ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――黒江が調に成り代わっていた期間は一年ほどと長期に渡り、そのため、調は帳尻合わせに苦労し、黒江が戻った後は、黒江が掛け持ちしていたバイトなどを引き継ぐ羽目となっていた。切歌の精神も持ち直し、デザリアム戦役中の段階では、それぞれの役目を邁進している。調は黒江との同調で、精神状態が黒江の深層心理に近似するようになったため、兄的な要素があるのび太を慕うようになっているが、切歌は自身の勘違いから、のび太に迷惑をかけたため、買い物などを進んで引き受けている――

「もう12年先なら、コ◯ケの売り子を引き受けて大儲けできるデスが、時代が2000年じゃ、先取りしすぎデスよね」

買い物に行っていた切歌は、セブンセンシズ覚醒でギアの展開時間に制限が無くなったための修行のため、ギア姿であった。何気に『時代が12年ほど先の頃なら、コ◯ケの売り子のバイトで大儲けできそう』と考えているあたり、アニメもチェックしているのが分かる。(ちなみに、2005年以降では、黒江はアルトリアを職権で呼び出し、自身が秋雲と組んでサークル参加した際の売り子としており、アルトリアも悪い気はしないのか、許している)

「でも、アニメ関係者、絶対、どこかで観察してるデス……。12年後くらいからのアニメでアタシ達が……。う〜…そう考えると、背筋が寒くなるデス」

2013年以降、自分達はアニメキャラとして世に知られるようになるが、黒江のいたずらで調は『自衛隊系アイドル』として名が知られるようになっていく。2005年以降の事だ。この世界においては、黒江が容姿を度々使っていたため、キャラが普段の黒江やモードレッドに近い『普段は明るいが、戦闘では粗野で短期』として描かれるため、当人としては何とも言えない。(その当人も黒江の影響で、だいぶ熱血漢化したが)

「でも……、あの人のおかげで、この世界のアニメの調、ガチの戦闘女子だから、あれはあれで……」

黒江はアニメにだいぶ影響を与え、13年に放映された『戦姫絶唱シンフォギアG』(INのび太世界)での調は、モードレッドと黒江を足して割ったような戦闘系女子として描かれている。そのため、切歌も楽しんでいたりする。調当人も元からだいぶ変化しており、剣を媒介にしてのエクスカリバーを習得しており、同じく、聖剣保持者のガイちゃんから妹分扱いされている。(ガイちゃんの聖剣ははデュランダルであり、同じく黄金の剣の保持者である)


「でも、納得いかないデス!エクスカリバーが与えられてるなんて……!斬られた身としては、バーゲンセールデスよぉ!」

黒江に二回、調にも一回づつ、エクスカリバーに斬られているため、エクスカリバーとの相性の悪さをボヤく切歌。黒江と本格的に初めて一戦を交えた際、黒江は空中戦を披露し、神格と成ったことで得た空間認識能力を活用し、ファンネルミサイルからのエクスカリバーをかましている。戦闘力では黒江にあらゆる面で及ばなかったため、聖剣使いがバンバンいるのには参っているようだ。ギア姿で、コンビニでおにぎりを普通に買えるあたり、この世界はどこか『ズレている』。野比家に戻ると、居間でアルトリアがたいやきを食べ終わるところだった。

(うーん。あの人が本当に、アーサー王と同一の存在なのデスか?食いしん坊さんにしか……)

「ただいまデス」

「おかえりなさい。あいにく、たい焼きは私が食べてしまいましたが…」

「いいデスよ、途中で買い食いしましたから」

アルトリアは一見すると、10代後半の学生に見える服装であった。坂本が調達してきたらしい。モードレッドに比べると、真面目そうな服装である。(モードレッドは荒くれ者と言ったほうが正しいので)

「あの、その格好は?」

「坂本少佐が調達してきたものです。騎士服でいるのもアレだろうとの事で」

「なるほど……。ちょっといいデスか?」

「なんでしょう」

「ワタシ、色々と悩んでて……」

「お気楽極楽の貴方が?」

「それはそうなのデスけど、周りに迷惑をかけてしまいましたから…」

「なるほど」

切歌は基本的にお気楽極楽タイプだが、調が自分を守護する対象として見ている事に気づいていた。それと、黒江に迷惑をかけた事に言及する。

「ワタシは調が綾香さんに成り代わってた事に、途中で気づいてたのデス。だけど、怖かったんデス。調が本当にいなくなってるって事を認めたら、ワタシの中の何かが壊れてしまうような……。だから、あの時――」

――フロンティア事変中――

「ちぃっ!何故わかろうとしない!知ろうとしない!耳を塞いで、現実から耳を逸すのか!」

「黙れ、黙れ黙れ……黙れぇぇぇ!!調を乗っ取ったお前の言うことになんか!!」

「このバカ野郎が!!ファンネルミサイル、行っけぇ!」

黒江は、ギア姿ながら、その機能を再構築。空中戦を見せ、切歌が投擲する鎌をバレルロールで躱し、本来は丸鋸があるツインテールのコンテナ部からファンネルミサイル(第5世代MSのそれの人サイズ)を放つ。クリスのミサイルより更に高速かつ、有機的なオールレンジ攻撃をミサイルで行うため、バーニアで跳躍しているにすぎない切歌には迎撃は重荷だった。凄まじい爆煙が切歌を包み込む。切歌はそれに辛うじて耐えるが、黒江に接近され、鋭いエクスカリバー(手刀)を当てられ、海上にあわや墜落しそうになり、マリアに救われている。当時はガンニグールを纏っていたマリアとそのまま対峙した。。切歌はその様子を覚えており、アルトリアに語る。


「貴方は何者なの?貴方が調ではない事は調べがついてるのよ」

「やはり気づいていたか。お嬢ちゃんのそれはなんだ?」

「ガンニグール。何者も貫く、無双の槍!!」

「北欧神話のグングニルか。悪いな、私ゃその実物を見ているからな。今更その程度で怯まねぇよ」

「な!?」

「あいにく、オリンポス十二神に仕えてるとだな、宝具は飽きるくらい見てんだよ。その一端を見せてやるぜ」

一陣の風が舞う。そして、光と共に黒江は『剣を持つ』構えを見せる。やがて、風は暴風と変わり、マリアが先手必勝でガンニグールのアームドギアの穂先から放ったビーム攻撃『HORIZON†SPEAR』をかき消してしまう。

「か、風がギアのエネルギーをかき消した!?」

そして、剣を抜くルーティンから構え、黒江は叫ぶ。風王結界の応用。その名も。

風王鉄槌(ストライク・エア)!!』

エクスカリバーに纏わせた風を、突きと共に解放することで破壊力を伴った暴風として撃ち出す。黒江は突きも得意技であり、牙突も習得していたので、その威力はアルトリアのそれにも勝るとも劣らぬ精度だった。その様子を観測していた、当時の特異災害対策機動部二課も、ただただ驚愕するしかなかった超常現象であった。マリアは暴風にもみくちゃにされまくり、ナスターシャ教授以下を乗せた航空機もあまりの暴風に翻弄され、あわや墜落かという局面にまで陥った。駆けつけた響、翼、クリスの三人が目撃したのは、海上に浮かんで、無様に気絶するマリア(後に回収)、空中で騎士のような佇まいかつ、黄金の剣を持つ調(黒江)だった。

「お、なんだ。ガキ共も来たか。そろそろバイトの時間だし、退散するとするか」

呑気に構える黒江だが、その前に破れているからか、翼は雪辱を果たさんと、斬りかかった。

「待ってください、翼さん!」

「すまん、立花。彼奴に私は不覚を取っている。雪辱を果たさんことには、私の中の跳ね馬が収まらんのだぁ!!」

「何だ、青髪のガキか。ん?この声……フェイトだ。口調が痛いけど」

黒江はエクスカリバーを使わず、左腕の人差し指と中指を立て、天羽々斬のアームドギアを受け止めた。戦闘者としての顔を見せ、翼が力を込めても微動だにさせない。

「ぐ、ぐぬぬぬああああ…っ!」

「青いな。そんな剣じゃ、私の薄皮一つとて、傷をつけられん。身を以て知れ、ギャラクシアンエクスプロージョン!!」

左腕でギャラクシアンエクスプロージョンを発動させ、小宇宙の奔流を瞬時に起こす。傍目からは、エネルギーの奔流がその場で起こって、翼を上空へ突き飛ばしたようにしか見えないが、実際は銀河系破砕級のエネルギーがぶつけられたのだ。そのため、ギアの破片が散り、翼は一瞬にして、ズタボロに追い込まれた。

「まだだ!!」

翼はその勢いを利用し、巨大化した剣を突き立てんと、天ノ逆鱗を放った。黒江は笑い、エクスカリバーを構える。エクスカリバーも巨大なエネルギーを起こし、剣の形をしたエネルギーがハッキリと地上からも視認できた。

「お前のその意気や良し!!私も応えよう!!約束された勝利の剣でな!!」

黒江がエクスカリバーの発動態勢に入ったのを視認した響とクリスは、それを止めようとするが、次の瞬間に『リストリクション』をかけられ、行動不能になる。

「え!?か、体が!?」

「それだけじゃねぇ……ギアの技の発動も…!?どうなってやがる!?なんで発動しねーんだ!?」

クリスは、腰部アーマーから小型ミサイルを一斉に発射する『MEGA DETH PARTY』の発動寸前のところでリストリクションが強めにかけられたのでギアにも影響が及び、腰部アーマーの展開が途中で止まってしまう。ミサイルも点火しない。更に、喋る事以外の体の自由も奪われる。

「ダメ……、体が動かせない!!あのままじゃ!」

悲痛な声を上げる響。こればかりは彼女の力でどうにかできる範疇ではなかった。いくら当時はガンニグールの破片と一体化していても。クリスも叫ぶだけしかできず、『ちくしょう!!』を連発している。黒江がかけたリストリクションは黄金聖闘士の力でも解きにくいほどのパワー。当然といえば当然であった。



――邪魔者の横槍を止めた黒江はそのままエクスカリバーを発動する。乾坤一擲の叫びとともに――

『勝利を約定せし聖剣!!エクス!!カリバァァァァ!!』

黄金の光が走る。翼の天ノ逆鱗とエクスカリバーの斬撃エネルギーがぶつかり合う。その瞬間。二課の移動本部では、司令の風鳴弦十郎の『エクスカリバーだとぉ!?』の叫びが響き渡ったという。

「剣が……砕かれてゆ――!?」

翼の天ノ逆鱗はエクスカリバーの因果律に撃ち負けて破壊され、翼もエクスカリバーの光に飲み込まれる。大爆発が起き、翼はアンダーウェアだけになった姿で空中に放り出され、動けるようになった響に回収される。切歌はその一部始終を目撃していた。そのことをアルトリアに伝えた。

「――なるほど。エクスカリバーは本来、私が前世で用いた宝具でもあるのですが……」

「なんでその力をあの人が?」

「私もですが、聖剣は神から与えられしもの。あの方はアテナに忠節を誓い、叙任された際にカリバーンを与えられ、それを戦いの中で磨き、昇華させたのです。貴方もアテナに謁見すれば、与えられた星座によっては与えられるでしょう」

「うぅ〜ん。伝説とかに疎いんデスよね、ワタシ。そういう背景は…」

「貴方はまだいいほうですよ。私など、剣を抜いた事もないのに、剣の技能を鍛える必要が出ましたから」

「そうか、貴方は剣は持っていても、抜いた事はありませんでしたね、ジャンヌ」

「ええ。転生後の職業柄、どうしても技能が必要になったので。貴方のように剣技で勇名を馳せたわけではありませんから、アルトリア」

「そうなのデスか?ジャンヌ・ダルクというと、剣でブイブイいわせてるようなイメージが……」

「それは後世の人々による脚色によるイメージですよ。アルトリアがアーサーという虚像になったように、私も後世の人々によって、イメージ戦略に使われていますから」

「ああ、ド・ゴール将軍ですね?」

「あの方には釘を差しておきました。モードレッドもお困りでしたので」

「娘にそのようなお計らいを……感謝します」

ペリーヌを『現代のジャンヌ・ダルク』とプロパガンダしていたド・ゴールだが、そのペリーヌがモードレッドに覚醒し、『Fウィッチ』と化したので、ブリタニアと揉めたのだ。そのことでブリタニアと数ヶ月は揉めていたが、そこでジャンヌ当人がガランドの要請で調停に出動し、事を収めた。

『後世の人々の誰もが私を聖女と呼ぶ。けれど、他ならぬこの私だけがそう思ったことは一度もないのですよ』

この一言で、ド・ゴールのプロパガンダ政策が根本から崩壊。ド・ゴールはあまりのショックで一時的な失語症にかかってしまい、哀れに思ったチャーチルの頼みで、ジャンヌは連合軍全体のプロパガンダには協力したという。

「チャーチル卿の頼みで、連合国軍全体のプロパガンダには協力しました。ですが、あの将軍は野心家すぎる。まるで自分が欧州の覇者というような口ぶりで」

「貴方の生前から数百年後に現れた、コルシカの小男――ナポレオン・ボナパルト――に比べれば可愛い方ですよ。ナポレオン・ボナパルトという男は、貴方の国に一時でも栄光をもたらした征服者。ですが、あの将軍は軍人ではあるが、政治家ではない」

アルトリアは王であった者として、ナポレオン・ボナパルトの軍事的手腕とカリスマ性は敬服に値すると考えていた。だが、ジャンヌは更に辛辣だ。

「覇者も何も、国を失った亡国の将軍として他国の力を借りて国土奪還してもらった立場を忘れた大口男じゃないですか」

「大口も指導者には必要なのかもしれません。私は清廉潔白であろうとしたために身近にいたモノ達の心も推し量れなかった……。私は……ナポレオンの人心を引きつけたモノに羨望すら感じるのです」

アルトリアは円卓が崩壊した事への悔恨を引きずっていた。王という偶像にしがみついていた結果だったのか?と。それはアルトリアの弱音であった。

「あの男は軍事的手腕だけで、衛兵隊の砲兵少尉から成り上がった男です。貴方は彼ではないし、人心掌握なら、ドイツのあの『ボヘミアの伍長』のほうがずっと優れていましたよ。いえ、あの男はブレーンが優れていたに過ぎないとも言いますが」

何気にだが、英霊である彼女らはアドルフ・ヒトラーも、ナポレオン・ボナパルトもそう評する事が正面からできる人材である。ジャンヌはアルトリアと違い、元は農民の出であるので、一般人の目線でモノを言える。そのため、アルトリア以上に辛口批評である。

「貴方は確かに、『円卓』は守れなかった。ですが、今、ここにある仲間と『家族』は守れています。お子さんに心配されますよ?」

「すみません、昔を思い出してナーバスになっていたようです」

「いえ、世の中には、同位体の罪を背負わせようと叫ぶ者達もおります。それに比べれば、私達は遥かに恵まれています」

「確かに。日本国民には旧軍部や旧特高などの構成員達を一方的に断罪し、地位も名誉も奪うのを復讐と考える者達が少なからずいる。困ったものだ」

アルトリアも呆れているのが、2000年代後半以降の日本国民の少なからずが、旧軍部、あるいは特高警察にいた者らの私刑を平然と行う思考を持つ事であったり、戦後技術で戦前の思考をぶっ飛ばそうとしている事だ。後者については、元来、ウィッチ運用も前提で、空母の飛行甲板に施されていた魔術処理を無視し、アングルドデッキ付きの空母に改造したりするので、その処理用のウィッチが失業状態になったりしたり、ウィッチ運用装備が大型空母の改装時に取り外されたので、その行き場の処理などが問題だった。ジェット戦闘機を積むには雲龍型航空母艦のサイズでは小さく(コアファイターならばOKだが)、大鳳型と翔鶴型航空母艦では改装での搭載機数の減少で、ウィッチに割くスペースがなくなった。そこで容積で余裕がある『超大型空母』が複数導入され、ピックアップトラックやジープの荷台に搭載するタイプの発進促進装置を搭載するか、折りたたみ式のを新規開発する事でウィッチ閥の機嫌はとられた。しかし、超大型空母は優先的にG/Fウィッチに使用権が与えられる事になっているので、派閥抗争になっている。特に、生え抜き海軍空母航空隊閥と、レイブンズ率いる改革派は折り合いが悪い。しかしながら、当時の海軍空母航空隊ウィッチは未熟な若手ばかりで、歴戦の勇士ばかりの改革派に世話になっており、現場単位では関係は良好だが、改革派は空母航空団司令と艦長クラスの多くからは嫌われ者だった。日本海軍では後期に行われ、空母ではマリアナ沖海戦当時のみに見られた『空地分離』の概念が扶桑には無く、スーパーキャリアの艦長/空母航空団司令人事は吟味された人選であったように、初の試みだった。

「なんか、凄く難しい話で……」

「仕事の話ですから。私達、今回は職業軍人なわけでして」

切歌はついていけずにポカーンである。ジャンヌがたしなめる。二人はそれぞれ職業軍人として今回の生を過ごしているので、それぞれ将校である。アルトリアは少佐、ジャンヌは中尉である。そのため、装者ではあるが、調と違い、軍事知識がない(調は黒江と情報コピー状態になっているので、実質的に特務少尉である)ため、同席は辛い。ジャンヌも、覚醒後に連邦軍で教育を受けているため、士官相当教育の初等教育程度しか施されていなかった『ルナマリア』時代と違い、明確に職業軍人としての教育を受けている。(プラントは『指揮官と兵』という大まかな区別しか無く、軍組織の体裁ができる時に、エリート層には士官相当教育を施すこととなったが、基準が曖昧であった)そのため、明確に階級制である地球連邦軍での軍隊生活には戸惑ったが、身分がハッキリとしているので、むしろザフト時代より過ごしやすい。更に、かつてのソビエト赤軍や一時期の中国軍で見られたような、捕虜虐待や虐殺の黙認と言った、モラルの顕著な崩壊がヤキン・ドゥーエ戦役での終戦交渉で問題視された経緯も知ったので、ジャンヌとして覚醒した後は『階級制があったほうが、組織モラルの完全崩壊を避けれる』という考えに肯定的である。(ちなみに、ルナツーの地球連邦軍は、同戦役の終戦交渉を仲介したら、プラント側の曖昧な組織概要に唖然としたという)

「そう言えば、以前に見たのですが、貴方の依代になったその少女の故郷の世界で起こった大戦の概要の一部が貴方達の世代には伝わっていないとか?」

「ええ。この肉体が記憶する限りの答えになりますが、沽券に関わる問題でしょう。コーディネーターの」

「沽券に関わる?」

「ええ。コーディネーターの過激派には『階級制がなくとも、軍組織は維持できる』という、ソビエト赤軍や一時期の中国軍の失敗をものの見事に地で行きまして…」

「なんと」

「最も、地球連邦軍の介入自体、イレギュラー過ぎたのもあるのですが、当時の書類がザラ派の失脚で多くが焼却されてしまったので、当事者から聞くしか手段は…」

ヤキン・ドゥーエ戦役当時、プラントは介入してきた地球連邦軍に為す術がないほどに蹂躙された。これはパトリック・ザラが、地球連邦の介入後は、死ぬその時までヒステリーを起こしぱなしになった原因でもあった。そのため、ザラ派が当時の資料の多くを失脚までに処分してしまったので、ヤキン・ドゥーエ戦役での戦訓は殆ど生かされていない。更に、連絡手段が確立された後も、デュランダル政権への交代後にも関わず、ミネルバ隊の面々の帰国よりも、彼らの保有していた機材の返還を切り出し、ルナマリアがジャンヌ・オルタ化する原因を作っている。当時の戦場を知る者たち(アスラン・ザラやキラ・ヤマトは、地球連邦軍が味方側につく側であったが、ラクスがメサイア戦役で戦線に立つのに反対していた)は地球連邦軍の存在を覚えているので、再介入を恐れている。ラクスはミーア・キャンベルの存在から、表舞台に立つのを志向したが、キラやアスランは戦間期に隠棲を選んでいた事や、キム・キャビロフ中将の『君は父上の思想を理解しているのか』との質問に、ラクスが答えに詰まった事を理由に、メサイア戦役時の決起に反対であった。しかしながら、キラもラクスを制止しきれなかったり、オーブの立場が危なくなったため、キラ達は決起せざるを得なくなり、キラはステラを結果として殺めてしまった。シンが転移時に荒れていたり、ステラの存在を仄めかれた際に狼狽えたのは、デスティニー受領後の時間軸の人間だったからである。

「その戦訓は活かされず、私らが従軍した戦いに繋がります。その戦いでシンは傷を負いました。シンが救われたのは、あの子と再び巡り会えたからでしょう。本来なら、シンが自分自身で水葬したはずのあの子が生きていたのですから、シンは大喜びでした。それ以降は落ち着き始めました。カミーユ・ビダンさんには感謝しかありません」

「うーむ…それは分かりましたが…もっとこう…」


「私も具体的には、士官教育課程時代に『ガンダムと名がついたMSに近づくな』、『光の翼を持つ青い悪魔が…』、『双眼にVアンテナのMSは悪魔が憑いてる』、『連邦の可変モビルアーマーは化物すら生温いと当事者から聞いたくらいで」

V2ガンダムや量産型F91の脅威ぶりは、ザフトで特に伝説化し、当時プラント最高のパイロットであった『ラウ・ル・クルーゼ』と最新鋭機でようやく押さえ込める程度(文字通りに戦場で押さえ込める程度)であった事もあり、コーディネーター優越主義のザフトは混乱した。特に、スーパーコーディネーターであるキラ・ヤマトでさえ大苦戦した『オールレンジ攻撃を『連邦の青き閃光』が量産型F91で軽くいなし、ラウ・ル・クルーゼも驚愕する強さを見せた』場面は、キラも戦後、見習いたいと述べるほどだった。

「多分、可変モビルアーマーとは、VFの事でしょうね。あれはザフトから見れば脅威以外の何物でもないし、ルナツーにあったのは、AVFでしたし」

「あれを使ったら、ジオンのエースパイロットでもなければ、まともに対応できませんからね。ティターンズでさえ、空軍にVFを導入して対抗していたし、それでも11以前のモノでしたし」

完全に、切歌置いてけぼりの会話であるので、切歌はいつしか聴き疲れて、寝てしまっていた。二人はそれに気づき、お互いに顔を見合わせて苦笑いしつつ、30分ほど寝かせることにし、自分達は応接間に場所を移して会話を続けた。



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