ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――ダイ・アナザー・デイが終わり、デザリアム戦役が23世紀で始まると、転生先の各世界へ帰省していたり、それぞれの都合で参加しなかった各プリキュアに召集がかけられた(予ての懸案であるのぞみの事もあり)。23世紀の世界で宇宙戦争が起こり、それに召集されることは予め通達されており、それに従い、多くの各世界に散っていたプリキュアが参陣した。ダイ・アナザー・デイで参加しなかったプリキュアも参陣したため、さながら『同窓会』であった。また、適性があったプリキュアは機動兵器へ搭乗できるように訓練を課されるなど、変化も起こっていた。この頃には、地球連邦軍はニューディサイズの反乱とその後の軍縮の名残りで、戦技教導団が解散に追い込まれ、ロンド・ベルがその役目も担わされるなど、任務に比して過大な責務を負わされていた。これはニューディサイズの反乱と軍縮の名残りで『専門部隊を置く』だけの理由を切迫した財務状況では見いだせなかった事と、政治的に『反乱』が恐れられたからで、実戦部隊であるはずのロンド・ベルに担わしたほうが再建途上の連邦政府にとっては安上がりと見られたからだ。(間接的になのはの失態が地球連邦軍教導部隊の解散に作用したとも)ロンド・ベルはデザリアム戦役直前に部隊が解散になり、行き場を失った教導団の要員も受け入れていたため、空母ベクトラの編入が必須と見做された。これはニューディサイズとウィッチ世界のティターンズが連邦政府を如何に震撼させたかがわかる――








――地球連邦軍はデザリアム戦役では全体で統制された行動は取らなかった。政府と軍部が恭順派と反抗派に分かれたからで、これが宇宙戦艦ヤマト率いる艦隊が二重銀河ごとデザリアム本星を破壊した後に、混迷する地球連邦軍の派閥抗争に完全に決着をつける事になる。ロンド・ベルは元ティターンズ系部隊などの内なる敵とも戦う羽目に陥り、ジオン残党の蜂起と合わせ、ゲリラ戦を強いられた。幸いなことに装備は一級品であり、当時に最新鋭機であった『RGM-153 ジェイブス』と『RGM-96 ジェスタ』などのジム系最新機を持ち出せていた。グアムにロンド・ベルが向かったのは、同地にある機動兵器倉庫が目当てであった。ノビタダ達はペガサス級『スタリオン』の厚意で補給を終えると、グアムの本隊と合流していた――



――グアム――

「今回はここにあったのか」

「え、何が?」

「ガンダム七号機だよ。純正RX-78の中では、五体満足で後世に残された数少ない機体さ」

地球連邦軍はガンダムタイプを原則として保管する意向であったので、ガンダム七号機も現存していた。今回においてはマン・マシーン化のテストベッドとされたようで、流用できる範囲の外装が新規に製造されたムーバブルフレームにつけられたと言える状態に改造されていた。重要装甲部はガンダリウムエプシロン合金に変えられているため、機能をそのままに改造されたと言える。

「へー…」

「回収するよ。フルアーマーパーツもあるようだし。あー、こっちこっち」

ノビタダの指示で、パルチザンの兵士らがガンダム7号機を回収していく。グアムに孤立していた空挺部隊が発見したらしく、まさにお宝であった。

「相模原にマドロックが置かれてたっていうけどよ、扱いに差がねぇか?」

「マドロックは闇夜のフェンリル隊に負けたからね。ガンダムの面汚しだってんで、払い下げが早い段階でなされたのさ。こいつはパイロットがエースだったから、生き残れたのさ」

「こいつが初代ガンダムの末弟だろ?」

自分が知っている情報を口にするシャーリー。

「一般的にはね」

「一般的?」

「一年戦争の記録によれば、8号機なんてのもいたらしいんだけど、記録が散逸してる。フルアーマーガンダムの素体に使われた、パーフェクトガンダムに改造された、レッドウォーリアになっただの、色んな噂がある」

ガンダム八号機。初代ガンダムの同型機としては最後のガンダムとされる。七号機の建造が戦後にずれ込んでいた事もあり、ジオン残党への『デコイ』として、計画がでっち上げられたのでは?という説が有力だが、コンペイトウに残された一年戦争後間もない時期の『RX-78-8の基礎設計は完了も…』という報告記録から、基礎設計のみは戦中に完了したという事は確定した。ただし、正式な完成は同時期の混乱で不明とされる。ただし、ガンダムマークUに影響を与えた機体とされる事から、『高機動・運動性能重視のコンセプトか?』と囁かれているが、真偽は定かはでない。

「ここ十数年の戦争で本当のところはわからなくなったけど、RX-78は試験機でもあったから、意外に多くの数が存在したらしいよ」

「軍用機だから?」

「と、言うよりは実験部隊を造るためだろうね。ガンダムタイプの今のコンセプトは『セカンドロット』で確立したものだけど、ファーストロットは実験機だったから」

「ガンダムタイプの運用方法って…」

「一年戦争の俺の戦果によるところが大だよ」

「アムロさん」

「アナザーガンダムの開発者が模索してた『一騎当千』を俺が実現したようなもんだから、気を良くした上の連中が色んなコンセプトの実験をガンダムに担わしたのさ。マドロックはガンダムとガンキャノンの機能統合を目論んだんだろうが、無茶だったな」

アムロから見ても、フルアーマーガンダムやヘビーガンダム、マドロックのように、大火力武器をガンダムタイプのバックパックにつける試みはMS用火器の高性能化で意義が薄れたとされていたが、ヴェスバーの登場で見直されている。また、マドロックのコンセプトそのものはジムキャノンUに採用されているので、徒花ではない。

「ガンダムの売りは高機動だが、一年戦争の技術では砲台と高機動の両立は不可能だったからな。ガンダム向けのコンセプトじゃ無いな。一年戦争中ではね」

様子を見に来たアムロ。ガンダムのパイロットだったため、七号機には興味があるようだ。ただし、マドロックとそのパイロットであった『エイガー』を擁護すると、『マドロックは固定火器で手持ち武装の弾切れによる攻撃の隙を埋める為の形』の初期形態であり、ガンキャノンとの統合は意図されていない。これはエイガーが戦車兵出身であることからの誤解であったが、後世においては『ガンキャノンとガンダムをくっつけただけ』と辛辣に評価されている。エイガーが聞いたら憤慨ものだ。

「七号機はフルアーマーありきの機体と聞いている。素体で出撃するのはまずないだろうな」

「乗ります?」

「俺はνガンダムがあるから、君等で使ってくれ」

「さすが」

「νガンダム系は俺しか扱えないからね。アナハイムがデータを欲しがってるし、普通のνガンダムはヘビーウェポン装備で運用するさ。ガンダムタイプは性能はいいが、それぞれの癖がある。ゼータとダブルゼータは特に顕著だった。だから、νガンダムはシンプルにしたのさ」

「なるほど。のび太、お前が造らせてる機体だけど、あのアイデア、どこから?」

「昔に見たアニメとガンプラの再現さ。兵器局にスネ夫の末裔『スネスケ』が勤めてるから、そいつを抱き込んだわけ。それと、ウチはアナハイム・エレクトロニクスの大株主だから、試験機名目で造らせてる。スローネドライはボクが出したアイデアで造らせたからね」

「いつきが使ってるガイアは?」

「別世界のガンダムをシステムのテストベッドに使っただけだよ。それでいつきちゃん(キュアサンシャイン)が昔の僕の街で上手くやってくれたから、スローネドライが造られたのさ」

「で、今は?」

「今はみらいちゃんがストライクルージュを使ってる。オオトリ装備でね。向こうのお姫様(カガリ・ユラ・アスハのこと)がやりたいって乗り気だったんだけど、流石に国家元首だってんで、没った。それで機動兵器に興味持ったみらいちゃんを乗せたのさ」

「え、ストライクルージュを持ってきたの?」

「正確には、ルナツーがガワをコピーして造った個体を返還されたのさ。オリジナルは別にある」

なんと、地球連邦軍は返還されたストライクルージュのコピー機を新操縦システムのテスト機に転用したのだ。オオトリ装備がなされた状態であったので、見るからに重武装だが、テストパイロットに朝比奈みらいが選ばれたという。そのため、23世紀でデザリアム戦役直前の頃の21世紀のススキヶ原は混沌とした光景になっている。

「セシリアさんから送られた写真なんだけど、シュールだよ。ほら」

「う〜ん…」

「まるでSDガンダムだな、これは」

アムロもこれだ。二体のガンダムが人サイズで買い物かごを片手に、商店街でショッピングをしている写真は思いっきりシュールであった。新操縦システムのテストとはわかっていても、どことなくシュールである。ジオン残党が知ったら『連邦軍はガンダムに何をさせているのだ』?と首をかしげるだろう。しかもみらいが乗るストライクルージュは装備が大仰だが、その大仰さが却って威圧感を醸し出している。

「つか、これなら暴漢も手ぇ出さねぇよ。ミサイルポッド、レールガン、ビームランチャー、刀?21世紀で使うにはオーバーだぜ」

ストライカーパックとして見ると、I.W.S.P.と同じ方向性で開発されたオオトリ。本来はオーブ防衛のプロパガンダ目的で開発されていたが、カガリがパイロットとして出れる立場でなくなった、アカツキに専用機が切り替えられたなどの理由で死蔵されたため、地球連邦軍にコピー機を返還する時におまけ扱いで譲渡されたパックである。メタルアーマーのリフターと同じ開発目的で造られたが、重武装すぎる点は『大仰』と見られている。写真を見る限り、みらいは意外と使いこなしているように見える。

「みらいの奴、畑違いの分野で大丈夫か?」

「前世で機動兵器扱った経験あるみたいで、なんか短時間で慣れたって。」

「うっそ〜…。リコちゃんはパラメイルだったか、ラグナメイルだかを乗りこなしてるし、あたし達もうかうか…」

リコはダイ・アナザー・デイで最終的に龍人器『焔龍號』を新造してもらい、それで活躍(フェイトも最終的にヴィルキスに搭乗している)したため、日本から『ずるい!』という声が出ている。意外にプリキュアは前世まで裾野を広げると、機動兵器搭乗経験者が多いのである。

「でも、ありすちゃんが指揮適正ありなのって?」

「転生先が西住みほだからだろうよ。あたしはアネモネから麦野沈利経由、紅月カレン、北条響、シャーロット・イェーガーだぞ?日本の連中にキレると怖い扱いだぞ」

「まぁまぁ。あたしはレントン・サーストン、諸々スポーツマンガ経由、某有名ジャンプ忍者漫画の主人公の息子を経てるからねぇ。レントン以外は機動兵器に縁ないよ」

のぞみは転生の過程で機動兵器には縁がそれほどない(戦闘には縁がある)道筋を辿ったため、シャーリーの機動兵器漬けの転生を羨ましがる。もっとも、リーネも複雑な転生である上、のぞみとは前世以前でつながりがあったため、色々と複雑な心境であるが。

「お前、それなら、ガンダムシュピーゲルの同型機もらえよな。ネオドイツが喜んでくれるぜ」

「それ、前にりんちゃんに話したんだ。そうしたら、あたしもそうなんだけど?って言われた」

「あ!!そうだ、お前ら前世以前で親子だぞ!!」

「う、うん。実ははーちゃんも家族だったんだよね…。お互いに気づいたけど」

「なんだってぇーーーー!?」

腰を抜かすシャーリー。のぞみとりん、ことはは前世以前から強いつながりを持っていた事が確定する。

「驚いたな。しかし、その論理でいけば、つぼみくんもそうなるぞ」

「は、はい…」

「なぁんてこったぁー!!」

と、どこかで聞いた驚き方なシャーリー。これが、のぞみとことはが不思議と姉妹のように振る舞えた最大の理由だった。アムロも驚きのようだ。

「゙や゙ばい゙ぞ゙ぞれ゙ーーー!」

「落ち着け、シャーリー。言葉に濁点ついてるぞ」

「だ、だ、だ、だって…」

大いに狼狽えるシャーリーだが、この手の話は身近に数多い。サーニャがイリヤになり、ルッキーニがクロになり、リーネが美遊となり、マルセイユはルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトになっているのだから。

「お前だって、盛りすぎなくらいじゃないか、狼狽える事か?」

「そ、それは…」

「形無しだね、シャーリーさん」

「るせぇ!」

「さて、七号機を回収したら、空挺部隊を引き取って、アデレードだ。ダイ・アナザー・デイでのび太の実家が管理を委託されたヒーローユニオンの倉庫に向かうぞ」

「ああ、ダイ・アナザー・デイで伝えられたっていうヒーロー達の遺産が眠る」

「うちの者に最近は管理させてるよ。民間払い下げの倉庫だから、ジオン残党も手は出さない」

のび太がヒーローユニオンから管理を委託された『旧・地球守備隊が遺した地下倉庫』。そこには鳥人戦隊ジェットマンや超新星フラッシュマンなどが遺したメカニックが一括で保管されており、メカトピア戦役当時は歴代ライダーが管理していた。現在は野比家がS.M.Sに警備を委託しており、表向きは野比家の物置きである。(裏では『予備役部隊技量維持補助金』ということで、アデレード郊外にある同倉庫付近を演習場代わりにしている)

「プリベンターがうちに査察に来たから、その時はブツを見せたよ。奴さんも驚いてた」

「なんで連中がお前んちに?」

「倉庫の名目で、モビルドールとかゴースト隠してるんじゃないかって、連中に疑われたらしんだ、ウチ。しょうがないから、連中にグレートタイタンとか見せたよ」

「連中は?」

「軍用機の私有にあたらないし、ヒーローユニオンからの委任状もみせたよ。仮面ライダーV3、風見さんの署名入りだ。連中も気まずそうだったね」

軍縮が解除された後もホビー用に改造されていない『武装された機動兵器』の保有は厳しい規制下にある。プリベンターはその規制の管理も行っているため、単純な情報部ではないことは暗黙の了解であった。野比家は『国連時代の軍用倉庫の払い下げを受けた』ため、プリベンターが念の為に査察を入れたのだが、ヒーローユニオンからの委任状という錦の御旗の前に頭を垂れるハメとなった。『ヒーローユニオン』はダイ・アナザー・デイ後に正式に『政府委託の調査、警備会社』として登録されているれっきとした認可された組織であり、日本のスーパーヒーローの管理運営所だからだ。なお、ヒーローユニオンのCEOは形式上、仮面ライダー一号/本郷猛であるという。

「なんで?」

「ウチの私有だけど、H.U.((ヒーローユニオン)に賃貸に出している契約なんだよ。ノビヒサが書類を見せて、連中の顔色が変わったそうな」

「連中は手柄が欲しいのさ。特に中堅は。幹部の少なからずがOZの元幹部だからな」

プリベンターの幹部層にはOZのトレーズ派出身の元軍人も多い。彼らは爵位も持つため、OZと違い、爵位がないティターンズ出身者などから嫉妬を買っている。仕方ないが、プリベンターに衣替えしたOZトレーズ派は一貫して社会のエリートなため、ティターンズからの汚名返上を狙う層、ギガノスから恭順した層などから嫉妬めいて見られるのだ。

「派閥抗争、か」

「仕方ない。あそこはOZ、ギガノス、クロスボーン、ザンスカールなどが潰れて、食いっぱぐれた軍人の再就職所でもある。派閥抗争は自然と起こる」

「彼らの協力は得られますか?」

「補給などで手配済みだ。ああ、言っとくが、実弾はMSなどにはなるべく使うな。正規の補給がまともに機能していないからな。デザリアム相手に使え」

「了解」

「で、なんで、倉庫にあった陸軍の旧式装備を運んでるんですか?」

「一年戦争からデラーズ紛争までの古いものだが、実体弾だから、ゲリラ戦に向いている。ジム・コマンドやジム改用に使われてたものだ。盗られるくらいなら、運んでおく」

「180ミリキャノンも?」

「そうだ」

パルチザンはグアム基地の物資を全て回収する。デザリアムに接収されるのは目に見えていたので、立て看板に『未知疫病患者収容所』といういたずらを残す。

「サムソントレーラーに組み立てしてない機体の胴体だけ積むんだ!ライフルの外部パワーソースに使う!」

「了解!」

兵士たちの慌ただしい作業は進む。そして、軍医の提案で大がかりないたずらが行われた。『疫病患者収容所』という看板をあちらこちらに残すのだ。

「なんですか、あの看板」

「軍医曰く、故事に習った嫌がらせだそうな」

これは第二次世界大戦のキスカ島撤退作戦の折、日本軍がいたずらで『ペスト患者収容所』という立て看板を残したことでパニックが起こった故事に習ったいたずらであった。デザリアムが如何に宇宙人でも疫病と無関係ではないと思われるため、パニックは起こせるはずという判断でなされた。これは体が機械だが、頭部は生身であり、生物として末期の状態のデザリアム人に大パニックを引き起こした。誰かの提案で『バイオハザード』標識も付け加えた事が宇宙怪獣とも戦闘経験があるデザリアム軍を大パニックに陥れた。デザリアム技術陣は技官のアルフォン少尉が『フェイクである』と見抜くまでの数日、地球占領軍の業務は混乱状態に陥ったという。

「故事って?」

「思い出した。キスカ島撤退作戦だ」

「キスカ島撤退作戦?」

「日本軍が例外的に無傷で撤退できた唯一無二の作戦さ。そうか、この時代だと故事って言われるんだな」

ノビタダも言及した日本軍事史に残る奇跡の撤退。のぞみは始めて聞いたが、シャーリーは知っている。

「お前、日本連邦軍に籍があるくせにケ号作戦も知らねぇの?」

「だ、だって、ウィッチ世界じゃ起こってないし、転生でも無縁な生活長かったし」

「まぁまぁ。綾香さんがいたら、映画観賞になってるところだよ、のぞみちゃん」

「先輩、そういうところ、抜け目ないんだよなー…」

のぞみは黒江の教育を受けている身だが、どこか抜けているため、黒江曰く『育て甲斐がある』と見られている。要領がいい調とフェリーチェと違い、のぞみは錦の立場を受け継いでいるが、二人に比べれば不出来である。のぞみは立場上、プレッシャーに潰され気味だが、黒江の直接教育を受けられている点で、エリートと扶桑空軍では見なされている。

「君もエリートだよ、充分に。綾香とも長い付き合いだが、あの子がまだ部下だった頃、よく、戦術ディベートに付き合わされたもんだ」

黒江もロンド・ベルへの赴任初期は背伸びしていた時期があり、アムロは上官として指導をした。今の黒江の教育法を確立させた影の立役者はアムロである。

「ああ、昔、智子さんと始めて口論した時、アムロさんが」

「あの時に叱ったが、まさかあの子の考えを変えるとは、思ってもみなかったよ」

黒江の叱り方は諭すようなものであるが、それは智子との口論の際にアムロに叱られ、自身が管理職についたことで実感した育成方針であり、坂本のスパルタ教育と対極にある。もっとも、『アメとムチ』はちゃんとするため、なのははやらかしを知らされた黒江にサンダーブレークを食らわせられている。

「先輩、どうしたんですかね」

「ああ、フェリーチェに呼ばれて、時空管理局に行った。アクアとミントがいそうな世界の候補が挙がったそうでな」

「そうですか。あたしも一回はいかないと」

「そうだな。姿くらいは見せないと、先方の信用は勝ち取れない。どうせなら、一暴れしてみたらどうだい?」

その一言がきっかけで、のぞみはその世界に足を運ぶ事となる。アムロの言う通り、過去の自分の前で暴れる事になったが、その時点で既に現役時代より格段に強くなっていたために安心していたが、タウ・リンは更に上の次元にいたのである。それが危ういバランスで成立していたのぞみの転生後における精神バランスを破綻させ、『半堕ち』にまで身を落とす事になってしまうのだ。それからというものの、のぞみにとっての悪夢であるダークプリキュア化した長女が闇堕ちを囁く悪夢にも悩まされ、瞬く間に錯乱状態に陥り、フェリーチェに『決断』を強いるのである…。プリキュアで独房入りまで経験したのは、のぞみが初であった。前世での長女の幻影にさいなまれ、遂には彼女自身が精神病院行きになりかけた点で言うなら、タウ・リンはプリキュア最強の敵と言えた。肉体的にもキュアラブリーとキュアハートすらも寄せ付けないほどの達人であり、誰かを『壊す』技量も一級であった彼はまさにプリキュア共通の敵であった。のぞみが壊れた理由は色々だが、大きな要因は自分が強さを認めた後輩がけんもほろろに叩きのめされ、自分自身もまったく歯が立たなかったという『認められない』現実であろう。ノビタダはタウ・リンに施された施術を『ジオン脅威のバイオテクノロジー』と称したという。



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