外伝その272『ユトランド沖海戦の再来』


――ダイ・アナザー・デイに投入された戦艦はのべ20隻を超える。空母が主戦力と目されている中では異例の戦力である。これは敵味方ともに空母が『航空歩兵母艦』として使われていたからで、日本連邦は現場の反対を押し切り、空母搭載機数の増加のために露天駐機はもちろん、ウィッチ運用装備の撤去を進めた。これはエセックスやミッドウェイの搭載機数を日本が現地に啓蒙し、それに対抗しようとしたからである。艦載機の折畳み機構も含めた改修も含まれる。実際、当時の艦上ウィッチ部隊は倫理観的に対人戦には足手まといであった上、基礎火力が12.7ミリ銃(実質は15ミリ銃相当)では物の役に立たないとされたからだ。実際、充分な防弾装備を持つ米軍系高性能機は20ミリ砲でも中々落ちないからで、艦上ウィッチ部隊は面目丸つぶれ状態であった。スタンドオフ兵器の大量投入やボフォース40ミリ砲、近代的艦隊規模の防空ドクトリンの普及で、旧来の急降下爆撃や雷撃で防空網を抜くことがままならなくなったからでもある。魔力の関係で空中給油だけでは戦闘可能時間を伸ばせない事もあり、艦上ウィッチ部隊の殆どは艦隊直掩にのみ動員されていた。海軍ウィッチ部隊がクーデターに傾いた背景は、この時に周囲から『英雄であるレイブンズに逆らうし、変にプライドが高いから、兵達の反感を買うし、成果を挙げられない』とされ、艦隊直掩にしか動員されない状況への不満、陸軍出身軍人の黒江が艦隊運用に意見具申してくる(黒江は連邦宇宙軍の軍人でもあるので、あらかたの艦隊運用は心得ていたのだが)のが気に入らなかった事も作用していた。しかしながら、実際にはスタンドオフ兵器の大量投入で海戦の様相は変わり、M粒子の介在があっても、艦対艦ミサイルの撃ち合いから始まるので、防御力がある戦艦を弾除けに使うのは、黒江でなくとも思いつくことである。実際、徹甲弾の防御を前提にしての重装甲を持つ戦艦は21世紀の予測と裏腹にミサイルへも高い抵抗力を持つ。(識者によっては、ミサイル戦を前提にした装甲配置に直せという指摘もあるが)更に、扶桑の第一線級の戦艦はビーム兵器が飛び交う宇宙の戦艦と同等の構造に直されているのだ。必然的に戦艦を弾除けにし、空母を後方配置とするドクトリンは取られるものである。

「敵艦隊、見ゆ。戦艦、七、巡洋艦、二十、空母、七、駆逐艦多数!」

「あれだけ叩いても、まだあれだけの艦隊を用意できるとは」

「日本が神経質になるのもわかる。全艦、ミサイルを凌ぎつつ、砲雷撃戦用意!」

扶桑はこの頃になると、地球連邦軍の用いる用語を取り入れており、砲撃と雷撃を一緒くたにした『砲雷撃戦』という単語を用いる様になっていた。また、艦上ウィッチ部隊は艦隊直掩にのみ用いており、Gウィッチのみを艦隊攻撃に駆り出すのが連合艦隊の運用方針である。Gウィッチは基本的に空母や巡洋艦以下の艦を露払いする任務を負い、いかなる手段を用いてでも撃沈せよという指令を受けており、艦隊の指令を受けた智子は闘技の数々で対応した。

『さて、雑魚どもを焼き払うとしますか。ファイヤーブラスタ――ッ!』

智子の場合は自分の前面に光子力エネルギーを集束させ、マジンカイザー同様の超高熱線として放つもので、襲ってきた敵ウィッチ部隊を敵エセックス級空母、巡洋艦、駆逐艦を諸共に焼き尽くす。当然、気づいた各艦から対空砲火が上がるが、智子は自前の炎の翼で飛翔し、Gウィッチの戦闘面での圧倒的な力(逆に言えば、それに加え、聖闘士の力を必要とするほどに高位の改造人間は強いという事であり、それでも死なない異能生存体の威力がわかる)を分かりやすく示す。智子が射線に巻き込んだのは、空母が一隻、軽巡洋艦四隻、駆逐艦が五隻である。炎の翼、炎を纏う刀、銀の瞳と青髪の『分かりやすい』異能の力のビジュアルもあり、レイブンズの健在を示す格好の映像が撮れたと言える。また、智子が『昔年の力を完全に取り戻した』事を示すために『かつてと同じ服装をしていた』ため、かつての任地であったスオムスの関係者の間で物議を醸し、天測航法を完璧にこなす点で艦上ウィッチ部隊の嫉妬を煽った。(しかし、扶桑海事変当時のウィッチには天測航法は必須であったりするのだが)あまりにも、当時の大半の頃の実力と今現在のパワーとに差があったからだ。スオムスを離れる事が決まった頃に覚醒しているので、智子を責めても無意味であるが、ともかくもモンティには災難であったりする。モントゴメリーは混乱防止の意図から機密にしただけなのだが、後から重罰が検討されるのは近代軍組織としては不味いが、日本の一部が強行した。キングス・ユニオン内部でもマーケット・ガーデン作戦の失敗から、手腕を疑問視されていたが、日本の一部勢力は強引であり、怨念返しとさえ揶揄された。また、そもそもの行為が重罰にできるものでもないので、現場の対立を招いたということでの昇進の差し戻しを刑罰とした。また、すでに日本は2010年代初めに、黒江と赤松に教導群が負けた事を発端にしたボイコット事件も経ていたので、それも防衛省が現場に強く出られない理由だ。これは一部政治家のシビリアンコントロールを理由にしての暴走であったが、確かにGウィッチと通常のウィッチの対立は深刻だが、突然変異で現れた者への偏見により、元から通常のウィッチの立場は悪い。かつての国民的英雄を冷遇した事は、現任者の罪でもないし、死亡者さえ出ている前任者の責任は今更、問えない。各方面に問題が広がってしまうのを恐れた昭和天皇が勅を出すことで混乱の収拾が図られたものの、海軍系ウィッチの先鋭化は却って煽られた。改革派である親G派は『一度、後方に下がった者が戻りたいだけで罪なのか?』というキャンペーンを初め、対立をエクスウィッチの問題にも波及させることでの普遍化を狙った。この問題は怪異が実弾を使っていた時代に現役であった世代と、事変後の世代の認識差によるものだけが対立の要因ではない。Gウィッチ達が摂理を超えてしまった事、人殺しも肯定する(軍人としては当たり前ではある)事、また、機材の優遇も嫉妬の要因であった。20を超えても現役時代と遜色ない実力を持つ点で嫉妬を買った面もあるが、世の中、20代は10代に毛の生えた若造なのだ。機材は優遇というより、現役を下げて訓練している間の戦力低下を嫌った上層部が復帰訓練を兼ねて新装備に転換させたのが実情(復帰するリウィッチの現役当時の機材はもう時代遅れな事もある)であるし、Gウィッチは個人ルートでの調達が効くからこその機材てんこ盛りなのだ。摂理のほうはガリア・カールスラント戦争、南北戦争の後からの摂理と倫理であり、古来、ウィッチは人同士の戦争に従事しなかったわけではない。その事から、Gウィッチが当時のウィッチ社会で如何に『はみ出し者』、『摂理に反するならず者』扱いであったかが分かる。その点はモンティと東條の罪であった。東條のほうがレイブンズ現役時代の首脳であった分、重いと言える。東條は基本的に女性には紳士であり、意外に慕う者も多いので、東條がパトロンだった者らが対立を煽ったという点からも罪人であるが、東條の周りで甘い汁を吸っていた者らが始めた事であり、しかも、海軍系に東條がパトロンとなったウィッチが多かったのも、日本には予想外の展開であった。これは陸軍系はレイブンズ信仰が根強く、45年でも現役世代に属している黒田の統制が効いていたためでもあり、また、レイブンズの活躍に引け目を感じた世代がいた海軍系ウィッチを不憫に思った東條が不公平を無くすためとし、海軍系の間接的パトロンになっていた経緯のためだ。(15年で15歳の黒田は、事変時にはまだ小学校二年相当であったことになるが、幼年学校繰り上げ卒業後、士官学校は出ている)その彼女たちを宥められなかった事、自身のプロパガンダ姿勢の誤りで苦労を黒江と智子に背負い込ませた事は東條の後ろめたさであり、バード星へ移民した理由である。また、別の理由として、補助要員と見做していたはずの通常パイロットが必要とされた一方でウィッチの技能優秀な教官の動員が規制されたために、東二号作戦が頓挫したのも理由だった。(ウィッチは数が少ないので、教官を出さないと、黒江達の交代要員にもなれないのが理解されなかったのも大きい)その一方で、日本から義勇兵が集められ、その動員数はこの時の従軍パイロットの八割に達するこの日までに。数合わせと思いきや、死も厭わない敢闘精神旺盛な元・日本軍義勇兵らがありとあらゆる攻撃手段で敵機/敵艦を攻撃するため、リベリオン軍には戦闘ストレス反応を患う兵士や将校が続出したも不満である。、ある義勇兵の駆る彗星爆撃機が帰投不能と判断し、対艦特攻を敢行、発艦作業中のエセックス級に突っ込んだ。ウィッチの発艦作業中に、搭載する500Kg爆弾ごと彗星が突っ込んだため、甲板にいたウィッチは即死、それを目の当たりにした生き残り達はあまりの衝撃に戦闘ストレス反応となるなど、敵に被害以上の損害を与えた。こうした対艦特攻までも義勇兵がやるため、目立った戦果のない艦上ウィッチ部隊は肩身が余計に狭かった。Gウィッチの圧倒的なパワーも先鋭化の理由であるのだけが昭和天皇の予想を超えていたのだ。

「若い連中への示しもあるし、ちゃっちゃとやっちゃいますか」

智子のこの時の戦闘力は既に前史の最終段階を凌駕しており、そのビジュアルもあって、歴代プリキュアをも唸らせた。艦隊は智子による航空支援を受け、三度目の決戦に臨む。思いっきり叩いても、短時間で艦隊戦に余裕をもって臨めるのも、リベリオンの強みであった。





――この時に動員された戦艦は大和型戦艦、それに匹敵しうるブリタリア戦艦、超大和型戦艦、超甲巡などの新鋭艦であった。比較的連合軍で国力に余裕がある両国の連合艦隊である。高度なオートメーション化で乗組員の削減に成功した近代装備を持つ艦を押し立てての艦隊構成でありつつ、比較的に艦齢の新しい艦を護衛として帯同させており、ある意味では『第二次世界大戦最終世代の戦艦達による宴』と言える。ブリタニアは前の海戦の痛手で新鋭艦以外に再動員が難しくなったが、無事なライオン級とそれ以降の新鋭艦の動員で面目を保った。ロマーニャは地中海でしか活動不能な航続距離の問題と、タラント空襲の痛手から立ち直れずじまいだが、ザラ級重巡洋艦のみが参戦している。。ガリアはそもそもティターンズのハラスメント攻撃もあり、海軍が機能不全。カールスラントはそもそも本国が南米大陸相当に疎開しており、艦艇の参加は見送られている。そのため、事実上は日米英の三カ国の艦隊決戦となった。大和の系譜と新世代米軍艦の集大成、ドイツ軍戦艦の集大成がぶつかり合うというのは、戦艦の発達が21世紀世界にとっては未知の領域に入った事の証明であり、大和の46cm砲が一種のスタンダード化したという仮想戦記さながらの状況と化した場面である。日本の思惑とは裏腹に、戦艦同士の砲撃戦はミサイルが決定打にならない戦場では、むしろ起きやすい。射程は56cm砲が一番であり、23世紀の宇宙戦艦用の火器管制装置には、20kmなど近距離である。

「主砲、全門斉射よーい!撃ち方初め!」

56cm砲は艦載用実体弾として史上最大である。当たった場合、並の欧州戦艦では装甲どころかキールまでへし曲げてしまうほどのダメージが入る。また、当時のリベリオン戦艦は扶桑の45口径46cmまでは防げるが、それをも超える艦砲は想定外だ。先頭のアイオワ級が一撃で艦首を損壊させられ、もう一発がボイラーを一個破損させた。破壊力は51cm砲の更に1.5倍、2.5トン以上の砲弾が極超音速でかっ飛ぶ。カールスラントの通常の列車砲と同等だ。播磨型は至近距離で撃つらしく、未だ沈黙している。

「主砲!全砲門装填後待機!」

「まだだ、よく狙え」

播磨型が14000の距離に敵を捉えた時、ようやく主砲が旋回する。

「敵の弾は9000を切ろうとも通らん!狙いやすいところまでいく!」

富士がアウトレンジに徹する中、播磨型は統制射撃を用意する。距離12000から副砲で牽制しつつも距離は日露戦争並の8000まで接近した。

「撃ち方斉発!用意!てぇっっ!!」

超大和型戦艦の51cm砲が日露戦争並の至近距離で放たれば、距離20000での砲戦前提のリベリオン軍艦は耐えられない。アイオワ級のもう一隻が見事に轟沈し、史実フッドのような哀れさを誘う。アイオワ級は自艦の砲に耐えられないという砲撃戦での難点があるため、超大和型戦艦のいる戦場では特に脆さを見せる。もちろん、その距離では、大和型戦艦でもリベリオンの艦砲でぶち抜かれるはずだが、超合金ニューZと硬化テクタイト板の装甲は見事に弾き返す。更に、被弾に強い三重ハ二カム構造の多重空間装甲なので、45年当時の戦艦砲弾は余裕で弾ける。新・科学要塞研究所などにとってはマジンガーZより四倍も硬いと宣伝されるニューZのセールスになる。単に近代化したのではないのだ。特にニューZは宇宙合金グレンと同等の性能を持ちつつ、量産が比較的容易である。

「ハハハ、伊達に超合金にしたのではない!蹂躙せよ!」

富士の艦長など、異様に高いテンションである。この時の艦長は史実では武蔵の二代艦長であった『古村啓蔵』で、第二水雷戦隊から転勤したばかりである。木村中将の第二水雷戦隊司令としての前任であり、水雷出身である。矢矧に乗艦経験もあるバリバリの水雷屋だが、大和型戦艦の操艦経験が買われたのだ。

「進路、敵先頭艦!踏み砕け!」

と、水雷屋らしい突撃を敢行する。600mの巨体に280mがぶつかられた場合、火を見るより明らかな結果となる。それが30ノット以上の高速で突撃するのだ。600mの巨体に似合わぬ加速力、その敏捷性は21世紀までの造船学を吹き飛ばしている。大和型戦艦と酷似しつつ、全長が三倍近くになり、艦型が操舵の応答性に優れたモノになったのも意外に高評価である。突き進む富士。水雷戦隊は蜘蛛の子を散らすように逃げ、空母も退避する。まるでゴジラだ。必死に戦艦群が砲撃をするが、まるで効果なしである。果敢にアラスカ級が至近距離からの31cm砲を打ち込もうと接近するが、超甲巡に撃退される。超甲巡はそのために造られたのだ。大和型戦艦に酷似した艦影なのも遠目からの視認を誤認させるためだ。アラスカ級は果敢に超甲巡に挑むが、そもそものコンセプトが違う上、『大きい重巡洋艦』と『小型の巡洋戦艦』の実情の差もあり、次々と撃退される。

「アラスカなどは超甲巡に任せれば良い。我らの敵はモンタナ、その後ろのヒンデンブルク号だ!」

意気込む古村啓蔵だが、ここで意外なダークホースが超甲巡の主砲の一基を損壊させる。そのダークホースとは、ガリアから奪って完成させたアルザス級戦艦であった。

「どこからの砲撃か」

「敵艦隊の後列、ヒンデンブルクの護衛です。MAC構造の構造物からして、元・ガリア艦です」

「ジャン・バールか?」

「いえ。艦影は…データベースに一致する艦あり、アルザスです」

「アルザス?」

「対ビスマルクの後継という名目でガリアが戦前に建造しようとした未成艦であります。ただし、主砲はガリアのものとは考えにくいので、ラ級のものでも使ったか?」

アルザスはガスコーニュの更なる拡大型で、原型では、フランス戦艦最大の大きさを持つとされ、16インチ砲を持つともいう大艦であり、フランス(ガリア)が戦前の海軍規模を維持していたのなら、欧州屈指の名艦と謳われただろう。だが、より巨大な艦が引きめく海戦では、取り立てて大きいわけでもなく、主砲口径も平凡な艦である。だが、ラ級用の主砲塔を転用したのが幸いし、火力はモンタナをも凌ぐ。また、船体はガリア製のものを転用したため、アイオワ級よりはよほど頑丈だった。そのため、超甲巡に手痛い損害を負わせる事に成功する。

「超甲巡を下がらせろ。これ以上は危険だ。だが、あの艦はうかつに撃沈できんな。ガリアが取り返せと喚いておるからな。今回もヒンデンブルクにお帰り願おう」

富士はその瞬間にアイオワ級の三隻目を『踏み潰す』。文字通りに2つに引き裂いたのだ。富士と対等に戦えるのはヒンデンブルクだけだ。こうして、雑魚を蹂躙した富士はヒンデンブルクとサシで打ち合う。ヒンデンブルクは53cm砲だが、威力では富士の56cm砲に肉薄する。ドイツ第三帝国系統の集大成に近い53cm艦載砲は、大和型戦艦の46cm砲を陳腐化させるために用意された。バルト海の気象条件的に、近接砲撃戦をドクトリンにしてきたドイツ海軍にしては珍しい経緯での開発で、キール運河の航行を考慮しない点も特異なのがH43である。大艦巨砲主義もここまで極めると、凄まじい様相となるが、史実の記録でも、ヒンデンブルク号より巨大な船も控えている事は容易に想像されるため、更なる巨大な戦艦のタイプシップとして活用されているという推測がある。出し惜しみしないのは、その用意が進んでいるからともされる。扶桑もそれを読んでいるので、三笠型以上の大きさを用意中である。大艦巨砲主義も56cm砲まで凄まじくなると、航空戦力が可哀想になるくらいである。それを購入できる扶桑軍の財政の潤沢さに日本は目をつけていく。




――扶桑が戦時中でも、国民の娯楽を特に規制しなかったのは、ひとえに広大な勢力圏による自給自足が可能であるからである。あるのは国民の自主規制のみであるが、ある意味では扶桑国民、特に軍人にとっては『生きにくい』時代であった。海軍系部隊にクーデター参加が多かった理由は、『精神論振りかざしてんから戦争に負けるんだよ、オタンチン!』、『B29に手も足も出ないくせに』という誹謗中傷に現場の不満が爆発したからである。また、水エタノール噴射装置を『調整が困難かつ実効がほとんど認められないどころか性能低下の一因ともなる』と言ったとされる海軍技官とテスト部隊を公然と罵倒するなど、シビリアンコントロールを傘にしての野党政治家の横暴が目立っていた。彼女たちの攻勢重視の考えが頭ごなしに否定された事への屈辱が彼女たちを暴発に至らせるのだ。武子はなんとか不満を抑えようとしたが、日本側の野党議員たちの傍若無人ぶりが酷すぎた結果、黒江の予想通りに事は運ぶのである。黒江がプリキュア・プロジェクトを立案したのも、クーデターの事後処理における厳罰に怯える親達が続出し、新規志願数がグンと目減りしてしまう事への対策なのだ。つまり、新規を大規模に集められなくなるために、その分を一騎当千のプリキュアを数十人で補おうとしたからである。マジンガーZEROはそれを予測し、先に別世界のZを変異させ、プリキュアの世界を滅ぼしにかかった。黒江が計画を急いでいるのは、犠牲が出たのと同時に、ZEROに先読みされた事への驚きも含まれている――








――マドリードの基地――

「日本はいずも型の空母化や戦艦のレンタルで揉めてるって?」

「2010年代は平和だねぇ」

「しかたない。野党は軍備よりも福祉に金かけろというが、年寄りより、僕たち若い世代に金かけてほしいくらいさ」

のび太とスネ夫は2010年代では子育て中の若めの世代であり、子供の招来の学費に悩む20代後半の青年である。そのために子育てにかかる費用を抑えるには、子供の数を抑えなくてはならないという現実的な事情もある。のび太達の父母の時代のように『兄弟が多い』のは珍しく、野比家の嫡流では、兄弟を持つ子孫はセワシの後の代まで出ていないのが証明で、比較的裕福な家庭となった二つの家庭をも悩ますのが、21世紀以降の教育費の高騰の問題だ。

「21世紀の教育費、高いしな。この時代みたいに軍学校に入れば、学費免除ってわけでもないし」

「仕方ないですって。そういう時代ですし」

「この人達、本当に漫画のあの子達が?」

「はは、僕たちも28になれば、倅の教育費に悩む親になるって」

のび太たちは親が古風な言い回しを使うためもあり、息子を倅と表現する。りんは目の前の二人の青年が、自分のよく知る漫画の少年たちが長じた姿である事に驚き、目を丸くした。のび太は某スイーパーのような服装であり、スネ夫はそれなりの企業のCEOらしい服装であるが、この頃はまだ、35歳以降のように髭を生やしておらず、若さを感じさせる。

「スネ夫は家の稼業継いで、商社のEEO、僕は公務員。それなりには成功したよ」

「うーん。手堅いけど、予想通りっつーか…」

「親父の勤めてた商社に縁故で入れるような時代でも無かったし、公務員になったんだ。親父はともかくも、お袋がね」

玉子を安心させるため、また、裏稼業と両立させるために環境省に入った事を、りんに教える。のび太は自然環境調査員という表向きの職とは別に、アドルフィーネ・ガランドの指揮する『G機関』のエージェントという裏の顔を持っており、元々の異能生存体の素養とギャグ漫画補正というこれ以上ない生存能力を持つため、裏稼業で結構な金額は稼いでいる。それでも、ノビスケ一人しか子供を儲けなかったあたり、教育費の問題があったのがわかる。21世紀には子供の教育費は大学までに千万近い金額がかかるのだ。

「倅が大学に行くまでの教育費をカミさんが心配してね。公務員の給料と別に、裏稼業しないと」

「裏稼業って…」

「スイーパーさ。だから、Mr.東郷とも付き合いはあるよ。一度、仕事の関係で敵対したけど、実力伯仲で決着つかなかった上に、政府には、僕と彼を争わせて、Mr.東郷を排除しようとしたのがいたけど、案の定、消されたよ」

「ゴルゴとサシでやったの!?」

「ああ、クイックドロウでは勝って、格闘は運で乗り切ったよ。それでお互いに異能生存体と自覚して、僕らを利用した、ある副大臣を消した」

のび太はクイックドロウ(早撃ち)では、ゴルゴ13を凌ぐ。引退間近の壮年の姿の二代目との対決であり、調達が会った青年期相当の容貌の三代目ではないものの、能力値は同じなので、互角に渡り合ったというべきだろう。その過程で二代目ゴルゴ13は当時、自身の肉体の衰えから、三代目を欲していた事もあり、当時に20歳の若造だったのび太のバックにG機関がついている事を知り、自分の後継になるクローンの製造に利用した。また、『ゴルゴ13』をモンスターとし、排除しようとした日本政府内の派閥への罰を与え、二代目は製造された三代目の育成を依頼し、それ以降は姿を消した。また、三代目は若い肉体を持ったため、姿相応に饒舌な部分があり、若き日の初代を彷彿とさせる。

「それと、トップシークレットなんだけど、ゴルゴはそもそも、それらしい人物が1930年代前半の生まれで、それから年月と共にクローニングで代替わりしてきたのが実情なんだ」

「え、すると、ある年代で代替わり?」

「うん。初代のゴルゴは少なくとも、旧日本軍の由緒ある家柄の軍人とロシア系の誰かが結婚して生まれたか、2.26事件で自刃したとされる将校の忘れ形見というのが有力なんだ」

「つまり、日露のハーフ?」

「よく知られる通り名が東郷だから、日露戦争の英雄だった東郷平八郎元帥の血を継いでいるとも言われていたそうだよ」

「由緒ある家柄じゃない」

「そう。特に元帥の子孫は割に出世しやすかったし、妾に産ませた子も相当数を認知してるから、女遊びしまくってたって証言あるよ」

「うへぇ、時代が違うのはわかるけどねぇ」

ドン引き気味のりん。と、そこへ。

「あー、忙しい〜!」

「響?何してんのよ、あんた」

「これから自衛隊連中の慰問ライブだよ」

「ライブ?アンタ、ピアニストじゃ」

「はは、んじゃ、お前にあたしがバイトでなってる姿を見せてやるよ」

「?」

「つまり、こういう事よ、リン?」

「うぇ!?うっそぉ!何よそれー!」

北条響から美雲・ギンヌメールに姿を切り替えるシャーリー。声色も妖艶さを感じさせるものになり、言葉づかいも落ち着いたもので、髪も紫のロングヘアスタイルになる。シャーリーがケイオスに許可を取り、代行という形で変身しているのであるが、ケイオスとしても、ワルキューレを地球本国につれていける状況でもないので、了承している。

「なんなら、ライブを見にいらっしゃい。歌は神秘って事を教えてあげるわ」

「……なんか見違えるわね……」

「しかたないわ。別人の姿を借りてるから。歌えるようになるまで特訓もしたから」

美雲モードだと、素の時、北条響や紅月カレンのガサツさがなくなり、態度も大人びて、余裕のある神秘的な雰囲気を纏う。声色も大人びたものに変化するので、シャーリーの変身体と判明した際の海自将兵は腰を抜かしたそうな。

「あんた、一応は絶対音感持ってるんだったわね」

「まあ、歌えるかは別問題よ?絶対音感あっても音痴な人はいるし」

と、言うわけで、りんはその流れでそのまま慰問ライブを見に行ったわけだが、いきなり『LOVE!THUNDER GLOW』という美雲のソロ楽曲から始めた(ワルキューレ・トラップ収録)シャーリー。黒江が鍛えたため、ロックミュージックも妖艶に歌いこなす。前世の一つが音楽に関係した『スイートプリキュア』な事も考えると、ごく自然なことでもある。美雲のキメ台詞も完コピしているので、自衛隊の将兵は盛り上がっており、黄色い声援も乱れ飛ぶ。

「あの子、どんな特訓でここまで…」

「あれ、りんちゃん?来てたんだ」

「のぞみ?何よその格好」

「特訓帰りで、軍服に慣れておくためだよ」

錦は武子と同じく、軍服で戦っていたため、着慣れていないとおかしいため、のぞみの人格と容姿がスタンダードとなった後は特訓のために、勤務中の着用が黒江より義務づけられている。錦のものとはサイズが違うが、階級章が大尉であり、航空記章もついている、この時期の制式軍装だ。刀も下げている。また、形式上、空軍の正式発足前であるので、まだ陸軍の軍服である。(黒江は最近、戦闘服が普段着である)

「あんたが旧日本軍の軍服姿かぁ。前世の職場じゃクレーム飛びそうね」

「学校によるよ。わたしのいた世界だと、学校によって、普段の生活の服装まで気を使うし、うかつな事言うといじめられるからね」

「確かに」


「隣、いい?」

「あたしとアンタに、そういった気遣いがいる?今更でしょ?」

「一緒に子供の頃から過ごして、プリキュアでも一緒だもんね」

「あたしの世界だと、あんた、ココを追いかけて、20代の半ばくらいでココやミルク達のもとにいっちゃったわよ?その時は泣いて、怒ったわ。あたしも、あんたと一緒にいた時間が楽しかったから…」

「その私の記憶、見たよ。その時はごめん。でも、私自身は時間が経つに連れて、あの時のままでいられなくなっていく自分が嫌だったんだ。年を取っていくと、友達と思ってた人たちに裏切られたりするから」


「若い頃の友情って、続くのもあれば、誰かの裏切りで唐突に終わっちゃうのも多い。時間は人を変えていく。あの人達から聞いたけど、プリキュアだった頃が一番幸せって言ったそうね?」

「教師をやり続けていくと、若い頃の夢とか理想は現実が打ち砕いていくんだ。教え子の夢が必ずしも叶うわけじゃない場面にもいくつか居合わせたんだ」

「あんた、昔は『夢は絶対に叶うもん!』とか言ってたものね」

のぞみはプリキュアとしての現役時代には未来を純粋に信じていたが、教師生活で現実の厳しさを思い知らされたため、プリキュアであった頃に戻りたい思いを抱くようになっていた。のぞみのいた世界線では、ココとの淡い恋は実る事はなかったがための悲観的な面が見え隠れしている。

「だから、りんちゃんに会えてよかった。ナイトメアやエターナルと戦ってた頃の気持ちに戻れたから」

「諦めきれなくて何回も人生リトライしてたらこうさ、ハハハ……」

「あ、先輩!来てたんですか?」

「ライブの主催、俺だもん」

黒江は義娘を影武者にしつつ、ライブを主催しつつ、ちゃっかりと見ている。そして、そのカメラ撮影が。

「夢は諦めなければ、形こそ変わっても叶うだろう?そこまでのみちすじが見えているなら」

「貴方は?」

「仮面ライダー二号、一文字隼人。本業はカメラマンさ」

「か、仮面ライダーって、ピーチが言ってたあの!?」

「そう。俺はその第二号さ」

隼人は気さくな性格もあり、冗談めかしての会話を得意とする。本郷が自分を律しているが故の厳格な雰囲気により、近寄りがたいのに対し、ストイックさも併せ持つ風見、根は明るいが、ムッツリな本郷の間を取る活躍も多い。

「俺は1940年代の生まれでね。71年に改造されて、普通の人間で無くなった。君らが生きてた時代には俺はおじいさんになっていて然るべき年齢だが、組織と戦う力、永遠の若さと引き換えに失ったものも多い。」

「老い、ですか?」

「そうだ。だが、この体で得た者も大きい。俺たちの父親代わりだった人もいた」

隼人は立花藤兵衛に叱咤激励された経験を持つ仮面ライダーの一人で、風見、敬介と並び、立花藤兵衛に世話になった率が高い。本郷が新サイクロン号完成時の試運転時に撮った藤兵衛との写真を懐に肌身離さず持ち歩いているように、(立花藤兵衛は本郷の父の大学時代の親友だった。青年期は自分がレーサーだった)隼人も新サイクロンの二号の受け取り時の写真を持ち歩いている。七人ライダーの精神的支柱とも言える存在だったが、96年に急死している。谷源次郎と同時期の死だった。

「その人から言われたもんだ。『小さい子供の夢を叶えられないで、やれ、人類の自由だの、世界平和だの叩くな!』ってね」

隼人は本郷と違い、本郷に匹敵するポテンシャルというだけで二号に改造されたため、強力怪人の前に一敗地に塗れたショックで弱音を吐いたら、そう叱咤された。それを思い出す。

「君が生きてきたことで直面した事に俺がどうこういう資格はないが、綾ちゃんみたいに、三回も人生をリプレイしたら、とうとう神様になった、なんてことも起こった。人間、諦めなければ、奇跡は起こせるさ」


「あたしたちがプリキュアの現役時代の姿で生き返ったように?」

「君たちも俺たちと同じ、日本の女の子の憧れの的なんだ。その効果で綾ちゃん達と同等になれた。つまり、君たちは戦うために生まれ変わったんだ」

「戦うため?」

「それはわたしが心のどこかで望んでいた事でもあるの。ごめん。別世界で戦争にまで巻き込んじゃって」

「あの時、プリキュア5になった時点でアンタと腐れ縁になるって分かってたもの。それがあたしらプリキュアの転生した理由なら、魔法つかいプリキュアの仇討ちをしようじゃない」

「りんちゃん〜!」

「わ、ば、ばか、ジュース溢れるっしょ」

のぞみは感極まって抱きつく。その様子を早速撮る一文字隼人。それに笑う黒江。魔法つかいプリキュアの仇討ち。言うは易く行うは難しとはこの事を言う。黒江はマジンガーZEROと二人のアナザーライダー達への対抗のため、手をこれから探っていくのであった。



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