ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――デザリアム戦役はジオン残党の蜂起により、第三次ネオ・ジオン戦争の様相をも呈してきていた。そのため、パルチザンはネオ・ジオンやジオン公国残党軍とも刃を交える羽目となっていた――

――格納庫――

「おーし、Z部隊を出すぞ!今回はジオン公国の残党だから実体弾をなるべく使っていけ!」

格納庫では、パルチザンの有するMSの中では高級機に属する『ZPlus』、『Zプルトニウス』、『Zガンダム』、『リゼル』が続々と発艦してゆく。可変MSの操縦技能がある者が動員されたため、黒江、その技能を受け継いだ形になる調が参陣していた。

『なんで調が出れて、私は出れないのデスか!?』

『しゃーねーだろ!お前、モビルスーツの操縦技能ねーだろ!調は私との同調で操縦技能あるんだよ』

『そうなの。私は師匠との同調で技能を受け継いだって言ったでしょう?それ、機動兵器の技能も入ってるんだ』

『なぁああッ!?』

リゼルC型に乗り込む調。ギアをパイロットスーツ代わりにしているスタイルは、師から受け継いだらしい。乗機がリゼルとなったのは、継承した技能の発揮率がまだ50%に満たないためだ。それでも廉価機であるジェガンやリゼルであれば乗りこなせる辺りは、大本になる黒江の技能の高さの証明でもあった。

『私が出れればいいんだけど、訓練未了だから……』

『な〜に、子供のお守りは本業で慣れてる』

シンフォギア装者の中では、黒江から操縦技能を継承している調、元々、ヘリなどを操縦できたマリアが機動兵器の操縦訓練を受けており、急速錬成の途上だった。(なお、今後に加わるであろう他の装者らについては未定である)これは人員が機動兵器に比して不足気味な状況での措置でもあった。

『意外ね。貴方はダブルゼータ(重装改型)を好むかと思ったのだけど』

『重装型は装甲自体はあるんだが、応力的に脆い箇所があってな。それでフルアーマーでの運用が推奨されるようになったんだ。それに、地上での運動戦はゼータタイプのほうが身軽に動ける。火力もジムタイプの数倍だしな』

『応力的に?』

『コアファイターがある胸のところとかが構造的に脆くてな。Sガンダムを使いたいが、あれ使うと、整備班が死ぬしな』

『なるほど、そういう問題もあるのね』

『そういうことだ。行ってくる』

兵器は整備に要するマンパワーに違いがある。その違いを低減させるべく、Zプルトニウスは機体を頑丈にしたり、変形を単純化している。リゼルと似た方向性だが、リゼルは量産を重視しているが、プルトニウスは新規設計箇所が多いため、高級機に分類される。黒江は前史以来、プルトニウスを好んでいるが、それはZ系のネガである『脆弱性』が解消されているからである。

「本当、これを見ると、別の世界に来たというのを実感するわね」

「普通に飛行形態と人型形態を使い分けできるロボットが量産されてて、それを戦争に用いるのが当たり前……なんだかアニメみたいデス」

『アニメじゃなくて、本当のことだよ、ここじゃね』

「ゲリラ戦に使えるとは思えないデスよ、その機体」

『俺の技量なら、ゲリラ戦でも対応できるからね。コロニーでジャンク屋してたから』

『今回』は宇宙部隊への合流メンバーを送るのが遅延していた。ジオンの蜂起が大規模化したため、その予定が直前で先延ばしされたのだ。そのため、ジュドーはまだ地上にいる。

「ジオンって、元になった国がとっくに滅んでるのになんで抵抗を続けてるデスか?」

「俺がガンダムに初めて乗った頃から、もうあいつらは残党だったよ。ジオンってもの自体が反連邦の旗印みたいなもんに変わって来てるから、生粋のジオン軍人はそれまでの内輪もめで減ってるよ」

ジオン残党でも、本来のジオン軍人はそれまでの内輪揉めで数を減らしており、反連邦政府運動の旗印として名を用いているだけの集団が多い。特に、地上軍はティターンズ崩れがネオ・ジオンに加わったりしているので、生粋のジオン軍人は実のところ五割以下である。

『んじゃ、俺も行ってくる。重装改型は宇宙に送ったから、アムロさんの予備機借りてるんだ』

Zに乗った者は、Z系のバランスの良さを褒め称える事が多い。リ・ガズィがダメだったのは、中途半端かつ、変形機構がないからである。それでも、BWSを諦めない高官の一声で少数生産は続いている。ゲリラ戦ではBWSはもったいないため、予備機として寝かされたままだ。

『プロトはドッカン系出力特性だけど、プラスからはリニアで足にエンジンだから地上での安定はいいんだ。プロトに乗ってるの、今はアムロさんとカミーユさんくらいだよ。あの二人ならフィールド選ばないで性能出せるしね』

アムロとカミーユはZの特性を最も知りぬき、カミーユに至っては設計に噛んでいる。Zの性能を最も引き出せるのはこの二人だ。



――ジュドーを送りだした二人は自室に戻り、観測機のEWAC(イーワック)ネロと一式艦攻改・複座艦上偵察機(コスモタイガー改造の偵察機)から送られてくる映像をそれぞれ見る。ミノフスキー粒子散布下での電子戦闘が目的の同機からのデータなので、映像はクリアである。ジオン残党のMSは主にザクJ型やF2型とドム系だが、ハイザックとマラサイも混じっていた――。


戦闘は上空からの一撃離脱を行うZ部隊に対応しようとするジオン残党部隊の苦闘から始まった。ジオン軍は戦闘機の対処は慣れていたが、全体として可変機の三次元的な戦闘のテンポに翻弄されている。彼らの多くは陸上でのMSは『陸戦兵器』という考えを持っており、可変機という『空に逃れて立て直せる』選択肢を持つ新世代機には逆に戸惑っていた。黒江はプルトニウスの機体特性をガン無視した『ドッグファイト』を好んでおり、アムロからよく叱られている。だが、格闘戦に対応できるだけの強度があるため、あながち間違った運用でもない。黒江は肉弾戦を行い、ザクUJ型のマシンガンを蹴って、武器を落とさせる。続いて、頭部を掴んで持ち上げ、各部動力パイプを引きちぎった。

「馴らしも終わったし、関節も強化してもらったから絶好調だぜ!」

黒江が機体越しに見えるところの動力パイプをあらかた引きちぎったザクは動力伝達に支障を来たしたか、機体の動きがおかしくなった。動きが緩慢になったのだ。予備機構はあるが、それだけでは各部の必要動力を確保出来ず、やがて、沈黙した。続いて、腕部ビーム・ガンを撃ち、援護に来た他のザクを撃ち抜いて、破壊する。プルトニウスのジェネレーター出力は高い。ビームフィールドを防御用に展開するため、プロトより数段強力なものを積んでおり、アナハイムの謳い文句では『数倍』である。重装改型並の高出力である上、内部機構も当時の最新のものであるので、見かけによらない高トルクを持つ。そのため、黒江の荒っぽい肉弾戦を再現可能である。ザク程度では相手にならない強さを見せる。次いで、ドムと斬り結ぶが、ドムのヒート・サーベルはヒートソードほど派手な斬り結びには向いていない。それが仇となり、サーベルを払われて肉厚な胴体を串刺しにされる者、首を取られて、モニターが消えた事で操縦を誤り、廃墟となったビルに突っ込んで擱座する者が出てきた。まさにヒロイックな活躍ぶりである。

「へっ、私と斬り合いしてーんなら、グフ・カスタムかイフリートでも持って来い!」

黒江の格闘センスは元々の技能もあり、ジオン系MSを寄せ付けない。MSでプルトニウスを好むのは、機体の耐久性に惚れ込んだからで、鍾馗で名声を確かなものにしつつも、本質的にはドッグファイターである。機体の名が冥王星に由来するのと、その情け容赦なさから、『連邦の白き冥王』という諢名をジオン側からつけられる事になるのだった。




――今回が機動兵器での初陣となった調。師から引き継いだ技能を開花させるべく、黒江に同行していた。自然とリゼルのOSに黒江と同じプログラムを入れているあたり、技能が引き継がれたのが分かる。ただし、調は元々、シュルシャガナでローラーでの高機動戦闘を主体にしていた名残りで、射撃寄りだった――

「リゼルのライフルはゼータと同じ……。なら、ジオンの大抵の機体は一撃で抜けるっ!」

グレネードをばらまきつつ、ロングライフルを撃つ。黒江と違い、スラスターを使っての疑似的なホバー移動を駆使し、シュルシャガナで用いていた戦法に近い動きを見せる。近接攻撃はロングサーベルだった。銃剣戦闘になるが、黒江からそのコツを引き継いでいた幸運もあり、ザク、ドムを問わず倒していく。

「ハァッ!」

プルトニウスと違い、リゼルのライフルにはZと同じロングサーベル機構があり、格闘ではそちらのギロチンバーストが推奨されている。ドムに突き刺し、動力伝達機構を破壊して串刺しにする。


――リゼルは『メタスになれるジェガン程度でしかない』と揶揄されるが、開発目標は『安価な可変MS』であり、実質的にはZUの量産改良型である。そのため、一応はジェガンやギラ・ドーガよりは高性能に位置する。その出自故、調が求める動きを再現可能だった。ジオン側からは、リゼルはメタスの後継機と見られていたため、『動きのいいメタスもどきがいるぞ!』と驚かれていた。これはリゼルの風体がメタスに似ていた事、頭部がジム系の意匠であった事が原因だ。ただし、腰回りがZの変形であるので、Zフレームを使う機体とは認識されてもいるが。

「マラサイ!?ティターンズ崩れが持ち込んだの?全く、ティターンズ崩れって節操ないんだから!」

ティターンズの敗残兵はその多くがネオ・ジオンに流れていった。ウィッチ世界に流れた者達に次ぐ規模だ。エゥーゴに敗れたからというだけでテロリストに堕ちたり、自分の組織の討つべき対象であったはずのネオ・ジオンに迎合した者が地球圏にいるティターンズ兵のその6割以上を占める。黒江が、自分が未来世界にいくきっかけとなったティターンズ崩れに対し、灼熱の怒りを抱いているのが影響している調も、漠然とだが高揚感を感じ、操縦桿を握る力を強める。

「師匠の運命を狂わせたのが貴方達、ティターンズの敗残兵なら、私は……貴方達を倒す!仮に元々は連邦の兵だったのなら……誇りくらいは持って生きろぉ!!」

叫びながら操縦桿を押し込み、袈裟懸けにロングサーベルを振り下ろし、マラサイを斬り裂く。黒江と同じ、踏み込みのいい一撃だった。その様子はネロとタイガーアイからの映像と音声を通して、マリアと切歌も目撃しており、調かしらぬ『熱い感情のこもった』叫びも、二人を驚かせた。黒江との感応が、調にそれまでにない『人間性』を与えている。黒江を師匠と呼び、ヴィヴィオやのび太に敬愛を見せる。そして、偽善を嫌ったはずの彼女が『仁や義』をティターンズ敗残兵に説くようになるなど、かつての彼女自身とは明確に違う行動と言動を見せている。特に『誇り』を説くのは、黒江とオリヴィエからの影響だった。古代ベルカで聖王としての使命と誇りに殉じたオリヴィエ、前史と今回の二回に渡り、自分に成り代わり、世界を守った黒江達への恩義。王、軍人、聖闘士。それぞれに誇りを持っていた者達と感応した事で、明確に『戦士としての誇り』を持つようになった。小宇宙への完全な覚醒でギアを纏う制限時間が無くなったのもプラスとなったのかもしれない。

「これで……終わりッ!」

次いで、ヒート・ホーク改を振りかざしてきたハイザックの胴体にロングサーベルを突き刺す。コックピットは外している。黒江もこれには関心したとか。

――他の残存する機体は撤退を始める。アムロやジュドー、それに黒江と調の強さに面食らったらしい。この時、調は五機のスコアを記録し、黒江は六機を撃墜し、順当にスコアを加算した。部隊全体では20機を記録した。残党としてはかなりの規模であったが、それを物ともしないというところに、パルチザンの強さがあった。パルチザンは数は少ないが、人員は一騎当千を体現する戦闘であった。しかしながら、パルチザンはパイロットの絶対数不足により、どちらかと言えば、必要上、大艦巨砲主義を取らざるを得ない状況であり、これは過去における日本海軍が、旧式化した戦艦群の代替に大和型戦艦を欲しがった状況と似ており、一騎当千の実力を持つラ號を欲していたのもそれが理由だった。パイロットにはどんな戦場でも帰還する『一騎当千』を要求する。この時は訓練途上のために参加できなかった一人に、この世界に移住した形となり、パルチザンに加わっていたシン・アスカがいた。彼は訓練途上のため、戦闘には参加できずじまいであった。シンはコズミック・イラ73の時点では、間違いなくトップエリートかつトップエースの一人だが、キラ・ヤマトとアスラン・ザラら歴戦のエースに比べると『格落ち』感は否めず、更に乗機の性能頼りなところがあったため、連邦軍のMSパイロット達からはヒヨッコ扱いであった。また、シンは『原子力』よりもパワーが格段に有る核融合炉搭載機のハイパワー、部分的にもパネル式ではない表示のアビオニクス(全天周モニターなど)に戸惑っており、それも本来のポテンシャル発揮を阻害していた。格納庫でのシミュレータ訓練に苦戦している少年を見かけたら、彼と思っていいだろう。コズミック・イラでトップ3級のエースパイロットだったシンでさえ、訓練途上段階で出撃させないあたり、パルチザンの用兵思想が伺えた――――







――帰還後――

「まさか、綾香からそんな技能も受け継いでいたとはね、調」

「エクスカリバーも発現したから、殆ど同調に近いかも」

「でも、ギアを対Gスーツ代わりにするのはもったいないような?」

「いざって言う時に役に立つから。それに、制限時間が無くなったからには使わないと」

「う〜。修行の途中だから、私達はギアでの戦闘にも制限時間があるし……」

デザリアム戦役の段階では、切歌もマリアも、聖闘士世界で魔鈴にシゴカれていたが、その途中段階であるので、覚醒には至っていない。だが、適合率は確実に上がっており、短時間であれば、LINKER無しで戦闘行為を行える程度にまでなっている。シゴキは相当なモノで、魔鈴の『イーグルトゥフラッシュ』でKOされることは日常茶飯事となっている。ギアを纏ったところで、マッハ5を超える魔鈴の動きに当初、対応は困難であったため、マリアも切歌も一瞬で倒されるのを繰り返した。最近は青銅二軍相手であれば、なんとか戦える程度にまで力をつけ、青銅聖闘士級に到達はしつつある。

「私と師匠、それに箒さんやフェイトさんは例外中の例外みたいなものだから、そこのところは、ね?」

「う〜、日常でギアを纏う訓練を課されるのは恥ずかしいかもデス…」

「いや、要は慣れだ」

「箒……。そのギア、コピーしたアガートラームね?」

「綾香さんに渡されてな。ISがややこしいことになったから、使わせてもらっている。私もセブンセンシズに目覚めているから、普段着と感覚は変わらん」

「セブンセンシズ……、第7の感覚。それに目覚めると、ギアの存在を超えるというの?」

「セブンセンシズへの覚醒は神の力に近づく事でもあるからな」

箒は聖闘士としては二人の先輩になるため、二人へは対等の口の聞き方であった。礼儀にうるさい箒だが、聖闘士としては先輩であるため、珍しくタメ口を聞いている。

「二人共、まさかその姿で生活を?」

「この世界、学園都市とかドラえもん君のおかげで耐性があるから、すんなりと」

「あの時、調がギア姿だったのを不思議に思ってなかったのか?切歌」

「その声、どっちがどっちだかわからなくなるデス!」

「仕方がないわ、切歌。私と箒は同一の魂から転生した存在、世界を隔てた双生児のようなものだもの。声が似てて当たり前だわ」

「ああ。調が出木杉君に推論してもらってから、ドラえもんが調べて分かった事だが。私達は同じ過去生を持っている。だからこそ、私が初見でアガートラームを起動できたのだろう」

「でしょうね」

「それは置いといて。調、箒。まさかその格好で生活を?」

「修行の一環でな。ISよりはマシだろう?専用の水着紛いのアンダースーツ要らないんだから。あの時はすぐにお前を聖域に送り出したから、あまり見せられなかったが、風呂と用を足す時以外は展開していたんだ」

「うん。買い物や食事しに行った事あるんだ……本当に」

「なんデスと!?」

「うむ。そこらの喫茶店やファミリーレストランであれば問題ないからな。それにスーパーなんかは、パワードスーツ用に通路広くしましたーなんて張り紙出すしなぁ」

この世界では、日本連邦が結成されたなどの理由で、あらかたの事に耐性が出来上がっているため、ISが飛ぼうが、シンフォギア姿で買い物に行ったり、レストランで食事しようが全く問題にならない。むしろ、何故普通に応対するのか、と気になったほどだ。

「なッ!?ど、どういうこと?」

「こちらのほうが聞きたいくらいだったぞ。まぁ、仮面ライダーやスーパー戦隊達が普通に変身した姿で孤児院訪問とかしてる世界だから、耐性があるかもしれんな」

「ですね」

箒と調の二人は同意し、互いに頷く。ある意味ではシンフォギアの無駄使いだが、きちんと街の治安に貢献してもいて、ひったくり犯や強盗を見つければ、直ちに取り押さえて警察に突き出したり、20世紀後半の感覚で言うところの『押し売り』も追い返している。箒はアガートラームの右腕から召喚する神剣『ヌアザ』で強盗犯の車をなますにした事もあるが、調はのび太に頼まれ、のび助が挫折した日曜大工を完成させるため、シュルシャガナの鋸を使うという、しょうもない使用例もある。

「そう言えば、のび太の父さんが挫折した日曜大工を完成させた事あったな、お前」

「途中でしたから」

「ぐぬぬぬ……元の世界なら絶対に出来ない使用法じゃないデスかぁ!」

と、ギャグ顔を見せる切歌。そういうところは声が似ている戦車道世界の『武部沙織』に似ていた。奇しくも、切歌にも『天命が同じかも知れない』存在はいたのである。

「あー!やだもー!」

「待て、今なんと言った?」

「やだもー!デスけど?」

「切ちゃん。それすご〜く重要かも知れないから!箒さん、芳佳さんに連絡取れます?」

「ま、待て!イオナに連絡取って聞いてみるから!」

「わ、私、何か重大な事言ったデス?」

キョトンとする切歌。マリアも、箒と調が『やだもー!』の一言を聞いた途端に大慌てになったのに呆然とする。二人にとっては大事だ。芳佳と同じケースかも知れないからだ。芳佳も角谷杏への転生経験を有するからで、同様のケースは充分にあり得る。イオナに頼み、芳佳に取り次いでもらうと……。

「悪い。今ちょっと、そっちに戻れなくてさ」

「どうした?」

「大洗女子の廃校問題が大事になったんだわ。大学選抜と戦うことになってね。高校選抜チーム作るお膳立てをする必要が出てきたんだ。『杏』にバトンタッチするまで見届けないと」

「そうか、大変だな。杏はお前の……」

「前世さ。時間軸が違うから、こーいう事はままあるって奴。その件は帰ったらやるよ。さおりんがその子に転生してたらさ、面白いことになりそうだね〜」

「お前なぁ」

「だってそうじゃん?あたしみたいに前世と来生の人格が融合した場合、魂が分裂したマリアとお前。ケースは色々とあるじゃん?もし、さおりんがその子になってるとしたらだけど、もしかしたら『貴方と合体したい』なんてほうかも知れなかったし」

「うーむ、あり得たな」

「だろー?ま、また連絡してよ。こっちも目処さえ立てば帰れるし」

「分かった。忙しいところを邪魔してすまんな」

「な〜に。こっちも裏方で刺激ほしいところだったし、いい気分転換にゃなったさ」

通信を終えると、箒はこの事を伝える。切歌は大いに戸惑ったが、口を突いて出た『やだもー!』というセリフに自分自身、戸惑ったらしく、箒の助言を受け入れることにした。

「こうなると、セシリアも可能性があるな。」

「セシリアさんに、ですか?」

「ああ、私がアガートラームを纏って、ギャラクシアンエクスプロージョン撃った時に『例えようのない懐かしさと対抗心を感じたらしくてな、あいつ」

調に言う。セシリアの事を。セシリアは箒が報告のために戻ってきた際の戦闘で、箒がギャラクシアンエクスプロージョンを放った瞬間にデジャヴを感じたのだと語り、箒はそれを聞き、ゼウスから『サガの後継となる次世代の双子座』の可能性を聞いてはいた事を思い出した。だが、セシリアの前世というと、そちらより『緑色の髪をした不老の少女』か、『傭兵部隊の銀髪の天才少女の大佐』を考えていた。

「あー……それですよね、普通」

「だろう。『フルメ○ル・パニック』は2000年にはもう出ていたから、私も読んだ事あるから、それがまずな」

「でも、セシリアさん、あのキャラみたいに指揮能力があるわけでもないし、接近戦なら私でもどうにかできますけど」

「あいつが聞いたら怒るな、それ」

「もし、覚醒してくれれば、あの能力抜きでも指揮能力は武器になるけど……」

「今の時点ではなんとも言えん。私の推測に過ぎんしな。だが、少なくとも黄金聖闘士である可能性はある。ギャラクシアンエクスプロージョンの発動を視認出来ていたのならな」

「アリカの主の子は?」

「あ!それを忘れていた!そうならいちいち『アルテミス』を呼び出してそれを媒介にする必要は無くなる!」

「アリカはいま何処に?」

「なのはのメイドしてるから、今は一緒に食堂のはずだ。あとで私から言う。言い出しっぺだしな」

「わかりました」

「あの、二人共。私達を置いてけぼりにしないでもらえるかしら?」

「おお、すまん。お前たちのことをすっかり忘れていた」

「貴方ねぇ……」

「そう言えば、お前。午後からギアでの訓練だろ?今のお前たちなら一時間程度はLINKER無しで纏えるはずだ。アリカとやらせようかとも思ったが、今のお前らでは戦闘力に差があるからな」

「あの子の戦闘力は反則よ。空を普通に飛行出来て、桁違いの攻防速だもの。ギアと違う技術の所産と言われても、差があるわ」

「仕方がない。だが、それでもあいつの先代にあたる、あいつの母親には及ばないのだからな」

「あの子の力は母親から引き継いだの?」

「なのはから聞いただけだが、その媒介になるナノマテリアルを生み出す何かを母親から引き継いでいて、それを使ったとか。なのはも前世で人伝いに聞いた話と、アリカに前世で会った事があるらしいんだが、その時に得た情報しかもってないしな。調は、私とこの世界の戦史の勉強があるから、今日は面倒を見るが、いいな?」

「ええ。お願い。でも、不思議ね。貴方の声を聞いてると、共通した魂を持つって言うことにも納得が行くわ」

「そうだな。同じ過去生を持つということ自体が稀なケースだと言うし、同じギアを使う者同士でもある。神のいたずらかもしれんな」

「いつか、私が小宇宙に完全に目覚めたら、貴方と戦ってみたいわ。同じアガートラームの装者として」

「ああ、私もだ」

以後、箒とマリアはシンクロが加速してゆく事になり、箒はマリアの口癖である『マイターン!』を口走ったので、IS学園への次回の報告の際、一夏に正体を疑われ、思わず、『馬鹿者!』と怒り、股間をアガートラームで蹴ってしまい、彼の顔色が青ざめ、悲鳴をあげるほど悶絶させてしまったという。それは箒が犯した最大の失敗であり、一夏は一時的にトラウマとなったようで、しばらく箒に近づかなかったという。また、切歌は自分の前世が誰であったのか気になったらしく、この日は徹夜してしまったという。のび太のところに調が自然と足を運ぶのを目にし、後をついていったが、途中でしずかに見つかり、しずかの部屋で一晩過ごしたとか。のび太は『ん、もうしょうがないなぁ』と言いつつ、きちんと布団をかけてやり、(ギアを解除するのを、野比家滞在中の癖で忘れていた)自分は部屋の隅で寝たという。のび太はこういう気配りが上手なのだ。翌朝、調が起きると、のび太の部屋にいる事にまず驚き、のび太が隅っこで寝ていたために鼻風邪を引いていたので、更に大慌て。慌てて、ドラえもんを部屋から連れてきて、ドラえもんにお医者さんカバンを出すように急かし、慌てぶりを目にしたしずかが『こら、ドラちゃんを慌てさせないの』と諌めたという。



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