外伝その270『ZEROに還りし世界』


――仮面ライダーディケイドは依頼をこなしていたが、かつて自らが滅ぼした『大ショッカー』の残党がバダンに取り込まれ、新たな改造戦士『仮面ライダー四号』を生み出し、黒江たちの思惑を先読みし、先回りして、プリキュアを滅ぼしにかかった事を門矢士は自らの後輩にして、神位に達した唯一の平成ライダーである『葛葉紘汰』(仮面ライダー鎧武)から知らされ、彼の導きに従い、とあるプリキュアの世界に赴いたのだが…。

「こ、これは……」

士が見た光景は『魔法つかいプリキュア』の世界であった。バダンの改造戦士『仮面ライダー三号』と『仮面ライダー四号』、更にバダンと結託し、甦ったマジンガーZEROが魔法つかいプリキュアの世界を滅亡に追いやった光景であった。魔法の因果すら捻じ曲げられるマジンガーZERO、更には仮面ライダーと同等の能力を持つ改造戦士達の理不尽なまでの力で魔法つかいプリキュアの派生世界は滅びを迎えていた。既に、その世界のキュアミラクルとキュアマジカルは倒され、甦ったマジンガーZEROの力の前には、その世界の神位に達していたはずのキュアフェリーチェも無力に等しく、仲間の骸が横たわる地で、絶望に打ちのめされ、ただ嗚咽を漏らすのみであった。ただ一人、生き残った彼女に迫りくる仮面ライダー四号。パイロットを思わせるその風貌ながら、戦闘力はキュアマジカルを一撃で死に至らしめたほどであり、仲間を失い、世界すら滅ぼされたキュアフェリーチェにもはや為す術はない。士は仮面ライダー鎧武/葛葉紘汰の導きに従い、その世界で唯一、生き残ったプリキュアであるフェリーチェを救出。

「あなたは……?」

「通りすがりの仮面ライダーだ。よく覚えておけ」

果たして、ディケイドは四号をその力で退けた。絶望からの希望への安心感で気絶する前のフェリーチェにディケイドとして告げた。『通りすがりの仮面ライダーだ』と。四号をハイパーカブトへのカメンライドで退け、無事に未来世界へ連れて行った。こうして、彼女はその派生世界の唯一無二の生き乗りとなった。基本世界に影響は生じないものの、魔法つかいプリキュアの世界が滅ぼされたという事に危機感を強めた二人は以後、プリキュアの捜索を急ぐ。

「綾香か?俺だ。魔法つかいプリキュアの世界が滅ぼされた」

「何ぃ!?本当か!?」

「鎧武に言われて、急いで向かったが…手遅れだった。フェリーチェの救出が不幸中の幸いだ。ドラえもんに霊魂を呼び出させて、ミラクルとマジカルを蘇生させているが、肉体の生成はすぐだが、魂魄の定着に数ヶ月はいるそうだ」

「肉体の生成にはオリジナルの肉体の破片を?」

「回収できたオリジナルを新たな肉体の糧に使った。ただし、肉体年齢は15歳程度まで進めて培養中だ。魂魄の定着を考えると、半年はいるだろう」

「分かった…」

黒江は士からの電話を切り、皆に魔法つかいプリキュアがZEROにほぼ倒され、フェリーチェのみが救出されたこと、蘇生処置に半年はいるだろうという事を伝えた。その凶報に、のぞみが一番ショックを受け、立ちくらみを起こすほどだった。

「そんな…みらいちゃんとリコちゃんがやられたなんて……あの子達は魔法を使えたのに…!?」

「その因果を捻じ曲げられて無効化され、更に仮面ライダーと同じ力を持つ戦士に倒されたそうだ。キュアマジカルは綺麗サッパリに心臓をくり抜かれていたそうだ…」

仮面ライダー四号は戦闘技術を持たないキュアミラクルとマジカルを蹂躙し、キュアミラクルをライダーキックで、マジカルをパンチで殺害している。フェリーチェはその残酷極まりない光景に打ちのめされつつも立ち向かったが、三号と四号には全く歯が立たなかった。キュアミラクルに至っては、フェリーチェに絶望を与えるため、暗闇大使の陰険な趣味で、ツェペシュ式の串刺しで晒されていたので、彼女は精神崩壊寸前の状態であった。

「それでフェリーチェは、はーちゃんは!?」

「士がなんとか保護した。強い精神的ショックを受けていて、プリキュアの状態で医務室に収容されたそうだ」

のぞみは魔法つかいプリキュアとは2018年以降に出会ったが、全員の名前を覚えていたし、キュアフェリーチェはある種の神に近い存在になったプリキュアであると知っていた。それが為す術もなく、屈する寸前に追い詰められたことで茫然自失に陥る。

「落ち着け、のぞみ!」

「でも、響ちゃん!」

「ここでガタガタ言っても、奴に対抗できる力はまだお前達にはない。頭を冷やして考えてみろ。魔法つかいプリキュアの世界の大地母神に近いフェリーチェすら心が折れかけたほどの相手だぞ」

黒江はあくまで冷静だ。実際、仮面ライダー三号は自分が人間として極限にまで強くなった状態で蹂躙された相手だし、新たな改造戦士も出たとなると、通常のプリキュアでは勝てない事になる。三号と四号がZXと同じ目的で造られたのなら、大首領の器候補であるのは目に見えている。

「そいつらは誰、誰なんですか!?みらいちゃんとリコちゃんを殺した連中の名前は!」

のぞみは現役期間中には見せなかったほどの激情を見せる。中島錦の要素が融合した故か、みゆきと響が唖然とするほどの怒りに燃えている。

「奴らが生み出した、ショッカーライダーだ。ショッカーライダー三号と四号。所謂、ホッパータイプの改造人間の一種だ。仮面ライダーと同じ種類の改造人間だよ」

黒江の淡々とした調子と裏腹の怒りに燃えるのぞみの対照的な様子。中島錦の喧嘩っ早さが出たようで、黒江に詰め寄る青臭さも見せる。

「野郎……!二人の仇を取ってやる!」

錦の要素が出たのか、野郎という荒い単語が無意識の内に出ていた。融合の影響であろう。

「錦の要素が出始めたな。ま、どっちにしても奴らには世界を好きにしようとしたツケはきっちり払わせてやるさ。奴らが終焉の魔神を使うなら、こっちは魔神皇帝だ」

「先輩、今、わたし……野郎って言いましたよね?」

「ああ。多分、錦の要素が出たんだろう。気にするな。自然に出るって事は、あのガキがお前を受け入れたってことだからな」

「珍しい場面見られて、あたしは満足だよー。のぞみちゃんの野郎発言と、あの激怒した顔」

ニヤニヤして、状況を楽しむみゆき。のぞみの声で『野郎!』という台詞が聞けるとは思わなかったからだろう。

「はーちゃん、可哀想に……二人を殺されて、それでも戦うしかなくて…」

キュアフェリーチェこと、花海ことはは元々はミルキィローズやキュアビート同様の妖精からプリキュアになったケースである。先発の二人と異なり、神位にまで到達した存在であった。大地母神の後継者であるはずだが、マジンガーZEROの理すら捻じ曲げる力には無力に等しかった。彼女も気づかない内に、雷神であり、オリンポス十二神の長『ゼウス』の加護を受けていたのと、同じく、仮面ライダー鎧武/葛葉紘汰が動き、彼女だけでも救おうとしたのが幸いし、生き永らえた。理すら捻じ曲げられるに至った、マジンガーZERO。キュアフェリーチェはそれに比して、あまりにも微力であった。彼女はゼウスと『始まりの男』と呼ばれる状態の葛葉紘汰の干渉で生き永らえる事に成功したものの、あまりにも残酷極まりない光景を目にしたショックで、プリキュアの状態を解けなくなっていたりする。

「その子は今、医務室でプリキュアの状態のままだ。当分は変身は解けんだろう。経験があるから言うが、ああいうのは心の問題だからな」


黒江の言う通り、フェリーチェは基地の医務室で悪夢に苛まされ、うなされていた。うわ言でみらいとリコの名を呼び続けており、強い精神的ショックを受けたのが分かる。懸命に抗おうとしたが、仮面ライダー三号と四号に歯が立たなかった事への衝撃と屈辱と悲しみ。それらが彼女を蝕んでいたのだ。元々、妖精から人間の肉体を手に入れた経緯から、10代半ばの肉体とは裏腹に、精神面は6、7歳の子供に等しい故だ。

「今は士が付き添っている。後輩を気づかうのは分かるが、戻ったところで何かできるわけでもないんだ。俺が戻って面倒見るから、お前らは観光を楽しめ」

「え、先輩、いいんですか?」

「ウチのガキで子守りは慣れてるよ」

黒江は花海ことはの境遇にシンパシーを感じたか、基地に自分が戻るといい、タクシーを拾って行った。元々、義娘の翼で子守りは慣れていたからもあるが、同病相憐れむの心境もあったのだろう。それを悟った響とみゆきは顔を見合わせる。

「先輩は行動早いなぁ」

「黒江さんがガキの子守りを引き受けたんだ。観光楽しまねぇと悪いぞー」

「なんだか悪いわね、あの人にあたし達の面倒事押し付けちゃって」

「偶にはああいうのもいいのさ。ささ、ショッピングをあと3時間続けたら帰るぞー」

黒江が子守りのために戻ったので、次に年長の響が場を仕切る。もちろん、土産を多めに買う気づかいと、はーちゃんこと、花海ことはへのせめての土産を忘れない。郊外と言っても、神奈川で言うところの大和市ほどの規模の街であるため、買いたいものは買い揃えられた。響の荒い運転で基地に戻り、医務室に一同が出向くと。

『フェリーチェ!』

「のぞみさん、響さん、それに……う、うぇぇ〜ん!」

「ほら、フェリーチェ。今はプリキュアなんだから、おいそれ泣いちゃ駄目よ」

「で、でも、りんさん……マジカルとミラクルがぁ……みらいとリコがぁ…」

「安心して。この人達が二人を治してくれるから」

「のぞみさん、でも、みらいとリコは……」

「この世界の科学はすごいんだよー、フェリーチェ。死んでも生き返らせちゃうし」

「かなり時間はかかるが、現役期間中の肉体で生き返る。ドラえもんとガトランティスの遺産のおかげだ」

ガトランティス最大の医学遺産、蘇生手術。デスラーも受けたもので、ガトランティスの異常発達した医学が齎したものだ。朝日奈みらいと十六夜リコは遺体が比較的原型を留めていた状態だったことで肉体の再生が可能だったのだ。再生作業はマイクローン技術とガトランティス式施術とドラえもん時代の欠損部の再生が組み合わせられた。タイムふろしきとゼントラーディ化、マイクローン化を経て、ドラえもんのひみつ道具で昇天した魂魄を呼び戻し、肉体に定着させるのだ。この時点では遺体の再生からのゼントラーディ化が始められた段階である。もっとも、蘇生手術は地球連邦が秘匿している最高機密技術であり、ジオンなどは知らないものだ。スペースノイドの反発を恐れた政府の指示によるものだが、地球連邦も『かけがえのない人物』に限定することで医学界を宥めたほどの禁断の技術だ。プリキュアの蘇生ということで許可が出たのである

「もっとも、宗教上の理由や時間制限もあるから、おいそれとできないけどな」

「フェリーチェ、この人が看病してくれてたのよ?」

「え!?えーと、花海ことは、キュアフェリーチェです、よ、よろしくお願いします…」

りんに促され、フェリーチェは改めて挨拶をする。フェリーチェの状態であるので、言葉づかいは10代半ばの少女のそれであるが、時たま素が出るようになっていた。

「黒江綾香だ。そこにお前用のお菓子置いてあるから、テキトーに食え」

「わぁ〜!わくわくもんだしー!」

フェリーチェの状態で素の時の口癖が口をついて出たことは珍しい。それを見て安心するのぞみ、響、みゆき、りんの四名。ことはは当面の間は療養の必要はあるので、ニューエドワーズ基地預かりだが、他の四人はダイ・アナザー・デイに従軍する。ダイ・アナザー・デイには従軍しない形のキュアフェリーチェだが、その後は黒江の預かりとなり、朝日奈みらいと十六夜リコの蘇生を待っての戦線参加となり、本格的デビューは太平洋戦争となるのだった。




――マジンガーZEROに苦しめられたキュアフェリーチェ。その事を知らされた甲児は怒りを燃やし、別次元の自分の願いを叶えるため、亡き祖父の言葉を悪い意味で捉えるZEROを許さない姿勢を明確にする。

「綾ちゃん、俺はZEROを許さねぇ。その子の世界を零に還し、世界から憎まれる悪魔になるのなら、今度も俺が倒してやる。おじいちゃんの最強の遺産、マジンカイザーで!!神を超え、悪魔を倒す!それが魔神皇帝だ!」

「カイザーは万全だよな?」

「あたぼうよ!俺とカイザーはゼウスの、Zの意志を受け継いだ正統な魔神だ!あんなマガイモノにマジンカイザーは負けない!」

生来、甲児は熱血漢である。成人して落ち着いた世界もあるが、ZEROの望むのは『16歳当時の兜甲児』なのだ。『インフィニティ』の出現した世界では、28歳という年齢が彼に落ち着きを与えた反面、青年期の無鉄砲さが鳴りを潜めたので、ドクターヘルから指摘されている。ZEROが望むのは、Zで戦っていた時間軸の無鉄砲な兜甲児であって、アメリカ留学後の彼自身ではない。それはある世界のミネルバX(その世界では美少女のアンドロイドである)も明言し、カイザーに乗るのを止めていた。

「ある世界のミネルバXも言ってた。俺はZに最後まで乗るべきだって。でも、それはZを休ませたい、いつか、Zを戦う機械でなくしてやりたいっていう俺の思いを無視した傲慢だ。だから、俺は世界によってはグレートに乗り換え、カイザーに乗り、ゴッドに乗ったんだよ」

甲児当人はZを労うため、ロボット博物館で余生を送らせたいという思いを抱いていた。それがZEROの予測不可能なものだ。甲児がグレートマジンガーで戦う世界もある事を本人がここで明言した形だ。

『初めてマジンガーに乗った時やドクターヘルとの戦いの頃の情熱は、まだまだこの胸に燃えているし、死ぬ迄消すつもりは無いぜ。表面的に変わったからとそれを捨てる様なお前は兄弟としてマジンガーを見ている兜甲児への裏切りだぜ!』

甲児は21世紀日本向けのインタビューや対談でZEROへの否定をぶつけている。それを示すため、宇宙科学研究所での防護服姿も披露している。また、Zへの愛着を明言しつつ、父の製造したグレートマジンガーへ嫉妬を抱いた事を赤裸々に告白したり、祖父の最後の遺産たるマジンカイザーへの思いを口にする。

『祖父は僕に『マジンガーZは神にも悪魔にもなれる』と言い残しました。グレートは正直、父が僕に黙って作り、鉄也さんをパイロットにした事は妬みましたよ。グレートは言うなら、『魔神を超える偉大な勇者』ですから。それも超えるカイザーは『神を超え、悪魔を倒す』者です』

グレートマジンガーを『魔神を超える者』と明言することで、ZEROに対抗できるアイデンティティを与えようとする甲児。ZEROはアンチ・グレートマジンガーという特性を持つが、それはグレートマジンガーがZの最強性を脅かすと恐怖を抱いているからでもある。ZEROが持つことの叶わなかった神の権能の証『雷』。それをグレートマジンガーは行使できるからだ。

「綾ちゃんに言っとく。グレートマジンガーを俺自身は否定していないからな?グレートマジンガーはZの魂から生まれたようなもんだ。Zを超える存在としてな」

「Zの魂?」

「そうだ。根本的にZとグレートは別の存在なんだよ。グレートが兵器寄りの特性なのは、機械の発達じゃ当たり前だしな」

――実のところ、Zはゼウス、力を束ねる要という位置付けであり、グレートはその座を脅かすのではなく、魂を分けた兄弟にして、人が神の領域に立つための力の象徴でもあるのだ。カイザーがグレートマジンガー寄りの鋭角的フォルムになったのは当然のことで、Zを肥大化させ、歪ませたような姿のZEROはマジンガーにあるまじきものである。甲児はそれを意識して、カイザーのパワーアップに邁進していたのだ――

「カイザーはどうなんだ?」

「おじいちゃんが抱いてた、本当の究極のマジンガーの形の具現化だよ。親父にZの素案を見せてもらったが、アイアンZの後の素案はグレートそのものだ」

「つまりお前のおじいちゃんはグレートタイプこそがマジンガーの究極の形だと?」

「正確に言えば、発達する予測だよ。親父が空戦用のマジンガーを設計し始めた時に頭部デザインに助言したそうだよ」

「空戦用のマジンガー?」

「グレートになる素案さ。で、その統合がゴッドだ。グレートは本当のところ、ゴッドの試作機の中で一番完成度がある機体だったのを仕上げたものだそうだ」

グレートマジンガーはゴッドの試作過程で出来た『出来が良いプロトタイプ』。これは鉄也も知る事項だ。鉄也もゴッド・マジンガーとしてグレートが出来ていれば、『神竜鉄也』をコードネームにするつもりだったらしい。お流れにはなったが、素性を隠すための変名をコードネームにしたがっていた兜剣造の趣味である。

「親父のやつ、鉄也さんたちにコードネームを与えるつもりだったらしく、パトロンから名前もらって神竜をコードネームにしたかったんだと」

「パトロン?」

「そ。親父の大学時代の恩師で、陽子エネルギー研究の権威、神竜圭一氏。アナハイムの大株主の一人で、ビスト家も手を出せない名家の出」

神竜氏は元々は華族かつ、元中級武士の家柄。エネルギー研究に代々取り組んできた博士の血筋でもあり、二次大戦中は人工石油などの研究で名を馳せた。圭一氏はガミラスの三浦半島への流星爆弾で静養中の愛妻を、唯一の実子であった宏を冥王星海戦で失っている。(駆逐艦磯風の艦長)その愛息の面影を持つ剣鉄也を養子に欲しがり、ガミラス戦当時にはまとまりかけていたが、戦争で有耶無耶になりつつある。それを危惧した神竜氏は兜剣造に話を再度持ち出し、ジュンとの結婚を期に養子縁組をする事となり、彼の理論で陽子炉は完成を見た。この時、彼はもはや手のつけようのないレベルの宇宙放射線病に侵されていたので、養子縁組を急いだのである。御年、80歳。兜剣造が青年期の頃の恩師なので、当然の年齢だ。自分が死ぬ前に、家の名跡を鉄也に託す事を決意し、教え子の兜剣造に理論を託し、デザリアム戦役の数ヶ月前に永眠した。鉄也は彼へ報いるためもあり、自分の子ができれば、一人はエネルギー学に進ませたいと公言するのだ。鉄也はデザリアム戦役が始まるまでには神竜家を継ぎ、実子に酷似した風貌の偶然もあり、ビスト家を怯えさせ、彼らの自滅を幇助する事になる。また、陽子制御理論はその発達理論が23世紀から数百年後に光量子の制御理論となり、鉄也の子孫がその確立に尽力したという。

「その神竜氏のおかげなのか?その、ゴッドが完成したの」

「ああ。綾ちゃん、俺だ。もうすぐ俺の義理の父になる彼の確立した理論が陽子エネルギーを誕生させた。そして、陽子、光子力、ゲッターエネルギーの三つのエネルギーを融合制御させる事でZEROを超えるのさ」

「鉄也さん、養子縁組に?」

「14の頃から言われてきてたからな。所長も同意していたが、戦争で有耶無耶になった。彼の最後の願いを叶えてやるのさ」

「余命いくばくも?」

「エネルギー問題に尽力してきたから、重度の宇宙放射線病に罹患していてな。持って、あと半年だそうだ。それで、な」

鉄也は神竜氏の養子になり、名跡を継ぐだけと思っていたが、実は記録の亡失で不明とされる、鉄也の実父が神竜氏が少年時代に両親の離婚で生き別れた彼の末弟の亮一(既に死去)であり、正真正銘、神竜家の血筋である事が後に判明するのである。

「鉄也さん、ZEROはなんでバダンと?」

「肉体の再生で思惑が一致したんだろう。また別の世界のZを依代にしての、な。そして、奴は魔法つかいプリキュアの世界の一つを滅ぼした。下手すれば、その近隣のプリキュアの世界はやられているのは覚悟しておいたほうがいいだろう。君の思惑を奴らが先回りした以上、全員が五体満足で集結できるかどうか」

「わーお……。動くのが遅すぎた、か」

「ディケイドや鎧武を急かせ。できることはそれくらいだ。後は俺たちがZEROを迎え撃つだけだ」

プリキュアの集結に猶予がそれほどないことを鉄也は明言し、自分達が魔神皇帝で迎え撃つと宣言する。キュアフェリーチェの事も考慮したのだろう。

「ZEROはプリキュアの世界を零に?」

「還し始めたんだろう。バダンと組んで、な。カイザーとエンペラーを倒すために。奴が滅ぼせるのは派生世界で、基本世界には影響はないが、それでも、奴は危険だ。彼女らの無念を晴らすには、ZEROを今度こそ倒すのさ」

――後手に回った、黒江のプリキュアの集結の思惑。マジンガーZEROは自分の思惑から外れた甲児と鉄也、それと自分こそ最強とする自らの存在意義を証明するため、邪魔な歴代のプリキュアを滅ぼしにかかる。基本世界にはZEROといえども干渉は出来ないので、派生世界がターゲットになるのだが、魔法つかいプリキュアの世界は現に、地球を焼き尽くされて滅ぼされた。強い繋がりのある近隣の『GO!プリンセスプリキュア』、『ハピネスチャージプリキュア!』の世界もZEROの魔手が伸びかけていると見ていい。ディケイドは黒江に『因子を持つ者の覚醒を促せ』と告げており、因子を持つ者を歴代のプリキュアに覚醒させる方法でしか安全な集め方は無くなったとする。また、『始まりの男』となった仮面ライダー鎧武の力も借りろとも告げる。今回のことで事態が一気に急転直下し、ZEROの蘇りとバダンの本格行動の開始が認識された未来世界。魔法つかいプリキュアがほぼ為す術もなく壊滅に追い込まれた事は、既に集結していた歴代プリキュアにも衝撃を与え、事実上のリーダー格である夢原のぞみは仇討ちを誓い、『生前』には見せなかった激しさを見せていく事になる。



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