ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――調は光明結社をクラスカードの宝具であっさりと打倒しつつも、その世界の都合で、しばらく帰れない事になった。一方、紅蓮聖天八極式・改で戦闘を繰り広げる北条響/キュアメロディ。前世が『紅月カレン』であったがため、機動兵器への適正はプリキュア勢でもっとも高い(のぞみも機動兵器への適正がどういうわけか、響と同レベルに高かったため、圭子は『ある関係性』を疑っている。黒江は『カットバックドロップターン』でもさせとけと言っている)。隠されていた機能が発動し、全ての性能が飛躍した紅蓮聖天八極式・改だが、それに対抗できるだけの力を有しているガトーはその操縦技術で三機を実質に足止めせしめた。これは、彼が百戦錬磨であったがためにできたことであった。リゲルグの素性が良かった(名機の誉れ高いゲルググの近代化改修機)事も理由だろう。

「ぬおおおおおお!」

ガトーは響と言い争いしつつも、MS戦では依然として優勢であった。これは宇宙戦闘の経験が響には、プリキュア時代含めても少ない事、ガトーは宇宙戦こそがホームグラウンドだったという地の利も関係している。また、ガトー機は一般機より高性能のデバイスを使ったサーベルであった関係で、紅蓮聖天八極式・改のレーザーブレードと互角のパワーを持っていた。(元からハイパービームサーベルと互角だったが、もっとパワーを上げた仕様。ベースはガズR/L用のサーベルユニット)

「ランスロット以外に、紅蓮とやりあえるなんて……!一年戦争の旧型の改造なのに…!」

「ガトー相手に、下手に輻射波動を遠隔操作しようとするなよ、シャーリー。ワイヤーを切断されるぞ」

紅蓮聖天八極式は右腕の輻射波動が『輻射推進型自在可動有線式右腕部』に改良されてはいるが、機動兵器同士の戦闘に熟達したパイロットであれば、その機動を読んで、ワイヤーを切断することも出来る。コウが注意を促すのはそれだ。輻射波動がこの世界で有効でないのは、既にロケットパンチ系の武装が普及している世界であるからでもある。

「嘘ぉ!……恨むわよ、甲児に鉄也さん…!」

マジンガーの代名詞でもあるため、ロケットパンチは割に見切られやすい武装である。グレート以降に回転がお約束になったのは、弾かれるのを防ぐためだ。

「だから、アイアンカッターなんてつけたのかぁ〜!くぅ〜!弐式の時みたいに、接射でするしかないか!?」

ロケットパンチの難点に気づいた響。マジンガーZにアイアンカッターがついた理由も感づいたらしい。(アイアンカッターは発射しないで、相手を斬る方法もある。甲児が最近、Zの二号機で開拓した戦法だ)紅蓮聖天八極式の特徴的な戦術を封じられたことに苛立ちつつも、レーザーブレードで必死に防戦を行う。ガトーの凄まじい気迫のビーム・サーベルの斬撃を受け止めつつ、蹴りを入れる。相手の態勢を崩すのが目的である。だが、質量差が響き、大した打撃にならず、逆にスパイクシールドでパンチをかまされてしまう。

「うわぁっ!」

モロに胴体部にパンチが入り、吹き飛ばされる。大型機は格闘戦でのリーチもメリットであった。

「響!!」

「待ちなさい、のぞみ!貴方、まだ訓練を……」

「友達がピンチなのに、黙ってろって!?見てられないもん!私は行くよ、美希ちゃん!」

その様子をベクトラで確認したのぞみは、居ても立ってもいられなくなったか、美希の制止を振り切って、士官食堂を飛び出していった。

「あの馬鹿、MSの操縦訓練は……いや、待てよ、確か昨日の定期便で届いた…。待て、のぞみ!」

「止めても行きますよ、わたし!」

「いや、昨日の定期便でネオジャパンからテストを依頼されたモビルファイターがあるの思い出した!それを使え!」

「えー!モビルファイターぁ!?シャイニングとかゴッドの系列の?」

「ドモンさんが格闘専門だから、ライジングみたいに、ネオジャパン軍が軍事用に転用を考えてたシャイニングの派生機だ!操縦系統はモビルトレースシステムだから、直感的に動かせる!」

格納庫で整備が終わっていた一機のガンダムタイプ。一見すると、普通のガンダムタイプだが、かのシャイニングガンダムと同世代の素体のモビルトレースシステムを持つモビルファイターだ。モビルファイターが武装するのは珍しくなく、格闘戦特化のシャイニング/ゴッドは珍しい部類に入る。それに乗り込み、起動させる。モビルトレースシステムも軍用用途を前提に、かなり簡略化が進んだモデルのようで、コントローラーを握る事で機体のモードチェンジ(可変形態など)、武器などに対応し、関節にセンサーをつける。イメージとしては、既存のモビルファイターよりも、類似の技術である、ガンバスターのダイレクトモーションシステムに近くなっている。

「モビルファイターってよりは、ガンバスターじゃないですかね、これ」

「完全なモビルトレースシステムだと、訓練の期間が長くなるし、超人でもないと使いこなせないからな。ガンバスターの技術で簡略化したんだろう。ダイモスよりはいいだろ」

「確かに。先輩、フライングアーマーは?」

「今、整備班に用意させた。カットバックドロップターンでも、アイキャンフライでもやってこい」

「それじゃ、いってきます」

「ちょっと待て。今、戦闘空域は?」

「だいぶ移動して、大気圏上層にかかってます。月との中間から移動させられまして」

「移動しすぎだ!クソ、ネオ・ジオンめ。こっちを大気圏に引きずり込んで、強引に地球に降りる腹か!?」

オペレーターからの報告に圭子が突っ込む。戦闘空域がかなり広範囲な事から、場合によれば、大気圏突入もあり得る。

「空軍もそうなると動くはずだ。場合によれば、フライングアーマーでそのまま降りろ。味方を回収してな」

「わかりました」

「待て。フライングアーマー付きの増援なら一旦大気上層に降りて極軌道へ入って突き上げてくれ。空軍がコスモタイガーの増援を大気圏上層にいたガルダから寄越したからな」

「アムロさん」

ここで、アムロからの通信が入る。戦闘が地球の軌道上に広がった事で、連邦空軍の守備範囲に入り、防空部隊のコスモタイガーが加勢し、大気圏に入れないジオンの旧式艦を撃沈し始めた事も伝えられた。ガルダは空中空母の側面もあるため、こうした防空プラットホームとしての運用がガルダ本来の想定運用である。

「でも、月と地球の真ん中あたりから、地球の大気圏にすぐに行けるものなんですか」

「最近は宇宙船が早くなったからな。数十分でそこから地球の衛星軌道まで行ける。ネオ・ジオンは恐らく、各地の残党に物資でも届けるついでに、俺達を地上に引きずり落とすつもりなんだろう」

「連中はどこに拠点が?」

「アジア太平洋にまだ残党が生き残っている。海軍が予算確保のために泳がしてる残党がね」


「連中はそこに?」

「補給物資を降下させている。アジア太平洋地域を除くと、各地に逃れた僅かな生き残りがいるだけだ。海軍は洋上空母が要らなくなる時代に入ったから、アイテール級を共同で運用する案も出てたが、あいにく、予算承認寸前にこれだ」

アムロの言うことから、海軍は洋上空母を捨て、宇宙空母でその任を代替しようとしていたこと、そもそも海軍の組織そのものに維持する理由がない事が示唆される。洋上の安全確保名目で組織が存続しているのみで、任務の殆どは宇宙軍に取って代わられている。宇宙軍の地上支部的な位置付けすら検討される時代、かつての各国海軍の伝統を伝える存在の消滅を恐れる政治勢力の思惑で生き永らえている連邦海軍。この頃には日本地域の『第三艦隊』のみが辛うじて、生き永らえていて、扶桑連合艦隊の第三艦隊と同規模の艦隊が実働していた。総数は空母が6隻、戦艦が6、巡洋艦は8、駆逐艦で35、フリゲートは15、コルベットで25という陣容であった。これは扶桑連合艦隊の第三艦隊とほぼ同じ陣容であり、必要性の薄れた海軍が維持する、なけなしの艦隊であった。戦艦は一年戦争時に建造されたジュットランド級で、56cm砲、もしくは61cm砲を有する、水上艦としての戦艦で最強の船だ。これでも、一年戦争半ばよりは再建の進んだほうで、軍縮時代に余剰の兵器が廃棄された事もあり、扶桑の一艦隊程度の勢力しかない。かつては『グローバルフリート』との異名で恐れられた連邦海軍の衰えた陣容がこれだ。MSも大規模総力戦であった一年戦争時代のものが未だ現役稼働の有様である。海軍もRX-78の4号機開発計画に噛んだが、方針の転換で水中型ガンダムの配備に留めた。もし、それが完成していれば、『アクアガンダム』というネームが予定されていたとも。しかし、海軍のガンダムは泡と消え、アトラスガンダムも宇宙軍所管であったため、海軍の政治力低下の象徴ともされていた。

「一年戦争から、海軍はいい噂を聞かんからな。ティターンズシンパも多い。だから、最近は空軍に予算が行くわけだ」

「なんか大変ですねぇ」

「それが存在意義の薄れた軍隊ってものだ。フライングアーマーはエアロターンが出来る代物だ。万一の時は味方を一機回収してのせてやれ」

「了解」

答え終わると、ハッチが開き、フライングアーマーがカタパルトに接続される。こういう出撃というのは、錦の記憶でもそうだが、高揚感を覚えるものだ。

「フライングアーマーはバイクかサーフボードの要領で操作できる、エアロターンは無理に操作しないで機体に任せろ、良いな?」

「了解」(先輩が言ってたけど、今度、ハワイのサーフィン大会に出てみよう。カットバックドロップターンを使えれば、わたしが優勝できるはずだもん)

サーフボードと聞いて、カットバックドロップターンの事を思いだし、妙な自信が湧くのぞみ。圭子が考えていた可能性はカットバックドロップターン関連のものである。しかし、今回はアムロの指示に従うことにする。戦争が落ち着けば、いくらでもサーフィンはできる。地球以外でも、サーフィン大会はあるからだ。

『シャイニングブレイク、夢原のぞみで出ます!』

シーブック・アノー風の言い回しで発進する。また、シャイニングのところで癖が出たのか、ドリームと言おうとしたらしく、噛んでいた。見送った圭子は苦笑いしつつも、自身は残ったプリキュア達を監督せねばならないので、今回は出撃はしなかった。残ったプリキュア達を各班に配置せねばならないし、自身も砲塔要員に欠員が出たので、第二砲塔に詰めなければならない。(欠員の理由は食あたりとの事)

「響の奴、驚くぞー。なんだかんだであいつら、どこかしらで縁あるな…。もしかして、それが理由か?」

圭子はのぞみと響(北条響)に秘められた縁に感づいたようである。カットバックドロップターンという単語を出したのも、薄々とだが、知っていたからだろう。二人にある、世界を超えた縁というモノを。ただし、そうなると美遊(リーネ)も巻き込む。自身は第二砲塔に向かいつつ、そうつぶやいた。








――この時の経験が、のぞみ自身が現役プリキュアだった頃の時間軸の派生世界での一暴れに繋がったのは確かである。のぞみ自身はプリキュア勢の中では、後半生に『諦めてしまった』ことから、『諦めない事』、『どんな事にもくじけずに前を向ける強さ』を他の誰よりも渇望し、その渇望の性急さをのび太に諌められ、諭された事から、のび太を強く慕うようになった。かつての恋人『ココ』の面影をのび太に見出し、のび太に往時の彼を重ねている面もあった。出会った時、のび太は既に妻子を持つ身であったが、のぞみが抱える心の闇はプリキュア勢では一番に濃く、のび太がそれを和らげる役目を果たした。また、なぎさとほのかのような、『強さ』への渇望から、最初にセブンセンシズと流派東方不敗の習得に至るなど、責任感の強さも歴代随一であった。りんの記憶喪失がそれに拍車をかけたと言える。流派東方不敗を極めると、必然的にフィンガー系の技も使え、順にレベルアップするので、最終的に行き着くところは『ゴッドフィンガー』(現時点の継承者のドモン・カッシュが新たに加えた)である。

『俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!!勝利を掴めと轟き叫ぶぅ!!ぶわぁぁぁく熱ッ!!ゴォォッドォ!フィッガーァァァッ!!』

錦との人格融合の影響か、流派東方不敗の必殺技を放つ時の一人称は『俺』で通すようになったのぞみ。ギアナ高地での修行で、別の自分が腰を抜かすレベルにまで強くなったのは確かである。また、現役時代のドリーム単独では変身できない形態である『シャイニングドリームの姿で使用する』事から、別の自分に羨望されることにも繋がる。また、圭子が推測するように、プリキュアとしては、遥かに後輩である北条響との関係が一気に進展し、呼び捨てするほどの仲になった事は不思議がられており、何かかしらの要因が周囲から推測されている。(中には、のぞみと響の憤慨間違いなしのものもあった)軍隊でも同期、プリキュア仲間でもあったという関連性の強さが、プリキュアになった年代が離れている二人を引き寄せたのは確実である。現役時代にはなし得なかった『究極形態』への単独変身を修行で勝ち取ったのぞみだが、どことなく『言動に影が差している』と派生世界での水無月かれんに指摘される事になる。

『貴方は私達の知らないところで、何か大きな闇を抱え込んでいる…。何を求めているの、のぞみ!』

『……力、ですよ、かれんさん。教師生活に行き詰まった時、何もしてくれなかった神様よりはよほど役に立つモノです』

『……!?』

『私の軍での先輩は、正義がなくとも地球は回る』って言っています。確かにその通り。だけど、自分の仁義だけは貫きますよ』


その世界に滞在中、その世界のキュアアクア/水無月かれんには見抜かれたためか、自分の心の『闇』を告白している。また、その場に、かれんしかいないのもあって、圭子と同じように、煙草型の喉の薬を咥える姿を見せた。精神的に大人である事を示す意図もあるのだろう。

『貴方には、そこまで追い詰められる前に、戻る道もあったはずよ、のぞみ』


『……訂正します。戻れなくなったんじゃない、戻る気が無くなったのかもしれません。ある時点で、もう……。ココとの約束を破りたくないから、教師生活は定年まで続けましたけど』

哀しげな表情ののぞみ。水無月かれんは、その表情で、目の前の『夢原のぞみ』が直面したであろう残酷な光景が何であるかを悟ってしまった。その一方で、戦う事で自らの存在意義を見出す、証明しようとする姿を『哀しい』と評する。

『職場の誰かがほんの少し優しければ――、貴方は教師生活に行き詰まる事もなければ、ココとどこかで結婚して、パルミエ王国で幸せに暮らしていたでしょう…。でも、そうはならなかった。ならなかったのね――?』

かれんの15歳とは思えぬ言葉。のぞみが後半生で味わった『孤独』、『挫折』、『疎外感』。それを悟ったのである。静かに語りかける分、のぞみには重く感じた。そして、それを経た自分はもう、『14歳の夢原のぞみ』には戻れない。そう悟らせるような雰囲気。

『のぞみ。あなたは『変わってしまった』からこそ、プリキュアとして現役の頃に郷愁を感じた。過去を乗り越えるために、いったいいくつの決意が必要なの?』

『…手厳しいですね、かれんさん』

『のぞみ、結束よりも結果が、意志の確認よりも、自分の望む結果が必要な人間も世の中にはいるのよ。哀しいけど、これが現実よ』

かれんは皮肉めいた一言を言う。目の前ののぞみが『後半生の何かかしらの悲しい出来事で挫折した』人生を辿ってきた存在であることを見抜いた上での一言だった。

『裏世界じゃあ、この世に信奉すべきは剛力のみって、いつ、どこの誰が言ったのかは分からない格言が残ってます。わたしは確かに大人の世界に呑まれて、変わった。…だけど、一つだけ確かな事はあります。この頃の私は生きてるってことをプリキュアの力に賭けた。それだけは嘘にしたくないんです。ココ、ナッツのためにも』

のぞみはそれが自分に残されたモノであると明言し、薬を吸う。転生者である以上、精神的には『大人』である。それをかれんに明確に示す。

『兵器を裏で売りさばいて、平和を訴えてるド阿呆共に限って、道徳を説くものですよ、かれんさん。そういう連中の説く道徳ってのは欺瞞に満ちてるのが『お決まり』なんですよ』

大人ののび太は裏世界に生きている。その仕事に何かかしら関わったが故に、どこか裏世界に染まったと思われる、黒い面を見せるのぞみ。これははーちゃんも同様だ。世界の暗黒面を見てしまうと、『戻れなくなる』。黒江達が『汚い手段』にも、割に躊躇がないのも、のび太の仕事で裏世界を見たためである。(扶桑は不景気を起こさせないため、また、軍人を大目に雇用したり、エクスウィッチの再就職先を海援隊として用意したり、軍事技術者に仕事を定期的に与えて、不景気への対策としていた面がある。そのため、クーデター後の日本主導での雇用抑制は混乱を呼び、結局、戦時動員を数年間しないという形での規制で留められたが、混乱の影響がデザリアム戦役に間接的に悪影響を及ぼした。プリキュア・プロジェクトが日本連邦の公式施策になったのは、ウィッチへの社会的迫害の抑止、軍の雇用維持以外に、迫害を容認する風潮の防止が目的であった。かつて、旧共産圏の軍人達が体制の変化での人員削減で裏世界に入り、マフィアを強大化させてしまった例がある。扶桑はそれを指摘した。日本でも戦後に、それと似た例は枚挙に暇がない。日本側は開発などで雇用を作ればいい!と抗弁したが、ウィッチ世界は定期的にランダムに怪異が湧くため、ゆっくりと開発していられるほど悠長ではいられない。その方面での裏仕事をしたためだ)

『ある世界じゃ、一週間で数十億が死んだ戦争をしても、断続的に戦争状態の国と国もあるんです。それに比べれば、第二次世界大戦はまだ環境に優しいほうです。世界の裏側を見ちゃうと、殺るか殺られるか。極端に言えばそれが真理なんですよ。力がなきゃ、全てが頭越しに否定されるだけです』

それは扶桑の戦艦が半宇宙戦艦化、もしくは宇宙戦艦そのものとなった代物に入れ替わりつつあると分かった途端に、防衛省の背広組が『そんな!ヤマトと同世代の宇宙戦艦に入れ替えてるなら、なんでアメリカから兵器を買ってんの!?意味わかんない!』という趣旨の質問状を出し、扶桑側を呆れさせたダイ・アナザー・デイ中の出来事が代表例だろう。戦艦を『宇宙戦艦ヤマトと同時代の技術で新造した』。これは21世紀には、戦艦と巡洋艦は作れない事を前提にしての施策であるので、防衛省の一部には『馬鹿にしている』とする声もあったが、『ロストテクノロジー化している戦艦主砲は我々には作れない』と現実を受け入れる声が多数派だった。乙巡までなら、2010年代のテクノロジーで全ての代用が聞くが、重装甲の甲巡と戦艦は21世紀にはロスト・テクノロジーそのもの。甲巡はともかく、40cm砲を超える艦砲を持つ戦艦など、21世紀ではアメリカでも困難を極める。(2000年代後期に、アーセナルシップの実質の代替で、試験艦名目で数隻が建造されている)ましてや、かつてのギネス世界記録であった大和型戦艦、それをも超える超大和型戦艦の主砲など、21世紀の時点ではロスト・テクノロジーそのものだ。これは扶桑の技術を侮った日本が赤っ恥を晒した例の一つだが、Gウィッチはこれと似たような事を、現役世代ウィッチとの間で幾度となく経験した。Gウィッチは転生という『通常ではありえない』手段で摂理を超えたため、突然変異視した現役世代と衝突した。現役世代の古参と中堅の世代間対立も起こった果てに、Gウィッチが軍ウィッチの範とならなければならなくなった。この事に関節的に触れる。

『私と、生まれ変われた何人かのプリキュアは職場で辛い目にあった。けっこう誹謗中傷にあいましたよ。魔法が普通にある世界でも、異質と見られたのは、ショックでした』


『プリキュアの力はリスクが有る場合の魔法と違って、目立った弱点がないもの。フェリーチェを見る限り、魔法と両立さえ出来る。嫉妬されて当たり前よ、のぞみ。特に、その力を特権と見てるような輩には』

『なんだか、現実って残酷だなって思っちゃって』

『貴方の挫折もそうだけど、必ずしも理想で食べて行けるほど、現実は甘くはないわ。ココとの約束を守ろうとした事が、貴方を逆に追い詰めた事は残念だけど…。のぞみ、貴方。軍で将校なら、銃はどうしてるの』

『やだなー。刑事コロ○ボじゃないんですから、ちゃんと射撃訓練してますって。日本軍だから、銃は私物ですし』

『何を使ってるの』

『あれ、かれんさん、銃に興味が?』

『アメリカの別荘にシューティングレンジがあるのよ。私は一、二回しか使ったことないのだけど』

『これです。スタームルガー スーパーレッドホーク。友達から勧められて、そのまま使ってます。スミス・アンド・ウエッソンのリボルバーよりタフなんで、実戦でも使えます』

『ダブルアクションリボルバーね。44マグナムモデル…。けっこう鍛えたのね、ダブルアクションのリボルバーの引き金は重いと聞くし』

『まあ、軍人やってると、それほど重さは感じませんよ。今の『友達』に射撃の天才がいて、その子から、ガンプレイのテクニックを教わりました。その子、オートマチックは故障の可能性があるって言って、あまり使ってなかったんです』

『なるほどね。リボルバーはその道のプロも作動確実性の問題で好むっていうけれど、りんがみたら、間違いなく腰抜かすわよ』

『……確かに。見せられませんね』

のぞみは学生時代の自分を振り返り、苦笑いを浮かべる。ドジっ子の類型通りで、周りにカバーしてもらっていた。それが今では『軍の次代を担う俊英、64Fのエースパイロット』と持ち上げられている。中島錦の技能を引き継いだためであると自嘲しているものの、プリキュアとしての戦闘経験は歴代でも、一、二番を争うのは間違いない。どこか、後半生の挫折が尾を引き、影の差す姿は派生世界での自分に見せたくないという本心を見抜いたかれんも、こっそり自宅に招いたのだろう。軍人になった故に、相応の事はしたと窺わせる言動、過去の自分に全ては話さないなどの、学生時代ののぞみには見られない行動。精神年齢の関係で煙草を咥えるなど、変化も大きい。かれんにだけは、『本心』を伝えたのは、現役時代の参謀役としての信頼関係からだろう。

『また、来れたら来なさい。『そっちの私』の分も、話し相手になってあげる。それと…、もし、貴方と同じようになれたら…』

『……ありがとうございます、かれんさん。肩の荷が下りました』

『貴方は溜め込むから。今とそこは変わらないのね』

のぞみは、派生世界での『水無月かれん』との会話で精神バランスを取り戻し、デザリアム戦役を戦っていく。また、かれんが、ある『約束』を交わした事も救いになったのは確かであった。



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