外伝2『太平洋戦争編』
五十話『宇宙艦隊戦2』


――ドモン・カッシュの来訪で活気づいた64F地上部隊だが、宇宙部隊のほうは、いよいよ作戦の大詰めを迎えていた。ティターンズ残党はマスドライバーを添えた資源衛星に相応の戦力を置いており、先方を切ったガンダムチームは激しい十字砲火に晒されていた。

「うおっ!流石に凄い対空砲火だ。ティターンズの奴らめ、マスドライバーを守る気満々だな」

ティターンズ残党は、もはや組織の理念とかけ離れていた。MS不足を補うため、ネオ・ジオンの機材まで節操なく投入していたのだ。


「ギラ・ドーガだと?奴らめ、MSが不足してるな?」

ティターンズのマラサイの後継機に近い存在なのが、ネオ・ジオンの現・主力機のギラ・ドーガである。ザクの名は冠していないが、ザク系の集大成である。設計は、ザクにマラサイを混ぜたオーソドックスなもので、現在のネオ・ジオンでは数少ない『連邦軍の新鋭機と対等の性能』の量産機である。ネオ・ジオンはかつてのような『量産機の性能で連邦軍を押す』戦法が、連邦軍の技術革新で出来なくなり、熟練者の技量で性能差を埋めるというのが一般部隊で常態化している。なお、ギラ・ドーガを当時の最新汎用品で性能を底上げしたのがギラ・ズールであり、配備数は多くはなく、多くはシャアの親衛隊と精鋭部隊の配備に留まっている。ネオ・ジオンが最近、よく言われることが『ビームシールド装備機』が一機もない点で、ナイチンゲールでさえビームシールドを持っていない。連邦軍はMSそのものを小型化させ、その大きな余剰出力を防御に回す事で、ビームシールドを装備している。対するネオ・ジオンは残党軍の関係もあるが、整備に手間がかかり、ステルス性を損なうビームシールドを嫌い、余剰出力を推力に回す傾向がある。最も、ビームシールドを多用した組織であるクロスボーンとザンスカール帝国の残党の多くはネオ・ジオンに合流せず、一部の部隊のみが加わったため、ネオ・ジオンにビームシールド技術は入ることがなかったという事情があった。その差を機動性で補えという思想のため、ジオン系は連邦軍と違い、機動性と火力にパラメータを振り分ける傾向が強い。ティターンズも、ビームシールド実用化前の組織なので、ジオン系のMSとの相性は良く、この頃から多用し始めていた。そのため、4人は高性能なネオ・ジオン系MSを優先して叩き、戦場を支配する。ティターンズ残党は流石に練度に統一感が無く、幼年学校生に毛が生えた程度の者までいた。

「あらよっと!」

黒江は、ライトニングガンダムを資源衛星の入り口に立たせる。そこから、増援の空間騎兵隊が内火艇で殴り込む。空間騎兵隊は荒くれ者が多いが、かつての米海兵隊や陸自空挺団の流れを汲む精強な部隊であり、バンカラ男達が集う場所だ。彼らが殴り込んで、制圧した一室に、21世紀の日本人がいた。しかも、防衛省の人間であり、警察官僚出身の人間であった。

「隊長、こいつどうします?」

「尋問しろ。南極条約に違反しない程度に痛めつけて吐かせろ」

「き、貴様ら何者だ」

「地球星間連邦空間騎兵隊所属の第501中隊だ。日本の防衛省の者だな、君は」

彼らはその男を尋問する。すると、彼は2010年頃に当時の政権を後ろ盾に、警察から送り込まれた官僚であり、21世紀には数が減った、カチコチの反旧軍的思想の持ち主だった。彼が吐いた内容の中には、自分は『旧軍出身者』が増加していっている事に反感を覚えていた元内務省系の省庁が結託し、当時の政権に取り入って、出向した『監視要員』の一人だった事が含まれていた。

「そうか、君は警察官僚だな?それも自衛隊の監視を仕事と思ってる」

「そうだ。いつだって軍の連中はクーデターしか考えてないからな。いつも、反乱で割を食ってきたのは我々だ」

「君もそうだが、日本の内務系の連中は、どうも扶桑を軍閥がはびこっていた昭和初期の日本軍と同一視しているな。呆れて物が言えんよ」

空間騎兵隊の隊員たちは一様に呆れる。日本の内務系の官僚の無知ぶりはいよいよ持って、本格的に害悪のレベルである。扶桑皇国では、そもそも、昭和期の二大クーデター事件も、ゴーストップ事件も起きていない。(クーデターを起こした勢力は史実と異なる軍閥であるが)そのため、軍部の統制も大正期の頃のように概ね効いているので、言いがかりに近い。扶桑軍部にはいい迷惑である。

「どういう事だ」

「あのクーデター事件も、ゴーストップ事件もそもそも起こってはいないし、軍閥も第三勢力があったから、歯止めが効いていたんだぞ?」

「何……!?」

「ウィッチ勢力とも呼ぶべきか?そいつらが皇道派と統制派を押さえ込んでいたから、内務とは揉めてないし、シビリアンコントロールも壊してはいない。全ては君達の先入観からの思い込みだ」

「そ、それでは我々がやってきた事は……」

「残念ながら、ここの世界に無用な混乱を招いただけだよ。そもそも、江戸幕府が安土幕府なところで気づけるはずだったじゃないか?」

「そ、そうか、保守的な家康と違って、開明的な信長が政権を取ったなら……」

「大航海時代で植民地を得、その頃から列強だよ」

「なんて事だ……全ては無駄だったのか……」

「君達は、上からどういう命令を受けていた?」

「上は『扶桑の軍国主義を潰し、経済大国/軍事小国にする』ために、彼らに与した。アニメ的には間違っているが、上の一部は軍事大国としての日本を嫌っている。だからだよ」

「傲慢だな。我々の知る未来では、連邦を支配する覇者になっているんだがね、君の国は」

「!?」

「統合戦争と、アメリカの衰退と暴走が君の国にかけられていた枷を外した結果だがね。だから、君の時代の日本は後世から見て、『おかしい』と鼻で笑われるのだよ」

空間騎兵隊の隊員達から見れば、戦後から学園都市の対ロシア戦線までの日本は『自分が軍縮していれば戦争は起きないし、経済は自然と潤う』という幻想に捕らわれていたと評している。が、幻想が破られた結果、かつての『戦闘民族』の性質が蘇り、23世紀の地球連邦の政治中枢を担う人材を多数輩出しているまでになる。

「あ、そうそう。君らが監視対象にしていた黒江綾香二佐だがね。あいつは陸軍出身だが。航空閥だから、クーデターを率いるなんて考えは微塵もない。いくら90年代の沖縄シンドローム事件があったとは言え、神経過敏だぞ」

日本の警察官僚達は、のび太が小学生の頃に内々で処理した『沖縄シンドローム事件』の後遺症により、扶桑軍が送り込んだ者達を政権交代後は監視対象にし、動向を監視するという愚行に動いていた。その最初の事例であり、大物だった黒江を特に監視の対象にしていたが、黒江が出自をカミングアウトした事で、『年齢』を理由に退職を迫る事ができなくなった事を嘆いていた。元々、黒江の本当の生年月日の情報は得ていたので、それを理由に『定年まで働いた』とし、退職金を手渡して、手切れするのが彼らの目論見だった。が、現政権が一旦、政権交代する前に『扶桑出身者はその時点での扶桑での年齢とする』という取り決めを行ったため、黒江は20代中盤、赤松は志願時点で27歳前後と扱われるようになり、更に軍事交流が始まったため、退職を迫ることができなくなったのが痛手だった。そのため、第二目標である『扶桑軍を解体させ、最小限の軍備である自衛隊にする』という手前勝手な目的で、前政権の統制の下に動いていた。が、政権交代でその統制を失った上、マスドライバー攻撃を受けた際の扶桑からの要請で、現政権による警察系官僚の大幅な人事異動が行われ、彼は存在を忘れられ、帰る事もできないまま、ティターンズに身を寄せていた。そこで捕まったわけである。彼は目的を失い、ティターンズに与する理由も失ったため、連邦に投降。その後の定期便で帰国し、警察庁を依頼退職したという。警察官僚の力が、防衛省でさらに弱まる第二のきっかけがこの事件である。同時に日本の政治家達が軍事に無知な事が問題視されるようになる。元々、戦後日本は軍事を忌み嫌ったため、警察官僚が軍事の専門家を見下す傾向があり、扶桑という双子国の存在が日本に問題提起をしたのだ。特に、旧内務省系の統制から自衛隊が抜け出すきっかけを与えたため、彼らはこの戦争に大きな混乱を起こした。その氷山の一角である。

「以上だ」

「ご苦労さん。参ったぜ、内務省系は相当に私らを異分子と思ってやがるぜ」

「軍事優先の考えは、戦後だと異端視されるしな。内務省系の連中は代々、自衛隊を自分達の影響下の警察軍にするために、装備を意図的に弱くしていたっていう非公式記録さえあるしな」

「やれやれ、お粗末だな」

「しゃーない。戦後の官僚は驕り高ぶっていたからな。軍隊の大将より局長が偉い〜みたいな」

「バカじゃねーの?」

「それを本気で信じてたのが日本って国なのよ。信じがたいだろうが」

「そうだな。文民統制を歪んで解釈したのが日本だしな」

文民統制は正確な意味では、日本の実情と異なる。そのため、扶桑で過去にあった『内親王による軍への統制』は特に槍玉に上がる事項である。江藤敏子が後年に至るまで、『いざという時の皇室による国家緊急権』を擁護したのは、有事が起こった際の議会の空転や内閣の機能不全などを危惧してのことだが、それが原因で、彼女は戦争中、『参謀の一人』という立場で飼い殺しにあっている。それは江藤は歯に衣着せぬ物言いだったので、クーデターを支持しかねないと、21世紀日本や地球連邦に危惧されたためであった。ただし、黒江らを抑え、御す事が出来る存在であるため、比較的快適なオフィスライフではあった。とある扶桑の将校は『ウィッチは騎士道の世界なんだよ、実力が階級に直結し、指揮官こそ戦闘に立つ事が責務だ』 と解いたが、21世紀日本の防衛省幹部は『前時代的だ』と否定し、その関係で、江藤は参謀として、後方任務に専念せざるを得なくなる。結果としては、この戦争中、参謀として働く事で、軍中枢での身の振り方を覚えたからこそ、後年に空軍司令に抜擢されるのである。(逆に言えば、前線で力を発揮する者は、退官まで前線勤務が続く事でもある。黒江達が後年、圭子から順番に司令官になったのは、功績に報いる意味も含まれている。)

「さて、お前は中枢を抑えろ。俺達は衛星の各部を制圧して回る」

「了解」

黒江は話を終え、資源衛星内部をライトニングガンダムで調べる。やがて、MSを降りて、内部を歩いていると、明らかに幼年学校生と思われる者達が駆り出されていた。ティターンズはそれほど長く、組織は存在しなかったが、将来的な人材確保のため、正規軍の幼年学校を影響下に置き、いくつか有していた。その期に幼年学校生だった者は、エゥーゴ政権下では白眼視され、軍への任官を拒否したり、教育課程の変更による延期の例もある。その辺は自衛隊設立までに、日本の旧・陸軍幼年学校出身の比較的若い層が弾かれたのと似ている。そのため、ティターンズはそんな彼らをスカウトし、新規人員としていた。最も、かつて約束されたはずの地位への郷愁を抱く者は少数派だが、いることは事実である。幼年学校は純粋培養の軍人を作る事であるため、戦後日本では『純粋培養』の象徴として忌み嫌われているが、人材確保のため、自衛隊でも自衛隊生徒という形で存在し続けている。専門性を持つ隊員の確保の目的だが、一般の日本人には『大卒で士官学校に入ったほうが粗暴でないからマシ』と思われており、黒江が防大に行った理由の一つでもある。

「幼年学校生か……なんか妙な気分だぜ。志願した時は12、3くらいで、幼年学校に行く条件も揃ってたからな」

(1930年代当時の陸軍航空ウィッチの養成は幼年学校からのコースか、当時は設立間もない陸軍航空士官学校に志願するかの二通りであり、黒江は後者のコースを辿った初期の世代である。ちなみに、彼女の妹分の黒田は前者であるが、その後に航空士官学校に入校し、卒業して将校になっているので、改革後も出世できたのである。終戦後、空軍の諸制度が整えられる際に参考にされたのは、海軍航空隊の予科練制度だったりしているので、その点では二つの日本軍航空隊の伝統が入り混じるようになると言えよう。戦時中は両軍航空隊からの転換者だけで人材が間に合っていたので、新規志願制度の確立が遅らされたのもある)



「さて、こいつらにかまってる暇はない。とっとと中枢に行かねーと、マスドライバーを使われちまう」

と、中枢部に行くと。

『警告、警告。この衛星は30分後に爆破されます。繰り返します……』

なんと、司令部はもぬけの殻で、しかも自爆装置に既に火が入れられている。解除は不可能なので、全員に退去を連絡する。

『フジ、今から全軍を撤収させろ。奴ら、ここを捨て駒にしやがった。』

『分かったわ。全軍に撤退命令を出すわ。奴らは何を考えてるの?』

『ティターンズのやることは分からんよ。生存者はできるだけ助けたいが、時間がねぇ。積めるだけ乗せろ。私は最悪、自爆にも耐えられるからな』

『OK』

黄金聖闘士ともなると、クレーターが出来るほどの核爆発にも耐えられる。それを前提にしての発言だった。(もちろん、聖衣着用が前提だが)黒江は機体で脱出し、資源衛星の爆発を見届けるが、ここでようやく真の意図に気づいた。自爆し、残った部分を質量弾にするという壮大なもので、衛星軌道から落下が始まっており、押し返すのも間に合わないと思われた。が、ちゃんと阻止する手立ては打たれていた。

『ここは任せてもらおうか。お前に見せ場を取られるのはシャクだから、宇宙まで上がってきたぜ』

『て、鉄也さん?!』

なんと、Gマジンカイザーが落ちてくる衛星をバーニングブラスターで消滅させんと、仁王立ちしていた。既に発射態勢に入っており、赤熱化した放熱板が輝いている。黒江は慌てて、ライトニングを射線軸から離脱させる。

『チリ一つ残さず消滅させてやる!!』

Gカイザーの最大パワーのブラスター。チャージの瞬間、Gカイザーの目に瞳が現れ、余剰エネルギーがプラズマ化し、火花を散らす。そして放たれる。

『燃え尽きろッ!!バーニングッブラスタァァァッ!!』

資源衛星を跡形もなく消滅させる一撃。地上で撃ったらいいのかと思うほどに極太な熱線が資源衛星を覆い、わずか数秒で消滅させる。

『うっひょ、なんてパワーだよ!あれに匹敵する炎使い、聖域にいたかな?』

『流石に波動砲には勝てんが、ショックカノンには追い付いたぜ』

『威張るとこか、それ?』

『ショックカノンは下手すると2km四方蒸発するからな。 通常の物質なら耐えられる物が珍しい。 有る意味到達点の一つだ』

黒江が知る限り、炎に関係する聖闘士は『一輝』だが、鳳翼天翔は風圧が主体で、炎は二次的なものだ。その一輝を思い出すほど、バーニングブラスターの熱量は凄まじい事の表れであった。既にマジンガーZやグレートマジンガーなどは歯牙にもかけないほどの威力だ。

『これで南洋島の上空の制空権は完全になったろう。さて、俺は地上の手助けがあるんで、戻るよ』

『そのまま大気圏に行けるのかよ!?」

『伊達や酔狂で超合金ニューZαになっとらんさ。また会おう』

超合金ニューZαは大気圏突入でも溶けないほど頑丈だ。これを破壊し得たのは、唯一、マジンガーZEROだけだ。そのZEROはゴッドに倒されたので、破壊される心配はない。最も、因果律兵器さえ封じれば、カイザーはZEROに対抗し得るが。

『すげえ……本当に突入していきやがった。さて、帰還しよう』

帰還してしばらくした後、押収した資料から、21世紀日本の警察官僚と外務省の一部の急進的な派閥からのルートで情報が流れていた事が正式に確かめられ、日本政府に正式な抗議を行う事となる。外交ルートの他、軍部からのルートでも抗議がなされ、自衛隊派遣部隊を扶桑軍の指揮で動かす事が合意される事になり、自衛官でもある黒江に連絡が入った。

「なるほどな。自衛官としては、派遣部隊に入ってる航空隊に入ったってか。最も、私は原隊の『中佐』として動くけどな」

「顔を出しておくように、だと。次にこっちに来たら、そこの飛行隊の所属になるぞ」

「どこの部隊だ?派遣されたのは」

「305飛行隊と、302飛行隊だ。お前は5のほうに人事異動だと」

「梅か。あそこは結構腕いいかんな〜。飛行隊司令の要望か?」

「ほらお前、ブルーインパルスと開発の方も歴任したろ?普通に自衛官としてエリートコースだから、あそこの飛行隊が欲しがってたんだ」

「すると、前の政権ん時から目つけてたのか」

「そういう事だ。あそこの司令がお前を欲しがってな。数年前の時は中央に猛抗議したとか」

「マジかよ」

「ああ。で、現時点での空自で、お前らほどの腕を持つのは生え抜きにはおらんからな。ロック岩崎が消え、沖縄シンドロームでそれの再来と言われた者が死んだ以上、事実上はお前らがトップガンだしな」

「生え抜きも腕は悪くないがな。まぁ、こちとら自慢じゃないが、百戦錬磨だからな」

「ウチは領空侵犯を止めるのが仕事だから、お前みたいに、相手に銃弾を撃つのが仕事ってわけではないし、実戦でどこまでやれるかは未知数だ」

「的当ては得意なの揃ってるがな。逆に言えば、お前らの腕の見せどころだぞ?こっちの連中の多くはジェット時代の空戦を知らん。お前らが教える立場なんだぜ?」

「そう言えばそうだな。そっちだとつい最近まで、メッサーシュミットme262が現役で飛んでたもんな」

「そだ。ドイツの連中なんて、『ジェットは一撃離脱がナンボ』って思ってやがったから、こっちが空自流のドッグファイトやらかすの『邪道』って言いやがるし……」

「しょうがないさ。あいつらが初めてだし、ドッグファイトしないもんだと錯覚してるのさ。一度DACT(異種機間空中戦訓練)やってから対応考えるか?」

「そうだな、頼むよ」


カールスラント空軍の実験飛行隊『ハルプ』は、ジェット戦闘機の運用法を対爆撃機特化と考えていて、64Fが一度、F-15を使って揉んだ事がある。その時にウルスラを始めとした者達は、『ジェットの本流は一撃離脱にある。あなた達はせっかくの速度を殺してまで、ドッグファイトに拘るのか?』と意見してきた。これはF-15の速度性能が『神速』と言えるマッハ2以上という点から、ウルスラなどが指摘してきた事だ。連邦軍の戦闘機もそうだが、ドッグファイトを当たり前にしていて、そうして空戦に勝利している。その時はウルスラに『速度が減っても高度を稼ぎながら旋回すれば、直進に戻すときに僅かに機種下げすれば、容易に速度は回復出来る。 それにどんな機体でも高速ターン打てば、亜音速まで簡単に速度が落ちる。F-15はそういう速度域で運動性を発揮してドッグファイト出来る機体なんだ』と説明した。ジェット時代になっても、ドッグファイト技能は必須である事に衝撃を受けたようで、ちょっと涙目だった。ウルスラは『ジェットはウィッチ個人の技能に頼った格闘を廃し……』と姉に言った事があるため、その論が机上の空論であった事を思い知らされたからだろう。特に、ミサイル万能論が立ち消えした経緯を智子と共に解説したところ、一気に意気消沈した。『ドッグファイトっても編隊戦闘基準だし、ミサイルぶっぱなして終わりって事も多いな』とフォローはしたが。

「お前、ダチ公と一緒に、ドイツの技術屋さんに解説したんだろう?どうだった」

「途中で泣かれそうになったよ。自分の理論が机上の空論に等しいって宣告されるみてーなもんだし、それにそいつの姉貴、エーリカ・ハルトマンでな」

「ああ、若い連中が騒いでるあの子の?」

「双子の妹だ。姉と違って、妹は撃墜王にはなったが、どちらかと言うと技術畑でな。そっちに転向したクチだ」


――ウルスラは姉と違い、ウィッチとしてはテストパイロットであるので、あがりを迎えてからはリウィッチにはならず、テストパイロットに専念している。リウィッチになり、エースであり続ける姉との立場の違いが生じた。旧・いらん子中隊在籍当時に、既に満足すべきスコアを上げているので、前線に未練はない。それと対照的に、リウィッチ化して戦い続けるエーリカの姉妹は、自衛隊の間でも有名である。戦うべき理由を見出したためもあるが、エーリカは鉄也への仄かな想いも関係している。一見して、ウルスラのほうが年上に見えるが、エーリカは切れると怖い。かつての上官である智子が『ウルスラ、あなたは『あなたにしかできない事』をしなさい』と優しく諭した事も、ウルスラが本格的に技術屋になる要因だった。

「へぇ。お前、顔が広いんだな」

「私がフィンガースナップすりゃ、ウィッチの一個大隊くらいは動員できるさ」

「自慢だな」

「まーな。近い世代なら、師団級も行けると思うぞー。何せ英雄だし」

「あんた、まだ起きて……あ、電話中ね」

「あ、ちょうどいい。自衛隊の同僚と話してるんだけど、お前にも伝えたい事があるって」

「うぇ!?」

智子が様子を見に来たが、電話中であるので、部屋を出ようとしたのだが、なんと、相手が智子と話したいと言うのだ。智子は大慌てで携帯電話を受取り……。

「はい、お電話変わりました。穴拭智子です。ウチの綾香がお世話に……」

と、カチコチである。智子は意外に『お母さん』の才能があるのか、完全に電話口の応対が『どこにでもいそうなお母さん』である。

「はぁ……。はい、はい。私も出向ですか、分かりました、はい……。失礼します」

電話を切る。すると、『自分も自衛隊へ出向になった』と告げる。黒江はわかったと頷き、寝る。そして、あーやが目覚める。肉体的には寝ている状態なのだが、精神的疲労は第二人格の目覚めと同時にリセットされるらしい。見かけは変わりないと思えるが、目つきが丸っこく、可愛くなっているという違いがある。主人格にとっては夢を見ているような状態なので、一種の夢遊病とも取れる。表情は緊張が抜けているため、普段と90度近く違い、極めて温和である。

「あんた、夜になると起きるの?」

「うん。昼間は緊張が抜けないしね。70年代以降は前線にあまりでなかったから、殆どあたしみたいな表情するようになったけどね」

「んじゃ、坂本が変えようとしてる、あの出来事ん時は……」

「なりかけだね。あたしの声色になったから、みおおねーちゃんがすごくびっくりしてた記憶あるよ」

「すると、すごく強いショックを与えたら、声色から変化するのね」

「たぶん」

「うーん。精神科医もびっくりだわね」

黒江の精神は、極めて危ういバランスで保たれている。坂本はそれを知らずに『苦言を呈した』つもりが、逆に自分の首を絞めた事になる。坂本は定時連絡の際に顔を出し、その『時』の事を後悔している趣旨の言葉を残している。知らなかったとは言え、黒江の心の古傷を抉るような行為をしてしまった事への負い目があるのだろう。

(そいや、坂本の奴、最近は贖罪なんて単語を口癖にしてるわよね。やっぱり引きずってるのね、あの子)

坂本が最近に口癖としているのが、贖罪というキーワードである。自分と話している時に、少なくとも10回は口にしている。よほど、晩年期に寂しい思いをしたのだろう。自虐的ですらある。

「こりゃ精神科垂涎の的だわね。周りを巻き込んでるもの」

「はずかしながら……」

あーやは黒江の人格の再構築の過程で、その内の本能が形になって表れたものである。坂本は恐らく、『戦闘以外で接する事が少なかった』ので、一種の先入観があったのだろう。

「で、今日はどうするの?」

「今日は本読む事にする。時間遅いしね」

「そう。あまり遅くまで読まないようにね」

「はーい」

(なーんか調子が狂うなぁ)

智子はこそばゆい気持ちになるが、黒江のこうした一面は、実はウィッチ仲間の同世代かつ、同じ部隊にいた者にしか知られていない。ただし、坂本の逆行前のように、戦闘時主体の付き合いであった者たちには知られていない。


「ん?電話?坂本から?珍しいわね…。はい。こちら穴拭……。え?醇子が熱出して……看病してる?あたしにどうして電話を……落ち着きなさい、いい年して」

智子も、この頃には『逆行者』達を取りまとめる立場となっているのか、坂本とも日常面での相談に乗るようになっていた。そのため、改変前と打って変わって、電話のアドレス帳が埋まっているし、『以前』より母性が強くなったらしく、包容力も身につけている。そのため、改変前はあまり親しくはなかった『第111戦隊』(旧明野飛行教導飛行隊)で助教をしていた時期の教え子などのアドレスが入っている。


――この第111〜113戦隊は、旧・明野陸軍飛行学校の教官や助教を戦力化した部隊であり、陸軍指揮下で結成された最後の戦隊である。この戦隊は扱いが宙に浮いていた事で有名で、教育機関を改編して部隊に仕立て上げたのだが、二つの日本の住民からの横槍で最前線投入は見送られ、旧任務をなし崩し的に続けざるを得なくなった部隊の一つだ。そのため、最前線で使うはずの機材を本土で教練に使うという、改編目的からは本末転倒な道を辿っている。そのため、部隊員からは不満が漏れており、『飛行時間が300時間にも満たない将兵を消耗品のように使うんだろ!?』と、戦隊長がリンチに逢い、血まみれになって帰ってきた事さえあり、今や、64Fの人材供給元の一つとしか扱われていない有様である。だが、メリットもある。『実戦機材で訓練して前線に送り出せば損耗率の低下が期待できる』からである。結局、明野飛行学校は戦時中の混乱の後、戦後に空軍の飛行学校として再開される事になるため、『時間と労力の無駄だった』とも評されるが、プロパガンダ的意味では意味は大きかった。飛行学校すら実戦に立ちうるというプロパガンダは、国民に総力戦の雰囲気を味わせるという点では大きな効果を産んだ。同隊は戦後すぐに通常の教育機関へ戻されたため、存続した時間は短かったが、智子が前身組織の時の1942年の一時期に助教を努めていたので、『在籍経験があった』と見なされており、この改変中では当時の同僚に連絡を取っている。

「風邪薬飲ませたら、寝かせつけなさい。あ、薬飲む時は水と一緒に飲ませる事、いいわね?」

坂本との電話を終えると、今度は50Fの元同僚からである。応答すると、50Fの後輩が戦死したという訃報だった。

『あの子が……!?』

『そうだ。戦線から撤収する際に、敵の誘導弾を防ぎきれず、ユニットが空中爆発してな……。お前の教え子だったから、お前に知らせた』

『そんな……あの子は、仮にも戦隊長でしょ!?』

『恐らく、被弾した際に魔導エンジンの電装系が損傷し、燃料に引火したんだろう。あいにく、奴は先陣を切っていたからな』

智子が愕然とする訃報。それは在籍当時の教え子であり、現・戦隊長の『藤井』少佐があっけなく戦死してしまった事だった。

『50Fの士気は崩壊寸前だ。更に佐々木の奴が敵に回っているんだ。下川とお前がウチの最後の心の拠り所なんだ、負けるんじゃないぞ』

これこそ、智子が直面する次なる覚醒への布石であった。が、更なる凶報が舞い込む。あのルーデルが片足を切断したのだ……

――地上――

『ぐおおおおおわあああああ!!出撃させろ〜!!』

ルーデルは病室で叫びっぱなしである。完全なワーカーホリック状態だが、ルーデルは被撃墜の際、破壊されたユニットから外れたパーツが運悪く、右足に直撃し、綺麗サッパリ切断された。失った箇所は足首より下の部分であり、ガーデルマンの処置で一命は取り留めた。こうして、片足がないにもかかわらず、出撃を強行しようとする有様であった。ルーデルは現在、義足を即断即決で機械式にし、それの完成を待つ状態だ。

『完治まで駄目だ、再生なら一月とリハビリ、生体義肢なら二週間とリハビリ、機械義肢なら1週間と調整に3日から5日、どうする?』

『決まっている。戦時中に悠長に待ってられん、機械式だ!再生など、戦後になってからでいい』

即断即決である。ルーデルは機械式の義足にするに当たり、どうせなら、と、武器まで内蔵させ、再生治療を受けることなく。それを一生愛用した。23世紀には、細かい機械作業であろうとこなせる義肢が存在しており、軍人は再生治療をしないケースが多かった。真田志郎がその最たるものだ。なので、ルーデルもそれを愛用したのは言うまでもない。なので、子供の頃に再接合手術を受けたなのはは珍しいケースとなる。ルーデルはそれよりも『カールスラントのジェリコのラッパを撃墜した!!』と、ド派手にプロパガンダされたほうが悔しかったようで、ルーデルは義足を得ると、即刻復帰、更なる戦果を得るのであった。



――あのルーデルであろうと、片足を失う時は失う。その事実は連合軍の引き締めに大いに役立った。そして、アルバトロスはまたまた艦隊戦に雪崩込んでゆく。


「安心させたところを襲う、か。戦略的には当然か。第一波、出てください、艦は直掩部隊と待機組で持たせます」

『頼む』

HI-νガンダムがカタパルトに接続される。前身のνより小型化され、ファンネルの携行方式が翼状になった恩恵により、スペースに余裕がある。(本来、ファンネルラックはHI-νの方式が理想とされ、それで開発がされていた。シャアの反乱時には開発が間に合わず、代案が使われた)

『HI-νガンダム、行きます!』

アムロが先陣を切り、HI-νガンダムで出撃する。反対側のカタパルトでは、Gクルーザーが射出される。

『Gクルーザー、出るわ!』

Gクルーザーの加速度は、かのトールギス系に匹敵する。圭子も流石に強烈な加速Gに顔をしかめる。(因みに、圭子はなのはに先んじて、中型宇宙船免許を取得しているので、EX-Sガンダムを愛機にしている)なお、圭子の機体は、Sガンダムとして当初に製造された四機の内、一機はペズンの反乱で失われたため、なのは機を含めての当時に製造された機体ではなく、新規に製造された個体である。そのため、構成部材が更新されており、スラスターも新型なため、加速度は更に高い。MS形態でも普通に大気圏突破可能という、アナザーガンダム真っ青なスペックである。(ノーマルも高高度からなら可能だが、この場合は地上から)そして。

「智子、あなた、本当に大丈夫?」

「仕方がないでしょ、綾香が寝てる時に敵襲なんだし、あたしがライトニング使うしかないでしょ」

黒江が第二人格の時に敵襲なため、智子がライトニングガンダムを使う事になった。いくらなんでも、黒江の中で短時間に人格の切り替えは行えないため、智子が代理となったのだ。そのため、ライトニングガンダムのバックウェポンシステムは切り替えられている。

「ライトニングガンダム、穴拭智子、行きまーす!」

と、おなじみの台詞回しを言いながら発進する。連邦軍での生活で、すべてのウイングマークを維持するには、MSの技能は欠かせないため、智子も訓練を受けていたので、スリーレイブンズの全員がMSの操縦が可能という事になる。ただし、技能ではスリーレイブンズで一番下であるので、護衛機を必要とした。それは。

「……加藤隊長、わ、私でいいんですか?穴拭先輩の随伴機」

雁渕孝美である。リゼルC型(ウイングユニット装備)に乗っていた。雁渕はジムVでの講習を終えたばかりのペーペーだが、実質、単艦で海兵隊まがいの任務を行う都合、どうしても可変機の操縦技能は必要である。武子は彼女への機体選びに苦慮しており、Zプラスは玄人向けの機体であるので、必然的に操縦性を上げ、操作感がジェガンに近いリゼルとなったが、ノーマル仕様では性能不足であるので、C型のチューン機にしたという。今回、ライトニングの随伴になったので、必然的にアムロの指揮下に収まる事になる。

「リゼルC型、雁渕孝美、行きます!」

彼女は海軍出身なため、ここの台詞はうまく言えている。ウェイブライダーになり、先行した三機と編隊を組む。

「ふむ。君は確か、メカトピアとデザリウム戦役にいた……」

「か、雁渕孝美大尉であります!そ、その節はどうも……」

実は、今回がアムロと初の共闘になる孝美。今回の一同の中では末席に当たるので、緊張している。孝美は二つの戦乱の際は別働隊にいたりしたので、ロンド・ベルのメンバーと同席した事はない。なので、轡を並べるのは今回が初めてだ。

「君の噂は、ハルトマン少佐から聞いているよ。リバウでは鳴らしたそうだね」

「い、いえ。とても少佐や先輩方には及びません。私は若輩者ですので……」

彼女は実際、四人のウィッチの中では志願年度は一番最近であり、活躍度でも及ばない。本来であれば、黒江が来るはずだったが、その黒江は休み中なので、急遽、孝美が智子の随伴として、この場にいる。自分より格上のエースとともにいるためか、場違い感があるようである。

「君は実戦の空気を感じればいい。智子くんのカバーは任せるよ」

「は、はい」

MSでの実戦は初めての者を抱えての宇宙戦だが、今回は比較的楽な戦ではある。アレキサンドリア級を旗艦とした、後期のティターンズ宇宙軍では標準的な構成であり、アレキサンドリアは武装構成上、弱点があるからだ。それ故、アレキサンドリアは下方から懐に入り込まれた場合、意外に脆いとされ、現在では少数が正規軍で使われてるだけだ。

「ん?味方の牽制が始まったな」

友軍のラー・カイラム級『ラー・グスタフ』(同級の6番艦)を旗艦にした艦隊の支援砲撃と、その艦載機隊のジェガン部隊が牽制を引き受けてくれている。ジェガン以外には、ネモU、ネロも混じっており、旧エゥーゴ系の部隊なのが分かる。


――本来、ラー・カイラム級はマゼラン/アイリッシュ級の両艦を代替する目的で開発されたが、多くは機関を改良された上で、外洋艦隊に回され、本来の予定の内惑星艦隊には殆ど出回っていなかった。そのため、外洋艦隊偏重の軍備整備には疑問の声がある。最も、脅威が外宇宙からなので、内惑星の防備よりも外の守りを優先する政権の言い分も分かる。また、軍縮時代を知る者もいるので、内惑星の防備を固めるよりも、外惑星以降の防備を整えると言ったほうが、整備予算を議会から得やすいと言った、微妙な政治的事情も含まれていた。そのため、ラー・カイラム級の生産量は未だに多くはない。それと殆どワンオフだが、ナデシコ級が採用された事も、それに拍車をかけていた――

――4機はアレキサンドリア級の斜め下から突き上げるようにして、奇襲攻撃を敢行。アレキサンドリアからすれば、思いがけないところからの攻撃であり、直掩部隊も対応の間がなかった。

「落ちろ!!」

HI-νのハイパーメガライフルが照射され、一気にアレキサンドリア級は主砲や対空砲の多くを失う。更に、ビームスマートガン、ロングライフル、メガランチャーが叩きこまれ、同艦はいきなりの撃沈こそ免れたが、艦隊から落伍していく。(後に鹵獲)僚艦や直掩部隊がようやく反撃してくるが、4機はひとまず、艦隊から見て上方に行き、そこから更に急降下。敵の分断を図った。

「フィン・ファンネル!」

フィン・ファンネルが射出される。アムロはかつてのジオン系サイコミュ機のような、ファンネル主体の攻撃を行うのではなく、本体の攻撃の補助に用いる事で、ファンネルの一回あたりのリチャージ時間を短縮し、隙を少なくする戦法を用いる。これにはアンチファンネルシステムが実用化され、連邦軍で軍事的に使用されはじめた事も関係している。そのため、アンチファンネルシステムの実用化を経た後、ファンネル兵器は『花形』の地位から陥落した事を意味している。

「行けっ!」

アムロは基本、ファンネルは牽制、あるいはとどめに用いる。νガンダムのポテンシャルの高さもあっての事だが、ファンネル兵器に安易に頼らないあたり、ジオンの多くのニュータイプや強化人間とは違うのが分かる。バーザムが一機、また一機と、流れ作業の如く始末されていく。


「さあて、いっちょ行きますか!」

圭子はEx-Sの火器をフル活用し、絶大な火力で制圧していく。同機はZZの対抗機という位置づけで開発されたのだが、Zの正統発展型という位置づけとしては、Sガンダムのほうが正しい。そのため、フェイスデザインはZに近い。最近では、より高価な機体(νガンダムやF91、ネオガンダム、ユニコーンなど)の出現で相対的に安価とされ、追加生産がなされ、今では、複数がエースパイロットに出回っている(もちろん、ペズンの反乱の勝因のALICEシステムは省かれた仕様)。圭子も現在使用している機はその内の一機であり、この月までに一回、機体の入れ替えが行われている(初代機はテストに回されたので、その代替機となる)。狙撃がそもそもの技能だった圭子に取って、射撃武器主体の同機は相性が良く、サラミス改級のブリッジを撃ち抜き、沈黙させる。

「凄い……さすが先輩。私だって!」

孝美は乗機が廉価な量産型であるので、無理はできないが、ジム系よりは遥かに強力なTMSである。MS形態でメガランチャーを放ち、これまた敵艦を落とす。人形で武器を撃つ事は、ウェイブライダーの操作より違和感がないので、彼女は後に、MS形態での戦闘力もリゼルより高い、リ・ガズィ・カスタムを受領する事になる。

「人形で撃つのはしっくりくるけど、ウェイブライダーを操作するのは違和感あるなぁ。やっぱり、本質的にはウィッチなのよね、私」

雁渕はそう独りごちる。彼女は黒江や圭子のように、乗り物の操縦に慣れているわけでもないため、人型でない兵器の操作はしっくりこない。そのため、彼女はZZ系でない、TMS乗りとしては珍しく、MS形態で戦闘するほうが多いパイロットとして成長してゆく。

(もう一つの世界の私、こんなモビルスーツを動かして戦争してるなんて思わないだろうなぁ)

と、嘆息しつつも、仕事はこなすのだった。



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