外伝その186『大空中戦8』


――扶桑皇国空軍の歴史は、その前身である『陸軍第64戦隊』から始まる。扶桑海事変後に編成が凍結されていた同隊は、海軍第343航空隊を軸に再編された。そのことに反発し、同隊の複数の士官が去っていったが、その代わりに、往時を支えた高級将校や特務士官達が続々と同隊に加わり、ダイ・アナザー・デイ当時には、既に『ウォーモンガーの集まり』とまで言われるほどの『戦闘者の巣窟』と化していた。平均年齢は23.5歳。往時の事変経験者が隊の幹部職を独占している以上、平均年齢の爆上げは仕方がないが、日本からすれば『若造の集まり』と揶揄される程度の年齢である。そのためもあり、源田の思惑に反し、軍に残っていたA級ウィッチの八割が集められた。ダイ・アナザー・デイで駆けつけた面々はそのまま編入措置が取られ、正式に過去のポジションへ戻った。ウィッチは科学的には『10代の第二次性徴期の成長エネルギーが根源であるが、極稀に20代になっても力を維持できる』という推論がなされると、フェミニストやジェンダーフリーの観点から攻撃された。ウィッチは女性の成長エネルギーの暴走が体内にあるリンカーコアを一時的に活性化させる事で得れる力。その事も女性議員や市民団体の攻撃対象になったので、64Fは大人が求められた。これは精神的成熟の意味もある。また、ウィッチは古来、その限界ダメージを超えると身体の老化現象が起きなくなる例が確認されていた。Gウィッチはそれをも超える特殊事例と言えるが、精神的成熟は軍に重宝される理由となった。つまり、子供ではないという一般向けの言い訳だ。暴走で魔力を搾り出し切る成長の必要なエネルギーまで搾り出してしまう、だから体格や見た目が成長しなくなるというのが推論で述べられていたが、黒江達は転生と、この現象が転生分の蓄積ダメージで起こったのかもしれない――





―これはあくまで、時空管理局からの推論であるが、ウィッチの科学的解析の一端ではある。実際、転生体の黒江達の体質は既存ウィッチのどれにも当てはめられないからである。転生に必要なエネルギーをそこからひねり出したために、肉体がある一定で成長した段階で不老になったのではないか。これが1945年当時で推測される、Gウィッチへの考察である。Gウィッチは覚醒した年齢より概ね若めの外見年齢になるが、その時のメンタルの反映だろうともされる。実際、黒江は元の外見では、外見年齢が15歳で固定されたり、圭子は記憶の封印が解けた段階から、二歳から三歳は若々しい外見年齢となった。そのため、1945年当時の現役世代からの理解は得にくい土壌があった。若作りとされたからだ。ウィッチ部隊では、19歳を超えると肩たたきされる風土があったため、そこが日本の人事予算削減の口実にされやすく、クーデター直前のこの1945年夏の給金は全ウィッチが引き下げられている(黒江は自衛隊員としての給金と統合したために高給であるが)。これは日本財務官僚が警察系防衛官僚と組んで仕組んだ事で、若者が高い地位にいることが気に食わない高年齢の官僚達の企みであり、テストを佐官に適応させたのは表向き『手違い』としたが、実際は予定調和であった。(Gウィッチは持ち前の知識で合格したが、促成教育世代の者は不合格になる割合も意外に高く、源田を悩ませた)そのため、黒江をして『背広組はウィッチを自分達の理解の外だからって、露骨に窓際族にしたがるぜ』と嘆くレベルだ。




――2019年――

防衛省では、黒江のシンパである新・事務次官が前任者の尻ぬぐいを行う羽目になっていた。彼は黒江が統幕入りできなくなった理由の内規を『日本連邦により、自衛隊・扶桑軍の最高意思決定機関が統合幕僚会議になったので、内規の意味は無くなった』という事で撤廃させたのが最初の仕事だった。彼は若き日に黒江に見出され、それ以降に出世をしていった。防衛官僚内での派閥『黒江学校』の塾生であり、その古参に当たる。彼は日本連邦結成後に安倍シンゾーに見出され、防衛事務次官に抜擢されたが、黒江と出会った99年当時は若手であったが、黒江にその才能を見出され、それをきっかけに、当時としては異例の若さで出世を重ね、20年後に事務次官へ登りつめた。黒江は長期的計画で、日本連邦に有益となるよう、防衛官僚にシンパを得るように動いていたが、それが防大に潜り込んでほぼ20年で実を結んだのだ。そのため、黒江は彼の事務次官就任を以て、防衛省に確かな組織細胞を育て上げたことになる。

「ああ、空将。内規は撤廃させました。これで統括官の任を終えても、空幕か統幕入りできますよ」

「今更だが、防衛省の一部は日本連邦軍の結成の暁には、指揮幕僚課程を終えてる自衛官を参謀として送り込む計画だったからな。それをお前が実現させるか」

電話で黒江に報告する事務次官。彼は自分の先輩が黒江の空幕就任を目論んでいた派閥に属しており、彼もその流れを汲む。そのため、黒江が統括官の任を終えた後に航空幕僚長になれるように地ならしをしたのだろう。

「革新政党がダメにしてから、年月も経ちましたからな。それに今は日本連邦の時代です。貴方が空幕になれない理由はない」

「やれやれ。扶桑軍出身者を無下に扱えなくなってから、お前を事務次官にさせる。本当、日本は出る杭は打たれるんだから」

鳩山ユキヲの総理在任中、黒江達は冷遇され始めた。統幕入りが確実視されていた黒江だが、ブルーインパルスで事実上誤魔化された経緯がある。パイロットとしては確かに栄転ではあるものの、指揮幕僚課程を若い内に修めた自衛官としては、もったいない人事と評されたものだ。黒江は航空畑であるので、ブルーインパルスへの転属は度々打診があったので引き受けたのだが、防衛官僚の一部派閥は黒江の卓越した指揮能力を参謀などで活かしたかった思惑があり、内規が作られていたことを悔しがった。実際、ブルーインパルスの任期を終えた後の共同演習では、F-22をF-15でねじ伏せる偉業を達成している(これが皮肉にも、F-22の生産中止の一因であったりする)ほどの指揮能力を見せ、米軍にも『ミスティ』の渾名は轟いている。当時の米空軍はパニックになり、派遣されていた空自の部隊指揮官に『教導部隊からエースパイロットを引き抜くな』と真顔で忠告している。(相方が赤松であった幸運もあるが、二人はレーダーよりも早く敵機を視認できるため、並のパイロットが乗るF-22より強い)その際の指揮官の返答は『ウチ、たまたま当番だった普通のアラーム部隊なんですよ』というもので、米軍は『HAHAHA!あんな強いパイロットが通常配置の部隊にいるかね』と本気にしなかった。空自は元々、平均練度の高さには定評はあるものの、F-15でF-22を撃墜できるほどのパイロットがいるとは米軍も考えてはいなかった。黒江はこの演習で米軍パイロットのトップに『なんで、推力偏向ノズルがあるラプターを型落ちのイーグルで落とせたのか』と問われたが、『ラプターの性能は知ってたし、未来の機種と違って、推力偏向で及ぼせる影響も小さいから、やりようはある』と返答したという。

「2011年の頃の演習で防衛大臣が腰抜かしたのは痛快でしたよ」

「リミッター解除してるVF-19乗り回してんだ。ラプターの動きくらい軽いもんだ」

「確か、その頃は一尉でしたね」

「トントン拍子で出世したからな、その頃。演習までは一尉だった気がする」

黒江は普段遣いがエクスカリバーであるため、ラプターの動きは軽く見切れる。そのアドバンテージが演習では上手く作用したわけだ。

「相方もまっつぁんだったし、あれは運が良かったよ」

「空自に入りたての私の息子が乗ってみたいといってます、バルキリー」

「VF-1で我慢しろと言っとけ。ブレイザーだって、慣れが必要だしな」

地球連邦軍もVF-19の搭乗資格はその機動性の高さ故に、ブレイザーバルキリーであっても墜落事故は歴代機種では高めの比率で起こるので、最近は厳格になっている。特にリミッター解除のエクスカリバーはエースパイロットの特権である事から、黒江はポストストールマニューバーを普段から使っている。それを逆手により、赤松と共に低速に誘い出し、低空からの加速を使い、演習で勝利している。22の機体特性を利用したのだ。高度な戦術であり、この演習を視察していた当時の米国大統領が『F-22使えないから中止』を決意する理由の一つだったともされる。F-22は冷戦末期の技術で設計されていたため、F-35より魅力に乏しいというのも理由だったが、ブッシュ政権から進められる『リ・スタート・バトルシップ計画の費用をひねり出すため』ではないかとも噂された。当時、扶桑が持ち込んでいた戦艦『三河』(大和型五番艦。ダイ・アナザー・デイ中にドラえもんが『ノーリツチャッチャカ錠』を工員に飲ませ、能率を思いっきり引き上げて完成させ、2006年前後の日本に持ち込んだ。その上でハッスルネジも巻いて作業させたため、宇宙戦艦も真っ青の速度で完成)は日本連邦海軍の客寄せパンダ兼海軍力の象徴とされていた。元から改装後の大和型の図面で新造されたので、現用兵器が最初からついている姿だが、主砲や艦橋周りは往時のデザインが残っているので、映画撮影にも使用された。そのため、セットで撮影された『男たちの男たちの大和/YAMATO』よりも迫力がある撮影ができるようになったと、映画界からも歓迎されていた。また、共に撮影に供されたのが赤城の面影を残す『愛鷹』(元・ペーター・シュトラッサー。扶桑にUボートの静音設計などと引き換えに、復帰工事費の負担をカールスラントが行う形で返還された)であった。愛鷹は扶桑式艤装だった事や僚艦の輸送任務中の喪失などの不幸な経緯、Uボートを優先しだしたデーニッツの提言などの理由で結局、ノイエカールスラントで10年近く放置されていたため、バダンの同名艦の鹵獲により不要とされ、扶桑に結局は返還された。これに扶桑は激怒し、ノイエカールスラント海軍は返還に際しての復帰工事費を負担する事、潜水艦技術の無償提供などでどうにか宥め、莫大な違約金も支払った。そのため、ペーター・シュトラッサーの買上げ後に着艦テストに参加した経験を持つミーナは『結局返すんなら、買わなけりゃよかったじゃないか』と呆れ返ったという。デーニッツは『扶桑式艤装のあれより、ドイツ式艤装のほうが良いもーん』という理由で返還を決めたので、買上げ時に立ち会っていたエーリヒ・レーダーに怒られたとも言う。また、ゲーリングは『うちで抑えておけばよかったじゃん』とも言い、カールスラントでも愛鷹は扱いかねるお荷物だったのがわかる。そのため、扶桑に返還の打診があった時の艦政本部長『渋谷隆太郎』中将は『今更ァ!?』と素っ頓狂な声を出したとのこと。そのため、デーニッツはエーリヒ・レーダーにかなり絞られたものの、XXT型潜水艦の量産を強硬に推し進め、水上艦はバダンからの鹵獲で済ませる極端な方針を打ち出すに至る。最も、造船関係者からかなり抗議があったため、後に、新京条約の範囲での大型艦建造は認めたが。これは往時の大海艦隊の再建を目指したエーリヒ・レーダーと、国土的意味での限界や相手が相手故に潜水艦に傾倒したデーニッツの差であった。ノイエカールスラントの国土的に、大洋艦隊再建を放棄していたデーニッツは潜水艦の有用性を認めてもらえなかったうっぷんを晴らすためという目的もあるが、だいたいは建艦競争でリベリオンには勝てないとする現実的な思考も絡んでのことだった。その一環で返還された愛鷹だが、天城は既に第一線を退いており、赤城の戦没、設計の古さから、映画撮影に供する事で第二の人生を歩んだ。艦容は史実赤城と同じであるため、日米で『トラ・トラ・トラ』のリメイク企画が持ち上がり、2019年にクランクイン予定となっている。(往時の製作時に不可能とされた急降下爆撃が実機で可能というおまけつき)扶桑軍の協力で零式21型、99式艦爆、97式艦攻の実機が提供され、パイロットも扶桑人という豪華ぶりだ。往時の映画と違い、扶桑軍人が日本側の役で大量に出演し、山本五十六や山口多聞、南雲忠一も本人役で出るとアメリカ側に打診している。更にこれを聞きつけた自由リベリオンも乗り気で、ハルゼーなどは『俺は出るぞ』と公言したという。本人が本人役で出るというのはシュールではあるが、既に、日本の俳優達は往時の軍人仕草が出来ない世代に入れ替わっていたためと、俳優を使うよりもギャラが安い事情もあり、制作会社も了承した。そのため、沖縄戦までの五部作制作の超大作第一弾として『トラ・トラ・トラ』はリメイクされる。本人が演技指導とされた(一部の提督は本当に出演した)、扶桑軍で本当に使われた機体を駆り出す事、赤城の面影を持つ愛鷹での発艦シーン撮影、三河の大和としてのちら見せ、記念艦となった長門での撮影も売りの一つと宣伝された。特に、扶桑軍人が大量に端役で出演したために、妙に気合が入っており、撮影で語り草となった。愛鷹は陽炎型駆逐艦と共に艦隊行動するシーンが撮影されており、見学に訪れた元日本海軍関係者の感涙を呼んだという。これは自衛隊の護衛艦を航行させ、加工しようかという案が出された際に、扶桑海軍が『陽炎型を用意できる』と言ったので、退役したての数隻が駆り出された。そのため、制作会社の日本でのキャッチコピーは『世界よ、これが本当のトラ・トラ・トラだ』というものであった。実機を大量に飛ばし、ウィッチ世界から退役した実艦も駆り出して撮影したり、端役で出ている扶桑軍人達の帽振れなど、ミリタリーオタクが感涙に咽ぶ出来であった。元軍人達も『海軍が蘇ったようだ』と評するほど、気合の入れように関心したという。特に、空母着艦と発艦が往時そのままの映像に感動した元搭乗員も多い。また、改装前の妙高型が全艦出演しているので、利根型を出せばいいのにとぼやいた海軍関係者も多い。しかし、利根は撮影時にはヘリ搭載に改装中の身であるので、代役で妙高型が出たのだ。そこは残念がられた。

「統括官は今度の映画には?」

「ああ、陸軍がちょろっと出るシーンで陸軍飛行士役で出る。一〇〇式重爆も写すらしいから」

「そうですか。夏に公開だから、急いでますね」

「まあ、提督連中の仕事もあるから、早めなんだよ」

映画撮影はなんと、ダイ・アナザー・デイが長期に渡る事もあり、ウィッチ世界での戦いの真っ只中に行われていた。最前線が欧州であるが故の芸当だ。山口多聞など、空母機動部隊を実戦で指揮している合間に映画撮影に出ているハードスケジュールである。これはダイ・アナザー・デイの戦いが日本側の予想に反して、極大規模化しているためだ。


「最前線にいる割には呑気ですね」

「まー、こっちにはマジンカイザーや真ゲッターがいるんだぜ?負けるかよ」

黒江は完全にリラックスムードだが、マジンカイザーや真ゲッターロボがいるので、珍しく楽観している。

「慢心は…意味ないですね」

「王ですら『慢心せずして〜』なんて言ってるんだ、神の身で慢心するなと言われてもな」

珍しく慢心してる様子だった。マジンカイザーと真ゲッターロボの無敵ぶりのおかげだろう。

「慢心とは言ってるが、打てる手は打ってあるからトラブルは全てカウンター出来ると踏んでのポーズだよ」


「マジンガーZいます?」

「もっと強いマジンカイザーに甲児乗ってるから出番無し。ただ、ゴッドスクランダーはゴッドで使ったけどな」

「それは残念」

「二号機の調整に時間かかってるし、ZじゃZEROに勝てないからな」

マジンガーZから派生した存在であるマジンガーZEROはマジンガーZ自身には因果律兵器の存在と、自身がZである故に負けない。それを知っている甲児はゴッドのバックアップも兼ねて、マジンカイザーの強化改造を弓教授の無関心に足を引っ張られつつも、実行した。カイザーパイルダーもマシンパイルダーの変質した個体、ジェットパイルダーの変質した個体の二つを用意し、マジンカイザーの胸の金の装飾を取っ払うなど大がかりな改造を施した。その際にゲッター線を照射しており、自己進化も促し、カイザースクランダーの内部収納化など改良を施した。ZEROの因果律兵器の範疇から外すためだが、弓教授は当初、この改造に関心を示さなかった。カイザーの基本性能が高すぎた故だ。だが、甲児とライオネル(ゼウスが科学者の姿で現れていた際の名)がZEROにGカイザーが敗れるどこかの世界の映像を垣間見せた事から、本腰を入れた。弓教授のテスト重視の姿勢が災いし、肝心のZERO討伐には間に合わなかったので、甲児は愚痴っているが。

「弓博士、実物は意外に堅実だぞ?マジンカイザーの改造決めたら、テストの連続だし」

弓教授は政界進出を周囲に勧められるほど、意外に石橋を叩いて渡るタイプで、ひらめき型の兜剣造とは違うタイプの科学者だ。師がファンキーだった反動だろうが、甲児としてはゴッドの予備機として、テスト未了でもカイザーを使いたかったが、過去の教訓か、テスト重視の姿勢を見せる弓教授に押し切られ、ゴッド+ゴッドスクランダーの手でどうにか押し切ったが、綱渡りをさせられたとぶーたれている。その分、マジンカイザーで暴れている面はある。

「彼、確か政界に出るんでは?」

「地球連邦・日本州の州知事に立候補するそうな。それくらい堅実だから、カイザーの輸送が肝心な場面に遅れて、甲児がぶーたれた」

「私も事務次官でなければ拝見したかったですよ、ダブルマジンガーの勇姿」

「グレンダイザー来てるし、トリプルだぞ」

「あれ、マジンガーですか?」

「シリーズ的意味ではな」

「マジンカイザーとマジンエンペラーGとじゃ見劣りしません?」

「グレートマジンガーよりは馬力あるから、大丈夫だ」

マジンカイザーとマジンエンペラーGの就役後において、グレンダイザーは相対的に見劣りすると言われるようになった。光子力の力を最大限引き出し、反陽子とゲッター線の補助で出力上限がないエンペラー、シンクロシステムで無限の出力を出せるカイザーに比して、恒星のエネルギーである光量子は見劣りするとされるからだ。だが、スペック上の180万馬力はグレートマジンガーの90万馬力よりは圧倒的に強力である。実際、そのハイパワーは敵には脅威である。甲児も光量子のほうが制御に成功さえすれば、安全性が反陽子に比して高いので、ゴッドの動力源に当初は光量子を推していたこともある。地球の技術ではまだ、光量子炉の製造には至っていない。トリプルスペイザー動力源はフリード星の技術で制御した代物だ。三十世紀には製造に成功してはいるものの、自前の製造に23世紀からは相当に長い歳月を必要にした表れである。これはフリード星の高い技術力の証明である。

「グレンダイザーは光量子だから、波動エネルギーよりエネルギーの制御が難しいんだよな。あれ、量子ワープもできるし、ある意味じゃ凄いぞ」

「そう言えば」

「21世紀は愚か、OTMやイスカンダルのテクノロジー入った後の時代でも、自前の製造は出来ねぇ動力なんだよな、あれ」

グレンダイザーの技術の根本は地球連邦の水準より何歩も先んじている。それは宇宙科学研究所も知っている。そのため、デューク・フリードが齎した理論でトリプルスペイザーの動力源を作っていたことは有名だ。

「さて、そっちの後始末は頼む。こっちも敵の始末をせりゃならん」

「ご武運を」

「ありがとうな」

電話を切ると、黒江は気と小宇宙を滾らせる。機械獣とスーパーロボの戦闘に乗じ、怪人軍団の主力たる、デルザー軍団そのものが攻めかかってきたからだ。

「おいおい!なんだよ、あの昔の特撮ものに出てきそうな見てくれの連中は!?」

「見かけで判断しない。あいつらは伝説上の不死の生物の一族が更に強化改造された、組織きっての精鋭で、神の使徒そのものだよ」

「まさかテメェらが本腰を入れて来るたぁな。どーいう風の吹き回しだ?」

驚くクリスを諌めるイリヤ、啖呵を切るストロンガー。その啖呵に応えるマシーン大元帥。

「ストロンガーよ。いよいよ、前回の借りを返す時がやってきたという事だ」

デルザー軍団はいずれも歴代仮面ライダーと対等に戦える実力者揃い。それが軍団の先頭に立つ事は珍しい。

「デルザー軍団が本腰を入れてくれるってのは光栄ね。なら、雑魚には道を開けてもらおうかしら。調!」

「はいっ!ちょっと取り回ししにくいけどっ!」

智子のアイコンタクトで、調は休憩時間に箒から届けられたバスターランチャーを構える。長物であるため、クリスが驚く。

「おい!長物なら、あたしにやらせろッ!テメェは長物の経験が…」

「こいつは先輩には無理ですッ!」

「どういうことだよ!?」

「このバスターランチャーを起動させるには、相当のエネルギーがいるんです!先輩の生命力じゃ、イチイバルの全エネルギーをつぎ込んでも、一発も撃てません!」

クリスはイチイの弓を媒介にしたシンフォギアを持つので、本来であれば向いているが、バスターランチャーのダウンサイジング版は強力なエネルギーを必要とするので、イチイバルの全エネルギーを使ってもドライブ出来ない。調は小宇宙+気で条件をクリアしているので、フルチャージで撃てるのだ。

「うっ!?」

クリスはその瞬間、目が点になった。調の周囲に小宇宙と気の複合エネルギーによる可視化されたオーラが出現する。同時に周囲を圧する圧力がクリスにかかり、シンフォギアを纏っているのに関わず、その圧力に圧され、ズズズッと押し出される。

「何だよッ!これは!?ばーちゃんが前に見せたあれと同じじゃ…!」

バスターランチャーの砲口にエネルギーが集束し、それが最大限まで高まる瞬間にレバーをコッキングし、最大パワーで発砲する。

『バスターランチャー、エネルギーイン!!いっけぇええッ!』

着弾地点周辺の空間が歪んでしまうこともあるとされるバスターランチャー。その反動は小宇宙と気で身体を強化した調でやっと発砲の反動を制御できるにすぎないほどの代物である。発砲時の圧力は『100kN』。戦闘機のエンジンの推進力に匹敵し、あのオートデリンガーとギガストリーマーをも超越する。クリスではシンフォギアでの身体機能強化でも耐えられない数値であり、調も一発で疲労する代物であるが、とにかく威力は保証付きだ。




――黄色い閃光が奔り、怪人軍団もこれには怯む。調の周囲をよく見てみると、小宇宙の黄金のオーラと気のオーラが複合して迸っており、聖闘士として鍛えた者が更に気を制御できるようになると、双方の力を複合できるのだ――

「よし、デルザー軍団が怯んだ!皆、突撃だ!」

『おう!!」

この機を逃さずに突撃する一同。調はバスターランチャーを量子化(本来はIS用なので、機能がある)して仕舞うと、ショルダースライサーを召喚して構え、突撃に随行する。

「お、おいッ!あんなの撃った後で、剣で戦うつもりか!?」

「鍛えてますから」

「なんだよ、そのバトル漫画みてぇな回答!」

「先輩は後ろで支援頼みます!」

「つ、って、あの馬鹿みてぇに突っ込むんじゃねー!」

しかし、調が発しているオーラは不思議と、こういうバトル漫画的雰囲気にピタリ来ている。よく見てみると、のび太や圭子はガン=カタやる気満々であるし、黒江、アルトリア、イリヤはエクスカリバーを構え、ガイちゃんはデュランダルと、聖剣のバーゲンセールであるなど、『怪人軍団、何するものぞ』という決戦を否応なしに感じさせている。巨大戦と等身大怪人との戦闘が同時に進行するのは、往時のバトルフィーバーを想起させる光景だ。クリスは諦めがついたのか、一同の支援を担当するのだった。



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