外伝その213『大空中戦20』


――調が言及した『天の鎖』。その拘束を振り解くには、神すら超える必要があるため、理論上は『暴走したエヴァンゲ○オン初号機』であろうと拘束可能である。(黒江曰く、ネゴシエーションが成功した後に、試しにドラえもんの道具『実物ミニチュア百科』で模型サイズの(たいていのアクションフィギュアの標準スケール)TV版仕様のエヴァンゲ○オン零号機改に使ったところ、攻撃しようとした同機を拘束できたとのこと。これはエヴァンゲ○オンが『人造人間にメカメカしい拘束具を着させたものだが、存在の位は人より神に近い』特性を持つが故に天の鎖の効果が上がっていた事も関係している)(天の鎖が通じないのは、空間すらも支配できるZマジンガーやゲッターエンペラーなどの位が高い神なので、天の鎖はたいていのものに効力があると分かる)

「あれはヘラクレスがバーサーカーになって、火事場のクソ力的なパワーでやっと切れる鎖ですから、エヴァンゲ○オンだろうが、ウルト○マンでも拘束できます。もし、あなたの仲間を拘束しようとすれば、瞬時になされるでしょう、クリス」

「なんだよ、それ」

「思い出すだけで腹立たしい、かの英雄王が持っていた宝具ですからね。神格にこそ効果を持つ鎖なのです」

ヘラクレスが狂化しての火事場のクソ力でようやく切れる強度なので、彼ほどの力を保たないだろう汎用人型決戦兵器は初期の三機がいかなる状態であろうとも黒江の魔力値であれば拘束できる。数年後にドラえもんの道具での実験を行い、模型サイズの零号機改(ドラえもんの道具から出たものだが、サイズ以外は全て本物である)に使用したところ、完璧に封じ込め、一切身動きを取れなくしたという結果を記録している。(ただし、槍を持った覚醒状態の初号機は天の鎖に抗おうとし、投げようと必死に体を動かし、咆哮を繰り返していたという)ドラえもんの道具の応用実験も兼ねており、映像で記録しているのだが、ドラえもんの道具で出される都合上、模型サイズなため、黒江は結構いたずらしており、零号機を拘束した上で、初号機にいたずらしてみるなど、イリヤからのアイデアを取り入れて実験中に遊んでいる。本物図鑑で実物大を出してみたら?とドラえもんは言ってみたが『実物大はやばい。初号機を抑え込めなかったら世界おかしくなるぜ』ともっともな理由で却下している。ドラえもんの本物図鑑はなんと『日本の誇るアニメスーパーロボット図鑑』までカバーしている事がわかり、黒江を苦笑いさせている。黒江は流石に乾いた笑いが出、ドラえもんに『そんなのあるなら、光子力研究所にゴッド・マジンガー出してやれよ』とツッコんでいる。ドラえもん自身も『思い出したの、2015年位なんです』と言い訳しているが、マニア向けセットだったため、存在を認識していなかったのだ。光子力研究所の涙ぐましい努力を想い、黒江は流石にドラえもんに苦言を呈し、実験が終わった後、ほんもの図鑑『スーパーロボット編』を漁ってみた。すると、Z、グレートからのマジンガーの項目、ゲッターロボの項目があり、ゲッターロボの項目は二番目にあった。(最初は歴代の鉄人28号とのこと)ゲットマシン状態で有人仕様、無人仕様でロボ形態がという形態で歴代ゲッターロボは収録されている。黒江が苦言を呈した理由はゴッド・マジンガーが『完成状態』で収録されていたのに気づいたからである。46年に入る時期には、黒江は圭子と共にこのほんもの図鑑の全貌を明かすための作業が日課であり、自分達と関連性のあるマジンガーやゲッターロボは図鑑から取り出し、それを光子力研究所やネイサーが解析するという回りくどい予備機確保作業を行った。また、鉄人28号についても技術的側面からの解析を行うことになったため、歴代28号がそれぞれ解析に回された。(初代は実際に日本陸軍が試作していた初期仕様と、続編登場時で別枠で収録されていたりするので、圭子も黒江も唸った。初期仕様は超人機との同時投入を目論んでいたため、安定性が皆無であり、リモコンでの操縦に、黒江でさえ苦戦したという。まさに戦争末期の試作兵器と言った趣だが、当時の重戦車の砲弾を弾くには充分な特殊鋼を持つようにされていたことは確認された。別個体扱いの続編版については後世の技術でグンと扱いやすくされており、そちらは実用に耐えるとされた。また、二代目(太陽の使者)や鉄人28号FXと言った派生個体は『スーパーロボットとしての完成を見ている』ため、そちらは解析された後、改めて製造されたという。

「ドラえもん君、ほんもの図鑑にスーパーロボット編あったとか今更いうから、光子力研究所から文句言われたんだよなぁ」

「それは後の祭りじゃありませんか?完成してしまったのでしょう、ゴッド・マジンガーは」

調はため息混じりに、ドラえもんの間の抜け方に言及する。ドラえもんは過去の冒険で、海底でテキオー灯が切れかけたジャイアンとスネ夫(海底バギーの時速800キロでかっ飛ばしていた)にどうやって追いつくかのアイデアを『時間切れ』と思われた時間になってからひらめくなどの失態を犯したのは有名だ。それと似た事をほんもの図鑑でやらかしたため、光子力研究所の涙ぐましい努力を見てきた黒江に苦言を呈されている。

「はい。やっぱり雷に打たれて、ラインから落っこちた時にネジが抜けたのが原因かなぁ?」

「あの方はこ、個性的ですから」

アルトリアの擁護も若干苦しい。ドラえもんは本来、ありふれた量産型猫型ロボットの9月3日の製造ラインの二体目であったが、ネジが抜けたのを期に現在の性格に落ち着き、養成学校でドラえもんズと同じクラスに回された経緯がある。

『でも、ネジが抜けてなきゃぼくの所へ来なかっただろうから。 それに致命的なリカバリー出来ない失敗は無いからね』

「あ、のび太くん。戦艦の制圧終わったの?」

『今、美遊ちゃんが司令塔に入り込んで、艦長の喉元にエクスカリバー突きつけて脅してるとこ。あの子も大胆だなぁ』

のび太が語るところによれば、元プロレスラーの筋肉もりもりマッチョマンはクロが鶴翼三連を使い、撃破。美遊はそれを見届けたあと、雑魚を斬り伏せながら司令塔に侵入したという。美遊は芳佳とイリヤのためなら、リネットとしてはできない汚れ仕事も進んで引き受ける。ある意味、リネットとして元々、持っていた自己犠牲精神が美遊・エーデルフェルトになったことで強く表れているのだ。

「のび太くん、美遊は大丈夫なの?」

『大丈夫だよ。むしろ、君のほうが心配だよ。紳士連中への応対的意味で』

イリヤは素体がサーニャである事もあって、魔法少女になった世界線のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンになっている。(バーサーカー状態のヘラクレスを使役して、『やっちゃえ!』と言うような、幼さと残虐性が同居する性格ではなく、『少しドジだけど、常に前へ一歩踏み出そうと努力する』性格を基本にして、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという人格が成立したらしく、主人公属性を持つ)そのために自衛隊の有志に人気である。(普通の、『ちょっと腹黒いけど、かわいい系美少女』である点がそそられるらしい)

「うぅ。どうしよう〜」

『エイラさんが『イリヤをそんな目でみんナ〜!』とかいうのは目に浮かぶね』

のび太がいうように、エイラはサーニャがイリヤに変身していても、いつものペースである。いや、いつもより興奮気味である。ちなみに下原が興奮しているため、イリヤは本当にマスコット的意味で危ない。

「それ考えると、下原中尉の見る目が怖くなってきたよぉ〜」

「定子さん、抱きつき魔だから諦めたほうが」

「えぇ〜!どうしよう、のび太くん、調〜!」

『動物園の抱かれ疲れたコアラみたいなことになるかもね』

「そんなぁ〜!」

のび太がいうように、下原は元から可愛いものには目が無く、以前の野比家の近所に住んでいた正木さんの家のシベリアンハスキーに抱きついた事もある。下原は『はうぅ〜、可愛い〜!』と言い始めるとスイッチオンになり、イリヤ自身の『変なスイッチ』と同じように暴走するため、イリヤから敬遠されていたりする。菅野は『下原の悪いクセだ』』と評しており、イリヤに同情的だ。

「菅野大尉だって、『あいつは可愛いもん見るとな、理性ぶっ飛ぶんだよ』とか言いますし、イリヤさん、ここは潔く…」

「いやぁ〜!みゆぅぅ〜!」

パニックになると、自然とエイラではなく、美遊に助けを求めるため、エイラが聞いたらジェラシーを抱くだろう。イリヤは外見が小学高学年であり、下原の理性がサンザー太陽系までぶっ飛ぶのは確実だ。のび太、調、アルトリアは思わず同情する。下原の理性ぶっ飛びは正木さんち(正木俊介の縁戚筋)のシベリアンハスキーでまざまざと見せつけられているからだ。下原は普段は常識人だが、可愛いモノには理性がぶっ飛ぶ。それは同僚や先輩にも及ぶため、智子も調も犠牲者である。調は単純に『ツインテールで、顔立ちが年齢よりあどけなく見えるから』で、意外に節操がないのも特徴で、ある意味、迫水ハルカの劣化版とも言える。下原の可愛いものへの突撃癖を楽しんでいるのは黒江くらいなものだ。

「私や智子さん、作戦直前に抱きつかれてるんで……」

「なんでしょう、のび太。この状況」

『中尉はハルカ中尉の劣化版ですから』

ハルカは態度こそ落ち着いたものの、本来の性癖は健在であり、智子が美琴に相談するようになったのは、お互いに波長が合ったからである。ハルカは白井黒子と似たタイプだが、『プレイ』を公然としようとする分、智子は美琴より気が気でない。しかも、美琴と違い、流され体質の智子は何度も『一夜を共にした』ため、今回でもハルカは苦手だ。

「ハルカ中尉、R-18事案になりそうなプレイもやれるそうなんで、詳しくは言えません…」

調は起こそうとしたら、その様子を目撃してしまったらしく、視線を逸らす。智子は恥ずかしい場面をドラえもん、のび太、調に見られた事になるため、威厳は実のところそれほどなかったりする。また、のび太とドラえもんはしずかの風呂に大学時代になっても、結婚後も鉢合わせするため、エロへの耐性は高い。しずかが何回も風呂に入る教育で育ったので、のび太が憤慨したことすら多い。特に思春期以降は昼間、夕方、夜と三回も入っていたので、度々のび太を憤慨させた。時には調すら唖然とさせる時刻で入っていた。のび太が憤慨し、調も唖然とさせたのは、午前11時で風呂に入っていたからである。調も『入りすぎです!』と苦言を呈したように、調がどこでもドアを使っても、のび太の思考パターンが記憶されてたので、風呂に繋がる。それ故の遭遇もしずか思春期以降では日常茶飯事であった。特にドラえもんのどこでもドアは初期型で『倫理リミッター』がついてないため、のび太が源家に繋げると風呂に繋がるのはお馴染みであった。また、しずかは少女期はファンシー系を好んだが、成人後は女性主人公、もしくは主要人物がいれば、西部劇やアクション映画も許容するようになるなど、相応の成長を経ている。のび太の趣味に付き合おうと努力したのだ。『ビバ、マリア』や『ウエスタン』などがしずかの成人後の好みである。また、夫が平時には『うだつが上がらない』ためか、甘いマスク(往年のアラン・ド○ンのような)の俳優よりも、男臭いチャールズ・ブロ○ソンのような渋めの俳優のファンである。これは結婚後は渋めの男に憧れるようになったのと、調から『ベル☆スタア強盗団』なる漫画を薦められたのがきっかけである。





――そんなほのぼのな事になっていた前線をよそに、政治的には極めて深刻な話題を上層部は話し合っていた。クーデターは避け難い情勢となった要因が『64Fに戦線を支える多数撃墜者を集中させる』事が含まれていることは扶桑軍の現場と日本とのせめぎあいに苦しむ上層部の認識乖離を妙実に表していた。この場合は黒江や智子のケースを鑑み、上層部は転生者を一箇所に集めて集中管理して運用することは源田の発案で既に内定を出していた。覚醒前のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ、江藤敏子が犯した最大の失点と言える、転生者とそうでないウィッチとの対立。源田は本来、343空を『転生者と若手の混合によるボトムアップ方式』と位置づけていた。そのテストケースも新501は兼ねていた筈だった。しかし、転生者である事が秘匿されていた故のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケによるレイブンズの冷遇は、源田の構想を頓挫させてしまう。ミーナの留学が半ば強引に決まったのも、そのことへの懲罰も兼ねていたと言える。もっとも、『ベテランと若手の混合』そのものは軍隊では当たり前だが、日本軍の航空戦最末期ではその図式が適応不可能なほどの人材枯渇に直面していたため、エースパイロットの一箇所に集中という図式は熱を帯びていた。日本側はその前提条件と、ドイツの44戦闘団の例を挙げて、反対派を粛清人事してまで『エースパイロット部隊』の設立を薦めていた。しかし、ウィッチ世界では人材枯渇どころか、南雲機動部隊時代の手練れが生き残っているなど、史実の1941年12月の状態なのだ。だが、日本側には『分散配置で櫛の歯が欠けたように精鋭が死んでいった』という記録があるのと、44戦闘団への対抗心から、エースパイロットによるエースパイロットのための部隊を強く勧めた。扶桑はこの勧めに窮したが、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケへの二度の査問が決定打となった。彼女の覚醒が遅れた事が、間接的に扶桑に64の復活を後押しさせたと言っていい。また、日本には精鋭とされた343空が常に苦戦したという記録があるため、『足手まといの若手を入れるな』という忠告さえ受けた。しかし、人員育成はどの部隊でも行っているし、予備人員の確保的意味合いが含まれている。44戦闘団の結成までにも、カールスラントでパニックが起こっていたのを鑑みた扶桑は、反対しただけで再起不能にまでリンチされる事例を恐れた。カールスラントではガランドに反対しただけで、ドイツ人の一部に『ナチス呼ばわり』されて糾弾され、軍籍剥奪に至った高官が複数いたからだ。特に、史実で反ガランド派に相当した立場の者はバダンの存在もあり、一気に苦しい立場を強いられた。ハヨ・ヘルマン大佐、ディートリッヒ・ペルツ少将などの部隊運用の都合で対立しただけの者すら無能と断じられ、ペルツ少将は糾弾に耐えかね、自殺未遂を起こしてしまう。史実で敗北した軍隊への目は総じて厳しい事をカールスラントの混乱で思い知った扶桑は、粛清人事を恐れ、源田の提案をそのまま受け入れる。しかし粛清人事そのものは結局、海軍のクーデターを理由に断行され、また、太平洋戦争序盤の均衡状態は地球連邦軍の戦力で以て保たれるため、扶桑軍上層部の努力は自分達の力の及ばない次元の介入によりなされたと言える。地球連邦軍の援助はまさに天の救いであるが、空自の現場は『政治向きのお偉いさんは昔の日本が技術と若手の育成教育に力を入れなかったから負けたって事を忘れたのか知らないのか…。JG44だってジェット専任の若手パイロットも多数抱えてんのにエース“だけ”集めろとか特殊部隊じゃねーんだけどな』とため息だったが、結局は財務省が人事費抑制を叫んだため、ウィッチ関連予算が削られたために、そうせざるを得なくなったのが64である。つまり日本の政治家はウィッチをデルタフォースかSASの位置づけにすることでしか、財務省を納得させられなかったのだ。これにより、若手の配属が困難になったため、文字通りにエース部隊にせざるを得なかったのが真相である。源田の構想はエース4、若手の6の割合のはずが、史実の343空の戦闘記録から、エース8.5、若手1.5となってしまった。仕方がないので、若手に前途有望、もしくは招来嘱望組を配し、エースたちは集中運用で一騎当千を実現する事になった他、日本側との協議で『士官教育受講者だけリウィッチ処置を受ける義務を新年度学生及び、兵学校/士官学校卒の古参士官に課する事、士官学校卒業後5年は勤務しないと、学費返納が確定する』事が妥協的に決まった。この時に海軍出身者の公式撃墜記録が残されていない事で軍令部が責められ、軍令部の高官が数人ほど島流しに遭う。この強引な欧米化とも言うべき改革が海軍のウィッチたちをクーデターへ走らせる。海軍出身者の叙勲の調査が困難とされたからで、自己申告では当てにならないとされたのも、海軍ウィッチには屈辱であった。しかし、海軍は個人記録すら残さない体質があったため、日本の野党に金鵄勲章廃止を提案された際に顔面蒼白になったのである。陸軍に比べ、個人を讃える文化が薄かった海軍の個人名誉を与えるほぼ唯一の制度であったため、海軍は金鵄勲章の廃止に猛反対であったが、某襟立て女議員に責められ、ろくに反撃も返せない高官という醜態を晒す。与党と防衛族議員の反撃はあったが、泡を食った海軍は世間体を気にしすぎ、現場とのすり合わせをせぬまま、空軍の制度を真似してしまう。全軍布告の感状に『撃墜王』の文句が記されていることまで理不尽に矛盾と責められ、憤った中堅ウィッチたちがクーデターを断行する。元々、海軍はレイブンズがプロパガンダに多用された事への対抗心と反発により、撃墜王の言葉を部内で使う事を戒めた。期待のクロウズが絶頂期でもレイブンズに及ばなかったことによる落胆がその文化の始まりでもあった。源田はその部内の暗黙の了解を『坂本たちに何を求めていた?森蘭丸?巴御前か?』と呆れながら、赤城に愚痴っている。確かに海軍出身ウィッチとしては、クロウズは10年に一度の逸材であった。だが、既に転生を重ねていたレイブンズはもはや、英霊と言っても差し支えないほど強大な存在であり、クロウズが転生した故に、レイブンズへの対抗心が薄かったのが海軍航空隊の悲劇と言えた。




――後のクーデターの中枢を担った中堅ウィッチ(大尉から中佐まで)は国民向けのプロパガンダに勤しむレイブンズへ侮蔑意識を持っていたが、ダイ・アナザー・デイでの死闘に愕然となるほどの衝撃を受けた者に集中していた。未来世界で復帰した後は本国でプロパガンダが再開されたレイブンズは、様々な要因で海軍出身者や世代の離れた後輩からかなり反発を持たれていた。しかし、レイブンズの内、圭子は1942年頃にアフリカ戦線で現役に戻っていたので名を知られていたので、反発の元は主に黒江、それと功績が秘匿された智子であった。黒江は斬艦刀やエクスカリバーの噂が伝説として語られていたため、智子よりは名を知られていたが、ゴロプからは『極東の老いぼれ田舎者』と常に罵倒され、あからさまに侮蔑された。それは彼女が『覚醒しない内に黒江を屠る』目的を持っていたからだが、黒江が覚醒してしまうと、部隊をわざと壊滅させて行方を晦ました。ゴロプもGウィッチであるが、バダンに与した神闘士であり、『アルファ星ドゥベ』のローブを与えられている。そのため、彼女は一貫して黒江の敵である。海闘士、冥闘士になった者もいるため、アテナに仕えし黒江はむしろ、内通者がいた505では稀有な、『光』となりうる存在であった。505はやがて連合軍最大のタブーの一つになり、公式には後世の歴史で黒江は『501出身』とされている。しかし、実際には、同様の事件が起こったら二の舞になることは容易に想像できるため、半年ほどで機密情報の方針が代わり、『505の良心』として宣伝することになるが、その方針が決まったのはクーデター直前であったという。智子の場合は単純に、モントゴメリーが『中隊の誰かが人型怪異のことを言いふらすのを恐れた』ため、軍や人心の分裂を防止するために中隊の功績を秘匿するが、智子には白バラ勲章を与えていたのが始まりであった。智子は43年の攻防戦で好き勝手したため、マンネルヘイムは扶桑への外交道具にする意図のもと、白バラ勲章を使ったのだ。しかし、現場の士気維持のため、機密指定と中隊運用に制限を科す事はモントゴメリーに同意していた事が逆に日本連邦に利用され、自分が咎められてしまう。フィンランドも『我々が卑怯者のように見えるから』と苦言を呈し、遂には機密情報が日本から流れたライトノベルで知れ渡った結果、マンネルヘイムは自分用の『宝飾・剣付スオムス白薔薇勲章』を特例措置という名目で、智子に与えざるを得なくなる。自身が同位国のフィンランドの圧力で職を罷免されそうになったからだ。また、モントゴメリーが『ウィッチの対立を招いた』とし、アフリカでの失態と併せて、元帥位解任、それに伴って二階級降格されたのも、マンネルヘイムを怯えさせた。日本連邦が経済制裁と部隊の撤収をチラつかせたのも、マンネルヘイムから平常心を奪った。日本連邦には脅し以上の意味はないが、スオムスには日本連邦が連合の主導権を握りつつある事から、何よりの恐怖だ。元々、侍がアジア最強の傭兵として名を馳せた歴史があり、ブリタニアすら屈伏させられなかったので、敵になれば、全てを滅ぼされると恐れたのだ。実際、スオムスは日本連邦の軍事力無しには、ティターンズとその配下のリベリオン軍の攻勢に耐えられないほど軍事力が脆弱で、科学力の差が多少の地の利を帳消しにしてしまったと言えよう。実際に、ブリタニア最強の騎士団が島津の武士団にあっけなく返り討ちにあい、ブリタニアを恐怖のどん底に叩き落とした逸話すら伝わっている。また、その時に戦功を上げたウィッチの女武者が黒江と智子の先祖であったともされる。その伝説からか、本国での冷遇が嘘のように厚遇されていた。扶桑軍自体がその事実に驚愕し、結局、懲罰的に参謀達の島流しがちょくちょく起こったため、扶桑軍内部にその懲罰人事への不満が溜まっていたのも事実であった。(黒江本家にその時期にウィッチがいたとは記録がないので、分家だったか、姻族だったと思われ、黒江当人も話を聞いておらず、亡くなった祖母の遺した手記に記されていたのに驚いていた。)智子の方は直接の先祖であり、当時は同じ侍団におり、そこの切り込み隊長だった。直接の先祖なので、智子と瓜二つの容貌だったという。言うならば、黒江と智子は直接でないにしろ、祖先の代で一度邂逅していたのである。これは転生とは関係ない要素である。黒江はその先祖とは直接の関係に無いが、『才能は受け継いだ』と祖母が生前に常々言っており、祖母自身も若き日は孫の綾香と瓜二つの容貌であった上、その代の『末子』だった。その先祖の才能は子孫の内、代々の末の子供に受け継がれてきたと言うように、黒江の祖母も曾祖母もそのパターンである事から、黒江の先祖達は長子が家を継がない事が認められてきたと言える。ただし、黒江の父の代は女子が生まれなかった事から、祖母は生まれてくる自分の孫が才能を受け継ぐと確信していた節がある。黒江の祖父はそのための資金確保のために実業家になり、今日の地位を築いた。黒江の父もその使命を受け継いだが、三人が男子であり、諦めかけたところに綾香が生まれた。彼は元より娘を軍人にするつもりであったが、妻がそれに反発したのが綾香の不幸である。しかし母親の女優にさせるための努力はその後の綾香が名を成す血肉となったのも事実だ。先祖達の武勇が結果として、レイブンズの威光が欧米では健在である理由になる。その先祖が斬馬刀の使い手だった偶然もあり、斬艦刀は黒江のシンボルと見做された。黒江当人は斬艦刀がシンボルというわけではなく、むしろエクスカリバーをシンボルにしたいのだが、秘匿されたために斬艦刀持ちとして宣伝された。斬艦刀をシンボルにしたのは江藤であるが、エクスカリバーの非現実さと担保しての堅実な選択だった。(あくまで当時)後で『エクスカリバーのほうが他国への宣伝になった!し、撃墜王ランクでカールスランドに我が物顔されなかった』と江藤が叩かれたが、上層部の選択であるため、理不尽であった。その決定は当時に退役間近だった将官が出しており、しかも45年には死亡済みだった。その彼は若いウィッチが持ち上げられて慢心するのを嫌う古風な性格で、一説によれば、1905年までの戦乱当時に尉官だった世代とされる。生きていれば80を有に超えるが、42年に心不全で亡くなっている。また、黒江が西洋の剣技である『エクスカリバー』を使うのを不快に思っていたともされるが、彼の妻は『そのような性格ではございません…』と反論している。真相は闇の中だが、当時の参謀本部の意思が数年で鬼の首を取ったように叩かれたのは予想外であったのだけは事実だ。ただし、エクスカリバーも『示現流の一の太刀の応用』と彼は捉えていたと思われるフシがあり、それがエクスカリバーの名を伏せた理由だろう。ただし、日本連邦の体制では、どう見てもエクスカリバーはエクスカリバーであるため、黒江は約束された勝利の剣の継承者と、改めて宣伝される事になった。この日本側による宣伝が扶桑海軍中堅ウィッチの反発となったのも皮肉なものである。扶桑海軍ウィッチ中堅層にとっては『銃後に媚びてる!』だが、日本側は軍隊には冷淡であるため、むしろ媚びないと予算が出ないのである。それを知っているレイブンズは宣伝の関連業務で勤務が終わる日すらあったのに、自分らの先輩が言うように一騎当千。それが暴発の直接要因であるが、日本側は『見苦しい嫉妬にすぎない』と一蹴する。ダイ・アナザー・デイで黒江たちは超英雄、英霊と肩を並べている。それに反発した海軍中堅ウィッチたちへ自衛隊に『まったく、紙袋でも被ってパルパル言ってるだけなら良かったのに手ぇ出したらアウトだろ』と呆れ果てられており、黒江と智子が如何に凄いかを認識し、その一助を担うことに誇りを感じている。また、結果的に騎士王やシャルルマーニュ十二騎士の前でいい格好ができたため、自衛隊の士気はうなぎのぼりであり、機甲部隊はM4中戦車300台を蹴散らしたという。また、イリヤの姿を確認した陸自の偵察ヘリのパイロットは報告が報告にならないほど興奮しており、その報告を聞いた陸自特科部隊と普通科部隊が張り切ってしまい、敵の一個師団に大損害を負わしたが、弾の備蓄が消えたとか。



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