外伝その264『イベリア半島攻防戦13』


――結局、武子はその生真面目さが災いし、国家の一大事の遠因を作ってしまった事になる。後から『ウィッチとしては、もう限界値に達している』レイブンズの事を知ったが、その時には『時、既に遅し』であった。レイブンズの神通力が健在である事に狼狽したのは所属先の陸軍(当時)よりも、対抗意識が強かった海軍であった。日本と連邦を組んだ事は財政的には朗報だが、日本側が『軍隊のシェイプアップ』を掲げ、ジェット化を前提にしての空母と徴用船舶の整理を敢行したのが誤算だった。扶桑の嘆願と連合軍の要請にも関わず、海軍航空隊の統廃合を強引に進め、空軍の設立で、航空関係の機材の八割以上を空自(航空自衛隊)出身者で固めた新部署の管理下に置くことを目論んだ。それは制服組の反撃で潰えたが、結局のところは海軍航空隊の再建に消極的な日本側の方針もあり、空軍が当面の間は空母機動部隊の要員をも担う流れになってしまい、『空軍パイロットは洋上作戦時、海軍の指揮下に入る』という事項が作られるに至る(ドイツの教訓によるもので、グラーフ・ツェッペリンの遺したものである)。陸軍も暁部隊を解散させ、海軍に人員・機材の全てを供出する事になり、自前の戦略展開力を奪われた形になった。まるゆ用の資材を戦車に再割り振りを行うしかなくなるなど、大きな混乱が生じた。チト改良型はこうした資材(元を正せば、戦車用資材)の行き場を決める意味合いもあり、扶桑内部で承認されたのだ。また、暁部隊の船はすべて海軍式艤装に改造され、海軍の所有物とされたので、同時期に陸軍が船舶部隊を有している自由リベリオン軍を狼狽させたりしている。これは日本側が陸軍特種船へ『陸軍と海軍の喧嘩の産物』という偏見を持っていた(そして、敗戦という最悪の結果を突きつけられる武器を持つ)事に由来する決定であり、実に政治的であった。その混乱に憤慨した層が内乱の首謀者層であったりする。その混乱もあり、軍司令部の統制が効く部隊が重宝されるのは当然の帰路であった。扶桑は元老の死後に噴出しつつあった対立を天皇と新憲法の名の下に踏み潰した結果、Y委員会が裏で国家を統制しなくてはならなくなるのだ。その構成員達が表社会での高級軍人や華族、政財界の有力者である事から、後世の人間からは日本版円卓会議と評されたという。









――また、21世紀で学園都市に叩きのめされたロシアもソ連時代、ロシア連邦時代を通し、極東への利権と制海権と不凍港を得たかったので、北方領土を返す気は毛頭なかったが、学園都市が理不尽までの武力で極東ロシアの警察を含めた治安維持組織を綺麗さっぱり消し飛ばした事で極東ロシア地域の維持がもはや不可能になった事、歴史上類を見ないまでの大敗北で敗走する軍隊の姿に失望した国民がモスクワで大暴動を起こすまでに至り、欧州ロシアの安全と引き換えに、極東ロシアを手放すしか選択肢がないところにまで追い詰められ、同位国への冷酷さも批判された。制裁、のため、国連安保理常任理事国の地位から滑り落ちる事さえ囁かれるなど、21世紀ロシアの前途は最悪そのものだった。ロシアはエカテリーナ二世以来の宿願たる不凍港獲得と南進をまるっきり帳消しにされた屈辱に復讐する方向へ傾き、反応兵器すら用いる統合戦争をやがて引き起こすに至る。その選択は次の100年も続くロシアの苦境を招き、ロシア出身の宇宙軍エース『ユング・フロイト』が地球連邦政府大統領になるまでの200年近くの期間、地球連邦内部でのヒエラルキーで下位に甘んじる事になる。――













――こうした政治的混乱とは別に、現場は現場で、混乱と対立が表面化。64F/501統合戦闘航空軍は実質的に連合軍の他部隊の支援をほぼ受けていない(地球連邦軍と陸海空の米英軍、自衛隊の支援は受けていた)状況に陥り、連合軍内のウィッチ部隊内部で孤立同然に陥っていた。501に当時の最有力ウィッチを集中させる事でしか人的支援がままならない状況であった。同時に、Gウィッチへの誹謗中傷対策の意味合いもあり、Gウィッチの全力戦闘の解禁が成り、そのあまりの実力に愕然となった部隊からの詫び状がひっきりなしに届けられていた。(中には、レイブンズ寄りの心情の部隊長が事を知って激昂し、若手を叱り、一発、全力で殴打した上で、首根っこ掴んで引きずって、土下座しに来た者もいた。この傾向はレイブンズの部下であった経験がある者が上級管理職にあった部隊に見られた。教育の効果が間違った方向に作用し、内乱へと先鋭化してゆく海軍中堅ウィッチ達と対照的に、陸軍系は事変〜大戦初期の経験者達が、心酔するレイブンズのために自主的に部下を統制した結果、後の内乱にはほとんど加担しなかったという)だが、現場はシッチャカメッチャカである事は変わりなく、東二号作戦の実質的頓挫もあり、プリキュア達が訓練無しで、直ぐに駆り出されたのである。

――戦場――

「先輩、智子先輩と綾香先輩がサムライトルーパーになったってのは…」

「本当だ。V3が来たって教えたら、智子が直ぐに来るそうな」

「え?」

「圭子から話を聞いたんで、書類仕事、エーリカに投げてきたわ」

「早っ!?」

「おっ、烈火の鎧か」

「兜は外してるわ。力の増幅器ってわけじゃないけど、選ばれた以上は使ってみせないとね」

サムライトルーパーの鎧は聖衣と異なり、最強の輝煌帝以外は力の増幅器の役目は強くなく、防具特化である。だが、それなりには強くなれる。智子はその美貌で、かつてはプロパガンダに祀り上げられたほどだが、今となっては『出戻りのくせに』と中傷される立場である。その経歴と功績が隠された事も世代間対立の火種になってしまったため、武子は本当は公の場で懺悔したかったのだ。(黒江の一軒のせいで叶わぬ事になったが…)智子はこの時、サムライトルーパーとしての武器である『剛烈剣』(本来は烈火剣だが、輝煌帝の鎧に耐えるため)を用いている。黄金聖闘士である智子がサムライトルーパーになるというのは色々とどうか、という声もあるが、とにかく目覚めてしまったのだから、しょうがない。元々が黄金聖闘士である戦士が更に、サムライトルーパーに目覚めるというのも前代未聞だからだ。(しかも、烈火と相反する属性である水瓶座を守護星座にするため)

「たしかに前代未聞だな。水瓶座の闘士が、それと相反する力を持つとは」

「V3さん、頷づかないでくださいよ」

「ハハハ、綾ちゃんから、光子力の使者になっているというのは聞いたが、予想以上だよ」

「おお、そうだ。貴方、プリキュア・ファイブ・エクスプロージョンとか出来ないでしょうが。貴方しかプリキュア5いないんだし」

「うぅ。痛いところ突かないでくださいよぉ」

「映画で大技が一回弾かれてたとか、ハッピーが言ってたわよ?」

「えー!その時いなかったですよー、ハッピーは!ハートキャッチの現役時代のことだし!なんでぇ!?」

「DVDよ」

「だー!なんですかそれー!DVDぃ!?」

「ハッピー、っていうか、芳佳の部屋にいってごらんなさい。オールスターズもカバーしてるわよ。平行世界じゃ貴方達はアニメなんだから、DVDくらいあるわよ」

「ドリーム、なんかツッコミ役になってるよ…」

「うん。こういうのは、わたしのキャラじゃないよぉ〜!こういうのは、ルージュのキャラだぁああ〜〜!」

「あ、本音出た」

ピーチの言葉に、心の叫びをあげるドリーム。妙に切実なので、一同の笑いを誘う。戦闘の合間の清涼剤だ。ある意味、彼女達だから可能な事だが。

「おっと、話はここまでだ。来るぞ!」

「よぉし!」

「あ、そうだ。あたしの予備の烈火剣だけど、ドリーム、貴方に預けておくわ」

「え!?な、なんでわたしに!?」

「その体の元の持ち主は刀でそれなりに鳴らしたのよ?使わないと不自然でしょう?」

「いや、その、そうなんですけど」

「いくよ、ドリーム!」

「え!?ちょっと待って〜!?」


痺れを切らした怪人軍団がまたも突撃してくるので、一同も応戦しようとするが、ドリームは智子がいきなり手渡した烈火剣に戸惑う。確かにプリキュアとして、中島錦として剣は扱えない事はないが……。

「あ、メロディに言っとけ。良ければ今度、付き合ってやるって」

「え、先輩……?」

「まさか…!?」

「あいつは確か、単独だとパワー出せねぇ事あるだろ?『付き合ってやる』のさ、文字通り、な」

圭子はあることを匂わせる。圭子が付き合うと言った事の意味を悟ったか、ドリームとピーチは顔を見合わせ、驚く。これが何を意味するのか。二人は戸惑う表情を見せる。つまり、圭子は『なれる』と言うことだ。プリキュアの誰かに。

「その時を楽しみにしとけ」

圭子の背中に何かの予感を感じたドリームとピーチ。今のバイオレンスさとは異質のものだ。圭子は出まかせは味方には言わない質であるので、ある意味ではやきもきさせるのが上手いというべきだろうか。

「ハァッ!」

先陣を切って戦う智子。烈火の鎧の智子は剛烈剣を振るい、怪人を二刀で斬る。サムライトルーパーは伊達ではないのだ。

『道を開けるわ!そぉぉえぇんざぁあんっ!!』

本家大元の双炎斬が奔る。智子のものが本家大元に当たるので、威力は擬似的に再現している黒江(鎧が違う)と芳佳/キュアハッピー(魔力で再現)を超えるものだ。怪人軍団の列を切り開く。

「本当はあまり使いたくはないが、V3・26の秘密が一つ、『V3フリーザーショット』」!

V3が右腕から冷凍光線を発射する。風見はあまりに敵が多い場合に限り、26の秘密を使う。自分の内臓武装が実験段階の不安定なものである自覚があるのも関係しているのだろう。なお、初期段階ではこの技、ダブルタイフーンを使う技だが、ライダーマンの改良で腕からの冷凍光線に機構変更がなされている。しかし、これでも安定が難しいので、更に改良予定らしい。フリーザーショットで凍結させた敵を圭子が鉄拳オーラギャラクシーで斬り裂く。圭子は基本的に徒手格闘にも強いため、今回の歴史では、黒田しか護衛できないので、真美が呼び寄せたということだ。

「なんかあの人、手刀で怪人斬ったよ!?」

「先輩たち、手刀が馬鹿みたいに強いんだよなぁ」

遠い目のドリーム。レイブンズの手刀は基本的に獅子の大鎌だったり、聖剣だったり、原初の剣だったり、神をも断てる手刀である。圭子も鉄拳オーラギャラクシーの会得により、たいていの怪人を一刀両断できる手刀を有するため、怪異などは赤子同然である。

「関心してる場合か、お前らにも来てるぞ!」

「あ、本当だ!えーと…」

「ピーチ、怪人相手だと拳が効くか分かんないから、この剣を使って!」

「え!?ち、ちょっと待って!剣なんて使った事ないよぉ!?」

「切れ味は先輩が保証してるから!」

「そ、そんな事言ったってぇ!ダンスしかやった事ないよ〜!」

ドリームは中島錦としての肉体の記憶で使えるが、二刀は扱ったことがないので、烈火剣の片方をピーチに渡す。ピーチは格闘こそ自然に覚えたが、剣技は武器がロッド系だった関係でド素人である。いきなり渡されても困るのだ。

「大丈夫、わたしはこの子の記憶で使えないことはないから、それ見て覚えて」

「いきなりぃ!?」

ドリームの器となった中島錦は元々、剣技でそれなりに名が通った関係で、肉体が剣の振るい方を記憶していた。(のぞみ自身も一度だけだが、最強形態で剣戟をフルーレで経験がある)だが、一つ問題がある。日本刀は相手を突くのが主体の剣であるフルーレと違い、斬るための武器だ。そのため、構えや持ち方も全く異なるし、戦闘法も違う。ハルトマンが表向き、サーベル剣術と通していたように、西洋では『相手を斬る』事は珍しい部類に入る。剣術は扶桑軍でも、レイブンズの時代が終わった頃に一度は廃れたため、錦のように使える事自体が誉とされていた世代の剣術は、軍が近代に入ってから体系化して纏めたもので、この時代には形骸化したものであった。それでも、使えないよりは遥かにマシだ。(黒江や智子のように、『人殺しを前提に練られた古式剣術』の免許皆伝は、この時代には好事家のやることと、小馬鹿にされていた)

「待て。お前の体が覚えてるのは対怪異特化の明治期から更新されてねぇ埃かぶったもんだろ。いーか、実戦の剣ってのはな……」

「こんな時に講釈垂れてる場合ですかー!?」

「時間ねぇから、あたしの言う通りに動け!伊達にこいつの剣をン百年見てねぇよ!」

「何気に今、とんでもない事言ってるよー、この人ー!」

圭子は剣はあまり用いないが、転生を繰り返すうちに、戦友達の剣を目に焼き付けており、今回の転生ではソードトマホークを使うことも増えている。また、主に見ていた剣術が飛天御剣流だったり、示現流だった都合上、レクチャーできる剣術が極端なものになってしまったのは否めない。ドリームとピーチは経験がないに等しいため、圭子は黒江が使う示現流をとっさに教え込む。自分自身もダブルトマホークをソードトマホークに変形させて。示現流は戦列歩兵に最適な剣術とされ、かつての傭兵で外貨を稼いでいた時代には、ブリタニア最高の騎士団を壊滅せしめ、時の王室を震え上がらせたという。烈火剣の斬れ味もあり、ド素人に等しい二人でも、振り下ろしで、相手を両断せしめる。圭子もソードトマホークで同じような事をしている。

「V3チョップ!」

V3もチョップで相手の首を両断する。ライダーはチョップを脳天かち割り技という感覚で多用する傾向があり、その最たるものがアマゾンライダーの大切断だ。アームカッターも併用した切り裂き技に発展している。V3も通常のチョップ以外にも、実は腕の内蔵ダイナモを起動させてチョップに電熱を纏わせて斬り裂く『電熱チョップ』が仕込まれている。26の秘密の一環なので、風見は早い段階で知っていたのだが、ダイナモの熱制御が難しいため、ストロンガーの電チョップの雛形『V3電撃チョップ』という形で使用している。

「私が露払いをする。君たちはとにかく、剣を振り下ろして行けばいい!ケイちゃんが言いたいのはそういうことだ」


V3がチョップの軌道を弧を描くように大きくし、周りの敵を倒していく。それに乗じて、三人はとにかく、剣を鈍器のように振り下ろしていき、脳天唐竹割りのように敵を斬っていく。示現流の源流を考えると、至極当然である。敵は指揮官級怪人以外は獣同然の知能程度なので、何かのゲームの敵のように、ひたすら迫るしか能がない。だが、本来目的の敵より遥かに多い怪人と戦闘員は数の脅威を嫌というほど思い知らせてくる。

「って!V3さん、こいつら、あたしらの本来の敵より多くね!?」

「再生怪人は割合、スペックが低下してるからな。たいていの場合、数で押すんだ。歴代組織の攻勢は怪人の複数再生と強い怪人の製造に成功した時に起きるものだった」

「そりゃそーだけど、キリがねぇよ」

「しゃーない、子供達の体力も無限じゃないし、輝煌帝で一気に蹴散らすわ」

「お、おい。輝煌帝って確か、条件が厳しいんだろ?」

「あたしは黄金聖闘士よ?輝煌帝を召喚する条件くらい、一人で満たせるわ」

智子は烈火の鎧をアンダーギアを残してパージし、輝煌帝の鎧を代わりに召喚する。腕の装甲がまず出現し、次に兜を含めた全身装甲が炎と共に出現し、輝煌帝の安定に必要な『仁・義・礼・智・信』の力が宿ったと同時に、下半身の装甲が出現し、装着される。サムライトルーパーの鎧擬亜で唯一無二、力の増幅器的な役目を果たしつつ、最強を誇るモノ。それがこの白き鎧、輝煌帝なのだ。

「すげえ。輝煌帝を一人で纏いやがった…」

「あの、圭子先輩、これってどういうことです?」

「わかりやすく言うとだな、お前らがみんなの祈りなしに最強フォームに変身するようなもんだ」

「えぇ!?」

『超弾動!!せんこぉぉぉざぁーーんッ!!』

剛烈剣を用い、智子は輝煌帝での必殺技を繰り出す。閃光と炎が舞い、炎の力と閃光の如き貫通力で敵を薙ぎ払う強力な技であり、怪人軍団を一気にぶちのめす。漢字表記は『超弾動閃煌斬』であり、智子の持つ奥義が一つである。この技は刀さえあれば発動可能であり、智子は事変時に使用し、無敵伝説を決定づけた。双炎斬と並び、智子がツバメ返しに代わる必殺技として多用していたが、武子の早合点からの進言(本人は思いやりのつもりだった)を招いた点では、見せるのはやりすぎであった。武子が全てを思い出したタイミングはM動乱の最中であり、遅かった。武子が罪悪感に苛まれ、公の懺悔を望んでいたのは、自分の青さが国際問題を招いた事、後輩達の増長を招いた後悔からである。(江藤も言うように、転生者と知らせてくれていたら、いくらでも協力したのにと嘆いている)

「あ!今の技……、士官学校の講習の時に映像で…」

「ああ、航士の戦史教育に使われてる、あの時のフィルムでしょ」

智子は割合、30年代末期から40年代初期までは『扶桑ウィッチの代表格』として扱われ、人気があったため、一時は明野飛行学校教諭の任についていた。今は64Fに永久固定となったが、戦争が激しくなり、教官の前線への出征が相次いでいる事から、レイブンズには明野飛行学校の教諭についてもらう話が未来世界滞在中から挙がっていた。しかし、日本連邦結成交渉中に日本側に『そちらの烏合の衆の飛行隊に何ができるか?』と、史実の該当年度の平均練度を引き合いにして馬鹿にする警察系防衛官僚がいて、その人物が週刊誌に寄稿した事から、ドイツの44戦闘団のような精鋭中の精鋭を集めないと予算を削るという脅しが野党系議員からかかった事も、64結成の理由で、明野が泣いた理由だ。(更に東二号作戦の頓挫で内紛中である)結局、前線飛行隊の各部隊の最高練度かつ古参(G、Rウィッチ)が64に集められ、新選組、天誅組、維新隊に固まったわけだ。日本側が母体となった343空の存在を過剰評価していた事もあるが、他部隊からの抗議(他所の部隊から熟練搭乗員を引き抜いた、他の飛行隊の能力低下を招く、機材を独占するな、など)も当然ながら猛烈にあった。哀れな事に、45年という年代故の誤解からの悲劇が各飛行隊を襲ったのも、64に古参が居場所を求めた理由である。反戦的な無知な政治家の無駄にある行動力が扶桑陸海軍飛行隊をめちゃくちゃにしたわけだ。(その理由が『局地戦闘機の軽視』であり、最古参ウィッチを皆の前で罵倒し、横須賀航空隊と陸軍航空審査部を『偏見に満ちてる』というだけで無期限活動停止処分にしていた。この無知からの現場を顧みぬ処分が一年後の『機材焼却事件』に繋がり、芳佳/キュアハッピーは震電をレシプロ機としては使用できなくなってしまったわけである。横須賀航空隊は結局、その不祥事で徹底的に解体されて血脈は絶たれ、最終時の在籍隊員達の多くは戦争で最前線勤務になり、多くが戦死していく。その当時に横須賀航空隊の管理職の地位にあり、黒江と事実上の対立関係にあった志賀が皮肉な事に、戦争を生き残る事になり、その事実に悩んだ志賀が芳佳に促される形で黒江との和解に動き、戦後に繋がる事となる)

「あれね、偶然の産物なのよ。偶然に撮影出来たけど、武子がうるさくてね。多分、それであたしをスオムスに行かせるのを決心したんじゃないかしら」

「え?」

「あの子、あたし達みたいな『突出した個人』を嫌う気質なのよね、昔から。今は叩かれるから言わないけど、『エースなんて、国民を慰めるための気休めにすぎない記録の上の称号よ』とか言ってたのよ。それで親父さんに叱られた事あるのよね」

「ああ。思い出したぜ。事変中だったな。それが原因だよな?」

「…だと思うわ。あの子、あたしらが命令以外に編隊組まないのを不満に思ってた節があるし」

智子達は武子の若き日の行動が覚醒後の現在になって、自分の首を絞めている事には、諦めの境地であった。武子も現在においては『レイブンズには好きにやらせる』という方針であるが、覚醒前の若き日は、江藤の影響を色濃く受けた集団戦闘至上主義者であった。しかしそれは『技量の平均化は物量に優れる軍隊の特権だ!ウチは物量は期待出来ないんだから…』と理不尽な批判を受ける事になったためもあり、覚醒後は『精鋭部隊の設立』に深く関わる事となり、最終的には自分がその長に収まった。その皮肉な経緯もあり、武子は懺悔したがっていたのだ。償いとして、以前は頓着していなかったはずの個人戦果も短時間で3桁まで挙げているように、エースの存在が戦時には必要とされるのだと真に理解したためもある。

「あいつ、政治をますます嫌うようになったから、綾香とあたしがそれをやんないといけなくなったんだよな。あー。あの時間厳守・堅物め」

圭子もこの言いようである。智子に今度こそは欧州の土を踏ませようとしていた時期があるからで、武子が懺悔にこだわる裏には、圭子の思惑を知らぬうちに潰してしまった事への後悔も含まれているのだ。(以後、圭子のやることに口煩く言う事は無くなっている。圭子がキレて、ソードカトラスを眉間に突きつけたとも。)

「加藤先輩、圭子先輩のこと怖がってるように見えますけど」

「あいつがガキの頃に、あたしの思惑を潰されてな。腹立って脅してやったのさ。ハッタリ効かせてな。それ以来、あいつがあたしに干渉することは無くなったぜ」

ソードカトラスを使って、ド派手に脅した事を示唆する圭子。レイブンズで一番の危険人物という称号も持つため、とてもプリキュアになれることを示唆したとは思えないため、背筋に冷たいものが走るドリームとピーチ。ソードトマホークで自分達に剣術を仕込む一方、真に戦闘狂である事を肌で感じたからだろう。

「帰ったら、智子と綾香にこまけぇとこは教えて貰え。それと、綾香の部下の自衛官達にも教えてもらえ。徒手格闘の細かいテクニックを喜んで教えてくれるぞ」

「喜んでいいのか、微妙だなぁ」

「仕方ねぇだろ。お前らはプリキュアとしてのスペックに頼り過ぎで、実力で超える相手にゃ圧倒されてきたからな。今のお前らじゃ、邦佳にも勝てねぇよ」

「あの、先輩。いくらなんでもそれは…」

「あいつ、蠍座の黄金聖闘士だぞ。お前らが束になったとこで、スカーレットニードルだぜ」

「えぇ〜!ずるいですよぉ!」

黒田は割合、外見からはその戦闘力を判断されにくいが、前史では蠍座の黄金聖闘士であった時期もある。そのため、実質的にはレイブンズに最も近い実力を有する点でも、腹心である。斬艦刀/二刀/槍使いであるので、年齢は若いが、七勇士最年少であったという泊を持ち、温和な見かけによらず、身の毛もよだつエグい拷問を好む点も蠍座を継いだ者と言える。それを教えられ、立つ瀬がないプリキュア達。仕方ないが、『神を守りし存在』となった者との基礎能力値の差はプリキュアと言えども、大きいのである。智子がサムライトルーパー最強の鎧『輝煌帝』を使うこと、それを先導するほどの実力を誇る仮面ライダーV3。自分達より上の次元の力を有する存在を否応なしに突きつけられるドリームとピーチ。だが、至れない次元ではないとする圭子が、自分達と同じ力を持っていることを示唆した事(メロディを名指しして言った事から、スイートプリキュアの誰かに変身できるとは、二人はこの時点で察しがついていた)への嬉しさとやきもきもあり、以後、二人は正式にレイブンズの配下として軍隊生活を送る事となる。



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