短編『連邦軍のMS開発の苦労』
(ドラえもん×多重クロス)



――連邦軍は西暦2200年中盤時に配備されていたMSにおいて、一種の階層が出来上がっていた。これはこの時代のどの兵器にも見られた傾向だが、殊更、MSにおいては顕著であった。その最下層に位置するのはジム系MSである。第一線で稼働している中で最も旧式なのがジムVである。ジムUから更に改修した機体が多いので、素体の老朽化が進んでいる。そのため生産数の800機の多くはメカトピア戦争までに消耗し、現在は100機ほどしか稼動状態ではない。その次が新規製造機であるヌーベルジムV。これはジムVの内、新規製造機に与えられた名である。ガンダムmk-Uの簡易製造機と言える性能をマークした同機はジェガン配備後も少なからず愛用され、改修機が『正統なジム系最初の短命機』という汚名を引っ被ったのと対照的に、2200年当時で追加生産分も含めて300機が稼働していた。その後継機のジェガンは白色彗星帝国との本土決戦を皮切りに、戦乱期を迎えた地球連邦軍の屋台骨を支えている。短期間でおよそ1万機以上が生産され、正規でのバリエーションが多く展開された事、更なる後継機種も基礎設計はジェガンのそれである故に、『第二世代RGMシリーズの祖』と技術的に評される。ウィッチ世界にも多くが持ち込まれ、実戦運用されている事から『連邦軍に取ってのザクU』、『連邦軍がようやく得た軍馬』と軍事雑誌で専ら評判である。その後継機種の製造は手間取り、小型化した『ヘビーガン』、ビームシールドを持つ『ジェムズガン』は共に直ぐに性能不足が露呈、即刻生産中止に追い込まれた。その兄弟機であるジャベリンはジェネレーター出力そのものはジェムズガンと代わりはないが、内部構造改良とアポジモーター増設、ジャベリンユニットの採用で連邦軍を満足させた。配備数はジャベリンユニットによって高コスト化した事もあり、すべてのジェガンを代替しうる数には到達していない。ジェイブスの開発が進められたのは、その事情もあるのだ。また、軍を押さえつけていた政府内の左派の殆どが度重なる侵略で瓦解状態(平和主義者の殆どがリリーナと違い、白色彗星帝国戦で我先に地下都市に逃げ出すと言った、日和見主義な様子があちらこちらで見られた事で左派は急速に影響力を失った。ヤマトの自己犠牲的行動もあり、霧散状態に陥った。リリーナの理想は結果的に古代進のズォーダー大帝への自己犠牲的行動によって否定された。『違うッ!!断じて違う!!宇宙は母なのだ!そこで生まれた生命は!全て平等でなければならない!それが宇宙の真理であり、宇宙の愛だ!お前は間違っている!それでは宇宙の自由と平和を消してしまうものなのだ!俺たちは戦う!断固として戦う!! 』と宣言し、徹底抗戦した事で一気に地球連邦の世論は徹底抗戦になった)にある

――ギアナ高地

「第5機動艦隊に残置するジェガンを地上に移し、ジェイブスに機種変更します。よろしいですか将軍」

「うむ」

「地上軍から文句が来ておりますよ。いい加減にアクアジムから変えてくれと」

「今更、一から水陸両用機作る意義はない。熟練者は陸戦用百式改を改良して配備せよ」

「ハッ」

「ついでに余ったジェガンを水中用に改造してやれ。アクアジムよりははるかにマシだろう」

レビルは宇宙軍の軍備更新を優先していた。地上軍、特に海軍の必要性は低下しており、以前の40%ほどの戦力しか保有していない有様で、中にはウィッチ世界から戦艦を買い取り、近代化改修して使う艦隊も出る始末だ。水陸両用MSはアクアジムから更新されていないし、一年戦争で現用艦艇の多くが沈没した事もあり、保存されていた21世紀前半のイージス艦を改修して使う艦隊が全体の半数に登る。これが海軍の現状である。一年戦争中に稼働戦力の80%をコロニー落としで失った傷が癒えていないのが伺える。総じて、宇宙軍のお下がりが充てがわれるのも地位の低下を表していた。

「陸軍空軍と違って、海軍のかつての仕事の多くは宇宙軍が担っている。かつての沿岸警備隊同様の地位に堕ちた以上、規模拡大は無駄遣いと誹りを受ける。潜水艦隊重視になるのはやむを得ん」

「ええ。マッドアングラー級は元々はこちらの『ロックウッド級』をMS母艦として潜水空母化したものですが、本来は在来型原子力潜水艦だったはずですし、ジオンの戦略が影響与えましたからね」

「それに海軍の主力になったMSの多くは旧ジオンの遺産だ。純連邦製を望む声は今でもあるが……F90で実験された装備で、一年戦争中のガンダム水中用のプランを再構築してみるか?」

――皮肉な事に、スペースコロニー国家であるジオン公国は海への憧れと戦略が合致した結果、水陸両用MSの開発を推進した。ズコック、ゴッグ、アッガイがその代表的な機種だ。統合整備計画でゴッグ、ズコックは後継機が作られたのも著名だ。連邦軍はアクアジムの使用を縮小し、それら鹵獲機の使用に舵を切った事もあり、一年戦争後の連邦軍製水陸両用MSプランはF90のオプション装備程度で、完全な一からの水陸両用機は一切無い。一年戦争中にRX-78-3をベースに、『ガンダムサブマリン』とのコードネームで開発が進められたが、アムロ・レイの活躍(通常装備であらゆる水陸両用MSを撃破した)が原因で中止された。海軍はその計画で試作中であった試作機を保存しており、F90Mの装備を取り付けた姿で動態保存されている。姿はRX-78を水中型に改造したかのようなもので、アクアジムのエース仕様『水中型ガンダム』を想起させる。

「海軍の好きにさせましょう。たまには好きにさせんと文句が来ますから」

「そうだな」

連邦軍内の発言力は宇宙軍を最高位とするヒエラルキーが確立されている。そのために地上三軍は空軍>陸軍>海軍の順の発言力となっており、宇宙軍は潤沢な予算を得ているため、先進兵器を最も保有している。次に制空権の都合上で空軍が再建が進んだ。一方で陸軍は治安維持のために、海軍は海賊討伐と海上通行路の安全確保目的に生かされているに過ぎなかった。レビル将軍は若き日は空軍と陸軍に在籍経験があり、その経験で宇宙軍に移籍したため、陸海軍の動きには比較的寛容であった。軍備の質の均一化は必要であるという現実的観点からの容認でもあったが、新規MS開発にお墨付きを得た海軍は宇宙軍から提供されたジェガンをベースに、新型水陸両用MSを開発。数ヶ月後に空き番である『RGM-89C』の型式番号を与えられた『シージェガン』として採用、残存するジェガンの生産ラインの一部は海軍用に割り振られたという。

――宇宙航宙戦艦シナノ 格納庫

ミッドチルダに派遣され、待機中のロンド・ベル。シナノの格納庫に集められたRGM系の機体は、ほぼ全てがジェイブスやジャベリンなどの比較的新型のものであった。見かけは大きさ以外ではジェムズガンと変わりないように見える同機だが、量産化に伴い、F90で試験されたミッションパック機構が採用されており、アナハイム製でありながらサナリィの影響も感じさせる。ロンド・ベルが運び込んでいたミッションパックはV型装備。即ちウェスバー装備パックである。F90のミッションパックの多くは単体の単機能MSの雛形になった(Vタイプ→F91など)が、コズミック・イラ世界のデータを得てからは、パック機構を活用する方向に変じた。これはコズミック・イラ世界のストライカーパックのデータが図らずしもミッションパックの有効性を示したためで、コズミック・イラ世界でザフトがミッションパックとストライカーパックを混合して模倣したように、この世界ではストライカーパックが装備運用の方向性に影響を与えたのであった

「アムロ少佐でありますか?自分は扶桑陸軍、加藤武子大尉であります」

「黒江少佐から君の噂は聞いている。よろしく頼む」

「黒江少佐に『挨拶しとけ』と言われまして、今日は伺いました。しかし、凄いですねこれは」

「半分は新兵器と超兵器の見本市になってるからね、ウチは。例えば、そこにあるHi-νガンダム。僕が第二次ネオ・ジオン戦争の時から使っているνガンダムの完成型なんだが、専用部品が多いから整備班が悲鳴あげてしまってね」

そう。Hi-νガンダムは出来るだけ既存の機材を流用したνガンダム(Zガンダム系のフレームを流用し、センサーもZ系のそれを流用している。また、機体の基本設計は以前に試作されていたμガンダムのそれを改良したものだ)と異なり、一から建造された。センサーなどは新型の専用部品に変えられ、更に当初から、フレームや装甲などが見直された結果、前形式との共通点はフェイスデザインとフィン・ファンネルの有無のみになってしまった。ジェネレーターも改装の際に新型兵装『ハイパーメガバズーカランチャー』の稼働前提の出力を持つ新型に換装されたので、νガンダムの内実が『サイコ・フレームを除けば、RX-78の機能を持つZガンダム』の枠を出ない急造品だったのに対して、『全くの新型であり、サザビーをスペックの時点で圧倒しうる』という超高性能を得た。その代わりに整備性は低下している。整備性度外視の兵器は23世紀世界ではままあり、武子としてはそれを快く思ってはいない。だが、整備性の低下と引き換えに高性能な兵器は少なからず存在する。近しい例は、旧米軍のF-22、F-35戦闘機が有名である。武子の信念と裏腹に、技術の発展に伴う高性能化は相対的な整備性の低下を招いたのである。(電気機器や装備などの要因も大きい)

「いいんですかそれって」

「兵器そのものが高性能化と引き換えに平均的整備性を犠牲にするようになったからね。しょうがない事さ」

「そうですか……」

「話は変わるが、そっちの世界じゃリベリオン国内が内乱に陥りそうなんだって?シャーリー大尉から聞いたが」

「ええ。そちらでの排日移民法などの法律をウォレス政権は自らの正当化のために、利用したんです。こちらでは西海岸部に相当数の日系移民がいましたから、移民排斥を『トルーマンとルーズベルトが画策していた』風にプロパガンダしたんです。それでティターンズに志願する日系移民が多くなり、ついには暴動に発展したそうです」

「白人と衝突でもしたのか?」

「ええ。潜在的に白人が持っていた白人至上主義に憤慨した有色人種が白人の店を襲う事が多くなり、ティターンズは『これこそ前政権が目論んでいた悪夢である。我々は人種差別はしない』と声明を出したそうです」

「人種差別か……すごく皮肉なもんだ。で、白人至上主義が標的になり、各州の治安が悪化か。統合戦争もそうだが、白人至上主義ほど世界を混乱させたモノはないが、彼らとて同じようにやった結果がグリプス戦役だというのに」

アムロはティターンズが人員確保のために、白人至上主義による有色人種の憎悪を利用した事に呆れる。彼らとて、スペースノイドを同じように差別した結果、自らの崩壊を招いたからだ。

「大尉」

「何か?」

「アナハイムがガンダム・ピクシーを送ってきまして」

「何?いわくつきのアレを?」

――ガンダム・ピクシー。それはかつて、G-3ガンダムをベースにして次期主力機を生み出す『G-4計画』の一環で陸軍が生み出した陸戦格闘型のガンダムタイプである。一年戦争中は終始政治に翻弄され、二号機は中破、一号機は連邦の政治的失態でジオン側に渡り、彼らに与した。戦後はその経緯から忌み嫌われた。残存した二号機と三号機は早々に除籍され、アナハイム・エレクトロニクスに引き取られていた。その後はアムロ・レイ用が予定されていた二号機のみがテスト用に改修されていたのだ。そして、武器もアムロ搭乗前提に換装されており、ハイパービームサーベルとZ系用のビームライフルとなっていた。

「今更感がすごくあるな……一年戦争の時の予定専用機を今になって得てもなぁ。せめてアレックスにしてほしいよ」

「アナハイム・エレクトロニクスもいわくつきの奴送ってきたもんですよ。アレは『悲劇のガンダムタイプ』ですから」

――整備兵が困っているのは、ガンダム・ピクシーは『妖精』の名に反しての逸話が多く存在するからだ。連邦陸軍が威信をかけて開発したが、イフリートの前には力不足気味であった事、上官の行為が原因でジオン側に与した事……枚挙に暇がない。アムロとしても乗りたくはないようなのが伺える。データ集計目的に乗り込んだのが、ピクシーが本来の想定パイロットと出会えた唯一無二の機会であった。アムロ・レイはこの後、データ集計目的にバダンに協力するジオン残党の討伐任務に発進した。



「陸軍が唯一無二、一から計画したガンダムタイプか……実力を測ってみるか。大尉、よくみているといい。君ももし未来に行けば、否応なくやらればならないからな」

「はい」

「よし。アムロ、ガンダム・ピクシー、出る!」

シナノのカタパルトからドダイ改に乗ったガンダム・ピクシーが射出される。歴代ガンダムの中では細めのシルエットであり、装甲は薄めだ。一年戦争中は撃破されたりしたケースがままあったというのも頷ける。だが、現在のピクシーのスペックは小型MS時代に沿うもので、試験的に大型機用にエネルギー運用効率が改善されたビームシールドが左腕に備えられている。改修前はビームダガーであった格闘兵装はハイパービームサーベルに換装され、一年戦争時とは別物であった。

――この時、ミッドチルダ戦線の側面を突こうとしたのはドム・トローペンとデザートザクを主体とする師団であった。数は30機ほど。これはジオン共和国が終戦時に旧軍の生産ラインにあった完成状態の機体をアナハイム・エレクトロニクスを通して、人員ごとバダンに横流しした機体群の一つである。パイロットも旧ジオン軍人であり、そこそこ腕の立つ者が選ばれていた。だが、アムロにとっては雑魚の一団に過ぎず、開発時には混戦での格闘戦を主目的にしていたピクシーにとっても取るに足りない集団であった。







「落とす!」

師団のど真ん中に舞い降りたピクシーは換装されたハイパービームサーベルを以てして大暴れした。機体名の由来となった、妖精の如き身軽さを、本来の想定パイロットの腕も相なって発揮。サーベルを混戦の最中で振るいまくる。

「ドムのトローペンか……今となっては脅威でもなんでもないな。落ちろ!」

近代化改修によって武器は最新のビーム兵器に換装されていた。ハイパービームサーベルを振るい、デザートザクを胴体から横一閃、葬る。ピクシーは敵機の爆発前に離脱し、次の目標を探す。火線を回避しながら姿勢を低くし、巧みなアポジモーターの噴射と四肢の駆使で忍者のような動きを見せる。本来の運用想定にばっちりハマれば、ピクシーはその真価を発揮する。かつて、『格闘戦では当代最速』を謳われしスペックは近代化改修と、本来、想定された乗り手によって、ようやく発揮されたのだ。

「す、凄い……これがMS……」

アムロの巧みな格闘戦戦術に思わず感嘆とする武子。彼女とて、扶桑陸軍飛行ウィッチ当代随一を謳われた者であるのだが、それから見てもピクシーの動きは卓越したものなのが分かる。MSは機械であるのだが、それを感じさせない滑らかな動きは武子の中の『ロボットのイメージ』を一新した。ハイパービームサーベルを片手に、ジオン系MSを蹴散らすその姿は、不思議と超未来兵器でありながら、大昔の武士や騎士が矢面に立っていた時代を想起させるものだった。ピクシーはこの後、デザートザクを6機、ドム系を5機ほど血祭りに挙げて引き上げた。市街地に転がるMSの残骸は、連邦軍が派遣した重機代わりのジムUが回収していった。





――市街地

『少佐、扶桑陸軍の機甲師団がドイツ軍と戦闘を開始した模様です』

『そうか。ドイツ軍は百戦錬磨だ。果たして、付け焼刃の扶桑陸軍がどこまでやれるか……』

引き上げる途中で報告された事項に、アムロは扶桑陸軍の戦力をあまり宛にしていないらしいのが窺えた。武子も同意した。扶桑海事変の際に、これでもかというほど敗北を重ねた事で機甲戦力を増強し始めたにすぎない扶桑陸軍は機甲師団の運用ノウハウ、実戦での戦術などの全てが平均的に劣る。それが第二次大戦で機甲師団の有用性を世界で最初に示し、一時は世界最強を謳われしドイツ陸軍機甲師団相手に、善戦できればいいほうだと考えているのだ。

――このように、味方からでさえ低評価されている扶桑陸軍機甲師団。それは主に史実太平洋戦争での大日本帝国陸軍の悲壮な後期の戦闘や、扶桑海事変での連戦連敗に由来する。扶桑陸軍は急速に機甲師団を編成しつつあるが、それは別世界の自らの破滅と、そこでの後世からの自らへの否定に顔面蒼白となり、天皇陛下から更なる不況を買うのを恐れる集団の姿が見え隠れしていた。





――帰還し、メカニックがデータ集計に入るが、アムロの戦術とピクシーの機体特性は噛み合わない事が判明した。機体性能こそ引き出されているが、装甲が薄めのピクシーではアムロの万能型な戦術を生かしきれないのである。

「少佐、どうしますこれ」

「予備機として保管する手もあるが、ちょうど圭子君が電話でMSの配備を頼んでいたはずだ。回してやれ。彼女らが扱いやすいようにサポートソフトをインストールしておけ」

「分かりました」

ピクシーの塗装は変更され、低練度兵のサポートソフトを管制OSにインストールするメカニックら。アムロ等熟練者はサポートソフトを必要としないが、低練度将兵には必須であった。これは一年戦争中のジムには標準装備であったのが継続されている慣例である。これを可変機に適応させたのがリゼルのOSである。これは、パイロットがある一定の練度に達するとオフにして、素の操縦性による機体性能の限界に挑むのが地球連邦軍の一年戦争以来の慣例であった。アムロは既に3機も専用機を確保していたため、ピクシーを敢えて持つ必要性はなかった。そのため、飛行64戦隊に譲渡すると言った。

「少佐、いいんですか?」

「いいさ。僕は既に3機も専用機がある。これ以上持つと、兵たちにぶーたれられるのは間違いなしだからな。君もこれから大変だろうが、頑張ってくれ」

「はいっ」

この後、武子はMS操縦訓練をこなしつつ、ストライカーとISの飛行訓練を行う多忙な日々を送る事になる。そして、その内にサイコミュシステムへの親和性がある事が確認された彼女のISにはフィン・ファンネルが搭載される事になる。そして、この時のピクシーの戦闘データはジェイブスの新たなミッションパック開発に繋がるのであった。



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