外伝その31


――未来からもたらされた情報はウィッチの世界のあらゆる分野にパラダイムシフトを引き起こしたが、軍事分野にはそれが顕著に現れた。特に戦闘機無用論といった論調は完全に叩き潰されていった。坂本美緒はそんな世界に何とも言えない気持ちであった。ある日、先輩である穴拭智子にこの事を聞いていた。特に戦闘機無用論が消えた事にはウィッチも無縁では無かったためだ。

「なぁ穴拭。どう思う?未来情報で世界が変わっていくのは」

「どうしたの?あなたらしくもない」

「いや……去年から入ってきた未来情報で上の連中が唱えていた戦闘機無用論が否定されて消えただろう?なぜだと思ってな。情報が伝わってから、すっかり上の連中がおとなしくなったからな」

「へぇ。あなたも一端にそういう事考えるのね〜意外な感じ」

坂本は若い頃から戦士として生きてきた。それを知る智子は坂本はそういう政治には興味が無いと思っていたらしく、驚いたような顔をする。当人は心外とばかりに顔を膨らせ、拗ねる。坂本には意外に子供っぽいところがあるのだ。

「何だと!?…くそぉ、私だって一応そういうこと考えてるんだぞ〜!!」

「分かった分かった。拗ねない拗ねない。要はこういうこと。上の連中は陸軍も海軍も考えてること同じ。爆撃機が発達してきたから戦闘機が要らなくなるだろうって考えた。私も未来行って実体験したけど、机上の空論と実際の空戦は違う。実際に戦争してみると援護ない爆撃機は戦闘機に弱かったのよ。それはB-29だろうか九六式陸攻だろうが同じ。どの国も似たようなことして失敗した。特に歴史上で最悪のポカしたのが向こうでの日本軍と統合戦争再末期のアメリカ。日本軍の場合は戦闘機搭乗員の育成の比率を戦争前の数年間引き下げたのが仇になった。」

「なぜだ?戦の前ならその後に戻したんだろう?」

「それが戦争する直前の時期だったのがまずかったのよ。それが原因で戦争に大負けしたとも言われるほど、戦争後期には戦闘機搭乗員の数が足りなくなっていたから。未来でうちらがバッシングされた事あるからその方面調べたの」


智子は未来で少なからずある扶桑軍へのバッシングを自ら味わされたらしく、その方面の本で調べたり、戦史家に話を聞いたりしたと坂本に話す。坂本は話を聞く内に、上層部が扶桑海事変の前に唱えていた戦闘機無用論、ひいては空戦ウィッチへの疑念が如何にマイナス要因だったのかを理解した。

「それで戦争が激しくなって、日本海軍の搭乗員に熟練者の割合が減ってきた時期に史上最悪の大敗北として刻まれたマリアナ沖海戦が起こったの。当時、日本海軍は全ての点で敵に遅れてた。飛行機の数と性能、搭乗員の技量……まともに空母戦やって勝てる状況じゃ無かった。何せエセックス級空母が7隻もいて、総数が1000機にも達するような大部隊をその半分以下の機数で迎え撃つハメになった上に、最先端の戦闘システムを構築していた米軍を開戦時よりは多少増しといっただけの状況で戦った時点で詰みの状況だった。結果、航空隊は未帰還機が総数8割に達する378機、かけがえのない正規空母は大鳳、翔鶴、飛鷹と全て失った。ミッドウェーで劣勢になった空母戦力はここで終焉、日本も敗戦がここで確定した」

「馬鹿な……こんな無謀な戦をするなんて……指揮官は誰だ!」

「空母部隊は小沢さん、戦艦部隊は豊田さんよ。まぁ小沢さんは哀れな人よ。劣勢な兵力で圧倒的な的に挑わざるをえなかったから。おまけに作戦駄々漏れ。いくら小沢さんでもこれじゃ勝てないわよ」

「信じられん……どうやったらここまで大負けするんだ……普通、空母の一隻はやれるはずだろう?小沢さんが率いているのなら……」



坂本はここで大日本帝国海軍空母航空隊終焉の顛末を知った。ミッドウェー海戦の事は知っていたが、ここまで大負けしたマリアナ沖海戦の事は信じられないようだ。名将と誉れ高い小沢治三郎が率いていながらの大敗北はショックだったようで、自失呆然としてしまう。

「信じられないでしょうけど、これが大抵の世界での日本海軍航空隊の最期の一幕よ。空母機動部隊として戦ったのはこのマリアナ沖海戦が最後になった。次いで戦艦部隊もレイテ沖海戦で一矢も報えずに崩壊、坊ノ岬沖海戦で大和が沈み、私たちの世界に近い形の日本海軍はこれで全滅したのよ。8月には無条件降伏して、陛下を頂点にする形の日本は息の根を止められた。マリアナ沖海戦はそこに至るきっかけを作った第一要因。戦闘機無用論が更にマリアナ沖海戦に至る航空戦に大敗北する遠因になってる事を考えれば叩かれるわよ。山本さんもそれに乗っちゃってたから未来世界で苦労したって聞いたな。何せ不味いことに開戦時の連合艦隊司令長官だからなぁ」

幸か不幸か、山本五十六には『開戦時の連合艦隊司令長官』という肩書がどこの世界でも付きまとう。そのために彼の戦略ミスで戦局の悪化を招いたと詰め寄る戦史家やマニアへの対応に苦慮したと未来世界滞在中に対面した時に話された。はた迷惑だが、別の自分が犯したミスが歴史上に残っているのは実に厄介なのだと山本自身が三羽烏に漏らしたとの事。

「で、日中戦争から太平洋戦争の顛末が扶桑に伝わった事でウチの陸軍参謀本部と海軍軍令部は大激震、最悪の結果を知った海軍航空本部と陸軍航空総監部は方針を慌てて大転換、戦闘機搭乗員と空戦ウィッチの大増員と新型機の開発が促進されてるってわけよ。これで戦闘機無用論は名実共に息の根が止められた。現実問題として苦戦してるから余計にショックなのよ、お偉方は。まぁいい気味だけど」

智子も扶桑の上層部が受けたショックぶりをいい気味と評した。彼女にしてはえらく、『らしくない』言葉であるが、その言葉からは未来世界で相当苦労した様子が伺えた。

「で、コンピュータ技術が発達したら今度はミサイル万能論や無人機万能論が出てきて、その度に消えていった。要するに人間、いつの時代も安易な机上で出す論調を実際に当てはめようとする輩がいて、戦争の場合だとそれが裏目に出る事が多いってこと。アメリカも統合戦争再末期に日本の戦力を甘く見ていたことと、無人兵器の発達で兵士の練度が往年から低下していた事を見透かされて、負け戦をしちゃったから、いつの時代も似たような失敗やらかすのは多いってわけ」

そう。智子の言うとおり、何時の時代も人間は似たような失敗を犯す。地球連邦の時代になっても自動制御を推し進めることが是非とされたアンドロメダと主力戦艦の失敗、モビルドール、ゴースト。例を挙げるときりがないくらいだ。

「そのおかげでウチらの権限と予算増えたし、とりあえずは良しとしましょう。時には状況を利用するのも覚えなさい」

「変わったな……お前」

「隊長なんてやってるとこうもなるわ。歳食うと汚いことも覚えないとやってられないし。あなたが羨ましいくらいよ」


智子は若い時からひたすら戦闘のことに専念できる坂本を羨しく思っている節がある。坂本はミーナや竹井醇子のように、部隊運営や政治に強い戦友に恵まれたが、智子の場合は自分で部隊運営もこなせばならなかった。これは他の面々が上層部受けが良くないために、巴御前の異名を誇っていた自分が色々折衝なども行なっていた。そのために汚い手も使ってしまった事を示唆する。そのため、一戦闘指揮官として『真当に』ウィッチ人生を送っている坂本が羨ましいのだろう。

「穴拭……お前……!」

坂本は智子が垣間見せた『戦士としての哀しみ』を感じ取り、思わずそう言ってしまう。智子には若き日のように、ただの一戦士として剣を振るいたいのだという願望があるのだろう。

「上に立つと政治の裏も見えちゃうのよ。江藤隊長があの後に辞めたわけも今なら分かる……。上の連中は責任のなすり合いで前線のことを考えてない。……本当、馬鹿げてるわ」

智子は扶桑軍が未来情報で揺れる様をそう評する。大多数の将官は派閥争いに終始し、前線のことを考えていない。外から見ることでそれを実感したのだろう。かつての上官である江藤敏子が軍を去った理由を察したようだ。

「坂本さん、穴拭さん〜」

「宮藤か。何だ?」

「ミーナ隊長からお話があるそうです。ラルさんにも声をかけておきました」

「分かった。すぐ行く」

二人はミーナからの呼び出しに応じ、執務室へ足を運んだ。そこには二人の宇宙刑事、さらにはスーパー戦隊を束ねる立場の番場壮吉の姿もあった。

「どうしたんですか、皆さん。お揃いで」

「先程、未来世界の銀河連邦警察から連絡があって、宇宙犯罪組織“マドー”の残党がクライシス帝国と手を組んでこの世界に攻め込む算段を立てていると言ってきた」

番場壮吉が事態を説明する。どうやら情報の発信源は彼らしい。

「マドーというと……確か伊賀さんが昔、宇宙刑事ギャバンと一緒に壊滅させたっていうエスパー軍団ですよね?」


「ああ。君たちから見れば40年ほど未来の話だけどね。忘れもしない、1983年。当時、俺は日本の森林パトロール隊の隊員だった……」

宇宙刑事シャリバンこと、伊賀電はマドーのことを説明する。自分の身の上話も交えながら。伊賀が宇宙刑事になったきっかけとなった出会い、そして自らの出自を……。

「重傷を追った俺はギャバン隊長に助けられ、バード星で治療と速成訓練を受けて宇宙刑事に任命された。それでギャバン隊長の後任として地球に戻ってマクーの後を継ぐように襲来したマドーと戦ったんだ」

シャリバンの戦いはギャバンやシャイダー同様に地球では一部の人間(歴代の仮面ライダーやスーパー戦隊、政府や警察、軍隊などの上級職)しか踏み入った情報を知りえない事項として長らく封印されていた。501は当事者である、伊賀自身の口からその戦いを聞かされた。

「戦いの中で俺の出自がかつて、マドーに壊滅させられたイガ星の生き残りのうち、地球に逃れてきた移民団の末裔という事もわかり、同志とともにイガ星の復興のためにも戦うようになったんだ」

伊賀は語る。かつての苦しい戦いを。新生501の面々は息を呑む。宇宙規模の犯罪組織相手に立ち向かっていった伊賀の勇気に、強さに、愛に。いくら銀河連邦の支援があるとは言え、多勢に無勢の状況でマドーを追い詰めていったのは正に奇跡といっていいものだ。

「最後はギャバン隊長とともに魔王サイコに決戦を挑み、イガ星の超エネルギー結晶体“イガクリスタル”の助けもあって、なんとか魔王サイコを討ち取った。そこでマドーは滅びたはずだったんだが……」

そう。ギャバンとシャリバンと魔王サイコとの死闘は後年の後輩らにも語り草となるほど激しく、危うく倒されかかったほどだった。それでもなんとか討ち取って大団円とはならなかったようだ。

「それでも残党は宇宙のどこかで力を蓄え、クライシスと手を組んだ。利害関係が一致したのだろう。既に仮面ライダーZXとBLACK RX、サンバルカンとゴーグルファイブがこの世界の各地で調査を開始しているが、敵は当然、障害となるだろうここを狙ってくるだろう。他の統合戦闘航空団はともかくも、ここには彼等が目の敵にしてるヒーローたちの拠点があるからな」

番場壮吉の言う通り、ここロマーニャは事実上、『スーパーヒーロ-出張所』の様相を呈している。そこをあらゆる悪の組織が目の敵にするのはある意味当然の帰路で、そのために基地の戦力を過剰と言えるほど充実させ、銀河連邦もシャリバンとシャイダーの二大刑事を派遣したのだ。

「そういうわけで私達には他の統合戦闘航空団よりも上位の発言権が与えられたの。だから事実上、“航空軍”と言っても差し支えない。戦力が過剰なくらいに集められたのもその証明です」

「確かに世界トップレベルのエースを何人も独占しているのに上層部から何も文句でないのは不思議だと思っていたが、そういう訳があったのか」

ラルの言う通り、今の501には世界でも指折りのエースが何人も集められている。それなのに、上層部から文句が出ないのは、サッカーや野球などのスポーツでオールスターと言える陣容を揃えたという事実を利用し、戦意高揚のためのプロパガンダとして利用する思惑があるのだろう。

「上の連中は私達を戦意高揚のプロパガンダとして利用して、軍の人員確保でもするつもりなんでしょう。ティターンズにウィッチを多く出す地域を抑えられて早一年、多くの国でウィッチが不足し始めてるのに焦ってるんでしょう。自主退役とかで数の減り方が大きいから」

智子が言う。彼女の言う通り、ウィッチの自主退役が続出しているせいでウィッチ全体の新陳代謝(ウィッチの世代交代)のバランスが崩れ、世界の軍隊におけるウィッチの数が一年で異例なほどに減ってしまった。それを少しでも食い止めようと、この部隊の再結成と規模拡大をプロパガンダも兼ねて推し進めたのだ。

「大尉の言う通りだな。忌々しいが、ティターンズのおかげで若い奴らの間には厭戦の空気が広がった。若い奴らの言い分はこうだ。“殺し合いのために軍隊に入ったんじゃない”。私は聞いて愕然としたよ」

ラルはネウロイとの戦いが本格化する以前の人類同士の戦争があった時代のことを歴史書で知っていた。だから若者の行動は信じられないのだろう。今の若者世代は“軍隊はヒーローごっこが大っぴらにできるところ”とでも思ってるフシがあるのにラルは呆れているのだろう。

「確かにここ70年くらい本来の意味での戦争なんて起こってないからな。若い連中が逃げ出したくなるのもわからなくはないが……私達が立たなくては誰が世界を守るというんだ!先輩たちから託された思いを無駄にするというのか!?」

坂本は若いウィッチに自主退役の動きがあるのを声を荒げて否定した。いや、彼女の価値観からすれば“戦う力があるのに何もしようとせずに逃げ出す”ことなど愚の骨頂である。北郷章香から受け継いだ思いが行動の根底にある坂本としては認める訳にはいかないのだ。

「若い連中は殺し合いそのものに嫌悪感があるのが少なくない。だから嫌気が差しちゃうのよ。芳佳みたいに割り切れるのは少ないのよ、坂本」

智子が真の意味での闘争の中でも自分を貫く強い意志を持つ者として、芳佳を高く評価しているのが伺える一言であった。そして自身も弟子たちに教えられたのだから。自分を貫くということを……。

「そういえばお前、今でも『撃てる』のか?あれ」

「ああ、アレね。撃てるわよ」

「撃てるってなんだ?」

「ああ、穴拭達が事変の最終決戦ですご〜くかっこ良くてバーンな攻撃魔法使ったんだ。映画撮影の時には非現実すぎて再現しなかったが、ウィッチに不可能はないんだってその時実感したんだ」

(やっぱり、やっぱり成功したんだ!よっしゃぁ!)

智子は坂本が言ったこの一言で扶桑海事変の歴史改変に成功した事を実感した。あの時は出し惜しみなくミッドチルダ式攻撃魔法を使ってネウロイのみならず、国賊の密命を受けた艦隊を攻撃し、艦隊主力を何隻か海の藻屑にしたり、炎上させて撤退させたが、それは智子の記憶によれば、皇女殿下の計らいでお咎め無しとなったはずだ。御前会議で自分たちが色々ハッタリ効かせたのが効いたらしく、『元の時間軸』に戻った後に確認した軍機書類によれば、あの時の堀井海軍大将は改革派が皇女殿下の許しを得て即刻、予備役編入の懲罰人事を行い、同時に加担した将兵も連帯責任で不名誉除隊を言い渡されたり、予備役編入されたとある。吹雪型駆逐艦はこの時に何隻か自分たちが沈め、最上型重巡もも炎上、紀伊型戦艦は航行不能、もしくは大破に追い込んだ記憶があるし、戦闘詳報では怪異による攻撃だとごまかされているもの、同様の記述があった。



(あんまりむかついたからハイペリオンスマッシャーで紀伊型の紀伊を大破させたのよね、『あの時』……。艦橋に向けてぶっ放したから前楼と後楼の両方がぶっ飛んで行動不能になって、吹雪型に曳航されて撤退していった。それで山本さんの辞令が伝わったから大パニックになってたな、第二艦隊)

智子達が歴史改変のためにやったことは結構大事である。紀伊型戦艦「紀伊」を砲撃魔法で大破させて乗員を結構な数で死傷させているし、御前会議では上層部に反発している。それをお咎め無しとされたのは、堀井海軍大将の策謀が陛下を激怒させ、改革派の山本五十六がその場で連合艦隊司令長官に、米内光政が海軍大臣に再任された事で、改革派が一気に勢いをつけ、懲罰人事を兼ねて問答無用で彼の一派が処刑、あるいは追放されたからだ。これを見た陸軍は海軍のような事態になるのを恐れ、智子を厄介払いを兼ねて、史実とは違う理由でいらん子中隊へ送り込んだ。他の二人も欧州の生還率が低い激戦区に送られる措置が取られたとの記録へ『改変』された。二人はそこで必死に戦い抜いたので、却って二人の評判は『上がっている』。無論、智子もいらん子中隊で頑張ったためか、扶桑海の時の反発は帳消しにされたのだろう。

(戦闘詳報や軍機書類見ると、あたし達の辿った道、結構改変されてるんだよね。神様も上手いことやったもんだ)

状況から察するに、歴史の大まかな流れそのものは変わっていないが、細かい点は結構変わっている。まぁ、上手い具合に本人達は『記憶が無い』ので、一連の『夢』は神様の盛大なクリスマス・プレゼント。そう解釈しておこう。


「そだ。聞こうとと思ってたんだが、お前達、あれどこで覚えたんだ?最近ふと思い出して調べたらミッドチルダの高位魔法だったんだが……」

「秘密よ、秘密」(まさか未来の状態であの時に戻ってたなんて言えないしなぁ)

誤魔化す智子。坂本が不思議に思うのも当然だ。あの時に使ったのは去年以降でないと存在が知られない、ミッドチルダ式攻撃魔法だからで、明らかに筋づまがあわないからだ。

――たぶん、アレを知るのは当時の飛行第一戦隊の面々とそれを目撃した少数の海軍ウィッチのみ。海の上層部は堀井大将に全責任を押し付けて当時の真相を隠蔽工作しているのよね。映画「扶桑海の閃光」だとその辺は改革派の都合にあうようにしっかりと改変されていたし……。ティターンズの気持ち、分からなくはないわ。

智子はティターンズ残党が今の連邦政府に反発する気持ちを改めて理解した。負けた側は最初から悪の組織扱いされていたかのように取り繕れ、後世の人間からは疎んじられる。古今東西の負けた国の軍隊が味わう悲哀。ティターンズ残党が許せないのはティターンズを官軍扱いしていた政府が一夜にしてエゥーゴを官軍とし、ティターンズを賊軍扱いに陥れ、エゥーゴ出身者の言をそのまま受け入れたからだが、恐らく自分たちも彼等と同じように、扶桑海事変の秘密を知る故に戦後の陸軍参謀本部に疎まれ、遠回しに左遷させられたのだろう。黒江や圭子の欧州での派兵先が最激戦区の最前線ど真ん中の基地という、殆ど『死ねよやー!』と言っているようなところとなっていたのも参謀本部の『嫌がらせ』なのだろうと目星をつけた。。


「恐らく、クライシスはロマーニャを戦略拠点にしようと、マドーの残党と手を組んだのでしょう。場合によれば陸戦になる可能性も十分に考えられます。念のために各員は陸戦訓練も積んでいくように。伊賀さん、沢村さん。教官のほうもお願いします」

「任せてくれ」

「俺達はあらゆる訓練をバード星で積んでるから朝飯前だよ」

宇宙刑事達は陸戦、水中戦のみならず空戦、宇宙戦闘、異次元戦闘もひっくるめたエキスパートである。その経歴を番場壮吉から聞いていたミーナは各隊員の戦闘訓練の臨時教官を伊賀電と沢村大の両名に委託した。伊賀と大はこれを快く了承し、全ウィッチの戦闘訓練が翌日から開始される事になった。




















――とある異次元空間

「おのれ……ギャバン、シャリバンめ……この恨み晴らさずにおくべきか……フーマとマクー亡き今、我々が暗黒宇宙を束ねる唯一の存在なのだ……」

抑揚のない特徴的な掠れ声を出すこの霊体のような幻影はかつて、二大宇宙刑事によって黄泉に送られたはずの宇宙犯罪組織マドーの首領、魔王サイコであった。しかもこの異次元空間はなんとかつて宇宙刑事ギャバンと宇宙刑事シャリバンが死闘の末、やっとの思いで倒したはずの宇宙犯罪組織マドーの首領“魔王サイコ”の創りだす幻夢界であった。彼、魔王サイコは二大宇宙刑事に倒されたもの、その強大無比な残留思念を今際の際に遺していた。未来世界においての数百年の月日と数多の戦争で生まれた怨念が彼の意志を蘇らせたのである。まだ不完全体であるためか、霊体同然のもやのような姿であり、かつてのように分身を生み出したり、死者蘇生を行うパワーはないが、残党を束ねられるだけのパワーはある。なぜ、マドーと目的が相容れないはずのクライシス帝国と手を組んだのか?単にギャバンとシャリバンへの恨みからだろうか……はたまたマドーの再興のためにクライシスを利用しているのだろうか?大帝王クビライ率いる、より強大な宇宙犯罪組織であった“不思議界フーマ”、ライバルと言える“宇宙犯罪組織マクー”亡き今、銀河連邦、引いては軍事大国化しつつある地球連邦に対抗できる宇宙犯罪組織として再興を目指すマドー。その魔手はウィッチ世界地球(マドーはテラとのコードネームで呼んでいる。地球とよく似ている故か、地球の別名で双方の区別をつけている)へ伸びようとしていた。はたしてシャリバンとシャイダー、歴代仮面ライダーとスーパー戦隊の連合軍はマドーとクライシス帝国のの魔手を阻止できるのであろうか……。



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