外伝その25


――さて、扶桑皇国海軍は近代化を急いでいた。空母艦載機を戦闘機は紫電改、艦爆は彗星、艦攻は流星へ更新を進め、戦艦は大和型戦艦及び超大和型戦艦にという具合だ。そんな中、坂本は自分のストライカーユニットを渋々ながらも紫電改にしていた。これは彼女としては本意ではなく、正統後継機の烈風の配備を熱望していた。が、国内の事情から、紫電改が宛てがわれてしまった。これに坂本は腹を壊してトイレに籠もりつつ、不満を露わにした。様子を見に来た醇子は思わず呆れてしまう。

「くっそぉぉ……なんで私が山西ごときの紫電改なんぞ……ぬぁぁぁ……」

「美緒、あなたねぇ。紫電改は欧州での戦いには最適なのよ?」

「それはわかっちゃいる。だが、五四型で十分だ。あんなでっち上げの機体なんぞ……お、おわぁ……」

「でも、五四型は1700キロ程度しか飛べないのよ?それ知ってるの?」

坂本は下痢ながらも、紫電改に大いに不満があるのを醇子に漏らした。旋回性能と航続距離が零戦に比べて劣ることが単機での巴戦技量を至上とした坂本には許せないのだろう。そして紫電改のそもそもの出自が水上ストライカーユニットである強風である事を差して、でっち上げと蔑んだ。開発の山西航空機の技師が聞いたら怒り狂いそうな言い分である。紫電改はそもそも局地戦闘脚として造られていたのが宮藤博士の不在で正統後継機の開発が遅延したのを受けて艦上戦闘脚に転用された機体である。そのため、元から艦上戦闘脚として造られた零式に比べて航続距離が短い。その点が坂本には不満であった。しかし零式も二二型まで有した航続力は改修が進むに連れて犠牲となっており、坂本が言った五四型で1700キロ程度にまで低下している。それを知ってるのかと、醇子は聞いたのだ。

「ああ。だが、あんなでっち上げよりはマシだ」

「美緒どうしてあなたはそこまで……」

「私は証明するんだ。零式が欠陥品でも、空飛ぶ蚊帳でも無いことを。それが宮藤博士のためになるんだ……ふう。やっと収まった」

坂本は以前、未来世界で零式艦上戦闘機が栄光からの急転直下の凋落の運命を辿った悲劇と、米軍との戦争で大口径砲がどーしても必要だったという事実を知らされ、愕然とした。そして、未来世界では米軍側の評価が一般化した結果、零式艦上戦闘機は乗員の生命を考慮しない欠陥品であるとの烙印がマスメディアによって押された事を。しかし当事者であった側から見ればしょうがない事なのだが、実際に太平洋戦争で急速に戦線が崩壊していった様を知る側には許せない事実。なので、扶桑皇国海軍は未来世界への体面を保とうと、海軍航空本部は防弾装備が施された紫電改や雷電以降の機体で機種を統一した事をアピールしていた。そのためもあって、零戦は1945年8月15日、史実での太平洋戦争終戦の日をもって完全退役と処された。それはストライカーユニットとしての零式も同様であり、坂本はその決定に不満を持ち、零式がまだまだ通用する事を証明せんとしていた。だが、その願いは皮肉にも零式を更に超える格闘戦闘機によって木っ端微塵に打ち砕かれることになる……。



――ロマーニャ近くの海上

「これがF8F……。ヘルキャットやコルセアなんかよりずっといいぜ!!」

――それはリベリオン海軍に属していたハズの最新鋭艦、エセックス級航空母艦だった。だが、船体にはリベリオン海軍のそれではなく、ティターンズ所属である事を示すマークが描かれていた。そして艦容もこの時期のエセックス級が持ちえるはずのないアングルドデッキが備え付けられ、パッと見では別艦のようになっていた。その艦載機はジェット機では無いもの、大戦末期に主力を占めた、あるいは朝鮮戦争時にも現役であったレシプロ機が積まれていた。「A-1 スカイレイダー」もそれであった。彼らはリベリオン海軍の現状に不満を抱いていた水兵や士官で、ティターンズの誘いに乗る形で艦ごとティターンズに降った。彼らに限らず、ブリタニア海軍などにもこのような形で艦ごとティターンズに降った空母は数隻ずついて、彼らはティターンズ海軍に戦後以降の戦術を仕込まれ、大戦再末期当時のレシプロ機を褒美として与えられる形で戦線に加わっていた。

ちなみにティターンズ海軍に鞍替えしたこのエセックス級空母の名は「タイコンデロガ」。後期生産型の第一陣として造られたばかりの新鋭艦であった。艦載機が大戦末期時の強力な機体に強化されたため、艦載機による攻撃力は扶桑皇国海軍の名だたる空母とは世代の違う攻撃力を有した。彼らの戦術はF8F及びF4Uコルセアで敵機を殲滅し、スカイレーダーの爆撃及び雷撃で艦船を撃沈破するというもので、新501基地を攻撃範囲に捉えると同時に、偵察機を発進させた。偵察機を501基地に備え付けられた未来機材のJTPS-P25という21世紀の日本製レーダーが艦と機影を補足。同時に坂本がこっそり私的に持ち込んでいた零式五二型で発進。偵察に向かった。


――501 第二格納庫

「穴拭さん、大変です!!坂本さんが零式で出撃しちゃいました〜!」

格納庫で持ち込んだ四式・疾風の整備をしていた智子のもとに、芳佳とリーネが慌ててやってきた。坂本が醇子の制止を振りきって発進してしまった事が智子に伝えられる。智子は嫌な予感が当たってしまったと思わず拳を壁に叩きつける。

「なっ!?あのバカ!どーいうつもりよ!零式じゃ死に行くようなもんだっつーに!!それでアイツが向かった先にいる敵の艦は分かった!?」

「はい。地球連邦軍の潜水艦からの報告だと“エセックス級空母の改造版”だとのことです」

「……タイコンデロカ級か!」

「何ですかそれって」

「エセックス級は大戦を生き延びたあと、ジェット機に対応するために大改造されてるのよ。それを済ませた艦の名前をとってマニアとかの連中からそう呼ばれてるのよ。まさかもう竣工してた上に下野してたなんて……。坂本に連絡は取れないの!?」

「今、竹井さんが無線で呼びかけてます。だけどミノフスキー粒子が厚くて……」

「チィ……ッ、先手を突かれたか!!」

「おお〜い、三人とも〜!出撃命令が今出されたぞ〜!!発進できるのはどんどん発進しろって!」

「わかった!!」

「皆さん、行きますわよ!」

シャーリーがルッキーニを伴って格納庫にミーナ達の指令を伝達して、ストライカーユニットを起動させる。次いで、智子、芳佳、リーネもそれに続く。ペリーヌも加えての六人は飛行中隊を組んで直ちに坂本の救援に向かったが、敵機は予想以上の機種であった……。

――ちなみにこの時の六人の機種は、四式・疾風、紫電改、P-51H、スピットファイアmk-]W、VG.33bis、G56。カールスラント勢はジェットストライカーユニットの整備途中のため、待機。スオムス・オラーシャ勢はニパの不運により、機体の一部破損、出撃不能に陥っていたため、発進不能だった。格納庫ではエイラがニパの首根っこ掴んで、「ニパぁ〜〜お前って奴はぁぁぁ〜〜っ!!」と涙目だったそうな。














――坂本は敵戦闘機と接触、空戦に入っていた。しかし敵機は坂本の知るF6Fではなく、更なる次世代機のF8Fベアキャットであった。

「こ、こいつは……F6Fじゃない!!別のタイプだ!!」

坂本は思わず唸っていた。F6Fは愚か、零戦よりも小型の機体は明らかにリベリオン海軍系の次世代機。塗装がリベリオン海軍のそれであったことから、瞬時に分かった。その速度はF6Fさえも問題としない高速。ぐんぐんと坂本との距離を詰めていく。坂本はそこで敵機から逃れるために零式の得意とする“左捻り込み”を実行する。この技は零戦のお家芸の一つであるとされているが、大日本帝国海軍の撃墜王らは実戦で使うことは殆どなかったという空戦機動。しかし坂本は積極的に用いており、これで幾度と無く窮地を脱してきたため、絶対の自信を持っていた。運動性能が悪化した五二型でもリベリオン機を上回る機動性は保持しているとされていたのだが、現実は残酷であった。

「馬鹿め!左捻り込みなんぞこのベアキャットには通じんわ!!」

ベアキャットを操縦する搭乗員は操縦桿を動かし、零式を圧倒的に上回る速度を持って急旋回させる。大馬力によるパワーで引っ張るため旋回速度は零式を超え、僅かな小回りの差を帳消しにしていった。




「なにィ!?馬鹿な……振り切れんだと!?」

なんと捻り込みをした零式に敵機はぴったりと追従してきたのだ。しかも高速を維持したままで。坂本はここで零式の最大の長所の旋回性能が過去のモノに成り果てたという事実を突きつけられたのだ。応戦し、20ミリ機銃を撃つも、F8Fの防弾装備は九九式20ミリを避けつけない。

「ならっ!!」

接近して刀をF8Fに突き立てようとする。が、速度の差と零式を更に超える機動性によって当てられない。ここに至って、坂本は理解した。“この戦闘機には零式の運動性能が通じない”と。

「だめだ、コイツには今の私では……勝てん!!くっそぉぉぉっ!!」

必死に逃げる坂本の行為も虚しく、最大速度で120キロもの差があるベアキャットからは逃れる術はなく、突撃しようにも無理であった。機銃は刀で防ぎきれない。上昇しようとした時、隙が僅かに生じる。ベアキャットのパイロットはそれを見逃さなかった。

「さて……落ちてもらおうか、サムライ・ガール!!」

F8Fの20ミリ機関砲四門が絶好のタイミングで火を噴く。20ミリ砲は今の坂本には到底防げるものではない。逃げに徹したが、翼の左フラップを吹き飛ばされてしまう。シールドを貫通した砲弾が坂本の零式五二型を傷つける。五二型は二二型よりは機体構造やシールドへ回せる魔力マッピングが増大していたが、ベアキャットの大火力の前には小手先の小細工に過ぎなかったのか、坂本の微量な魔力ではシールドがその機能を果たさなかったのかはわからなかったが、坂本の零式はフラップを失った弊害で、自然と左で傾いていく。

「…うっ、く、くそ!!言うことを聞かない!動け、動け!!」

腕を振ったりして機体のバランスを保とうとするが、零式はもはや坂本のいうことを聞いてはくれなかった。この時、零式の落日は確実なものとして示されたのだ。失速状態に陥って、急降下。やがて急降下制限速度を超え、零式は空中分解を起こし始め、最初に左側のストライカーが、最後に右側が分解する。


――もうダメなのか……?

坂本は自身のキャリアの大半を共にしてきた零式が完全に時代遅れとされた事に悔しさを顕にし、涙を流した。宮藤博士が作り、扶桑皇国海軍の主力機として緒戦の栄光を飾り、自身が撃墜王になるのに大きな役割を果たしてくれ、自身が使ったストライカーユニットの中で最も愛着があった。それが急速に消えて行く事に坂本は耐えられなかった。だから今回の出撃となったのだが……。意識がフッと消える。海へ衝突する直前でなんとか芳佳が受け止める。

「坂本さぁぁぁん!!」

紫電改の頑強な機体強度を生かして芳佳は坂本を救出する。気絶している坂本の目には涙が光っていた。皆が芳佳のもとへ集まる。幸いにも坂本は無傷だ。

「少佐!?」

ペリーヌが真っ先に駆け寄ってくる。しかし坂本が無傷なのに安堵する。

「少佐を落とすなんて……いったい敵はどういう機体なんですの……?」

「今、竹井から連絡が入ったわ。ベアキャットよ。まさかあれを作って来るとはね。坂本が落とされたのも無理は無いわ」

「ベアキャット?F6Fと関係あるんですか?」

リーネの質問に智子が答える。ベアキャットが本来はどういう目的を持って生まれるはずだった戦闘機であるかを。

「大有りよ、リーネ。ベアキャットはヘルキャットの後継機よ。全ての点でFw190や零戦を超えるために生まれた、レシプロ最強の艦上戦闘機。正直なところ、コイツとタイマンやったら今のどの国の艦上戦闘機も勝てない。誇張じゃなくって、大マジよこれは」

「つまり、今作られ始めた戦闘機のもっと次の機体なんですね?」

「そーいう事」

智子は誇張ではないと断りを入れつつ、ベアキャットの性能を説明する。その性能はレシプロ機の総合性能でP-51と二強を占める、米海軍最強のレシプロ機であると。ただし航続距離に関しては標準的の域を出ない。全員でかかれば落とせない事はないが……。何せ速度ではベアキャットを上回るストライカーユニットは多いが、格闘性能では及ばない点がある。総合的にはこちらが有利であるが、火力では20ミリ砲が4門ある敵に比べて決定的に不利だ。対装甲ライフルは人間相手だと射線を見切られるため、対戦闘機には使えない。かと言って九九式20ミリを想定した防弾装備を持つベアキャットに通用する火力を持つものはその場にいない。

「ペリーヌは坂本を基地まで運んでやって。他のみんなは援護を頼むわ。あたしと芳佳でベア公を叩き落す!」

「了解!」

智子はとっさに指示を飛ばす。叩き落す宛が智子と芳佳にはあるからだ。如何にベアキャットが最強といっても、通常兵器の域は出ない。その点を突くのだ。編隊で単機を攻撃すれば隙が生じる。そこを智子と芳佳で攻撃するのだ。未来世界に滞在していた智子やシャーリー、ルッキーニらは智子と顔見知りであり、共に飛んだ経験もあるため、智子の動きについて来れるのだ。リーネは牽制の役割を負い、あとは第一弾攻撃、第二弾攻撃の順で攻撃する。

ベアキャットの一機がその誘いに乗って、智子達を襲う。F6Fヘルキャットとは桁違いの速度を発揮する辺りは次世代機らしさを見せつける。


「フフフ……このベアキャットからは逃れられんぞ!」

時速680キロの高い速度と、上昇力・格闘性能を両立させたその高性能は現有のウィッチ達のストライカーユニットの殆どを上回っていた。その証拠に旋回半径は紫電改や疾風をも上回る小ささを見せつけ、大馬力によってパワーに更に余裕が有る事を示した。

「ええいっ!!」

リーネがダメ元で対装甲ライフルのボーイズ対戦車ライフルを発射する。対装甲ライフルの弾速はスペックよりは強化されてはいるもの、ベアキャットのパイロットは愛機を巧みに操り、それを回避する。……が、それは陽動の一環であった。


「性能が全てじゃないってところを見せてやる!!芳佳、行くわよ!!」

「はいっ!」

二人はベアキャットのパイロット達が油断したところを突く。相手は二機編隊なので、芳佳と分担して落とす。シャーリーとルッキーニが注意を引きつけ、その間隙を智子と芳佳が突く形を取った。



――さて、ベアキャットの二機編隊がウィッチを引きつけている隙に、本隊である戦爆連合は基地を爆撃する行程にあった。スカイレーダー爆撃機とベアキャットの混成大編隊が基地に接近していた。ミーナは残りのストライカーユニットが整備に手間取っているので、大編隊の襲撃への対応を苦慮したが、そこにスーパーヒーロー達の居るブロックからミーナに連絡が入る。

「はい、こちら……えっ?メカ持ち込んでおられたんですか!?」

「そうだ。本来はクライシスやバダン対策のためだったが、ここは我々が引き受ける」

ミーナと電話をしているのは、ジャッカー電撃隊のリーダーの番場壮吉=ビッグワン。彼は配下の戦士たちにメカを出動させるように指令を発し、ミーナの執務室の窓からは海中から水しぶきを上げてスーパー戦隊の空戦型メカが何機か編隊を組んで発進するのが見えた。全長が25m以上の、この時代の水準から見れば重爆級の機体群がジェットエンジンを唸らせて超音速の速さでかっ飛んでいく様は、ミーナに時代の流れを感じさせた。


――あんな大型機を超音速で飛ばすなんて……やっぱり時代の流れなのかしら。

スーパー戦隊の誇るメカたちが颯爽と発進していく様は勇壮であると同時に、ジェット機がやがて時代の花形になることの暗示でもあった。











――リベリオン合衆国 ロサンゼルス

「全機、目標に到達しました」

「よし。全機、奴らに真の絨毯爆撃がどんなものか教えてやれ!!爆撃開始!!」

この時期、ティターンズ残党はリベリオン合衆国を屈伏させるべく、戦略爆撃の方針を転換。B-52による、リベリオンへの高高度からの戦略爆撃を開始していた。摩天楼がひしめく街を破壊せしめ、リベリオンの世論を非戦へ傾けさせるために爆撃は徹底的に行われた。先行した電子戦機がミノフスキー粒子を散布し、レーダー探知を遅らせた上で、領空に亜音速で侵入するという手口であったので、リベリオン空軍の迎撃は後手後手に回っていた。

「軍は、軍は何をしてるんだ!!こんな近くまで爆撃されてるのに!!」

「だめだ!!高射砲も戦闘機も届かないそうだ!!」

「んじゃこんな事やってる敵はどんな高さを飛んでるんだよ!?」

市民の阿鼻叫喚の声が街中で響き渡る。B-52は23世紀から見れば古典機もいいところであるが、この20世紀前半から中盤に差し掛かる時代で言えば「超高性能戦略爆撃機」である。その搭載量はB-29が子供に見える程の数の爆弾をたんまり積める。それを証明するかのように、ロサンゼルスの街に爆弾を叩き落としていく。それは奇しくもベトナム戦争の時の戦略爆撃や第二次世界大戦の日本への空襲を想起させる凄まじいもので、それらへの報復も兼ねていたためか、使用する兵器は焼夷弾、通常爆弾、未来技術で重量を軽量化して新規製造させた大型爆弾「トールボーイ」をも使用した。どれも未来技術を持って造られた炸薬満載の爆弾だ。その結果、ロサンゼルスのインフラは破壊された。道路、線路、高速道路……通信、水道などのありとあらゆるインフラを寸断し、摩天楼を火の海に包みこんだ……。ワシントンDCのホワイトハウスのトルーマン大統領にこの報が伝えられたのはこの爆撃から2日たった時であった。爆撃当日に通報を受けた地球連邦軍のコスモタイガー隊が扶桑から駆けつけ、B-52を複数撃墜してみせたが、時既に遅し、正に後の祭りであった。


「大統領閣下、大変です!ロスが爆撃を受けました!!」

「何ィィィ!?馬鹿な、敵の本拠からロスまでは離れているのだぞ!?軍は何をしていた!あのボケナスどもめ!」

トルーマンはこの報に軍部を思わず罵るが、次の報告に愕然としてしまい、椅子にへたり込んでしまった。

「無理です、大統領。敵は高度14000mの高高度から爆撃してきたのです。これでは我が軍の如何な戦闘機も試作機も、高射砲も届きませんよ」

「ぐっ、うううう……なんてことだ……」

「ロスは壊滅的打撃を被り、復興には向こう数年はかかるとの試算が……。加えて、敵は毒ガス兵器も使用した模様だと……」

第二次世界大戦での米国の所業の報いをリベリオンに与えるかのような苛烈な攻撃であった。地球連邦軍の航空部隊が応戦不能のリベリオン空軍に代わって一矢報いたとの報が一縷の慰めであったが、それよりも西海岸の大都市がたて続きに消滅、もしくは壊滅の憂き目となっては今後のリベリオン合衆国の躍進の目が完全に潰されてしまう。現在、リベリオン国内の世論は徹底抗戦派とティターンズへの降伏、もしくは休戦派に割れている。二度に渡る核攻撃で世論が割れてしまったのに、今回のこの事件はいずれマスコミにしょっ引かれ、大々的に報じられてしまうだろう。自由な議会制民主国家を自負するリベリオン合衆国には大きい痛手であった。マスコミの報道管制は民主国家故に限界がある。そこが帝政とは違う、不便な点だとトルーマンはぼやいた。






――扶桑 横須賀 現地駐留地球連邦軍艦艇戦艦「朝日」

「司令、ロサンゼルスが壊滅したと報告が入りました。コスモタイガー隊が敵機の3分の一を落としましたが、後の祭りであります」

「そうか……これでリベリオンの世論は大きく非戦へ傾くだろう。銃後の安全が脅かされては戦争をする意欲は失われるのは目に見える。いくら政府がプロパガンダしようが、それには限界がある」

シナプスは艦長室でこの戦闘を嘆いた。シナプスの危惧は的中し、世論は反戦へ一気に傾いてしまうのであった。



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