外伝その166『舞台裏4』


――ダイ・アナザー・デイでは現役世代ウィッチからも、Gウィッチ化した面々が獅子奮迅の活躍を見せた。レイブンズに親しい面々が寄ってかかって覚醒しているかというと、そうとも限らず、美遊(リーネ)、イリヤ(サーニャ)、クロエ(ルッキーニ)、アルトリア(ハインリーケ)、ジャンヌ(ルナマリア・ホーク)などの例もある。だいたいは前史でも太平洋戦争に従軍し、レイブンズと苦楽を共にしたであろう面々であるという共通点には代わりはない。(リーネは従軍しなかったが)特殊な事例に、愛国心で完全な同化を防いだモードレッドとペリーヌの例もある。そのため、Gウィッチは単に絶頂期の状態に時間を超科学で巻き戻したに過ぎないRウィッチよりも上位の存在として、軍上層部に認識された。共通点は全てのウィッチの中で最も高い、対軍から対界級の戦闘能力を誇ること、神格になり、肉体が現世で活動するための器と化している事だ。つまり、人の可能性を放棄せず、そのまま神としての資格を得た者であると言える。存在としては神格だが、生物学的にはヒトである。それがGウィッチである。(30世紀の地球連邦政府の記録によれば、Gウィッチは全員がヒトとしての生物学的、遺伝学的限界に達した220歳以降は実体が伴う霊体になっているとの事)――





――1945年のダイ・アナザー・デイに入るまでに明らかになった事は、通常ウィッチたちからは、『既に引退している世代のウィッチは田舎に引っ込んで、嫁さんでもしていろ』というような、Gウィッチへの妬みが燻っている事である。当然だが、普通のウィッチはたいてい、出世できても大佐止まり(ガランドは上がりの後に名誉的に昇進したので、一般現役期間中は大佐である)である。復帰して昇進しまくった黒江達にしても、准将に至るのにも政治的暗闘があったので、普通に行ったら大佐が最終階級になる。家庭の都合で途中退役する者も多いため、それを勘定に入れると、平均的な退役時の階級は少佐から大尉である。そのため、突如として復帰し、加速度的に佐官、将官への道を駆け上がるレイブンズは後輩からは尊敬ではなく、妬みの対象となる事が多かった。これはレイブンズの往時の活躍が、後輩世代にほとんど知られていないという悲劇も原因であった。1945年には、レイブンズの次の世代のエース集団と目され、七勇士の年少組であった坂本らが老兵扱いされているので、それより前の世代の活躍は知らない世代の方が圧倒的に多かった。覚醒前のペリーヌやミーナ、赤ズボン隊の面々、中島錦、(天姫はケイのことを知っていた)ノーブルウィッチーズB部隊出身者がそうであったように、レイブンズの実力を侮る事が常態化していた――


――ダイ・アナザー・デイ前の二回目の査問当時――

「いいかね、少尉。彼女らは君の大先輩だ。その彼女らに敬意を払えないのかね」

「滅相もありません!自分は……」

二回目の査問は待遇に不満を抱いていた若い整備兵らが嘆願して実現した。そのため、三将軍も乗り気ではなかった。錦が三将軍の査問を受けているのは可哀想ですらある。立て続けに査問が行われる事は、ミーナの人事評価を地に落としかねないものであり、ハルトマンは『早く覚醒しないと、ミーナ、クビだよ〜!』とパニックであった。そのため、覚醒直前のミーナは整備兵の人心を掴めていなかった事に衝撃を受け、更に、レイブンズが坂本が尊敬していたウィッチであるという事実のストレートパンチを喰らったかのように、情緒不安定状態にあった。そのため、ラルがルーデルとガランドに許可を得て、病棟に隔離していた。ミーナの精神的ストレスが極限に達し、勤務に耐えうる状態で無くなったからで、ラルが代理として指揮を取っていた。だが、その不安定さが逆にG化を促す事になり、作戦中の覚醒に繋がったのだ。

「グンドュラ、今のうちにフーベルタの配属先決定書類を作っとけ。ロンメルを抱き込んである」

「あいつほどの人材はどこの戦線も欲しがるから、今のうちに、我々のもとに引き込んでおけと言うことですか、閣下」

「いや、フーベルタには、もはや『みすみす503を全滅させた』という悪評がついて回る。あいつはそれのこともあり、その雪辱を望んでいる。戦友のお前が機会を与えてやれ。どの道、サーシャ大尉の後任は決めなくてはならんしな」

ラルはこの時点では、『療養中』のミーナに代わり、501の現場責任者となっていた。G化済みであり、かなり御坂美琴の要素が入り込んでおり、ファンシーグッズをハルトマンに頼んで、買って来させるなどの要素が表面化している。また、日本語がネイティヴになっているが、御坂美琴と同程度の語彙しか使えない、年齢よりかなり幼いものなので、秘密を話す時(サーシャの処遇など)以外には使っていない。また、黒江達のみが知る秘密だが、美琴もお気に入りである『ゲコ太』のボールペンを堂々と使っていたりする。

「それと、君に頼まれていたグッスだが、21世紀ののび太君が送って来たよ。皆に見られない時に取りに行き給え」

「ありがとうございます!」

「見られた時の方便も考えおいたほうがいい。煙に巻けるような、な。」

「いいですね、閣下は某ネズミのグッスで…」

「孫たちを連れて行こうかと考えているんだが、何分、増えたものだから、かなり出費がなぁ。せがまれてるんだが…」

この時期にはナンバーズの生存・更生組も引き取ったので、かなり懐が寂しいらしいガランド。皇帝が見舞金を出すというので、それ目当てであるが。

「陛下にせがんで、見舞金を増額してもらってな。次の戦が終わったら、泊まり込みでランドとシーめぐりだよ」

ガランドは増えた孫たち(スバル、ギンガ+ナンバーズ更生組)をランドとシーへ連れて行く約束をしているらしい。ナカジマ家を切り盛りしたいので、軍から身を引きたいのだが、G機関が事実上の新・元帥府になったので、実質的には軍人扱いは続くことになるのだ。

「いいなぁ。あたしには相手とかいませんし」

「美琴君と姉妹も同然になったのだ、彼女を誘ったらどうだ?」

「黒子がついてきちゃうのがちょっと…」

「初春くんに頼んで、方便作ってもらって、缶詰にさせればいいさ」

ラルは美琴との感応で、美琴の黒子のベッタリにドン引きしている感情も引き継いだようで、美琴の声でそう言う。普段のハスキーボイスとは別人級に高いのと、会話がお互いにネイティヴの日本語であるあたり、かなり秘密保持に気を使っている。日本語は外国人にとっては、覚えるのに数年以上の滞在を必要とするほど難解であるため、秘密保持に使われていた。(その場に扶桑人がいない場合だが)また、日本語を用いる時、ラルは美琴の声色になるので、それも秘密保持に役立っていた。

「フーベルタの人事は今日中に通す。サーシャ大尉には、私から話そう。祖国があんな事になり、情緒不安定だからな」

「ヒステリー起こされたらどうします」

「孫から習ったディバインバスターでぶっ飛ばすさ」

サーシャは祖国の革命騒ぎで家族が散り散りになった上、サーニャの移民の決意が原因で情緒不安定に陥っており、とても勤務に耐えられる精神状態ではなく、ミーナと同じ処遇にされていた。そのため、暫定的に黒江の副官は黒田と芳佳の担当になっている。ダイ・アナザー・デイ中からはジャンヌが専任になるが、この時期は芳佳と黒田の交代制で回していた。従って、サーシャはこの時期の情緒不安定さが原因で不遇の時代を招いてしまう事になった。

「それと、黒江くんのエヌマ・エリシュは効いたかね」

「効果抜群ですよ。エクスカリバーとエヌマ・エリシュを使えるという時点で、リベリオンや扶桑の特秘事項の証明ですからね」

黒江が放ったエヌマ・エリシュは、かつての特秘事項のフィルムの映像がフェイクでない事の証明となった。実際に見せつけられ、更に赤松の引っさげた『真の公式スコア』が実力の証明であった。1937年時点で240機超えであるのだ。事変の終結時は250機。現時点(1945年)でさえも世界トップレベルの数である。年代を考えると、紛れもなく世界最強であった。なにせ宮藤理論の黎明期に叩き出したとしては、異常な数であるからだ。江藤が殺されそうになったのもそうだが、非現実的であったため、封印されてしまったスコアであると言えよう。それが日の目を見た事になる。この数字は現在の追加数を入れない場合で、入れたら世界四強が確実に崩れる。そのため、ハルトマンやバルクホルンが敬意を払っていた理由を若手達がようやく悟ったのだ。従って、撃墜数でカールスラント一強の風潮に波紋を引き起こしたのも、レイブンズの功績である。扶桑軍もエースのプロパガンダの有効性に気づき、源田実はこの時期から64Fの編成復活を強引に押し進める。そのやり方に内部から相当の離反者も出るが、レイブンズを配下に収めるための代償とし、強引に認めさせた。それが空軍最強の加藤隼戦闘隊の胎動であった――

「源田参謀も準備を始めた。加藤大佐を送り込み、その臨時飛行隊を核に、新64を発足させる。海軍343空とそれを核にして、な。これで国内は大丈夫だそうだ。魔弾隊は開戦で発足させる。その籍は予約してある。もちろん、君の籍もだ」

「空軍総監が出ていいんですかね」

「名目上は現地の情勢切迫による、帰国困難で滞在できるようにする。今や私は元帥だ。もう押さえつける上は誰もおらん」

ラルは空軍総監の地位が約束されていたが、実質的にはガランドの指令で動く『中間管理職』であった。そのため、G機関が元帥府の代替機関と見做されていた。

「それと、扶桑は八八の再実現を目指しているのか?」

「戦艦の乗員がかなり浮きますからねぇ。紀伊型以前の乗員を回すにしても、オートメーション化が進んでるから、旧式を退役させるとはいえ…」

「同時期の日本より高等教育受けている人口が多めなのが救いだよ。そうでなければ、海軍軍人はおいそれと用意できない。いざとなれば、海援隊から雇えばいいしな」

扶桑は教育制度が1930年代に日本寄りになっていたこともあり、高等教育を受けた母数が同時期の日本よりかなり多く、海援隊も予備人員として用いる協定があったため、扶桑は戦艦のオートメーション化が未来技術で進んだ事、主力が改大和型以降の近代化戦艦になった事の恩恵もあり、戦艦戦力の世代交代を推し進める。これはかなりのオートメーション化で一隻あたりの必要人数が減った事、空母は地球連邦軍がインフラ整備の費用負担や必要要員を暇を持て余している海軍から貸し出してくれることもあり、戦艦の整備を続けていく。元々、八八艦隊の要員として、その時期の兵学校採用人数を増やしていた事、海援隊の存在で同時期の日本よりも高等教育を受けた人間の母数がそもそも多く、20年代はその採用数を維持していたため、その蓄積で戦艦乗員を確保していた。また、海援隊の人員を海軍で有事に雇える協定も結ばれていたので、日本の評論家の言う『八八艦隊は高等教育を受けた旧制中学卒業者が全学生の10%以下の時代には、労働資源を破綻させる無駄な国家行政』は成り立たなくなる。(黒江の後の時代からは、女子の高等教育も始まっており、芳佳はその恩恵を受けた世代)また、山本五十六は答弁で『大和型が3300人というが、通常は2500人ですし、700人は増設されていた機銃要員に過ぎません。オートメーション化でその分は減りますし、大型空母より省力と小官は認識しております』と声明を出している。実際、日本の志向する大型空母は航空要員と操艦要員が合わせて5000人以上必要になり、戦艦よりも人がいる艦種と化している。近代化改修が徹底された大和型は宇宙戦艦の技術でオートメーション化がかなりの割合で行われており、1000人もいらないくらいの人数で戦闘可能である。また、コンピュータの整備などは23世紀の人間もアドバイザーで乗艦しており、ある意味では自衛隊の護衛艦よりも洗練された作りに変貌している。相対的に空母よりも安価な人件費である。そのため、扶桑は戦艦10隻、大型空母6隻体勢を志向してゆく(平時になると予備役艦隊入りが増え、10隻も稼働状態にする必要性が薄れるので、戦艦は5隻態勢になるが)。また、空母は八八艦隊竜骨流用の45000トン級(ミッドウェイ級相当)を場繋ぎに、本格的大型空母の建造ノウハウを得るため、プロメテウス級の運用を行うことで決定している。



「やれやれ、これからどうなることやら」

「前史とだいたいは同じ道筋だろうな。ラル、ミーナ中佐の覚醒については、もう少し見守ろう。我らはもはや肉体を人間の生物学・遺伝学的限界まで保持できる。外見は年を取らなくなった。霊体になれるだろうし、時間の制限は無くなったも同然だ。まぁ、その前に故郷は去る必要があるだろうが、ミーナ中佐が覚醒するのを見守るしかあるまい」

ガランドがそう判断するより早く、ミーナは覚醒に成功する。ヴィットマン(恐らく、ウィッチ)のスナップが載っている雑誌が病棟に置かれており、それを見た事で覚醒に至ったのだ。覚醒後は質実剛健、冷静沈着。バルクホルンと被るが、シスコン属性持ちの人物に変貌する。ティーガーの扱いでは、シャーロット・リューダー以上の熟練度という反則ぶりを見せる事になり、この点で、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは西住まほ化したと言えた。






――こうして、フーベルタ・フォン・ボニンのサーシャ後任としての着任の決定、ミーナの覚醒による汚名返上、レイブンズの戦闘力の証明などが立て続けに起こり、ロンド・ベルとの共同戦線に至るのである。真・501はこうして、過去に8つあった統合戦闘航空団と、統合戦闘飛行隊の在籍経験者達が一つの部隊に集められた利点はダイ・アナザー・デイでその真価を発揮する事になる。ティターンズがリベリオンを使っての『ウォーゲーム』を愉しむというのなら、それを止めるという、確固たる信念を示すためにも、バラバラだった統合戦闘航空団を『統合』運用する事は必要だった。そして――


『これこそが、偉大なる魔神皇帝!!マジンエンペラーGだ!!』

着任途中のフーベルタは、剣鉄也の駆る『偉大なる魔神皇帝』の勇姿を、輸送機の窓から目にする。鏡面世界への入り口を守護する『皇帝』の名を持つスーパーロボット。その力を。

『サンダーボルトブレーカー!!』

それはもはや、兵器と呼んでいいのかわからないほどの所業であった。怪異であろうと、ティターンズの可変モビルアーマーだろうが、無人戦闘機『ゴースト』だろうが、問答無用で粉砕する神の雷。

「光、全てを粉砕する浄化の光……」

どこぞのネオ・ジオンの強化人間のような台詞をつぶやくフーベルタ。彼女はマジンエンペラーの放ったサンダーボルトブレーカーに何を見たのだろう。また、輸送機がエンジントラブルで墜落が確実になった際は、積んでいたBf109Kで脱出したものの、丸腰で脱出したので、敵機との交戦は事実上不可能であり、敵のVF-11にドッグファイトを挑まれ、あわやという事態になりかけたが、黒江から怒られたものの、次の仕事を仰せつかったガイちゃん・ザ・グレートが救った。

「ザウゥルガイザー!!」

「!」

「アンタがフーベルタ・フォン・ボニン大尉だね?」

「あ、ああ。今は少佐だが……君は?」

「グンドュラ・ラルの使いだよ」

「グンドュラの使いだと!?」

「念には念を入れて、あたしを迎えに行かせたのさ。下がってな。丸腰じゃ、VF-11の相手は荷が重いよ」

ウィッチは頑張れば、VF-11くらいであれば落とせる可能性がないわけではない。フーベルタやラルクラスの指折りの撃墜王がフル装備で対応する必要があるが…。11でも、速力は高度10000mでM3.5を誇るため、本気のドッグファイトでは、ガイちゃんが出張る必要があった。超音速戦闘をフーベルタはここで初めて目にした。

「こんなちょろい板野サーカスが、このあたしに当たるか――!」

11のマイクロミサイルの雨あられを回避しまくるガイちゃん。黒江の親友を自負するだけあり、さすがの空戦機動を見せつける。

「デスパーサイト!」

手刀でのデスパーサイトを放つが、11編隊はそれなりに訓練は積んでいたようで、回避しながらもガンポッドを打ち返してくる。ガイちゃんにとっては、どうということはない攻撃であるので、腕で弾丸を弾く。

「ギガンタークロォォス!」

ギガンタークロスを手に持ち、それを媒介に、デュランダルを形成する。黄金の輝きを持つ聖剣であり、黒江がエクスカリバーを普段使いにすると同様、ガイちゃんはデュランダルを普段使いにしている。

「あたしの敵を斬り裂け、絶世の名剣(デュランダル)!!」

エクスカリバーと同レベルの現象が巻き起こった。VF-11は完全に消滅し、膨大な魔力光の残照と、黄金に輝く剣がその力の証明である。

「まどろっこしいから、デュランダルで始末してやったよ、フーベルタ」

「デュランダルだと!?き、君はいったい」

「日本の誇るスーパーロボットの化身さ。オリンポス十二神から、剣はもらったけど。その辺はラルから聞いてよ」

「わ、分かった……グンドュラは今、何を」

「次期空軍総監だよ」

「何だとぉ!?何の冗談だ、えーと」

「ガイちゃんって呼んで。大マジさ。ガランドがさ、家族増えたから退役しようとしたら、後任の適任が中々、ね。そこで次点だったラルが選ばれたらしーよ。でも、ラルは悪童の評判立ってたから、元帥に昇進させられて、非公式に立ち上げてた機関が皇帝のお墨付き元帥府になったってわけ」

「あいつは書類を止めたり、事務方を買収も平気でやるから、同期からかなり反感買ったんだ。ミーナもMG42を撃ってやりたいとか、ぼやいてたしな。しかし、閣下がぼやいておられたが、ミーナが情緒不安定とはな」

「あーやのことは?」

「知っている。ミーナめ。ちょっと機密書類をあされば、レイブンズが扶桑ウィッチの発言権を決定づけた英雄という事くらい、簡単に分かるというのに。あいつらしくもない凡ミスだな…」

フーベルタにさえ、ミーナの浅さかさは呆れられるものだった。G化に恐怖を抱く一方で、坂本の力になりたいという矛盾。G化で恐怖は消え、むしろ、『とんでもないことをやらかした』恥ずかしさで死にそうになり、レイブンズに詫びを入れ、戦場で獅子奮迅の活躍を見せたのは言うまでもない。フーベルタはこの後、ガイちゃんの護衛で、真501へ着任。事実上、追放されたサーシャの代わりに幹部の一翼を担い、すぐに中佐に昇進した。そして、不遇の時代を過ごすサーシャと対照的に、ティターンズの捕虜収容所から脱走してみせた女傑として、その名声を確固たるものとしたのは言うまでもない。また、レイブンズの撃墜数を知っていたのか、レイブンズに敬意を払い、ラル共々、真501の中堅幹部としての責務を果たしていく。また、ティターンズの捕虜収容所でメイドをやらされていた名残りか、メイド服を着て対人戦闘もこなすようになり、別の意味で人気を博す事になる。

「さて、ミーナ達にご挨拶と行くか、ガイちゃん」

フーベルタの着任により、旧・第52戦闘航空団の主要メンバーの大半が一箇所に集う事になった他、扶桑の誇る、世代を超えた撃墜王たちも集った事で、ウィッチ世界のトップエースが一堂に会する豪華な戦となった。イサム・ダイソンやアムロ・レイ、カミーユ・ビダンと言ったトップエースが参戦している地球連邦軍へ自分達の存在感を示すための意図もあったのだろうが、とにかくも連合軍として、存在感の埋没は避けられたのだった。






――アムロ・レイ、カミーユ・ビダンなどの『個人で時代すら動かした』英雄に比して、ウィッチは、それほどの戦略的価値があったのはレイブンズのみであり、クロウズもそこまでの価値はなかった。これはウィッチの能力に頼るよりも、平均的能力値を高める傾向がクロウズの後の世代からは推奨されていたからだが、ティターンズがその能力値を超越する科学とリベリオンの物量で蹂躙しにかかった時代になり、レイブンズのような突出した練度が必要にされる傾向に回帰してしまった。だが、対人戦争に抵抗感を持つウィッチも当然、数多いので、Gウィッチにあれこれの特権が与えられるのは必然的だった。また、地球連邦軍のデモンストレーションと言わんばかりの最新鋭兵器の数々への反G閥の見苦しい抵抗は連合軍人事担当者を呆れさせた。

『怪異担当以外出来ん連中と、何処へ出しても成果を出す方々とどちらが大切にされるかって事なんだがなぁ』

実際、Gウィッチはパイロットでも、参謀でも、対人戦闘でも、折衝でも成果を必ず出す優秀さを持っているため、育成費が高騰するわりに、費用対効果の薄いウィッチへの投資へ疑問を持つ財務関係者を黙らせる効果抜群だった。つまり、ここでウィッチは事実上、メンコが如実に物を言う世界となってしまった事になる。要するに、何でも屋であり、戦時に絶対に必要とされる百戦錬磨のGウィッチを頂点に、次点として年齢的に大人と言えるRウィッチ、最下位が現役ウィッチという具合だ。折しも、G/Rの出現はティターンズの出現によるウィッチ隊の連戦連敗と、地球連邦軍との接触、日本連邦/キングス・ユニオン結成と重なったこともあり、その世界情勢に適応できないウィッチたちの反発に、各国は悩んでいく事になる。扶桑であっても、若松や赤松と言った『ウィッチの神様』であっても、自分達の摂理に反するとした海軍ウィッチらが反乱を起こした結果、管理責任を問われた小沢治三郎が連合艦隊司令長官を辞する事になる。(これはウィッチたちの望む結果ではなく、驚愕したという)そのため、現役ウィッチたちも、世界情勢が太平洋戦争に突き進んでいくに従い、次第に現役世代は『順応して新たなスキルを得ようとする者』と今までの摂理にしがみつき、反発する者』に分裂していく。また、空軍の組織作りを大義名分に、小沢治三郎、井上成美、源田実などの海軍航空の大物達が空軍へ移籍した事で、海軍航空は大打撃を政治的・人的にも被る。こうして、出来上がる空軍は海軍航空出身者が要職を占める軍隊となり、一応の人的バランスは保たれる。そのため、打撃を受けた海軍航空に変わり、空母搭乗員の任を空軍が代行するに当たって、円滑な事務処理を可能とした。そのため、レイブンズは開戦からしばらくは瑞鶴に乗艦するが、後にプロメテウス級『龍鳳』に変わり、それに終戦まで乗艦する事になる。その特権は常に前線へ投入される事の明示でもあり、開戦前に64Fの復活、エースパイロット制度の常設に異議を唱えて離脱した、元・343空飛行長の志賀淑子に強い罪悪感を埋めつけ、彼女の戦後の退役の理由になるのだった(警備会社を興し、そこの社長になった。後に喧嘩していた黒江と和解し、戦後に開かれた戦友会には、『初代飛行長』として、必ず参加したとか)。――




――また、海軍航空も戦時中、日本からの組織防衛のため、武功章と功労賞を相次いで導入したことも、志賀のような昔気質の海軍ウィッチの居心地を悪くしたところもあったのだろう。実際、金鵄勲章はなんとか存続したものの、現役軍人に戦時中に授与する事に反対論が唱えられたため、その二つは感状より上位の表彰として重宝された。そのために、金鵄勲章の戦時中における代替品という取扱いとなり、志賀はその結果、軍隊への居心地が悪くなり、終戦で退役する事になった。自身も横須賀航空隊などでの業績で功労賞を得てしまったので、言ったことと結果が違うと批判される事を恐れたともされ、黒江との和解は、志賀が退役した後の第二次扶桑海事変を待つことになる――



――のび太は少年と青年が別々に行動していたのだが、それぞれ戦功を立てたので、後に瑞宝章を得る資格を得、老年期を迎え、退官した際に授与され、以後の野比家の勃興の礎を築くのだった――


――調はこの戦いで、シンフォギア世界で『自分のやるべきことは師匠と老師が成してくれた』とし、シンフォギア世界を離れる決意を固め、リディアン音楽院を退学し、野比家に本格的に居着く事になる。(学業は連邦大学で済ませた)以後、野比家を支えてゆき、のび太を看取った後も、ノビスケやその子達を教育し、野比家勃興の功労者となる――


――切歌は調への負い目をわだかまりを解消した後も持ち続け、惑星ゾラでの熱気バサラとの出会いで、調を追いかけ、野比家に行く決意を固めるが、調が突然、姿を消した事で情緒不安定に陥った雪音クリスの精神状態のこともあり、リディアンを卒業してから、野比家を訪れる事になる。そのため、のび太のもとに来るのは、調より数年後の2002年の夏となるのだった――


――アルトリアは、カールスラント軍人『アルトリア・H・P・ツーザイン・ウィトゲンシュタイン』として、ハインリーケの立場を受け継ぎ、以後はカールスラント王家の血筋かつ、アーサー王の転生であるとする公向けのプロフィールを発表。ハインリーケの衣鉢を受け継ぎ、以後はカールスラント軍人として生きてゆく事になる――

――モードレッドは、ペリーヌの第二人格となって以降はペリーヌではできないことを行う事で、役割分担をしていき、やがて議員当選後のペリーヌは戦闘をモードレッドに委託することになる。ガリアの零落を見届けた後、モードレッドは、ガリアの騎士としての生き方を愉しむようになる――


――アストルフォは、ガリアの戸籍をド・ゴールに用意させた後はシャルル・マーニュ十二騎士が一人としての優雅な暮らしを満喫しつつ、なんだかんだでガリアの復興を手伝う事になる――


――ジャンヌ・ダルクは基本、住まう世界は23世紀世界であるのだが、かつての祖国への慈善活動はきっちり行い、ガリアの復興に尽力し、その過程で『名誉回復』を実感するのだった――



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.