短編『二人のクイーンエリザベス』
(ドラえもん×多重クロス)



――国際連盟は設立目的が他世界と違い、対怪異同盟色が色濃いもので、国際機関と言うよりは軍事同盟であった。そこを史実同様の国際連合に改変するには困難が伴うものだった。制度の整え、後に地球連邦にするにあたり、円滑に移行できるような制度にする事などが極秘の課題で、実質的に指で数えられる程度の国しか世界を維持できない事もあり、元からの国土を維持し、一定の軍事力を持つ二カ国が必然的に国際連盟の主導権を握った。その内の一カ国であるブリタニア連邦は、俗称として『大英帝国』を称して久しかった。彼らは空母よりも戦艦に『力の象徴』を見出しており、扶桑が空母重視に移行していたのと対照的に、戦艦重視施策を続けていた――





――ブリタニア 1942年 ――

「どういうことだね、扶桑の新型艦の性能はは!」

「は、はぁ」

「これではライオン級の価値は無いも同然ではないのかね?」

1942年の事。リバウ撤退戦で実質的にお披露目された大和型戦艦の威力は、当時のブリタニアで竣工間近のライオン級戦艦を超越しており、通告され、ライオン級の建造時に仮想敵として想定したスペックは欺瞞であることは明らかだった。ウィンストン・チャーチルは明らかに不満そうであり、当時に進捗段階が浅かったライオン級の『コンカラー』、『サンダラー』の建艦が中断されるに至った。

「フソウのヤマト!かの艦を超える艦を持たなければ、我が帝国の沽券に関わる!なんとしても、18インチ砲を作らなくては」

当時、チャーチルは扶桑の最新最強の戦艦であった大和型戦艦に強烈な対抗心を抱いていた。大和型戦艦はどう見ても60000トンを超える巨艦であり、明らかに対艦戦闘で優位に立つための性能を備えているように見えた。(扶桑の艦政本部としては、計画時点で考えられる最強の矛と盾を備えた移動司令部のつもりであった)。そこから、ブリタニア連邦海軍は次期戦艦の予定スペックを大きく嵩上げしつつ、1944年後半に中断状態の二隻を旧式の補填を名目に再開していた。この報は、扶桑皇国を大いに狼狽えさせた。1944年後半、紀伊型戦艦の陳腐化が身を以て示された直後の皇国は、更にミッド動乱で大和型戦艦を超える戦艦の存在に衝撃を受け、そこにブリタニアの新型艦が18インチ砲の報である。実質的に大和型戦艦でなければ、対抗すら不可能な巨艦が続々登場しつつある時勢になってしまった。しかも大和型戦艦より全長が大きいものも出現した。これは本来、ワークホースとして揃えていた紀伊型戦艦の存在意義の喪失を意味するため、大和型戦艦を増加せざるを得なくなり、更に超大和型戦艦も揃える必要が出てきた。ブリタニアの新型艦は、大和型戦艦にワークホースとしての役目を与え、超大和型戦艦の出現に決定的な役目を果たしたという事になる。扶桑皇国としても、ブリタニアが対抗心から無理して新型艦のスペックを大和型戦艦の水準に上げてくるとは夢にも思わず、大和型戦艦の優位性も薄れてしまった事を痛感した。急遽、大和型戦艦はスペシャル艦ではなく、量産型的なポジション艦に位置づけられ、超大和型戦艦と合わせると、かなりの数が1947年までに竣工している。それを考えると、建艦競争を促したのが大和型戦艦なため、現地の海軍関係者達は『ヤマトショック』と一連の現象を呼称している。


――21世紀の英国――

ブリタニアと同位国である事から、日本連邦の斡旋で国交を結んだ英国は、日本連邦がそうであるように、英国もブリタニアの戦力の活用を提案し、同意に至った。その過程で、ブリタニアの戦艦にスポットが当てられた。弾道ミサイル潜水艦は高額な維持費の割に、政治的に国威発揚には使えない上、唯一の空母であるクイーンエリザベス級空母も、日本連邦のスーパーキャリアに見劣りする。そこでプロパガンダに持ち上げられたのが戦艦だった。戦艦というと、一見して前時代的だが、弾道ミサイル潜水艦が一部の国から政治的に嫌われ者であることなどが理由となり、見栄えもいい『戦艦』を使うのも悪くない事が日本連邦の軍事行動で示されたので、英国はそれに追従した形となった。そして、戦艦の建艦が継続された世界線なので、ブリタニアの国王が引退宣言を出し、その後を継ぐのが若き日の自分であるのを知る英国の女王は、ブリタニア海軍の新型戦艦の命名式に出席したいと発言し、外務省を慌てさせた。ブリタニアにいるウィンストン・チャーチルはその打診に大歓喜。自ら英国を訪問(日本訪問のついで)し、『死後半世紀後、まさかのチャーチル卿の帰還』とタブロイド紙にネタにされたほどのニュースとなった。


「チャーチル卿、私にとってはおおよそ半世紀以上ぶりになりますね」

「そちらでは大変でしたようですな、殿下、いえ、女王陛下」

「貴方の知る私はまだ10代後半か20代の若い娘、ここに私は貴方以上の老婆。不思議なものです」

「時間がズレている以上、それはご容赦を。それと、本日は第一海軍卿も同行させました。ご要望の新型艦のご通告もありますので」

チャーチルは海軍卿に用意させた新型戦艦の写真を見せた。ドライドックで艤装もだいたい済ませた超大型戦艦の写真で、ブリタニアの技術水準の限界を極めていた。ネルソンからキングジョージX世(二代)の流れを組むデザインであり。かつて存在した最後の戦艦『ヴァンガードの拡大版』に見えた。

「我々が旧型戦艦の代替に建艦している新型戦艦であります、陛下。そちらに存在したヴァンガードに似ておりますが、スペックは別物、日本のヤマトに伍する最新最強の誉れを得る艦と自負しております。つきましては、この艦の名前についてお願いが」

海軍卿は海軍を代表し、女王に頼み込みを行った。それはかつて、戦艦が一線兵器と見なされていた時代の慣習。女王も父親が在世時にその事で悩んでいたので、それを知っていた。

「この艦に王の名を冠するか、ですね?父上が在世中に悩んでいたのを覚えています。私は構いません。ブリテンの象徴たる艦には、それに相応しい名が必要です」

「ありがとうございます。貴方の裁可が残されていると、そちらの政権から言われておりまして。これで本国に安心して帰還できます」

「この戦艦に姉妹艦は存在しますか?」

「ハッ。四隻が計画されていましたが、一隻は空母に転用されますので、三隻が完成の見込みであります」

「予定されている名前は?」

「ネームシップの仮称をアイアン・デュークにしていたので、アイアン・デューク級戦艦のそれを再利用した仮称がとりあえず充てがわれていました。クイーンエリザベスに変更するにあたり、クイーンエリザベス級の再利用に変更致します」

「いえ、それでは規則通りでありきたりです。いっそのこと、歴代女王の名を充てがった方がシンボリックになります。クイーン・ヴィクトリア、クイーン・メリー。これで良いでしょう。国威発揚にはこのくらい大仰につける必要があります、海軍卿」

「はっ、候補名にエンプレス・モードというのも上がっております。本来は四番艦の候補でしたが……」

「モード皇后とは。よろしい、三番艦をクイーン・アン、二番艦をエンプレス・モードとすることを推挙致します。最古の女王と最新の女王の名前が並ぶ事で伝統の証しとするのが良いでしょう」

「分かりました」

ブリタニアと英国は数ヶ月後、正式に『キングダムズユニオン』という名の連邦国家を組み、日本連邦に追従する。その式典の会場になったのが、命名式も兼ねた、同艦のドライドックであった。その式典に黒江も日本連邦の武官代表で呼ばれていたのだが、運悪くインフルエンザにかかり、40度の高熱で唸るハメになって、野比家で寝込んでいた。

「参った……式典あるっつーに、40度じゃ動けねー……レヴィを行かせるわけにもいかねーし、智子は未来で準備中。お、そーだ!お前が私の代わりにいけ、調!」

「えぇ!?無茶言わないでくださいよ!智子さん呼べばいいじゃないですか!無茶苦茶です!私が智子さんに事情話しますから、智子さんも連邦組んだ後でなら、日本連邦の軍籍あるでしょう」

「そいやそうだな……」

「私が出てもいいですけど、ボロ出ると不味いですから、ここは無難に行きましょう。……あ、智子さんですか?私です。師匠が式典前に寝込んじゃって。代わりにイギリスに飛んでくれます?」

「何の病気?珍しーわね。鬼の霍乱かしら」

「インフルエンザです」

「なるほどね。支度を急ぐわ。礼服なんて久しぶりよ?」

「仕方がないですよ。レヴィさんはアメリカ人になっちゃうし、あの姿だと」

「元の姿で出席させるわ。式典の場に縁があるから、あの子。レヴィでいるのが常態下してるけど、仕方がないわ」

「お願いします。流石の師匠も40度じゃ、全然動けないみたいで」

「貴方にも従卒として出てもらうわよ。ウチの空軍の軍服に着替えて。階級章は軍曹のをつけてあるから」

こうして、智子により、調も従卒扱いで式典に出るハメになった。智子は将校なので、従卒を持つ立場だが、性質上、チームを組んでからは持たなくなった。しかし、式典などでは従卒を従う必要がある。あまり従卒の階級が低くても問題なので、下士官を宛がうようになっていたという制度的問題もある。智子はハルカとのアレが原因で従卒を置かなくなっていたため、智子が従卒を従えるのは久方ぶりの事になった。二人は日本の空港で合流し、政府専用機で英国に飛んだ。



――機内――

「まさか、政府専用機に乗れるなんて」

「あたしに感謝しなさい?日本連邦の要人なんだから。武官代表の」

智子は機内で鼻息荒かった。黒江の代理とは言え、普段の旅行では乗れないようなところに乗っているからだ。智子が黒江のバティの一人である事は自衛隊にも知られており、意外そうに取られた。黒江の武勇伝からして、智子とは無縁そうに見られたからだ。

「でも、スオムスの事はつつかないでほしいわね。嫌なことも思い出すから」

「あー、確か……」

「言わないでよ。日本だと、中学生でも買えるラノベにその事あんだから!」

智子は過去にレズビアンに足を踏み入れかけた出来事が、日本ではライトノベルとして書かれている事をつつかれるとパニックになる。黒歴史にしているからだが、自分が『穴拭智子』と分かってくれるのは嬉しいが、そこはつつかないで欲しいのだ。厳密に言えば、小説の自分とは違う人生を歩んでいるからでもある。

「慣れって怖いわー、実際、ハルカのせいで半分受け入れちゃってるし…。若い頃、中二病だったのは今となっちゃ恥ずいし、姉さんにも、姪にも、『娘』にも笑われるし」

智子は過去、白色電光戦闘穴拭を自称(今回もしていた)していた事を、同乗した30代の幹部自衛官に言われ、『わ、若気の至りです!』と言い訳している。また、第一次現役時代の最終所属先の50Fでの撃墜マークから『豆タン黒』、運で生き残っていたところがあったので、『運の穴拭』とも呼ばれた。その事から、自衛官らからは基本的に敬意を払われているものの、事情を知る者からは『やーい。ハルカちゃんとの仲はどうだい?』、『結婚しちまえよ』とからかわれている。

「そう言えば、今度の式典、ブリタニアと英国の連邦結成と新戦艦の命名式なんですよね?」

「ええ。ゲートがもうじき見えてくるわよ」

「あれがそうなんですか?」

「一応、23世紀時点の技術と時空管理局の技術で作ったゲートよ。時空融合で破壊されるけど、残骸が23世紀で発見されて、同じ場所に再建されるわ。テロの目標にならないように移動式になったり、コズミック・イラ世界のミラージュコロイド技術も入れたとか。結局、忘れ去られてたのは統合戦争から第二次ネオ・ジオン戦争までの期間になるわ」

窓から見えるゲートは次元間移動のため、タンカーなどのあらゆる船舶、如何なる航空機も入れるよう、かなりの幅と大きさを誇っている。竣工から数ヶ月ほどで世界の共有財産と位置づけられ、国連総会で公式に『次元間移動手段』と位置づけられている。そのため、別世界に迷惑をかけた者(例えば、日本の極右/極左団体の迷惑行為、極端な事をした市民団体、各地域のテロリストなど)は、同位国で連邦化されていない場合は外国扱い、同位国連邦では現地の法的機関に於いて司法的処分が行われる事が国連総会で決定している。扶桑皇国は既に、1946年度の上半期だけで、ある刑務所の半分が埋まるくらいの数を逮捕・起訴している。特に酷いのが大陸駐留軍(日本軍の支那方面軍相当)出身者へのリンチ殺人、監禁などの横行で、これにより、扶桑から大陸の地理や知恵が少なからず失われている。日本はその賠償を積極的に行い、また、軍関係者の叙勲である金鵄勲章と従軍記章の運用継続を認める(次元間を隔てているので、日本政府も『自分達の常識は通じない』と理解したため)などの公式見解を出している。日本国内には、『こちらではとうの昔に廃止されてるし、彼らが日本に合わせろ』という極論も存在するが、現実問題、金鵄勲章も従軍記章も、扶桑皇国から自衛官に与えられる事も今後は増えるものと考えられるし、そもそも名前が同じだけの『別の国の制度』であると考えるのが自然である。連邦全体では『危険業務従事者叙勲』の一環として行われ、主に、扶桑の現役軍人向けの叙勲とされている。つまるところ、結局は日本の現・運用制度に組み込んでの運用が最善とされた。日本側は2003年からの『危険業務従事者叙勲』を扶桑向けにも行うこと、防衛記念章を扶桑軍人に当てはめ、金鵄勲章の年金などの利益を『一時金や杯などの制度を整備して補填し、金鵄勲章と従軍記章の代替にしたい』思惑が左派を中心にあり、鳩山ユキヲ政権下で特に強く推されていた。然しながら、提案時の練り込みが甘く、日本内部からも『寝耳に水』であると言われ、結局、色々な兼ね合いもあり、軍関連勲章は危険業務従事者叙勲の扶桑軍部門という事になった。このように、次元間の行き交いが盛んになったということは、『ある種の混乱』も招く事でもあり、扶桑はその影響を大きく受けた。特に、日本は戦争に負けた者であるため、『敗者の論理』を振りかざし、『敗者になっていない』扶桑の論理を否定しがちであり、特にその影響は、戦時の促成教育で『良くて1年半』の教育で軍務についた戦中入隊のウィッチの身の回りに表れた。扶桑陸海空軍の若手は実階級が尉官以下に調整され、21世紀以後の軍事教育を受けざるを得なくなった(44年に15歳だった芳佳は、一般教育を中学で受けていた事、覚醒後は軍医としての教育を終えた後の知識を持つため、44年時の若手ではほぼ例外的に、再教育がほぼ免除された)。これは地球連邦軍や自衛隊との共同戦線、更にG/Fウィッチとの相克を鑑み、ウィッチ世界全体で行われた階級調整措置である。ミーナも教育完了までは、実階級は大尉とされている。テストに合格すれば、元の階級に実階級が戻るが、そうでなければ最高で二階級降格した実階級となる。原則として、G/Fウィッチは前史での再教育の記憶を有するので、それについては形式上の認定試験を受ければよく、事実上は免除されている。そのため、『特権階級』と嫉妬されてもいる。(認定試験は受けるが、それは制度が平等である事を示すための形式上のものであるが、問題そのものはむしろ高難易度で、それを一発で受かるのが転生の証明である)促成ウィッチの中には、過去の坂本がそうであったように、小学校からそのまま軍に入った者もいたため、教養が伴っていない者も多く、複数が二階級降格を味わったりした者も多い。

「向こうには、あたし達みたいに地位を保全して、もっと出世したGウィッチやFウィッチに嫉妬する声も多いのよね。これも転生者の宿命って奴なのよね」

「大変ですね」

「おまけに、日本の政府要人からは妹か?なんて、貴方の事聞かれたわよ」

「うーん。そんなに子供っぽく見えるかな?」

調は156cm前後と、21世紀時の日本人女子としては小柄の部類に入る上、顔つきが年より若めに見られるため、黒江ほどでないが、大人びた外見の智子と並ぶと、歳の離れた姉妹に見えるのも無理かしらぬ事だ。

「綾香は、元の外見が元の外見があたしより老け顔だから、貴方の外見を好むのが分かったわ……効くわ、これ」

「あれ、切ちゃんが文句言ってますよ」

「しゃーないわよ。あの子、結構遊ぶから」

「あ、そうだ。件の新戦艦の性能諸元見ておきなさい。タブレットにデータは入ったそうだから」

「分かりました」


前史アイアン・デューク、今回に於いてのクイーンエリザベス(二代)の性能諸元は以下の通り。

―全長:315m:全幅:40m、速力32ノット:主砲17.5インチ砲×12問(三連装4基)、5インチ両用砲20門、40mm機関砲多数――

全長がセントジョージより10m、前史の彼女自身より5mは拡大され、機関が強力なものに変わった影響で、より速度が向上している。主砲口径は微妙に小口径化したが、これは18インチ砲の砲身寿命を気にした結果ともされる。(長砲身化で結局は大差ない寿命となったが、その対価で威力と初速は大幅向上。前級を超え、常識的な46cm防御ならば、数斉射でバイタルパートを貫通する火力を得た)FARM化された大和型戦艦、播磨型を除けば世界最強クラスに飛躍した。正に英国戦艦史上空前絶後の戦艦となったが、竣工時には更に大口径砲を積む播磨型が現れていたので、世界最強にはなり損ねた。そのため、結果としては『大和型戦艦にやっと追いついたのに、扶桑は超大和型戦艦を用意していやがった!』である。(実際には三笠型が播磨型登場以前に存在しており、扶桑としては『播磨型は三笠型のダウンサイジング版の戦艦』であるが、他国海軍からは『移動要塞』扱いで、艦艇扱いされておらず、播磨型が超大和型戦艦の扱いである)その結果、チャーチルの目論見は一部外れた事になった。当然、多くの空母が潰れた空母閥からかなり文句が出ているので、大型空母『ジブラルタル級航空母艦』を『クイーン・エリザベス級航空母艦』の図面を参考にして建造する計画でなだめた。これは当初に計画されていた20000トン前後の軽空母では、急速なジェット機の普及で使えなくなると判断されたからである。従って、チャーチルが没にした空母は『イラストリアス級航空母艦』の後期グループ、『インドミタブル』、『コロッサス級航空母艦』の大半に登る。従って、チャーチルは『ジェットを長期運用できる50000トンから60000トン級を5隻前後持っていれば、財政負担は相対的に軽い』と見ていたのが分かる。また、生き延びた一部空母は艦載機のシービクセンへの強化でウィッチ用に用途変更しており、ブリタニアは空母戦闘群の歪さが目立つ結果となったのである。

「ゲートをくぐるわ」

ゲートに突入し、機体はウィッチ世界の同座標に転移する。そこから途中で給油しつつ、ブリタニアを目指した。ブリタニアについたのは、翌朝の事(飛行ルートは現状の最短を使ったが)だった。件の戦艦が収容されているドライドックにつくと、関係者のみならず、かなりの一般市民がドライドックの周りにひしめいていた。中には21世紀からの取材班の姿も見えた。記念行事も兼ねているので、かなり開放しているらしい。

「うわぁ……。賑やかですね」

「プロパガンダも絡める関係で大々的にしてるのよ。21世紀じゃ見られない戦艦の進水式だもの。21世紀の連中も興味津々ね」

21世紀の英女王が出席する都合上、21世紀のイギリス海軍関係者の姿も多い。また、世にも珍しい『青年期と老年期の同一人物が双方の国の女王』として出席している姿がミステリアス感を醸し出している。青年期の彼女はうら若く、当時で19歳前後。史実よりだいぶ早く王位を継いでいる。一方の老年期の彼女は在位記録絶賛更新中の老婆で、既にひ孫もおり、自身の高祖母のヴィクトリアよりも長く在位している。二人の服装は、一方が若さを、もう片方は老いたことでの風格を全面的に押し出した服装であり、対照的であった。

『女王陛下万歳!!』

一般市民の歓呼が聞こえてくる。二人の女王は異なる経緯で王位を継いだ。英国女王は先王が病に倒れた事で、青年のブリタニア女王は、父王が『海軍士官に戻りたいし、健康害さない内に退位する』という内容の引退宣言を45年にかまし、物議を醸した後に譲位している。ジョージ6世は今回の歴史に於いては、娘に王位を譲って、余生を海軍士官として過ごしたい気持ちが表面化。チャーチルがダイ・アナザー・デイ作戦後、『王の譲位宣言を行う』と公表。王は『娘に譲位し、海軍士官に戻る』と宣言。物議を醸した。従って、推定相続人であった王女は19歳で即位した事になる。式典は進み、二人のクイーンエリザベスにより、艦に命名がなされる。

「ここに、この艦を『クイーン・エリザベスU(ザ・セカンド)と名付けます。」

「この艦と、艦で航海する全ての者に神のご加護がありますように」

二人の女王は示し合ったかのようなスピーチをしてみせ、二人でシャンパンを船体にぶつけるギミックのスイッチを押す。無事、シャンパンは割れ、ドライドックは群衆の歓呼の声に包まれる。

『大英帝国に祝福あれ!!』

『クイーンエリザベスUに祝福あれ!!』

群衆に見守られながら、クイーン・エリザベスUは無事に進水する。既に最終艤装も数日で終わる完工に等しい段階での進水は軍艦の歴史でも珍しい事だった。この進水式のサプライズとして、アルトリアがゲストで招かれ、スピーチを行った。チャーチルがかなり骨を折ったのがわかる。無論、彼女は王位経験者であるが、有に1000年は昔の人物であり、年月の内に伝承が歪められ、人々が『アーサー』という虚像を築いていた事から、アルトリアは、自分の依代となったハインリーケがドイツ人である事との兼ね合いを重視し、式典出席を固辞していた。しかし、チャーチルはアルトリアが駐在する野比家にリムジンで乗り付け、応対したのび太を『ち、ちゃ、チャーチル卿!?』と驚天動地させている。野比家での対談は2時間余りに及び、構図としては、『うら若き元国王を老獪の宰相が説得する』というもので、アルトリアも自身より55歳以上は上の首相の雄弁に心を動かせられた。チャーチルの熱意に折れたアルトリアは、チャーチルの要請に応え、青の騎士服に甲冑姿でマイクの前に立った。アルトリアはこの場で、王としてやり残したであろう事、生前には為し得なかった『国民からの熱烈な歓呼』の中でのスピーチを行った。アルトリア当人としても未体験の出来事だが、元々の資質からか、威厳たっぷりであった。自分が円卓の騎士を束ねるべき立場であったのに関わらず、国を滅ぼす結果となったが、ブリタニアは世界の一等国に躍進し、自分が円卓の騎士である事を『英雄』と迎え、祝福してくれている。感極まりそうになるのを堪え、スピーチを行う。

『元アルビオン王の魂持って、カールスラントに生まれ変わったアルトリア・ハインリーケ・ペンドラゴンはここに、“クイーンエリザベスU”の進水を祝福する!』

アルトリアはミドル・ネームとして、ハインリーケの名を用いた。これは古参ドイツ貴族の証である『ツー・ザイン』、新興の成り上がり貴族である『フォン』を避けた結果、前世での名に『ハインリーケ』を加えた形で落ち着いた。ペンドラゴンの名はブリタニアの国民を更に歓喜の渦に巻き込んだ。ユーサー・ペンドラゴンの子であった事の証明であり、紛れもなくアーサー王の転生である事実の証明。

『アルトリア王に祝福あれ!!』

『円卓の騎士のご加護があらんことを!!』

ブリタニア国民はその日、大いに湧いた。最新鋭戦艦の門出を、伝説の円卓の騎士が祝福したというニュースは瞬く間にブリタニア全土に波及した。アルトリアは言い終えた瞬間、感慨深いものがあったのか、内心は涙を流して喜びたいほどであり、1000年単位で背負っていた肩の荷が下りた。そんな感覚が去来し、群衆の歓呼に応えてみせる。群衆の狂喜ぶりは、アルトリアが生前に為し得る事のできなかった王としての責務を果たしたという証明であり、実質、一介の騎士であり、王らしいことはできなかったという後悔の気持ちを吹き飛ばすのに大きな役目を果たした。脇で、同じ円卓の騎士であり、子であったモードレッドが剣礼し、そのまた隣にはジャンヌが控え、剣礼を行う。最後に全員で切っ先を真上にし、体の中心の前に捧げて、心臓の前に握りを置き、納刀して舞台を去る。戦艦『クイーンエリザベスU』の進水式は大成功だった。

「大成功ですね」

「ジャンヌが動いてくれたようね。ブンヤ連中は今頃、スクープ記事に必死になってるでしょうね」

「あー」

「騎士王と二人の女騎士よ?タブロイド紙は戦艦よりそっちに食いつくと思うわよ?」

「確かに」

「見てご覧なさい。日本の某掲示板の書き込み」

「何々……『腹ペコ王、なにしてんのwww』、『真名明かしてるぞ??』、『脇にいたの、モーさんとジャンヌじゃね?』、『ジャンヌさん、ここはブリテンよ?』。凄い書き込みの数ですね」

「そりゃ、あの三人、日本連邦できた時代だと有名人だもの。現物が現れたとあれば、こうもなるわよ」

「代替わりや生まれ変わってたりしてんのに、今更恨みつらみ垂れ流すなんて恥ずかしいじゃない」

「あ、ジャンヌさん」

「生まれ変わったし、たまには息抜きしないと、息がつまるったら。怨みつらみたい当人や、王室が居ないのに悪霊の真似事しろって言うの?馬鹿らしいわよ、そんなの」

式典を終えたジャンヌは口調がほぼ、ルナマリアのそれになっていた。砕けた口調なので、わかりやすい。

「ぶっちゃけてるわねー、貴方」

「転生ってそんなものですって。私は楽しんでますよ、今回の生。聖女とかって周りから言われて、肩が凝る思いしなくていいし」



「見て下さい、これ」

「あー、日本の某掲示板?シンに言われて見たけど、スレ立ててみようかなーとか思っちゃったり」

ルナマリア成分多めのジャンヌ。依代になったルナマリアの影響か、現代人然とした砕けた口調を見せる。

「どこぞのサーヴァントと一緒にしてもらっては困るわ。それにアルトリアが言ってたけど、隠したところで魔術的意味は薄いし、今回のアルトリアは完全な真名でもないし」

と、スレッドをタブレットで見た感想がこれである。色々とぶっちゃけている。

「ぶっちゃけてません?」

「まー。転生して、生前から長い年月経ってると、イメージが固定化されてんのよねー。偶にはこういう言葉づかいくらいはしたいのよ、調ちゃん」

ジャンヌは自分のキャラに気を使っているが、聖女としての責務から開放された場合は、依代となったルナマリアの性格が表に出るらしく、生前の彼女よりだいぶ砕けた物言いであった。態度もルナマリアに近くなっており、いたずらっ子のようにも見えた。双方が混じったとも言うべきだろう。

「あ、急に呼ばれたから、有り金あまり用意してこなかったんだった!智子さん、お願いできます?」

「何も、国賓だから、ホテルの食事代くらいは国持ちだし、ついてきなさい」

「おー!ありがとうございますー!」

智子と調は今回、日本連邦の国賓である。そのため、指定のホテルに行けば、食事代は国の経費になる。と、そこへ。

「おや、どうしたのかね」

「あ、チャーチル卿。これからホテルに」

「ちょっとおいで?儂がそのホテルのシェフに連絡して、ローストビーフの山を用意させておいた。この老いぼれの頼みを聞いてくれた礼と思ってくれ給え」

「席はあいてますよ」

「あ、アルトリア。あんたもしかして、あの場からそのまま……」

「き、卿に誘われたもので…」

「よぉし、リムジンに乗るわよー。ホテルまでまだあるし、卿のお言葉に甘えて、たんまり食うわよ―!」

ノリノリの智子。ノリがいいのがレイブンズである。テーブルマナーも弁えているので、現職ブリタニア首相の心遣いにより、豪華ディナーにありつける事になった一同。

「あ!卿、まさか鰻のゼリー寄せは出ないですよね」

「安心したまえ。この前にシンゾー君達に出したら不評でね。それに、若い君達にはローストのほうが良いだろう?」

「え、ええ」(良かったぁ)

と、妙なところで安心した智子。一同はチャーチルの奢りで、ローストビープの大山盛りをたいあげ、口直しのフィッシュアンドチップスで腹を満杯にしたという。



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