短編『剣鉄也の懺悔』
(ドラえもん×多重クロス)



――グレートマジンガー。Zの強化発展型スーパーロボットとして生み出された機体である。輝かしい戦歴を誇るグレートと対照的に、そのパイロットの剣鉄也は『戦闘のプロ』を自称する姿とは裏腹に孤児故の寂しさや思慕を持つ青年であった……。




――戦争が終戦して間もない時期の科学要塞研究所


「テツヤ、前に言ってたね。孤児の生まれだって」

「ああ……俺は物心ついた時には親父もお袋の顔も覚えちゃいなかった。所長に引き取られた時には、まさか訓練漬けの日々を過ごすことになるなんて思ってもなかったがな……」

剣鉄也は戦争時の勇ましさとは別の側面、孤児としての寂しさや暖かな家庭への思慕の念が多分にある『負の側面』が顔を覗かせている。ハルトマンは改めて鉄也の心に巣食う闇をを知り、息を呑む。

「俺はグレートマジンガーのパイロットとして10年以上訓練を受け続けてきた。スーパーロボットを作るのには年単位の時間が必要だからという事だった。俺が中学校の時にグレートマジンガーの完成に目処がつくと、訓練は一層激しさを増した。Zがドクターヘルと戦ってる間は最終調整や慣らし運転で機体を慣熟させることに専念した。最終調整が済んだのはちょうど甲児くんがドクターヘルを打ち倒したその日だった……」



「グレートマジンガーをドクターヘルとの戦いに使うつもりなかったの?」

「俺もそれを所長に問いただした。すると所長は『我々の敵はドクターヘルではない。ミケーネ帝国なのだ』という理由で見送り、甲児君の助太刀はできなかった」

鉄也は訓練が一段落した段階で甲児の助太刀に行きたかったらしかったが、グレートマジンガーという、マジンガーZ以上のスーパーロボットが人類の手にある事がミケーネ帝国に知れれば、当然ながらミケーネに警戒される。その点を警戒する兜剣造は実子とマジンガーZの戦いに手を貸すことは無かった。だが、それが後々に甲児が鉄也に対して反感を持ってしまう原因となってしまったのは皮肉であった。このことは剣造も息子達の間に確執を産んでしまったと後悔しており、現在ではグレートマジンガーを積極的にロンド・ベルへ派遣する事で息子達への罪滅ぼしをしようとしていると鉄也は言う。

「結局、俺がミケーネ帝国との決戦の時にしでかした事は他者から見れば『馬鹿』でしかない……。出撃前には甲児君とは殴り合いになったし、俺のミスで所長を死なせそうになった。ゲッターチームが来てくれなかったらどうなっていたか……」

ゲッターチームがゲッタードラゴンを引っさげて参戦してくれなければ間違いなく兜剣造は死んでいただろうし、ミケーネに勝利を与えてしまっていたのは間違いないというのは、ハルトマンも白色彗星帝国戦時の情報を見ていたので、その事は知っている。甲児は当時、既にマジンガーZを失っていたので、実質的には参戦できなかった。戦闘そのものはゲッターロボGの加勢もあって、大勝利に終わった。だが、鉄也はその後に甲児に剣造を死なせそうになったことを咎められ、またも言い争いになり、遂にはまたも殴りあいになった。しかし兜シローの嘆きで二人は正気に戻った。シローは二人が争うのを見たくなかったのだ。シローに取っては甲児も鉄也も『兄』である。そんな二人が争うのは悪夢以外の何物でも無かったのだ。その嗚咽に甲児と鉄也は正気に戻り、竜馬から制裁を受けたわけだが、甲児も鉄也もこの一件で、シローに対してバツの悪い想いを持つようになったのは言うまでもない。。

「コウジの弟に二人共、バツが悪い思いがあるのか……その子にとっちゃショックだったんだよ、二人が罵り合うの」

「ああ。俺もそうだが、甲児君が特にそうだったはずだ。甲児君はあいつの前では嫉妬とかの感情を見せた事無かったから。あの時のあいつは甲児くんを軽蔑する目をしていた。俺が所長にどんな事を仕込まれていたかを知ってたし、甲児君のあの時の物言いは孤児差別と文句が来そうなくらいに過激だったんだ。何て言ったと思う?『ウダウダネチネチ不幸自慢するんじゃねぇ!』だぜ?リョウ君もドン引きだった。それで殴られてハッとなったが、シローの目を見て醜態に気づいた。甲児くんもまた、俺に嫉妬していたのさ。」

甲児も人の子、博愛的性格を持ちながらも自分の父親と長年過ごしていた鉄也へ嫉妬していたのだ。その感情が表に出たのだ。その醜態は弟のシローに兄への軽蔑の感情を抱かせるほどであった。甲児も竜馬に一発殴られて正気に戻ったが、弟の信頼を取り戻すのに数年かかったという。



「聖人君子なんてこの世にいないからね……。実子でも無いのにお父様と過ごしてたのがコウジは我慢できなかったんだろうね」

「ああ。お互い様ってやつさ。それで俺たちは猛省して、紆余曲折の末に今の関係になった。それがシローの望みでもあるからな」

鉄也は現在の甲児との『兄弟のような関係』をシローが望んだ事だと言った。彼を悲しましてしまった事への罪悪感が甲児と鉄也の心に多大な影響を与え、二人の精神的成長を促したのだ。

「俺はグレートで戦うことが存在意義みたいなもんだ。だから一時に持て囃されてた完全平和主義なんてのは唾棄すべきもんだと思ってる」


「完全平和主義か。人間相手にはいいかもしれないけど、バケモン相手には通じないからね。テツヤ達の存在意義否定だし」

「うむ。だから軍隊廃止法案は満場一致で否決されたし、宇宙人との戦争で完全に完全平和主義は否定された。俺と同じような考えのかつてのヤマト計画の面々が政府の要職につき始めているから、もう二度と完全平和主義は表舞台に現れないだろう」

鉄也は自らの存在意義を否定されるも同然なため、完全平和主義を徹底して批判している。それは理不尽な侵略から身を守る力は必要だという考えから来るものだ。彼以外にはヤマトのクルーたち、特に古代進が完全平和主義の批判論者として有名。この時期に古代たちが地球連邦政府の要職につき始めたため、完全平和主義は闇に葬られた形となった。(リリーナ自身も平和を守るためには戦うことそのものを否定しなくなったため)なぜこの時期に異常なほどに戦争が起きたのであろうか。完全平和主義が是非になろうとしたタイミングで宇宙人が襲来したのか?それはゲッター線がそうさせたのかもしれない。宇宙を、生命を創造した存在らにとって、人類は『彼らでも対抗できない存在』になんとか抗うために造り出した生物兵器にすぎない。数々の宇宙で人類に様々な力を与えたのは、その強大な敵を倒すための試行錯誤であった。ゲッター線は戦うことで『進化』する存在を体現する。人類が有史以来戦い続ける理由も、ゲッターロボを初めとするスーパーロボットを生み出したのも全てはそのためである。






――全ての宇宙を超えた高次空間上

『ふむ。この宇宙は成功だ。見ろ、順調に兵器を生み出している』

『この宇宙の知的生命体は多元宇宙論に辿り着いたようだな。我らがいくつかの別の宇宙で造り出した同様の生命と交わりあっている』

『この宇宙ならば彼奴に対抗できる兵器を生み出すのもそう遠くはないだろう。まぁ未来永劫を生きる我々に取って、『時間』など意味が無いが』

彼らは人類の概念で言えば、神々である。神は明確な姿を持たず、普段はエネルギー生命体のような姿である。その中には世界に応じて何かかしらの形の実体を持つ者もおり、バダン大首領はそれである。神々はゲッターロボらを神々をも凌駕する存在に対抗する兵器として育成するつもりなのだ。そのための手始めにゲッターロボGを真ゲッタードラゴンへ進化させるのが彼らの手段であった。

『あの生命体は我らをいずれ超えるやもしれん。が、それは好都合だ。彼奴を倒す事が叶うのだから。そうでなければ『あの位置にあった』前の宇宙を消してビックバンを起こした甲斐がない』

太古、神々にとって宇宙の一、二個の興亡など子供が玩具を壊したのと同義にすぎなかった。だが、ある時を境に神々は彼らでも対抗し得ない敵を倒すために生命を創造した。そしてバダン大首領が太古に行った事は他の神々に取っても思惑通り。プロトカルチャーが滅亡しても更にそれを超えうる種族として、地球人類は生まれ、神々の思惑通りに戦闘的に進化し、他の種族との闘争を乗り越える兵器を生み出した。それがスーパーロボットである。マジンカイザーなどの誕生の秘密はそこにあるのかも知れない。





――話は戻って、鉄也とハルトマン

「テツヤは平和が嫌いなの?」

「平和は喜ばしい事さ。外務次官のお嬢ちゃんの行動や決意は凄いと思うし、尊敬する。だが、自分を無力にして『座して死を待つ』事は俺の柄じゃないだけだ。この世界には『備えあれば憂いなし』という諺がある。備えは万全にしておかなくてはならない。それを身を以て実証してしまったが故に完全平和は成り立たなくなった。外務次官のあのお嬢ちゃんもそれをわかってはくれたが……高い授業料だった」

「確かになぁ。あの外務次官は頑張ったと思うけど、状況が状況じゃなぁ。資料で見た感じじゃ、すごくカリスマビンビンなんだけどねぇ」



鉄也はリリーナの行動と決意には敬意こそ払ってはいるが、自らの無力化を進めるという点では批判のスタンスを取っているようだ。ハルトマンも資料映像で見る限り、天性のカリスマを備えているのはわかるが、平和を維持するためとは言え、自ら武力を捨てるのは考えとして共感できないようだ。

「こんな事言うと、周りから文句言われるが、良くも悪くも俺は戦うしか能がない人間だ。みんな俺に甲児君の代わりになれという。だが、俺は甲児君にはなれない……俺は何のために生きてるんだと思うことがある」

「テツヤ……」

それは鉄也の心の叫びでもある。鉄也は甲児の代わりになることを周囲から求められた。だが、それは周りが『剣鉄也』個人を見ていない証でもあった。鉄也は人間としてほぼ完璧に近い甲児よりは欠点が多いし、精神的に未熟な面も多々ある。周囲に『戦闘のプロ』と讃えられている故に見せられない『人間としての弱さ』をさらけ出しているのだ。これはパートナーの炎ジュンや育ての親の剣造や、甲児達以外には初めての事であった。

「俺はグレートで戦うしかできない男だ。二度とあの時の過ちは犯したくはない……今度は勇者の名にかけて、この世界を、いや、次元世界全体を守ってみせるさ」

「がんばれ〜応援してるよ」

「ありがとう。エーリカちゃんのおかげで、俺は肩の荷が下りたよ」

鉄也はミケーネ帝国との戦いで犯した過ちの反省からか、今度こそはきちんと敵の矢面に立ち、世界を守っていくと誓った。コンプレックスを乗り越え、真に『偉大な勇者』として脱皮した瞬間である。鉄也は身内でない誰かに『個人としての自分』を肯定して欲しかったのだ。『剣鉄也』個人を。グレートマジンガーの搭乗者という点ばかりがクローズアップされてしまう故に起こった悲劇。剣造でさえも気づいていなかった鉄也の心の叫び。それをハルトマンが聞き届け、一歩出る勇気が出せなかった彼の背中を押してくれたのだ。この時から鉄也はハルトマンと本格的に親交を結び、良き戦友となっていく。ハルトマンの仲間思いの側面が良く表れたエピソードと言えた。



『鉄也くん、北海道に百鬼帝国が現れた。真ゲッターは実験中で出撃できん。カイザーは調整中だ、グレートを出撃させたまえ。改修は再優先で終わらせている』

『分かりました』

剣造の放送音声に応えると、鉄也は駆け出す。新生グレートマジンガーの初陣である。この時のグレートマジンガーは第二次大規模近代化改修されており、完成当初より戦闘スペックが向上している。以前は若干苦手であった宇宙戦闘にも完全適応がされているため、空間戦闘でもMSやメタルアーマー相手に優位に立ち回れるようになったとの事。(地味だが、IS学園への介入やベガ星連合軍との戦闘のグレートマジンガーは改修後である)



お馴染みの防護服に着替えた鉄也はブレーンコンドルに乗り込む。ブレーンコンドル自体にも改修が加えられたようで、計器類が見やすくなっており、ボタンとレバー類も以前より綺麗にまとめられている。(これが後に強奪時にバレンドス親衛隊長がその操縦性を評価する要因となる)

『ブレーンコンドル、スイッチオン!』

以前と比べると、装甲材の性能向上で重量が軽くなったらしく、突っ込み(加速)が良くなった。これまでの記録を塗り替える速さで発進口から飛び出す。

『マジーンゴー!』

『ファイヤーオン!』


毎度おなじみ、海からグレートが射出される。この発進方法はハルトマンから見ると、『事故起こるよ〜』としか言いようがないが、鉄也の技能によって実現している。ブレーンコンドルとグレートマジンガーがドッキングし、その双眼に光が灯る。同時に今回はグレートブースターを装着済みなため、ブースターに火が入れられる。瞬く間にマッハ5.5(大気圏内での戦闘機などの限界速度。新鋭可変戦闘機と同程度)に加速し、戦場へ向かう。その様子を見届けたハルトマンは自らも科学要塞研究所に持ち込まれていた試作IS(レーバテインとは別のプロジェクトもこの時には進行しており、IS型の民生利用機が開発完了後に軍用機の開発に入っていた。軍用はコア周りの構造を省略した単なるパワードスーツの域を出ない民生機と異なり、完全なISとして制作された。コアはフエルミラー改良型によるコピー品を流用しているが、アーマー周りは一号機の実働データを基にしてバード星の技術で改良されたために小型化されている。後日、一号機も同仕様に改修された)を使ってグレートの援護に入った。この時は科学要塞研究所がビューナスAの改修作業に入ったために炎ジュンが出撃不可であったこと、ボスボロットはボスが鬼の霍乱でインフルエンザに感染していた事も重なっての応急的な出撃であった。これはハルトマンが持ち込んでいたストライカー『Bf109G』の魔導エンジンである『DB605』の水・エタノール噴射装置周りが故障を起こしたためでもあった。この時にハルトマンが選択したISの武装は以下の通り。

・『試作型ビームマグナム』(予備弾倉付)

・『ビームガトリングガン(四連装。アナハイム・エレクトロニクスがガンダムヘビーアームズ改のダブルガトリングガンに触発されて制作した試作武装のダウンサイジング版)

・『近接格闘用ブレード』(西洋剣タイプ。フェイトのバルディッシュ・アサルトのザンバーフォームに近いフォルムの大剣。マジンガーブレードのような伸縮機能あり)

『近接格闘用特殊マニピュレータ』(溶断破砕機能を省き、代わりに構成素材を魔力が通りやすいエネルギー転換装甲に変えたもの。ウィッチの固有魔法に対応するための機能に特化している)

――この3つである。シンプルだが、一撃離脱戦法の理想的な体現者として名を馳せるハルトマンとしてはできるだけ大火力は欲しいが、身軽であるほうがいいという事だ。これは過剰な重装備を彼女が嫌ったためでもある。グレートの後を追い、途中で落ちあい、編隊飛行に入る。

「敵は百鬼帝国だって?」

『ああ。ミケーネが壊滅した後は奴らが地下勢力の中で最大勢力にのし上がった。強力な戦力を持っている。最近は目的が一致したようで、ミケーネの残党と手を組んだようだ』




――百鬼帝国。それはかつてのゲッターロボの敵であった恐竜帝国がその勢力を巴武蔵の自爆で失ったのを機に本格的に侵略行動を開始した勢力である。その科学力は恐竜帝国を遥かに凌ぎ、ゲッターロボGの好敵手として一般に認知されている。ここ最近はゲッターロボが真ゲッターロボへ更に強化された、マジンカイザーの登場でミケーネが壊滅したなどの理由からか、無闇な行動を慎むようになっていた。だが、鉄人兵団と地球の戦争が終わったのを見計らって活動を再開していた。新早乙女研究所はこの数ヶ月、真ゲッターロボやゲッターロボGの新たな実験の最中であるため、グレートマジンガーやマジンカイザーがその代わりに交戦していた。



『……嫌なニュースは続くな』

「何かあったの?」

『グレートマジンガーが量産体制に入っているのは知ってるだろう?』

「うん。確か日系企業でここ数十年で急成長した新住日重工ってところに委託したんだよね?」

『ところが、社員の内部告発で、あそこの重役が量産型グレートを事もあろうに、ミケーネに売っ払ってやがったのがわかって、プリペンダーがガサ入れしたんだ。それで量産型グレートマジンガーの9号機から20号機と試作2号機を押収したんだが、その他の機体は既に納入された後だった。所長がプリベンターに連絡取って、完成していた残りの機体は押収、会社の営業停止処分を言い渡してもらったが、敵に塩を送っちまった状態だ』

グレートマジンガーの量産化は政府が『安定的にスーパーロボットを運用する』目的のために推し進めた事項だが、民間企業に委託したのが仇となってしまい、グレートマジンガーとほぼ同性能のスーパーロボットが敵に渡る大失態となった。しかし兵器開発で有名な民間企業なだけに、開発の方向性は的を射ていた。超合金ニューZの高性能化やグレートマジンガーの兵器としての熟成に成果を上げ、試作型のブラックグレートはオリジナルすら凌駕する性能がある事が判明した。その技術は科学要塞研究所が違約金と賠償金を分捕った上で技術者ごと獲得。元祖グレートの改修に使う一方、ブラックグレートを予備機として確保する当たり、兜剣造は意外にしたたかであるのが伺える。ちなみに量産型グレートは更なるマジンガーのための研究材料にするとの事。

『少なくとも8機は敵に渡ったはずだから、今後は注意しないといかんというのが所長の見解だ。ミケーネの本国自体は健在だから、ある一定量の超合金ニューZさえあれば複製は可能だからな』

鉄也は道中、量産型グレートマジンガーがミケーネ達に売られてしまったことを懸念していた。ミケーネがきちんと代金を払ったというのもある意味では驚きであるが、仇敵と同じ機体を買うという当たり、彼らのなりふり構わぬ窮状が理解できた。




――札幌

札幌では百鬼メカが大暴れしていた。陸軍のジムVとジェガンを圧倒し、時には胴体を引きちぎるというラフプレーで屍の山を築いていた。

「ヌハハ!!ゲッターロボが来ないとわかってるとこうもスッキリするものか!」

百鬼帝国の実働部隊の総指揮官『ヒドラー元帥』はここしばらくブライ大帝に行動を自粛するように命令が下っていたのが解除された嬉しさと、宿敵の流竜馬らが得た最強の力たる真ゲッターロボは実験に使われてるために実戦運用が停止されているので、この場に来ない事がわかっているので、意気揚々である。(因みに彼がどうやって生まれたのかは定かでない。かのアドルフ・ヒトラーと類似するちょびひげな外見から、『アドルフ・ヒトラーの遺伝子を使った人造人間』ではないかと噂されているとか)配下の部隊はジェガンとジムVの連隊を壊滅させ、街を破壊している。面白いことに観光名所だけは綺麗に避けている。あとで自分たちが観光するつもりらしい。こういう点はちゃっかりしている。

「元帥、レーダーに反応!グレートマジンガーです!」

『ええい来おったな剣鉄也!観光の邪魔をしおって!』

この始末である。ブライ大帝が聞いたら頭を抱えるであろうセリフを吐く辺り、レクリエレーションに飢えているようだ。そこにサンダーブレイク一閃、さっぽろテレビ塔の回りにいたメカは先手必勝とばかりに放たれたサンダーブレイクで沈黙させられる。


『やい、ヒドラー元帥!観光がしたいんだったらちゃんと列に並べ!テロ活動のついでに観光なんて、臍が茶を沸かすぜ』

「ええい、元を正せば貴様らがマジンカイザーや真ゲッターロボを使うのが悪いのだ!おかげでこの数年は東京タワーにも行ってないんだぞ!」

『悪の組織にしてはずいぶんみみっちい愚痴だぜ!あいにく甲児君や竜馬は来れないが、この俺が久しぶりにもんでやるから覚悟しろ!』

グレートマジンガーの右人差し指でビシッと要塞鬼に宣言する鉄也。ヒドラー元帥の個人的私怨には若干呆れ気味だ。ヒドラー元帥は帝国内でレクリエーションが自粛された影響か、ストレスが溜まっている模様。戦闘機をグレートマジンガーへ向かわせるも、ハルトマンのビームマグナムによる援護射撃で追い散らされる。

「くぅ〜〜これがビームマグナムか。357マグナムみたいに結構反動がくるなぁ」

ハルトマンが普段いる時代は第二次大戦相当だ。時代的にまだ、かの有名な44マグナムを撃てる『S&W M29』が現れる遥か以前なので、『ものの例えが古い』。スラスターを噴射しながら撃たなければ反動で態勢を崩していたほどの反動(本式のビームマグナムもガンダムタイプでなければ反動に腕の作動部が耐えられない。)がIS越しに来ることを実感する。反動に比例して、威力は本物。ビームが掠っただけで戦闘機の翼を溶解せしめ、撃墜する。それも射線上の全てを。ハルトマンもコレには驚く。


「テツヤは人型を!戦闘機はこっちで引き受ける!」

『OK!』

二人は二手に分かれて迎撃を開始。鉄也はメカとの戦闘を開始する。グレートマジンガーの25Mの巨体が唸りを上げ、札幌市街を疾駆する。ブースター装着のままだが、その動きは俊敏。百鬼メカと立ち回りを演じ、マジンガーブレードを縦横無尽に振り回す。



――百鬼メカは斧でマジンガーブレードに対抗する。剣と斧がぶつかり合う音が周囲に響き、その剣戟は見るもの全てを圧倒した。百鬼メカを操縦する百鬼衆も高練度な者が乗っているためか、マジンガーブレードの攻撃に対応してみせた。

『ほう……まだいたのか。百鬼帝国にも骨があるのが』

「ふふふ。貴様らとの戦いで最初の幹部が倒された後にヒドラーのせいで一般兵同然の扱いを受けていた者達が大帝陛下にお目通りしてもらい、自ら新幹部に選抜されたのだ」

『人望ないな。感想はどうだ?ヒドラー』

『ぐぬぬ……』

鉄也は指揮能力はあるが、兵から人望が薄いヒドラー元帥の様にほくそ笑む。能力があっても傲慢な振る舞いをする指揮官は嫌われる。ブライ大帝は『扱いやすい』から軍部責任者に据えたのだろうが……。



『ブレストバーン!』

『おぉっと!』

ブレストバーンが炸裂し、周囲のメカ達は高熱で搭乗員ものとも溶解するが、鉄也と打ち合うメカなどの高練度兵搭乗機のみが回避に成功する。


『死ねぃ!!」

『それはこっちの台詞だぜ!サンダーブレイク!!』

グレートのサンダーブレイクと百鬼メカの破壊光線がぶつかり合う。威力はサンダーブレイクが上回り、敵のメカの角を破壊する。それと同時にマジンガーブレードが投擲され、胴体に突き刺さり、更にニーインパルスキックで剣を押し込んで貫通させる。これに不利を悟った、メカを操縦する百鬼衆幹部は撤退を進言する。



『ヒドラー元帥、このままでは不利だ!引き上げるぞ!』

『う、うむ!戦闘機隊はどうだ?』

『ダメだ、見てみろ!』

『ぬ!?』


戦況は百鬼帝国に不利に傾いた。グレートマジンガーによってメカの半数以上をほぼ一瞬で戦闘不能にされ、戦闘機隊もハルトマン一人のために20機以上撃墜される有り様であった。


「行かせないよ!」

ハルトマンはビームガトリングガンやビームマグナムなどの重火器の使いどころを一発でマスターし、ビームマグナムを爆撃機編隊の掃討に、ビームガトリングガンを対戦闘機用に使い、戦果を上げた。(この時にISはハルトマン用に第一次移行を起こしていたため、この二号機は以後、ハルトマン専用機との扱いを受け、名称はドイツ風に『シュヴァルベ』とされたという)


――ハルトマンの戦術は明確な一撃離脱である。火力を一点にぶち込んで敵を落とし、小休止を挟みつつ新たな敵を策敵する。ビームマグナムのマガジンが切れた後、残った爆撃機を落とすために、強引な手段も用いる。それは……。

「この機体越しにシュトゥルム!!」

本来は補助魔法であるこの固有魔法だが、ゴッドガンダムの爆熱ゴッドフィンガーなどに着想を得、この時初めて掌の中で発動させた。ISの掌越しだが、その破壊力は変わらない。『メキメキッ』と金属が変形し、亀裂が入っていく。想定荷重を遥かに超える荷重を暴風で以って加えたからで、爆撃機は上から押しつぶされるように圧潰する。



――この攻撃法は強力化するネウロイへの対応策にも応用できると踏んだハルトマンは以後、この攻撃法を多用するようになる……。百鬼帝国はこの反撃の前に、観光(?)を放棄し、撤退。ハルトマンは撃墜スコアを330機に伸ばし、百鬼帝国からも『黒い悪魔』と畏怖されるようになったとか。


『ふ、ブースターを使うまでも無かったな』

「ご苦労さん」

『その姿、第一次移行が起きたようだね』

「何それ?」

『俺も人伝いに聞いただけだが、ISが搭乗者に最適化する事をそう呼ぶらしい。たぶん君もプロジェクトにお呼びがかかるぜ』

『え〜!めんどくさい』

愚痴るハルトマンだが、なんだかんだでプロジェクトに参加し、黒江とも面識を持った。その後の501再結成後にも配備の手配を自分で済ませていたなどの『意外な手腕』を発揮、バルクホルンやミーナを天地が裏返るほど驚かす事になる……。



――剣鉄也はハルトマンに背中を押してもらった事で、過去の過ちや孤児としての孤独感から解き放たれ、以前よりは人当たりのよい好人物と脱皮していく。そのことを知ったシャーリーは後に『テツヤさんに取って、ハルトマンの一言は福音だったかも知れねえな』と甲児に告げたという。この後、ハルトマンはこの出会いをきっかけに少しづつ大人への階段を登り始める。鉄也は孤児であった悲しみを理解してくれる第三者を得た事で、以前より大人びた態度を見せ始める。互いに影響を与え合った二人は、それぞれの形で成長しあうのであった。



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