外伝その148『鋼鉄のDreamer4』


――兜甲児は幾多の可能性を持つが、未来世界の兜甲児は稀有な例であった。宇宙科学研究所に勤めていながら、マジンカイザー、更にはゴッド・マジンガーが存在し得る世界である。これは未来世界での兜十蔵が明確にマジンガーの開発の方向性を持っており、それを息子に継承させたためだろう。甲児はZEROが倒された後に回収された幾多のマジンガーZから戦闘データを回収し、それを解析した。すると、自分が経た経緯は稀有な可能性の産物であると理解した――


『戦う前だから言うんだけどよ。俺はどうもレア中のレアな確率の出来事を辿ってきたらしい』

「Z軍団の回収と解析が終わったんだな?」

『そうだ。調べて見ると、グレートの登場まではかなりの高確率で起きるが、グレンダイザーと出会うかどうかってのになると下がり始めて、マジンカイザーを得るとなると、また下がる。宝くじ当てるような確率だ』

「つまり、グレートマジンガーが助けに来る世界は割合多いのか?」

『そういう事だ。問題は俺が宇宙科学研究所に行くか、だよ』

「ああ、そこで大介さんと出会うか?」

『それが起きる可能性は意外に低かった』

「分岐点はお前が科学者になるのを考え出す段階で宇宙科学研究所があって、グレンダイザーが地球にいるかどうか、か?」

『ああ。意外に条件が揃わない。6割くらいだ。数百のZの内のね。ZEROに立ち向かって、俺が倒れた後に仇を鉄也さんや大介さんが討つ展開で記録が終わる場合も多いが、俺がZからカイザーに乗り換える展開もあった』

「その中に変わった事は?」

『ミネルバXが人の姿のアンドロイドとして改造されて、俺がZでZEROを倒すのを望んでいる世界もあったよ。俺がマジンカイザーに乗る始めての世界でね』

「ミネルバ?あのバラエティで笑いのネタにされてる?」

『そうそう。その俺はマジンカイザーで出るのを止めようとする彼女を説得するのに骨を負ったらしくてね』

苦笑いする甲児。あくまで『Z』で倒せと言うミネルバを甲児はカイザーがZの魂を持つことを説いて、飛来したカイザーパイルダーに向かっていったらしき音声が残されていた事をレヴィへ告げる。マジンカイザーが始めて出現した世界では、ZもグレートもZEROに為す術もなく倒され、剣鉄也は瀕死の重体、炎ジュンは乗機ごとZEROに塵に還され、グレートマジンガーすら歯が立たないZEROを倒すため、兜剣造が父の遺言に従って作り、封印を解除した究極のマジンガーとして、マジンカイザーは存在したと。

『カイザーがある世界線はそれが始めてだった。カイザーが出現するにも、条件があるみたいで、グレートマジンガーが負けて、俺とZもボコボコにされて尚も心を折られず、おじいちゃんがマジンガーの前に幾つかのPタイプを作っていた、あるいはグレートマジンガーもおじいちゃんの作だったか』

「複雑すぎねーか?」

『仕方がないさ。その世界のミネルバ曰く、魔神の皇帝などありえないとかヒステリック気味だったし、そもそも魔神を束ねる大魔神は想像も出来ねぇだろうよ』

甲児はその世界のミネルバを『美人だけど、マジンガーZ大好きっ子過ぎて、逆に引く』と評する。つまり、ZEROを倒すには、普通の『マジンガー』では足りず、『神』か『皇帝』の名を持つ、Zとグレートを超える魔神が必要なのだ。中には、光波獣『ピクドロン』の群れにZとグレートマジンガーが倒され、それを倒すためにマジンカイザーがZとグレートの光子力エンジンをタンデムで積んだ仕様で用意された世界もある。カイザーは言わば、『真・マジンガー』とも言うべき存在であり、グレートマジンガーを洗練させたデザインになるのは当然のことなのだ。カイザーは一から造られようが、進化で生まれようが、あの姿になるのは確定しているのを確認した甲児。ただし、ゲッター線が絡んでいない純粋なマジンガーとしてのカイザーについては、ZEROは幾多の繰り返しで超えてしまっていたので、ここにいる甲児がゲッターエネルギーを入れることに拘ったのも分かる。未来世界の甲児は多次元世界を理解し、それら世界の進化のエネルギーであり、因果を乗り越える力であるゲッターエネルギーにZEROに立ち向かうための希望を託したのだ。しかしながら、ゲッターエネルギーと光子力のハイブリッド動力化に弓教授が難色を示し、テストを繰り返したおかげで肝心の討伐には使えなかったが。また、ゴッドビッグバンパンチがZEROに通じるとは、弓教授は考えていなかったらしく、ゴッドマジンガーの有効性を過小評価していた事も明らかになった。

『で、弓先生がやたらとテストに拘ったから、送られてくるのが遅れたから、キングダークとがっぷり組んで憂さ晴らしってわけよ』

「なーるほどな。敬介さんから聞いたが、あいつはグレートマジンガー位の大きさだぞ?」

『対機動兵器用特機としてキングダークを出してくるのは予想の内だし、いい勝負できんだろ。RS装置はもう組み込めねぇし』

「あれって、たしかどんなエネルギーも変換できるんだっけ?」

「そうだ。RS装置は作動させたが再度、電気が雲に触れた瞬間に核爆発すら起こせる発明だった。元はエネルギー問題のための研究だったが」

Xライダーが補足を入れる。遠い昔、XライダーとGOD機関が熾烈な設計図争奪戦を繰り広げ、不完全な状態で起動したキングダークを倒している。

「RS装置のないキングダークなど、岩石大首領よりよほど、御し易い相手だ。だが、あれから長い年月が経っている。油断するな」

注意を促すX。それはすぐに的中した。かつてと同デザインながら、サイズは以前の倍に巨大化したキングダークが残存の魔方陣をすべて使う形で出現したからだ。ゲッタードラゴン並の大きさであるが、マントを羽織りつつ、70年代的悪役顔なのは設計年代の都合によるご愛嬌だ。

「済まん、複数同時に潰しきれなかったようだ!」

「なに、想定内さ。これで新生マジンカイザーのいいテスト台を得られるってもんだ」

キングダークのマントはXの倒した個体と違い、裏地の色が緑であり、別個体であるのが分かる。サイズは目測でマジンカイザーの1.5倍程度の40m級で、デザインはかつてと代わり映えしないが、口からXに侵入された戦訓から改良されたらしく、口元は改良されている。喉にフィルターがつき、マスクを被っているように見えるデザインになっていた。大ショッカーにいたキングダークのテクノロジーが入っているのが分かる。キングダークは基本的に有人操縦式なので、誰かが動かしているはずである。蘇った呪博士だろうか、それとも…。






キングダークは眼下のヒーロー達を踏み潰さんとするが、カイザーはすかさず挑む。体格的にはマジンカイザーは不利だが、パワーは互角であった。キングダークより10mほど小さいながら、武器がほとんど無いキングダークを攻める。しかし、特段の措置がない場合の有人式にしては、操縦に伴う機構の作動までのタイムラグがほとんど無い。そこから、アムロは無人式へ改造されていると目星をつける。

「甲児君、そいつはおそらく無人式だ!操縦式で、特段の反応を早める措置がなければ、零コンマのタイムラグがあるはずだが、そいつにはない!」

「無人式か!んじゃ、モビルドールみたいなあれかよ」

『ハッハッハ……生憎だが、そうではない』

「その声は呪博士!生き返ったのか!?」

『私はキングダークそのものだ、Xライダーよ!呪は確かに、サソリジェロニモJr共々、貴様に討たれたが、呪はその人格を私の中枢に移していたのだよ』

「人格の転送、昔に親父がやっていた事を、貴様も!」

「貴様の父、神啓太郎にその技術を教えたのは呪なのだよ、Xライダー」

「転送というよりコピーだな、プレッシャーが人の物ではない!」

『神は独自に発展させたようだが、呪の技術は不完全なものだ。それ故、呪本人とは別個の自我を持ったのが私なのだ。呪は我の様な映し身を幾つも残している、フハハハハ…』

高笑いするキングダーク。GOD機関最強の遺産は伊達ではなく、マジンカイザーとがっぷり組んでも当たり負けしないパワーを持っていた。要するに、戦闘獣やミネルバのような存在なのだ。

「キングダーク!何故、呪博士はいくつも作った!」

『奴は懐疑心が強い上、死を恐れていたのだよ、Xライダー』

呪博士は親友の神啓太郎以外には心を許せる人がいなかったのと、自らの研究を完成させようと躍起になっていた事が、その産物であるキングダークから明らかとされた。その懐疑心を利用され、ジュドの傀儡と成り果てたのが、生前の呪博士である。博士はGOD機関を再編し、悪人軍団を作り上げたが、改造人間を信用せず、キングダークを作り、その中で統制を取るほどの臆病者だった。そのコピーがさらにジュドに良いように使われているというのは、呪博士の運命からすれば皮肉でしかない。キングダークは23世紀製機動兵器にも劣らない滑らかな動きでマジンカイザーとボクシングをおっ始めた。実に迷惑である。

「20m以上もあるロボットの殴り合いって、現実味ないねー…」

響がポカーンとしてしまうほど、SFじみた光景であった。甲児とシンクロしているマジンカイザーの反応速度はキングダークにも劣らない速さで、操縦桿式のみのマジンガーZとグレートマジンガーを上回る速さである。体格で勝るキングダークをフットワークで翻弄するマジンカイザー。さながらヘビー級ボクサーにバンダム級だか、ライト級のボクサーが挑むように。

「んー、現状最大400mクラスで殴り合いできる人型ロボットに成る宇宙戦闘艦が最大かな?マクロス・エリシオンが殴り合い出来るのは聞いたことないし」

調が響に解説する。人型に変形する戦艦はマクロス級だが、ガンダムやマジンガーのような滑らかな格闘が可能な最小サイズは判定出来ていない。マクロスクォーターは機動性は良好だが、火力に劣る。マクロス・エリシオンはフル規格マクロスの半分だが、クォーターの倍はある。機動性については未知数で、専門家からは『どっちつかず』と評されてもいる。ガンバスター系は初代で200m、Gで300mだが、そこまでは問題ない。量産型第一世代マクロス級の代艦で計画されたが、政府からは『サイズが中途半端』とケチをつけられたので、民間軍事会社でテストしている。




――民間軍事会社は23世紀では、『政府に文句を言われない天下り先』や『新兵器テスト場』として活用されているが、この後の連邦空軍の総司令官が代替わりで、コチコチの現場叩き上げになった事で一悶着が起きるのだ。要するに、彼は『折角育て終えたパイロットを引き抜くな』と激怒し、S.M.Sなどの担当者を恫喝してしまい、その解決のため、軍部はS.M.Sに多額の違約金を支払う羽目になった。イサム・ダイソンなどの有能なパイロットを引き抜こうとしたと、ヒステリックに喚き、S.M.Sとの契約を破棄するとまで話を大きくしてしまうが、彼はガトランティス戦役の生き残りであるため、空軍の抑えはまるで効かず、レビルが直接、S.M.Sに出向いて交渉しての沈静化が図られた。その結果がイサム・ダイソンなどの有能なパイロットの軍籍をS.M.Sが引き抜いた日に遡って予備役として復活させ、S.M.Sの社員ではなく、軍からの出向という形にする方法だった。これは軍に民間軍事会社に有能・有望なパイロットを尽く引き抜かれる事への危機感があった事、民間軍事会社の強大化を法的に規制しようとするハト派の思惑が一致し、S.M.Sに政治的にも圧力がかかり、事を憂慮したレビルとゴップが直接交渉する事で矛を収めさせた。違約金はジョン・バウアー議員がポケットマネーで幾分かを支払うと発言した事もあり、S.M.Sはスカル隊を含めた主力を軍の予備役部隊として貸し出す事で、軍部はイサム・ダイソンなどの軍籍を維持させ、完全にはS.M.Sのものにはしないなどの妥協策が取られた。軍の人員的質の維持にこだわる現場の声、練度低下を憂いる高級将校などの声が宇宙軍に比べ、機材が古めの空軍では大きかったのだ。そのため、人員の質がもっとも安定している宇宙軍が問題の調停に動く事になり、宇宙軍の立場をより強固にするきっかけとなる。空軍はこれで政治的痛手を被り、事件は結局的には、宇宙軍の星間連邦軍での立場の確立に大きく貢献する。空軍はこの不祥事の後、それまでの地上三軍から、宇宙軍航空隊の地上支部的位置づけになり、それに伴い、地球星間連邦『航空宇宙軍』として、宇宙軍も再編され、宇宙軍設立当初の名称を取り戻す事になる。元々、連邦宇宙軍は航空自衛隊の宇宙部門が源流なので、あるべき姿に戻ったとも言えるが、一年戦争からは海軍化も進んでいたため、組織的には海軍と空軍のハイブリッドであるのが現在の宇宙軍と言える。(わかりやすく言うと、空自のハンバーガー好きと海自のカレー原理主義が混じったようなものだ)――



「こいつはいつの時代に造られていたのデス?」

「Xライダーが現役の頃の最後の敵だったから、1974年にはいたって事になるなぁ」

「嘘ッ!?当時の技術はアポロ計画からそれほど進歩していなくて、8ビットのCPUすらあるかどうかの時代で、映像記憶機器もオープンリールの…」

マリアも驚く。キングダークは1974年には存在していたというのだから。

「組織の技術は当時の世界水準の遥か上を行っていたんだ。71年の時点で、2003年頃のコンピュータと同等の性能のコンピュータを既に持っていた。私と二号が改造された時点でね」

「ただし、キングダークほどの兵器を作るには当時の既存技術もかなり入っていて、Xの証言だと、コンピュータユニットはマイクロバス位の大きさだったそうだ」

一号と二号が補足する。ただし、Xが戦った時点での情報なので、小型化されていると思われるともいう。

「コンピュータは日進月歩だからね。奴らの進歩速度を考えれば、10年後にパーフェクトサイボーグも作れたんだろう」

「パーフェクトサイボーグ?」

「この俺の体の事だ。俺は脳と脳髄以外はすべて機械の体だ。機械のボディに脳髄を組み込んだものだから、君らはアンドロイドと言うかも知れないが」

ZXも話に加わる。ZXは組織の技術の粋を集めたパーフェクトサイボーグであり、その能力は仮面ライダースーパー1すら凌ぐ。脳と脳髄以外を機械に置き換える事はアンドロイドに人間の脳を入れるのと同義である。そこまで置き換えられていながら『サイボーグ』と言い張るあたりは組織の矜持を匂わせる。もっとも、脳が一部でもあれば、サイボーグになるのは事実だが。

「デビルマンのように、悪魔族の勇者の体を人間の意識が乗っ取った例もあるからな」

「デビルマン!?」

「甲児君の戦友で、不動明という名の男を聞いたことがあるかい?その男こそデビルマンだ」

二号はここで、デビルマンの存在を明らかにした。兜甲児の戦友であるヒーロー。デーモン族の勇者『アモン』を人間・不動明が乗っ取り、悪魔の力を身に着けた不動明として振る舞うヒーロー。

「彼はデーモン族の過激派を駆逐し終えた後は、甲児くんに協力している。こちらでもウィッチが出始めて、対抗できるようになったしね」

「そ、そうなのか?」

「男のウィッチもいるそうだ」

「うぇ!?ほ、本当!?」

「ああ、俺達も協力者から聞いたばかりだが」

エイラとニパが顔を見合わせて驚く。伝説の存在でしかなかった男のウィッチが未来世界で出始めたのは信じられないからだろう。

――マジンカイザーはキングダークのジャブのラッシュをスウェーで避け切り、クロスカウンターを見舞う。ここまで人間臭い動作を巨大ロボが行うと現実味がないと言わんばかりの顔をする、調を除く装者達、そしてエイラとニパ。マジンカイザーは素のパンチで既に超合金Zは軽く壊せるパワーがあるが、それに負けない強度をキングダーク(おそらく歴代仮面ライダーの同時キックに耐えきるためだろう)は持つ証である――

『カイザーナックル!!』

ターボスマッシャーパンチの回転機構のみを作動させ、殴りつける甲児。キングダークも負けずにパンチを食らわせ、さながらボクシングの試合だ。殴り合いをロボットが行っていることなどすっかり忘却の彼方、と言った様相だ。


「ロボットでステゴロの殴り合いする意味ってあるのデス…?」

「ロボットのマニピュレータはデリケートな部位のはずよ。ボクシングのボクサーだってグローブで保護しているし、あんな激しい応酬をしたら…」

「ねーよ!アイツらの趣味に決まってんだろーが、大体マニピュレータなんぞ、おおよそが殴る道具じゃねーからな。そういう常識だの一般論だのを棚上げしたのがスーパーロボットって言われんだ」

ストロンガーが呆れるようにコメントする。アムロも続く。

「俺もサザビー相手にステゴロで倒した事があるんだが、帰ったら整備から大目玉食らったよ。一応、強度計算してガンダムを設計しているが、アクチュエータやサーボモーターに負担かかるからね」

アムロのνガンダムはステゴロに耐えられる構造を持つマニピュレータを持つが、それでもアストナージから大目玉を食らったというあたり、サーボモーターやアクチュエータに負荷がかかるので、HI-νでは専用部品が増えたほどだ。

「ガンダムだと、ステゴロは最終手段さ。ストロンガーの言うように、あのような殴り合いはスーパーロボットでなければ不可能だ」

「スーパーロボット……」

「グレートマジンカイザーに似てるけど、あれは兄弟機なんですか?」

「そうだ。マジンカイザーのほうが先に生まれていた。マジンカイザーはZのプロトタイプが、Gカイザーはグレートマジンガーのオリジナルがそれぞれ進化した個体。ゲッターロボのエネルギーで進化したと言うべきか」

「進化!?機械が有機物のように進化を起こすなんてッ!?」

「ゲッターエネルギーは進化を司るエネルギー……機械でも進化を起こさせられます」

「貴方が……ジャンヌ・ダルク……。仏の英霊…」

「貴方方にとっては、私は確かに、数百年前に死んだ人間ですね」

「ジャンヌ・ダルクって、仏の歴史で有名な『オルレアンの聖処女』デスよね……どうして?」

「そのご質問は飽きるほど聞きましたよ」

切歌に笑いかけるジャンヌ。

「アルトリアと同じく、私も転生したのです。23世紀に生きていた、ある少女の肉体を依代に」

ジャンヌはアルトリアとは違い、自然に融合したために、ジャンヌとルナマリアの双方が混じり合って転生している。そのため、生前のジャンヌが持っていない技能も高レベルで持つ。剣技がそれだ。持っていた『聖カトリーヌの剣を振るったことは無い』生前と違い、ソードインパルスガンダムを好んでいたルナマリアの性質が影響したのか、逆にインファイトも行うようになっている。ソードインパルスガンダムのエクスカリバー対艦刀の扱いが剣ではなく、槍的な扱い方のほうが多かったという、ジャンヌと特徴が一致する偶然も、ジャンヌとの融合が自然に行われた証だろう。


「黄泉還りを果たしたというの!?」

「あたしに至っちゃ三回目の人生だ。そんくらいで驚いてたら身がもたないぜ、マリア」

「レヴィ、貴方って人は…」

圭子は、マリアとはレヴィとして出会ったのは、『レヴィ』と呼ばれている。それが風鳴翼からは『加東女史』、響からは『圭子さん』と呼ばれている。レヴィと呼ぶのはクリスとマリアで、調は教育係の稲垣真美の影響で、『ケイ姐様』か『レヴィ姐様』である。

「姐様はいつもこんな感じ。戦闘以外だとはっちゃけてるから」

「レヴィ?」

「真美に文句言え。調の面倒は真美に任せてあるから」

「この方は戦闘だと、水を得た魚のようになりますが、それ以外だとだらけてますし、カメラ以外投げ捨てるレベルのマニアですから」

ジャンヌもそう証言するように、圭子は素がカメラマニアで、ジャーナリストを転生前は副業にしていたし、今回も広報で仕事をしていた時期もあるので、広報へ協力的な唯一のレイブンズだ。黒江が日本での訴訟の嵐でうんざりし、広報へ非協力的になり、智子も50F在籍時の扱いで不満があるので、圭子と武子は重宝されている。そのため、レイブンズの正式な復活後はプロパガンダの意味合いもあり、たとえ奔放な素行でも許容されているのである。数年後、海軍に多大な政治的ダメージを与えるパンチとなるのは、レイブンズの自由奔放な素行を許容している参謀本部、後に統合幕僚会議への海軍ウィッチの大反発なのだ。市民には上手く愛敬を振り撒いているので、人気が相変わらず高いのも、海軍の中堅世代の反発を招く。市民への愛嬌は仕事の内と割り切った三人は、対外的には『模範的なウィッチ』として振る舞うが、部内では素行が『ブレイクウィッチーズ級』として苦笑いされている。その振る舞いの差が理解者以外の海軍ウィッチには気質的に理解されず、差別化を図ろうとするあまり、エース制度の設立で主導権を握る機会をとうとう失ってしまう。唯一の機会はクロウズの内の二人が現役継続の挨拶で拝謁した時であったのだが、それを逃すと、MATにエースとなるべき者が流れていき、気付いたら現役では若本しかいないという事態に陥り、反発した世代は前の世代からも、後ろの世代からも『海軍の恥さらし』と侮蔑され、嘲り笑われる対象と成り果てる。志賀のように、誠実に先輩に侘びた者は少なく、それもその世代が恥さらしとされる理由だった。レイブンズは戦後日本の軍人への扱いの落差を知っているため、市民にはとにかく愛嬌よくするように努め、後の太平洋戦争では基地がある自治体の振興にも部隊を挙げて協力するが、この頃の海軍ウィッチはやくざ者、チンピラじみた者も多く、基地のある地域の住民と軋轢を生みかけてる所も多かった。それがクーデター事件や太平洋戦争でのウィッチへのリンチ事案に繋がってしまう。坂本や若本が軍人としての多くの時間を海軍ウィッチのイメージ回復に割き、そのイメージ浸透に尽くしていくのも、この時期の中堅ウィッチ達のチンピラやヤクザなどの無法者同然の横暴さに由来する。もっとも、海軍のウィッチは大半が坂本タイプの武人か、雁渕孝美タイプの温厚な人物に大別できるはずなので、ウィッチを持ち上げる軍人たちに担ぎ上げられたというべきか。

「この戦いが終われば、今度はウチの故郷でのクーデター鎮圧だ。海軍の連中にはあたしらを嫌う連中も多い。クーデター鎮圧はチト、骨だな」

レヴィはそう言って、やれやれとため息をつく。太平洋戦争が控えているというのに、国内がクーデター間近という状況。日本側に付け込まれないように、速やかに鎮圧せよとお達しは出ているので、年単位での休暇は無理だろうと落ち込んだのだった。

『訓練もせずに愛敬振り撒いてる奴等(レイブンズ)になんで発言権が有るんだ!改革するには力ずくで奴等を排除すべし!』

これがクーデターの理由と聞かされた昭和天皇は激怒し、首謀者達のその場での銃殺も示唆するほど烈火の如く怒ったが、首謀者のウィッチの大佐が『訓練もせずに愛敬振り撒いてる奴等(レイブンズ)になんで発言権が有るのです!?』と自刃をするつもりで申し開きを行った事で、どうにかその場での銃殺は免れ、尉官級以下は戦争勃発後の人手不足で、司法取引で名前と姿を変えて復帰したという。レイブンズの猛訓練が軍内に布告されたのもこの影響で、超ハードトレーニング(聖闘士としての普段の訓練だが、常人には死ぬこと間違い無しに見える)ぶりに愕然とするウィッチは多く、扶桑ウィッチはそれを期に、急速にレイブンズとその関係者の手中に収まっていくのだった。



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