ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――黒江達がやり直した事で、パルチザンは飛躍的に強力化したが、別の問題が起こった。ジオン残党があちらこちらで蜂起したのだ。これは、パルチザンの皆が呆れるニュースだった――

「ジオンの連中は何考えてやがる。自分達もやられるかも知れねーのに」

「奴らに取っちゃ、連邦を叩ければ、それでいいんだよ。他のスペースノイドがどーなろうと知った事ないのがジオニストの狂信的なところさ」

黒江(この日はマリア・カデンツァヴナ・イヴの外見を取っている)は、甲児と会話を交わしていた。黒江はここのところ、外見を事情で変える事が多く、この日は箒からアガートラームを借り受け、それに慣れるための訓練をしていたため、アガートラームのギアを起動させており、外見はマリアそのものであり、試しに調を脅かしてみたが、当然ながら怒られている。(気配で分かったらしい)黒江が外見を変えるのは、親しい友人達は慣れっこであるため、甲児も特段、気にしていない。

「地上の各地に生き残ってた残党は、ティターンズやOZの解体、正規軍の弱体化で野放しになってたから、その隙に再建したんだろう。ティターンズに弾圧された地域は今でも、親ジオンだしな」

「確か、軍縮が解除される時の議事録、随分荒れてたな?」

「自分で自分の首締めるような真似だったし、外務次官も当時は若かったし、『戦争指導を嫌って、投げ出した』ように見えたからなぁ。議事録が凄いことになったのは、その時の罵声の嵐のせいさ」

「外務次官としては有能なんだけどなぁ」

「あの人は官僚になるべきで、国の王になるには理想主義者すぎたとか言われてるよ。平和な時の指導者にはいいけど、戦時の指導者じゃないな。当人も分かってるだろうけど。それに、あれは官僚のせいで、あの人に罪はないさ。鉄也さんにも、昔に言ったけど」

鉄也が反感を持っていた事を知っている甲児は、リリーナ・ピースクラフトが提出した法案は賛否両論であり、それを拡大解釈した当時の無能な平和主義者の官僚達であると解説した。当人としては『首都を非武装地帯』する形で『実父の理想を実現させたい』だけだったのも悲劇の一端だった。ジオンらがピースクラフト政権下の宥和政策にも関わらず、『宥和政策?知るかボケ!!』な勢いで蜂起しまくった事が要因で、ピースクラフト法案はゴップ議長の声明で『審議中の一法案に過ぎないものであって…』と、明確に政府に軍解体の意思はないと説明することで政治的混乱は収まったが、実務面では大混乱であり、この時の混乱がガトランティス戦役に悪影響を及ぼしたため、ここ数年は軍出身の大統領が選ばれている。何事にも反動があるもので、この時代は、平和主義よりも『戦って生き残る事こそが人類の意思の表れ』と尊ばれる戦乱の世と言われるが、ガトランティスの『奴隷か死か』という方針が、地球圏に恐怖を埋めつけたと言える。実際、このデザリアム戦役も『二重銀河崩壊』と、完全に一個の星間国家を吹き飛ばすという結末が待っているためで、未来でのイルミダスやマゾーンが政府の無力化からのアプローチで侵略しているのも分かるほど苛烈である。無論、平和主義者は戦後、古代の罷免を叫んだが、国民がそれを許容したし、ここから更に数年後、古代シュメール人の末裔であるディンギル帝国の暴虐無道の振る舞いが引き金となり、人々の精神に、『たとえっ!泣いてもっ!殴るのをっ!止めないっっ!』、『誇りのために、戦って死ね!そうで無いものは糞だ!!』というゼントラーディにも似た戦闘種族的思考を植え付けてしまうのだ。黒江はその状況を覚えているため、複雑である。

「ん、今日はそれのオリジナルを持ってる子の姿か。気づかなかったぜ」

「気づいてくれよ。髪の色とか思い切り目立つだろーが」

マリアの容姿を取っているため、髪の色はピンク、特徴的なヘアスタイルなど、思い切り目立っている。声色は箒から変えていないが、偶然、マリアと箒の声色が酷似していたため、『変える必要がなかった』からだ。(なお、背丈は元とほぼ同じ170cmになっている)

「怪人二十面相みたいな事になってきたなぁ」

「今んとこは数人分しか試してねぇけどな。美琴、箒、調、それと今、変身してるマリア……」

指を折って数え、考えてみる。少なくとも5、6人には変身している。御坂美琴にも変身経験があるようだ。まだ試してはいないが、風鳴翼とフェイトにも変身できるが、当人たちが怒ると怖そうなので、まだ試してはいない。

「元の容姿が使えなくなったからだっけ?」

「ああ。やり直したら、扶桑最高級に有名になっちまったからな。それを望んではいたんだけど、やりすぎた」

「差がでかいのかい?」

「ああ。正直言って、やりすぎた」

「やりすぎた?」

「いや、その、技能引き継いでたから、チョーシ乗っちゃって」

「三桁撃墜でもやらかしたんだろ?」

「うっ!なんでそれを」

「だいたい想像つくって」

「当時の隊長はスコア公表は控えさせる派だったけど、プロパガンダの必要上で、多少は公表してたんだよ」

今回のやり直しで、黒江達は競うようにスコアを伸ばしたわけだが、記憶を引き継いでいない江藤は三人のスコア発表を渋ったが、赤松の脅しに屈し、公表し始めた。江藤は撃墜王という文化に理解はあったが、当時の三人は若手であったための措置だったが、赤松直々の突撃は予想外であった。北郷部隊が海軍航空本部の決定に反する形で撃墜スコアを発表すると、当時の第一戦隊にも対抗上、発表が指令された。その際、赤松が陸軍側の推定スコアを公表したので、江藤が文句を言ったが、逆にメンチを切られて、泣いて帰ってくる有様だった。その際に、赤松は怒って、必殺技で江藤を恐怖に陥れたらしく、以後、赤松には逆らうことは無くなり、直接の先輩の若松からも『儂に恥をかかすのか、小僧?』と脅された挙句、積尸気冥界波で黄泉平坂に落とされかけたというオマケ付きだった。結果、江藤は臨死体験もあり、二人に逆らうことは無くなり、渋々ながらもスコアを公表した。しかしながら、実際のスコアよりだいぶ低く見積もっており、これはダイ・アナザー・デイ作戦の際の相克に繋がった。(赤松はその際に『だから言っただろう?』と呆れたという)江藤はダイ・アナザー・デイ作戦の後、三人に『普通、お前らが転生してるなんて思わんだろ!?』と涙目で抗議している。赤松と若松のコンビに散々にシメられたらしい(軍の再編の事で、またやられたらしい)

「で、その時の隊長が今、統合幕僚本部会議の参謀なんだけど、生え抜きの陸軍軍人で、軍国主義的な事を口滑らすと不味いから、最長老の手の従卒が監視してる」

「幼年学校卒?」

「ウチの陸軍にはありふれた経歴さ。今じゃマイナス要素だけど。私は小学校から航士に行ったが、割と新しい進路だったしな」

「ああ、第二次大戦中の青年将校たちの蛮行が原因でのステレオタイプだろ?」

「そう。幼年学校出てるだけで出世コースから外れそうになるから、戦々恐々もんだ。最も私は航士、ケイと智子は少年飛行兵からの叩き上げだから、問題ないけど」

やり直しでは、レイブンズで生え抜きの士官なのは黒江だけで、智子と圭子は『叩き上げ』という事になった(陸軍は特務士官制度が無く、叩き上げの下士官が士官になれたため、二人は陸軍在籍時のこの規定で正規将校と扱われた)。海軍が特務士官差別で双方向から叩かれまくり、人事関係者がリンチされたり、メディアスクラムで複数が鬱病に追いやられたために慌てて、軍令承行令を大改正したのを考えれば、陸軍の人事上の混乱は最小限であった。(史実の特攻での人材浪費も叩かれたため、瞬く間に海軍艦艇でフェーズドアレイレーダーまでもが普及したため、今度は索敵系ウィッチの居場所が無くなるという問題が起こったが)

「今回の連邦結成で海軍のウィッチがなぁ。レーダーが一気に21世紀の水準に飛躍したもんだから、ウィッチの索敵系の意味が薄れちまって」

「仕方ない。21世紀の技術の時点でも、水平線の向こうの敵を探知できるし、三次元レーダーなんだ。45年の時代の索敵系魔法じゃ及ばないよ。娘さんたちの時代から、ホークアイとかの機材もらってきたら?あるいはそいつらをフェーズドアレイレーダー持ってる飛行機に乗せるとか」

「採用!」

「え、思いつきなんだけど」

「そういうのがカタイ頭の連中より良かったりすんの!参謀たちに伝えないと」

小躍りして喜ぶ黒江。

「で、今回はジオン残党をどうする?」

「こんな時に攻撃しかけて来てるんだ。慈悲はねぇ。叩き潰すだけだぜ」

「よし、そのまま、艦の進路上にいる残党を潰そう」

「へ?」

「その事を伝えに来たんだよ、実は」

「お、おう……。ん?お前、確かゴッドは持ち出せなかったって」

「カイザーでお釣り来るだろ」

「た、たしかに」

――こうして、甲児がマジンカイザーを駆り、のび太とドラえもんが自家製Xウイング、黒江はそのままアガートラームで、調がシュルシャガナで出る事になった。MS相手にマジンカイザーはオーバーキルなので、調が格納庫でカイザーパイルダーに乗ろうとした甲児に疑問を述べた。

「あの、甲児さん。モビルアーマーが出て来るわけでも無いんだから、マジンカイザーで出るのはオーバーキルじゃ」

「まー、本当はパワーアップしたZとグレートマジンガーでいいくらいなんだが、Zは光子力研究所に置いてきちまったし、グレートマジンガーはGカイザーにしちまったしな」

「量産グレートでいい気もしますけど」

「父さんと教授が一律管理してたから、エンペラーの関係で、動かせたのがカイザー系統だけでさ」

「ブラックグレートは?」

「あれは科学要塞研究所の守りとか言って、ジュンさんが動かすの反対してたから、二つのカイザーで我慢したのさ」

「我慢って領域でもないと思いますよ……皇帝じゃ」

「ダイ・アナザー・デイ作戦の絡みで手隙の状態だったしね。よし、俺が先に出るよ」

艦内でパイルダー・オンし、内蔵式に改造されたカイザースクランダーを展開する。よく見てみると、腕部と脚部が青く塗装されており、パワーアップした際にグレートマジンガーとの繋がりを意識してのカラーに塗り替えられたのがわかる。

『マジーンゴー!』

カイザーはグレートマジンガーより頭一つ分大きいが、クスィーガンダムと同程度であるので、カシオペアのカタパルトは充分に対応していた。マジンカイザーが同程度のサイズになるあたり、クスィーガンダムが如何に大型機であるかがわかる。後を追うように、調が航空機用カタパルトシャトルに掴まってクラウチングから打ち出され、非常Σ式・禁月輪で、一輪バイクの如く発進し、カイザーの腕に乗っかる。これは黒江のように、いつでも飛行能力が付加されるエクスドライブを発動させられるわけではないためだ。そのまま掌に来たところで解除し、カイザーの掌に座る。次いで、黒江がエクスドライブ発動状態で飛行しながら、ドラえもん達のXウイングと編隊を組んで追ってきた。ドラえもんとのび太のフルスクラッチのセンスの渋さに、黒江は嬉々としているようだ。

「せっかくだ、Yウイングも造れよ」

「あれは難しいですね。形的に」

「え、どうしてだよ」

「翼が無いから、大気圏で運用する機体には仕上げにくいんですよ、あの手のデザイン」

「んなら、新三部作のジェダイファイター」

「あれなら行けるかな。かなり小型だけど。資料発掘してみます」

「わかった。で、敵はどんなんだ?」

「基本的にジオン地上軍の残党で、ドップとドダイ、グフとかを持ってる『比較的に装備を維持してる』部隊だそうですよ」

「どうして、そんな規模の部隊が野放しに?」

「ティターンズが崩壊して、OZも解体されたから、地上軍はガタガタでね。軍縮からの建て直しが急務で、ジオン残党狩りどころじゃなかった。だから、本当は宇宙艦隊のロンド・ベルが海兵隊まがいの事をやらされてたわけ」

「ジオンの残党って、10年以上もゲリラみたいな事を?」

「昔の日本軍やドイツ軍がそうだったように、負けた側の軍隊に、負けた後の国での居場所はないのさ。それで多くは地下でゲリラになったり、テロリストになったりしたのさ」

「ゴキブリみたい……」

「当たらずといえども遠からずだよ。奴らはゴキブリみてぇに生き延びてるしね」

ジオン軍の元兵士たちは再編された共和国軍にそのまま雇われた例も存在するが、多くは復員するか、部隊ごと残党となった。ジオン残党軍はそもそも、その時の公国軍残存勢力が各派閥に分かれていったのが始まりである。ネオ・ジオンが最大勢力と言えるが、それとて一枚岩ではなく、ハマーン・カーンが率いていた最盛期のような、旧軍時代を知る人材はもはや少数である。シャアやガトー、シン・マツナガとて、一年戦争での『若手将校』であるため、部隊指揮官級の人材が更に不足している。対して、地上軍残党はティターンズ残党などが傭兵のように加わったため、むしろ人材はこちらのほうが豊富で、連邦海軍の極秘裏の支援(存在意義確保のため)もあり、一定規模は保っていた。その成果により、パルチザンの思わぬ障害となっていた。

「同じ人間同士で戦ってる場合じゃないのに……」

「それは残党を支援してる海軍にも言うべきだよ。あいつら、戦艦と空母持ててる旧エゥーゴ系列の極東管区以外の艦隊とかは皆、内通者かティターンズ派だ。下手すると、海軍とも一戦交えるかも知れないから、味方に銃口向けられる覚悟はしておいたほうがいい」

甲児がいう。同じ連邦軍が互いに銃を向けあう事はグリプス戦役以来、皆が慣れっこである。政府の統制が弱まって久しい時代、軍閥が自分らの思想で動くのが当たり前であり、今や宇宙艦隊のように、シビリアンコントロールが機能している連邦軍のほうが珍しい。連邦軍の規律は宇宙軍と空軍を頂点に下がるだけであり、今や連邦軍同士の同士討ちすらも珍しい事でもない。パルチザンはその狭間で苦しんでおり、空軍の補助で戦っているも同然で、今や連邦の勢力は、元エゥーゴ系の空軍と宇宙軍、海軍のパルチザンと、ジオン残党と結託したティターンズ系の大西洋艦隊、ティターンズ系部隊だった北米方面、仏の陸軍とに完全に分裂しており、グリプス戦役の再来であった。その事からも、『憂いは完全に絶たねばならない』。

「軍閥紛争、ですか」

「ああ。ティターンズとエゥーゴの軍閥紛争の名残りが残っててね、連邦も一枚岩じゃねぇんだ」

「私の元いた世界より複雑です。同じ軍隊なのに」

「元ティターンズの連中は、俺らエゥーゴ閥が連邦の中枢を支配するのが気に入らないのさ」

甲児の言う通り、エゥーゴ閥の伸長が気に入らないティターンズ系部隊は、自らが討つべき対象のジオン軍残党と結託し、連邦内の政権交代をもくろんでいるのだ。なんとも本末転倒感が否めないが、ティターンズは賊軍であり、その立場でジオンに与するあたり、もはや当初の思想は忘れ去られている証であった。ジオンとティターンズはもはや、思惑を同じくする者同士であり、連邦主流派の走狗であったはずのティターンズが反連邦の急先鋒という皮肉たっぷりの構図は、グリプス戦役後の連邦の縮図だった。しかし、エゥーゴとて、中心人物たるクワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)が離脱し、もはや形骸化していたため、今や連邦を支えているのは藤堂やレビル、ジョン・コーウェンなど、一年戦争時のレビル派の中枢にいた将校らとそのシンパ、、政治的にはゴップ派であり、エゥーゴ派というよりは『復権したレビル派』である。従って、エゥーゴに共鳴していたレビル派の生き残り達が、エゥーゴ系将校を取り込み、帰還したレビルを中心にして息を吹き替えしたのが今の『新・レビル派』である。主流派のゴップ派と結託しているため、彼らが連邦の中枢を支配していると言える。

「お、おいでなすった。地上にはマゼラアタック、グフ、陸戦高機動ザク。レアだな。空はフライトタイプグフに、ドップ。まだ動くのあったのか」

「どうやって飛ばせてるんですか、あれ」

「ああ、アレはジェットエンジンの推力で強引に飛ばしてるだけで、航続距離は短いよ。あれ、支援がなきゃまともに稼働させられないはずだけどな」

「よし、各自散開、各個に敵を叩くぞ!」

「了解!」

立ち塞がるジオン残党は存外、装備が恵まれていた。調はこの時、自分の目では初めて、ジオン系MSを目の当たりにしたのだが、ビルの何階分にもなる、一つ目の巨人はド迫力だった。ジオン軍MSは、デザイン面では連邦系より『工業機械』然とした無骨さがあり、マニアに人気が高い。武装も一年戦争の機種は実弾主体であり、そこも迫力を醸し出していた。それを支援するマゼラアタックは奇抜だが、きちんとマゼラアタックに随伴する歩兵もおり、地上でのMS運用は戦車とそれほど変わらない。

「シュルシャガナは人間相手にはエグいから、マゼラアタックとかを狙おう。兵隊は師匠からの格闘戦スキルで……!」

シュルシャガナは異形の敵に使う分には問題はないが、人間相手だと『バグ』と同類の兵器になるので、黒江がそうであるように、その記憶が共有されているため、格闘戦で鎮圧する選択肢をとった。元々は格闘戦の素人である彼女だが、黒江と記憶と経験を共有するようになったため、黒江が用いるスキルの一つ『赤龍拳』(元は、黒江がシンフォギア世界への転移直前まで、その使い手であった、五星戦隊ダイレンジャーのリュウレンジャー="天火星" 亮の営む中華料理店でバイトしながら習っていた拳法)を使った。黒江がシンフォギア世界で、立花響相手に真っ向から優位に立てたのも、中国拳法の動きを知っていたおかげでもあるわけだ。師の黒江が様々な方面に手を出す事は知っており、その経験が共有されている事により、本来は格闘戦が苦手な彼女に黒江の鍛え上げたスキルが高精度でもたらされた。また、背丈も元から5cmほど伸びた事がプラスとなり、ジオン残党兵士の攻撃も物ともしない強さを与えていた。

「師匠がくれた、この力で……私は生き抜いてみせる!」

156cmの彼女は比較的大柄のジオン残党兵士から見れば、子供にしか見えないが、黒江と共有したスキルが有効に働き、立ち回りを演じてみせた。黒江はカンフー系統を鍛えたため、それを受け継いだ彼女も必然的にその系統となる。黒江は映画でお馴染みの怪鳥音も、遊び心で再現するが、流石に、調にはそこまでの勇気はない。とはいうものの、ギアの円柱形の脚部で蹴ったりする上、シンフォギアが身体能力を強化しているため、映画のごとく兵士は吹き飛ぶ。しかし、どうにも威力がでないので、恥ずかしいが、黒江がやったように怪鳥音を叫んでみる。

「ホアチャ〜〜!」

と、若干気恥ずかしさがあるが、シャウトした事で肉体のリミッターが解除されたか、威力が記憶の通りになった。

「え!?威力があがったぁ!?叫ぶと威力出るのかなあ?」

困惑しつつも、とにかく怪鳥音を叫びながら、戦ってみる。歌ってないので、シンフォギアの恩恵は殆どないが、逆に小宇宙の恩恵は働き、黒江が行った記憶の通りの威力が出た。その心象がシンフォギアにも影響を与えたか、召喚しようとしたアームドギアはなんと、ヌンチャクになって出現した。

「こうなったらヤケクソだぁ〜!あちょ〜〜!」

ヌンチャクで兵士を手当たり次第にぶちのめす。黒江の記憶が作用したらしく、顔面に叩き込み、相手のヘルメットにヒビが入るほどのパワーでぶん殴っている。意外と、やる時は容赦ないようだった。


――こちらはマジンカイザー。MSの火力が集中されるが、マジンガーZERO以外に破壊できる者がいない超合金NZαに、MSの火力が通るはずは無く、先頭にいたザクが爆炎から出現したカイザーに捕まれ、持ち上げられる。ザクはスラスターを吹かして抵抗するが、カイザーのパワーから逃れられるはずはなく、蚊を払う感覚でぶん投げられ、ビルに叩き込まれて擱座した。グフがヒートサーベルを片手に突進してくるが、これは『ダイナマイトタックル』で対処した。

『ダイナマイトタックル!!』

マジンカイザーは単なるカラーリング変更に留まらない改造を受け、地味なスペック向上を果たしている。これにより、ダイナマイトタックルという体当たり技を可能とした。大馬力と装甲にモノを言わせる体当たり戦術だが、スラスターを吹かしたMS程度は、たとえガンダムタイプであろうとも容易に弾き飛ばせる。その証明は次の瞬間にされた。

『へ、マジンカイザーにパワーで勝とうなんざ、100万年早いんだよ!』

グフが弾き飛ばされ、態勢を崩した瞬間にギガントミサイルが叩き込まれ、グフは爆散する。次いで、冷凍ビームがザクの高機動タイプを絶対零度まで冷凍し、パイロットごと冷凍しながら、更に敵の中心にまで突っ込んだ。

『へっ、どんどん来やがれ!』

スーパーロボットは固定兵装の時点で地形を変える威力があるため、あまり手持ち武器は持たない。だが、マジンカイザーはカイザーブレードを持つ。両肩から召喚するそれは『ショルダースライサー』とも言い、黒江もエンペラーブレートより間合いを取りたい時に使用し、風鳴翼との交戦時、天羽々斬とカチあった際には、天羽々斬をたやすく弾き飛ばし、超合金製の面目躍如ぶりを見せている。そのオリジナルを持つカイザーの威力は凄まじく、振るうだけで剣風が巻き起こり、剣風に飲み込まれたグフフライトタイプはカマイタチのように切り刻まれ、バラバラになって破壊される。

『剣は俺の性に合わねーんだけど、これが、グレートから受け継いだ力だ!』

カイザーは他の魔神を統べるための存在として生まれ、従来のマジンガーの全ての要素を合わせ持つ。剣と雷という、グレートマジンガー由来の要素を備えているのも当然である。ショルダースライサーを天に掲げて招雷し、そこから一撃を食らわす。トールハンマーブレイカーだ。今回は周囲に電撃を広げ、広範囲を焼き払う変則的な使用であった。

『トールハンマァァァブレイカァァァ!!』

この技は黒江と智子が好むため、ウィッチ世界では、二人の技として有名となった。特に、ヒーロー大好きっ子の黒江は都合、二度目のやり直しの際の扶桑海事変では、『力を隠す意味が無くなった』と公言して好き勝手やりまくってスコアをこれでもかと挙げまくり、未確認スコアを増やしまくって、江藤を更に困惑させ、江藤が赤松にカチこまれる原因を作ったなど、正にやりたい放題であった。その記憶が共有されている調は、トールハンマーブレイカーのオリジナルが『マジンカイザーの必殺技』であると理解し、些かズレているが、『綺麗……』との感想を述べたのだった。



――その黒江は、銀碗・アガートラームをマリアの姿で行使し、空中戦を繰り広げていた。この容姿は切歌と別れ別れになり、ホームシック気味の調を癒やすには最適であったため、二日ほど姿を維持している。その為、シュルシャガナではなく、アガートラームを用いていた。ドラえもんらのサポートに回っており、ドップ編隊をブースターで加速をつけた長剣で叩き斬る一撃離脱戦法を用いている――

「あらよっと!」

長剣でドップをまっ二つに叩き斬り、次の機に狙いをつける。黒江は聖闘士候補生でしかない調と異なり、黄金聖闘士である都合、飛行能力があるエクスドライブの状態を発動している上、任意でギアを作り変えられるため、このようなスラスターへの一撃離脱戦法が可能となっている。元々がVF乗りでもあるため、ミサイルの避け方は、VFでの『バルキリーダンス』をそのまま再現したものである。これはシンフォギア世界での戦いの際、雪音クリスとの二度目の対戦時に初披露し、クリスを驚愕させている。クリスが魔法少女事変で『ミサイルの馬乗り』を行ったのは、対戦時に黒江にミサイルの馬乗りを披露された事が由来となった。

「さて、ドップを撃墜して、スコアの足しにするか!サンダーブレーク!!」

黒江はグレートマジンガー系統の技を好む傾向があり、マリアの姿になっていてもこれは同じで、サンダーブレークを使った。サンダーブレークは電撃を放つ技では初歩に近く、これの発展がトールハンマーブレイカーであり、ゴッドサンダーであり、サンダーボルトブレイカーである。黒江はそれらを再現できる才覚を持っており、シンフォギア世界で第三勢力として振る舞っていた際には、『雷を思いのままに操れる少女』と恐れられたりしており、現在では黒江の変身とオリジナルとを見分けるポイントともなっていた。

「のび太、横からくるぞ!」

「おっと!」

のび太は幾度かの冒険の成果で、乗り物スキルもかなりのモノになっており、小学生の時点でもかなりの操縦技能がある。フルスクラッチのXウイングを横滑りさせつつ、高機動バーニアで急激に方向転換することで攻撃を避け、絶好の位置を取り、レーザー砲を斉射し、落とす。

「のび太!落とさなくて良い!攻撃されない位置を維持しろ! 致命傷は要らんから弾幕を張れ!」

「了解!」

「のび太、お前、普段は運動ダメだけど、こういう時は強いんだよなぁ」

「なーに、色々経験してますから」

「鬼岩城にピシア、ガルタイト工業、コックローチ団、か?……ったく、お前、修羅場潜り過ぎだぞ。私らだって、修羅場って言える戦いなんて、一度目の時は、そうはなかったんだぞ?」

「何せ、普通に妖怪とガチンコで戦ったりしたんで、慣れっこでして」

「チェッ!絶対追いついてやるかんなー!」

黒江はマリアの外見を取っていると、残念美人と言えるほど、コミカルな面を多く見せる。箒の姿の時よりもそれが多めなのは、マリアが素では残念美人であるからで、そこも忠実に再現するため、調が『安心する』のに繋がっていたりする。(最も、そのマリア当人は『私は残念美人じゃないわよー!』と文句を言っていたりするが)黒江は怪人二十面相の如く、容姿を局面によって使い分けてゆくが、頻度が高いのは調、箒、マリア、御坂美琴の4人の容姿で、比較的、素の自分にパーソナリティが近い人物を好む傾向がある。これは、黒江は演技力が高いので、その人物になりきれる。しかし、自己パーソナリティを保つ必要があるのも事実なため、素に近い性格の人物を選ぶ事も重要になるからで、圭子より一段上の演技力を有するが故の苦労という奴だ。最も、変身していても、転生後の象徴である『聖剣』と『雷の拳』はきっちり使っているので、再現度を低くすればいい話でもあったが。母親の英才教育の名残りか、役はきっちりやらないといけないという意識が根底にあるらしく、なんだかんだで女優の素養がある証でもあった。



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