外伝その210『大空中戦17』


――智子の不満の根源は結局、他人に進退を決められた事であったため、レイブンズとなったことで進退が事実上、不可侵に変わったため(かつての元帥同様、生涯現役)に一応の解決を見た。このような処置が取られた背景には、ウィッチ兵科の有効性と費用対効果が日本側に疑問視され、18歳以上でなければ(クーデターを経て、16歳以上であれば、訓練校の部活動として実戦参加に緩和された)実戦参加はさせないという規則を作ろうとしたので、扶桑が混乱した事がある。この混乱は海軍精神注入棒やバッターなどのシゴキ文化にも及び、ちょうど義勇兵らの内、兵卒出身者が横暴な下士官を海軍精神注入棒で滅多打ちにし、尾てい骨骨折に至らしめ、再起不能〈腰が曲がった〉にしてしまった事件が起こった事を理由に海軍精神注入棒の一斉処分が指令された。その代りに支給されたのがスリッパである。自衛隊でもシゴキ文化そのものは否定されていないので、目に見えて凄惨な海軍精神注入棒などはマスメディアの反応が恐れられた事、文化の違いの不幸で、殴っただけで戦犯にされた者が多数いた事を鑑み、スリッパに置き換えられていく。(指導ムチなどもOKだが、外聞的に憚られたために少数派)。また、海保が海軍特務士官の扱いを問題にしてしまったので、軍令部高級参謀達は証人喚問される羽目にもなった。このシゴキ文化の事実上の捻じ曲げは扶桑軍人の反発を招いたが、日本側に『見せしめにウィッチであろうとも重い処分を科す』意見があったため、時代背景を鑑みての変化に留めたのだ。特務士官、予備員問題は海援隊も絡むため、結局、海援隊を第二海軍として国有化し、予備員を新たに定義し、特務士官の指揮序列を兵科将校と同等にすることで手打ちがなされた。これは海保長官が海援隊を批判した際にも言った問題で、海援隊にも混乱が生じた。この際に海援隊が『坂本龍馬の作った海援隊そのもの』であることが知れ渡り、海保は社会的にもピンチになる。坂本龍馬の組織を海保トップが批判してしまった。これは海援隊がそのまま存続し、一大組織へと成長した世界故に生じた海保長官の大誤算であった。そのため、海保長官が殴ろうとしたのが『坂本龍馬の孫娘』なので、海保に矢のような批判が飛び、海保は火消しに追われた。識者や一般人から『海保無用論』まで公然と出るに至る。海保は高級幹部の挿げ替えを早急に行ったが、批判は収まらず、ついには予定された大型巡視船が海援隊への供与分とされる事態に陥る。この混乱は海保の立場低下を妙実に表す事件であるが、扶桑海軍も扶桑海軍で、予定された紀伊型戦艦の近代化を超大和型戦艦の増勢に切り替えられるという変更があり、その代替が航空戦艦化だった――




――扶桑の艦艇整備は、日本連邦化の後は超大和型戦艦と大和型戦艦が重視され、それ以前の戦艦は旧式と見做されていた。仕方がないが、大和型戦艦以前の戦艦で、比較的新しいものでも、その基礎設計は1920年代であるため、日本側はモンタナやアイオワに勝てない戦艦はいらないと言わんばかりであった。しかし、これは扶桑にしてみれば『対地砲撃や対空攻撃にはまだ有用なのに』であるが、扶桑海軍のウィッチ派などは『戦艦は浮き砲台』、日本は『戦艦は敵艦を徹底的にぶちのめすためのフネ』と見ていた故の見解の差であった。また、潜水空母の有効性が事実上失われた代替のためもあり、自衛隊装備本部研究所と共同で航空戦艦の検討が始められた。未来では事実上、航空戦艦が宇宙戦艦のトレンドになっているという大義名分もあり、仮想戦記ものまで引っ張り出して検討がなされた。結果、V字型飛行甲板を備え、前部に主砲を備える形式が有力と見なされた。中途半端と看做される危険が常に伴う航空戦艦だが、23世紀では宇宙でトレンドであるため、上陸支援と巡洋艦以下の撃退目的で予算が承認され、ちょうど51cm連装砲の取り扱いに困っていた武蔵もそのテストベッド代わりに回され、大和型戦艦で唯一、航空戦艦化された。ダイ・アナザー・デイには完成は間に合わずだが、後の太平洋戦争時には完成しており、大和型戦艦の派生型『武蔵型航空戦艦』、『尾張型航空戦艦』として再登録される。武蔵は『51cm砲6門の反動は大和型戦艦の規模では向かない』事が判明したため、主砲一基を外して航空戦艦として運用すれば反動に耐えられる様になる試算もあり、改装された。また、この時期に就役が控えていた超甲巡の想定性能が問題視され、運用想定上、『戦艦と相対することは想定外』だが、万が一はあるということで、マストを大和型戦艦(改装後)と共通化し、総合防御力を金剛型よりは頑丈程度にする事となる。この時に日本側の一部が推したのが『主砲がショボいから、60口径16インチにしようぜ』というプランだ。理由は簡潔。アイオワ呼ばれたらボコされるだろうとする、いかにも艦隊決戦ドクトリンの名残りを感じさせる。しかし、こうなると、超甲巡本来の趣旨から外れてしまう。設計目的は汎用艦であるのに、16インチを積むと、新規で巡洋戦艦を作ったほうが良い結果になってしまう。日本側は『アラスカが中途半端だったじゃないか』と引き合いに出したが、『戦艦は大和型に対処させればいいし、巡洋艦さえ圧倒出来れば良いので主砲は31(30.5)cm口径で良い。ただし70口径(威力は往年の金剛型を上回る)にする』とした。VLSに対艦ミサイルを多めに入れることで一応の対応力を持たすことにする。

『巡洋艦の代艦にそげな大口径砲要るか?馬鹿たれ!』

『デモインは弩級戦艦並の装甲と速射砲だぞ!』

と、いう火の出るやり取りが交わされた後に決定されたのは速射砲の導入と対艦ミサイルを搭載であった。また、より廉価な従来型改善タイプも用意されるため、扶桑海軍は巡洋艦カテゴリの再策定に苦労してゆくことになる。この時に艦載機のヘリへの変更、マスト位置の変更とマストの大和型戦艦(FARM済み)と同型に変え、識別偽装の意図も込められた外観に変更される。こうした変更は戦闘データの反映も大きかった。ダイ・アナザー・デイでは、参戦した大和と甲斐が奮戦しているので、その戦闘データがフィードバックされ、60口径46cm砲への換装が決定する。リアルタイムで戦闘が艦政本部に映像として中継されるようになり、コンピュータが導入されたことも手伝い、迅速な改善が可能となった。そして、『格上』相手でも、FARM改装で戦えていることで艦政本部は自信を取り戻し、50口径48cm砲に肉薄する威力を持つ『60口径46cm砲』を大和型戦艦に搭載させる事を決定する。艦隊決戦は砲の威力がモノを言うが、安易な大口径砲への換装はマイナス点も大きいため、『質量が足りないなら、初速を上げれば良いじゃなーい』的発想になり、前代未聞の大口径砲の60口径化を選んだ。この大口径砲の極致とも言える海戦は21世紀の海軍関係者を興奮させている。イージス艦も潜水艦も航空戦力も関係ない、ユトランド沖海戦以来の大海戦。まさに海の男のロマンの極致。その先陣を切る大和型戦艦は日本人が大和に求めたロマンの具現化であった。映像でのブリタニア=扶桑の連合艦隊はブリタニアの新鋭艦を加え、陣容を多少変化させつつも敵艦隊との第二ラウンドを開始し、ちょうど単縦陣でお互いに25000前後の距離で撃ち合う。バダン=ティターンズ連合艦隊も、モンタナとアイオワを取っ替え引っ替えで投入し、自国で完成させたアルザス級も引っ張りだした。艦隊はお互いに変針しつつ、ロマーニャ沿岸へ向かおうとするバダン連合艦隊を扶武連合艦隊が止める構図となっている。自衛隊はもっぱら観戦兼防空役だ。


「うお!?」

「今のはどのフネだ!?」

「ラミリーズです!」

「無事か!?」

「発光信号!ワレ、主砲塔一基を喪失!です

「運がいいな…」

ブリタニア新旗艦「クイーンエリザベスU」の艦橋は未来技術が使用されているため、近代的であり、シー・アイ・シーを備えていた。そのシー・アイ・シーでは、モニター越しに古めの戦艦のR級が48cm徹甲弾に直撃されたが、砲塔がへしゃげ、砲身が一個へし折れる程度で済んだ様子が映る。まさに奇跡的である。48cm砲の貫徹性能なら、天蓋を一気に貫き、史実フッドよろしくの末路になるはずであるが、防盾にでも当たったのだろうか。

「扶桑艦隊は?」

「我が艦隊に追従してきています。間もなく先頭艦が砲撃を開始するでしょう」

「彼等は要だ。被害は我々ブリタニアのロイヤルネイビーが引き受ける覚悟で突き進め!田舎海軍共に我が伝統あるロイヤルネイビーの力を見せよ!」

ブリタニア海軍は戦闘にかこつけての旧式戦艦の最後のご奉公と言わんばかりに、大量動員し、扶桑艦隊の弾除けに使用した。旧式戦艦とは言え、門数は多いので艦隊決戦では重要な要素となる。第3、第4戦隊という感じで新式とは別に艦隊編成されているが、数合わせとは言え、圧力にはなる。

「提督、扶桑艦隊より入電。『露払いは我が艦隊が行う。貴艦は敵艦に熱い抱擁を交わされるように』と、です!」

「よし!全速前進!僚艦に『我に続け!』と!」

クイーンエリザベスUの秘密。それは超弩級戦艦時代では、ラ級でなければ考慮されていない『衝角戦』を行える事である。衝角部を含めた船体に超合金ニューZを使用したため、その5000分の一の強度しか無い鋼鉄などは引き裂ける。そのため、リベリオン本国側の提督はこう呻いた。

『ブリタニアの連中は気でも狂ったか!?体当たりをする気か!』

『衝角戦をするつもりでは!?』

『前大戦以前ならいざ知らず、今は1945年だぞ!?』

と、彼が喚くのも当然である。超弩級戦艦が衝角戦を行うことは頭にないため、隊列から外れ、まるでシャチのように獲物に突撃するクイーンエリザベスUとその姉妹艦二隻に瞠目する。その間に最初の犠牲者が出た。

『ふはは!雑魚はどいておれい!』

サンディエゴ (アトランタ級巡洋艦)をクイーンエリザベスがへし折る。同艦はアジマスラスター、バウスラスターも併用してのクイーンエリザベスUに引き裂かれて海の藻屑となる。また、阻止のために次々と駆けつけたフレッチャー級を砲撃で粉砕しつつ、猛然と戦艦部隊に接近する。しかもスターンスラスターも併用すれば、戦艦ではありえない『超信地旋回』すら可能というトンデモスペックを誇るので、戦艦の常識が吹き飛ぶ機動力だ。しかも史実大和よりも大きい船体で。これは21世紀の造船学の常識を覆す光景であり、TV中継のアナウンサーや識者も唖然とさせる。

『閣下、目標のアイオワ級戦艦です!』

『最大戦速そのまま!真っ二つにしてやれぃ!!』

その何秒間か後、まるで頑丈なバンかマッスルカーに乗用車が弾き飛ばされるかのような轟音が響き、アイオワ級戦艦を中央から綺麗さっぱり引き裂いた。お互いの構成部材の性能差もあり、アイオワ級戦艦はものの数秒ほどで『ガッチャーン』とも形容すべき音と共に竜骨ごと引き裂かれる。あまりに構成部材に性能差があるため、鋼鉄のアイオワ級戦艦もまるでブリキでできた艦に鋼鉄艦がぶつかるかの如き様相を呈した。ちょうど艦橋の後ろあたりから引き裂かれ、バキバキいう鈍い音が一瞬して軋み、後はパァンと弾け飛び、発泡スチロールか何かのように引き裂かれた。一瞬であったため、アイオワ級戦艦は前後に泣き別れにされ、ややあって、前部、後部と沈んでいく。この戦法をブリタニアは『女王陛下の接吻』と呼んでおり、初披露となった。原理的には『たわんだ鋼材が限界まで曲がって弾けるように千切れる』が、鋼鉄の軍艦が木造船を引き裂く鋼鉄艦のような様相で引き割かれたのに関わず、体当たりしたほうのクイーンエリザベスUが無傷であるのに驚きの声が各所で上がる。


――これは構成部材がマジンガーZよりも4倍頑丈な超合金ニューZであるのがブリタニアの自慢である。もちろん、その上で特殊加工も加えているので、強度補強策も独自に加えられている。ニューZのアイアンカッターなどが提供され、それを衝角の加工の参考にしたので、ラ級並の強度を持つ。超合金ニューZはデザリアム戦役の迫る時期になると、かなり広範囲に使用用途が広まり、地球製スペイザーの製造、ウィッチ世界向け特注軍艦への使用などに供されていた。これはより上位の合金(ゴッドZ、ニューZα)が現れた事による性能の相対的低下による『輸出可能品目』に加わった時期がちょうど、メカトピア戦争と重なったからである。また、超合金Zの加工には高度な施設を必要とするが、ニューZの加工は宇宙科学研究所や科学要塞研究所の施設でも可能であるという改良点があることに由来する。マジンガーZはある種、日本ではスーパーロボットのスタンダードなので、わかりやすい指標であるので、ニューZの高性能は引き合いに出されやすい。ここでブリタニアが発表した『クイーンエリザベスU級は超合金ニューZ製である』の事実への日本の反応を見てみよう。

――国営放送局の場合――

「キングス・ユニオンの公式発表によりますと、新鋭戦艦は超合金ニューZ製であるとありましたが…」

「超合金ニューZというのは、マジンガーZの超合金Zの改良版ですよ、貴方」

国営放送であるので、しっかりとマジンガーZやそれに由来する単語の解説が入る。在来の金属の追随を許さない高性能な金属であるが、大量生産が困難であるため、民生使用が進んでいないという難点も一緒に。そして、マジンガーZの後継機種『グレートマジンガー』に使用された装甲材こそがニューZであり、技術革新で4倍の強度がある事が説明される。国営放送で、大真面目にマジンガーZやグレートマジンガーに関する事が説明されるのもシュールだが、それが実現した世界の産物である金属が使用されているため、核兵器であっても沈まないという防御力が与えられていると説明される。超合金ニューZはマジンガーZのブレストファイヤーでも溶けないからだ。

「これは画期的ですよ。現在の核兵器でも、戦艦はそう簡単には沈まないのに、スーパーロボの装甲が使われたら、現在の兵器では致命傷は与えられません」

これが扶桑とブリタニアが戦艦に絶対の自信を持つ証であった。扶桑は更に強化テクタイト板も使用しているので、より頑丈である。核兵器すらも陳腐化させたと言っていいと喜ぶ動きがあるが、皮肉なことに、核戦略の瓦解は世界平和を却って乱すと、熱核兵器の強化をアメリカなどは推進してゆく。これが反応兵器を生み出す研究になるので、結局、核兵器を持つ国々は従来型核兵器の陳腐化で『平和が崩れる』事を恐れ、日本連邦が核分裂に替わる次世代エネルギーの研究をする過程で見つかった発見による次世代理論を核兵器の強化に使用してしまうことでもある。しかしその研究もOTMでの次世代理論に取って代わられ、次元兵器に最強の爆弾の地位を明け渡すことになる。そのため、未来世界で撃ちまくられていた反応兵器は『対消滅兵器』であるが、ガトランティス超巨大戦艦にはあまり効果がなかったのである。そのため、バジュラなどへの今後のために『タキオン弾頭』がデザリアム戦役前に開発予算が下りる。そうした波動エネルギー研究の副産物が波動カートリッジ弾、波動爆雷である。



――ある新聞や週刊誌の場合――

『ブリタニアの新鋭艦はグレートマジンガーと同じ金属でできていた!』とする見出しが踊った。マジンガーZほど有名ではないグレートマジンガー。21世紀では、アンチグレートマジンガーとも言えるマジンガーZEROが創作された事もあり、元来の『マジンガーを超えるマジンガー』という存在意義がピンチであったが、再評価の機運となった。思わぬ副次効果だが、グレートマジンガーは本来、マジンガーZを超える存在として創造され、グレンダイザーと互角に戦える地球代表格として存在していたので、ある意味では本来の存在意義を取り戻した。未来ではマジンガーは皇帝&神の次元に到達しているので、グレンダイザーこそ、存在意義が一番危うい。宇宙の王者のキャッチコピーも最近は『宇宙をかける王者』たる六神合体ゴッドマーズに盗られている。ゴッドマーズは『ファイナルゴッドマーズ』をかければ、ズール皇帝すら阻止できなかったので、スーパーロボット界の不動明王を謳われている。そのパワーはグレンダイザーすら超越しているため、ゴッドマーズは搭乗者の明神タケル(マーズ)の力をどうやって制限するかというのがズール皇帝の戦略であった。その並外れたパワーの源がゴッド・マジンガーに求められた陽子エネルギーであり、ゴッド・マジンガーの陽子エネルギーの制御はゴッドマーズの解析とフェイトのメタ情報で得られた情報で達成されている。ゴッドマーズは未来世界とは違う世界のスーパーロボットだが、別次元の存在である恩恵で前史の事をタケル(マーズ)が記憶しており、ダイ・アナザー・デイ時点では協力関係にある。ゴッド・マジンガーの完成は彼のガイヤーの解析で得られた知見による恩恵だ。なお、ゼウスによれば、ある時、『ある次元で百獣王ゴライオンを名乗る前のゴライオンが喧嘩売って来たから、五体バラバラにしてやった』とも話しているため、ゼウスは百獣王ゴライオンを軽く捻れるらしい。ゼウスによると、百獣王ゴライオンの前身は『ある次元で、20世紀の地球の数十倍の科学力を誇った星の誰かが作ったスーパーロボットで、当時の操縦者たちが悪事に使用していたので、ゼウス自ら討伐に打って出、ビッグバンパンチで五体をバラバラにして封印したとの事。(後に、その次元の地球人たちが『百獣王ゴライオン』として目覚めさせたのだが、それはこの場で語る話ではない)



――戦闘の合間――

「そうだ、ゼウスのおっちゃんが言ってたけど、大昔に百獣王ゴライオンの前身になるスーパーロボを封印したそうだ」

「ああ、そんな事言ってたわね。で、どんな感じ?」

「甲児の姿してる時に聞いた、完成時は普通に一体のスーパーロボットで、脱出用の分離機能ありのスーパーロボットだったんだと。で、おっちゃんはゴライオンを倒すためにゴッドスクランダー装備のマジンガーZの姿を取って、ビッグバンパンチ撃って、中の操縦者の肉体を滅ぼしたそうだ」

黒江が話に聞く、百獣王ゴライオンのプロローグ。ゴライオンの意思は元々、完成時の5人の搭乗者の魂が宿っており、その世界で次代の搭乗者となった人物の父親の魂が新たに宿り、善の存在としてゴライオンを新生させたので、それを以て、百獣王ゴライオンとするというのがゼウスが伝えた事だ。

「ゴライオンは悪から善に転じたスーパーロボットだ。その世界は第三次大戦で地球は滅んでるそうだから、そこは面白い点だろう。だけど、オレ、ゴライオンはあまり知らねぇんだよな」

黒江も百獣王ゴライオンはノーチェックに近いため、大まかにしか知らないらしい。ゼウス曰く『機甲艦隊ダイラガーXV』、『未来ロボ ダルタニアス』の世界がそこの次元の近接次元らしいが…。

「そいやあんた、晩年はオレだったわね、一人前」

「菅野のやつに文句言われてさ、避けてたんだよ、使うの」


黒江は一人前について、私を基本的に使うが、プライベートではオレも使っている。菅野が『キャラ被ってるやん!』とぶーたれた事があるので、避けていた経緯がある。智子はその経緯を知っているので、特段気にしない。黒江は幼少期、自分をオレと言っていた事を黒江の三人の兄から聞いていたためだ。

「あの子、自分がパシリって自覚あるのよね。だから、オレっ娘のところは死守したかったのかも」

「あいつな、アニメだと雁渕ラブなくせに」

「それ言うと、あの子怒るわよ」

「アニメだと雁渕の奴、箔付けに502を利用した風に見えるから、気まずそうに見てたぞ、雁渕と菅野」

アニメでは『雁斑』となっているが、孝美は負傷からの復帰時に502には所属せず、508に引き抜かれていたため、箔付けとして所属経験を与えるために502に在籍した感の否めない描き方なので、孝美当人は気まずそうであった。(これは孝美の年齢にも関係しており、44年で17歳と、ウィッチとしては高齢になっていたためだろうが)この世界では最初から508に所属していたのと、菅野との関係は『同期』であるため、メタ的に言えば、タメ口に違和感がない。また、アニメと違う点として、アニメでは基本的に温厚だが、この世界では、菅野とつるんでいるため、荒々しい面を持つ。基本的に姉妹にも責める事をせず、菅野とつるむいたずら好きな性格である。(なおかつ、シスコンである)(なお、後に64F天誅組の隊長に招聘されるのが、二人の同期にあたる『林喜子』大尉だ。林はこの時期、Gウィッチ閥内での遊撃隊の国内担当班に属していた孝美、菅野の同期であり、智子を信仰する中堅世代である。理由は幼少期に映画を見た世代であるので、当初は陸軍を希望したが、彼女が志願できる適齢期になる頃に智子が引退した事、生まれが鎌倉であったことで、志望を海軍に転じたからだ。智子の大ファンであることは菅野、孝美の両名は知っており、彼女は二人の発案で智子がスカウトして、空軍に引き抜いた。ダイ・アナザー・デイ当時は国内で源田に付き従っており、天誅組の錬成を行っていたりする。なお、芳佳と林は元から、治療に来たのを見かけたことがある程度の知り合いで、お互いにウィッチになってから親しくなったらしい。)

「林はそのまま引き抜けたわ。これで343空の幹部はほぼそっくりそのままウチの所属になるわ」

「これで殆ど343空な組織になるな。問題は如何にして、この場を乗り切るかだ。航空支援でようやく休憩が取れるんだから、奴らの物量は可怪しいぜ」

「確かに。で、海じゃ第二ラウンドでしょう?」

「日本は科学力軽視で戦争に負けたって思いこんでるから、ズルしてでも敵を出し抜いていいって考えがあるからな。海軍ウィッチの不満はあと半年か一年もすれば暴発するぜ?奴らにしてみれば、ミサイルやCIWS、RAMがあるだけで、自分達の行動が封殺されるのは認められんはずだしな」

「確か、大型空母からは」

「ああ。ウィッチ運用装備は撤去されて、航空機専用空母になったし、強制的に雲龍型に転属になるのは気に入らねぇはずだ。特にストライカーの機動力の優位が無くなったしな」

「で、あんたどうするの?」

「念のため、ISは前史で解析しておいたから、その気になりゃ、コアごと造れる。一応、セシリアのは箒のやつと混ぜて造れる」

黒江は真田志郎の仕事に関わったため、ISのコアの制御にすら真田志郎が成功するのを見ている。そのため、ブルー・ティアーズと赤椿の混合体すら空中元素固定で造れると明言するが、特にメリットは(黒江には)ない。ISは今や箒にとっても、緊急用の道具でしかないので、そのあたりはシンフォギアが日常での服も同然になった調と同じだ。

「でもメリット無いでしょ?」

「今のオレ達にはな。調だって、シンフォギアの能力に頼る必然性が減ったしな」

「デーモン一族でも送り込まれるかもよ?闇の帝王が噛んでるなら」

「あの一族は大魔王サタンに全ての指揮権がある。仮の名の飛鳥了としてもホモだし…」

「両性具有でしょ、あいつ」

「現世だと男やん」

黒江が言及した『飛鳥了』。とある次元では人類に絶望して、デーモン一族とデビルマン軍団の最終戦争に導いた大魔王サタンの仮の名かつ、仮の姿の事だ。

「まぁ、性同一性障害みたいな物だか、了ちゃんは女の子の扱いしなきゃね」

「なんだそれ。で、本当の名はルシファーじゃないか?」

「伝説ではね。星矢の世界では、星矢の矢で倒されたわよ」

飛鳥了=ルシファーは星矢の世界に食指を伸ばしたが、その時は星矢の一矢でその世界での肉体を滅ぼされている。アテナに手を出したからである。古くは中国の神である摩利支天などと対立し、最近はある次元の不動明と雌雄を決し、彼を戦死させているが、唯一、星矢にだけは敗北を喫している。その事から、星矢は神殺しの聖闘士として、希望の光としてゼウスも厚遇し、上位三神すら認めている。星矢は黒江たちにとっても、聖闘士としての目標である。かつて太陽神とされた『フォェボス・アベル』(ゼウスの子の一人で、アポロンの兄。ゼウスに匹敵しうる宇宙を持つ。彼も星矢に倒された)すら討ったのだから。星矢は神に愛されし存在であり、聖闘士世界の特異点。人が未来を切り拓くことのシンボルでもある。兜甲児や剣鉄也、流竜馬、のび太と共通するのはそこの点だ。のび太は未来を知った上で行動しているので、ジャンヌは不快感を示したが、『未来を知って、よりいい未来を切り拓く。未来を切り開くってのは、未来を知っていてもいいんですよ。そうなるとは限らないんだし』とジャンヌを諭している。ジャンヌは生前の経験から、未来を知ることに悲観的な点がある。そこが常に前に進むのび太には哀しく見えた。

「未来を知って動き、未来を知って動かない。私はそれは、人間ではないと思いますよ?」


「んじゃ、僕はなんなんです?子供の頃からネガティブ、ポジティブ。2つの未来像を見せつけられて育ってきたんですよ?」

流石のジャンヌものび太という、否応なしに自分が何年生存するのかさえ、少年期に知ってしまった者がいては形無しであった。

「僕は自分が何歳で死ぬのかさえも、まざまざと見せつけられてきたんで、それを知った上で、運命を変えたいと願うのはいけないことなんですか?」

「そ、それは…」

のび太が別行動を取る直前、のび太が調に『未来を知った上でアドバイスを送っている』ことをジャンヌは咎めた。彼女にとっては『未来は知らないで生きたほうが幸せ』であるからだ。お節介であるが、ジャンヌは未来を知って行動する人間に不快感を抱くため、青年のび太を咎めたが、それは未来の方向を知った上で、よりいい未来を自分で切り拓いたのび太に逆に諭されることになった。

「知った未来が真実だろうが運命だろうが最悪を知ってそれに向かわない様に努力するのは無駄でも間違いでも無いんですよ。それと、『風と共に去りぬ』じゃないんですから、『明日は明日の風が吹く』ってのは、ちょっと古くないですかね?」

「えー!」

「シャカさんにも言われたでしょ?二度目の人生は前の人生に縛られるなって。未来を知って、よりいい未来を切り拓く。未来を切り開くってのは、未来を知っていてもいいんですよ。『見た未来がそのまま訪れるとは』限らないんだし。僕は、親父みたいに説教臭いこと言うのは柄じゃないんで、これ以上は言いませんけど、未来は受け入れるだけが運命じゃないですよ。貴方に肉体を与えたルナマリア・ホークが愛したシン・アスカさんの最近の口癖でしょ?運命は切り拓くものだって、ね。もっとフリーダムになりましょうよ、ジャンヌさん」

「うぅ。好きな言葉なのにぃ……。別に貴方の取った行動は否定してないですよぉ!そんなつもりで言ったのではないです!」

半泣きですねるジャンヌ。のび太へ腕を伸ばし、人差し指で指差しつつ、半泣き顔を見せるのは、ルナマリアの要素に由来するだろう。

「言葉は人のとり方一つで印象が変わるんですよ。如何に貴方でも、生前にそういう経験が死の間際にあったでしょ?そういう事ですよ。それに、『明日は明日の風が吹く』って貴方の生前にありました?まー、あの言葉、お袋が好きでしたけどね、風と共に去りぬのスカーレット・オハラ」

青年のび太は母親の玉子が若かりし頃に風と共に去りぬを見て、字幕で翻訳された『明日は明日の風が吹く』という言葉に惚れ込み、自分に言い聞かせることで、自分の学業改善を信じ、大学でそれがなされたことで安心し、以後は憑き物が落ちたように温厚になり、明日は明日の風が吹くって信じてて良かったと発言した経験から、ジャンヌを諭した。のび太自身が両親から常に説教を聞かされて育ったので、自身は説教嫌いを公言しているが、自分が親となった後は父親ののび助タイプの叱り方をしている。諭すように言ったのは父親譲りであり、子供時代は歴代野比家当主の例にもれず、のび太と同じような少年であったのび助の血が為せる業だった。また、のび太の運命転換はドラえもんが中古品のガレージセールから『訳ありセール品』に格上げされており、そこでものび太の努力は実を結んでいた。


のび太は子供時代と変わらない、無邪気な微笑みを見せる。それでいて、ちょっと大人になったスパイスも効かせた、大人としての『優しさ』。のび太は青年になると、こうした大人になりつつも、子供時代の純真さを失なっていない純粋な優しさを滲ませる言動と優しさが女性のハートを射抜くのか、子供時代が嘘のようにモテ始め、しずかと結婚しても、職場でモテる。同僚からは『スケコマシ』などとも揶揄されるが基本的に女性に優しく、しかしながら、普段はうだつの上がらない青年調査員を装っている。こうした優しさをごく自然に見せられることで、調に心を開かせたり、黒江たちに好かれているのも事実である。ジャンヌ・ダルクすらも顔を赤くしたので、のび太はある意味、青年になってからモテる稀有な逸材であった。



「確かに、スカーレット・オハラが言ったように、明日は明日の風が吹く。なら、前に一歩踏み出しましょう、貴方も。もう、生前の形にハマって生きるような柄でもないでしょう?」

のび太は青年に成長し、ドラえもんとの別れを経たためか、精神的に成熟しつつも、子供時代の純真さを失わぬままであった。それは黒江たちに絶大な信頼を置かれ、調に至っては、のび太を守ることが自らの責務であると認識するほど惚れている理由だ。のび太は人を疑う事を殆どしない。それがジャイアンやスネ夫も本質的に親友と見ている理由であり、しずかが結婚を決意した理由の一つだ。のび太は純真故に、打算がないのだ。大人になっても。常に打算的に人と付き合うことを余儀なくされてきたGウィッチたちにとっても、のび太はいかなる状況でも、打算無しで動いてくれるため、信頼を置かれているのだ。(最も、当人は意外に打算的に動いているが、悪人などにありがちな悪意がないため、ゴルゴ13に至るまで好かれるとは、当人の談)のび太の武器はその優しさも含まれている。ジャンヌ・ダルクすらも納得させるほどの説得力は、『野比のび太は子供時代に落ちこぼれだった』ことも関係しているだろう。

「流石、のび太。ジャンヌも納得させるなんてよ」

「オープン平手のポーカーが対人関係の構築に一番良いんですよ。僕はカミさんにも、ガキの頃は劣等生って詰られた事あるんで」

「へー、あいつがねぇ」

「3年から4年位の頃のカミさん、意外にお転婆でしたからねぇ」

ちょうどドラえもんが来訪した初期の頃、ピー助と恐竜ハンターの冒険が始まる頃、しずかは意外にも、『クラス一の劣等生のアンタが?ホホホ……』と詰った事があるのは知られていない。黒江達の知る『清楚で、心優しい』しずかは本人の努力と母親の英才教育で矯正された後のものだ。のび太曰く、小学校三年から四年頃はかなりお転婆で、なおかつヒステリックな性格だったらしく、愛犬ペロが亡くなった際にはのび太に生き返らせろとヒステリックに迫るなど、思春期以降の振る舞いからは想像だにできないほど熱しやすく冷めやすい性格であった。黒江たちが出会った思春期(小学高学年以降)以降は母親の英才教育が始まったり、本人がクラスでのイメージを気にし始めたり、出木杉英才との出会いで『おしとやかさ』にのめり込んだため、のび太への接し方が軟化していったが、芯の熱し易い性格が覗かせる時もあり、ピシアとの戦いの際は怖気づくスネ夫を尻目に、単身で戦いを挑むなど、自己犠牲精神も併せ持つようになった。また、794年のバクダットで奴隷生活を味わう羽目になった経験からか、活動的になった面も表れるなど、意外に変化が大きい。なお、当人は魔法少女に幼少期から憧れており、『魔法使いサリー』、『魔女っ子メグちゃん』などの古典から『美少女戦士セーラームーン』などにハマっており、そのあたりは世代が出ている。そのため、なのはに憧れを抱いていると、大人になっても吐露している。(のび太は魔界の大冒険のことは自分とドラえもん、ドラミしか経験しておらず、満月美夜子に憧れを抱いていた事もあって、告げたのは結婚後である)もっとも、しずかは平行世界の自分自身がそうであるように、魔導師としては平均以上の才能は秘めており、後にG機関に就職した際にそれが覚醒めることになる。本人の願望が子供を生んだ後で叶ったことになるので、のび太は苦笑いだったという。



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