外伝その12『超獣戦隊ライブマン!』


 

−さて、扶桑皇国では呉の壊滅が報じられ、海軍の不手際に憤る人達による打ち壊しが発生。それを鎮めるため、
エイパー・シナプスは自ら扶桑皇国へ足を運び、記者会見を開いた。
内容は「扶桑皇国国民への補償を約束し、今回の事件は扶桑皇国海軍の対応能力を凌駕する敵軍の奇襲によるものであり、
扶桑皇国陸海軍に何ら落ち度はない」との軍の擁護と戦災者への補償を約束するものであった。
現地にはシナプスの要請で地球連邦本国から新たに復興のための設営隊、救護のための救護隊などが派遣される運びとなった。

呉では未だ空戦が繰り広げられている最中での会見ではあったが、とりあえず国民の不満を鎮める事に成功した
シナプスはそのまま現地で空戦の指揮を取った。

 

−横須賀 扶桑皇国 第二機動艦隊旗艦「龍鶴型航空母艦一番艦`龍鶴`」
(史実におけるG14型航空母艦。地球連邦軍の援助により改装され、戦闘指揮所の設置、アングルドデッキの導入がなされた。
そのため外観は大鳳型を拡大し、アングルドデッキをくっつけたものであるが、素人目には戦後米国のフォレスタル級に似ている)

「原少将、空戦の情報は入ってきておりますな?」
「はい。あなた方の空中管制機から入電を受けておりますが、早いものですな、これがコンピュータの威力ですか」

同艦艦長の原忠一少将は未来装備が試験的に装備された同艦の艤装委員長から務めたもの、艦載機に至るまで先進装備
(艦載機は1980年代以降の第4世代ジェット戦闘機などが提供された)で固められた同艦の情報処理能力に驚いているようだ。

「未来の戦闘では情報処理の速さが命ですからな。乗組員はどうですかね」
「コンピュータなどに悪戦苦闘しております。最も私もですがね」

原少将は呵呵と笑い飛ばす。現在、この艦は艦隊には配備はされたもの、扶桑皇国軍の乗員は未来装備に苦戦しているのだ。
無論、彼とて例外ではない。レクチャーのために乗り込んでいる連邦海軍の軍人たちが手取り足取り指導しているのである。
コンピュータとレーダーは連邦軍との連携行動が想定されたため、海軍と同規格のものが設置されているのだが、
デジタルコンピュータなど影も形もないこの時代の人間が扱うのに苦戦するのは当然である。

「提督、空戦隊は元欧州空軍の戦闘機空軍旅団の精鋭に苦戦している模様です」
「何、欧州空軍だと?」

シナプスは連邦海軍出身の乗組員からの報告に焦りを垣間見せた。その名を使っている部隊は主に旧仏空軍を祖に持つ部隊しか
いないからで、更にその精鋭となれば思い当たったからだ。シナプスと原少将は急ぎ、戦闘指揮所へ上がった。

 

 

−呉

フランス空軍の国旗標識を掲げたラファールが華麗にその翼を誇示し、飛翔する。加藤武子と若本徹子は協力して戦っているが、
彼等の恐るべき空戦テクニックの前に大苦戦していた。

「くそっ!!なんで俺が当てられねえんだよ!!」

徹子は5式30ミリを連射するが、第二次大戦型兵器の悲しさか、それとも敵の卓越したテクニック故か、当たらないのだ。
20ミリ以上の反動やジェット機へのタイミングの測り方の難しさ故か、弾丸は当たず、虚しく空を切る。
怒りに燃える両者はラファールを何としても落としたい。エースと思われるこの部隊を叩き落とし、呉で死んでいった仲間への手向けに
したいのだ。だが、無常にも彼女らは追われる側へ回っていた。彼女らとて、扶桑皇国で戦技無双を謳われし撃墜王である。
だが、ラファール側も人型兵器が台頭した一年戦争などを生き残った猛者揃いである。隊員の飛行時間は総じて3000時間を凌駕し、
ビーム兵器をも見切れるほど。彼等から見れば旧式も良い所なラファールを操ってもこの威力であるから、その腕が垣間見える。

「`零戦虎徹`か……」
「何っ!!?どうしてそれを!?」
「その撃墜マークを見れば子供でもわかるさ」

徹子は敵からの通信に答えた。そしてその異名が噂の未来で知られる`自分`のものであることを知っていたからだ。

「だが、如何に加藤隼戦闘隊と零戦虎徹であろうと俺たちは落とせん。ましてやそんな二次大戦のお古ではな」

彼、「ノアール1」は2人が身に着けているストライカーユニットがジェットであることを見ぬいた上で、そういった。
知っているのだ。第二次大戦中のジェット機はほぼ爆撃機迎撃用でしか用を足さなかった事を。黎明期のジェット機は
プロペラ機こそ振り切る加速が可能だが、速度性能や運動性は戦後世代のジェット機には到底及ばない事を。
まして第4世代以降のジェット戦闘機の前では、第二次大戦の黎明期のものなど動く的でしかない事を。

「よくもぬけぬけとぉぉぉぉっ!!」
「お、おいっ!どうしたんだよ!?」

加藤武子は教え子を殺されたことへの激情で普段の沈着冷静さをすっかり欠いていた。そのありようは事変での姿を知る徹子
が驚くほどのもので、その姿はまさに修羅であった。

「ほう。部下や仲間を殺されてトサカにきたか?」
「貴様らァァァァァァ―――ッ!!」

武子は情に脆い。それ故に自分を慕い、未来への希望溢れた教え子達の未来が絶たれてしまった事、その遺体を多数載せたままの風翔が
目の前で果てた(火災を起こした後の横転、沈没)事で、何とか理性で押さえ込んでいた感情が爆発してしまったのだ。

「おあああああっ!!」

武子は急降下で一気に敵を『殺す」つもりで、下方で飛行するラファールの一機めがけ刀を以って両断せんとする。
激情に駆られるままに行動するその姿は普段の彼女からは想像もできないものだ。

「無双神殿流!!空の太刀!!」

必殺のタイミング。これなら如何に速くても……と武子は必殺を確信した。だが、無常にも敵はこの攻撃に対応した。
とっさに左回りの高速バレルロールで武子の攻撃を避けたのだ。上から高速で迫る彼女を避けるにはそれ相応の度胸とタイミングの
見張らい方がいるが、それを見事達成した彼等の腕は賞賛されて然るべきだ。

「その怒りには同情できるが、運命は残酷なのだよ」

ノアール1は武子がオーバーシュートしてしまった隙を突く。ヘッドアップディスプレイのレティクルに捉え、
装備される「リボルバーカノン」方式航空機関砲の「DEFA 791」のトリガーを引く。対ウィッチ用に弾丸の炸裂力を強化した仕様だ。
如何に武子が若返っているとはいえ、この弾丸は防ぎきれなかった。何せ毎分2500発という速さで打ち出される上、
威力減衰が殆ど無い近距離での射撃はシールドを最大出力で展開してやっと防げるもの。だが、武子はシールドの出力を
全力にしていなかったので弾丸は完全に防ぎきれなかった。相手が炸裂弾を積み込んでいたせいか、破片が彼女の左肩を
傷つけたのだ。

「ああっ……!!」

彼女を激痛が襲う。片腕の力が抜け、攻撃を行おうにも動かないのだ。痛みが彼女の意識を朦朧とさせる。
固有魔法を頼りに退避するしかないが……。

だが、精神は健在でも、肉体の方が悲鳴を上げた。
フッと武子の意識は消失し、そのまま真っ逆さまに落ちて行った。

「敵エースの撃墜を確認、帰投する」

ラファール部隊は武子の撃墜を確認するとサッと疾風のように去っていった。徹子は急いで
武子の元へ向かい、呼びかける。

「くそぉぉっ!!頼む、返事してくれ!!武子さん、武子さん!!」

徹子は懸命に呼びかけるが、武子はそのまま海へ落ちていく。助けに行こうにも敵機に囲まれてしまっている。これが
ネウロイであるなら強引に突破できる。だが、今戦っているのはジェット機。下手をすれば自分もその二の舞になる。
それでも徹子は助けにいった。仲間を失いたくないという一心で。だが、急降下でしている武子には如何にジェットストライカーであろうと
追いつくのは至難の業であった。手を伸ばす。

(ここまでなのかよぉ……!醇子、美緒っ……オレに力をくれぇっ……!)

その祈りが功を奏したのか、辛うじて武子を拾えたもの、一機分の推力では支えきれず、下降を止められない。

徹子は足掻き、もがいた。`生き残る`。それが死んでいった者たちへの何よりの手向けなのだから。

 

―そして。

「なんだありゃあ!?」

扶桑海の方に超巨大な基地が「デーン」とそびえ立っている。あそこに着陸したいが、あそこまで行くのは不可能であるし、
二人分の重量を一機で支えているので長距離は飛べず、母艦までの帰投もできない。

「下降が止まんねえ……ここまでか……?」

諦めかけたその時。目の前に巨大な航空機(正確には母艦)が現れたのだ。

 

『そこのウィッチ、聞こえるか?こちらへ急いで着艦するんだ!』
『わ、分かった!!』

通信を疑っている余地はない。急いで指示に従い、着艦した。その母艦とは……。

 

 

 

 

― 扶桑海

「君たちの力で扶桑を守るんだ!頼むぞ!」
「了解!!みんな行くぞ!!」

ニューバルカンベースをそのまま拡大したかのような基地からスーパーメカ達が発進しようとしていた。それは
スーパー戦隊達の内の一つ「超獣戦隊ライブマン」のメカであった。この基地は未来の日本にある「ニューバルカンベース」を
ベースに多くの戦隊のメカを母艦ごと受け入れられるように設計され、極秘裏に竣工された。
これはエイパー・シナプスらも知る公然の秘密であり、本来は地球連邦軍の怪異への必勝の策であった。
無論、200年の技術の進歩に合わせ、リニアカタパルトなどが装備されており、如何な戦隊メカをも短期間に
発進させることが可能である。リニアカタパルトも通常のものではなく、
通常の兵器より大型である戦隊メカを短距離で離陸させるため、新規に開発された大出力の新型が備えられている。

発進したのは超獣戦隊ライブマンの母艦「マシンバッファロー」。乗っているのはメンバー全員ではあるが、メカは全ては
収容していない。現在の彼等五人のメカを全て収容できるほどの容積がないからで、これはメンバーとメカが途中で追加加入したためである。
何故、彼等が嵐山長官の指示で動いているのかというと、現在、この世界に来訪しているかつ、
この場にいるスーパー戦隊ではサンバルカンが最古参である。
従って、嵐山大三郎長官にその指揮権があるので、サンバルカンの指揮権を持つ彼が戦隊を率いている。

発進した彼等は徹子と武子をレーダーで発見。直ちに収容したのである。

マシンバッファロー内のベッドに横たわる武子を見守る徹子の横には超獣戦隊ライブマンの中心となる二人の男がいた。
天宮勇介=レッドファルコン、大原丈=イエローライオンである。彼等は住んでいる時代がバブル全盛期の1988年であるので、
2人のファッションはその当時の流行を地で行くものだ。

「この子の容態だが、弾丸の破片が当たっただけだ。命に別状はない」
「そうか……良かった。それであんたらは何者だよ?こんなすげえモン持ってるんだ。
ただの一般人じゃなさそうだな」
「ああ。俺たちは君たちを助ける為に未来からやって来たのさ」
「未来?するとあんたらが噂の……」
「そうだ。俺たちは`戦隊`の一つ`超獣戦隊ライブマン`。君の名前を教えてくれるかい」
「オレは扶桑皇国海軍中尉、若本徹子。」
「徹子ちゃん。呉は俺たちに任せてくれ」
「そうだ。その為に1988年から嵐山長官に呼ばれたんだからな」
「1988年っ!?44年後じゃねーか!?ちょっと待ってくれ、頭がこんがらがってきた……」

2人の言葉に驚く徹子。1988年はこの年から数えて44年後。ほぼ半世紀が経過した未来。
地球連邦軍は200年後くらいなので、そこを起点に、過去にいる人間を呼び寄せているのだろうが、
時代がバラバラ過ぎて訳がわからなくなる。

「だろうな。最初俺たちもそうだったもんな」

―そう。スーパー戦隊の面々はサンバルカンもそうだが、活動していたか、活動をちょうど終えた位の時期から
呼び寄せられている。地球連邦の記録に残っているのが各現役時代の時期の活動しかなく、悩んだ地球連邦軍は
政府のタイムトラベル関連庁と相談の末、その時代から呼び寄せる事にして、最初に軍の部隊であるサンバルカン、
チェンジマンを、その第二段階として民間有志の戦隊をサンバルカンとチェンジマンの間を埋める形で呼び寄せた。
そのため各戦隊の折衝は最も活動年代が古い戦隊であるサンバルカンが行なっている。

『みんな、間もなく呉の戦闘空域に入るわ。戦闘態勢を』
『よしっ!!』

ライブマンの紅一点の岬めぐみ=ブルードルフィンからメンバーの2人に通信が入る。それに応え、
2人は格納庫にある2機のマシーンに乗り込む。天宮勇介は隼型戦闘機「ジェットファルコン」に、大原丈はライオン型の
4足歩行メカ「ランドライオン」に。徹子は武子を安静にさせるため、医務室を離れ、2人と格納庫に行ってみる。

「す、すげえ……たった40年くらいでこんなもんが……!」
「宇宙からのオーバーテクノロジーが一部入ってるけど、操作機器とかのインターフェースは時代相応のモノを使ってる。そのほうが
使いやすいからね」

スーパー戦隊のメカはバトルフィーバーロボとダイデンジンを起点に造られている。民間の手によるスーパーメカも
その両者とその当時の最新であった前戦隊ロボの開発資産を生かし、独自のアレンジが加えられている。
それらに用いられた2足歩行や4足歩行の関連テクノロジーは悪用を恐れた1980年代当時の権力者達の手で最高機密とされており、
民生品に完全適応され始めるのは21世紀に入ってからである。

『それじゃ行ってくるよ』
「ああ。頼むぜ」

ジェットファルコンが先行して発進する。その巨体はコズモバルカンやジェットチェンジャー1をも上回るが、
可変翼の採用で機動性は高い。またロボへの合体変形機構が単純化されたため、合体所要時間は短くなっている。

その発進を見届けた徹子は「事実は小説より奇なり」と感嘆のため息をついたとか。

 

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