短編『日本と扶桑』
(ドラえもん×多重クロス)



――扶桑皇国と日本国との交流は、結果として、扶桑の独自性(華族が1947年になっても存続している、貴族院が参議院と別の形で存続しているなど)を日本に示した。日本の左派からは『華族の廃止が何故、成されていないのか』というトンチンカンな質問まで飛び出し、扶桑側を呆れさせた。そもそも、扶桑には華族を廃止する理由がない(他国に占領されたわけでもないし、皇国は史実大日本帝国より開明的。更に、軍事的にはノーブルウィッチーズに参加するためという点がある)。そのため、日本国で平民として暮らす元・華族達の郷愁を刺激し、日本国から扶桑に移民し、扶桑で断絶したが、日本国では存続している家の者達が、養子に入るなどして、その名籍を継ぎ、扶桑華族となり、結果として、昔年の地位を取り戻した者も続出した。(この事が、22世紀に皇室の存続のため、止むに止まれず、旧華族の一部が復権する根拠となったとか)これは野党に問題視されたが、与党は『元華族の皆様方の自由意思に寄るものでありまして、私共には止める権限はございません』と答弁した。実際に見てみると、実際に移民したのは、一族の傍流で、自らに権威付けと財産が欲しくて渡った者達、戦後の日本で没落し、困窮のあまり、扶桑側の一族を頼った没落華族、昔の暮らしに郷愁を抱いた者、扶桑側に要請され、輿入れした者などだった。日本に与える影響はこれに関しては微小であったが、工業分野・医療分野・農業分野に関しては影響が大だった。





――航空産業は、戦後に流失した人材が扶桑の航空産業にはおり、その優秀な頭脳を活用できる事が、日本に戦前期の航空ノウハウを再びもたらす事になり、また、扶桑側はノウハウがない民需分野のノウハウが得られる事でもあり、双方に旨味があった。また、鉄道分野も新幹線のノウハウが伝えられ、また、日本側には映画撮影にあじあ号が使える観光上の利点なども大きかった。自動車産業は、日本の戦後の技術が一気に雪崩こみ、革命を起こした。造船業は戦後の技術向上分がプラスされ、大型空母の国産化に貢献する。また、陸海空の自衛官が扶桑陸海空軍に出向し、近代戦術を教えこんだり、戦前の軍人の敢闘精神が自衛官に伝わったりした――


――2006年

のび太が高校最後の年を迎えたこの頃、のび太にも、生家との別れの時が近づいていることが知らされた。あと二年ほどで、この土地からの立ち退きが決められたからだ。

「そうか、とうとう来るか」

「ええ。昔からわかっちゃいた事ですけど、来ますよ、これ」

のび太は18歳を迎え、大学受験を控えていたが、2007年度の受験は失敗に終わる事を分かっているので、2007年度の時は、玉子とのび助へのポーズとも言えるため、本番への予行演習のようなものと割り切っている。


「お前にとっちゃ、生家から離れるわけだしな。私もここには7年出入りしてたって事になるし、名残惜しいぜ」

空自で二佐となった黒江は、野比家が引っ越しの準備に入りつつある事を実感する光景があることに感慨深いものがあるようだ。子供の頃のおもちゃは整理され、今ではゲームと大人向けのホビーがいくつかと、おばあちゃんの形見のぬいぐるみが置かれている。のび太は父方の祖母を強く慕っており、青年となった今でも、祖母に時々会うことで、玉子やのび助が知らず知らずに傷つけてしまった心を癒やしている。(おばあちゃんも自分の死後の息子夫婦の事は気にかけており、のび太の要請で、小学校6年と中学二年のお盆頃に『夢』とごまかす形で、のび太の受験を控え、ピリピリしている息子夫婦の前に姿を見せた事がある)また、黒江も、空自で順当に出世し、もうじき若くして一佐になる事が決まっているが、野比家に下宿する事は続けており、野比家から隊舎に戻る事も珍しい光景では無くなっていた。そのため、自衛官として潜り込んでいるウィッチの指定下宿先ともなっていた。(これは、野比家が数年後にマンションに引っ越しても変化しなかった)


「まぁ、親御さん達にはわりぃけど、下宿の指定は続けるぜ。人数も増えて来てるしな」

そう。航空自衛隊には、2005年度に潜り込んだ赤松貞子、大林照子を皮切りに、若松幸美、檜兵子、大原涼子などの扶桑空軍の名立たる撃墜王達が続々と入隊。正式に任官後に配属された暁には黒江のいる飛行隊に配属の内示が防衛庁(一年後に省へ昇格)内部で出されていた。空自としては、90年代にゴルゴ13に頼み、鎮圧してもらったものの、クーデター未遂事件を起こした張本人であった(オペレーション・トロイ事件)伊波一尉の事もあり、生え抜き自衛官も信用できないと疑心暗鬼に陥っており、そのため、ある意味では国家へ絶対の忠誠心を持つ『旧軍人』である彼女らを重宝するようになっていた。源田実の口添えもあり、扶桑空軍の撃墜王達は留学生枠などを活用し、空自に籍を置いていた。そのおかげもあり、女性自衛官が真に要と言える職につけるようになったのは、2006年度と速い段階であった。また、女性自衛官が機甲科・戦闘機パイロットに配属される事も珍しくなくなり、今では扶桑軍出身者、生え抜き女性自衛官らとで競争が起きていたのだ。

「ドラえもんの道具で部屋はどうにかします。引っ越したら狭くなりますから」

のび太は声変わりで、声色が少年期より低くなっている。体格も170cm台の長身に成長しており、少年時代の面影は体力の無さくらいである。

「頼む」

乱視含めた視力の回復手術は壮年になるあたりで受けているため、この頃はまだ眼鏡を着用している。そのため、そのまま成長した印象が強い。

「そろそろ、学園都市に美琴さんは居ますかね?」

「あいつがいるのは、小学校当たりからだから、もうそろそろいるはずだ。2010年代初めで14歳なら、1995〜2000年までの何処かで生を受けてるから、いると思う。」

御坂美琴は、1990年代後半から2000年代初頭までのいずれかの年に生まれ、2010年代前半で中学生であること、年齢が14歳である事、過ごす時間軸からの逆算である。そして、美琴は仮面ライダーストロンガーの『超電子』に強い羨望を覚えていた。それは超電子エネルギーであれば、たとえ、一方通行のベクトル操作で逸らされても、その余波だけで彼を倒せるからだ。(超電子エネルギーの強大な力はなんと、神々のレベルである)そのため、ストロンガーの身体に埋め込まれたダイナモの構造が学園都市の水準から見ると『単純な』構造であるのに驚きつつ、その水準に能力を高める事を渇望するようになった。それを危惧したストロンガーは、ある日に美琴を強引に連れ出し、ある人物に引き合わせた。学園都市の能力者ではない、『天然の超能力者』、ストロンガーの現役時代と同時期に、『ファントム軍団』、『デスパー軍団』という悪の組織と戦ったヒーロー、『渡五郎=イナズマンF』であった。




――渡五郎はデスパー軍団を倒した後、いずこへと姿を消したが、ある時期から23世紀初頭まで『冬眠』状態で眠っており、バダンとクライシス帝国の襲来に呼応して目覚めた。そのためか、現役当時の若々しい容姿のままである。渡五郎は美琴に対し、『力を求めるあまりに、自己を失いかけている』と叱咤し、イナズマンとしての力を浴びせる事で、『創られた能力』の限界を超える事を選ばせ、ゼーバー・イナズマンブラッシュの電撃を浴びせることで、美琴の奥に眠っていた素養の『自然な覚醒』を促した。その為、美琴の能力値はその時から伸び始め、のび太と再会した時には、微妙な数字ではあるが、能力値が伸びていた。そのため、上条当麻との力の差に思いつめる事はほぼなくなり、時々、学園都市の実戦部隊や暗部部隊と交戦し、『レコンキスタ計画』(遺失技術の再取得計画)継続中の地球連邦軍を手助てしている。



――こうして、学園都市は様々な勢力の思惑が入り交じる地域となり、この時に連邦軍製MSを目撃した者達が、後の時代にMSの前身となる兵器の根幹技術を確立させるに至る。学園都市はその絶頂期に『技術の実験場』であったが、それが功を奏し、後の地球連邦時代の中興に繋がるのである。特に学園都市で確立された技術の多くは、後の連邦時代で隆盛したモノも多数に上る。そのため、学園都市は十分に歴史的意義を果たした事になる。

――学園都市

「ああ、なんだ、綾香さん。どうしたんです?電話なんて、珍しい」

「茂さんから聞いたが、御坂。お前、最近、特訓してるんだって?」

「ええ。まぁ、色々あって」

「やっぱりな。『彼』のことがそんなに好きなら、告っちまえよ」

「ブフォ!?な、なんですかいきなり!私とあいつはべ、べ、別に……そ、そんな……」

電話口の黒江の言葉に、物凄く慌てる美琴。美琴が電話口の向こうで赤面しているのが手に取るように分かる。そんな黒江は攻める。

「お前って、普段は勝ち気なくせに、恋愛の事になるとダメなのな」

「し、しょうがないじゃないですかぁ!あ、あたし……こ、こういう気持ちになったの、生まれて初めてなんですから!」

「お前、ほんと、かわいい奴だよ。彼には、あの子もいるから、ライバルは多いぜ」

「インデックスの事でしょ、分かってますって!タイムテレビ借りて調べたから、あいつがあの子をどんなに大切に思っているか、は分かっています。十字教はいけ好かない連中ですけど」

美琴は未来のハワイで、仮面ライダー達から、片想い中の上条当麻が直面する『過酷な運命』を知らされた。そのため、帰還後は『彼の運命を変える』事を主目的となった。だが、仮面ライダーストロンガーの超電子という、『自分が全く及ばない力』に心が折れそうになった事がある。超電子エネルギーをレールガンとして使えば、美琴が児戯にしか見えないほどの威力のそれを放てるからで、同じような事を彼がすると、レールガンというよりは『ビームライフル』に等しいものとなったからで、学園都市暗部が開発した、『レールガンをガトリング砲のように打ち出す』兵器を真っ向からぶち破り、一瞬で破壊する威力であった。

「茂さんの力に憧れるのはわかるが、無茶すんなよ?私もそうだったけど、お前は『あの人にはなれない』からな」

「分かってます。イナズマンF――渡五郎さん――からも言われてますから」

黒江は、過剰に力を求める美琴に釘を刺す。それは、リウィッチになって間もないころに、黒江自身も美琴のような事があったからだ。『超電子』の力に憧れ、その時の事故で、リンカーコアが活性化&変質し、『雷撃』の力を手に入れた。その限界を知るにつれ、次第に別アプローチの強さを求め、聖闘士にたどり着いた。その過程では生傷は絶えなかったが、今や神の使徒に等しい力を持つ。そのため、同じような体験をしている最中の美琴に忠告をする。実際、美琴は黒子にも、自身の悩みは明かしておらず、自分で抱え込む癖があるからだ。これはなのは達によく似ていた。

「近いうちに、自衛隊の交流と称して、そっちに潜りこむ。その時になったら案内頼む。一方通行には会いたくねーけどな」

「あいつはねぇ。エクスカリバーは弾けるんだろうか?」

「いや、あれは神の加護ある聖剣だし、逸らす程度はできても、跳ね返せないはずだ。神でもなければな」

「一方通行は魔力の片鱗使えるようになってるし、あいつはあいつで、私とは比べ物にならない力を持ってるし、ほんと、自分自身が弱いって実感しましたよ」

美琴は、如何に自分が『井の中の蛙』であるかを嫌というほど思い知らされた。学園都市レベル5の第三位という肩書など、歴代仮面ライダーや聖闘士の前では意味は無い。そのためか、美琴の言葉の端々からは、そんな自分への自嘲が伝わってきた。

「あまり思いつめるな。解決の糸口ってのは、何処かにある」

「ありがとうございます。それじゃ」

黒江からの電話を切ると、美琴は自らの生き方を模索するべく、駆け出す。イナズマンF=渡五郎に言われた言葉を胸に。このように、日本と扶桑とを繋ぐ架け橋は、アチラコチラで見受けられた。




――扶桑側も、日本からの移民や、陸海空自衛隊から伝えられたドクトリンなどにより、軍隊の運用方針に大きな影響を生じた。地球連邦軍が指示した『志願制への完全移行』には、大陸領土奪還を志向する陸軍に反対論があったが、吉田茂が『南洋島守れない陸軍に存在価値なんぞ無い!』と怒鳴った(後に、これで彼が総理を辞任する一因となる)ため、押し黙った。結果、吉田はこの発言がスキャンダルとして報じられ、大陸領土出身者達の憤激を買い、戦争指導で疲れていた彼を激昂させ、『バカヤロー!』との一言と共に衆議院解散をする事になる。それは『バカヤロー解散』として、歴史に刻まれた。


――1948年 4月

この年の4月、扶桑軍は南洋島東部の都市を次々と失陥していた。M48パットン戦車、M24軽戦車などを擁する機甲部隊に対し、同地の扶桑軍は阻止し得る手段を持っておらず、次々と壊滅、或いは玉砕した。太平洋戦争を観戦した自衛隊からの出向者は、『旧軍戦車でチャーフィーやパットン相手にしようなんて、無謀だ』と断じ、連邦軍も『騎兵閥もこれで黙るだろう』と冷淡だった。実際、たとえチトやチリを持ちだそうが、パットンの前に一撃粉砕は間違いなしだからだ。扶桑軍はホリ車で火消しを行っているが、それも限界があり、ホリ車の損耗率も上がってきていた。七式中戦車の完成はあと数年はかかる見込みであり、困った彼らは日本に泣きつき、コピー元の74式戦車そのものを極秘に譲渡してもらった。これは名目上は日本で用途廃止になった車両をスクラップとして売りさばき、それを扶桑がレストアするというものだったが、実際は日本側がレストアまでを行っており、極秘に実戦証明も兼ねて、状態が比較的良好な車両が扶桑軍に回されたのである。(書類上は扶桑によるコピー)それは実質的に扶桑陸軍の救世主であり、自衛隊員による教導も加わった。装備部隊は精鋭の他、前線の損耗補填分として送られた。自衛隊にとっては信じがたい光景であるが、本来なら1950年代以後を担った車両たちが、『ムー大陸で第二次世界大戦の延長のような実戦をする』事を驚きを以って迎えられた。

――南洋島

「お、君は空自にいった」

「よう、陸自の。久しぶりだな」

黒江は、美琴との電話を切った後、防大同期の陸上自衛官とばったり会った。防衛駐在官になったらしい。

「君はここが故郷だそうだな。ややこしいことしてくれたもんだ」

「まぁ、外見が外見だし、職業軍人と言っても、旧軍には、女性軍人は一人も居なかったからな。それで防大に潜り込んだんだよ。今じゃウチの出身者は多くなったから、防大を経由する必要も薄くなったけど」

そう。日本で自衛隊に潜り込んだ者達は、源田実の意向もあり、選りすぐりの撃墜王達が多かった。そのため、90年代のクーデター未遂事件で、内部の生え抜き人材に疑心暗鬼となった空自に取っては大助かりであった。そのため、女性自衛官でもある彼女らは広告塔としても活用され、自衛隊に『男女差別がない』事をアピールする材料として、TVCMもなされた。そのため、翌2007年度から、女性自衛官の志願数が飛躍的に増えたとの事。ただし、旧軍人とも言える彼女らの重用は日本で、左翼から政権への攻撃材料ともされ、政権与党の腐敗もあり、2009年に政権交代が実現するのである。

「そっちは戦争中のようだが、1940年代というのに、殆ど戦後日本なんだ、ここは」

「まぁ、長く戦争してると、色々と前倒しされるもんだよ。風土は根本的に違うけど」

「だなあ。江戸時代が安土時代だから、こっちの市民団体とかが思っているイメージは通じないんだよな。だから、トンチンカンな事で批判するんだな」

「そうだな。確かに、良妻賢母や女性の社会進出が云々言ったって、もう女が軍人になれてるし、森蘭丸が女って時点で察しろってやつだだから、あいつらは馬鹿なんだよ」

黒江と、その友人の陸上自衛官は、日本の左翼の無知ぶりを嘆く。確かに、扶桑は戦前日本と一致する面も多いが、ウィッチがいる世界であるので、女性の社会進出に関しては、戦後の1960年代日本よりも進んでいる。更に、ユーラシア大陸に領土があるので、彼らは扶桑を『帝国主義者』と非難するが、扶桑にはそうならざるを得ない状況がある。中国や朝鮮半島相当の文明が滅んだ故、アジア地域の安全保障を担わなくてはならないという状況がある。彼らの批判は、そもそも国交成立の時点で、『地球連邦が解決済み』の問題であるため、大多数が成立しないし、その一つの軍内のシゴキも史実ほど(ウィッチの目があるからか)凄惨ではないのだ。

「だな。ただ、ドクトリンに関しては第一次世界大戦がマシに見えるから、最新のエアランド・バトルドクトリンを叩きこんでるところだよ」

「だよな。この世界の軍隊はぶつかった経験が普仏戦争までだから、兵器ドクトリンが進んでないんだよな。だから、私は防大に行ったわけだ」

そう。言うなれば、『皮は20世紀軍隊だが、中身が普仏戦争時代』と言えるのが、ウィッチ世界の軍隊だ。そこに、100年を超える歳月の埋め合わせが一気になされた結果、陸戦ウィッチは『戦車』でなく、『機械化歩兵』のカテゴリに変更され、陸戦ウィッチ部隊は機甲科・機械化歩兵のカテゴライズがなされたため、戦車部隊を称したブリタニアの陸戦ウィッチ部隊は『機械化歩兵部隊』に名称変更がされたという。これは戦車が、一気に戦後第二世代相当にまで強力化した事で、平均的な陸戦ユニットの火砲では、軽戦車の粋を出なくなった事も関係していた。

「そうだなあ。普仏戦争じゃ、騎兵突撃こそ華と思ってるのがいそうだし、塹壕戦の概念はあるらしいが」


黒江が防大に行った理由を悟った彼は、溜息をつく。彼ら自衛隊から見れば、『普仏戦争時代の人間が20世紀軍隊を動かしている』ようにしか見えないほど、ウィッチ世界の軍隊の戦略が稚拙だからだろう。

「陸自からかなり講師を招いているって言うけど、どうなんだ」

「ああ、それは楽だよ。一度教えれば、補習しないですむから。ウチだったら、数人は必ず出るところだ。これも気質の違いか」

「戦前の軍隊に入って、士官教育受けられるのは、戦後の官僚よりもキツイ試験くぐり抜けた連中だからな。きちんと勉強さえしてれば、まともな判断をしてくれるよ」

「すれば、な」

戦前の陸軍軍人は『戦うことしか頭にない脳筋』と罵られる場合も多いが、真に戦前に外国留学などを経験した将校らには国際的な見識を備えていた者、大局観を持つ者も存在した。彼が言いたいのは、『それらが多数派であったなら、そもそも太平洋戦争が起きなかったのに』という嘆きだ。

「陸自はアメリカ寄りのドクトリンだから、ドイツ信仰のウチの陸軍とはぶつかったろ?」

「ああ。だが、自分達の限界は分かってたみたいで、すぐに納得してくれたよ。戦争は補給と火力がナンボだからな」

そう。陸自は米軍のドクトリンを受け継いだ側面が大である。ミノフスキー粒子の存在もあり、ウィッチ世界は自衛隊の教義の全てを適応するわけではないが(精密なネットワーク構築が難しくなっているため)、参考にし、自国の参考にしたという。

「ところで、例の『モビルスーツ』だが、まさか本当に造って、その通りになるとは思わんだ」

「ご丁寧にガンダムもザクもあるしな。違うのは、Zタイプがそれなりに生産されてるくらいだよ」

「何故、あれが?」

「生産コストよりも、運用上の利点が重視されたのさ。量産すれば、相対的に安上がりだしな。それにバルキリーも本当にあるから、あれの生産に抵抗がなかったんだ。ただ、リ・ガズィは失敗作だけど」

「やっぱりなぁ」

「私も、前にアムロ少佐に聞いてみたんだが、リ・ガズィがポシャった理由はやっぱり、BWSのコストが本体の簡易化より高くついたからなんだよ。使ってた当人曰く、『パワー不足もあったが、使いにくい機体』だそうだ」

そう。アムロもリ・ガズィのことはあまり高評価はしていない。むしろ、出力面などを改良したら、原型機をそのまま使うほうが遥かに使い勝手良しとされたのもあり、リ・ガズィは大規模な生産ラインには乗らず、少数機が出回っている程度だ(それでも、40機ほど)。

「あれは『どうして造ったんだ?』って感じだなあ。不可逆的な変形だし」

「軍縮の時に、コストを中途半端にケチったんだろう?結局、リゼルやリ・ガズィ・カスタムが造られているから、あれの方向性は間違ってるかもしれん。後継機の開発で挽回を狙っているとか聞くが」

「ライトニングガンダムでも作るのかね?」

「バックウェポンシステムの有効性示さんと、軍とアナハイムのエンジニアが一人か二人は首飛ぶんだと。たぶん、作るんじゃないか」

そう。通常型Zが普通に量産された世界においては、リ・ガズィ系の肩身はますます狭い。プルトニウスとプロンプトが造られているのもあり、ますますリ・ガズィ系は中途半端と言われてしまうのだ。

「プルトニウスあるから、作る意味あるか?」

「試作と、Gディフェンサーの後継代わりじゃないか?あれも古ぼけてきたしな」

グリプス戦役で導入されたGディフェンサーはそろそろ、初期導入機が老朽化してくる時勢であり、後継機種の開発も必要となってきていた。アップデートはなされてきたが、根本的な後継機種も必要となってきたのだ。ライトニングガンダムというのは、ガンプラを題材に取ったアニメの登場機体で、それを実機として作る可能性を示唆したのだ。

「『アニメじゃない』って感じだな、まさに」

「だろ?結構Z系は乗ってるが、格闘戦するならさ、プルトニウス使うぜ。フレームから別物だから、Z系のネガ潰れてるしな」

「射撃戦なら?」

「砲台ならZZ、機動戦ならSだ。Sガンなら、機動戦も狙撃も高レベルでこなせるしな」

「ZZ、お世辞にも格闘戦向けじゃないからな」

「あれで真っ向からの格闘戦できんの、ニュータイプとかの凄腕くらいなもんだって。パワーはあるんだが。強化型で改善されたとはいえ、操縦難度高いぜ?エネルギー効率悪い方だし」

そう。ZZを素で動かそうと思うと、相当な腕を必要とする。それはエネルギー消費率が高いビーム兵器がたんまりあるからである。黒江はシミュレータでやってみたが、ハイメガキャノンの数発でほぼ『ガス欠』になるため、意外に気を使う。

「燃費悪いガンダムだしな。火力はいいが、あまり長期行動は向いていないって奴」

「そうだな。んじゃ、私はプルトニウスで戦線に戻るわ。ウェーブライダーに追いつけるのは、そういないしな」

「バイアランやギャプランくらいだろ、ウェーブライダーに追いつけんの」

「ああ。だから、あまり心配はしてねー。駐在官の仕事頑張れよ」

「ありがとうよ」

黒江は同期の自衛官と別れ、戦線に戻る。この頃になると、ティターンズ側にも、連邦内部のシンパから機体が横流しされたりしているため、彼らティターンズの保有機体数は減っておらず、むしろ増えていた。新式も得られているため、プリベンターも全てのルートは把握できていない証であった。

「ほんと、あいつらは真の目的のためには、この世界の人間が数億死んでもいいんだから、分からねえな。原爆を嫌う割には、それ以外の手段は使ってくるし」

そう。ティターンズは核兵器を嫌う反面、それではない方法での大量虐殺は行う二面性がある。空襲の皆殺しの手法はカーチス・ルメイ、通商破壊戦での無差別攻撃はドイツ軍に範を取っているため、それでの死者数は開戦から数えて、早くも50万を超えている。これは民間機・民間船が双方共に狙われたからで、船の方は対処に成功したが、飛行機の方は神出鬼没であり、民間機に電探を装備させ、ウィッチの護衛をつけさせるしかなく、後手後手の状況なのだ。

「宮藤はそれを嫌ってたな。『戦争にだって、ルールがあるはずです!』って。あいつからしてみれば、女子供だろうが、情け容赦なく殺していく奴らが許せないんだろうな」


そう。芳佳は『女子供だろうが、情け容赦なく殺していくティターンズ』に激しい嫌悪を見せており、バルクホルンやリーネも驚くほど、彼らには苛烈な面を見せる事が多くなった。これは芳佳が最も嫌悪する事を、ティターンズは平然と行っているからだ。その証拠に、芳佳はここ最近に撃墜スコアを伸ばしている。

「航空路線沿いにレーダーサイト置ければいいが、土地の問題があるからな。さて、どうなるか」

芳佳の行いに理解を示しつつ、レーダーサイト増設を急務と考える。レーダーサイトの増設は防空の要でもあるため、強力なレーダーとM粒子干渉計が必要となるため、結構、難事業だ。

「問題は、バトルオブブリテンの戦訓を生かせる、かだな。それと空自流防空術を身につけられるか」

そう。戦後自衛隊も防空に力を注いだ。それは黒江自身が一番知っている。そのため、自衛隊に習い、三沢・百里・入間・厚木などは『ジェット機重点運用拠点』とされている。今は大神・樺太・浦塩・沖縄なども整備が進んでいる。日本よりも軍用飛行場に抵抗が無く、国民が軍に協力的なのもあり、既に台北などは稼動状態だ。(日本の左翼は軍用飛行場に反対を表明しているが、相手にされず)日本の左翼は『内政干渉』という言葉すら知らず、戦前日本、その中でも軍国主義化した1930年代以後の日本帝国と同一視し、基地への侵入を止めようとした扶桑軍憲兵を集団リンチし、殺害する事件も起きる。これは左派政権が成立した2009年以後の事だが、その時には、双方の公安警察は共同戦線を張れたが、政府上層部がごたついたり、当時の政府高官の中に、公然と「戦前の指導層なんぞ死ねばいい」と発言する者もいたため、大問題となった。その結果、その政権の屋台骨は揺らぎ初め、2011年の大震災でトドメを刺される。中道右派政権に戻った時には、色々と嘆かれる現状であり、特に特警から特捜関連の技術は旧式を理由に、インターポールに無償譲渡という有様であった。(インターポールも予算不足でそれを活用できずに終わったが)左派政権最後の首相は、ウインスペクターからエクシードラフトの技術が学園都市よりも進んでいたと知ると、愕然としたという。その後に学園都市が第三次世界大戦の引き金を引いた事で、左派政権は学園都市を制御出来ないことが露見し、衆議院選挙で完膚なきまでに敗北するのである。また、扶桑との軍事交流に反対する一派もこの時に一掃され、政権奪還の時には、黒江は20代の内に『将補』に昇進した他、他の者達も最低で二尉以上の階級の実務に就いていた。流石に、統合幕僚監部の重要ポストこそ渡さない防衛省だが、黒江を20代で将官に昇進させるのには、背広組から反対論があったという。だが、黒江の世界には、『23歳で空軍総監をしたアドルフィーネ・ガランド』がいるため、当時、20代後半を迎えつつあった身としては遅く感じた。議論は吉田茂の孫で、2011年時点では重鎮政治家となっていた『タローのオイチャン』(黒江はそう呼んでいる)が、『黒江ならヤスヒコも旧軍出身じゃねーか、理由にもなってないじゃねーかwww』と発言したので、議論は一気に終息した。また、その頃にはグンドゥラ・ラルに後を託し、カールスラント空軍を退官したアドルフィーネ・ガランドが自衛隊を訪問したという。その時の様子は以下の通り。



――2012年 当時に黒江がいる基地

「久しぶりだな、大佐」

「ブフォ!?ガランド閣下!?ど、どうして日本に!?」

「ウチの皇帝陛下が対抗心燃やしてな。退官した私を『特命大使』の名目で送り込んだんだよ。総理大臣と外務大臣に親書渡してきた帰りに寄ったわけだ」

「いいんすか?仮にも、空軍総監だったお方が外務みたいな真似して」

「おおっぴらに大使館を置けるほどの余裕は、ウチにはないのでな。私なら、貴官を始めとした連中に顔が効くからな」

ガランドは珍しく、スーツ姿であった。私生活では複数の『孫』を持つ祖母だが、年齢は『若い』ため、第一線でバリバリ働いていた。その為、カールスラント空軍の元・大将という経歴から、日本政府関係者らから警戒されている。

「それに、亡命リベリオンも似たような状況だしな。ドイツ大使館に間借りするわけにもいかんから、君の知り合いのいるマンションを教えてくれ。そこを1フロアくらい買い取って、大使館代わりにする」

「大使館を新規におっ立てるわけにはいかんのですか?」

「半分はここのドイツとの兼ね合いだ。実質的に我々は帝政ドイツだから、連邦共和国から要請があったんだよ」

そう。帝政カールスラントはドイツ連邦共和国に取って、日本にとっての扶桑同様の立ち位置とされ、半分は厄介者と見られていた。ドイツ国内のナショナリズムを煽る存在と、ドイツ左派から警戒されたためだ。その為、帝政カールスラントはなんと、のび太らがこの時期において居住するマンションの1フロアを丸ごと買い取り、大使館とした。その時に、ガランドは当時は24歳で、大学卒業間もなく、環境省の職員に就職していた(ドラえもんは元の時代に帰った)のび太と知り合い、のび太を『連合軍のエージェント』として雇った。これは、ガランドを出自から警戒し、暗殺を目論むCIA、MI6などの勢力の暗躍が原因であった。そのため、のび太は表向きは環境省に籍を置いていながら、裏ではエージェントを行うという二重生活を送るはめになった。しずかと籍を入れたのは、この頃である。その後すぐに、しずかは息子を身ごもったため、その知らせを受けた黒江は『お前、やることは速いな……』と呆れたという。この2012年はのび太達の結婚ラッシュであり、ジューンブライドにはのび太としずか夫妻、次の月にはジャイアン(剛田剛)、スネ夫、出木杉という具合で続々と結婚、同時に子供の妊娠報告を受けたため、黒江や智子は『皆して、でき婚か!』とツッコミを入れたという。

「あなた、今日はどこに?」

「仕事でちょっと、ガランド大使に呼ばれてるんだ。悪いけど、一週間は開けるよ」

「お仕事ご苦労さまです」

「まさか、環境省に行ったのに、エージェントをするはめになるとはね」

のび太は仕事柄、拳銃を極秘で持ち歩いていた。ガランドに雇われたためだ。そのため、相変わらずコルトパイソンを愛用している。8インチモデルであり、他にはスタームルガーのセキュリティシックス、ブラックホーク、スーパーレッドホークなども常備していた。しずかも護身用に、ブローニングハイパワーを有しており、この頃になると、学園都市への対抗策が始められていた。これは学園都市が第三次世界大戦を引き起こしたのを配慮しての特別許可であり、徐々に地球連邦時代への根が巻かれていた。そのため、黒江ものび太のツテで、スーパーレッドホークを私物として調達していたり、ガランドも護身用に買ったという。

「いってらっしゃい」

「ああ、行ってくるよ」

のび太はスーツ姿で出かける。のび太が環境省に務めるようになったことは両親の自慢だが、裏では、かつての大冒険張りの事をしていたのである。ガランド自身も、私生活での孫達への小遣いやらで、意外に余裕がなかったりする。特にナカジマ家に家族が増えたのが原因である。(元・大将であるので、年金は高額なのだが)ガランドにつきそう形で、のび太は護衛を務める。この日は自衛隊の視察であり、空自を視察した。将補となっていた黒江が案内を努め、当時の自衛隊主力機などを視察した。自分でも操縦桿を握ってみるなど、空軍総監であった性分が騒ぐ場面もあった。また、ロッテ戦法の発展形である『フィンガーフォー戦法』に感銘を受けるなどし、また、ブルーインパルスの曲技飛行に圧倒され、『ウチも作ろうかな』とつぶやいたりしたという。

「君のところの曲技飛行隊は凄い練度だな」

「エース級を引き抜いて、構成してますから。私も在籍経験があります」

黒江は2008年から2010年までの期間、隊側からの一本釣りに応える形でブルーインパルスに在籍していた。黒江は元から、『空自の歴代でも10本の指に入る凄腕』と名を馳せていたため、ブルーインパルスからの一本釣りはそれ以前の2006年から試みられていたが、2006年の時は飛行開発実験団への配属が決まっていたため、断念。彼らはそれにめげず、二年後に声をかけたのだ。その時は快諾され、5番機として配属されたのである。最初の時は4番機、二回目の本決まりの時は5番機のポジションが用意され、同時期の4番機は大林少佐(自衛隊では一尉)が努めており、同じ時期に一本釣りがなされたのがわかる。その時は大林に対して疑問が呈されたが、『飛行244Fの若き戦隊長』である経歴を話し、説得する形で連れてきた。一尉という階級は、ブルーインパルスにしては低いため、幹部から疑念もあったが、原隊では少佐である事、また、首都防空の要を担っている経歴が判断材料となった。他の候補を聞いたら、赤松を考えていたと言われ、黒江は『まっつぁんはお行儀いい曲技飛行に向いてねーから!』と撤回させたとの事。赤松の豪放さから、ブルーインパルス向きではないのだ。実際、赤松は実戦や教導ではいい仕事をするのだが、外見と中身が全く一致しておらず、清楚そうな外見とは裏腹のオヤジ系である。一人称がワシなので、話してみると『面白いオヤジ』である。そのため、空自最強のオヤジ系女子との異名を得た。その面が意外に生え抜き女性自衛官からモテモテであり、ある時は痴漢にあった部下を助け、豪快に犯人を投げ飛ばしたという。(ちなみに、割と細めの外見と反比例する武勇であり、柔道、剣道、弓道、相撲合わせて十五段を誇る)。もちろん、犯人は気絶し、その間に駅員などに連絡を取った。ただし、一本背負いをしたのは正当防衛ギリギリであり、事情聴取の警察官にお説教を食らったという。そんな赤松を曲技飛行に招くのはどうかと言った事で、部内の提案だけに終わったわけだが、赤松も自分は『兵隊やくざ』と自負しており、一応は将校であるが、気質的にはブルーインパルスの広報向けでなく、防衛省からはその性格を嘆く声が大だった。なお、赤松自身は黒江の推薦で、2012年に教導に転属になり、教導始まって以来の逸材と評価されるに至る。元来の面倒見の良さがピタリであったためで、教導の教官の更に教官のような立ち位置として君臨していく。なお、赤松と黒江は、米軍の共同演習の際に、米軍を恐怖のどん底に陥れる。米軍トップガンを赤子の手をひねるかのように落とすと評判となり、また、この演習が米軍内に波紋を呼び、人工知能搭載の無人飛行機の登場を遅らせる効果を生む。(結果として、その腕に対応可能な無人飛行機を過信し、統合戦争の第二ラウンドでの大負けがさらに加速してしまう原因となる。これは日本側のトップエースが無人飛行機をバカスカ落とせる『人外』の集団であった事も関係している)


――だが、パイロットの育成費用の高額化などを理由に、無人飛行機を推す者達は各国に多く、その者達の子孫達がゴーストの実用化を後押しするが、トレーズ・クシュリナーダや東方不敗マスターアジアらがデジタルコンピュータによる無人制御兵器を否定した事で、彼らはまたも日陰に追いやられる。彼らは辛抱強く、復興の時を待ち続け、ティターンズ残党にビルゴシリーズを譲渡し、ティターンズ残党を援助する事になる。これは非人道兵器同然のレッテル貼りを受け、開発チームもマッドサイエンティスト同然の扱いで弾圧される時勢への反発からの成り行きで、結果として、同機は反政府組織に大量に譲渡される事になり、連邦軍MSの大火力化を結果として促進させる。それがGバードやヴェスバーなどの普及に繋がるのである。


――ガランドの護衛を務めるのび太だが、学園都市暗部系の勢力から無差別襲撃を受ける。

「おわっ!あれは学園都市系の勢力だ……、奴らめ、閣下を魔術系の勢力の回し者と勘違いしたな!」

「おい、あのパワードスーツだと、マグナム程度じゃぶち抜けんから、こいつを使うぜ!」

「だからって、わざわざGバードを召喚します?」

呆れるのび太。黒江が召喚した武装は『Gバード』だからで、『ラー・カイラム級でも沈めるつもりか』と呆れたのだ。

「向こうがオーパーツ持ち出すんなら、こっちもオーパーツだぜ!23世紀最強クラスのジェネレータ内蔵ビーム砲を味わえぃ!!」

そう。Gバードは遠距離からラー・カイラム級を一撃で轟沈させるほどの破壊力を持つ。当然ながら、一方通行でもなければ防げない(彼にも限界があるが)ので、学園都市のパワードスーツにとってはオーバーキルであった。そのため、敵は一撃で有無をいわさず蒸発した者、恐怖のどん底に陥った者、ヤケになったものとに分かれた。それらはのび太、黒江、ガランド自身によって制圧された。

「無許可の暗部系組織の越境行動による協定違反、自衛隊への殺傷行為……こりゃウチから学園都市、いや、アレイスター・クロウリーへの大変な貸しになる」

学園都市を牛耳るのが誰であるか、23世紀にいる黒江は『知っており』、公然と口にする。ガランドはそれを聞き、溜息をつく。軍引退後は、ストレス解消のため、タバコを嗜み程度に吸うようになったらしく、口に咥えている。(孫達への影響を考え、家では吸っていない)

「閣下、タバコ吸うようになったんすか?」

「ああ、軍を辞めてからは嗜み程度で吸ってるんだ。マルセイユのように、ニコチン中毒じゃないぞ。故郷(くに)では、タバコ吸うことが大人のステータスだからな」

「閣下、灰と吸殻はこちらへ」

「様になってるな、ホストで食えるぞ」

そう。23世紀の健康配慮タイプのタバコであるので、ニコチン中毒の心配は大きく減っている。ガランドは故郷での風潮に配慮して、タバコを吸うのを選ばざるを得なかった。そこで、23世紀から健康配慮型の銘柄を取り寄せ、それを吸っているのだ。黒江はのび太の動作がホストなみに手馴れてるのに思わず突っ込む。

「子供の頃から、親父にやらされてましたから」

のび太は、のび助がヘビースモーカーであった都合上、灰皿を持ってくる事が多かった。それで鍛えられたことを示唆する。

「お前の親父さん、バカスカ吸うタイプだったな、そいや」

「3日も禁煙持たないんですから、親父。お袋も呆れてますよ、もう若くないんだから。僕が子供の頃の時点でチェーンスモーカー気味だったし」

「よくお袋さんがキレないな」

「諦めてます。ドラえもんの道具でも直せないくらいに重症なので」

のび助は重度のヘビースモーカーで、一時(1999年〜2002年)はチェーンスモーカーに足を踏み入れつつあった。50代を迎えつつあるこの時期には、量を減らしたものの、依然としてヘビースモーカーであった。若かりし頃はチェリー、ピース、セブンスターなどを吸っていたが、近頃は薄めのモノに鞍替えしつつある。(若くなくなりつつあるのを自覚しているため)

「私から見ても、吸い過ぎじゃねって思うこと多かったし、当然だな。もういくつだ?」

「そろそろ50超えです。99年で36歳だったんで」

「そうか、お前がもう24で、そろそろガキも生まれるって言うんだから、そんくらいだわな。生まれたら連絡くれ。盛大にパーティしてやる」

「ありがとうございます。僕は学園都市に行ってきます。奴らをギャフンと言わせてきますよ。閣下の護衛、頼みます」

のび太はそう言うと、車に乗り、学園都市に向かっていった。それを見送るガランドと黒江。この後、のび太は男を見せ、学園都市から大幅に譲渡を引き出す事に成功する。その時にはドラえもんの忘れ形見といえる『スペアポケット』を使ったという。(本当に忘れていった。ドラえもんも後に追認する。これはドラえもんとしても、のび太との繋がりを完全には絶ちたくない故でもあった。)なお、のび太とドラえもんとドラミ兄妹の繋がりはこのおかげで保たれ、時たま里帰りのような形で顔を出しており、それはのび太が環境省を退官する年代になっても続いたという。それ以外にも、子のノビスケのトラブル処理などのために野比家を訪れており、友情は形を変えて続いた。のび太が人生の末期を迎えるその時もドラえもんは立ち会い、その最期を看取ったという。



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