外伝その88『望んだ歴史改変3』


――黒江達が要撃に打って出た日、坂本らが日本向けにプロパガンダした広報情報では、501新基地の鉄壁ぶりがアピールされていた。高射砲はドイツ製、機銃はアメリカ製であることをアピールし、日本向けでの広報では、この辺がアピールされていた。防空兵器のプロパガンダで扶桑製が排除されていたのは、『旧軍高射砲は第一次世界大戦レベル』とする認識が多かったのを考慮しての事である。また、VFを全面的に押し出したのも、『ウィッチ以外は役立たず』として描写されている『なのはの世界』でのアニメなどからのメタ情報をもとにしての事だ。ロマーニャ戦時以前から、『ウィッチ至上主義』のような様相を自分が呈していたと、フェイトから知らされていた坂本は、前史の反省もあり、『他兵科との連携を重視する姿勢を見せる』事に腐心し、訓示でもその事に苦労していた。


「ふう。まさかアニメで自分の行いを見せられるとはな。他人視線で見ると、こんな感じに見えるのか……反省させられるよ。しかし、アニメは世代交代が強調されてるな。実際には世代交代は緩やかだしな。あんな急激に訪れたら組織が回らんよ」

坂本の記憶では、世代交代のサイクルはゆっくりで、『本来なら、黒江達の世代はゆっくりと引退していっているので、一部はまだ現役だ』と言いたいのだろう。実際には、飛行技能の継承やテストパイロットなどの役目があったため、世代交代と言っても、全員が軍を去るわけではない。

「この世界については、もはやアニメからは逸脱した歴史になり始めているからなんとも言えんが、レイブンズが変えたのを、日本の馬鹿共が結果として酷似した流れに引き戻した。それはバカバカしいがな」

「彼らは何を目的にしていたの?」

「皇国の解体と再編で『扶桑国』にするのが目的だ。『軍国主義に染まる前に、軍部を追放して、新しい扶桑を作る』というバカバカしいエゴだよ」

「でも、なんで貴方の国が直接の目標に?」

「『負けたほうが物質的に豊かになった』からだろう?奴等は敗戦で全てを失い、そこから経済で成り立つ国を作ったが、100年もしない内に限界が来た。自分の安全を金で買ってもな」

坂本は、バブル崩壊後の低迷する日本経済を目の当たりにした事と、事実上の政治的植民地である日本の現状を知った事で、『誇りを失った国』と揶揄している。その事から、日本の左派を嫌っている。しかし、日本では左派が強いため、国交の条項すら無視して、圧力をかける政治家が野党には多い。特に、内務省の検閲や憲兵の取り締まりには強烈な圧力をかけ、萎縮した内務省は検閲を形骸化させ、憲兵は警務隊に縮小改編せざるを得なかった。それと、扶桑陸軍にも強烈な情報を流布した。ガダルカナルやインパールなどでの飢餓地獄である。これに抗議が殺到した扶桑陸軍は兵站分野の近代化を急ぐ事を強いられ、正面軍備の近代化以上に経費がかかり、これが後の太平洋戦争の長期化の要因であった。その分野である輜重兵の立場改善が外部からの圧力に屈する形で行われたため、兵科将校らは反発するが、日本の左派によって凄惨なテロの標的にされることが増加し、兵站分野を掌握しないと『まともな軍人として見られない』というレッテル貼りを受け、ウィッチと言えども情け容赦なく、追放されたりした。これが日本で問題になる『扶桑への内政干渉』の一端だった。2014年の国会はこの議題が議論された日が一年の半分以上を占めたという。その頃は扶桑への内政干渉が頂点であった事もあり、扶桑にもたらされた歪みにより、五度目のクーデターが起こることとなる。この当時は急激に起こった改革に人間の頭が追いつかず、自分が受けた教育を否定されることへの怒り、憎悪がうずまき始めた頃であった。当時は黒江が事変中に動き回った事で、立場を失った者が大勢おり、更に、陸軍/海軍の気風を全く無視しての改革が急激に行われた事で、異物扱いされ始めたウィッチからも反発が生じていた。これが独自の文化と社会を形成していた各国ウィッチの反発を招いていた。それと、槍玉に挙げられてしまったのが、『一少尉が皇室からの委託で、軍階級や軍の規律を超えた超法規的措置で指揮を取った』記録で、日本から問題視されたのだ。緊急事態とは言え、皇室が議会や重臣会議も無視して、一少尉に指揮権を与えた事は文民統制の面からは大問題であるが、緊急事態であったという面もあるし、内閣/議会に指揮権がなかったという事情も考慮されて然るべきである。結果、『クーデター事件が起こったのと、国家的緊急事態であり、皇室がその統帥権を行使しただけである』と落ち着いたが、新憲法で文民統制が規定された事で、今度は『有事即応をどうするか』とする課題が浮き彫りになり、それが64Fの異様な豪華さに繋がっていく。

「今度の扶桑の新憲法はブリタニアにかなり近づけている。カールスラント的要素は排除され、かなり自由主義の体裁が強まるし、軍隊は内閣総理大臣と議会に統帥権が委託される。これへの不満が黒江の言う歪みとなって表れていくだろうな」

「歪み?」

「ああ。扶桑はカールスラントを範にして近代化してきたが、それがいきなり否定されて、ブリタニア/リベリオン流の自由主義と資本主義だ。反発する人間はいくらでもいる」

「ええ。特にあなたの国は」

「あとは軍隊内の反発だな。多くの開発プロジェクトが統廃合されたし、メーカーにはRATOの在庫の山が築かれている。油圧式どころか、蒸気式カタパルトだぞ?技術士官でなくとも目を回すよ」

急激な技術革新で、扶桑で空母や戦艦/巡洋艦に配備中だった油圧式カタパルトは、蒸気式カタパルトの実用化で一気に旧式化し、それにとって代わられ、水上戦闘艦はヘリ甲板に改造され、水上機そのものが要らなくなったという光景が実現していた。艦上機もジェット化が始まり、レシプロ機も紫電改/烈風/流星/天山/彗星世代に交代しており、当時の扶桑で開発されていた軍用機の多くはその進行度の如何を問わずに統廃合された。その反発が一年後のクーデター事件の根幹であった。この時に橘花/極光/電光/閃電/天雷/梅花などの試作兵器がクーデター軍に使用されたが、より高性能の旭光/栄光(米軍ジェットのライセンス生産機)に捻り潰される結果に終わったという。

「前史では理不尽な宣告を受けた軍需産業の連中の手で、試作兵器が不満分子に横流しされて、クーデターに使用されている。だから、急激な改革は流血を伴うと言ったんだがな」

「それで、どうしたの」

「試作兵器はもっと高性能な兵器に捻り潰されていったよ。その場に居合わせたんでな。それと、今は対艦ミサイルが航空魚雷に取って代わる過渡期だ。何度か起こるクーデターの中には、イージス艦を艦攻の体当たりで大破させた例もあった。ミサイルへの反発だろうな」

「馬鹿げてるわ、そんな事」

「彼らには彼らの言い分があったんだろう。が、それを言い訳に、国家に仇なす事は許されないという事だ。話がずれてしまったが、急激な改革は流血の惨事を招くという事だ。あいつには忠告しておいたんだがな」

「中佐は流血の惨事は規定事項だと?」

「あいつは『改革には犠牲が伴う』と、改革で犠牲になる者のことを考えん冷淡なところがあるからな…」

「冷酷では?」

「冷酷ではない。あいつは仲間へは情に篤いが、敵には冷酷非情だ。それと、自分の政治的行為で犠牲になる者も居ることは殆ど考慮しない。良くも悪くも、仕事ではビジネスライクなんだよ、黒江は」

坂本は扶桑的な倫理観が色濃く残るため、黒江とはそのあたりでぶつかるらしい。

「放って置けば、思いもよらない所からもっと酷い事がおきるのよ。犠牲は必要だけど、出来る限り少なくとは配慮してるわよ、あの子は」

「ケイ」

「あの子は前史でもそうだけど、連邦軍とうちらとの落差を味わったから、改革にこだわってるけど、救済はしてるわよ?ウィッチにはウィッチ以外の生き方やリウィッチになって現役続けさせたり、技術者はコネ作って新技術学習させたり、救済の機会は作ってるわよ、坂本」

「そ、そうか」

「ええ。あの子は精神面では脆くて歪だけど、政治的には活動的なのよ。だから、戦間期には疎まれてたのよ。今、芳佳にあの子の担当医に連絡とってもらってるから、三日後くらいに説明会開くわよ」

「分かった。あいつは理解さえすれば、良い奴だが、それまでが大変なのだ。前史でのお前のようにな、ミーナ」

「うぅ、前史のことは無しにしてぇ……」

『前史』の事をつつかれては痛いため、ミーナは坂本や圭子の提案に反対しなかった。前史でのミーナの反発の理由に個人的な感情が入っていた事は坂本の不覚であった。その為、黒江と『相容れない』点があるところを教えておく必要があると踏んだのだろう。坂本は前史での記憶を武器に、緩衝役として振る舞う事で、ミーナとレイブンズの仲介を行っていくのだった。




――この時期に、前史/今生のどちらでも、リベリオン本土侵攻計画は策定されていた。ブリタニアからの東海岸への侵攻も計画に入れられていた。だが、どこからか漏れ、憤慨した日本のある大物野党議員により、リベリオン本国に漏洩され、その計画はオジャンとなる。マスドライバーでその物資供給予定地を消滅させるからだ。また、彼らの提言が皮肉であるが、扶桑の防空体制をミサイルとジェット戦闘機主体に染め上げていく事になり、史実と正反対の『不沈空母』ぶりを発揮してゆく。その事は如何な戦略爆撃機も寄せ付けない防空体制となるのと引き換えに、ウィッチによる要撃の必要性を薄れさせてしまい、ウィッチ部隊の解散と通常戦闘機部隊の増強が図られる。結果、少数精鋭のウィッチ部隊は空軍設立までに『通常兵器運用部門』を要し、なおかつ扶桑海事変からの伝統ある部隊のみが空軍の『特殊部隊枠』で存在するのみだった。その事は空軍設立前には了解されており、それが当時の最優秀とされたウィッチ達の特定部隊での集中運用という形で決定されている。これは64Fへの人材集中の大義名分としても使用され、ウィッチ隊は扶桑空軍においては『特殊部隊』の枠で命脈を繋ぐ事になるのだ。


(事態が早まっている以上、あの子らも早期に呼べないのか?)

(フェイトに捜査はさせてるから、近日中に連絡が入るわ。ガイちゃんはZちゃんより早くから活動しているから、なんとか捕まえられると思うわ)

(今後、完成したマジンエンペラーGが投入されるだろうし、問題はスーパーロボットの『強すぎる』力に反対論出かねないわよ。グレートの時点でさえ文句出たのに、カイザー級となれば、ねぇ)

(私が言わさんよ。彼らが戦線を支えているんだ、私達は彼らから見れば、微々たるものだ)



圭子と坂本は今後の展開を先読みし、打てる手を打つ。その一つがロボットガールズの早期呼び寄せだったり、前史で見られた『スーパーロボットへの反発への対策』だった。ウィッチは多くが通常兵器を見下しているが、スーパーロボットの強さは、その認識を『吹き飛ばして余りある強大さ』である。マジンエンペラーGやマジンカイザーは『魔神皇帝』の名を冠するに相応しいパワーを持つ。マジンガーZとグレートマジンガーは愚か、グレンダイザーをも遥かに凌ぐ破壊力を奮った場合、間違いなくウィッチ達は反発する。『世界を滅ぼせる』力を簡単に奮えるという事は、操縦者さえその気なら、世界を一瞬で滅ぼせるからだ。

(マジンガーZEROを引き合いに出すべきか?)

(でしょうね。あれは倒せたけど、この逆行では強くなってるかも知れないし)

(連邦の戦術教書と戦略研究書でも読ませるか?今後は戦闘システムの近代化で、旧来のやり方では対応できんし)

(ウィッチを20人以上集めたのは例があまりないしね。しかも、最小戦闘単位が四人というのは反発があるだろう。人数的にケッテが主流にならざるを得なかったところに、ロッテ戦法を徹底する、となるとね)

当時、501含めての統合戦闘航空団の定数は満たされていなかったため、編隊の基本数は三機。(ただし、ロッテは浸透していたので、シュバルムは人数の都合で浸透していない)戦前の常識を引きずるというより、人数の都合でそうせざるを得なかった。統合戦闘航空団のメンバーは11人〜13人のあたりで固定化されるため、メンバーの流動もあり、それ以上の補充はなされない場合が多く、シュバルムは浸透していなかった。『それが当たり前』で、なおかつ多くの戦闘でノウハウを持つティターンズ残党相手には不利となり、扶桑皇国海軍ウィッチ隊は惨敗続きで、統合戦闘航空団さえも一敗地に塗れていった。501のみが『大敗の経験が無く、地球連邦軍と協力した経験がある』統合戦闘航空団であったため、不祥事や敗北で打撃を被った他の統合戦闘航空団を501に統合することが提案され、決議された。連合軍の指揮系統がリベリオンの分裂で混乱したために、他の統合戦闘航空団を遠隔地に置いたままの維持ができなくなったという現実的な理由も含まれた。既に、503/505はティターンズに踏み潰され、508も空母戦で敗北し、506/507は形骸化。504は半壊と、散々たる有様である。残された手段は可能な限り、501を増強し、敵の更なる攻勢を食い止める事。505司令がバダンについたのもあり、501へ人材の集中が望ましいとされたのだ。ミーナに将軍達が質問しに来たのは、505の司令が皇帝至上主義が選民思想にすり替わり、人類を裏切ったという事実からである。その為、この時期の連合軍(国際連盟が国際連合へ発展した)では、統合戦闘航空団の司令へ忠誠心を確認する動きが起こっていた。



――その過程で、前史の技と記憶が蘇り、逆行者に新たにカテゴライズされるウィッチも出てきていた。グンドュラ・ラルだ。彼女は前史での御坂美琴との入れ替わりの記憶が蘇り、その技能を再び宿したため、リウィッチ化と併せて、『レベル5の能力者であり、リウィッチ』というスキルを手に入れた。美琴の上昇した時点での能力をそっくりそのままであるため、個人戦闘力は一気に真501でも上位にのし上がった。また、前史でフィードバックした美琴の感情も宿したためか、リウィッチ化後は美琴寄りの勝ち気な性格になっている。――

「お久しぶりです、加東准将。いえ、この時点ではまだ中佐でしたな」

「その感じ、美琴と入れ替わった時のフィードバックをそのまま引き継いだわね?」

「おかげ様で。御坂には悪い事をしたとは思ってますよ、能力をそっくりそのまま受け継いだようなものですから」


黒江達がVFでザメル部隊を要撃している間に着任したラル。美琴の能力を得た影響か、声のトーンが高くなり、美琴に近くなっている。この時代では不要といえるハッキング能力も備えているため、当人は苦笑している。


「とりあえず、着任の挨拶を済ませてきます。積もる話はその後で」

「ええ。また」

ラルの『新能力』が知られるのは、このしばらくしての事。また、ラルは『司令級』では珍しく、野比家にも顔を出しており、のび太らと顔見知りである。二度目にあたる今回では、のび太が小学生の頃のうちに知り合っており、『菅野の迎え』という形で顔を出したのがきっかけであった。ラルは年長者であるので、『ドイツ空軍』に本当に潜り込んでおり、ドイツ空軍中佐という身分をのび太の両親にも仕事として公言できた。

――のび太が小学校五年の進級を控えた、ある日――

「よう。邪魔させてもらってるぞ」

「ラル中佐、どうしてここに?」

「こっちのドイツ空軍に潜り込んだんで、挨拶がてらに立ち寄らせてもらった。日本に負けじと、ドイツも空軍を中心に交流が始まったから、お前の両親にも公言出来る」

「中佐、いいんですか?ウチのママ、世代的に軍人は」

「お前の母親が左派教育の影響を受けているのは菅野から聞いてる。日本陸軍の最末期のイメージしか、この国の人間の殆どは知らんからな。自衛隊も『戦争ごっこ』する組織としか見ない者も多い。全く、この国は統合戦争以降とは『真逆』だな」

「ええ。平和ボケって言うやつですよ。ボクが大人になる頃くらいまで解消されません」

「本当、この21世紀に入ったくらいの時代は、我々の時代の愛国者には生きにくい世の中だよ。我々の時代を一方的に断罪し、それでアイデンティティを保つとはな。特に我々は自衛隊以上に旧軍の伝統を否定されたから、なんとも言えんよ。アメリカナイズというのは強引だな」

「それが21世紀中に破綻して、没落する。22世紀以降は日本が超大国になって、そのまま地球連邦時代に入って行くんです」

「なんとも、皮肉な歴史だな」

「ええ。だから、その辺の時空融合はややこしいんですよ」

「時空融合、か。つまり、この次元がいくつかの極めて近い次元を取り込むわけだろ?SFじみた話だが」

「ん、噂をすれば。中佐、さっそくウチのママが帰ってきたようですよ」

「やれやれ。こりゃ大仕事だ」

と、言う具合である。ラルはドイツ連邦空軍の軍服を着込んでいる他、マルセイユと違い、既にドイツ空軍に入隊していたので、『職業軍人』な雰囲気たっぷりだった。また、美琴からのフィードバックのおかげでネイティブ級の日本語を喋れるようになっているため、会話には苦労しない。ラルは大人びた顔つきであったので、10代前半から半ばに若返っていても、雰囲気から『20歳前後』に見られる事が多く、それはのび太の両親であっても、同様だった。


「綾香さんの紹介で?」

「あいつが防衛大学校に入る前の高校時代に、私の家にホームステイしてましてね。あいつとはそれ以来の仲です」

と、適当に考えた身の上話をぬけぬけと話す。ラルは気質が生粋の軍人であり、ハッタリが上手く、そこがガランドに後継の指名を受ける理由である。実年齢的にも酒やたばこがやれるのだが、のび太への影響を鑑み、たばこは控えている(欧州では、たばこを吸わないと大人と見なされない風習がある)。

「のび太とは綾香さんを介して?」

「ええ。あいつから紹介されまして」

ラルは一流の演技力で玉子をあしらう。嘘と真実を混ぜて。世代的に言えば、ラルは玉子の両親よりも上に当たる。日本で言えば、大正15年から昭和元年あたりの生まれであるからだ。(更に言えば、実際は黒江は関東大震災以前の生まれであるので、先輩後輩の間柄は逆になる)その事は、夫ののび助は数年後にTVの会見を見て知るが、玉子はそういう政治ニュースに興味が薄いため、知らないままであった。結果、この時についた嘘を玉子にはつき続けたという。玉子は、のび太が外国の職業軍人や軍人志望の外国人とつき合うことには、彼女らとの交流がのび太の学業成績の不振の払拭に繋がると考えたため、特に文句は言わない事にしている。玉子はのび太の学業不振の解決がこの時期に於ける生きがいのようなものだったので、のび太の人間関係には口出ししていない。のび太がどこで自衛官や外国の職業軍人と関係を持ったのか?という疑問はあったが、ドラえもんがいる事もあり、それほど気に留めなかった。過去にドラえもんとのび太が、ドイツの男爵の家柄の少女と交流していたのを知っているので、ドラえもんがコネを持っているのだろうと解釈したためだ。


――数十分後、場を乗り切り、のび太の部屋へ寝そべるラル。

「ふう。思ったよりは楽だったぞ」

「僕達、前にドイツのお城買おうとした事あるんで、それを知ってたのが幸いしたな」

「ああ、ドラえもんから聞いた。エーリッヒ・フォン・ミュンヒハウゼン男爵の子孫と関係したことあるそうだな?」

「ええ。何年か前のことですけど、その時は現当主のロッテさんのおじさんが悪い事考えたんで、男爵連れてきて、解決したんですよ。それ以来、手紙でやり取りしてまして」

それはミュンヒハウゼン家というドイツの没落貴族の当主をお家騒動から救ったエピソードで、のび太が後年にドイツ語が流暢になるのは、この時の文通に理由があった。彼女とのやり取りで、ドイツ語をこの時点である程度の基礎ができており、更にドラえもんがほんやくコンニャクを持っていなかったりするため、カールスラント組に通訳してもらったり、読み方を教えてもらったからだ。

「お前、意外に交友関係広いな」

「海底人、宇宙人、地底人。犬人類。誰も信じないような友達がいますから。犬人類は……未来じゃ絶望的なのがなぁ」

「アフリカの奥地だったな。海底人も危なさそうだし、地底人は爬虫類人だしなぁ。恐竜帝国とは別種族だけど」

「日光ゴケにゲッター線が含まれてたのがわかったの最近ですからね。竜馬さん達、複雑そうな顔してました」

「彼らにとっては、巴武蔵を奪った不倶戴天の敵だからな…」

恐竜帝国と恐竜国は、全く別の恐竜の種族が進化した者達である。恐竜帝国はジュラ紀に栄えていた恐竜が進化した者、恐竜国は白亜紀の最終進化を遂げた恐竜達が知性を得て作った国だ。その為、恐竜帝国はゲッター線への耐性を持たず、地下に潜ったが、恐竜国の恐竜人類は爬虫類から鳥に限りなく近く進化して知性を得たため、生物学上は鳥に近い。日光ゴケの光にゲッター線が含まれていたため、ゲッター線への耐性が種族単位であり、現生人類との共存も可能である。それが恐竜帝国の恐竜国への劣等感に繋がっていた。恐竜国は地底の大空洞で栄えていたため、地上の災厄も地下には及ばず、のび太らが出会った頃よりも文明が進み、進化も起こっているはずなので、鳥により近い生物になっているだろうと思われ、彼らは爬虫類ではなく、鳥類に進化し、鳥人となっているであろう。

「でも、恐竜は鳥の先祖でもあるんで、恐竜が鳥になった正常な進化で生まれるのが鳥人じゃ?」

「多分な。恐らく、ゲッター線が注ぎだした白亜紀に地上にいた最終進化系の恐竜がお前らの行いで地下に避難して生まれたのが恐竜国の連中で、ジュラ紀に地上にいて、ゲッター線に耐性がない、あるいは長期的には悪影響を生ずる種族が恐竜帝国なのだろう。恐竜帝国は自分らよりも地上に適応した種族である恐竜国と戦争するつもりであったけど、同胞に当たるから、それよりも現生人類に喧嘩を売る方を選んだ……というのが考えられるな。で、ゲッター1とゲッターGに滅ぼされた……。なんとも間抜けだが、百鬼帝国にも翻弄されたから哀れとも言える。一部はまだ生きているが、恐らくは、マシンランドウで生きるので精一杯だろうな。別の世界から援軍を連れてくると言っても、あの連中じゃ互いに疑心暗鬼だろうし、共闘は無理だろう」

――と、『二度目』においては、野比家と関係を持ったラル。そのことと、御坂美琴からのフィードバックにより、実質的に美琴と自らの能力を共存させる事となり、とっつきやすい性格ともなった。年長組の中では『若め』である事もあり、旧502の面々と501/504/506との緩衝役として動くことになる――



――真・501統合戦闘航空軍の編成は、一度目における『航空軍』に504と506を+し、孝美が出向という形で加わっているため、当時までに実働状態で存在していた統合戦闘航空団の全ての人員が所属している事になり、基地は大所帯となっていた。更に、フェイトの調査により、ロボットガールズとの早期接触に成功し、彼女らの協力が得られた事(前史でのパワーアップも引き継がれていた)により、フェイトは彼女らを引き連れて帰還に成功。そのため、実質的に、真・統合戦闘航空軍は最高の戦力を持つ事となった。――



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