはたぶん、予測可能な範囲でしょう」

「おい、ちょっと待てよ。一日で地球を覆い尽くすなら、1ヶ月位で宇宙を覆い尽くすはずだぜ?どうして、そうならないんだよ」

「これはドラえもんが前に言ってたことなんですけど、多分、宇宙に出たら、ある程度言ったら増殖力は落ちて、重力を得るはずだから、そこで惑星化した後に弾き飛ばされた一団が別のところで同じプロセスをたどるのが繰り返されて、銀河を形成するだろう』って言ってたんです」

「すると、その栗まんじゅうが増えていった末の産物が栗まんじゅう銀河か?宇宙の神秘だぜ、こりゃ」

竜馬がそう結論付ける。栗まんじゅうがバイバインのおかげで無限に増えると思いつつ、ある一定のところで宇宙が歯止めをかけてくれ、銀河として存在するようになったと。銀河系からそう離れていない宇宙に、全てが栗まんじゅうで構成された小銀河がある。食いしん坊な大道剴やジャイアンが聞いたら、泣いて喜びそうな話である。

「でも、栗まんじゅうでできた星なんて、後から後から増えるんでしょう?とても食べられるとは?」

「そこからいくつか持ち帰って、食べ切っちゃえば増えんさ。ドラえもんが『食べ切っちゃえばいい』ってことは、胃酸、あるいは酸性の薬品をぶっかければ、バイバインの効力は消えるって事だぜ」

シャルの疑問にに竜馬が答える。竜馬は空手家であるが、ゲッターロボのパイロットである都合上、隠れインテリである側面がある。その一面を垣間見せた。栗まんじゅう銀河は近くなので、シナノの航行能力であれば数ヶ月で到達可能である。だが、今はそういう場合ではないが。

「なるほど。栗まんじゅう銀河かぁ。ん?銀河って……普通、中心部にブラックホールあるけど、この場合はどうなるんです?」

「う〜ん。たぶんブラックホールの代わりに、超巨大な栗まんじゅう星があるんじゃないか?ブラックホールになるには、星の重量が太陽の30倍以上無ければ無理だしな」

「へえ〜」

「お〜い。竜馬はいるか?」

整備班のウリバタケが顔を出してきた。竜馬に用事があるようだ。

「なんスか、セイヤさん」

「ネーサーの敷島博士から、お前宛にゲッターロボが送られてきたんだよ。見てくれ」

「あいな。んじゃ行ってくんぜ」

竜馬はウリバタケについて行って、格納庫に行った。竜馬宛に送られてきたゲッターロボと言うのは、おそらく『敷島博士が持ちだしていた旧ゲッター1を魔改造した』機体であると思われるが、前大戦中に回収した量産型ゲッターロボGを改修しているという話もある。

「ゲッターロボって、竜馬さんのはないはずじゃ?」

「多分、回収しておいた旧ゲッターを改造したやつだろう。アークはあの二人のもんだし、真ゲッターは早乙女研究所で眠ってるしな」

竜馬は自分用のゲッターロボを望んだが、あいにくネーサーには正統なゲッターロボはそんなに数がなく、鹵獲したのを修繕中の機体があるだけであった。動かせそうな機体は旧ゲッターのみだった。しかし、出力がゲッターGの十分の一しかない(とは言うものの、70万馬力はあるが)旧ゲッターでは戦力不足は目に見えている。そこで敷島博士(早乙女研究所の武器開発担当だったマッドサイエンティスト)は旧ゲッターのチェンジ機能を取り除き、その分の機体出力を戦闘に回すことでゲッタードラゴンに匹敵する戦闘力を得る事に成功した。そのモデルを竜馬に与えたのだろうと、豹馬はいう。

「ゲッターロボって、色々とあるんですねぇ」

「ゲッターロボの系譜自体は単純なもんだよ。元は宇宙開発用だったのが旧ゲッター、戦闘用の上位モデルがゲッターG、その長所を組み合わせたのが真ゲッターだ。隼人さんのはまた別の系統だから、ややこしいんだ」

シャルはロボットアニメはそんなに見ていないが、初代ゲッターロボとゲッターロボG程度は一般常識の範疇だと、ラウラ・ボーデヴィッヒに教えられた。そのため、最低限の知識はあった。だが、浅い知識なために真ゲッターやゲッターアークまでは知らなかったらしい。そんなこんなで微笑ましい風景だが、地球連邦軍の移民船団が、その栗まんじゅう銀河に迷い込んでしまったという報がパルチザンへ届けられたのは、それから間もなくだった。








――栗まんじゅう銀河 移民船団「マクロス16船団」

「なんだこの銀河は!見渡す限りの栗まんじゅうではないか!?」

マクロス16船団は遭遇した新たな敵『ボラー連邦』の攻撃を受け、近くの空域へ逃げたのだが、その空域は栗まんじゅう銀河の外縁部だった。観測の全てで、この銀河は壮大な『栗まんじゅう製造機』であると証明する結果が出されると、船団の誰もが腰を抜かした。栗まんじゅうは地球の日本などで食されているお菓子にすぎないのに、なぜ宇宙規模で存在するのか。科学者は首を傾げ、軍もスペースデブリから何まで栗まんじゅうで、しかも自己増殖しているとあれば、迎撃していいのかと悩む始末だった。回収して、調査の結果、栗まんじゅうそのものには特段代わりはなく、食べれば増殖はしなくなる事、成分分析により、遠い昔になんらかの薬品を浴びた痕跡がある事が確認された。

「すると、この栗まんじゅうは人為的に増殖力を与えられたと?」

「そう見るべきでしょう」

「しかし、今の地球の科学ではそんな薬品はとても……」

「遠い昔と申しましたように、統合戦争前の一時期なら可能だと思われます。その時期の日本の誰かが実験か何かをし、それが忘れ去られた結果がこの銀河なのでは」

と、科学者は考察するが、実際はのび太の不始末が原因で起こったにすぎない。バイバインの効力は200年経とうと、不滅であるのが分かる。だが、一応は無効にする薬品も2125年当時は流通していたという記録も残されているが、統合戦争の混乱で製法が失伝してしまったのだ。

「とりあえず、バルキリー隊を出動させて調査をしなければ」

と、言うわけで地球本星がデザリウム戦役に突入していたのを尻目に、この船団は事故により栗まんじゅう銀河に突入していく。この船団はF船団や7船団に比して劣る装備(VF-11が未だ主力であり、AVFも配備されていない)であり、戦闘ではボラー連邦に押されていたので僥倖と言えた。こうして、この船団は運よく、ボラー連邦の魔手から逃れることに成功した。だが、栗まんじゅう銀河の存在は後に地球連邦政府に多大な衝撃を以て迎えられ、同時にボラー連邦が地球連邦に興味を抱く事に繋がる。その後、地球連邦軍はこの時のことでボラー連邦に難癖をつけられ、古代進が売り言葉に買い言葉で宣戦布告を行った事で、地球連邦軍はボラー連邦との戦争状態となるのであった。

















――地球 日本

試作機を持ちだしたルナマリア。武装を撃ち、ビームランチャーで敵をぶち抜く。その時の操縦に対する反応速度はインパルスを遙かに超える(機体のマグネットコーティング効果やなどで、パイロットの操縦に即座に反応する)もので、ルナマリアはその速さに驚愕した。

「速い……タイムラグをまるで感じない。この世界のモビルスーツって高性能ね、パワーも凄いし。だけど……このコックピットって酔いそう……」

インパルスなどは一年戦争時の黎明期MS同様、通常のパネルとモニターで構成される操縦系であったが、この23世紀初頭におけるモビルスーツは全天周囲モニターとリニアシートが当たり前である。そのため「酔いそう」だと言ったのだろう。操縦桿は一時に流行した「アーム・レイカー」ではなく、スティック式に戻されている。そのためにルナマリアも違和感無く操縦できるのである。基地を出て、しばらく飛んでいると、またも暗黒星団帝国の戦車部隊に襲撃される。

「きゃあっ!!またあのゲテモノ達ね……しつこいんだから!」

暗黒星団帝国の掃討三脚戦車やパトロール戦車などは一見すると虫を思わせる外観である。そのため、彼女はゲテモノと称したのだ。レーザー光線を持ち前の機動性で回避する。しかし、後年に設計されたものなので、Z系特有のピーキーな操縦性は緩和されたもの、僅かに残っている事には変わりはなく、ルナマリアはそれを補正しながらの操縦に一苦労していた。

「この機体、相当にジャジャ馬ね……参っちゃうわ」

――「ジャジャ馬」。それはZ系の高性能機特有の敏感かつ繊細な挙動を皮肉った称号でもあり、Zをエースパイロットやベテランの「御用達」モビルスーツにさせている事を示す単語。ルナマリアもそれに苦労されられているのだ。

ビームサーベルを引き抜き、掃討三脚戦車を斬り裂く。その時、彼女は自身の意外な才能に気づく。

(あれ、あたしってもしかして……格闘戦のほうが向いてる?)

そう。彼女はザクウォーリア搭乗時には、砲台がわりの砲撃担当が多かったが、格闘戦ではインパルスと同レベルの高性能機とも渡り合うほどの腕はある。それをようやく自覚したのだ。それは大きく、彼女の戦闘スタイルはここを境に一変することになる。

「ん?古いモールス信号?」

解読すると、パルチザンが同志を募っている内容の電信だった。内容を理解したルナマリアは、パルチザンに合流するという内容の返信を打電。直ちに神奈川県へ向かった。










――この日の夜、箒は臨時で、加藤武子の配下となる形で偵察に出、戦っていた。パルチザンは今回の戦争に当たって、加藤武子を扶桑皇国の了解を取り付ける形で、少将へ昇進させ、前線指揮官の任を担わせた。同時に飛行64戦隊を母体にしての侵攻部隊として運用した。パルチザンへ合流したなのはは武子の直接指揮下の第一中隊の一員として、箒は「義足のエース」と異名を持つ、武子の部下の檜少佐指揮の第二中隊の一角を担っていた。

「はぁぁぁっ!!」

赤椿の武装を振るい、掃討三脚戦車の脚部を切断し、戦闘不能に追い込む。彼女の「赤椿」はこの時点では地球連邦軍によって自己進化の他に機構に大幅な改良が加えられており、機体の反応速度一つとっても、機体に施されたマグネット・コーティングなどの効果で、箒の操縦に即座に答えられるようになっている。赤椿そのものの自己進化もあり、転移以前より迅速に複雑な空戦機動が可能となっており、その気になればオールレンジ攻撃にも対応出来る。暗黒星団帝国の陸戦兵器はその機動力の前に翻弄される。

「クソッタレぇ!!なぜ当たらん!?」

別の掃討三脚戦車隊の火器が箒を狙うが、実戦経験を積み、2年間にわたって戦史に名を残すほどの名だたるエースらに実戦での空戦機動を教わった彼女には暗黒星団帝国の陸戦兵器の対空砲火など恐れるに足りない。無駄に大きい図体と虫の触覚のような砲塔は地球で発展してきた「普通の」戦車よりも砲塔の指向性に劣る。元来がその巨体から敵を見下ろし、直上から放火を浴びせる設計思想の兵器なので、対空砲火に用いるのは些か用途外。箒はその点を突いたのである。背後を取られれば地球の戦車なら砲塔を旋回させれば事足りるが、掃討三脚戦車は砲塔そのものの自由度は地球連邦軍の61式戦車を遙かに超えるものの、敵が真後ろでは機体そのものを旋回させればならない。そのタイムラグを箒はついたわけである。

「これで終わりだぁっ!!」

掃討三脚戦車の装甲に雨月を突き立て、膨大なエネルギーを注ぎ込む。三脚戦車は制御を失い、崩れ落ちる。箒は空戦を行う傍らで担当空域の地上支援も忘れない。未来世界へ来てからの2年間で培ってきた経験は大きく、以前よりも戦術眼を身につけており、大尉への昇進も検討されていたりする。同時にスーパー戦隊側からの援軍が派遣されてくる。それは……。



「援軍!?敵か!?」

檜少佐が若干、うんざりした声を発する。こういう時の新手は敵と相場が決まっているからだが、今回は味方だった。可変翼を持つ巨大空母が戦場に強行着陸し、火器を乱射して、暗黒星団帝国を蹴散らす。アカレンジャーからの通信で、強行着陸を行った空母は味方で、『超新星フラッシュマン』が引っさげてきたスターコンドルという空母という事が通達された。

「超新星フラッシュマン?」

「そうだ。電撃戦隊チェンジマンが活動を終えた後に地球を守護していた戦隊だ。彼らは君らの力になってくれるはずだ!」

アカレンジャーの言葉の意味を次の瞬間に箒は悟った。空母の各部が展開され、メカが発進していくのだ。

『タンクコマンド、発進!』

『ジェットデルタ、発進!』

『ジェットシーカー、発進!』

暗黒星団帝国の攻撃が弱まった隙を突く形で、スターコンドルから三機のマシンが発進する。その光景は壮観ですらあり、箒は思わず見とれてしまう。そのマシンらはスラスターを使って上空へ飛び上がり、合体を開始する。

『合体、スタート!』

三機のマシンが編隊を保ちつつ、合体を開始する。同時に再度、掛け声がかかる。担当はレッドフラッシュだ。

『合体・フラッシュクロス!!』

二機のジェットがタンクの車体に食い込み、スライドして腕になるという複雑な工程を挟み、一体のスーパーロボットとなる。最終決戦で大破したものの、修復がなされていたために投入された。その名も『フラッシュキング』。地球に姿を見せたのは、1987年以来、およそ200年ぶりである。彼ら『超新星フラッシュマン』は元々、エイリアンにさらわれた地球人であったが、フラッシュ星系に体が適応してしまった弊害で、元々の母星たる地球の環境に長期的に適応できない『反フラッシュ現象』が起き、スターコンドルのみを持って行き、帰還した。戦場に残されたフラッシュキングの残骸や、エネルギーが切れて放棄されたグレートタイタンなどは後に他の歴代戦隊によって回収、修復等が行われ、フラッシュマンへ返還される時を待っていた。それらは彼らの『先代』に当たる、電撃戦隊チェンジマンの手でフラッシュマンへ返還され、此度の戦いに投入されたのだ。

『完成、フラッシュキング!!』

フラッシュキングは地響きを立てながら、颯爽と登場する。その光景はフラッシュマンが夢にまで見た瞬間だった。



――これが彼らの悲願だった。フラッシュマンがフラッシュ星系で数年の療養をする内に、地球では数百年の月日が経っており、彼らの家族だと思われる人々が200年後まで子孫を紡いでいるかも不明であり、フラッシュマンは地球への帰還を躊躇った。だが、フラッシュ星系を訪れた、電撃戦隊チェンジマンのリーダー『剣飛竜』はレッドフラッシュ=ジンに言った。

『君たちと再会を望んでいた家族や、君達自身が愛し、守った地球は今、侵略者の手に落ちようとしている。ここで見過ごせば、フラッシュ星系の英雄『タイタン』や、過去の君たちが身を削ってまで守った平和は崩れ去る。そんなことはタイタンも、君達が会いたいと願った家族も望んでいないはずだ』と。

この一言に心動かされたレッドフラッシュ=ジンは、超新星フラッシュマンとしての活動を再開させる事を決意。アカレンジャーからの要請に応え、参戦を決意したのだ。



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