外伝2『太平洋戦争編』
第十四話


――太平洋戦争で最も変革を余儀なくされた兵科は実はウィッチである。未来情報で加速度的に技術が進化した扶桑はジェット艦上戦闘機運用の拡大に伴い、ウィッチ運用を空母から強襲揚陸艦や航空戦艦へ移管し、ただでさえ数が少ないウィッチの人的資源的活用の観点から、ウィッチの『上がり』を無くす方向に舵を取り、ミッドチルダの研究データや連邦のゲッター線活用による医療データなどを組み合わせ、極秘裏に『第二次若返り作戦』を実行した。これは戦争の激化でウィッチの新規志願数が大きく減っている事、1930年代末から軍を支えたエース級がのきなみ、『あがり』を迎える時代を迎えた事からも急務とされ、ウィッチ隊の質の維持のためには、もはやなりふり構わなくなっているのが窺える。




――講義から4時間後の前線基地

「参ったな。新規志願者の数がますます少なくなってやがる。こりゃ当分、デスクワークに落ち着けねーぞ、フジ」

「落ち着くつもり無いくせに。でもそれは大問題ね。44年からV字でだだ下がりって聞いてはいたけど、予想以上に深刻ね……。それにしても、講義は上手くやったわね、あなた。どこでやり方覚えたの?」

「ああ、未来で真田さんに世話になってな。その時に教えてもらったんだ。あの人、コスモタイガーも運転できるから万能だよ」

「あの人、万能超人ねぇ。ミッドチルダで会ったけど、そんな感じだもの。古参連中は未来装備に懐疑的な声もあるっていうけど、あなたはその心配ないわね」

「たりめーだ。抵抗あったら、そもそもキ44に乗ってねーし。古参連中ったって、そいつらは九七式や一式に慣れきった古い頭の連中だろ?時代についてこれねぇ馬鹿どもに付き合う義理はねーよ」

黒江はフランクな口調で古参に見られる軽戦闘機至上主義を批判する。時代はジェット戦闘機の時代となり、かつての重戦闘機と軽戦闘機の区分は半ば意味を成さない(ジェット戦闘機化で、軽戦闘機とされる機体でも爆撃任務に耐えるようになったため)。運動性至上主義の風潮は陸海軍出身を問わず、古参に多いが、そもそも火力が無くては重爆は落ちない。黒江は改変後は『1940年頃にキ44の実戦テスト部隊の一員となり、そこで編隊戦闘と一撃離脱戦法に開眼した』とされているので、部内では若手から尊敬の念を持たれていたり、同世代や先輩らからも『一目置かれている』。

「いうわねぇ」

「向こうの太平洋戦争を知りゃ、こうもなるさ」

扶桑空軍のドクトリンは、カールスラント空軍とリベリオン空軍、史実航空自衛隊を混合させたようなものになっている。従って、撃墜王制度などは陸軍飛行戦隊のそれが採用され、戦意高揚のためもあり、正式なものになったはいいが、海軍出身者から反発があった(海軍基地航空隊が陸軍に吸収されたと取れるためと、そのような慣習がなかったため)。しかしながら撃墜王を宣伝しなければ、戦意高揚は愚か、国民の信頼を勝ち取れないため、源田実が海軍出身将兵を説得させた。なので、現在の公式撃墜スコアの上位は、記録が部隊単位で残っていた陸軍出身者が占めており、海軍は個人単位の戦果は記録がされていない(1943年以後)ので、海軍出身者では、若本、竹井、西沢、芳佳、菅野などの以前から多量撃墜者として知られる強豪が少数に留まっている。

「海軍出身の連中からは恨み節が出てるって言うわよ?『公式』撃墜数のランキングは私達64戦隊が上位独占してるから」

「まぁ、うちらは特別に親父が、343空と64Fという精鋭部隊を合併させた編成なんだ。当然だろ?ウチは戦闘科の実働部隊の中では間違いなく一位の練度なんだし。明野や旧横空よりも練度上だぜ?」

「それは良いのか悪いのか分からないけどね」

「いるに越したことはないぜ。飛行時間300時間以下のヒヨコを特攻に使っていた向こう側を思えば、精鋭航空隊なんて可愛いもんさ……。特攻を組織だってやるのは、外道だよ。搭乗員を鉄砲玉にするんだからな」

現在の64戦隊の人員は、平時なら航空士官学校の教官に任じられて然るべき人材で占められている。部隊教育重視の武子としては、喜んで良いのか分からないが、とりあえず優秀な人員がいるに越したことはない。『黒江はヒヨコらを槍衾の対空砲火に晒した』特攻を思えば、『精鋭部隊』など可愛いものだと言い、同時に大西瀧治郎中将、ひいては海軍中央が史実太平洋戦争で取ってしまった『統率の外道』に憤る発言をする。

「……大西中将が後世の人間に罵られるのは、分かる気がすんだ。何せ、桜花・回天を始めとして、特攻に送り出した人数は万の単位、その殆どが犠牲に見合わない最後だった。成果はほぼ無しの海の藻屑だ。いくら国難ったって、最後まで生きて戦うべきだ。航空兵なら尚更だろう?」

黒江はこの点で、若本と同じ『航空兵なら生きて最後まで戦うべき』という考えに至っているのが分かる。若本の場合は『あのノータリン共、ざけんじゃね――!!』と激昂したとの事なので、この辺は人命重視の風潮が根付いた(とはいうものの、ヤマトは危うく特攻しかけたが)未来世界に居た影響によるものだといえる。

「そうね。だから未来世界の人達は源田司令を陛下へ推薦したんでしょう。下馬評で大西中将が最有力とされていたのを、源田司令が抜擢されたのは、その悪評のせいでしょうし」

武子の言は当たっていた。特攻の産みの親という汚点が大西瀧治郎中将の手から空軍司令の座を奪い、戦後空自の幕僚長という事実が源田実大佐を空軍総司令に就かせたのだという推測は的を射ていたからだ。

「大佐。西沢中尉から報告書が届きました」

「あの子がまともに報告書を?竹井からの話からだと、報告書書くような子じゃないって言うけど?」

「宮藤と菅野が書かせたんだろうなぁ。西沢はそういうのやるタマじゃねーし」

西沢は大雑把で、形式にハマった事は苦手である。坂本と竹井が『義子を士官にするなんて、無謀な!!』と口を揃えて言う辺り、二人は『西沢は士官の器ではない』と考えているのが分かる。黒江と武子が兵士から渡された報告書を見ると、芳佳と菅野の二名が書かせ、直した箇所があちらこちらにある。その報告書は数日前の海戦に纏わるものだった……。



――数日前

航空戦艦化され、分類を『尾張型』に変えた紀伊型戦艦と大和型「武蔵」。後部を飛行甲板化したその姿は、未来技術を宛てにしてのものなのが分かる。艦載機数は本式の空母に比べれば過小であるが、水偵に代わる戦闘艦艇用次世代艦載機を求めていた扶桑には魅力的であり、ちょうど1946年度は護衛艦やインフラ整備などに予算が取られ、空母などは複数建造可能ではなかったし、回せる資材もそこまで無いという事もあり、史実では中途半端とされた、『航空戦艦』にスポットを当てた。これは未来世界での宇宙戦艦は事実上の航空戦艦と言えるものである事、イージス艦などには哨戒ヘリが積めるものである事が確認された事が確認されたためであった。後部を飛行甲板にし、後部下部甲板を格納庫・兵員室と搭載機弾薬庫・燃料庫などに改装した。大和型は水偵格納庫を強化拡大する形で済んだが、紀伊型は構造の作り変えなどを要するかなりの大工事となり、半年以上の時間がかかった。その結果、大和型以上に強度や格納庫容積の確認が必要になり、この時の艦隊では唯一、駿河にデモンストレーションも兼ねて、『AV-8BハリアーU』が積まれていた。

「うん?なんじゃありゃ。あんな短い甲板でジェット戦闘機が発艦できるのかよ?」

「あれはハリアーか?もう垂直離着陸機を買ったのか?」

「おいカンノ。なんだ、その……垂直離着陸機つーのは」

「未来世界の1960年代終わりくらいの頃に生産されだした機種っすよ。ジェット機が造られだしてしばらくした頃に、『滑走路使わないで離着陸出来ないか?』なんて考えが現れて、色々とアイデアを組み合わせて具現化したのが垂直離着陸機です。ハリアーはその史上初の機種ですよ」

「滑走路使わないでねぇ……お!すげえ!本当に浮いてるぞ!」

ハリアーは搭載量による制限があるが、垂直離陸も可能である。ただし、その操縦に相当な技能が必要なため、地球連邦海軍航空隊の熟練者が出向して操縦している。すぐに通常飛行に切り替え、僚機もすぐに離陸し、艦隊上空の直掩に入る。西沢のはしゃぎぶりに菅野と芳佳は顔を見合わせ、「やれやれ」とため息をつく。


「おっしゃ、あたしたちも行くぜ!」

西沢は二人を率いて、敵艦隊の空域へ向かう。そこで目にしたのは、サウスダコタ級とアラスカ級太巡などを基幹にした中規模打撃艦隊であった。

「あれはリベリオン本国のサウスダコタ級……リベリオン本国はどうやら、支配権を強調したいらしいな。ご丁寧にスターズフラッグだぜ」

リベリオン本国海軍の海軍旗はお馴染みのスターズフラッグを引き続き使用しているが、亡命軍はリベリオン独立時のファースト・ネイビー・ジャックを支配への抵抗の意味を込めて利用し始めており、海軍艦艇の双方の見分けは容易になった。

「FJ-4が来ましたぜ、姉御!」

「よし、震電改のテストだ。派手に行くぞ!」

「はいっ!」

この時の震電改用のサイドアームは『ADEN』であった。扶桑はこの時期、ジェット時代に相応しい、ウィッチ用サイドアームを模索していた。そこで様々な後世のガトリング砲などを購入し、その方向性を探っていた。今回はADENを手持ち化した物なので、従来の機銃より全体的に大振りになったが、威力面や取り回しは以前と変わらない。むしろ威力面では大幅に強化され、機関部などに高性能軽量素材が使われた事で、相対的に取り回しが良くなり、即応性が増すという副次効果も生まれた。






「落ちやがれ!」

――ADENはリボルバーカノンである。これはカールスラントが次世代用に試作している『MG213』を発展させたもので、扶桑はカールスラントに先んじてリボルバーカノンを実用化し、ウィッチ装備に加えていたのだ。リボルバーカノンの作動音と発砲音が響き、FJ-4の尾翼を吹き飛ばし、次いで主翼をへし折って撃墜する。五式三〇ミリは愚か、九九式二〇ミリが玩具に見える威力である。

「すげえ!!これならB公だって軽いぜ!」

菅野は邀撃任務でB29に苦労していたため、リボルバーカノンの大火力に喜ぶ。B29の死角がほぼない防御機銃を突破し、20ミリを当ててもびくともしないB29の防御に手を焼いていたかが分かる。

「えーと。新しい武器だから、慎重に行かないと…!」

芳佳もリボルバーカノンの感触をつかむため、試射を行った。一発のみだが、その威力はこの時期、最も強力であるのもあり、フュリーを落とす。

「凄い威力です!ジェット機を一発で落とすなんて」

「これが新兵器の威力って奴だな。おし、このまま敵艦隊上空を制圧するぞ!」

「了解!」

ADENを駆使して、制空権を確保していく三人。ティターンズ側の数的主力が速成パイロットであり、総じて低練度である事もあり、実戦を生き残ってきた三人の敵ではなく、敵の艦隊直掩隊を殲滅する。ティターンズ側も想定内のようで、強力な水上打撃艦隊での攻撃が本命のようだ。

「お、いよいよ始まるぞ」

「あれが敵の戦艦……人同士で殺しあう世の中が本当に来るなんて……」

「いや、むしろ人類の歴史からすりゃ、人が殺しあわない時代なんて、ここ40年の話でしかねーんだ。これがかくあるべし光景なんだよ、宮藤」

「分かってますけど……でも……」

菅野はこの点は兵学校卒のエリートである分、割り切っているのがわかる。芳佳は現場叩き上げかつ、生来の優しさ故、人同士の戦争に今でも抵抗感が少なからずあるようだった。仕事はきっちりするものの、やはり心の何処かでは引っかかりを覚えるらしい。それが芳佳の優しさと言えた。








――艦隊は航空戦艦化された三隻は投射重量が絶対的に純粋な戦艦に劣り、真っ向からの砲撃戦ではいささかの不利が否めないため、単縦陣の先頭は旗艦である武蔵ではなく、護衛艦で最有力である超甲巡が担っている。ここで、その超甲巡について説明しよう。


――超甲型巡洋艦、扶桑での分類は『筑波型戦闘巡洋艦』と言う。扶桑海軍では、戦艦の基準が大和型戦艦に固定された事もあり、12インチ砲ながら、金剛型から伊勢型までの14インチを上回る破壊力をマークした新式50口径砲を持つ超甲巡の取り扱いに揉めた。未来技術が改大和型基準で導入された事もあり、その総合戦闘力は長門や紀伊型を除いた、大半の旧式戦艦を凌ぐ。装甲防御力はモンタナの出現で史実上の計画より厳重になり、船体装甲は総じて、改装後の長門型戦艦並の厚さを持つ。機関もガスタービンで34ノットまで引っ張るスペックがあるが、対外的には『30ノット』と発表している。艦橋などのレイアウトは大和型戦艦との規格統一で、大和型戦艦に準じる塔型艦橋(小型化されているが)が立ち、後部のマストは旧式戦艦のような直立マストであり、煙突の後ろに立っている。高角砲や機銃はCIWS、RAMに変更され、ボックス型ミサイルランチャーによるトマホークミサイル、シースパローミサイル、アスロックの運用能力も持つ。船体設計面は戦艦に準じる防御を持ったおかげで、用兵側に不評であったアラスカ級を凌ぐ出来である。そのため、戦艦に近い戦闘力を有しつつも、予算上は『一等巡洋艦(甲型巡洋艦)』として計上されたために、議会向けの説明がしやすいように『戦闘巡洋艦』という部類を創設したのである。由来は重巡洋艦の英語での直訳が『ヘビーアーマークルーザー』であることからである。なお、工事の遅れと、納入された機関の不具合などで工事が遅延したので、起工順と竣工順が逆転して、二番艦のほうが先に引き渡されたため、二番艦の名でも呼ばれている。






「武蔵の杉田司令はなんと?」

「直ちにトマホークミサイルをぶちかませとのことです」

「よし!第一射開始!」

この航空戦艦主体の『第三艦隊/第四航空戦隊』の司令は少将へ昇進した杉田大佐が務めていた。ミサイルをぶちかまし、護衛艦を減らす戦法であった。また、この戦隊の護衛艦は、所詮は旧来型の改善型にすぎない有明型から一歩進んだ第二世代型護衛艦の第一陣で固められており、タイプシップは史実海自の初代あきづき型護衛艦(1960年代就役)と贅沢であった。


――サウスダコタ級 CIC

「敵ミサイル、接近!この熱量はトマホークです!」

「えらく贅沢な運用しおって!迎撃と電子戦開始だ!どうせ今の装備では防ぎきれん。何発か逸らせばいい」

ティターンズ側はリベリオン本土の工廠で白人至上主義者らによるストライキが起こった(有色人種差別へのカウンターをした事が原因で、白人至上主義者達の不満が極限に達し、各地でストライキが起こった)事で、予定より艦艇の近代化は遅延しており、この打撃艦隊でミサイルに対抗可能な装備は巡洋艦以上の艦艇に限られていた。そのため、トマホークミサイルは全ては逸れず、迎撃不能な駆逐艦に命中した結果、ギアリング級やフレッチャー級駆逐艦がトマホークミサイルの魚雷発射管への命中によって誘爆が起こり、轟沈していった。

「ストロング、プリングル、スペンスが轟沈!」

「やはり駆逐艦程度ではトマホークには耐えられんか!お返しを見舞ってやれ!ハープーンをプレゼントしろ!」

「アイアイサー!」

サウスダコタ級からハープーンミサイルが発射される。これもやはり、迎撃と電子装備で防げなかった数発が2隻の駆逐艦に命中し、こちらは命中箇所が艦尾だったなどの幸運もあり、中破で済む。戦いはミサイル戦をそこそこに、砲撃戦に移行した。


「距離、32000!」

「よし、砲撃開始!この距離を保て。武蔵は20インチに強化されたというが、砲身命数が120発(46cmで180発ほどで内筒が傷つく)しか無い上に、6門しか無いから、そうは当たらん!」

と、発破をかけるサウスダコタ級を指揮する艦長。生え抜きのティターンズ出身者ではあるが、宇宙艦艇の指揮経験者であった事、連邦軍はどちらかというと大艦巨砲主義である事が幸いしたのだ。砲撃戦のイロハは心得ていた。サウスダコタ級の『mk16』16インチ砲が火を吹き、その内の一つが武蔵の周りに着弾する。だが、ここで杉田は護衛艦で、単縦陣陣の3番目にいるアラスカ級へ狙いを定め、一斉射撃を命じた。

「敵、発砲!本艦にではありません!」

「何!どこだ!」

「グアムとフィリピンズです!」

3隻の航空戦艦の放つ砲弾はまず、大型艦で最も脆弱な防御であるアラスカ級めがけ、殺到した。20インチ、16インチ、12インチと言った大口径砲弾がアラスカ級の3番艦と4番艦へ降り注ぐ。ややあって、20インチ砲弾の一発がグアムの艦尾に着弾、スクリューの一個をもぎ取る。

「グアム、4番スクリュー破損、速度低下!」

「おのれ武蔵、味な真似をしおって!打ち返せ!」

砲撃戦は扶桑艦隊がリベリオン本国艦隊の機先を制する形で開始され、南洋島に向かおうとするリベリオン艦隊を扶桑艦隊が迎え撃つ形で推移している。扶桑がミッドチルダ動乱で『対人戦』のノウハウを得た事も、実戦は初であるリベリオン艦隊の張子の虎感を醸し出していた。そして、アラスカ級太巡の乗員は自身の仮想敵である超甲巡(扶桑式で戦巡)の威容に驚く。

「あれが噂の『チチブ』か!?予想より大きいぞ!!」

乗員の誰かが超甲巡を双眼鏡で確認し、驚愕する。超甲巡は諸外国には、早いうちから存在が囁かれており、『秩父型大型巡洋艦』と言う名も予想されていた。だが、実際に扶桑が超甲巡を具現化させたのは、アラスカ級が竣工した後であり、扶桑の方が逆に対抗上で計画したのだ。

「ヤマトクラスの線図でも流用したか!?ヤマトに似たデザインだ」

「やはりフソウがヤマトタイプを大型艦艇のタイプシップにしたのは本当だったんだ!」

筑波型のデザインは大和型戦艦に準じるため、大和型戦艦の基本設計を流用したと考えても不思議ではない。本来は第二艦隊の指揮用が考えられていたが、金剛型の喪失で空母の護衛艦の質的不足が叫ばれ、予定変更で空母機動部隊である第三艦隊に第一生産ロットが回された経緯がある。そのため、金剛型に代わる空母護衛艦、大和型を投入不能な浅瀬などの艦砲射撃などでワークホースとして活躍し、扶桑の新たな主要艦艇となるのであった。




――話は戻って、前線飛行場

「へぇ。超甲巡が意外に活躍したのね。芳佳の字で書いてあるわ」

「西沢の奴には、こんな細かい報告が書けるわきゃねーからな。続き読んでくれよ〜気になるじゃねぇか」

「ん?あら、あなたに手紙よ。箒からよ」

「何?あ、ああ。あの事か」

「心当たりあるの?」

「実は――」

黒江は同封された写真に溜め息をつきながらあらましを話す。未来のデザリウム戦役中の事だ。その前の出来事で大破した赤椿を修復した際に天馬座の聖衣の破片が混じっていて、デザリウム戦役時にゲッタードラゴンの復活で拡散したゲッター線を浴びた事もあり、機体が組み込まれている『無段階移行』システムを無視するかのように、自己進化で外見共々、変化したのだ。その外観は赤椿の背部推進器をウイングガンダムゼロの翼型スラスターへ換装したかのようなものだが、機体アーマー部や翼のデザインは天馬座の聖衣が究極の神聖衣と化した際のそれになっており、ある種の神々しさすら感じさせる。それをIS学園側に定時通信で知らされ、学園の誰もが目玉が飛び出る勢いで固まり、あの束ですら、あまりの事にその場に崩れ落ちたという。更に箒の小宇宙が極限に高まると、黄金に輝き、性能が倍加するという聖衣の特徴も備えたので、赤椿は事実上、ムー大陸の古代科学と現在科学のハイブリッド機と化したのだ。


「なんか、それって反則じゃない?」

「たぶん、赤椿のコアの意識が射手座の聖衣を多分に意識したんだろう。一度、射手座の聖衣を着た戦いが終わった後に、原因不明の起動不能状態になった事があるんだけど、原因はISの深層意識が射手座の黄金聖衣に嫉妬したのが原因だった。それでゲッター線で進化する時に、射手座の黄金聖衣と天馬座の青銅聖衣を基にしたんだろうな」

――ISのコアには意思がある。織斑一夏が夢で遭遇した少女もそれだ。それが黄金聖衣に嫉妬し、それに近づかんと、天馬座の聖衣の破片に刻まれた記憶を読み取って、その道を選んだのだろうと黒江は推測する。自身は山羊座の聖衣を得ているため、必殺技は『聖剣抜刀』(エクスカリバーではなく、カリバーン)である。

「勇美が聞いてくるだろうから、あなたも答えてあげなさいよ?あの山羊座の聖衣の事」

「あいよ。分かってるって(とはいうものの、十三人目が復活しそうとか聞いたな。その時には黄金聖闘士として参陣せんといかんだろうな)」

黒江はもう、山羊座の聖闘士と言っても過言ではないので、聖域の穴埋めの狙いは箒・フェイトを加えた三人で図らずしも成功しつつあった。だが、神話の時代に抹殺された『十三人目の黄金聖闘士』の復活も囁かれており、本来は部外者である者らに黄金聖衣を託したアテナ=城戸沙織の狙いはここにあったのだ。



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