外伝2『太平洋戦争編』
第四話


――1947年になると、扶桑皇国は急速にジェット化が進行し、天山はそれほど流通しないままに退役。流星はターボプロップ機に改造され、翼部搭載量が強化された型がA-4スカイホークの本格配備までの場つなぎで生産され、大型空母以外の空母に配備されていた。これはリベリオン本国軍にF9Fが現れ始めた故の対策であり、およそ一年後にはFJ-4フューリーが配備されるという予測が統合参謀本部にあったからだ。










――統合参謀本部 

「来年にはFJ-4が飛んでいるのも視野に入れる必要があるな」

「リベリオンの工業製品の更新ぶりには参りますな、井上さん」

井上成美大将は現場最高責任者となった山口多聞に予測を告げる。リベリオンの工業力は最高を誇る故、数ヶ月もあれば全空母の艦載機を全取っ替えするのも余裕だ。早くもF8FからF9Fへ更新され始めているとなれば、より次世代のFJ-4が一年後にも配備されかねないというシナリオも考えなくてはならない。

「そのために大枚叩いてF8Uを買ったのだ。あれに匹敵する性能の機体は当分の間は出ん。更にF-4Eのライセンス交渉に入っている」

「早いですな」

「手は打っておくべきだ。5年後を目処にF-15世代の技術習得に移る予定だ」

「国内の守旧派はどう処理を?」

井上成美は念には念を入れ、F-4Eのライセンス生産を目指している事を明かす。自国のジェット機技術は未熟である故、他国で実績がある戦闘機のライセンス生産に力を入れるというのが彼の方針であった。無論、これに反対する声が守旧派などに存在する。だが、本来なら震電にも四苦八苦していたであろう自国の航空技術を考えると、これが最善なのだと。

「偏屈なナショナリズムが別の世界の我々を破滅に追いやったのは知っているな、山口君」

「ハッ」

「既に公安警察(特高警察から改編された)に情報をリークしておいた。福留あたりは直に完全に失脚する。これから必要なのは、思考の柔軟性に富む人材なのだよ」

井上は改革のためには海軍中枢に食い込んでいる無能な者達をあらゆる手段で以て追放、もしくは粛清も辞さない構えだった。彼の言う、「福留」とは、福留繁参謀の事である。この頃は閉職へ追いやられたとは言え、扶桑海事変時に最大派閥化していた『堀井大将』の派閥に属していた。井上はその残党の再起計画を完膚なきまでに叩き潰すために、公安警察を動かすのだと示唆した。

――改革派による粛清はまだまだ終わらない

それを示す井上であった。




――そんな政治的動きとは関係なく、現場の方はF9F対策に追われていた。


「F9Fか。性能はどうだっけ?」

「初期のジェット機としちゃ優秀な部類だ。しかもこいつは後退翼型のクーガーだ。そっちの方を作りやがったか。まっ、当然か」

「直線翼型が存在するのか?」

「ああ。そっちはパンターというんだが、朝鮮戦争で使われている。技量差で性能をカバーして活躍したと聞いてる。どっちも実際はなんとも言えんが」

黒江はF9Fをそう評する。朝鮮戦争での記録は主に国連軍の都合に良いように記されていたのが23世紀には判明している。判明しているのはF-86とミグ15のキルレシオは互角ということ、直線翼ジェット機を含めた旧世代機は熟練者でなければ、朝鮮の空で活躍の場がなかった事だ。

「なんとも言えないとは?」

「こりゃタイムマシンで判明したことなんだが、米軍はキルレシオの記録をけっこう誤魔化して報告してたんだ。朝鮮戦争のキルレシオは当初、ものすごく国連軍の有利な風にされていた。確か11対1なんて数値だった」

「大げさすぎんか?」

「ああ。だけど、F-86があんまり高性能だったのと、米軍に第二次大戦を生き延びたエースが大勢いた事もあって、疑問に思われなかったんだと」

「実際の空戦を舐めてないか?それって」

「米軍はドイツ軍と違って、いい加減な気質があるからな。第二次大戦中の対日戦のキルレシオなんて、聞いたら呆れる数値が書かれてんぞ」

「空中戦じゃ誤認が付きものだが、いいのか?」

「戦争は終わった後は、勝った側の資料を信用する事がままある。後世に、目標として朝鮮戦争頃のキルレシオが挙げられたっていうし」

「そういうものか」

――米軍は空中戦が低調であった20世紀後半から21世紀前半辺りの頃、パイロット技量維持に必死であった。だが、無人機の登場でパイロット訓練が低調になった以後は米軍の平均技能は大きく低下。統合戦争で日本国防空海軍が空を支配する遠因となった。地球連邦軍も白色彗星帝国戦役でそれをよく実感しており、パイロット育成に力を入れている。黒江は技能が高いパイロット達を目の当たりにした為、技能向上に力を入れているのだ。

「そうだ。23世紀でも一騎当千のエースはなんだかんだで必要だからな」

23世紀でエースとして名を知られた者達は、いずれもマクロス級の猛烈な対空砲火を単機で突破して見せる猛者共である。彼らの姿を思い浮かべながら、黒江と坂本は空戦に突入した。

「空戦は久しぶりだが……そこだ!」

坂本は空戦をするのは二年ぶりである。航空指揮管制官としての道に入ったため、自分が再び戦線に立つなど思ってもいなかったのだ。ジェットエンジンの推力の感覚は掴みにくいが、慣れてしまえば簡単だ。未来世界製の突撃銃を叩き込んで落とす。突撃銃は一見して歩兵用と変わりないが、空戦用に初速や弾道特性を調整してある代物という。火力も99式改13ミリ以上で、7.92ミリ口径でありながら数百年後の技術は13ミリと同等の威力にできる事に感心する。

「やはり数百年の歳月は大きいな。威力が違う」

「金属の加工技術も大きく上がってるからな。チタン合金も一昔前のガンダリウムと同じ硬度にできるっていうし」

「何故、そこまで科学が発達した?」

「戦争だよ、戦争。争い合う事が皮肉なことに科学技術を促進させた。うちらで39年にできた九九式も、向こうじゃ『九六式』だぞ。零式から数年で紫電改、烈風、ジェット機になったのも科学技術の促進の成果だよ」

「なんかそれは嫌だな……。」

「しょうがない。戦争は平時の10年分の進歩を数年で起こすんだ。戦前はコンピュータの影も形もなかったのが、今じゃコンピュータ前提の軍備やドクトリンになりつつあるだろ?そういうもんだ。ヘタすると原爆の一つや二つは落とされるぞ」

――黒江は未来世界に住居を移しているため、技術の発展をよく実感している。この戦争は歴史的帳尻合わせだという事も感づいている。核兵器もリトルボーイかファットマン辺りが落とされる可能性もある事も。

「原爆か……何度見ても反吐が出る兵器だ。あんなものが造られるなんて」

「向こう側じゃ米国が『恒久覇権』を実現させる道具として完成させた。が、それを良しとしない科学者が均衡のために、技術をロシアに横流しした。威力と引き換えにその地を地獄に変える爆弾なんて、誰も使いたくなかったからな。実験で島を一個ぶっ飛ばしたなんて記録もある。が、22世紀後半にゃデラーズ紛争でアトミックバズーカが撃たれたり、隕石落としがやられる様になったから、まだ可愛い行為になったってさ」

黒江は空戦をしつつ、坂本と会話を続ける。イサム・ダイソンは子供レベルの痴話喧嘩をしながら超ハイレベルなドックファイトをしていたので、こういうことも常識の範疇に入る。坂本も現役時代の冴えは衰えておらず、防御面での心配が消えたので、クーガーを逆に翻弄する。

「なるほどな。しかし宇宙時代になったら、逆にものすごい方法が出てないか?」

「ジオンのギレン・ザビがコロニー落としをやりだしてから、核兵器を使わずに、核兵器よりも甚大なダメージを与えられる方法が色々表れた。中にはタイヤ戦艦で町ごと轢き殺す手段も取られたそうな」

「なんだそれは。タイヤ戦艦?」

「ザンスカール帝国が整地と称した大量虐殺で使用した戦艦だよ。タイヤで走るそうだ。それで町ごと地ならしした記録がある」

「本当、スペースノイドは何考えてるんだ?」

「地球を故郷と思ってる移民二世までに浸透してる思想があるそうだ。エレズムとか言って、地球を聖地扱いにして放っておく思想だ。それと選民思想が結びついたのがジオニズム。ジオン公国とその残党はそれを深く信仰してて、過激派は理想実現にゃ大量虐殺も正当化する集団なんだよ」

黒江は空戦をしつつ、ジオニズムを酷評する。ジオニズムの名のもとにオーストラリア大陸を削り、パリを永遠に地図から消した行為から、別世界の人間からも酷評される辺りはジオニズムの矛盾と、提唱者のジオン・ズム・ダイクン自身の傲慢さ(遺児であったシャア・アズナブル、セイラ・マスはジオンの実子であるが、正妻の子ではない)を垣間見ることができる。

「ジオン・ズム・ダイクンか……。連邦側の記録を見るかぎり、聖者ではなかったそうだな?」

「デラーズフリートや第一次ネオ・ジオンのプロパガンダでは聖者みたいな人格者という風にされているが、アムロ少佐のツテで会った、シャア・アズナブルこと、キャスバル・レム・ダイクンの妹のセイラ・マスこと、アルテイシア・ソム・ダイクン氏によれば、実子には優しかったが、正妻には冷淡だったそうだ。それが二人の生母のアストライア・トア・ダイクンの幽閉に繋がり、死別の原因になった。シャア・アズナブルはこの時の体験を深いトラウマになったらしく、彼を復讐心に駆られるように歪めてしまったそうだ。セイラさんはそんな兄を嫌い、シャアの反乱の際にはアムロ少佐を炊きつけてたそうだ」

「何故そうなったんだ?」

「シャア・アズナブルは生母が死ぬ年には小学中学年ほどで、物心がついていた。一方のセイラさんはまだ5、6歳ほどだった。その差が成長した後の二人の温度差に繋がったんだろうな」

――シャア・アズナブルは敬慕する生母との理不尽な別れを経験した事、周囲の期待が手の平返しで憎悪に変わった事などが原因になって、その人格を歪めてしまった。『キャスバル・レム・ダイクン』としてよりも『シャア・アズナブル』として名が知られる23世紀初頭時点では、政治家・軍人として類稀な才能を有しながらも、母性に飢えるあまりに、ララア・スンに母の面影を求めた男という評が定着している。騒動の記憶がそれほどないセイラに取って、復讐に生きる兄は『鬼子』に等しい。そう断じた程に、セイラからみての兄との関係は冷え切っている。これはシャア当人は知らず、アムロとブライトは知っているという皮肉な例だ。敵機を歯牙にもかけずに撃墜しながら会話を続ける二人。戦果面はクーガーを合計6機撃墜(スコアは半々である)で、上々である。

「なるほどな。しかし、なんで平和主義というのが向こうにはあるんだ?目の前の危機に見て見ぬ振りする思想にしか思えん」

「近代以降は市民も戦争に巻き込まれ、反戦思想が生まれた。それで第二次大戦後は『なるべく戦争せずに静かに暮らせたらいい』という思想が生まれたんだ。それで防衛力も捨て去る考えが日本で普及したが、不測の事態に対応する力を持つために自衛隊を作った。その経緯が地球連邦の支配層には身に染みているから、地球連邦軍の解体が議論された時には『不測の事態が起こったらどうするんだ』と議会が紛糾したそうだ。それで案の定、宇宙人の襲来が起こった。宇宙怪獣やバジュラの事もあるから、軍隊の解体は国民投票で否決されたそうだ」

「どうにも私にはわからんな。力があるのなら何もせずにいるなんて、怖いだろうに」

――人類は戦いを捨てられぬ定めである。23世紀で極端な平和主義者らが力を大きく失ったのは、『不測の事態』が一歩間違えれば地球人類滅亡に繋がる規模であった事、相手が有無を言わさず惑星を破壊するような輩である事が大きかった。リリーナを始めとする政府要人らも不測の事態に対応するために、『守るための戦い』を肯定した事も大きかった。白色彗星帝国との生存競争は地球圏の人々に『自分で行動することの大切さ』と『守るためには戦っていいのだ』を悟らせた。常にネウロイという脅威との生存競争に晒されている世界の住民の坂本から見ると、『力を持っているのに傍観している』事は罪であるとしか見えないのだ。

「しょうがない。向こうは戦争続きで誰もが嫌気指してたんだ。武器を捨てることにも抵抗感がなかったのもそのためだろう。だから宇宙人が敵対してきた時に慌てふためいたんだろう。短期間に何回も人類滅亡級の危機が来れば、身を守るための武器を持たざるを得ないのを理解したのさ」

ウィッチ世界の住人と、戦争に嫌気が指していた23世紀世界の人間との間には微妙な価値観の相違がある。彼らが平和主義を嫌うのは、多くの国々が圧倒的な力で蹂躙されて滅ぼされた挙句に、居住不能地域ができてしまった(旧明国・李氏朝鮮領など)事に由来する。ウィッチ世界の価値観である『力があるのに何もせずにいるのは一番怖い』という思想は以後、地球連邦や時空管理局に強く影響を与えていくのだ。

「お、そいや何機やった?」

「三機だ」

「私もだ。ということは半々だな。高度を下げるぞ。地上軍の支援に移る」

「了解だ」

空戦で華々しく戦果を挙げた二人。45年から継続中のレーバテインの運用試験は、貴重な運用データをもたらしている。データは機構の共通するISの改修や、時空管理局が反攻のために計画しだしたAEC装備(後にとある事件で戦果を挙げる。時空管理局からは通常兵器のノウハウがほぼ失われたので、現有技術との組み合わせで構成せざるを得ないために完成と投入が大きく遅延した)の開発に役立てられたという。地上に降りると、M46パットン戦車がその前型にあたるM26パーシングと隊列を組んで進撃し、迎え撃つ5式2型と戦闘を行っていた。進化した戦車同士の戦闘は、扶桑海事変までの戦車戦とはまるで違う、戦車主体の戦闘であった。

「これは凄いな……九七式の頃とはまるで別物だ」

「当たり前だのクラッカー、大戦後の戦車は行進射も可能になってるんだぞ」

「本当か?」

「大戦後第一世代の先頭走っていたアメリカやソ連のは基線長式測距儀つけてたはずだ。一旦軍事技術が途絶えた日本は遅れたと聞いている。完全に追いつくのが90年代になってからだし」

「敗戦で技術が途絶えたのが不味かったのか?」

「そうだ。飛行機も追いつけたのは21世紀中盤辺りだし、十数年の途絶えは覆し難い差になったのさ。さて、対地爆撃と行くぞ」

「了解」

二人は雑談を打ち切って対地支援を開始した。レーバテインはISのように量子変換機能はないく、MSなどと同様に武装を携行する方式である。これは安定性の問題もあったが、量子変換技術の確実性がワンオフ試作品ならともかくも、量産機で保てるか不明だったせいもある。背中に携行していた50ミリ砲を取り出し、展開する。折りたたみ式の長砲身砲で、威力は未来科学の最新炸薬と弾頭部の高純度タングステン合金により、この時代のカールスラント製90ミリ砲相当の貫通力と破壊力を誇る。照準は補助も入るが、熟練した二人の射撃能力ならば戦車の天蓋装甲を正確に狙える。

「行け!」

坂本が試射も兼ねてM26を狙う。いくら正面装甲がティーガーTに対抗可能な厚さを持つと言っても戦車の宿命で天蓋装甲は薄い。そこを一昔前の戦車砲相当の火砲に狙われればひとたまりもない。貫通されたM26の砲塔が派手にぶっ飛び、車体も大爆発を起こす。

「これは凄いな。重戦車が一撃だ」

「弾は少なめだから、もっと工夫しろ。例えば……こういう風に!」

黒江は降下し、M26のキャタピラ部を狙う。装甲がほぼ施されていない履帯と車体下部をレーバテインの火砲が貫通するのは容易なこと。2両まとめて貫通し、パワーパック化されたエンジンの爆発で沈黙させた。

「ふむ。さすがはお前だな」

「戦車は混戦になると意外に脆いもんだ。特に歩兵にはな。皮肉だが、太平洋戦争のサイパンやフィリピンなどじゃ歩兵の特攻で損害出てるんだ。大抵は踏み潰されたりしたが、爆薬満載の蛸壺とか、槍で破壊されたり……」

「悲惨だな」

「しょうがない。国力が扶桑の四分の一しかないような国だったんだ日本は。資源もない、植民地争奪戦にも遅れ、全てが遅すぎたと言われてる。それで完膚なきまでに敗北し、戦争を嫌悪するようになった時代もあるくらいだ」

「一度の敗北がそこまでのトラウマになるとはな……のび太の時代の自衛隊が日陰者どころか厄介者に近い扱いなのも分かる」

「そういう時代だよ。完全に世代交代した後は再軍備したから、人間は120年もあれば世代は代わる。のび太の時代でさえ、戦争中の子供から青年世代の孫になってるからな。戦争体験も遠い昔の事にしか感じられなかったと言ってたぞ」

と、言いつつも戦闘そのものはきちんとこなしており、残弾を使い果たすまでに30両ほどのM26を沈黙させる。奇しくもこの戦闘で航空兵器の戦車への優位を証明する形となり、扶桑軍が積極的に戦闘機などによる航空支援を行う契機になった。


――地上に降りると、リベリオン海兵隊のウィッチが尖兵となって侵攻しているのが見える。坂本はウィッチが人に弓引く事になるのを最も嫌う人間の一人であるので、憎悪を見せている。だが、近代以前ではままあった光景ではある。

「落ち着け、坂本。あいつらは命令で動いてるだけだ」

「しかし!」

「あいつらを倒す事も任務の一つだが、殺せとは言ってない。眠らすのも重要だ。麻酔弾を装填しろ」

「分かった」

「幸い、隊長格以外は12、3歳の子供だ。隊長格さえ倒せば統制を失う。やるぞ」

あくまで黒江は戦争と割り切っていた。そこが根っからの職業軍人である黒江と、そうでない坂本の違いだった。(黒江は航空士官学校卒の正規士官養成ルートを辿っている。坂本は小学校からそのまま軍人になった。それ故、黒江以上につぶしが効かない事は自覚している)麻酔銃を打ち込み、ウィッチ隊を捕獲して縛って空き家に放置する。

「うーむ……」

「どうした?」

「これの装備だが、どうもしっくりこなくてな。今度、カスタム頼んでくれるか?」

「ああ。それは構わんが……第二世代型の開発も始められたというし、それまで待て」

「分かった」

レーバテインはこの頃、第二世代型の開発も開始されており、第二世代型の名前はまだ不明である。時空管理局も扶桑軍や連邦軍のレーバテインの運用試験のデータに興味を示していた。だが、内部の一部の極右勢力から『質量兵器だろ!!』と難癖つけられ、ミッドチルダ動乱に伴うさらなる人員不足に対応する手段に手詰まり感が否めなかった。特に有力な将校級の多くがナチス・ドイツに離反したおかげで時空管理局内部中枢部は空洞化してしまい、なのはやフェイト、クロノなどの若手将校が中枢を担わなくてはならないほどの人員不足ぶりを露呈していた。なのはが二等空佐となったのは、動乱真っ只中の新暦76年である。レーバテインの第二世代型の輸入を目論むなどの策略を見せる一方で、地球連邦軍大尉へも昇進し、双方の組織で一定の地位を築く。ティアナとの『わだかまり』も動乱で解け、彼女が扶桑軍で立身していくのを見届ける事にし、時空管理局への慰留を断念した(依頼退職扱い。ただ、扶桑軍からの出向という形で機動六課に『帰還』した)

「そいやアフリカに居たあの子はどうした?ほら、元・時空管理局の魔導師とか言った……」

「ティアナの事か?あいつならストームウィッチーズに所属してるから、時空管理局への復帰をしない方向になった。あいつとしても、一度は行方不明になってたからってのもある。でも、はやてが慰留してな。折衷案で『扶桑軍からの出向扱い』で二等陸尉待遇になった。あいつの最上位人事決定権は市谷の国防省が握ってるから、交渉手伝ってやったよ」


ティアナははやてなどの慰留に応えたくとも応えられない立場にあった。そこで市谷に立てられた国防省(陸軍省・海軍省を統合、空軍統括部署も内部に新設)で双方が交渉し、ティアナはストームウィッチーズの一員である都合上、時空管理局への復帰は困難であるが、出向扱いなら都合がつくという判断が下り、ティアナは出向扱いで機動六課へ正式に帰還した。(そのため、扶桑空軍軍服姿である。彼女の兄の名誉もこの時に回復されたという)

「そういうことだったか。さて、これからどうする?」

「とりあえず味方と合流だ。こいつの地上戦試験もやんないといかんしな」

「了解だ」


――この時に要望した坂本の機体は専用機として、第二世代型試作1号機の名誉を得る事になる。同時にとあるゲームのスーパーロボットに着想を得た開発主任によって、時空管理局向けのデバイスが試作されることになるのであった。


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