短編『9人の勇士の平穏』
(ドラえもん×多重クロス)



――かつて、地球を悪の手から守りぬいた仮面ライダー達はそれぞれの人生を未来で再開していた。仮面ライダー1号=本郷猛はその明晰な頭脳で生化学者として名を馳せる一方、亡き恩師の立花藤兵衛の遺志を継ぎ、オートレースのトップレーサーとしても活躍するようにもなった。2号=一文字隼人は元々の稼業であるカメラマンの仕事を再開。ジャーナリストとして1970年代当時に既に高い評価を得ていた彼は未来の新聞や情報誌に文章と写真を寄稿するようになった。V3=風見志郎はかつて、自らが改造人間になるきっかけとなった『デストロンに惨殺された家族』の供養をしながら風来坊のような生活を送り、ライダーマン=結城丈二は科学者として組織が残していった技術を平和利用するための研究を行い、医療界に一大センセーショナルを巻き起こしていた。X=神敬介は海洋冒険家、山本大介=アマゾンは南米で観光ガイドを、ストロンガー=城茂は日本で立花藤兵衛の親類の子孫から譲り受けたバイクショップを経営し、スカイライダー=筑波洋はハンググライダー教室の講師をし、スーパー1=沖一也は元々、宇宙飛行士だったために現在は『宇宙開発』に心血を注いでいた。メカトピアとの戦争も終わり、地球に平和が戻った数ヶ月後の事。













――西暦2200年 11月

「うーん。どうだい?」

「エンジンをだいぶ使い込んでるな。あっちこっちにガタが来てるぜ」

「マジ!?」


シャーロット・E・イェーガーは愛用のバイクの調子が悪いのが気になり、戦中に知己となった城茂のバイクショップに持込み、エンジンのオーバーホールを頼んだのだが、予想以上に問題は深刻なようだった。

「たしかこの規格の状態がいいエンジンがあったな。取っ替えるから時間かかるぜ?」

「頼むよ。チューンもしといてくれ」

「あいよ。一通り見たが、かなり改造してるなお前」

「スピード上げたいからいろいろ工夫してんだ。何せハヤ○サみたいに元から馬鹿みたいに速いの無い時代だし」

「だからってサイドカーつけてる状態ですんなって。サイドカーもかなり傷んでたぞ」

茂もシャーリーのスピード狂ぶりにはいささか呆れているようだ。サイドカー付のバイクまでチューンしてしまうあたりは『本物』だ。シャーリーはウィッチであるので魔法を活用すれば仮面ライダー達のスーパーマシーンも乗れるためか、以前からどれかに乗ってみたいとライダー達に言っている。


「代車にこれ使っとけ。前にバダンのコンバットロイドから分捕っておいたヘルダイバーの量産型だ。お前なら大丈夫だろ」

「サンキュー。でも他のバイクはどうしたんだよ?このオートバイ、戦闘用じゃん」

「この時期は中年のおっさんやじいさん達がツーリングしまくってるからよくオーバーホール頼まれるんだよ。そのせいでぜ〜んぶ出払ってんだ、代車用の普通のオートバイ」

「ああ、行く途中に見かけたよおっさんライダー達。あんなのがゴロゴロしてんのかよ」

「そういうことだ。これは一部機能を省いてるが、大体は村雨のやつと同じスペックだ。核融合炉積んでるし」

「‥…マジ?」

そう。仮面ライダー達のような改造人間は普通の人間が耐えられない領域のスピードでのオートバイの制御も可能である。組織は重力制御や耐G制御などの技術も発達しているため、改造人間用のバイクには必然的にこの世のモノとは思えない高スペックが要求された。技術陣は航続距離の問題を解消するために小型化された原子炉や核融合炉を通常エンジンの形状に偽装しながら積み込んだ。その最初の成果がサイクロン号(試作機を分捕った)である。このサイクロン号で得られたノウハウが立花藤兵衛の技術スキルを押し上げ、後に組織から分捕った資材で現用の『新サイクロン号』を建造するに至る。ヘルダイバーはその間接的な後継機にあたる。




「レーザーバルカンも積んでる優れもんだ。お得だぞ」

「バルカン砲なんて、バイクに積むか?普通」

「組織の奴らは基本的にゲリラ戦を重視してるからバイクにも一定の戦闘力を求めてるんだ。ヘルダイバーはその集大成だよ」

そのバイク『ヘルダイバー』はZXが愛用している個体と比較すると、悪役メカを思わせるカラーリングである。ZXのものがヒーローメカなカラーリングなのは、『7人ライダーの恩師の立花藤兵衛がカラーリングを塗り替えた』からとの事。一部性能が省かれた以外は同等のスペックを持つこのマシーンを代車として渡されたシャーリーは早速、東名高速(再建。コースは21世紀のそれとは変更あり)を600キロでぶっ飛ばしたという。





















――仮面ライダーX=神敬介は海にいた。イスカンダルの技術で再生した海だが、生態系は以前のような多様性を取り戻すには至っておらず、生態系の調査も兼ねて海に出ていた。

「この海域はだいたい1970年代以前の生態系を回復しているな……」

敬介は海に潜って様子を確認する。連邦政府は海の生態系回復に多大な予算をつぎ込んでいたが、スペースノイドからは『バカバカしい』とされ、度々予算の削減が取り沙汰されていた。だが、着実に効果は挙げてきており、2200年の段階では日本周辺海域にて、日本人が21世紀中に食していた魚の内、50%ほどが元のあるべき姿へ戻っていた。

「そいやあの子達にマグロの刺し身を送っておくか。」

調査も兼ねて釣り上げたマグロは刺し身にしたうえでドラえもん達のところへ送るつもりのようだ。前の戦いでできた不思議な縁である。しかし、彼の心にはかつての宿敵『アポロガイスト』が生前の意志を持って蘇生された予感が渦巻いていた。デルザー軍団が生前の意志を保有したままで蘇生されていた以上、アポロガイストもされていても不思議ではない。

――デルザー軍団の奴らが復活している以上、奴が生き返っていても不思議ではない。用心しておくに越したことはないか。

敬介は平穏な生活を送りつつも、やがておこり得るであろう宿敵の復活に並々ならぬ闘志を燃やしていた。























――仮面ライダー一号=本郷猛は生化学的分野からウィッチの中に偶発的にリンカーコアができたのかを研究していた。加東圭子の体を定期検査する内に、彼女の中にできたリンカーコアは成長を続けている事、そしてそれにはゲッター線が関係している事が判明した。

「ゲッター線があたし達の体を変容させたと?」

「そういう事だ。智子ちゃんや綾香ちゃんの体も調べてみたが、体内になのはちゃん達同様のリンカーコアがいずれも形成されている。ゲッター線が君等ウィッチを『進化』させたとしか説明がつかん。早乙女博士も生前に同様の見解を述べておられたよ」

「ゲッター線って何なんでしょう……。新早乙研究所のほぼ全員を吹き飛ばして、オリジナルのゲッタードラゴンを『進化』させて……ワケが分かりませんよ」

圭子は新早乙女研究所で起こった事件の事が未だに信じられないようだった。新早乙女研究所で起こった『ゲッタードラゴンのメルトダウンとゲッター線の暴走事件』は連邦政府に真ゲッターへの恐怖と封印に繋がった事、ゲッター線の未来を『見た』神隼人曰く、『人類が新たなステージに行くにはゲッター線は必要不可欠であるとの事だが、ゲッター線が何故、地球と地球人類に味方する者を選んだのかは不明である。

「ゲッター線が何故地球人とその友人らを選んだのかは早乙女博士すら到達し得なかった領域だ。今の俺達に論じれるかはわからんさ。君たちの世界のネウロイが定期的に出現してきた理由ももしかしたら……」



「……まさか」

「ウム。だが確証が得られたわけでもない。全ては『神のみぞ知る』だ」

ネウロイの出現も全てゲッター線の意志なのだろうか?それは誰にもわからない。神でもない限りは……。
































――西暦2201年頃 


ライダーマン=結城丈二は篠ノ之箒の赤椿の改修作業に関わっていた。これは篠ノ之束も想像だにしなかった事だが、組織の技術とバード星の技術を組み合わせてアーマー部を小型化・改良するという手法が取られた。流石にコアや展開装甲部は『ブラックボックス』として手を付けられないが、その他の部位であれば問題は無かった。数ヶ月かけて改良した結果、脚部での歩行機能の付加、各部の小型化がなされた。その副産物でエネルギー容量に余裕が生まれたとの事だ。






「結城さん、組織というのはここまでの技術を持っているんですか?」

「いや半分はバード星の技術だよ。あそこはパワードスーツ先進国だからね」


結城の言うとおり、バード星は地球からたった数光年離れているだけの別の恒星系に属する星だが、古くから恒星間航行技術を有する銀河連邦内の古豪として君臨している。そこでは異次元でも生命維持できるパワードスーツの戦闘用が『コンバットスーツ』として普及している。その技術を組織の小型化推進技術を組み合わせて赤椿を改良したという。次は鈴の甲龍もその対象になるとのことだ。

「小型化でエネルギー容量に余裕が生まれたから絢爛舞踏を発動させなくとも、ある程度の時間は戦闘行動が可能になっているよ」

「小型化ってそんな利点があるんですか?」

「機械のどの分野にも言えることだけど、大型化が極まると運用費用が嵩むんだよ。例えば、君が生まれる前のバブル経済期に大排気量で大型の車が流行ったけど、それが終わって不景気になった途端に小型車が売れるようになった。大排気量で燃料を食う車より、小排気量でも経済的で小回りが聞く車が持て囃されるようになった。お金がない時期にはそんな現象がまま起きるんだ。それは兵器でも例外じゃない」

「そういえばそうですね……モビルスーツもジェガンは20m級なのに、F91とかは15m級ですしね」

「だが、外宇宙勢力との戦争でそれがまた別の方向で問題になったんだ。性能的問題とは別で」

「もしかして航続距離の問題ですか?」

「そうだ。小さくするという事は積める燃料や弾薬の量が減ることでもあったんだ。いくら性能が高い、航続距離をベースジャバーでカバーしても帰る時に失っていたら無意味だ。だから大型MSの利点が見直されたのさ」

「どちらも一長一短ってことですね」

「そういう事。まぁ君の場合は室内戦で戦うためとか歩行機能つけることで浮遊機能を担うイナーセルキャンセラーが封じられた場合の保険もかける意味合いもあるけど」

何事もフェイルセーフ機能をかける事は良いことである。これは安全性を過剰までに重視するようになった戦後日本人の気質でもある。真田志郎がアンドロメダの戦没を『それ見たことか』と批判したのもそのためだ。

「日本人ってなんか戦後はそういう気質になりましたねよ」

「戦前戦中のトラウマだよ。戦中に戦前に軽視していたすべての分野で敵がそれを活用して戦中の指導者層の大半が信じていた精神論を完膚無きまでに叩き潰した。その恐怖が戦後の日本人を技術に邁進させたのさ」

「その行き着いた先の一つの可能性が美琴のいる学園都市なのですか?」

「そうとも考えられる。20世紀後半から一貫して日本は技術大国だ。戦前の技術軽視が招いた破滅を再び将来させぬように技術をひたすら発展させた。それが第三次世界大戦や統合戦争に繋がったのは皮肉だよ」

そう。技術をひたすら発展させたこの世界の日本は世界、特に冷戦以後に覇者を自負していた米国やロシアなどに恐怖を誘発させた。そのことが第三次世界大戦を引き起こし、更には統合戦争の長き戦乱を将来してしまう歴史となる。


「発達しすぎた科学は魔法と見分けがつかないと昔の人は言ったが、その恐怖が欧米列強にはあったと思うよ」

そう。得体の知れないモノ、毛色の違うモノらへの恐怖。表向き、ドラえもんの時代は『ロボットと人間の共生が成功した』かに見えたが、裏ではロボットが人間に取って代わる事を恐れる欧米列強の一部の人間らの暗躍を招いていた。欧米列強の思惑は結果的に日本が築いたその社会を葬り去ったが、統合戦争の惨禍で事実上の『罰』を受けた格好となった。結城丈二は箒に哲学に踏み込む話をしながら、内心で自分たちが願った形と違った形で歴史を歩んだこの時代に複雑な想いを抱いていた。















――仮面ライダー2号=一文字隼人はドラえもん達に呼ばれてのび太らの学校の社会見学に付き添っていた。これは小学校側が頼んでいたカメラマンが前日にインフルエンザにかかって寝込んでしまい、困った学校側にドラえもんが助け舟を出した格好になった。

「すみません隼人さん、突然頼んじゃって」

「お安いご用さ。たまには子供題材の写真撮りたかったからね」

一文字隼人はカメラマンで飯を食っている。23世紀では戦場の写真を撮ることが多かったので、たまには平穏な姿を撮りたかったようだ。バスが何処に向かっているかというと、国会議事堂である。小学生時代最後(6年は修学旅行なため)の社会見学には持ってこいとも言えた。

「国会議事堂かぁ……なんか昔からあるんですよね?」

「それは当たり前さ、のび太君。今の国会は昭和初期に作られてるからね。戦争の5年前にできたんだが、戦争でも生き残って今でも使用されてる由緒ある建物だよ」

国会議事堂は昭和11年完成である。大日本帝国時代に建築され、22世紀まで継続して使用された。霞ヶ関にバスの一行が差し掛かり、議事堂の勇姿が見えてくる。2000年代初頭時点では、この年代の末に起こる政権交代による政変など微塵も感じさせないその姿に複雑な想いを垣間見せる一文字であった。

























――スカイライダー=筑波洋は23世紀の日本は、神奈川県で公試運転中の超々々々弩級戦艦『富士』をハンググライダーで遊覧飛行を楽しむ途中で目撃した。その姿はかの戦艦大和を現在兵装を追加して拡大強化したかのような姿で、全長は500mを超えている。排水量は恐らく300000トンは有に超えているだろう。これの建造の裏事情には扶桑皇国から依頼を受けた工廠が悪乗りして『昔の仮想戦記で出てきた56cm砲艦を作ってみようぜ!』と頑張った結果、できた産物である。名前が通例となった旧国名では無く山岳名である事については金剛型以来である。56cm砲を持つ水上艦としては史上空前の巨艦である同艦は一番艦の三笠は処女航海の最中である。筑波洋の眼下で悠然と突き進んでいくのは二番艦である。機動性は巨体故に犠牲になっているが、戦闘力は大和型をして『甲巡』、長門型を『乙巡』とその差を見せつけ、未来世界含めて水上艦としては『史上最大最強戦艦』の称号を得た。

「大きいな。昔の原子力空母の1.5倍はありそうだ。これも世界の需要の差か……」

ウィッチ世界では通常兵器の発達が促されたとは言え、良くて大戦後期、悪いところで初期の水準でしかなく、その運用思想も大戦前のレベルで止まっていた。そのためティターンズの跳梁跋扈がまかり通ってしまった。ウィッチが第一線の航空戦力を半分担っていたために空母戦力があまりアテにならないのと、ティターンズが本来の運用法で戦艦を使いこなしている事への対抗心、強力な艦砲射撃の必要性が23世紀の比ではない事も相なって要求されたのが超大和型戦艦なのだ。

「あれ?筑波さんじゃないっすか。何してんの?」

「義子ちゃんか。君こそどうしたんだい?」

「あの艦の公試の上空護衛っすよ。ちょうど暇だったんで五十六のおっちゃんから頼まれたんす」

「ご苦労さん。俺は見ての通りハンググライダーで遊覧飛行中だよ」

西沢義子であった。山本五十六の命を受けて富士の上空直掩を行っていたようである。そこに洋はやってきていたようである。

「ちょうどいいからあの艦で休憩させてもらっていいかな?」

「ちょっち待ってください、艦橋と連絡とるんで」


洋がスカイライダーである事を伝えると、艦長たちは着艦許可を出した。洋は熟練の技で富士のヘリコプター甲板(水上偵察機は時代遅れとなったのでヘリコプターに切り替えられた)に着艦する。西沢も交代のウィッチに直掩任務を引き継ぎさせて着艦する。

「ふーむ。アイオワ級みたいだな。近代化後の」

洋が富士に抱いた印象はベトナム戦争で現役復帰した際の近代化された時のアイオワ級戦艦姉妹であった。実際、第二次大戦型軍艦を後世で用いる時には近代化が必須であった。特に同世代の他の軍艦がいなくなった後も唯一無二の戦艦として度々現役にカムバックしたアイオワ級は地球連邦軍にとっても『戦艦を近代化するためのモデルケース』として扱われ、大和型の近代化や三笠型の建造の際も参考にされたという。

「ああ、リベリオンの新鋭艦のあれっすか?」

「そそ。末永くこの世界だと使われ続けたんだ。統合戦争の米軍も復帰させようという案を出して実行寸前だったという記録もある。太平洋戦争と正反対に追い詰められた米海軍にとって記念艦とは言え、戦艦を持っていた事が希望になったんだろう」

「皮肉っすね……その時代から見たら大昔の遺物に縋るなんて」

地球連邦は統合戦争の内乱で旧世界の覇者であった米国を討った過去がある。その際に無理にでもアイオワ級を復帰させようとした。逆に言えば、統合戦争で敗れる寸前の米国は旧時代の遺物のアイオワ級に縋ることでしかアイデンティティを維持できなくなっていた表れでもあった。

「大和型の配置をだいたいは引き継いでるはずなんだけど……居住区を拡大して、街をそのまま浮かべたみたいなもんだからどこがどこだか」

三笠型は居住区もスケール相応に拡大しており、中に軍の直轄で運営されるレストランや郵便局、商店、大浴場、美容院などが男女別に作られているほどである。これは居住性を犠牲にしていた戦前日本軍艦には見られなかったもので、戦後艦艇の特徴を取り入れている。そのため艦内は大和型の教訓で大和型よりは通路が簡略化されたものの、軽い迷路であった。西沢はこの時が初乗艦だったためか迷ったのである。

「ここは大浴場だし……。現在位置は……ゲッ!目指してるレストランとは反対方向だー!わかんねー!」

…と悲鳴を挙げていると、富士の艦長に拝命されていた、初代武蔵艦長でもあった有馬馨少将が浴場から出てきた。休息中であったらしい」

「どうしたのかね、中尉」

「有馬のおっちゃん、助けておくれ!迷っちゃってレストランにいけねーんだ〜!」

「よし、儂が案内しよう。兵たちも迷子になるものが続出しておるからな。おっと、あなたの乗艦を歓迎します、筑波洋さん」

「こちらこそ」




有馬は洋に海軍式敬礼で洋を歓迎すると、同じく、風呂からあがった砲術長、当直士官らも引き連れて西沢らをレストランへ案内する。彼等でさえ時々迷うとの事なので、辿り着いたのはそれから更に一時間半後であった。















――仮面ライダーアマゾン=山本大介(アマゾン)はアマゾンに在住し、観光ガイドで生計を立てていた。彼は実はかつての『トモダチ』の岡村まさひこのレクチャーが功を奏して流暢に日本語を使いこなせるようになっており、『野生児』のイメージは若干薄れている。(根本的な性格は変わっておらず、無邪気で子供のように人懐っこい側面は健在)。しかしその人懐っこい性格が何気に子供たちの人気を博していた。

「ここがインカ帝国の遺跡のマチュピチュ。空中都市といわれているんだ」

と、観光客の日本人の家族らに流暢な日本語でマチュピチュの解説を行う。彼は元々、アマゾンの原生林をねぐらに育った野生児であったので、現地の風土病などにも詳しく、急病人がでても迅速な対応ができた。子供にもわかりやすい解説を行うのでお母さんたちにも受けが良く、人気ガイドとなっていた。しかし、彼がしているその『ギギの腕輪』こそがオーパーツとも言うべきインカ帝国最大の遺産であり、アマゾン自身の命であることは秘中の秘である。そんな彼だが、かつての仮面ライダー共通にして最大の敵であった『デルザー軍団』の復活に対しては並々ならぬ闘志を燃やしていた。

(デルザー軍団大首領はゼロ大帝や十面鬼を操っていた……だが、それもバダンの大首領の操り人形だった……もし、デルザー軍団が間接的にゼロ大帝や十面鬼を操っていたのなら……!)

彼の敵であったゼロ大帝はGOD機関亡き後に現れた『ガランダー帝国』の表向きの支配者であり、アマゾンにとっては友であった『モグラ獣人』を奪った不倶戴天の敵であったが、ガランダーの侵略活動に間接的にデルザー軍団が指示を与えていた可能性が生じてきた。そのためか、アマゾンはかつての友の無念を晴らすためにもデルザー軍団へ闘志を燃やす。それはモグラ獣人への弔いの意味もあった……















――仮面ライダーV3=風見志郎はかつてデストロンに惨殺された自らの家族を弔うため、23世紀の実家の先祖代々の墓がある東京の某所へ来ていた。

(父さん、母さん……。200数十年ぶりです。俺はあなた達からもらった体を失くし、『仮面ライダー』として生きる決意を固めて、もう200年の月日が経ちました。雪子は元気でしょうか?俺の方は元気にやってます。仮面ライダーとして生きる役割を仰せつかった以上、あなた達には今の俺の体と姿は見せたくないです……)







志朗はライダーV3として数百年の月日を生きている。両親からもらった肉体をほぼ失い、戦闘用改造人間という『戦鬼』となった志朗には一号や二号の当初の想いを半ば裏切る形でライダー三号となった事や、両親や妹のもとへ未来永劫『逝けなくなった』ことへの負い目を感じており、ダブルライダー不在時には三号としてリーダーシップを取ったり、復活してからはかつての邸宅があった土地や墓の手入れを欠かさないのだ。

「ここにいましたか、風見さん」

「一也か……修行中か?」

「ええ。たまたまこの近くにきたもので。ご家族のお墓参りですか?」



「もう俺しか墓の手入れをするのがいないからな。両親の親戚とはあの時に疎遠になったし、子孫が生きているかもわからんからな」

「俺もおなじですよ、風見さん」

スーパー1=沖一也もその気持はわかる。歴代仮面ライダーの内のほぼ全員が改造時に家族と呼べる人間を失っている事、そして人間として生きた頃の自分達の遺した痕跡はもはや遠い過去へ消え去り、ライダーとしての自分達を育ててくれた恩師たちもこの世にはいない。志朗は恩師であった『立花藤兵衛』にスカイライダー以後のライダーの存在を見せてやりたかったという考えを持っていたが、せっかく平和を謳歌し、余生を送る藤兵衛の邪魔するなという一号=本郷猛の厳命でとうとう存在を教える程度に留まったことを後悔しているらしき側面を感じた一也は今度、互いの恩師の墓参りをしようと持ちかける。それがもうよほどのことでなければ会えなくなった恩師へできる事なのだから。



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