外伝その179『大空中戦』


――エディータ・ロスマンは父親との間に確執があり、更に雁渕ひかり(この世界では、そもそも出会うフラグの成立が遅れていたが)との接し方を責められ、精神的に折れる寸前になっていた。もちろん、出会っていないウィッチとの接し方を責められても、何も言えないし、理不尽である。これはシスコンが過ぎたがために、突き放した態度を取った姉の孝美にも向けられ、両名は精神的に疲弊し、その疲弊がGとしての完全覚醒を促した。エディータ・ロスマンは療養も兼ね、紫電改のマキ世界で矢島風子というスケバンに変身していたため、それを終えても、その振る舞いは残ったため、学ランを軍服の上に羽織るバンカラファッションが癖になっていた――


「先生、すっかりスケバンだね」

「親父を怖がってたのが馬鹿らしくなったわい。ワシの鍾馗は整備してあるかいな、ハルトマン」

「ウン。アブガス入れて、翼の仕上げを良くしてある」

「ご苦労!」

容姿は元に戻してもらったが、振る舞いは元に戻すのが馬鹿らしくなったのと、マキへの敬意か、矢島風子としての振る舞いのままであるロスマン。そのギャップと、学ランを羽織り、学帽を被るバンカラファッションにより、精神的に落ち着きを取り戻している。一人称がワシになっているのもそのためだ。また、紫電改のマキ世界から持ち込んだキ44をそのまま実戦で使用。さらなるチューンナップを施させるなど、すっかり鍾馗使いだ。


「先生、カールスラントの連中が『何故、扶桑の機体を使うのか』とか陰口叩いてるけど?」

「言わせとけ。メッサーは頼みのスピードで追い抜かれたら、ただの迎撃戦闘機でしかないんじゃ。しかし、キ44は日本人の格闘戦至上主義がいい方向に作用したんじゃい。スピードはそこそこじゃけど、横方向の格闘戦ができるのは魅力じゃぞ?」

「ハ43にエンジン換装して、キ44-V相当にグレードアップしといた。これで史実の疾風の水準に上がったはずだよ」

「おっしゃ、これでF8F何するものぞじゃい」

ロスマンは元々、一撃離脱戦法の先駆者の一人で知られたが、マキの世界で矢島風子としての人生を追体験し、巴戦の技能を身につけた事もあり、隙がなくなった。更に元々、ファインチューンがなされていた鍾馗を、扶桑で存在する最終型『キ44-V』相当に強化し、さらなるチューンナップを施したため、性能水準はF8Fをも超え、シーフューリーに匹敵する。そのため、鍾馗が成し得る性能向上の限界に達するほどの徹底的なチューンナップは、扶桑での疾風の存在意義を半減させてしまう効果をもたらした。(扶桑での疾風は、ウィッチ支援戦闘機としての任務を想定したので、機体に搭載する弾薬が少ないという短所があった上、相対する敵機はF4Fを想定していた。その事を欠陥とされたのは心外であるとし、燃料タンクの一部を機関砲の弾薬庫に換えられるように設計したと述べている。しかし、弾薬の携行数が多めにされたのと、翼の再設計が結局は必要になるという誤算によるタイムロスの内に、根本的に次世代機の旭光と栄光の生産が軌道に乗ってしまう)また、キ44-Vへの現地改修キットの開発に設計陣の労力が割かれた事、誉エンジンからハ43へ換装した場合の強度計算などの遅延の不幸もあった。

「でもさ、ここまでやっちゃうと、疾風作る必要ないよね?」

「基礎設計が古いから、疾風は作るべきだったんじゃが、問題はエンジンの選び方、想定任務の練り込みの甘さじゃよ。誉なんぞ気難しいエンジンを学徒動員に造らせたから、粗悪なものが続出したんじゃ。だから、日本はハ43に強く拘ったんじゃ。それと整備教育への認識の甘さじゃな。陸海軍の複数の航空参謀が心療内科にかかったのも、そこを鬼の首を取ったように罵られたからじゃ」

ロスマンはキ44使いになった影響か、扶桑が抱える問題を指摘する。日本人の『大日本帝国との同一視に起因する罵詈雑言』、『扶桑皇国の参謀たちが苛まれた、自分達の面子で国を破滅させたという事実の残酷さ、後世の怪獣映画で『大臣、先の戦争では旧日本軍の希望的観測、机上の空論、こうあってほしいという発想などにしがみついたために、国民に300万人以上の犠牲者が出ています。根拠のない楽観は禁物です』というセリフが使われたという事実に打ちのめされた参謀級の佐官たちがよってかかって心療内科にかかり、作戦で参謀任務を務められる者がGウィッチしかいなくなるという、前代未聞の事態が引き起こされ、事実、Gウィッチ達は作戦全体での幕僚の資格を持つ。

「おかげでウチらは、最低でも参謀と任務の二足の草鞋を履く羽目になりおった。この世界のウィッチは戦前期ならともかく、近頃はまともな教育を受けておらんからのぉ」

「ああ、坂本少佐も愚痴ってた。だから、日本に付け込まれるのだ、とか」

「当たり前じゃ。戦前期は三年の教育期間できっちり教育され、エクスになった時のことも考えていた。じゃが、近頃は『補充さえできれば良い』と言わんばかりの粗製乱造じゃ。ベトナム帰還兵みたいな事になりおるよ、絶対に」

ロスマンも坂本も懸念したのが、ウィッチの粗製乱造による軍退役後の行き場である。扶桑は海援隊への天下りが公然と認められていたが、日本によって、それが『原則的に、退役直後の転職は認めない』方向に向かった事もあり、軍人生活しかできないウィッチは現役継続によるRウィッチ化を選ぶため、数年の間はRウィッチが量産されていくのある。現役引退後、軍人生活しか知らない者に、今更、普通の女性になれというのも無理がある。引退後の再就職問題は治安の悪化を招くため、坂本の『ウィッチを辞めるが、軍人としては現役継続』は現実的かつ、立場をわきまえた判断とされる。(しかし、自衛隊も転職が多い事実、警察関係者の天下りがある事実と同じだと猛批判されたため、結局、撤回されるに至るが)

「当面は現役継続希望者を募集だってさ。世代交代の時期に戦争がおっ被る上、あたしらにおんぶに抱っこは、部内での批判があるだろうしね」

「当然じゃ。現役世代には、レイブンズのような『出戻り』に頼らずともやれるっていう自負がある。しかし、昨今の技術革新で、その自負は成り立たなくなった。扶桑のクーデターも多分、そんな心境で起きるんじゃろ」

「これからどうなるんだろうね、先生」

「わからんさ。じゃが、ウチらはウチらなりに道を見つけるしかないんじゃ。たとえ、世界の摂理に反するってレッテル張りをされようとも、な」

「大人ののび太みたいな一匹狼も覚悟しないと駄目?」

「そのくらいの気持ちでいないと、若い連中からの嫉妬や除け者扱いには耐えられないってことじゃ、エーリカ」

ロスマンの言う通り、黒江達は仮面ライダーの背中を追いかけているが、身近にいる大人ののび太も見習うべきだと示唆する。黒江達は身近である故に気づいていないが、ロスマンは大人ののび太の精神力を高く評価している。レイブンズは身近にいる事、仮面ライダーという英雄に並び立てる事が目標になっているため、のび太の精神的強さに気づいていない節がある。その点では、ロスマンは的確な人物評をのび太に持っていたと言える。そこはのび太を強く慕う調にも共通している。


「さて、敵の陣容はわかったのけぇ?」

「うん。敵は先行生産したベアを各空母に少数配備、初代ファントムもいた。後はF6FやF4U、F4Fが海、陸はマスタングとサンダーボルト、ライトニング、あとシューティングスター」

「妥当じゃな。通常兵器の配備を邪魔するウィッチ閥がいるのに、よくもまぁ、そこまでにしたもんじゃ。相当数を持ち込んどるはずだから、当分は戦いが続くじゃろ」

「今までに、確実に300は落としたはずなんだけどなぁ」

「最悪、万単位落とさんと時間稼ぎにもならんじゃろ。百機単位じゃな。生産力的に、二、三日で補充されてしまうわい」

「うへぇ。目が回る」

「天文学的単位の宇宙怪獣や百万以上のゼントラーディ軍を相手取るよりはマシじゃろ」

実際、300というのは、空母三隻分の航空機数だが、陸上機や爆撃機/雷撃機も含めているので、実際はそれほどのダメージにもなっていない。特にこの時代は『数の暴力』が成立した最後の時代であるため、300機は大した数ではないのだ。

「確かに」

「陸の飛行機積んどる輸送空母を捕捉して撃沈が良いんじゃろうが、あいにく、そこまで兵力を回せんしのぉ」

航空輸送艦の役目を負う空母を撃沈する事は戦略的選択肢にあったが、それを可能にする航空兵力の余裕はない上、既存潜水艦に担わすのも酷であるため、敢えて、それがされていなかった。実際、北リベリオンから発進してくる輸送艦隊につく護衛はブリタニアでも躊躇するレベルの強力さであるので、扶桑も悩んでいる。

「マジンカイザーやマジンエンペラーGに始末してもらう手もあるとは思うじゃろ?反則的だが、そう長く戦闘してると、日本側からクレームがつく。ゴッドサンダーあたりで始末してもらおう」

日本は『戦闘は数週間で片がつく』と認識しているが、連合軍は戦闘は数ヶ月に及ぶと認識している。これは膨大な物量の国家の正規軍隊同士がぶつかりあう戦は長引くというのが、この時代の認識であり、スーパーロボットの大技で一気に始末してもらい、長期戦を嫌がる日本を黙らせる事を、公然とロスマンが言うあたり、スーパーロボットで軍単位を一気に始末する選択肢は元からあるらしい。しかし、スーパーロボットで一気に艦隊単位の敵を倒すことは『虐殺』と取られる危険があるため、控えられていたことである。そこに警報が鳴り響く。

『敵航空機、接近。爆撃機40、戦闘機70の連合編成。各機は迎撃態勢に入れ。繰り返す……』

『さーて、行くとするかの』

ロスマンは学ランを着た上で、鍾馗のエンジンをかけ、暖気運転を行う。ハルトマンも咄嗟に川内から許可をもらい、鍾馗に乗り込む。

『大丈夫かいな、エーリカ」

『なーに、日本機の扱いは前史の頃に覚えておいたよ』

『よし、ちょうど50Fが上がる。それについていく!』

『了解!』

すっかりキャラが変わったエディータ・ロスマン。それを普通に受け入れているエーリカ。すっかり日本機の操縦に慣れている二人だが、鍾馗は割合、ドイツ機に近い特性があるため、横方向の機動ができるという点では、むしろメッサーシュミットより優秀である。これは鍾馗が改良の過程で得た能力であり、糸川博士は改良の方向性が従来の格闘戦術寄りにされたのには不満だったものの、ジェットの理論の確立で容認した。(最も、ジェットも格闘性能が物を言う時代が来ることの現実化には、大きく落胆したという)元来は一撃離脱戦法第一で設計された鍾馗を格闘戦に用いる事は想定外だが、使ってみたら欧米機よりはよほど旋回性能が高い事がわかったので、Gウィッチは全員が格闘戦と一撃離脱戦法を両立させている。これはジェットにおいても変わないため、糸川博士やウルスラ・ハルトマンなどの『ジェットは個人技能に依存しない』と唱えていた技術者達は史実ベトナム戦争と朝鮮戦争での空中戦の情報で責め立てられ、ジェット戦闘機の『完成形』である第4世代ジェット戦闘機に『いきなり到達点を見させられても、反応に困る』と困惑している。これは『ジェットは格闘戦に使わない機体』と公言していたウルスラ・ハルトマンに強い精神的ショックを与え、それで覚醒に至るほどであったという。




――一方、空では、黒田が二代目斬艦刀使いと謳われた実力を存分に発揮していた。506で戦闘狂と評判だった闘争心も健在であった。それは同じ刀使いの箒も唸るほどだった――

『計都羅喉剣・五・黄・殺!!』

計都羅喉剣・五黄殺。真っ向から斬りかかった後跳び上がって斬り上げる剣技で、Vの字斬りに近い攻撃である。黒田がアフリカ在籍中から、『黒江綾香の系譜を継ぐ者』と謳われた理由はここにある。他世界では槍術主体だが、この世界においては、黒江の腹心であるが故に、一流の剣客として鳴らし、アルトリアも認める強さである。

「邦佳さん、遊ばないでください」

「こういう技は見栄えも良いから、広報も喜ぶんだ。先輩も雲耀は魅せ技になったとか言ってるしね」

邦佳は芳佳と同年代ながら、軍歴が長い。そのため、今回の歴史ではクロウズよりも先輩である。この時代においては最古参級のウィッチなため、孝美や坂本などもメンコの関係でこき使える関係である。扶桑軍の『年功章の数がモノを言う』社会では、それは大きな強みである。第4世代ISを使う箒以上に鬼気迫る戦闘を見せるあたり、黒江の影響が大きい。

『計都羅喉剣・暗・剣・殺!!』

邦佳の剣技は遊びが半分入っているが、身のこなしは本物であり、ストライカーユニットを用いている上で、近接格闘に強いのが扶桑の古参ウィッチの特徴だが、皮肉にも、この特徴がウィッチ同士の空戦において、扶桑の剣技保有者が迅速に事態へ対応可能にした理由である。つまり文字通りの格闘戦に対応不能な空戦ウィッチが各国問わず多い事も、それまで持て囃されてきた空戦ウィッチの立場を揺るがす事態になり、扶桑はそれまで一部の好事的なウィッチが自主的に持っていた軍刀の所持を全ウィッチに課すことを決定する。これは銃剣での近接格闘が増えた時勢である事、相手がナイフを用いてくる事への対抗策の一環でもある。

「さて、連中はこれで黙らせた。後は、先輩達のところに行くまでに、もうちょいお駄賃もらっておこう」

「まだ落とすんですか?」

「飛行機は最低で100くらい落とさないと、戦況に殆ど影響無いしな、ウィッチは10も落とせば影響出るんだけどね」

「どうしてですか?」

「ウィッチは大人数で編成できる事が少なくて、統合戦闘戦闘団編成でようやく14人が定数だ。これも理想で、実際は10人いれば良好とされていたんだよね。だから、10人も殺せば、今後5年以上に及ぶ影響が出る」

実際、黒江達、赤松、カールスラントのエースの501への追加には反対論があったが、戦況の悪化で実行されたという裏事情がある。そのため、ウィッチの存在感の誇示が真501の成立目的であった。つまり、レイブンズの威光をこの期に及んで再利用したので、扶桑が大揺れとなるのだ。レイブンズの威光を知る世代の古参の恭順、芳佳の台頭という陽の影響もあるにはあったが、世代交代が進んだ故の反発のほうが凄く、これが海軍ウィッチ中心の『事件後』の粛清人事への伏線になる。開戦劈頭のアリューシャン諸島への砲爆撃による左遷組ウィッチの死亡が重なった事もあり、海軍航空ウィッチ隊は形骸化し、空軍ウィッチの隠れ蓑としての組織という扱いに半ば堕ちた状態が戦時中、当たり前となるが、自業自得の感が否めず、同情は少なかった。むしろパイロット育成が急務とされ、そちらが優先されたことや、ウィッチの覚醒が休眠期に入ってしまったほうが重大であった。扶桑は質の良いウィッチの補充が困難となったばかりか、日本の粛清人事の徹底と関係者の投獄で空母機動部隊の独立した洋上作戦遂行能力すら失う。そのため、扶桑軍全体が一騎当千の実力者を多く有する空軍への軍事的依存度が高まることとなった。航空自衛隊の宇宙部隊を祖にする地球連邦宇宙軍の大規模援助もあり、扶桑空軍は実質的に地球連邦宇宙軍出張所の様相を呈し、宇宙戦艦すら運用しだす(この時はラー・カイラムのみだが、次第に増加)ので、扶桑空軍は扶桑海軍の役目を一部吸収して、実質的には借用とは言え、ティターンズに対抗可能な宇宙艦隊を、一つの部隊の管理下に置くことになるのだ。(同時に、編成上では、64は『特別編成戦隊』と位置づけられる事になり、戦時中を通して、世界最大規模かつ、最強の部隊として君臨する)

「ウィッチは基本的に少人数でしか部隊が組めない上、せっかく育っても、7年くらいで世代交代が起きて、練度が事実上リセットされる。だから、ウィッチ組織は早々に練度が維持できなくなるのさ。戦時だから容認されてるだけで」

黒田はウィッチの抱えていた根本的問題に言及した。どんなに若くから働いても、『10年』で退役する。儚い高嶺の花とポジティブに見る事は戦時だから容認されている事で、平時の財政に戻ったら、絶対に容認されない考え。教育を施して、『士官』にしても扱いにくいことから、引退後は冷や飯食いにされるケースが多い。これはレイブンズの境遇で証明されている。そのため、智子が引退後の不遇に不満を爆発させ、結果的に黒江を利用して、現役時の名声を保とうと画策した事には、Gウィッチ内で一定の理解はなされ、智子は修正のレベルで処罰が済んだ。このように、平時では財務に間違いなく理解されない兵種がウィッチの航空科なのだ。(智子は事変時のアイドル扱いからのウィッチとしての後半生の飼い殺しを恨んでおり、たとえ転生しても、その事を愚痴るほどである)

「陸はまだ良いが、空は一人前にするのに数年の時間とそれだけの労力がいる。だから、徒弟制が生きながらえていたのさ。近代化しようとしても、ウィッチには時間のタイムリミットがあるからね」

「それで今度に起きる?」

「ああ。その時限の摂理を打ち破ったあたしらを『異物』として排除しようとしたら、国家が先手を打って、直々にそいつらを不満分子として粛清する。世の中はそういうもんさ」

「世知辛いですね」

「要するに、既得権益に甘んじると、しっぺ返しがくるってことさ。先輩達はウィッチとしての盛りが終わった年齢になった途端に冷遇された記憶があるから、広報にゃめちゃ冷たい。一番マシなのがケイさんの時点でねぇ」

「あー…」

智子はその記憶があるからか、広報にはレイブンズで一番に冷淡である。『一度目の引退の時には、目もくれなかったくせに、今更協力してくれ?ざけんじゃないわよ』というのが広報への決まり文句になるほどだ。広報も担当者が交代しているのと、ウィッチ部署維持のため、智子のビジュアルは絵になるという実益から、智子に頼んでいるが、智子はこの調子である。黒江も日本での体験から、マスメディア嫌いを公言しだしたので、日本に抗議の声明を出すほど慌てた。救いの主は事変時にあまり取り上げず、元在籍経験者でもある圭子であった。圭子は古巣でもあるため、広報部に協力的であり、レイブンズのピンナップの多くは圭子が撮ったりした写真を使っている。

「ケイさんが在籍経験者で良かったとか、広報部は胸を撫で下ろしてるよ。最も、広報部の時期は猫かぶりしてたけど」

「あの性格は向かないから…」

「だから、マルセイユがなんだかんだで一番にブルってたよ?あの性格になって、声もドス効かせてる低めのトーンになってるしな」

圭子は記憶の封印時はミリアリア・ハウを想起させる、高めのキーの声だが、記憶の復活後は織斑千冬とほぼ同質の低めのキーで、ヤサグレ属性である。マルセイユは覚醒した後も、圭子のヤサグレ全開の声と粗野な態度にビビっていたと、黒田は箒に漏らす。(黒江も転生前の低めのトーンから、現在の調と同一の高いトーンの声に変わっているが、これはあーやの存在の名残りである。声が高くなった事で、バイトに幅が出たと、ポジティブに受け入れ、可愛い声と性格の荒っぽさのギャップで、自衛隊で大人気であったりする。クールビューティーっぽい見かけと、可愛いアニメ声のギャップも人気の理由である。黒江の元々の声は『軍隊の訓練で喉潰したんだ』とのことで、現在の声は小学生当時の声に戻ったような感覚だとコメントしていて、調との声質の酷似性は偶然らしい)

「先輩は逆になったけど、アニメ声だから迫力出ないとか言って、お前の声質を使うことも多いってさ」

「えー!?」

「調の声は可愛すぎるからね。智子先輩も同志大尉の声やノンナの声使うとかいうし」

「そう言えば、普段の声は吹雪っぽい声ですね」

智子も声質を変えていることが多いが、それは声が可愛いという、軍人としての難点をどうにかするためで、智子と黒江は職務の時は声質を変えている事が多い。ただし、黒江は素が出せる戦場などでは変えていないので、素の自分が出せる場では声質を変えないのだろう。



――こうして、戦いつつも、ウィッチに待ち受ける運命を気にかける黒田。これからは既得権益がなし崩し的に崩壊し、未来技術で科学の進歩が促される時代である。実際、連携の都合で、早くも軍事ネットワークの時代を向かえており、その関係で、レシプロ機の製造がはばかられているが、世代の進んだジェット機などは高額であるので、レシプロ戦闘機は一定数が戦時中は使われ続ける。未来兵器のうち、20世紀後半から21世紀水準の技術での航空兵器は、第二次世界大戦級の消耗戦に使うには向いていない面があるからだ――


「あと、シャーリーのISだが、元が弐式相当の姿だったはずだから、もう二段階も進化してないか」

「ですね。今の姿は『紅蓮聖天八極式』をISに落とし込んだ姿ですしね」

シャーリーのISはデザインモチーフは『紅蓮』というとあるロボットアニメの機体だが、ロールアウト時はそのロボットの初期状態の姿に近かったが、ISの自己進化で改良され、遂には『聖天八極式』相当の姿にたどり着いた事が語られた。そのため、ISの右腕は当初の『徹甲砲撃右腕部』から『輻射推進型自在可動有線式右腕部』に進化しており、その威力は並大抵の機動兵器は一撃で破壊できるほどであり、自衛隊からは『輻射波動のねーちん』と渾名されている。シャーリーも元ネタを多分に意識しているのか、『弾けろぉ!!』などの台詞で極める事が多い。(それでいて、歌う時は美雲・ギンヌメールを意識しているという、キャラのギャップがあり、後に転移してくる自分自身のBを大いに困惑させる事になる)

「やれやれ、あいつ、最近、ワルキューレを聞いてるかと思えば、コードギ○スの曲を聞きながら、ISの特訓してたから何かと思ったら、『弾けろぉ!!』を言いたかったのか」

「良いんですか、それ」

「お前がアガートラーム使うようなもんだろ?」

「そ、そうですかね…」

箒も図星なところがあるので、強く言えないようだった。



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