短編『ジオンの残光、三度の蘇り』
(ドラえもん×多重クロス)



――メカトピア戦争(あるいは戦役)の終結から間もない頃、地球連邦はジオン残党がその他の組織の残党を吸収合併して規模を往年の公国軍に近くして行ってる事を察知し、各武隊にジオン残党への警戒を通達した。ロンド・ベルも例外ではなく、レビル将軍らの提言により珍しく戦時編成が維持されたままで任に就いていた。

――旧サイド6、現サイド5近く

この時はドラえもん達は1999年へ帰還し、御坂美琴らも2010年代へ戻っていた。が、なのは達は時空管理局が戦後に地球連邦との交流を本格化させた影響で、ミッドチルダへの帰還は先延ばしされ、交流の一環でしばしこの世界に留まり、ロンド・ベルの平時の任務の一つ“ジオン残党掃討”に関わっていた。



「あれかスペースコロニーかぁ……なんだかアニメで見るより迫力あるなぁ」

「あれがサイド5、昔のサイド6だよ」

なのはに説明するのはジュドーである。ブライトから“リィナやプルで子守りには慣れてるだろう”との理由でここ最近はなのは達の面倒を見させられていた。と、言ってもジュドーもまんざらでもないようであった。

「番号、繰り上がってません?」

「一年戦争から立て続けに戦争続けてるからコロニーも大打撃受けてね。再生計画で新造したり移動させたりしたから行政区分が変わったんだよ」

ジュドーが言うには度重なる戦乱でコロニーの移動や新設が相次いだ結果、一年戦争時からは行政区分が変化したとの事である。

「ややこしいですね」

「地図も変わったからね。だけどそこらじゅうにハマーン派やシャア派の残党が隠れてるんだぜ?モグラたたきやってる気分だよ」

「ジオンの残党でも派閥があるんですか?」

「ああ。大まかに分けて一年戦争の時のザビ家の流れをくむハマーン・カーンのアクシズの残党、それ以前のジオン・ダイクンの考えを主軸にするシャア・アズナブルの新生ネオ・ジオンの二つがある。同じジオンでもこの二つは目的が違うから反目しあってた。ジオン公国の復興とスペースノイドの純粋な自立とじゃ、似てるようでも違うからね。だけどこの二つも統合の動きがあるのさ」


ジオン公国残党のアクシズが発展した第一次ネオ・ジオンと第二次ネオ・ジオンは名称こそ同じだが、別組織である。そのため連邦はこの二つは決して交わり合う事は無いと高をくくっていた。が、同じルーツを持つ者故にいずれは一つにならなければ連邦に駆逐されてしまうという事実に突き当たったのだろう。



「一つになるって……?」

「残党が統廃合することでネオ・ジオンは最盛期の勢力を取り戻し始めてるんだ。このままじゃただやられるだけだって互いに気づいたんだろうね」



そう。地球圏にいたジオン残党は在りし日のティターンズが設立当初からしばしの間行なっていた掃討活動で既に一年戦争終結時から4割の戦力を失い、更にアクシズの内紛で折角再建した戦力を消耗、大規模な軍事行動が出来ない水準に低下。それにシャア・アズナブルのネオ・ジオンに取り込まれなかった者達は座して死を待つのみだった。それをシャア・アズナブルの新生ネオ・ジオンが吸収合併し、他組織残党も組み込んでの戦力再建に成功しつつあるのだ。

「ジオンが往年の勢力に戻っても今の連邦軍とは比べようがない戦力でしか無いじゃないはずなのに、なんで抵抗を続けるんですか?」

なのはの疑問も最もである。旧ジオン公国と同規模の戦力をネオ・ジオン軍が得ても所詮は現在の地球連邦宇宙軍の五分の一以下の数でしか無いからだ。

「さぁね……。スペースノイドには良くも悪くも地球を故郷って考えない世代が増えてる。だから昔の国々の旧主要都市を躊躇いなく破壊したりしたのが受けた。だけどそれはアースノイドの逆鱗に触れる事だった……。因果応報、自分達がやった行為がティターンズのような奴らを生む土壌になったのは皮肉だよ。だけどジオンはその辺を上手く立ちまわって支持を保ち続けてる。この辺が他の組織と違うところさ」

そう。因果応報とはよく言ったもので、旧ジオン公国が地球の主要都市を壊滅させた報いでアースノイドにスペースノイドへの憎悪の念を少なからず植えつける事になり、ティターンズが生まれ、ジオン残党狩りがスペースノイド弾圧の方便に使われたこともある。それでもジオン残党がシンパを持ち続け、組織を保てるのは地球連邦政府へのスペースノイドの反骨心を匠に刺激しているところだろう。

「モビルスーツと交戦する場合も多くなると思うから訓練したほうがいいよ」

「一応、イメージトレーニングとかはやってるんですけど、宇宙空間で戦った事がないんでいまいち感覚がつかめなくて」

「そりゃそうだろうね。あれで宇宙空間で戦えたらそれこそシュールだしね」


そう。なのはと言えど、宇宙空間で生身の戦闘を行った経験はない。魔導師は先の大戦で少なからず各軍を困惑させたが、さすがに宇宙空間では戦えない。ドラえもんらが残した食用宇宙服やテキオー灯を使えば不可能ではないが、ビームやミサイルが365度で飛び交う戦場を生身で駆け抜けるのは如何になのはやフェイトと言えど無謀である。

「でもコロニーの中でモビルスーツと戦闘なんて多いからね。シミュレーターでモビルスーツとかとの戦闘の感覚掴むといいよ」

「魔導師とかウィッチに対応した型できたんですか?」

「アストナージさんの話だと管理局と連邦軍が共同開発してたのが完成したんだって」

そう。なのはやフェイト、智子、黒江達に限らず先の大戦では魔導師やウィッチが少なからず戦闘に参加し、相応の結果を残した。それら交戦データを解析し、時空管理局と地球連邦軍が共同開発していた戦闘シミュレーターが完成し、データ収集のためにウィッチや魔導師が出向している各部隊で試験が行われていた。ロンド・ベルもそれは例外でなく、各艦内にそのシミュレーターが置かれ、試しに使用されていた。

















――ロンド・ベル第一艦隊所属、クラップ級内惑星間用巡洋艦(波動エンジンやフォールド機関などの高性能機関の実用化で外宇宙航行艦が多数配備され、外征艦隊を編成できるようになったので、核融合炉を動力とする外宇宙航行能力を持たない艦を“内惑星内巡航艦”とカテゴリーするようにした)「ラー・ケイム」内のとある一室


「ハァ!」

ここではフェイトが試しにシミュレーターを使用していた。コロニー内の戦闘を想定したバーチャルリアリティ空間のようで、周囲の景色はネオ・ジオンの勢力下のスペースコロニー“スウィート・ウォーター”である。(原理としてはシミュレーター内に形成し、その中で安全にデバイスを使用できるようにしたものだ。これにはドラえもんのひみつ道具を解析し、復活させた空間系テクノロジーも使われているのだ)フェイトが戦っているのはネオ・ジオンがアクシズ時に開発したモビルスーツ“ガサD”。一見してシュールな光景だが、現実問題としてこういう戦闘は起こり得るためにフェイトはシミュレーターを真っ先に使用したのだ。



「くぅ……!」

ガサDの火器である“ハイパーナックルバスター”が火を噴く。この頃になるとコロニーの外壁の強度も強化されているので、コロニー内でのビーム兵器の使用も一年戦争当時よりは緩和されている。そのためにビーム兵器を撃ってくるのだ。フェイトはそれを持ち前の反応速度で回避、バルディッシュ・アサルトで反撃に出る。一気に上段からザンバーで切り裂く。敵の装甲のガンダリウム合金の強度も実機と同じようにシミュレートされているので感覚がつかめる。

「人が乗ってる機械を斬るのはなんとなく嫌な感じだけど……やるしかないんだ…!」

そう。シミュレーター上の敵とはいえ、モビルスーツは人が操る兵器である。それを思うとこうしてメインカメラから下半身まで綺麗にまっ二つにすれば、当然ながらパイロットは死ぬ。だが、実際の戦闘では状況は選べる訳ではない。贅沢は言えないのだ。

(美琴さんみたいに超電磁砲が撃てれば私だって打撃力上がるんだけどな……そうすればデルザー軍団とも戦える)

フェイトはこの世界での兵器に対する中遠距離への打撃力がなのはに比べて不足しているのを通関しており、以前に美琴が見せた超電磁砲への憧れを持つようになっていた。デルザー軍団の前に無力であったことを悔やんでいるのがよく分かる。

「え、ええ!?ザ、ザクV!?」

今度はザクVの小隊がズンと進撃してくる。しかもメガ粒子砲を乱射してくる。その火力はガサDの比ではなく、フェイトは慌ててその場を離れる。空中に飛び上がって回避行動を取りながらザクVに近づこうとするが、ザクかしらぬ重火力の前に苦戦を余儀なくされ……。


























――この時のロンド・べルの編成は戦時体制が維持されたために、グレートマジンガーやマジンカイザーが外れた以外はほぼそのまま。真ゲッターがあるというのはジオン残党にとって最大級の脅威であった。ネオ・ジオン軍にとっては地球を一撃で滅ぼせるマシーンが連邦の手にあるというのは最大の懸念材料であった。


――暗礁空域 レウルーラ 総帥室

「大佐、これが新型のゲッターロボのデータです」

「にわかには信じがたいな。星を滅ぼせるほどのスーパーロボットなどとは」

「ゲッタードラゴンとも比較にならないほど強力無比なマシーンです。いかがいたしますか?」

「流竜馬らにしか乗りこなせんマシーンとは言え……軍団をぶつけても返り討ちにするようなスーパーロボットは脅威だな……」

「更に新型のマジンガーが先の大戦で使われたという情報も入っております」


「新型のマジンガーか……こればかりはモビルスーツでどうにかできる相手ではない。連邦も変わったものだ……」

シャアは真ゲッターやマジンカイザーなどの連邦が自分たちをも脅かしかねない程の力を扱ってみせるほどに腐敗から脱却し始めた事に驚きを見せた。現在の連邦軍の指導者が一年戦争の英雄と謳われ、実は生きていたレビルという事に注意を払う。


「レビルは一年戦争時にからいた高官らの中でもとびきり有能な御仁だ。ジャミトフやマイッツァー・ロナなどという輩とは桁が違う。あの連邦を立て直すほどの男だ。老体ながらあなどれん」

シャアも確かに戦略家としては一流を自負するが、レビルはジャミトフ・ハイマンやマイッツァー・ロナなどを明らかに超える能力を持つ。惜しむらくは彼が政治家でなく、軍人という点だが、戦略的には一年戦争の戦局を逆転させた事実がある。旧ジオン公国でダイクン派であった高官が補佐についているとはいえ、その辺は自分がレビルに及ばない点だと自覚している。




(アムロ……私は生きている。お前も私を感じてみせろ……)

シャアは静かに宿敵との再戦に燃える。そしてこの後、シャアは地球圏への帰還を決意、西暦2201年2月付けで艦隊を率いて地球圏へ向かう。その時に兵たちへ向けて行った演説がこれだ。


「かつて、私の父ジオン・ダイクンが宇宙移民者、すなわちスペースノイドの自治権を地球に要求した時、父ジオンはザビ家に暗殺された。そしてそのザビ家一統はジオン公国を騙り、地球に独立戦争を仕掛けたのである。その結果は諸君らが知っている通り、ザビ家の敗北に終わった。それはいい。だが、地球連邦政府は増長し、連邦軍の内部は次第に腐敗し、ティターンズのような反連邦政府運動を生み、ザビ家の残党を騙るハマーンの跳梁ともなった!そしてガミラスやゼントラーディ、白色彗星帝国などの異邦人らの攻撃、コスモ貴族主義運動を起こしたコスモ・バビロニア、マリア主義を掲げたザンスカール帝国などの興亡を経験しながらも地球連邦政府はなおも地球へ寄生虫のようにへばりついている!ここに至って私は人類を次のステージに進めるためには何が必要か確信したのである!これが我らネオ・ジオン軍の今次の目的である。地球圏における戦争の源である地球連邦政府を粛清する!……諸君!自らの道を拓く為、戦争難民とスペースノイドのための政治を手に入れる為に、再び諸君らの力を私に貸していただきたい!そして私は父ジオンのもとに召されるであろう!!」




シャアのこの演説には兵達向けの表向きの美辞麗句の他にシャア本人の決意が隠されていた。既に第二次ネオ・ジオン戦争でフィフス・ルナ落としで多くの人々を虐殺し、アクシズを落とそうとした自分を地球の人々は許しはしない。ならばニュータイプへの人々の覚醒を促すために、キャスバル・レム・ダイクンとして、シャア・アズナブルとして、如何な所業も行い、十字架として背負うという悲壮な決意。それ故にかつての仲間でもあるアムロ、ブライト、カミーユらと袂を分かった。それがネオ・ジオン軍を再興した時からのシャアの宿命かもしれなかった……。














――月面 フォン・ブラウン


ここではアムロ・レイがνガンダムに代わる愛機“Hi-νガンダム”の最終調整を行なっていた。シャアの帰還が近いと感じたのか、作業はアムロの要請で急ピッチで行なっていた。専用火器の装備、ジェネレーターは当初のものからサナリィ製の高性能なものに換装し、余剰出力を確保。スラスターもより高性能な新型へ換装するなどの最終調整が行われた結果、総合性能はテスト時より数段向上した。



「これで噂のシナンジュを超えるスペックは確保できた。問題は俺がGに慣れる事、か」



「そういう事です。ではシミュレーターにご案内しましょう」

Hi-νガンダムは改修によって組み込まれた「インテンション・オートマチック・システム」という新型ガンダムからスピンオフされたシステムで機体の反応速度が更なる次元に到達できたという反面、パイロットにかかるGが激烈になったという。そのためアムロはGへの耐性を鍛えるために訓練を重ねていた。


「おおおおおっ……」

――思わず顔が引きつるアムロ。シミュレーター上の加速度はかのトールギスまでとはいかないが、歴代のガンダムを含めてもモビルスーツとしてはトップレベルの加速度を体感している。パイロットスーツも新型のものだ。

「これが新型ガンダムだと……バケモノじゃないか。とても18m級とは思えん機動性だ」

アムロが今、シミュレーターで動かしているのは、Hi-νガンダムよりも新型のガンダム。その名も“ユニコーン”。アナハイムが実験的要素を多く取り入れて作り上げた機体だが、その性能は15m級小型機をも凌駕する側面がある。「インテンション・オートマチック・システム」が先に組み込まれた機体ということでアムロは体感していたが、その性能に驚愕した。ただしユニコーンが連邦内の穏健派と右派の間で板挟みになって生まれた機体と聞かされると、モビルスーツ一つでも起こる政治的抗争に不快感を示したという。


「いかがでしょうか、大尉。これがインテンション・オートマチック・システムです。サイコフレームと合わせればνガンダムを遥かに超える反応速度を得られます」


「いいね、悪くない」

アムロはGの増加と引き換えに反応速度が迅速化するのは歓迎したようだ。何にも代償はあるのだから。

「武装も良い感じだ。正式な納入は何時頃になる?」

「今年の初夏頃にはできると思います」

「ずいぶん遅いな」

「私共も最近はサナリィの奴らに市場が荒らされておりましてね……テストをきちんと行いたいもので」


アナハイム・エレクトロニクス社はグリプス戦役から第二次ネオ・ジオン戦争時までは“民間企業で最新鋭モビルスーツはアナハイムにしか作れない”と自負するほどにモビルスーツ市場を独占する繁栄を謳歌したが、サナリィやブッホ・コンツェルンなどの新興勢力にその牙城を崩され、現在は往年ほどの勢力は無い。失地回復のために小型量産機の他にも、ユニコーン、Ξなどの高性能試作機をバンバン試作し、軍へ必死に売り込んでいるのが、アナハイム・エレクトロニクス社の現状であった。


「まぁ不具合が無くなるのはいいことだ。よろしく頼む」



アムロとしてはなるべく早くして貰いたいが、νガンダムの時のような不具合は避けたいらしく、アナハイム・エレクトロニクス側の要求を飲んだ。これで新たな愛機の目処が立った彼は訓練を重ね、シャアの復活を万全な体制で迎え撃てるように研鑽を重ねた。


























――ロンド・ベル本隊はサイド5へ入港する。こうして平時の任務を遂行するロンド・ベルだが、スペースノイドの過激派や右派からは任務内容故に“ティターンズの再来”として憎悪されていた。そのため何も関係のない一般市民を巻き込んでのテロの標的となってしまった。



――市街地

「天誅!」

「アースノイド共の走狗め!」

武装した過激派が旧ザンスカール帝国系モビルスーツを使ってなりふり構わず破壊活動を行う。ザンスカール帝国のモビルスーツは政府崩壊後に民間へ流れた機体がかなりの数に登るが、今回テロに使われたのはリグ・シャッコーとその支援メカ“アインラッド”。タイヤで問答無用ですべてを踏み潰す様は凄惨を極めた。

「フェイトちゃん、アレを止めるよ!」

「うん!」

なのはとフェイトは休暇をもらって市街地で買い物を楽しんでいたが、テロに巻き込まれた。二人は自衛措置を取り、バリアジャケットとデバイスをセットアップして応戦した。

「フェイトちゃんはみんなの避難誘導、お願い!あたしはアレを破壊して止める!」

「分かった!」



なのははその場から飛び上がり、アインラッドの前に立ち塞がり、いつもの砲撃態勢を取る。鍛え上げた魔法で旧ザンスカール帝国系モビルスーツを止めるつもりだ。

「ブライト艦長、敵のモビルスーツを止めます!」

「すぐにこちらからも増援を送る。無茶はするなよ」

「了解!」

ブライトも状況は掴んでいるようで、なのはからの通信に軽く返すと、通信を切る。今頃ロンド・ベルの各兵器が発進態勢に入ってるだろう。足止め程度なら自分一人でできる。そうなのはは考え、モビルスーツの前に立ちふさがった。


(レイジングハート、アクセルシューターでアインラッドを止められると思う?)

「確率は0ではありませんが、装甲を削る程度でしか無いでしょう、マスター」


「と、なるとやっぱりあれだね」

「お話して止めたいけど、相手がテロリストじゃしゃーない。先手必勝!ディバイィン……バスター!」

先手必勝でディバインバスターを放つ。アインラッドの補助を入れてもモビルスーツの大きさでは避けられない速さの砲撃だ。なのはは一撃で貫くことを確信していたが……。


アインラッドの硬度はなのはの予想以上であった。対ビームコーティングの効果が魔法にも適用されたらしく、高速回転するタイヤで砲撃が減衰されて決定打にならない。

「嘘っ!?止められないなんて!?」

『フハハ!このアインラッドがそんな程度の砲撃で止められるかよ!喰らえ!』

この世界では学園都市があるせいか、テロリストもなのはのディバインバスターに驚かない。普通に対応してミサイルランチャーを撃ってくる。

「くっ!」

なのははミサイルランチャーを避けた。当たれば防御力が魔導師としては化け物級の彼女とて、無事では済まないからだ。アクセルシューターで迎撃したり、VF搭乗で培った機動を応用して避ける。

「避けてばかりじゃダメ……今回はアレでいくよ!」

なのははここで使用頻度は少ないが、大質量の敵を叩き折るのに最適なハルバートフォームを使用した。ハルバート形態はこの時は流竜馬のアドバイスで真ゲッターのトマホークランサーとほぼ同じ形状にマイナーチェンジしていた。

「えぇ〜い!!」

なんともアンバランスかつシュールな光景だが、ハルバートの刃はハイチタン合金を叩き斬る。刃の色はピンク色で、なのはの魔力を象徴している。地球連邦軍の魔改造恐るべし、である。

リグ・シャッコーがアインラッドから放り出された所を別のところからの実弾が貫く。

『よう。遅くなってすまんね』

その方角を見てみるとジムスナイパーUが狙撃用ライフルを構えていた。モーゼルKar98kを模したデザインの小粋な銃だ。ロンド・ベルはなるべく最新型モビルスーツを装備するが、狙撃型モビルスーツというジャンルは廃れたために正式後継機は出現せず、未だにジムスナイパーUが改修されながら現役の座にあった。

『嬢ちゃんはアインラッドから敵を引きずり下ろせ。後は俺たちがやる』

「はい!」

ジムスナイパーUのライフルは貫通力に優れるが、さすがにアインラッドごとハイチタン合金の装甲を持つリグ・シャッコーは打ち抜けない(VF用のライフルはモビルスーツと規格が異なるので使用不能)ので、味方との連携が必要なのだ。なのはがハルバートでアインラッドを破壊したところを横からジムスナイパーU部隊が狙撃する。ライフルは一年戦争時から使われている物なので、部隊からは新型の開発が意見具申されているとか。

「次弾装填、急げよ!」

「わかってますぜ!3番機は嬢ちゃんを援護!しくじるなよ!」





原型銃のボルトアクション式というところまで綺麗サッパリ模すところは小粋である。75ミリ砲弾を人間サイズの銃弾のように手でこめる動作を見せるジムスナイパーU。管制OSの動作も狙撃兵らしい動作を多くインプットされているらしく、実に人間くさい。

「これで最後!」

なのはのハルバートが横からなぎ払う勢いで振られ、アインラッドの車輪を破壊する。地上を走行していたのが仇になり、バランスを崩されて最後のリグ・シャッコーが投げ出される。性能面ではビームシールドを有するリグ・シャッコーが圧倒していたが、いかんせん搭乗者の練度が低い状態では真価を発揮できずじまいで、あっさりと頭部をライフルでぶち抜かれ、腕をなのはに破壊されて沈黙する。

「これで全部ですか?』

「ああ。今回のは小規模でよかったよ。これが大規模なテロだと優に一個連隊級のモビルスーツが襲ってくるからな。俺達はティターンズ出身だからそれがよく分かるのさ」

この頃には旧ティターンズ出身者の復権も進んでいたので、ロンド・ベルにも優秀かつ思想的に差別思想を持っていなければティターンズ所属の経歴があっても入隊が認められるようになっていた。今回のジムスナイパーU部隊はそれに該当した。

「今回のは過激派のテロで良かったが、いい機体が流出してやがる。ザンスカール帝国製か。やばいな」


連邦軍が最も苦戦させられた国の一つのザンスカール帝国。サイド2発祥で高い技術力を背景に連邦軍を震撼させたもの、決戦で指導者が全員死亡し、余波で政府は瓦解。崩壊後の再編された政庁によって帝国時代のモビルスーツの多くが放出され、闇ルートでテロリストに流れた物も多岐に渡る。

「ザンスカール帝国のモビルスーツって硬いですね……あれでも、カワイイほうなんですか?」

「ああ。リグ・コンティオとかドッコーラなんてバケモンとやってみろ。死ねるぜ」

ジムスナイパーUのパイロットは機体越しに嫌んなっちゃうとばかりのアクションを見せる。妙に人間っぽいアクションに思わずずっこけるなのはであった。



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