外伝その253『イベリア半島攻防戦2』


――扶桑が困ったのが、防空部隊を重視されたために防空戦闘機が最優先され、前線に送る『制空戦闘機』が生産数を減らされた。さらにラインの効率化に反対する工員のサボタージュもあり、扶桑軍需産業は苦しんだ。しかし、日本帝国に比べればまだ開明的であり、比較的早期に解決が出来た(同位企業が航空産業を未だ持つ)宮菱と川滝が以後、扶桑軍事航空の主導権を握り始める。長島は立ち直りが遅れたため、航空技業の不振を自動車事業で補いつつ、ジェット大型爆撃機や練習機に製造の軸足を移し始める。しかし、軍部の要請でドラケンのライセンス生産を行うなど、元ナンバー2の意地は見せたという。そのしわ寄せが現場に来たため、機材の消耗が激しい方である黒江達は機材を子孫達に都合させる荒業を行った。ストライカーとそれ用の武器は本国からの輸送では間に合わないためだ。そのために機材が次第にバラバラになり、遂にはF-15Jの他、キングス・ユニオン製のトーネードAVFまでも送り込まれてきており、45年当時からすれば隔絶した性能のストライカーが揃いつつあった。


――マドリード――

「姉さま達、こんなものを持ち込ませるなんて。F-15に……トーネードぉ!?記憶が戻ってなきゃ撚ねてますよぉ…」

マドリードの駐屯地で落ち込むウルスラ。45年のジェット黎明期からすれば、トンデモ超高性能機である。ストライカーとしても半世紀ほど後の機体である。記憶が戻ったため、驚きはしないが、自分でないと整備が不可能である。

「ウルスラおばさま、トーネードはIDSタイプもあります」

「澪ちゃん、追い打ちかけないで…」

「貴方の孫の一人のアドルフィーネが呆れてました」

「あの子は生真面目だから…」

ハルトマン家はウルスラが後世に血統を繋いだ事が分かる。ウルスラは第二、第三世代宮藤理論の普及に尽力し、業績を残した。その孫は三つ子である。才覚はエーリカの戦闘の才能とウルスラの才能が混じり合って受け継がれており、全員がテストパイロット経験を持つ戦闘ウィッチである。孫の名は一人がアドルフィーネということはここで判明した。エーリカの大姪である。

「で、これ、この時代のカールスラントのお偉方に見せます?」

「メーカーの連中が見たら泡吹くわよ、これ。この時代じゃ実験段階の機構がコンピュータ制御で存在するもの。可変翼…」

可変翼は元々、ドイツ(カールスラント)で実用試験段階にあった翼型で、メッサーシュミット P.1101で実験が繰り返されていた。それがコンピュータ制御の完璧なものとして存在するのである。もはや、メッサーシュミットのプライド云々の問題ではない。

「F-14を翼が持ってきますが」

「……うちの国の連中には見せないように。口から泡吹くから」

ウルスラは頭を抱える。F-14、15、トーネード。これでミラージュ2000があれば完璧に宮藤理論の発達のモデルが粗方出揃う。しかし、扶桑には見せており、技術者が発奮している。これは第二世代理論の登場を早めていくためだ。ただし、台湾は21世紀になってもウィッチ母数が少ない上、扶桑とほぼ同化したため、独立は回避しており、その関係でミラージュは入手できない。アルジェリア戦争で不仲になり、インドシナ動乱以来、仮想敵国だからだ。

「わかりました。でも、どうします?翼のこと。おばさまの娘と言います?」

「後援者には私から言うわ。綾香さん、この時期は家族から嫁入りしろと言われてるから」

「あー…」

「澪ちゃんのお母様なんて、貴方のおじいさま、その父上とかからしつこくお見合い写真がこの時期、送られてきているわよ」

「何連敗したんですか、うちの母さん」

「200は超えてるわ」

圭子はこの時期、年齢が26歳に差し掛かり、家からは『結婚しろ』の一点張りである。圭子は澪の事を知っているので、結婚はするつもりゼロである。性格的にもガサツ過ぎて不可能だ。45年では、レイブンズは年齢的に、扶桑では結婚適齢期(圭子は時代的に過ぎていた)になっており、なんとか引退させたいのが母親の共通認識である。黒田は当主就任で諦められたが、黒江たちは母親が軍での立場よりも行き遅れを気にしており、それも折り合いが悪い原因である。しかし、黒江と圭子の父親は『女子であろうと、国に奉仕することこそ最大の幸福だ』と考えており、そこも二人が母親に嫌われ者であった理由だ。黒江が母親と折り合いが悪いのは、元々、母親が女優にさせるための英才教育を蓄えを崩しても施したのに、軍隊にいった事に根源がある。圭子の場合はガサツさが父に受けたが、母親に嫌われたからである。圭子は温厚な振る舞いも忘れていないが、最近はガサツなほうが自然にできるようになったため、敢えてガサツな姉御肌系にシフトチェンジしている。澪は本来の温厚な圭子に近い性格なので、影武者も頼まれている。

「母さん、おばあさま達にはお前が電話しとけとかいうんですよ。」

「猫をかぶれと武子さんに言ってもらうわ。実家を心配させたら、我々の目的に支障をきたすから」

「お願いします」

「麗子ちゃんと翼は?」

「調姐様と一緒に広報の仕事です。智子おばさまが列車で腹壊したそうで…」

「大尉…いや、准将ったら…」

智子はなんと、列車で腹を壊し、トイレに篭るという珍事を起こしたらしい。黒田に爆笑され、菅野に整腸薬を渡されていた。黒田は腹がよじれるほど笑い、智子は恨み節も言えぬほどの下痢でトイレで醜態を晒していた。そのため、広報の仕事に智子とほぼ同じ容貌の娘である麗子が調が連行する形で駆り出されていた。その隣のトイレには西沢がこもったため、結局、64は下痢を二人も出すことになった。原因は西沢は胃が弱い、智子は前日、腹を出して寝ていた事で、半分は自業自得である。その調は麗子には赤子時代から面倒を見ていて、引っ張る側であるため、珍しく、目上として接していた。姐様と呼ばれているのは、二代目全員のベビーシッターの経験があり、子供時代は遊び相手だったからである。

――マドリードの駐屯地内の撮影室――

「姐様、私疲れたもーんー!」

麗子は二代目で一番性格が軽いため、智子にほぼ瓜二つの容貌ながら、子供っぽい。初代とポジションが逆である。

「我慢しなさい、麗子。貴方のお母様の代理なのよ、代理」

「でもさ、私、剛勇ってガラじゃないもん」

麗子は智子より頭の回転が良いのと、スイッチが入れば、往年の智子に近い凛々しさを見せ、冷静沈着に振る舞う。その事から、『沈着穴拭』をマフラーに縫い付けている。字は智子の姪である母親の町子が達筆であるため、智子の下手さが目立ってしまう。(曰く、一族で一番ドヘタ)

「しかたがないでしょ。貴方のお母様、字がド下手じゃない」

「まったく、ママが若い頃に物笑いのネタにしたとか言ってたっていうけど、智子母様、字が小学生レベルだもの」

実母はママと呼び、智子のことは母様と呼ぶことで折り合いをつけている麗子。調も智子の字がド下手なのは知っており、智子は地味に落ち込んでいる。

「もう百年もしたら味のある名筆とか言われるから大事にしときなさい。それに『キラッ☆』なんてやっちゃって。智子さんがずっこけるよ」

麗子がやったのは、ランカ・リーの決めポーズ『キラッ☆』で、智子にとっては『イメージがぁ〜!』ともんどりうって部屋を転がるほど恥ずかしいポーズだ。智子は元来、凛々しさで売っていたので、これは羞恥プレイもいいところだ。

「あら、面白いじゃないの、麗子」

「美雲…もとい、シャーリーさん。何してるんです?」

「影武者のアルバイトよ。ケイオスからかなりお駄賃出るから、割が良くて」

「どうやって来たんです」

「紅蓮聖天八極式でぶっ飛んできたわ。格納庫にすぐに入れたけど」

美雲・ギンヌメールの容姿でやってきたシャーリー。ライブ衣装を着たままであるためもあり、どこからどう見ても美雲・ギンヌメールそのものである。歌声も特訓で同等になっているため、実質、美雲だけを出張させたのと変わりない。ただし、歌う時はギャラが出るが、軍の手当程度であるのでシャーリー本人の懐具合はあまり良くない。そして、

「それと、紅蓮に乗ったら、もう一個の人格が目覚め始めてるのよ。おそらく、『紅月カレン』そのものの記憶ね…あれは」

「ああ、コードギアスの?つか、いいんですか、それ」

「そっちのほうが地に近いって感覚はあるわ。プ○キュアか?なんて考えてたけど、そっちかーい!って感じね」

美雲としての落ち着いた口調で言うシャーリー。紅月カレンの記憶が紅蓮聖天八極式のコピー機に乗った事で覚醒を始めたのは予想の範囲内であるとの事。しかし、紅月カレンとしての激しさが表に表れれば、闘争本能としては申し分ないのも事実だ。

「でも、私としては肩がこるアルバイトだから、そっちのほうが気が楽よ。神秘の歌姫ってキャラを作らないで済むから」

「確かに」

「調、綾香さん達はいつ到着するの?」

「あと一時間半で中央駅につくはずです」

「今日の仕事終わったから、後で酒保に行かない?」

「買い物が?」

「この姿だと、代金を割り引いてくれるのよ」

「ファンなんですかね?」

思わぬ特典を酒保で利用するシャーリー。それはアルトリアやジャンヌなどの英霊にも適応される。酒保の運営は地球連邦軍らしく、英霊などには優しいらしい。ちなみにアストルフォは戦闘面では活躍が望めない英霊というのは自覚しているため、Vちゃんとの融合のおかげでデフォルトの理性でプラス補正がかかったため、裏方に回り、ド・ゴールなどを抑え込んでいる

「って、素でも特典もらえるんじゃ。だってシャーリーさん、21世紀で人気じゃないですか」

「それもそうなんだけど、若い子らがうるさいのよね。だから、ハルトマンやバルクホルン以外は素で行動しにくくなってるのよ。ミーナ隊長は黒森峰女学園の制服着始めたし」

ミーナは容姿は変えていないが、振る舞いは西住まほに変えているので、若手との軋轢や闘争が戦に支障をきたすことになるのを恐れているのがよく分かる。

「師匠も言ってたけど、仮面ライダーや宇宙刑事ギャバンとかいる時点で、そういう次元じゃないと思うんですけどね。第一、ウィッチの反発してる連中がティターンズのアレキサンドリアをこの時代の装備で撃沈できます?」

「無理でしょうね。メガ粒子砲と対空レーザーで落とされるのがオチね。だけどなまじっか奥義があるから…」

「烈風斬、ですか?」

「雲耀もそうだけど、大物食いの技はあるにはあるのよ。だから、反発してるのよ」

大物食いがウィッチの秘技だったが、それらを極めたはずの黒江たちが前史より以前の能力ではそれらを一撃では倒せず、黒江に至っては、雲耀を仮面ライダー三号に防がれ、愕然としたところを徹底的に痛めつけられ、半死半生に追い込まれていたのだ。それが黒江を聖闘士に駆り立てた一番の要因であり、現在の『聖剣使い』に繋がる。

「でも、師匠はそれを打ち破られて、思い悩んで聖闘士になった。上には上があることを思い知らされて。師匠が泣きわめいたのはそのくらいのはず」

「ああ。あの時はうなされたりして、大変だったのよね。それでドラえもんに泣きついて、聖闘士の世界を見つけてもらったんだから」

黒江は前史以前、幾度かの無残な敗北で泣いた。その度に歴代仮面ライダーに助けられた事から、仮面ライダーには特別な思いがある。茂は初対面、三号事件と、黒江の命を救った事が多いため、黒江は茂に懐いている。現在のヒーロー大好きっ子の半分は城茂と本郷猛が作ったと言っていい。前史以前よりも子供っぽさが目立つようになったのは、本郷が『無理に背伸びする必要はない』と言ったからでもある。前史の仮面ライダー三号事件で黒江は執拗に痛めつけられ、半死半生に追い込まれ、自信を喪失してしまったが、仮面ライダー達に叱咤激励され、聖闘士世界に飛び込み、黄金聖闘士にまで登りつめた。黒江が転生の度に幼くなり、智子が気苦労するからくりには本郷猛と城茂が大きく関係しているのだ。

「師匠は打ちのめされると、強くなろうとするから、遂にはサムライトルーパーにもなって、輝煌帝ですよ、輝煌帝」

調は黒江が向上心を持つと恐ろしい事に、その道のプロと言える水準にまで到達せんとする。サムライトルーパーとしても輝煌帝の鎧を呼び出せる上、負荷に耐えられるため、輝煌帝を扱えることを告げ、恐ろしいともいう。

「どこのキ○肉マンだか、サ○ヤ人よ、それ」

「だって師匠、雷光斬使えますし、もうサムライトルーパーとしても最高峰の強さですよ。おまけに転生を繰り返してナインセンシズだ。スペックは人間として最高位級ですよ」

肉体のスペックが人間として到達できる最高位に到達しつつある黒江。神位になっても、肉体は人間そのものなので、肉体を鍛える必要はある。老化による能力の劣化が無くなったが、その代りに、ある意味では『理解者を得にくくなった』と言える。陰口に『あんた自身からすれば、道の石ころのような存在である野比のび太となぜつるむのか』、『のび太の死を見たのも一回二回じゃないだろうに』という物があるのに黒江は激怒している。実際、のび太の最期も何度か経験している。黒江からすれば、『友達とつるんで何がいけないんだよ!!』であり、のび太とつるむことに陰口があり、のび太を石ころと形容する様に激怒している。黒江が『メガトン爆弾を抱えた万能戦艦』と恐れられるのは、ブチギレると乖離剣をぶっ放つ。ホテル事件でもそうだが、たとえ異世界の自分相手だろうと、友人と師、憧れの人を侮辱されるとキレる。その一方、心を開くと、その相手を絶対に裏切らないという一途なところがあり、若松はそれに惚れ込み、妹のように見ている。赤松は擬似的なお母さん役を楽しんでいる。智子が罪悪感を懐き、圭子が転生開始直後に釘を刺したのは、黒江の思いを保身に利用した浅はかさが理由であるのに気づいたからで、智子の序列が黒田より低いのは、これが理由だ。黒江には知らされていないが、圭子はそれで一度、智子を責めている。その時から今のガサツな態度なのだ。黒江は精神崩壊を挟んでいる分、友人に依存する弱さも抱えてしまっている。前史の晩年の圭子の亡き後は智子に依存していたように。智子が姉のように振る舞っているのは、前史の晩年に黒江が自分の死に泣き、魂の状態で死後に再会したときにも大泣きした時の記憶があるからだ。今回の転生で智子と坂本はある意味、黒江のことで同じ目的となったと言えよう。『償い』だ。坂本は友情への、智子は家族としての愛情への。黒江が現在でも抱く感情への償いこそ、二人が背負った十字架なのだ。

「あの人は陰口も多いから、大変よ。上は自由行動を許したし、事実上は中将待遇。その優遇に反発する連中は多いわ。だけど、元から事変の英雄だし、スーパーロボットがいる戦場でも対等に並び立てる。戸籍上だけど、人間としては青年期真っ盛りの20代前半。ウィッチは総じて能力が短命だから、考えが刹那的で、その場の勢いで動いてしまう。それは不幸よ。人生は21世紀以降は平均で70年以上もあるのよ?長寿な一族なら、100年も夢じゃない。ウィッチで無くなった後のほうがずっと長いはずよ。それなのに、偶発的って言うべきかしら?…に能力に永続性が得られた者を迫害する。まるで中世欧州の魔女狩りね」

魔女狩り。ウィッチ世界でも一時にあった流行的な異端審問・殲滅の風潮だが、怪異の出現で消えた。オラーシャ地域は迷信深いため、魔女狩りが再発した結果、自縄自縛を地でいく結果に陥った。更に、スーパーロボットのみならず、平均で20世紀末期水準の兵器が使われる事で『ウィッチ兵科』そのものの命運が問われる事態に陥った。シャーリーは美雲・ギンヌメールの落ち着いた口調で話すため、普段より重みがある。ウィッチの従来の意味合いでの『定年』はRウィッチ政策の出現で撤廃されつつある。特に、これから太平洋戦争が控えている扶桑にとっては、ウィッチの練度のリセットの到来の緩和は『皇国の荒廃、この一戦にあり』くらいの死活問題である。扶桑ウィッチは内紛の鎮圧を経て、太平洋戦争の到来に遭遇した時に理不尽なまでに奮われる近代兵器が織り成す圧倒的な破壊の力に愕然とするに至る。それから自らを守り、居場所を作るため、Gウィッチの持つ力に縋る。なんとも因果応報的な顛末だ。


「魔女狩り、ですか」

「そう。あれでずいぶん欧州の秘術が失われて、扶桑がウィッチ界で実質最強を誇るようになったのよ。私、あ、シャーロット・E・イェーガーとしてのだけど、先祖も移民だもの」

オラーシャがウィッチ界で小国に成り下がったのは、秘術の喪失も一因である。キャスターの英霊が転生していないこともあり、かつての欧州に伝わっていたローマ帝国時代のノウハウは殆どが失われた。今のところ、英霊達はセイバー、ルーラー、ランサー属性が一人から二人程度それぞれ転生している。また、間接的にギルガメッシュが影響力を行使している。それぞれ新たな生を楽しんでいるが、英霊としての反転属性『オルタ』になれるというジャンヌやアルトリアに見られる現象もある。また、アルトリアは生前の反動か、酒が入ると悪酔いして、明後日の方向に暴走する傾向もあり、謎のヒロインXととっさに名乗るなど、黒江爆笑ものの事態も起こったりしている。また、黒江は判断をつけかねているが、ルッキーニかスバル・ナカジマに玉藻前、つまり、殷王朝を滅ぼした妲己の後身である、玉藻の記憶がある可能性も出てきたのである。つまり、どちらかにウィッチ界では失われた古代中国の記憶が期待できる事でもある。また、もう一つの可能性はナンバーズナンバーWであるクワットロが玉藻であり、本来の姿に戻り、脱獄しているという線だ。はやてはそれを睨んでいる。また、妲己であったと仮定すれば、日本のある世代が想像するであろう漫画版封神演義の妲己の外見を取れるはずである。つまり、夏王朝と殷王朝を滅亡に追いやったという、妙にすごい傾国の美女的な意味では世界に冠たるものだ。


「はやてからメールだわ」

「…玉藻前のことか。あれくると、声的にややこしいですよ」

「スバル声がまた増えるというのも面倒よ」

「確かに、クロも声似てるし、最近流行ってるんですかねぇ、あの手の声」

「私はまだいいほうかしら」

「紅月カレン、美雲・ギンヌメール、アネモネ…。いいじゃないですか、有名所で」

「喜んでいいやら…」

「ミーナさんは山本さん、ラクス・クライン、西住まほ、薔薇乙女の長女、それに元プ○キュアですね」

「それ言うなら、私もそうなるし、錦なんて、たしかプリ○ュア5の主役」

「その理屈でいくと、フェイトさんは『堪忍袋の緒が切れました!』とかいいそうだなぁ」

「確かに」

プリ○ュアで括ると、かなりの割合でヒットするのも事実であるため、苦笑いのシャーリー。芳佳も『ウルトラハッピー』といいそうだからだろう。まずないだろうが、有り得そうなのも事実だ。

「Hey、三人共、何してるデスカー」

「なんだ、金剛さんか」

「おおう!いきなりなんデスカ、そのリアクション」

「何の用?」

「ガルマン・ガミラスから通達が」

「ガルマン・ガミラス?やっとガルマン星とその周辺星系を制圧したばかりじゃない?」

「デスラー総統自ら視察に来られるっていうんデス」

「新型デスラー艦でもできたかな?」

23世紀初頭当時、ガミラス帝国再建のため、宇宙を流離っていたデスラー(アベルト・デスラーではない)は先祖の星であるガルマン星に流れ着き、帝国を新たに建国し、銀河系の強国であるボラー連邦との星間戦争に突入していた。古代との奇妙な友情から、地球との同盟関係を構築していた。彼はアベルト・デスラーと違い、真にガミラスのために身を捧げる偉大な指導者であり、古代も敬意を払って接している。そのため、ガルマンのデスラーは壮年であるが、スターシャへの純愛(妻子がいるのに関わずだが)、また、素がキザであるのも地球での人気に繋がっている。アベルト・デスラーはイスカンダルとの統合と移民を実は志向していたなどの青臭さや強引さを見せていたが、ガルマンのデスラーは伊達や酔狂で帝国を統治していたわけではなく、武士道にも似た精神も持つ人間性を備える。アベルト・デスラーとは同名の別人であるが、もっぱらデスラーというと、現・ガルマン・ガミラス総統のデスラーを指す。そのため、ガルマン・ガミラスはいずれ、紛らわしいと言わんばかりに、別のガミラスを併合するつもりだとか。(ガルマン・ガミラスの艦隊戦力はガトランティス残存勢力も取り込んだため、いきなり強大で、ボラー連邦を大いに困惑させているのも事実だ)

「ガルマン・ガミラス、別のガミラスをどうするつもりよ」

「たぶん、制圧するんじゃ?ガトランティスが残した技術とハイパーデスラー砲、惑星破壊プロトンミサイル見たら、普通の星間国家ビビると思うデス」

この時、ガイア・ヤマトが交戦中のガミラスとガルマン・ガミラスは似て非なるものであるため、敵対意識があった。だが、波動砲相当のデスラー砲を親衛艦隊に配備させ、その強化発展型を座乗艦に装備させるほどの軍事力があるガルマン・ガミラスに逆らう者は対等の軍事力を持つボラー連邦くらいだ。

「いや、その前に地球連邦に立ち向かえるの?そのガミラス」

「ガイアをボコボコにはできる程度だけど、アースは不可能かも。ワープし終えた途端に集中砲火デスし」

地球連邦軍はタイムレーダーの実用化でデスラー戦法(正確にはドメル戦法)対策を進める事に成功した。敵ワープ完了地点に集中砲火を打ち込む戦法を編み出した。そのため、アースにアベルト・デスラーのガミラスが攻めてきた場合、ドレッドノート級とアンドロメダを配置し、集中砲火で一個艦隊は軽いと見られている。アースは図上演習を重ねており、その優位性がD級配備前のガイアへのアースの優位点である。アースからタキオン波動収束砲の技術を得たため、次元波動爆縮放射機は外され、代わりにアース規格のタキオン波動収束砲が装備される予定だ。表向きは規格統一とは言うものの、渡される波動システムはアースの一世代前のものである。一応の防諜である。嘘もけしてついていない。研究は秘匿されるが、生産品は規格統一するのだ。また、ガイア古代たちからのとばっちりを受けたアンドロメダ級戦略指揮戦艦は、ミューズ級戦列艦にクラス名を変更される見通しだ。

「でも、向こうの古代さん達、こっちの事知ってるの?」

「こっちの艦隊を監視に行かせてるそうデス。支援名目で。その関係でGヤマト見てるはず」

「Gヤマトは究極の波動理論の宇宙艦。もし、Gの波動砲見たら腰抜かすわよ。回帰時空砲を撃てるもの」

「回帰時空砲?」

「前史で25世紀になって研究され始め、30世紀になって完成を見た波動砲のタイムマシン化みたいなものよ」

「つまり存在を無かった事に?」

「ええ。ブラックホールすら消せる究極の波動砲の一つだそうな」

Gヤマトは外見上は初代の最終状態の改良型に過ぎないが、個艦戦闘力はアルカディア号に比肩する。波動砲も比較にならない威力であり、遂にブラックホールすら問題視しない威力になった。イスカンダルからもたらされた波動理論には不備があり、かのシャルバートは究極の波動理論に到達していた。その理論を地球連邦は30世紀になって完成させ、宇宙五大戦艦の力の源となっている。その力はGヤマト一隻で23世紀初頭の最優秀艦のアンドロメダ級5隻に匹敵するほどの戦力差である。Gヤマトは移動司令部も兼ねているが、戦艦として、ドック入り中の初代の後身であるために無敵の強さである。当時、森雪と同棲中の初代ヤマト艦長代理の古代進はニュースに驚いて、連邦軍本部に事を問い合わせたという。連邦軍本部は隠すこともないので、『君達の代役としてキャプテン・ハーロックが呼び寄せてくれた君たちの末裔、宇宙戦艦グレートヤマト。少なくとも第30代くらいの宇宙戦艦ヤマトだ』と通達し、古代は茫然自失になったという。

「ん?グレートヤマトいるんなら、そのオリジナル、つまり初代ヤマトはどこに?」

「ああ、デザリアムとの最初の闘い、私も参戦してたけど、その時の初代じゃあいつらの旗艦級に攻撃が効かなかったの。それを大義名分に、近代化するのよ」

「つまり、デザリアムへの備えを名目に大改造するのデス、調。初代ヤマト、あちこち激戦で傷んでるから、エンジンも取っ替えだそうデス」

「どういうことです?」

「練習戦艦って事で、軽い補修しかしてないところに本格的艦隊戦やらかしたから、スラムが必要になるくらい傷んだのよ」

初代ヤマトは敵勢力が地球のシンボルと見込んで襲うため、船体の痛みも激しく、大規模改修がいくらなんでも必要になったのだ。デザリアムの本格侵攻を知らされた地球連邦軍はキャプテン・ハーロックに泣きつき、時間稼ぎも兼ねて、30世紀アースフリート旗艦のGヤマトを呼び寄せたのである。実質、デザリアムの侵攻をできるだけ遅らせる影武者として。初代を改造する時間を稼ぐために、その後身を影武者にする。なんとも贅沢な使い方だ。この使い方はデザリアムを大いに困惑させ、聖総統スカルダートの決断も数ヶ月伸びる。数ヶ月は時間を稼ぐのだ。ヤマトはその貴重な時間で大改造され、Gヤマト化への芽を蒔かれることになる。

「何ヶ月稼ぐつもりなんでしょう」

「良くて5ヶ月。あそこは指揮官に血気盛んな連中も多いから、最悪は二ヶ月でしょう」

「その時間で間に合います?」

「無人艦隊を囮にして、主力を隠すには充分。月に主力を移動させるそうな」

「ジオンにどう取られるか」

「ジオンにはアムロさんに直接シャアに言わせるそうな。彼も、巻き添えは御免でしょう」

地球連邦軍はこの時期、アースフリート主力を月と火星に分散して送り込んでおり、デザリアムの重核子爆弾防御装備も配備させつつあった。無人艦隊を欺瞞も兼ねた囮に使い、主力を温存する。これがレビルがメタ情報から導き出した艦隊温存法だ。連邦軍は政府の政権交代も控えているため、将校の間では、そのように話がされるのが当たり前だった。しかし、シャーリーは美雲の容姿とドレス姿で言うので、金剛や調の巫女装束と小具足も重なり、傍から見ると、シュールそのものであった。



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