――パルチザンは厚木基地攻略戦に成功したものの、敵の戦略に乗せられた感は否めず、厚木基地の再建と横須賀との兵站体制構築に数週間を要するなど、念入りに防衛網を構築した。また、グレートマジンガーが進化した『グレートマジンカイザー』の本格的な稼動テストも行われていた。

――厚木基地

『ゴッドサンダー!!』

グレートマジンカイザーは、グレートマジンガーをカイザーのデザインラインで再構築した外観で、装甲も超合金ニューZαへ進化している機体である。その本格的な稼働テストは武装テストの段階に入り、厚木基地内で放置されていた旧式のジムUを無人化し、自動操縦で模擬標的にする形で行われていた。


「ジムUの内部回路だけでなく、外部装甲まで焼け焦げさせるたぁ……すげえ威力だなこりゃ」

パルチザンの暫定的なチーフメカニックの地位にいるウリバタケ・セイヤはグレートカイザーの性能特性関連の書類を作成しながら、データ収集を行っていた。ゴッドサンダーの高圧電流はサンダーブレークを遥かに凌ぐ数値を叩き出し、陽子エネルギーを持つゴッドのそれに勝るとも劣らない威力なのが確認される。

「おっしゃ、次はブレストバーンの進化型を試して見ろ。技名はこっちで考えておいた。便宜上の名前からは色々変わってるから、チェックしてから撃てよ〜」

グレートマジンカイザーの武器は名が決まってない名も多く、鉄也のセンスで決めた便宜上の名は『センスが無い!』という事で、大多数が却下され、ウリバタケが練った新規の名前が宛がられていた。これはその一つだ。

『了解。バーニングブラスター!!』

元々、ブレストファイヤーより威力に優れるブレストバーンが進化した結果、大気圏内で扱っていいのかというほどの熱量を持つに至った。熱量は『弱』の威力でさえ、チタン合金セラミック複合材をかすっただけでドロドロに融解させた。

「チタンもこうなると形無しだな、こりゃ。おし、宇宙に出たら最強を試すから、そいつはそこまでだ。弱より威力をちょっと上げるだけで、既にブレストバーンの10倍の威力に相当するから、地上じゃ危険だ」

『了解。次はなんです?グレートトルネードですか?』

「それもそうだが、標的が脆いから、いまいちデータが取りにくい。光子力研究所からマジンガーZのプロトタイプの一体を借りたから、今度はそれを使うぞ。」

『Zのプロトタイプ?動作確認用のアイアンZでも借りたんですか?』

「いや、エネルガーからマジンガーに至るまでに何機か作った、わりかしマジンガーに近い型だよ。コックピットも試作パイルダーだしな」

――マジンガーは『マジンガーシリーズ』とも言うべき開発系譜を持つ。イレギュラーなカイザー型や類似品なグレンダイザーを除いた系譜としては、以下の通り。

――歩行動作などの確認用のアイアンZ(小型)→エネルガーZ(反応炉搭載試験機)→その幾つかの改良型→マジンガーZ(本来は陸戦型ロボ)→グレートマジンガー(空戦型試作だが、次段階のテストも兼任)→ゴッドマジンガー(全領域対応)

……で、ある。超合金ZはアイアンZの段階から持ち、エネルガーZから光子力反応炉(後に設計変更した光子力エンジンへ変更)が搭載されるなどの順当な進化を辿り、マジンガーZでハードウェア・ソフトウェア面での基本フォーマットが、グレートマジンガーで戦闘面ハードウェアの完成を見たのが分かる。グレートマジンガーの設計そのものは完成時のZを基準に改良したものだが、その優秀性からゴッドのベース機にも選ばれるなどの成果を上げたのは言うまでもない。さて、グレートカイザーの前で起動した無人機は、エネルガーとマジンガーの中間点に位置する機体で、光子力エンジンと超合金Zを持つが、放熱版のデザインが丸味を帯びている、試作ホバーパイルダーの色が白であるなどの差異があり、フェイスデザインもマジンガーZとエネルガーの中間であるなどの『如何にもプロトタイプ』な雰囲気を持っている。


『へぇ。如何にもマジンガーZの試作って感じだな。マジンパワーは積んでるのか?」

「どうだろう。Zの前段階の機体だそうだから、試作型は積んでるかもな」

『まぁ、いい。グレートカイザーの相手には丁度いい。いっちょやるか』

鉄也はマジンガーZとほぼ同じような外見を持つPタイプに向き直り、まずは攻撃を受けてみる。ロケットパンチだ。

『ほう。確かにマジンガーZの試作だな』

ロケットパンチは超合金ニューZαの装甲に弾かれ、試作型Zの手に戻る。鉄也はGカイザーの拳を叩き入れる。すると、素材の性能の差が改めて示された。ゴウンとカイザーの拳が命中すると超合金Zの装甲板はニューZαのパンチの衝撃を受け止められず、当たった箇所が瞬間的に大きく凹んで歪んだ。そして、追撃の右拳による二発目が当たり、両拳が引き抜かれると、その周りが裂けていく。試作Zはまるで、ヘビー級チャンプのボディブローを食らったライト級の新人のように、体を大きく前のめりにし、口に当たるスリット部から潤滑油を吐き出しながら膝をつくという、人間臭いアクションを見せる。これで示されたのは『マジンガーZの超合金Zは、カイザーのニューZαの攻撃には、当りどころが良い条件でも一発しか耐えられない事』だ。

『お、光子力ビームか』

怯んだ試作Zは不意打ちで光子力ビームを撃つが、Gカイザーの胸部はna焦げ目すらつかず、逆にGカイザーに腕を掴まれ、右腕はミシミシと音を立ててフレームからひしゃげ、ロケットパンチの発射を不能にされた。データ収集を行うウリバタケは予想以上にニューZαとZの素材的頑丈さの差が大きいことに驚く。

「うへぇ〜まさか、ここまで差があるたぁ思わなかったぜ。おし、ドラえもんが全体復元液で直すっつーから、派手に壊していいぜ〜」

『よし、カイザーソード!』

Gカイザーの胸部V字型放熱版が変形し、そこから柄が形成され、それを引き抜くと同時に、外れた放熱版が柄より上を構成する各部品を形成する。それはカイザーブレードよりも刀身の厚みがあり、両手で持つことが前提の大きさを持つソードであった。ただし、攻撃力を持たせるために刃が両側にあるので、ロングソードというよりは、バスタードソードに近い特性がある。それを基地のエプロンで見ていたなのはや剛健一、兜甲児、葵豹馬、圭子に車椅子を押してもらって、気分転換に散歩(ウィッチなので治癒は通常の人間より早い)に出ていた黒江らはGカイザーが形成した剣を双眼鏡で確認し、批評し合う。




――基地 エプロンの真ん中辺り

「あれがカイザーになったグレートの剣か。俺達の天空剣みたいな作り方だな」

「俺のファイナルカイザーブレードと似てるけど、言われてみりゃ、確かに殆ど天空剣だ」

「ちょっとデケェな。片手で扱えなさそうな大きさじゃねぇか?」

「たぶん、通常のカイザーブレードも形成できるんだろうが、あれが全力なんだろう。その分、打撃力は高いだろうが、取り回しは良いとは言えないな」

剛健一、葵豹馬、兜甲児の三名はGカイザーのカイザーソードをそう批評し合う。そこへ黒江が一言言う。剣の使い手として言いたいことがあるらしい。

「ちょっといいか?スーパーロボットの剣って、なんで西洋の剣の形状なんだ?前から気になってたんだけど」

「スーパーロボットは、俗にいうところのリアルロボットみたいに移動母艦があるわけじゃないからね。装甲と同じ素材で作ったり、ボルテスのように分子構造ごとたたっ斬る機構があったりするんだが、母艦に戻って予備を受け取れるわけでもないし、スーパーロボットサイズの太刀を造るのは、そう易易とやれるもんじゃないんだ。製造に西洋の剣より手間がかかって現実的じゃない。ほら、歴代でも、バトルフィーバーロボしか使ってないだろ?」

「そいやそうだな。軍刀でバンバン使ってるから気が付かなかったけど、30m級以上のサイズを造るって、意外に大変なんだな」

「俺も弟から聞いた受け売りだが、スーパーロボット級の太刀なんて、おいそれ用意できる代物じゃない。豹馬の言う通り、バトルフィーバーロボの後は太刀を持つロボは現れてないのもその証明だ」

「なるほどなぁ」

製造難度の問題から、人型機動兵器サイズの太刀はこの世界に置いては、バトルフィーバーロボが唯一無二である。コズミック・イラの世界においては一定数が生産されているが、それは稀なケースだ。

「鉄也さんは俺より剣の扱い上手いぜ。見ておいた方が良いぜ」

「マジか?どれどれ」

黒江は甲児に言われ、Gカイザーの方に双眼鏡を向ける。鉄也はカイザーソードを一振りし、動力源に傷をつけないで、上半身と下半身を泣き別れにする。試作ZのAIの制御中枢はそれでも抵抗せんとするが、下半身を統括する部分の損傷により、腕のアームミサイルを撃とうとしたところで機能を停止した。

「うーむ。『名は体を表す』なんていうが、剣の奴……やるなぁ」

黒江は、鉄也が乗機越しに見せた剣技に唸ると同時に仄かなライバル心が芽生えたようだ。車椅子に座り、片腕をギプスで固定された姿ながら、闘志がますます燃え上がっている。圭子はそれを微笑ましい表情で見つめつつ、車椅子を押す。

「そいやケイちゃん、実家に連絡入れた?」

「な、何よいきなり」

「のび太から聞いたら、正月に帰省したらエライコッチャな事になったんだって?」

「う、うん……(のび太ぁぁ〜〜!)」

圭子は赤面しつつも、心の中で言いふらしたと思われるのび太へ怒りの矛先を向けるが、犯人は彼ではなかった。

「やっぱりそうか。なんとなくそういう予感したから、のび太から聞き出したんだけど、やっぱりだったか…って、おお!?」

「……へぇ?」

この一言で堪忍袋の緒が切れたようで、圭子の額にわかりやすい怒りマークが浮かび、ドス黒いオーラが周りに現る。

「甲児ぃ〜〜!!覚悟はいいかしら!?」

「お、おいヒガシ!?怪我人の私まで巻きこ……駄目だこりゃ……」

「へへーんだ、この兜甲児様がそう安安と捕まるかよぉ!」

「待ちなさいコラァ!」

「うわああああ〜!私を巻き込むんじゃねー!?」

「ハハ、ケイちゃん、加減してやれよ〜」

「今回はお前の自業自得だぞ、甲児」

黒江は圭子が自分の車椅子を押しているのも忘れ、猛スピードで甲児を追いかけ回し始めたのに、溜め息を付き、振り落とされないようにするのが精一杯であった。その様子を豹馬と健一は大笑いしながら見物するのであった。(その後に甲児は数時間のチェイスの果てに、圭子にグーパンチ食らったとの事)



――その日の夜、Gカイザーのデータをまとめた後のウリバタケを中心に戦闘機の操縦性の改善計画が練られていた。

「何?戦闘機の操縦系統統一計画?」

「ええ。一式艦上戦闘攻撃機、通称、コスモタイガー(制式採用時の形式規則はブラックタイガー以前と違うのだが、連続性は維持された)は従来の操縦法なため、パイロット育成にはそれなりの時間を要します。移民船団で実用化されたEXギア搭載に改造すれば、操作性が可変戦闘機と統一できますし、訓練機の段階から導入してれば、機種転換訓練が容易になりまっせ」

「ふむ。まずは旧式の単座型と三座型を回そう。テスト結果を見つつ、改装範囲を実戦機に拡大しよう」

「恩に着ます、総長」

――こうして、ウリバタケらが立案した計画は即時採用され、パルチザン仕様の兵器は順次、EXギアが導入されていくのであった。その作業はパルチザン内で急速に行われ、厚木基地の倉庫にあった分を改修する形で、コスモタイガーへの搭載が始められる。医務室では医療用ナノマシンを投与(昔の注射と違い、経口式となっている)され、治癒を促進させる。経過は良好で、あと数日で固定ギプスは外せると言われる。






―― 医務室 

「治癒用ナノマシンは体質によっては、靭帯骨化を起こすが、君の場合は問題なかったようだ。これから定期的に投与していくよ」

「はい」

「ギプスが取れ次第、リハビリテーションは次の段階に移る。剣を扱える様になるには、まだしばらくかかるだろう。それまでは今のメニューをこなすように」

軍医からリハビリテーションのメニューを増やしていくと通達される黒江。軍医が去った後、元の世界では芳佳の医療魔法でどうにかしてきたが、それが使えない状況下では医療技術に頼るしか無いと、体を動かせる範囲で自主的に動かす。

(体を動かさないと、鈍ってしょうがねー。剣を振るえるには、まだ時間かかるだろうし、カンが鈍っちまう。どうしたもんかね)

だいぶ回復はしたが、剣を振るえる程にはなっていない状況には手の打ちようがない黒江。そこである考えに至る。

(そうだ。箒が射手座の聖衣を手に入れたんなら、聖域、即ちアテナとコネクションがあるってことだよな?治ったら行って、私も聖衣を手に入れよう。あの力が得られれば……!ウィッチとしちゃ、自分の限界点は知ってるしな)

この時、黒江はウィッチとしての自分の限界を悟っており、かつての無力感に苛まれたトラウマもあり、自分がもっと上の次元に行くには『小宇宙に目覚める』しかないと決意を固める。彼女はその後、この戦いの最中に聖域へ行き、そこで修行の果てに山羊座の聖衣と、もう一対のエクスカリバーと言える聖剣を引っさげて帰還するが、それはまだ先の話。



――翌日、早速ながらウリバタケの計画の試作品が完成し、お披露目となった。


「どーだ!EXギアを組み込んだ『コスモタイガー改』は!」

「コスモタイガーによく組み込めましたね?」

「操縦系統を改造して組み込んだ。スペースの都合でヘルメットはオミットしたが、それ以外はいけた。まあ、旧式の単座型と三座型だからフルで積むにはスペースが足んなかったんだよ」

「試運転していいですか?」

「おう。やってみるか?智ちゃん」

「試運転って大事ですよ。とりあえずあたしがやってみます」

と、いうことで智子がテストをする事になった『EXギア搭載型コスモタイガー』。一部機能はオミットしたが、EXギアを搭載した事でパイロットのG耐性が大きく増し、設計限界を引き出せる様になった。着こむとパワードスーツの様相を呈するが、連邦軍の使用し始めた戦闘用パワードスーツに比して軽装である。

「行きますよ!」

厚木基地から飛び立つコスモタイガー。現行型ではないので、機首が短いのが外見上の差異だ。

「へえ。訓練で乗った時より加速度の感じ方が楽だわ。宙返りやってみるか」

スピードを上げて、基地上空で宙返りをしてみる。すると、下降状態からの引き起こしの際の体感が以前よりグンと楽になったのが分かる。

「ン、やっぱりEXギアあると楽ね。これなら限界性能をより引き出せるし、機種のコンバートが楽になる」

飛行しつつ、テストの感想を纏める。コスモタイガーは機体設計・制式採用時期がEXギアの実用化前だったので、各基地と艦艇に配備されている機体は新コスモタイガーも含め、旧来型パイロットスーツでの操作が前提の操縦系である。それを廃し、EXギアにすれば色々な面での利点が見込まれる。

「セイヤさんにしては、いい事考えるじゃない。前にエステバリスのバリエーション考えた時は突っ込んだけど」

ウリバタケは冒険心のあまり、前にエステバリスのバリエーションを考案したら、欠陥品だった事がある。その教訓からか、今回は割と常識的なプランにしたのが窺える。智子はそれを回想すると、『やれやれ』と苦笑いしつつ、基地周辺を40分ほど飛び回って帰還したのであった。



――パルチザンは地上においては、日本を最大勢力に、他には荒廃している北米、英国などで次々に勃興し、独自の行動で暗黒星団帝国に対峙していた。アジア地域のパルチザンは日本のそれが他地域のそれを統合する形で勢力を拡大し、この日の内に旧シンガポール、ニューホンコン地域のパルチザンを統合する事が決議された。同時に日本へ空軍部隊が急派される事も伝えられた。

「北米でも決起したか」

「あそこは宛てに出来ますかね」

「わからん。統合戦争で荒廃した上に、最近はデラーズ・フリートのコロニー落としで穀倉地帯がぶっ飛んでいるからな。大昔のような戦力は期待できんだろう。軍管区も地上軍は殆ど配置されてない上に、ティターンズの影響が強かったから、『向こう側』に行ったからな」

藤堂は北米のパルチザンの戦力を悲観視していた。それはウィッチ世界で活動するティターンズ残党の海軍は北米軍管区所属の部隊であった事が判明し、北米軍管区の戦力は彼らの転移後は、アジア地域のおよそ40%しか戦力がない状況下に置かれていたからで、それらが結集したところで、北米地域の奪還は無謀だ。援軍を送れない以上、北米地域は欧州地域の同志に任せるしかない。

「欧州地域の同志がどうにかしてくれるのを祈るしか無い。目下の問題は日本の平定と、バダン帝国、ネオ・ジオンだ。人類同士で争っとる場合でもなかろうに」

パルチザン化した地球連邦軍に取って、ネオ・ジオン残党は『獅子身中の虫』というべき存在であり、ロンド・ベル出身の将兵もフルメンバーではなく、ブライト・ノアはどこかで軟禁されているらしいとの情報もある。その捕虜救出は目下、ヒーローたちが行っているが、バダンの妨害で上手くは行っていない。クライシス帝国亡き後、ネオ生命体、フォッグと呼ばれた集団が襲ってきたが、新たな二人の仮面ライダーが阻止したものの、それらはバダンが操っていたに過ぎず、バダンそのものが本格的に動き出し、遂に仮面ライダー型改造人間の生産に舵を切り、仮面ライダー三号を送り込んできた。これは由々しき問題であり、三号の聞き及ぶ性能はスカイライダーやアマゾンを凌ぐポテンシャルを持ち、ストロンガーと互角の戦闘力を有する事は判明している。


「仮面ライダー三号……恐ろしい奴だ。果たして、栄光の7人ライダーでも止められるか」

三号は本郷と一文字と同等の素養があったある『世界』の男を素体にして生み出された。彼のポテンシャルは相当なもので、ウィッチとして円熟していた黒江のシールドを容易く貫いたほどだという。七人ライダーでも敵うかどうかと、頭を悩ます藤堂だった。


――この日、宇宙戦艦ヤマトから、『敵中間補給基地の攻略に成功セリ』との報告電が入り、パルチザンはアジア地域の平定に乗り出すのであった。また、パルチザンの前に一隻の宇宙戦艦が姿を現す。

「あれは……あ、アルカディア号!?んなバカな!?こんなものまでいたのぉ!?」

最初にその姿を目の辺りにしたなのはは、目玉が飛び出ん勢いで驚き、思わず双眼鏡で二度見してしまう。その戦艦は紛れも無く、なのはが父の書斎で読んだ漫画文庫の主役艦『アルカディア号』に他ならなかった。

「あのドクロマーク、あの後楼……間違いない、艦首形状からして、アルカディア号の髑髏艦首型……!それと……キャプテン・ハーロック……」

アルカディア号の甲板に立つ、『如何にも海賊』という姿をした『10代の青年ではないが、30代中盤以後の壮年でもない、精気と若々しさのバランスが取れている』年代の男が颯爽と立っていた。なのははこの時が彼との初邂逅であった。漫画の中では『ヤマトよりも未来の時代の戦闘艦』であったら、もしそうだとしたら、アルカディア号の戦闘力はヱルトリウムをも凌ぐということになる。

(でも何のために?まさかヤマトに協力するため?でも……束縛を嫌うような?)

なのはは慌てて軍服に着替え、キャプテン・ハーロックを出迎える準備をする。すると、幹部たちが既に準備をしている途中であった。

「まほろばから通告があった。彼が『未来からの協力者』だ」

「それじゃ総長は彼のことを……」

「知っている。宇宙海賊キャプテンハーロック。遥かな未来で、人類の誇りを貫く男だよ」

「……!」

藤堂はすでにアルカディア号とキャプテン・ハーロックの存在を知っているようだった。そして、その場に居合わせたパルチザンの全員が彼に対し、敬礼をして出迎える。ハーロックも若かりし頃は軍人であったため、見事な答礼を見せる。

「我々はあなた方を歓迎する。キャプテン・ハーロック」

「ハーロックだ。我々は我がハーロック家の先祖と宇宙戦艦ヤマトとの義を果たすためにやって来た。従って、あなた方地球連邦軍に敵対する意志はない」

藤堂が代表して挨拶をし、ハーロックも返す。服装からして、凄まじい威圧感だが、どことなく一種の気さくさも併せ持つ不思議な雰囲気を纏う男である。なのははハーロックの持つこの雰囲気に圧倒され、言葉もなかった。また、どことなく古代守に容姿が似ていることから、藤堂はハーロック家と古代家の関係を察する。ハーロックはこの日、自身の持つ軍事技術を提供するために姿を見せたらしく、艦からいくつかのサンプルを提供した。この内の一つがパルサーカノンであり、これは当時の連邦軍の技術では解析はできても、コピーは不可能であったが、メカニズム的意味で革新を引き起こし、当時は机上の空論であった第二世代ショックカノン『プラズマショックカノン』の実用化をハーロックの知る歴史より遥かに早める効果を見せる。ハーロックの狙いはここにあったのだ。



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