外伝その35


――1945年 連合軍連絡調整会議

「友邦の援助によるエクスウィッチの現役復帰作戦は『第一段階』がひとまず終了となった。即席で優秀なウィッチを得る方法としては、けして悪くなかった。そう考えれば良いでしょう」

「右派連中が彼女らを嫌うのは、『高い金をかけて育てた人材が最大でも10年未満しか働いてくれず、定期的に軍全体で『世代交代』というリセットの必要性が生じる』事ですからな」

「しかし、逃げ出している若者達の代わりに退役者を無理やり引っ張りだすことに、現役から反発も出ております。終了は妥当かと」

「ですな。現役者にしてみれば『昔のエースも、時代が変われば凡人だ』などと言いたくももなりましょうから」

彼らは各国軍の首脳である。ひょんなことから始まった『エクスウィッチ若返り作戦』の終了とその次の段階である『ウィッチ装備の近代化』についてが今回の連絡調整会議の議題だった。エクスウィッチの若返りによる現役復帰は『現役兵の損失を手っ取り早く穴埋めし、なおかつ一からの育成の必要がない』という利点が重視されて承認された。これは一部エクスウィッチの『また空を飛びたい』、『戦いたい』などの願望とも合致していた(智子や圭子がこれに該当する)ために一石二鳥。優秀とされた歴代ウィッチ達を『現役兵の戦闘意欲の刺激と若年兵へ模範を示す』名目のもとに複数、現役復帰させた。しかし、それは同時に若年兵らからの反発も招いた。世代交代の不文律を捻じ曲げるも同然だからだ。


「若い者達の間にはエクスウィッチの復帰を快く思わない者も多い。当然だ。しかし、もはや我々にはこの方法しかなかった」

「人類同士の殺し合いなどここ100年近く起きていなかったからな。それに恐怖を感じるのも無理かしらぬことだ。だが、戦う使命を放棄した者達は一生、後ろ指を指されて生きていかなければならないというのに」

山本五十六は自主退役の動きが若年ウィッチの間で広がっている事を憂いる。殺し合いで死ぬことよりも、後ろ指を指されても安全に生きることを選んでしまうのは年端もいかない少女として当然の選択だ。そのためその穴埋めをエクスウィッチの復帰で埋めるしかなかった連合軍の苦悩が伺える。



「一度、退役した連中は並の若い連中より腹が座っている。その分、今回の事態にも適応できている。当面はエクスウィッチ勢を作戦の主力に立てましょう」

「ええ」

スプルーアンスに山本は同意する。エクスウィッチであった者達は一度『使命』を全うした。歳相応に『成熟している』ので過酷な任務でも生還率が高い。その利点をスプルーアンスは重視しているようだ。実際に智子や圭子達は未来世界での戦争でも生還し、戦果を挙げているので、この同意は的を射ていた。対ティターンズ戦で矢面に立たせるのにうってつけだからだ。

「しかしそのためには相応の装備を与えなくてはならんですぞ。在来型ストライカーでは陸も空も敵に対して力不足が否めない。かと言って友邦の提供した装備は数が少ないし、新型装備は間に合わない」

「友軍にスーパーロボットを増員してもらうように要請を出してはいます。向こうも大変ですから通るかどうか」

スーパーロボットは彼らにとっても強力無比な味方である。通常兵器でありながらネウロイの瘴気を物ともせずに戦え、それでいて破壊力はMSなどの比ではない。現在はいくつかのスーパー戦隊の保有するそれが世界各地で戦っているが、全戦域をカバーするには至っていない。



「現在はアフリカや東部戦線に何体かのスーパーロボットがいえるが、数が足りない。せめてあと数体は」

カールスラント軍のケッセルリンクはスーパーロボットの増員を求めている。宇宙刑事の超次元戦闘母艦が501の手にあるとはいえ、物量に抗しきれるかという不安があるからだろう。山本五十六は予てより独自に科学要塞研究所に要請していた『ある事』を公表する。

「実は私は独自に科学要塞研究所にグレートマジンガーの派遣を要請していまして、先ほど承認が得られました」

「おお!」

議場がざわめく。未来世界で名を馳せるスーパーロボットの雄であるグレートマジンガーの派遣にはかなりの障害が予想され、実際に政府からは難色を示されていたからだ。だが、意外にも科学要塞研究所からOKサインが得られたのである。これはガランドにハルトマンが直談判した事、パイロットの剣鉄也がエーリカ・ハルトマンと知己であった事によるところが大きい。ハルトマンの仲介で科学要塞研究所はグレートマジンガーの派遣を決断したのだ。これは『ゴッドの砦』と『ゴッド・マジンガー』が完成し、剣鉄也の自由が確保された事、グレートマジンガーがベガ星連合軍に強奪されかかった事件以来、グレートの管理権が研究所に戻された事によるモノも大きい。


「ケッセルリンク元帥、あなたの所のハルトマン中尉のおかげですよ」

「ハルトマン中尉でありますか?」

「ええ」

「そうですか。まさかあのハルトマンが……」

「ハルトマン中尉はああ見えて結構、政治的な駆け引きを理解している。私がなんのために未来に赴いたかも理解していました」

山本五十六はハルトマンの仲介で科学要塞研究所所長の兜剣造や連邦政府上層部と邂逅する事が叶い、グレートマジンガーの派遣を勝ち取った。ハルトマンは自由気ままな振る舞いとは裏腹に仲間への想いが強い。その面が山本五十六のこの行為を手助けさせたのだ。

「……大尉、いや少佐へ特進させてもいいくらいの功績ですな。皇帝陛下に昇進の承認をしてもらいます。バルクホルンもついでに昇進させるか」

ケッセルリンクはハルトマンを今回の功績で大尉、もしくは少佐へ昇進させるつもりになったようだ。同時にバルクホルンを予てより内定していた少佐昇進の辞令を送るとも言う。501の面々は他の統合戦闘航空団と比較してもなお、抜きん出た功績がある。それを未来のマスコミに報じられている今、この場にいる未来世界での『枢軸国』の上級将校らは少なからず自らの未来世界での評判を改善しようと躍起になっている都合もあり、501の面々を昇進させることは願ったり叶ったりだった。それぞれの軍に在籍する501の面々をその数日後の日付で、二階級特進させることになる。

「さて、次の議題の装備の近代化だが、これは既にある程度は定まっている。が、少なからず反発と疑念も出ている」

「ストライカーしか扱ったことがない者達にいきなりパワードスーツやビーム兵器を持たせても猫に小判ですからな。機械音痴も多いですし」

「ええ、ウィッチにはこれまで特別な機械に関する技能は求められていませんでしたからな。これから例の装備を扱わせるには年単位の時間がかかります。100機しかないのですから」

連邦軍が輸出してきたパワードスーツ『レーバティン』は、性能的にはISに及ばない面もあるものの、魔力を増幅させる二次的効果があるためにテストパイロットたちからは概ね好評である。だが、技術の出処がイマイチ不明なことと各軍需産業との兼ね合いで、一次輸入分は100機程度の購入に留まった。前線に出回るのは数えられる程度であろうから、旧来のストライカーより遥かに強力であるが、まとまった運用は事実上、棚上げされている。議場にいる誰もがこの問題に悩む中、501に出向している智子は圭子と電話で同じくこの兵器について会話を交わしていた。


――501 智子の執務室

「圭子、そっちはどう?」

「こっちも大変よ。まだドンパチしてんだから」

圭子はミッドチルダに残り、ロンド・ベルの一員として戦いを続けている。故郷にはミッドチルダの時間軸でおよそ半年以上帰っていない。ミッドチルダは今は晩秋。盛夏を迎えているこの世界の北半球より一か月半から二ヶ月ほど時差がある。ミッドチルダでの戦況はひとまず一段落したが、小艦艇同士の砲撃戦や陸戦が現在でも散発的に行なわれている。圭子は年長者である事も相なって、はやてや武子を補佐する役割も負っているので帰るに帰れないのだ。

「例のアレは使った?」

「いえ、ミーナ中佐が今のところは得体が知れないとか言って、運用を見送ってるのよ。一つ聞いていい?あれって、本当なら採用は見送りになるはずだったの?」

「そうみたいよ」

圭子の話に智子は驚きを隠せなかった。なんのことかといえば、ミッドチルダからそのまま持ち込んだレーバテインの事なのだが、当初は制式採用が見送られるはずだったとの話をする。

「でも、見送りって……なんかヤバイ問題でもあったの?」

「それがねぇ……」


圭子がなぜか悩んだ様子を見せたことに、電話口越しに智子が訝しげな声を出す。確かに試作機が何らかの理由で採用が見送られるのは古今東西、どこの分野でも良くある話だ。圭子は何故、悩んでいるのか?

――圭子ったら何、悩んでるのよ

そう智子が考えていると……。

そんなことを考えていて――

「ねぇ、レーバテインを動かしてみて、どうだった?」

「ん? ああ〜……武器はともかくとして、スーツ自体は扱いやすかっわ。飛ぶ感覚は速いという以外はストライカーユニットと変わらない感覚なのに、並みのストライカーと機動性は段違い。パワーもパワードスーツの名に恥じない物だと思うわよ? あの長距離砲も持てたし」

問い掛けに智子は思ったことを話していた。事実、あのレーバテインは扱いやすい。ウィッチ用に造られたということもあって自分達との相性もいい。そんな物のどこに問題があるのか? そう思えるくらいの扱いやすさだった。

「もしかして、どっかにすっごいヤバイ欠陥があったとか?」

「無いわ。前から試験運用は行われてて、それに参加したみんなも好評だったし、黒江ちゃんも使っていたけど、同意見だったわ」

「じゃあ、何が問題なのよ?」



智子の話に問い掛けた圭子は呆れた顔をする。聞いている限り、レーバテインに問題らしい問題は無いようにしか思えない。あの黒江も太鼓判を押すほどだという。なのに、なぜそんな物が問題にされるのかわからない。いったい、何があったのかと思ったのだが――


「いい? 良く考えて。『試験運用』に参加した殆どのウィッチもあなたと同じ事を言ったのよ?」

「だから、それがなんだってい――ん?」

智子は圭子の話に軽い苛立ちを感じ――そこであることに気付いた。試験運用。圭子はそれをなぜか強調していた。それに何かあると感づいた――

「あたしと同じ事を言ったの?以前から『試験運用』に参加したウィッチ達が?綾香も、武子も?」

その問い掛けに圭子が電話口越しにうなずくと智子は顔を引き攣らせ、ため息をつく。『試験運用』。早い話がレーバテインのテストのことだ。それが以前から行われていた。そして、その時からすでにそのような意見が聞かれているという。これが何かおかしいのか? と、思われる方々もいるかもしれない。だが、良く考えて欲しい。レーバテインは現在は正式生産前の試作機の段階だ。そして、試作機が試験運用される理由の1つに設計などの段階で想定されていなかった問題を洗い出す為のものだ。これが試作機の本来あるべき姿だ。Zガンダム以降の歴代ガンダムなどは試作機の名を借りた特注機である。なのに、レーバテインはこれまで問題らしい問題が出ていない。試験運用に参加したウィッチのほとんどが智子の言ったことを言っていた。試作機が試験運用で問題を出さないというのは全てにおいて完成度が高い初代ガンダムのような例があるため、ありえないわけではないが、ここまで問題が出ないとおかしいと考えても不思議ではない。

「確かに兵士の誰もが使っても同じような性能を出せるのは兵器の理想の一つではあるわ。でも、それを初めての機体で実現してるなんて、普通ならありえない話よ。あのZガンダムにしても、初代ガンダムにしても、いくつかの前段階の試作機を経てるしね」

圭子の話に智子は息を呑んだ。あの扱いやすさは今までテストを重ねた事による物だと思っていたからだ。だが、実際は最初からそれが出来るように造られていたのだという。実戦でも想定してない不具合で武器が使えなくなるなんてのは良くある話なのに、レーバテインはそれが無い。しかも、ウィッチが使うのが前提とはいえ、陸戦ウィッチを含めた万人に使えるのだ。まさにウィッチの為の物と言えるだろう。ただ、未来世界が自分達の時代よりも遥かに技術が進んだ世界であったとしてもそんなことは早々出来ることではない。
それが気掛かりだったのだ。

「確かにそれはおかしいけど……それだけじゃ採用が見送られる理由になるとは――」

「まだあるわ。あなた、レーバテインが魔力動力なのは聞いてるわよね?」

「あんたが言ってたから、よく覚えてるわ。ウィッチ用に造られたって。そいつが魔力で動くのは当然でしょ?」

またも智子は首を傾げる。レーバテインは動力源が魔力を用いた機関なので、基本的に魔力で動く。ウィッチ用に造られたのだから、それも当然だろう。それがどうしたのか?智子にはそれがわからなかったが――

「うん?そういえば――」

智子は気付いた。ミッドチルダでテストをした際、テストの後だというのに思った以上に魔力を消費していなかったことに。いや、それどころかレシプロストライカーユニットを使ったよりも消費してないようにも感じられる。
「やっと気付いたようね。先に答えを言うとレーバテインには魔力を増幅するリアクターが胸と背中に付いてるのよ。装着する時に見たでしょ? 光ってる丸いCDやDVDみたいな円盤状の物を? あれがリアクターよ」
「はぁ!?」

その話に智子は思わず立ち上がって驚きの声を上げる。そのせいでドア越しに芳佳から「どういたんです?」と話しかけられた。それに構っている余裕は無かった。魔力を増幅するという考えは地球連邦や銀河連邦にも無かったわけではない。ストライカーユニットも箒や道具の代わりになるような容量で魔力を増幅する構造を持つ。ただ、あくまでエンジン出力に依存する面もあるため、上限を超えた出力を出し続けるとオーバーヒートして壊れる。だが、リアクターはサイコフレームのように『思いに応えて魔力を増幅する』力があるという事に。

「それが事実だとしても小さすぎない?見た感じは手のひらに収まるくらいだったわよ?」

「ええ、実際そのくらいの大きさよ。それが胸に収まる一枚でウィッチの魔力を増幅し、周りを増幅した魔力で包んで保護用に。
背中のは保護用の魔力を使って増幅して、こちらは攻撃・防御・機動用に使ってるそうよ」


なんとか落ち着きを取り戻して、声のトーンが落ち着いた智子の疑問に圭子は沈痛な面持ちで答えた。実際、リアクターは普通に考えてもありえない小ささだ。しかも、そのサイズがこちらの未来世界での話とはいえ作れてしまう。すなわち原理から構造まで一貫して完成されてると言ってもいいのだ。

「後、これは技術班もちゃんと確認したわけじゃないんだけど……どうも、ウィッチの失われた魔力の回復にも効果があるらしいのよ」


「なによそれ……なんでもあり?」

なお、しばらく後にこの魔力回復効能が確認され、これによりベテランウィッチの魔力回復システムが開発され、使用者の技能に依存するタイムふろしきに代わる魔力回復法に使われていくるのだが――それはそれとして、智子としてはわからなかった。これほどの物がなんで運用見送りになりそうになったのかが。

「色々と言いたいけど、……だけど、それほどの物がなんで運用見送りになりそうだったの?」

「それなんだけど……私も話を聞いただけなんだけど、どうもリアクターを開発したのって連邦軍じゃ無いみたいなのよ」

「はぁ?」

この返事に問い掛けた智子は思わず目を見開く。今まで連邦軍は並行世界のとはいえ未来の世界だけあって、凄まじいくらいの高い技術力を見せていた。なので、当然ナガラリアクターも連邦軍が開発したと思っていたのだが、そうでないという事実に驚いたのである。
もっとも智子達が知らないだけで、実際連邦軍がリアクターを造るのはかなり先――少なくとも十数年は先の話だろう。なにしろ、なのはと出会うまで魔力という存在自体を公式には認めていなかったのだ。それを考えれば、開発出来ないのはある意味当然とも言える。


「詳しい話はわからないけど、ゴップ議長がが使ってみてくれと持ってきた物らしいのよ。どこから持ってきたのか? 誰が造ったのか?そういうのはゴップ議長を含めた一部の上層部以外は知らないみたい。いわゆる出自不明。だから、連邦軍としては何かあるんじゃないかと思って、運用は見送ろうとしたみたいね」

「なるほど……で、それがなんで急に正式運用が決まったの?」

話に納得しつつ、智子は新たな疑問を投げかけた。物が確かでも出自がわからないと怪しむのはある意味当然とも言える。しかし、結果としては正式運用に至っている。その理由がわからなかったのだ。

「ま、物は確かだしね。データ取りの為にミッドチルダに持ち込む前から試験運用はされてたのよ」


そのことに関して圭子は話し始める。レーバテインは性能は確かだったので、どこまで使えるのか?というテストがミッドチルダでも続けられていた。要は限界性能試験だ。その最中中に話を聞きつけたナチス配下の怪人が強襲を掛けたのだ。なお、この時にゴルゴム残党怪人も争いに乗じて強襲を掛けたのだが、こちらは別の方で倒されている。その別件の方は機会があったら話すとして、怪人との戦闘は激しい空中戦を演じた末に倒すことが出来た。その光景を世界から話を聞いて見学に来ていた海軍高官の山口多聞中将がこの戦果を評価し、正式運用と量産を打診したのである。連邦軍は当初の理由から断ろうとしたが、ウィッチ世界の切迫した情勢などもあって正式運用を決定。量産化の為のテストが開始されたのだった。

「なるほどね〜。そりゃ正式運用も認められるわ」


智子も納得と言った顔をする。バダンやゴルゴムの怪人は重装備であれば、人間でも戦えないというわけではない。普通の人間が相手するには非常に辛いというのは変わりない。その怪人を倒したのだから、レーバテインが注目を浴びるのは当然でもあった。

「ただねぇ……」

「おいおい、他にもあるの?いい加減に」

「いやね、その時のテストをしてたのが武子なのよ」

「あの子が良く引き受けたわね?」

「山口多聞閣下からの命令だったみたいよ。でも、武子としては辛いでしょうね。しょうがなかったとはいえ、ストライカーユニットの優位性を崩しちゃったようなもんだし」

「あ、そうか……」


ため息混じりの圭子の声に、智子はそのことに気付いて辛そうな顔をしてしまう。坂本ほどでないが、加藤武子もキ43(隼)ストライカーユニットの開発に携わったことがあり、それでレシプロストライカーユニットの性能向上に対する感情は並々ならぬ物があった。その一方でウィッチの世界における情勢によってジェットストライカーユニットの開発が進んだことに何か思うところもある。開発が進んだことに嬉しく思う反面、自分が開発に携わった物が廃れていくことに一抹の寂しさがあったのも事実だ。そのレシプロストライカーユニットが自分の手によって終わろうとしている。流石に今すぐにというわけではないが、それでも数年から十数年の内に実戦で使われることはほぼ無くなるのは目に見えていた。仕方が無かったとはいえ、その一端を担うのが自分であることに、武子の心境は想像を絶するだろう。そのことに智子は辛く感じたのだ。
「大丈夫なの?」

「事の重大さに気づいて、きてるみたいね。また落ち込んだわ」


心配そうに問い掛ける智子に圭子は電話口越しに肩をすくめながら答える。それを聞いて智子は武子のことが心配になった。スピード、防御力、機動性共に陳腐化が進むレシプロストライカーユニットは廃れてしまうだろう。だが、武子としてはまだまだ見守りたかったはずなのだ。レシプロストライカーがどうなっていくのを……だが、それが自分の手によって出来なくなってしまうだろう。開発の必要性がなくなるからだ。だが、二人はこのことが無かったとしても、レシプロストライカーユニットがこのまま存続していくのは難しかったと思っている。今回のような情勢が無かったとしても、ネウロイとの戦闘は日に日に厳しくなる。今はまだいいが、その内、レシプロストライカーだけでは戦うのは難しくなるのは時間の問題だ。

「確かレシプロ機が取って代わられた初めての戦争は朝鮮戦争だったわね?」

「ええ。F-86セイバーが花形で活躍した一方でB-29やP-51とかは裏方に退いた。帳尻合わせが働いてるのよ。ジェット時代が訪れるように、ね」


圭子はジェット時代が自分たちの世界に訪れつつある事を帳尻合わせといった。ティターンズとの戦争は科学技術の急激な進展を起こし、結果的にはウィッチ世界の『進化』を促した。それが『ゲッター線の意志』によるものであると気づいていたからかも知れない。



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