ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――パルチザンは、連邦系MSの見本市とも言える様相であった。歴代のガンダムのほとんどが集められ、ガンダムタイプだけで一個中隊が結成できるほどだった。特に、回収されたRX-78系の数も相当で、退役しているガンダムMK-Uを除いた、ほぼ全ての系列機が集まった。

「アナハイムのおかげで、随分と豪華になったわね」

「MK-U以外のが、ほぼ全て集まったからな。レプリカとは言え、GPシリーズの4号機、再構築されたデンドロビウムまであるんだから、豪華すぎる位だ」

そう。ガイアに補給物資として運び込まれた機体はどれもこれもガンダムであり、『軍が混乱している隙に実戦証明しちまえ』という魂胆見え見えだった。特にGP03『デンドロビウム』などはコウ・ウラキ専用MAと言っても過言ではないくらいで、豪華すぎる。アナハイムはこの他にも、ディープストライカーの納入をも確約している。デンドロビウムについては、近代化した本体、長年放置されていた予備のウェポンベイを組み合わせた再生品であり、Iフィールドジェネレータの強度向上などがなされている。ステイメン本体も再生の際に各部アップデートが施されており、一線級の性能を取り戻している代物だ。

「でも、なんでこんなにワンオフモデルが多いわけ?ありえないわよ、こんな量産考えない機体をポンポン」

武子は、ワンオフモデルのあまりの多さに不満を述べる。部隊の機体の均一性を重視するため、連邦軍のガンダムのあまりの多さに不満があるようだ。

「しょうがないわよ、連邦軍のMS戦術の基本は『ガンダム系の超高性能機で戦線に楔を打ち込んで、大量のジム系で制圧する』ってドクトリンなんだから」

圭子はそれをなだめる。MSの戦術ドクトリンは、一年戦争後は、どこの勢力も『エースパイロットに専用の高性能機を与え、そこそこの量産機で戦線を維持する』という考えが支配的で、連邦はガンダム系をフラッグシップ機として確立させたので、そのドクトリンが定着した最初の軍隊だ。武子としては、『一点物の高性能機体を少数造っても意味は無い。戦いは数である』という考えであり、その辺はリベリオン軍に近いが、連邦はチューンナップカーと同じ感覚でガンダム系を製作していた。一年戦争後はパーツや電子製品の規格化も進んでいるので、ガンダム系といえど、実質上は『実用車とチューンドカー程度の手間の差しか運用面や生産面の負担の差は無い』。特にνガンダム系にその傾向が顕著に現れている。

「武子、連邦はマシよ。ジオンなんて、MAをポンポン造ってたんだし」

「あれはあれで、どこが人的資源の節約なんだか……」

そう。連邦軍はガンダムとジムの関係が可変機、小型機の時代となっても不変だが、ジオン軍は「脆弱な量産機多数より、強大な高性能機を少数投入することで戦場の主導権を握る」という考えを持つようになり、更に人的資源を節約する事、MSの実用限界重量を80tクラスまでと定めていたのも重なり、モビルアーマーをポンポン造った。ネオ・ジオンの頃になると、MAでなく、サイコガンダムのような大型MSにシフトし、クインマンサに至るが、それはそれで問題なため、結局は連邦軍同様のドクトリンにたどり着いた。武子としては理解し難いらしい。

「MSは戦車と同列視できないけど、汎用量産機が好まれるのが連邦、重MSやモビルアーマーを好むのがそれ以外の勢力と考えていいわよ。連邦はジェガン以降は装備換装で需要に応える傾向が強いから」

「そう?」

「マルチロール機化って奴よ。一時みたいな支援タイプは兵站の負担になるから、あまり造られなくなったのよ。Gキャノンが今のところは最後ね」

連邦に於いて、支援タイプMSは需要は減っていたが、一応は造られており、装備を取っ替えて汎用機として使えるGキャノンが未だ細々と造られていた。だが、小型機故にペイロードに限界があり、戦間期の設計で、今や旧式のジムキャノンUの方が熟練者に好まれる状況であった。そのため、アナハイムは『より新型のジェスタに支援MSとして運用できるプランがあるから、それを用意するわ』と連絡している。その用意が終わるまでの応急策として、他機種に180ミリキャノン砲を持たせたりしていた。そのため、180ミリ砲弾の消費量は増加していた。

「Gキャノンはイマイチなのよね、火力投射量が」

「しゃーない。入手出来たパックが4連マシンキャノンパックだけなんだから。サナリィ純正のミッションパックは希少だし」

そう。サナリィ純正のミッションパックには、ウェスバー装備があり、サナリィの生産機だけが装備可能なため、連邦軍には希少とされるほどに見ない装備だ。そのため、大多数のアナハイム製のGキャノンには装備不可能なため、Gキャノンの不評に拍車がかかっている。これは双方の工廠でインストールされる中枢部の制御OSの性能差、定格出力がサナリィ製の方が高く設定されていた、アナハイム製造分のパッとしなさは、アナハイムの製造個体のエネルギーライン設計の違いのためである。そのため、同じ機体でも性能差が生じたのが連邦軍の最近の悩みどころで、『小型機分野では、アナハイムはパッとしない』というレッテルが貼られていた。それを払拭せんと、シルエットフォーミュラ計画やらを立ち上げたり、リガ・ミリティアに協力したりの努力を重ねているのが最近のアナハイムである。

「でも、なんでアナハイムは大型機だと、キチガイみたいな化物作れるのに、小型機は駄目なのよ」

「ノウハウの違いかな?小型機だと、ムーバブルフレームが使われるとは限らないから、大型機のノウハウがあまり通じない。小型機は装甲やフレームに電子機器埋め込んだりする設計も多いし」

「そうね。整備班も『整備時間は大型機のほうが短い』なんて言ってたし、ややこしいのね、小型機は」

「ビームシールドもあるから、そのあたりも合って、主流にはならなかったって感じ。利点もあるけど、Vガンダムとかみたいなのは例外だし」

「なるほどね」

大型機と小型機が共存した理由は、小型機のペイロードの限界や、整備費の高騰、インフラ整備の高額化、小型故の『脆さ』が実戦で問題視されたためだ。その為、ジェガンが未だ現役でいるのだ。(その近代化プランも伝わっているが、時間の都合上、まだ地球では行われていない)宇宙では、質量も武器に使うために、大型機が好まれるが、逆に、宇宙軍のお下がりに長年甘んじた陸海軍は小型機配備に積極的である。特に陸海軍は、ジェガンより遥かに古いネモやジムU以前の機体が稼働中であるため、空軍より装備がみっともない有様であった。これはジムVが軍縮の時に多数が処分されていた事と、その後の軍再建で宇宙軍が最優先とされたため、陸海軍は『船と機体があるだけありがたく思え』な政治的状況だったのに起因する。





――この時期、パルチザンが苦労する遠因となった、過去の軍縮。その時期だったリリーナの大統領時代の悪評を流すのが、主に陸海軍閥であったのは、軍縮の矢面に立たされた挙句、必要となったら手のひら返しをした官僚への恨みが凄まじいからだ。その為、リリーナ当人は軍人への福利厚生の廃止に反対した(防衛軍プランの政治ビジョンがあるのと、軍人の気持ちをよく理解していたため)が、官僚の暴走を阻止出来なかったために、いらぬ反感を買ってしまった。その反動により、連邦議会議員は軍部出身の割合が増え、安全保障評議会が戦後に再建された際も、元軍人の割合が6割を超えている。その伸長は仕方がないところもあり、ガトランティス戦役後、『あらゆる意味での、宇宙からの侵略者』の存在が軍備整備の基本となったため、どうしても宇宙軍が花形となるのだ。その為、陸海軍は後回しにされ、宇宙軍に比して、旧式装備が中心だったからだ。

「地上軍の部隊は、空軍以外は『数合わせ』って考えていいかしら?」

「そうね。残党狩りも宇宙軍と空軍でケリがつくから、殆ど数合わせの駒みたいな練度なのよ。優良なのはティターンズに取られていたし」

そう。優良な人材が不足する連邦地上軍。特に空間騎兵隊が設立された後は、再就職の際に、所属を空間騎兵隊に転じた者も多いため、ティターンズが解体され、その保有人材が霧散した後の地上軍は人材不足もいいところであった。宇宙軍へ優先的に人材が回される事もあり、この時期に至っても、『練度不足』な部隊が大半で、何もしない無気力な部隊もいたのが、連邦の地上戦力の現状だ。これは戦闘任務の主体が宇宙軍に移行し、宇宙軍が万能化したこと、植民星の増加で、地球の地上軍の必要が薄れたためだ。その為、パルチザンに参加するような部隊は、『地上軍で優遇措置を受けた精鋭部隊』や『実戦部隊』だけで、駐屯部隊の多くは動いていない。地上軍の体たらくぶりは、藤堂や沖田さえ憤慨するほどなのだ。

「でも、精鋭って言っても、百戦錬磨の宇宙軍と比べると落ちるわ。そこがねぇ」

「宇宙軍は今の主力だもの。ティターンズに地上軍の優良な人材が行っちゃったし、グリプスの後、民間軍事会社に落ちぶれたり、引きぬかれたのも多いわよ」

武子と圭子の二人は、パルチザンで貴重な佐官である。その為、作戦立案の中枢に関わっている。パルチザンの戦意は旺盛だが、平均練度にムラがあるのが現状なのだ。それを考慮すると、ジオン軍残党との交戦は積極的にすべきであると二人は考える。『一回の実戦は、10回の訓練に勝る』。これが二人の持論であり、過去の経験で実証された事だ。

「今後の憂いを断つためにも、ジオンをやるべきね。邪魔しに来られても面倒だし」

「でも、ジオン残党ったって、ピンキリよ?ガチで国土もあって、新鋭機も持ってて、規律も保ってるネオ・ジオンから、一年戦争以来の敗残兵の集まりでしかない半盗賊、一年戦争の頃の組織を維持してる、元大隊や方面軍、小隊単位の奴ら……」

そう。一年戦争からの長い年月は、ジオン残党をすり減らした。特にアクシズが支援しなかった事もあり、デザリウム戦役当時には、方面軍規模の残党は皆無であり、アクシズ残党を入れても、大隊規模までが複数ある程度である。特にアクシズ派はダイクン派と派閥抗争をしており、シャアのネオ・ジオンが兵力再建を行う際の障害となっていた。特に、パイロットの高齢化も残党の問題で、一年戦争時の30代中盤以後の人々は、そろそろ50代に手が届く。一年戦争の少年兵であったアムロでも、現在は20代後半になっているので、当然である。ネオ・ジオンは若手が定期的に志願する環境が整えられているが、他の残党は子を作るか、現地の住人を教育するしか方法がなく、全体的な高齢化も進展していた。そのため、ジオン残党の多くは、やがて消滅する運命にあり、シャアのネオ・ジオンに縋るしかなかった。シャア当人も人材の質の問題が自軍に重くのしかかっているのは自覚しており、旧軍トップエースを自ら連れてきたりして、強化に精を出すなどの苦労をしていた。

「気になるのは、ジオン共和国よ。とうとう過激派がクーデター起こして、デザリウムへ無防備都市宣言して、間接的にネオ・ジオンに協力し始めたじゃない」

「あそこは元々、ジオンの本国だ。このまま共和国が消えて、歴史から取り残された片田舎になるよりは、ジオンの本土として輝いた方がいいと踏んだんだろうな」

「サイド3はなんでそんな選択を……理解できないわ」

「サイド3の連中は忘れられないんだろうな……シャア・アズナブルこと、キャスバル・レム・ダイクンの実父『ジオン・ズム・ダイクン』が起こした熱狂を。私達の世界で言えば、ナポレオンが颯爽登場した時の熱狂みたいな感覚ね。伝統的に『連邦に弾圧された』って意識が強いし、サイド3は」

圭子は、ナポレオンの登場時に例えて、サイド3を覆う空気を説明する。実際は『月の裏側だから、遠すぎる』という事で、連邦政府も支援を満足に出来なかっただけだが、ジオン・ズム・ダイクンという指導者の登場で、一気に被害者意識が拡大。経済危機もあり、サイド3の住人に『連邦討つべし』という機運が拡大。元々、スペースノイドにあった『地球の聖地化』思想をジオニズムにすり替えたギレン・ザビの登場で先鋭化し、ジオン公国として、サイド3は一年戦争を引き起こした。その時の熱狂がサイド3には残っている。それ故、他のスペースコロニー群も距離を置いているのだ。かつてのシーマ・ガラハウの例を挙げてもわかるが、過激化したジオンに失望していた軍人も数多い。それがサイド3で勃興し、今や連邦への反抗の旗印としか機能していないジオンの残光の影の部分と言えた。



――パルチザンは、この時からMS部隊の編成に腐心していた。ガンダム系が増加していくため、ジム系では隊列が組めないからだ。

「ガンダム3号機と4号機はどうするかね、沖田くん」

「ガンダムタイプは特殊です。同じRX系で組むのが望ましいでしょうが、あいにく、ガンダムタイプを扱える者は数は多くありません」

「それが問題なのだ。機体が余ってしょうがない」

そう。パルチザンは高練度兵が比較的多いものの、ガンダムタイプを扱える者となると限られてくるからだ。

「志願者を募ってみますか?」

「シン・アスカという少年が、コズミック・イラでガンダムタイプに乗っていたと証言しているので、訓練はさせている。ただ、しばらくかかる見通しだ」

「と、いうと」

「コズミック・イラの機体は、コックピットのレイアウトが第一世代機と同じ、パネル式なのだよ。我々は全天周囲モニターだろう?」

「そうでしたな」

「一応、FA-78で覚えさせている。生還率も高いからな。当人は文句たらたらだがね」

藤堂はシンをフルアーマーガンダムに乗っけて、訓練をさせていると語る。シンは階級が無い、名目上は義勇軍であるザフトの出身なため、正式な国軍であり、明確な階級が定められている連邦軍に違和感を持ちつつも、なんだかんだで馴染もうと努力していた。



――九州のとある廃都市

九州のとある中規模都市は、一年戦争の際に放棄され、住民が他地域に疎開したまま帰ってこなかったため、一年戦争から数年後には行政府が閉鎖され、事実上の放棄が認定された。そのため、パルチザンはここに前線基地を設け、MS隊の演習場にしていた。パルチザンに志願したシン・アスカは、この地で、数年のブランクを埋めようと努力しているが、操縦感覚の違い、レーダーをあまり宛にしない、M粒子下での戦闘教義は、ザフトのそれと全く異なる事、ビームサーベルの鍔競り合いが当たり前な格闘戦(コズミック・イラではまず無い)に苦労していた。

「クソッ、こいつら信じられないくらいに速いぞ!この世界のナチュラルはバケモンかよっ!」

そう。パイロット練度の違いに加え、OSの性能差がモロに戦力差に繋がるコズミック・イラの戦場では、『熟練したコーディネーターの操縦する機体が、棒立ち同然のナチュラルの操縦する機体を圧倒する』光景が当たり前で、最高性能機を駆っていた彼にとっては、『雑兵の機体は棒立ちして、ライフルの乱射しかしない』という認識があった。だが、ジオンなどの勢力と常に死闘を繰り広げている連邦宇宙軍の将兵は、シンの予想を遥かに超える機敏さを見せていた。

「こいつ、重いっ……本当に推力増強してあんのかよ!?」

宇宙はともかく、地上でのフルアーマーガンダムは『砲撃支援機』としての運用が主である。そのため、スラスターを吹かしても、インパルスやデスティニーのように、すぐに跳躍できるわけではない。シンは格闘寄りの汎用MSに乗り慣れていたため、砲撃支援が主な機体の特性を理解しきれていないのだ。そのため、一年戦争以来の猛者もいる、アグレッサー役に取っては、シンは『よちよち歩きの3歳児』も同然なのだ。

「小僧、地上の跳躍では、安易にスラスターに頼るな。推進剤の無駄だぞ」

スタークジェガンを駆る、アグレッサー役のリーダーから指摘される。彼は一年戦争以来の猛者であり、スラスターの推進剤の節約に定評があり、ロンド・ベルからも一目置かれているベテランだ。一年戦争の際には、大隊長などに配備された『ジム指揮官仕様』、ジム・コマンド、ジム改を、グリプス戦役と第一次ネオ・ジオン戦争の際にはエゥーゴ側でジムUとネモ、ネロトレーナー、第二次ネオ・ジオン戦争以後はスタークジェガンを愛機としている『ジム乗り』の長老の一人である。そのため、シンが癖で、スラスターを使っての高機動を取ろうとしたのを見ぬいたのだ。(デスティニーやインパルスは大気圏内でも、空中飛行が可能であったための癖である)

「何だと!?跳ばなきゃ接敵出来ないでしょう!?」

「そいつには、何のために脚が付いてる!?歩け!走れ!!」

彼はそう叱責する。シンは地上では、空中戦を行うことが常であったため、連邦軍やジオン軍のように、『地に足の着いた』陸戦を行った経験がほぼない。そのため、MSの動かし方が『航空機じみていた』。MSは地上では『戦車と同じ陸戦兵器』であるという常識が薄れている時代の人間であり、『MSは万能兵器』という認識が強いザフト出身のシンには、連邦軍の『他兵科との連携が鍵である、陸戦兵器の一種』との認識を持つ連邦軍の将兵とは隔たりが大きかった。

「高いぞ!下から蜂の巣にされたいか!」

シンは空中に飛び上がったはいいが、彼の模擬弾頭のミサイルポッドの一斉射撃が待ち受ける。シンはそれに構わず、機体を突進させ、サーベルをバカ正直に突き立てようとする。

「このタイミングなら!!」

シンの十八番だが、彼に取っては児戯同然の行為であった。サーベルを突き立てようとするFAガンダムの真下に潜り込み、そこから後方に躍り出、ビームライフルの模擬戦モードの銃口を突き立てる。

「隙だらけだぞ、小僧」

「いつの間に背後に!?く、クソォォ!」

シンはムキになり、銃口を払いのけ、パンチを食らわせようとするが、クロスカウンターのアッパーをくらい、吹き飛ばされる。まるでヘビー級チャンプにノックアウトされるチャレンジャーのように。人間じみたアクションで倒れ伏すフルアーマーガンダム。道路のアスファルトを削りながら、地面に叩きつけられる。その光景を観戦していたエルピー・プルは、シンの動きをこう評した。

「あの子、MSの格闘戦のイロハがわかってないね〜。あれじゃジュニアモビルスーツ作ってる中学生や高校生のレベルだよ?」との酷評ぶりである。ロンド・ベルの熟練者の中でも、トップ20に入るMSパイロット(ZZやZガンダムを苦もなく乗りこなす)である彼女から見た評なので、だいぶ辛口だ。天真爛漫である故、物事をズバズバ言うプルの性分(年外見は幼いが、年齢自体は10代中盤に差し掛かっている)だが、それほどにシンの動きは拙く、『ジュニアモビルスーツ大会の中学生や高校生のレベル』であったのだ。


――シンがパルチザンで四苦八苦しているのとは対照的に、ルナマリア・ホークは一人、日本を彷徨っていた。連邦軍基地から引っ張ってきた、サナリィ設計、アナハイム製造のミノフスキードライブ搭載の小型可変MSの試作機で、パルチザンとの合流を目指すが、最近は不運にも、毎回、何かかしらの邪魔が入るという生活であり、パルチザンがいる九州から離れている、東海地方をフラフラしていた。その為、武装を節約し、連邦軍の駐屯地からせしめてきた『ジム・ライフル』、『クレイバズーカ』を専用武装とは別に携行していた。


「ん、もう!いつもいつも邪魔してくれちゃって!」

この日も、名古屋付近で戦闘を行っており、MS形態でクレイバズーカをぶっ放していた。この頃になると、彼女は自分の機体の詳細も掴んでおり、『大元はガンダムF90Pの発展形に位置するが、アナハイムの傑作機であるZガンダムの小型化が、軍の要求仕様であったので、Z系のフェイスデザインが変更されている機体』であり、その第一次試作機である事、それ故、ロングメガバスターの系統の武装を携行している事、やはりミノフスキードライブの余剰エネルギーがフライングアーマーの主翼を覆うような形で『光の翼』となる事などだ。高性能であるが、データ収集のための試作機であるので、本来は実戦向きではない。それはF90と同じだ。

「データ収集としちゃ上々なんだけど、いい加減にパルチザンと合流しないと、弾薬が……専用部品も多いし!ええい、お前らにかまってる暇はないんだ!」

ルナマリアは、機体をウェーブライダーに変形させる。そのウェーブライダーのフォルムは、アナハイムが久々に完全新規設計で試作中のZプルトニウスと似ており、アナハイム・エレクトロニクスからサナリィへ技術提供があった事を窺わせる。(これは実はシルエットフォーミュラ計画の際のアナハイム・エレクトロニクスのF90Vの設計データの盗用の報復で、ウェーブライダーに変形する可変機のノウハウがないサナリィが、Zプルトニウスの設計を入手したのだ。それが表に出ると、双方が連邦議会に追求されるので、不祥事を避けたい双方が軍の仲立ちで、『技術協力』とした背景がある。さらに言えば、既に採用の内示がある同機の採用劇を、『軍民の癒着』とされないように、競作コンペを行う必要が生じたためでもある)彼女は一気に加速し、パルチザンの『ドウシモトム』というモールス信号のする南の方角に向ける。敵を振り切り、一気に四国に入り……。




――なのはは、定時通信ではやてと通信を交わしていた。ZZの輸送態勢が整い、『第二次試作型フォートレス』も送られてくる事が通達されたからだ。

「ほなわけで、テストしといてや」

「え〜!わざわざミッドの不完全品をテストォ!?メンツ論で作ってるようなモンで実戦に耐えられるのか?」

ミッド動乱で使用した第一次試作機の使い勝手が悪かったため、メンツ論で作った物と酷評しまくる。あからさまに『嫌だ』と、顔に書いてある。


「ミッドは死活問題なんやで?ここ最近は地球の連邦軍や連合軍に主導権を握られてるから、管理世界から『時空管理局不要論』が飛び出おったんや。それで、なんとしても意地を見せないとあかんのや」

「なるほどなぁ。ま、管理局が無くなろうが、連邦軍人のあたしには直接の関係ないけど、恩義はあるしな」

なのはは、ミッド動乱を経たこの頃になると、『管理局には恩義はあるが、忠誠は誓っていない』というスタンスを取っており、管理局を内から変えようとするハラオウン親子や、はやてに協力するものの、根本は地球連邦軍人であるとしている。そのため、ミッドチルダの体制にはドライだ。その辺が時空管理局に染まっていた『なのはB』との決定的な差だ。

「それ、別のなのはちゃん自身が聞いたら泣くで」

「しゃーないだろ?あいつは殆ど、『日系ミッドチルダ人』で、あたしは地球の日本人なんだし」

そう。事故に近いが、地球連邦に属したために、地球への強い帰属意識と地球連邦への愛国心があるなのはAと、青年期にはミッドチルダに移住し、『ミッドチルダ人』の様相を強めたなのはBとは、アイデンティティが根本的に異なるのだ。立ち振舞いも違い、この場にいる彼女自身は、ボサボサの髪を結っただけのポニーテール姿で、はやてとの通信にも、タンクトップ一枚とGパン姿という、女子力が限りなく低い格好で出ている。Bが教導官として、常に身だしなみに気を使っているのと正反対だ。

「うーん。その格好でいうことやないで。これで一児の母かいな……」

呆れるはやて。実際、なのはAの現在の格好はどう見ても、『寮でダラダラする大学生』で、明らかにヴィヴィオの教育に良くない。

「これから、大佐に頼まれたプラモ作るから、切るよ?」

「さっそくこき使われてる〜」

「大佐、プラモとかない時代の人間だしね。ここは私立聖祥大附属高校女子プラモ部の栄光を担ったあたしの出番さ」

学生時代、なのはAはプラモコンテスト荒らしであった。その為、なのはを慕う後輩は多い。中学時代になのはを引き抜いた、当時の生徒会長であった、物好きの先輩は、『我が女子プラモ部の次代を担う逸材』と評価し、別の部に入部を考えていたなのはを引っ張ってきたのだ。それは大成功で、なのはが中高に在学中の女子プラモ部は『黄金時代』を謳歌した。そのため、武子もなのはを『プラモ製作』でこき使っているのだ。(同様に、同校中高の剣道部を全国大会ベスト4に引っ張ったフェイトがある)

「なのはちゃん、結構、部の後輩に慕われとったからなぁ。頑張るんやで」

「サンキュー」

通信を切り、武子に送る『F-2』戦闘機のスケールモデルの制作を始める。レジンパーツもふんだんに用い、台座にギミックを仕込む。


――このプラモが完成し、手渡された時、武子は天にも昇る心地であり、生涯の宝物とした。また、死後には祖母の形見として、孫娘の美奈子が受け継いでおり、西暦2210年の動乱で、美奈子からなのはへ、孫娘としての謝意が述べられたという――



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.