外伝その308『前線の苦境』


――結果を見るなら、扶桑軍は連邦化の弊害で中堅が使い物にならず、若手も入らなくなったため、Gウィッチと古参で前線を回すしかなかった。新型のチリUストライカーも前線の古参に回され、分散配置されてしまい、部隊の充足には程遠かった。これはストライカーの生産が止まっていた影響であり、学園都市から接収したパワードスーツで代替する思惑を日本側が持っていたからで、それが代替物にならないと判明したために急遽、生産ラインが再稼働したため、前線の予備部品が枯渇する事態になった。64Fが非合法に機材を調達しているのも、軍で最高の優遇措置を受けている部隊でも、部品調達が困難に陥っていたからだ――





――64の機材稼働率は回復しているように見えるが、それは非合法手段での機材調達と、プリキュア、英霊、ロボットガールズを押し立てて戦闘をしているからであり、戦果は挙げているものの、ほぼ陸戦でのもので、航空ウィッチの存在意義からは外れていると言わざるを得なかった。その証拠に空中戦闘の頻度は低く、陸上の敵を中心に戦果が集中しており、陸戦ウィッチがふてくされてしまうという珍事が発生している。実際、64/501と言えども、機材のやりくりは苦労しており、あまりの激戦に、歴戦の勇士達と言えども消耗率は高かった。既に黒江を通し、日本の主要産業に非公式にストライカーの研究を依頼し、その内、戦中の轟天計画に関わっていた三菱、スバル(旧・中島飛行機)、新明和(旧・川西航空機)、川崎重工業などが極秘に研究を始めている。日本はかつて、鉄人28号(初代)、超人機メタルダー、ラ號の建造にこぎつけた実績を持つ(投入されなかったのは、間に合わなかったり、和平派が闇に葬ったりしたからだ)ため、21世紀の時点である程度、ストライカーやIS、シンフォギアは解析されていた。23世紀の時点では、21世紀では足りなかったピースが埋まり、ドラえもんの助力もあり、ISは束の首根っこを掴んでのオーダーが可能になり、シンフォギアはGウィッチならばコピーが可能、ストライカーは戦時中の資料からの再研究で、日本での生産に目処も立った。23世紀では、ドラえもんのAIはロストテクノロジーであるが、感情を持たせることで『人間と同等の倫理観を機械に持たせる』事の意義が再注目され始めた時期にあたる。ユダシステムの一件、モビルドールの一件で一時はタブー視されていたが、『機械に人間同様の感情を与えればよくないか?』とする論調が復活してきたのである。ドラえもんが統合戦争の時代、ドラえもんズと共にバダンと死闘を展開し、親友テレカで時空破断システムを阻止した英雄であることがメカトピア戦争後に判明したからだ。のび太が転生を選んだ背景もその統合戦争にあり、昭和ライダーがのび太たちに協力的な理由の一つでもある。(自分達のコールドスリープ中を狙われ、ドラえもんズが命がけで阻止してくれたため)――






――501/64の前進基地に新たに加わる事になったキラキラプリキュアアラモードの二人。宇佐美いちかは普段は厨房に勤める事になり、『戦えるパティシエ』扱いになり、みゆき(芳佳)の部下扱いになった。後輩であるので当然の流れだ。立神あおいはロックバンドのボーカルをしていた経験もあり、北条響/シャーリーの部下扱いになり、サウンドブースター(ひいては、大本のサウンドエナジーシステム)が起動できるかの計測試験に臨んでいる。(彼女は響の歌声を聞いたと伝え、響の歌は次元を超えていたのが確かめられた。響/シャーリーは死ぬほど感動したとのこと)

「ペリーヌも三重属性かぁ。こりゃ面白い事になったね♪」

「アコちゃん、軽いノリだね…」

「ボクはロボットガールズ、プリキュア、英霊の三重属性だしね。呼び方は好きにしていいよ、のぞみ」

アストルフォは仕事帰りなのか、キュアミューズの姿だが、人格は調辺アコの生前のものはなく、アストルフォのそれであるので、ノリが良かった。キュアミューズの姿でアストルフォのノリの良さを見せるため、自衛隊からは『あざと可愛い!』との声が続出している。また、それでいて、ロボットガールズ(コン・バトラーV)の力も持つため、意外とパワーファイターでもある。ジャンヌがジェラシー気味だが、彼女がはっちゃっけるには酒をたらふく飲む必要がある(オルタ化すれば色々とはっちゃっけられるが…)からだろう。

「ま、ペリーヌの場合、モードレッドとの融合を拒んで、ペリーヌ個人がトワの記憶とプリンセスプリキュアの力に目覚めた結果だしなー。以前よりツンツンしなくなるから、みゆきも楽になると思うよ。あいつ、ペリーヌとしちゃ、目の前で親類縁者を目の前で全員失った孤児だから、弱みを見せられなかったからな。それに領主の家系だ。昔の爵位も名乗れる立場だろうし」

アストルフォはキュアミューズの姿だと、普段は蒸発している理性が宿るようで、シリアスな雰囲気で話す。プリキュアの姿である時は、アコの要素も多少は入るようだが、基本がアストルフォなため、口調自体は男性的である。

「そのトワ…、スカーレットはどこに?」

「今頃、ジャンヌに付き添われて、ド・ゴールと会談さ。どこでやるかは聞いてないけどね」

当時、シャルル・ド・ゴールは自由ガリア軍総司令官かつ、国家元首を事実上兼任する立場である。ペリーヌ/紅城トワからは生涯、『将軍』と呼ばれ続けるが、この頃には既に復興の暁には、大統領職が約束されていた。ここ最近は自国の英霊に精神的にボコボコにされることも多く、アストルフォには『器が中途半端なんだよ、君』と言われる始末だ。

「ああ、この時のフランス軍の総司令官」

「そして、史実で言うなら、後に大統領になる男さ。軍事的に才覚はあるんだけど、政治屋じゃない。だからチャーチル卿に『青二才』って言われるのさ」

ド・ゴールは当時の国家首脳では若めの年齢であった(45年当時は50代前半。当時の国家首脳では一、二の若さを誇っていた)ため、老獪なチャーチルからは青二才呼ばわりされている。本質的には軍人でしかないため、政治家としては未熟だからだろう。のぞみも、黄泉帰った直後に『パリよ。パリは辱められ、パリは破壊され、パリは犠牲となった…しかしパリは解放された! 自分自身の力で解放を勝ち取ったのだ、ガリア全土の支援の下に、ガリア人の力によって! 戦うガリア、これぞ真実のガリアであるっ!ガリアよ永遠なれ!』という演説を聞いていて、なんとなく『大袈裟な事を言うおじさん』のイメージを持っていた。アストルフォ/調辺アコにしてみれば、『元はローマ帝国やフランク王国の一部だったってのに、自分が欧州の中心って思ってるんだからなー』と呆れている。

「あのおじさん、伝記とか見ると、なんか自分勝手って言うか、よく周りにさー」

「彼はナポレオンを気取ってたところあるからね。ほら、コルシカの小男」

「ナポレオンねー。昔、こまちさんに付き合って、学校の図書館にいる時に伝記とか読んでみたけど、なんで皇帝になったのかなーって」

「ナポレオンは何ていうか、時代が求めた軍事的天才って奴だよ。軍事的才能は絶頂期には欧州を制覇する勢いだったし、革命と恐怖政治でインテリ層がいなくなってたフランスに、彼に対抗できる者はいなかった」

「英雄って奴だね」

「そうさ。王権神授説。学校で習ったろう?皇帝なら、宗教的儀式はいらない。王位は宗教的な儀式で得られるものだけど、帝位ならそれがない」

「それで、ナポレオンはワーテルローでどうして負けたの?」

「戦争のしすぎ、それとロシア戦線の敗北の傷が軍を蝕んでたし、ウェリントン卿が将校を集中的に狙わせたってのが通説。当時の軍隊はまだ職業軍人の極初期の時代で、将校がいなくなれば、部隊がチリヂリになる程度の統制さ」

ナポレオン最後の戦い『ワーテルロー』があまりに無様に負けたのは、ウェリントンの才覚もあるが、多国との戦線であった故に、ナポレオンがプロイセンなどを警戒しすぎた事もあるが、ナポレオン自身の加齢による老いと病による判断力の低下があったのでは、という説もある。戦術的要素は数あれど、イギリス軍も末端の兵士は荒くれ者の巣窟であった事を考えると、ウェリントンの巧みな軍略が衰えた皇帝を打倒したのは確かだが、IFが想像されやすい戦であり、史実日本の関ヶ原のように、軍略の授業でも取り上げられる。

「君の代には士官学校の教育は簡略化されてたかい?」

「されだした頃だよ。先輩達と違って、三年は士官学校にいなかった。だけど、まだ軍略の授業はあったよ。」

「促成教育者には可哀想だけど、今後は大して出世できないだろうから、君はラッキーだよ。プリキュアだから、G枠で自由勤務権が与えられるから。その分は戦果挙げる必要があるけど」

「確かに。今の17、8くらいの子からはどんどん簡略化されて、士官でもまともな軍略教育されてない場合があるんだ。先輩達が上に重宝される理由が分かった気がする」

「階級調整ってのは、日本の内勤連中が扶桑軍を馬鹿にするために恣意的に行った施策だからね。現場で弊害が出てから、『勤務階級の維持』を明言しだす。遅すぎだね」

「姉貴(錦との融合が進み始めたために使用し始めた)も言ってたけど、戦術教育以上は現場で実体験交えて、教育する事になってたんだよ。それを今更、教育現場で教えてから出せってねぇ。教員もマニュアル無いよ」

扶桑ウィッチの教育制度は通常の軍事教育よりかなり簡略化されており、戦士としての寿命の兼ね合いで、軍略教育は男性軍人ほどには施されなかった。赤松や若松のように、戦略に口出し出来るほうが極めて珍しいのだ。黒江が事変当時、江藤に『お前はいらん知恵をつけている』と言われ、それを聞いた若松に半殺しにあったと告白しており、如何に異端視されたかが分かる。逆に言えば、G化しなければ、江藤はアリューシャンに島流しにあっていたかもしれない表れで、黒江や圭子は事変当時では異端児扱いされていたのが、今では『まともな知識がある』と見なされる。江藤には信じられない事実である。また、統合参謀本部で日本側と教育で揉め、双方の総理大臣の協議で『15歳以下は前線に出さない』事が議論をしている事が知れ渡ると、現場の隊長格が直談判を嘆願するなど、混乱が起こった。地球連邦の科学力でRウィッチ化を進め、古参の維持を行う事が最善策にされたのはそのような混乱が背景にある。Sウィッチ枠の創設も古参の軍歴証明のようなもので、『扶桑海事変従軍記章』が日本側の反対(日本側は記念章という名にしたかった)を押し切る形で創設、残留する経験者に授与される事になったのも、Sウィッチの優遇措置の一環とされた。(Gウィッチ用が金色、Sウィッチ(R含む)が銀、そうでない者が銅と差別化されていた)

「ウィッチは年功序列の風潮が薄かったって聞くけど、扶桑じゃ違うんだろ?」

「非公式扱いだよ。まっつぁんと若さんがヒエラルキーの最高位、次に先輩たち、その下がクロウズって具合で。若い連中は知らないから、問題になったんだよ、アコちゃん」

「だから、この部隊はある一定の世代までが異常に多いんだね」

「飛行隊が立ち消えになったり、作戦が無かった事になって軟禁されてた古参連中のたまり場だよ。だから、ひかりちゃんや静夏ちゃんは例外中の例外だよ」

64Fは古参が自主的に部下を見限って、黒江達を慕って転属した兵と士官がわんさか移籍したため、他の飛行隊が困るほどに古参を多く抱えていた。幹部の直接配下の中隊などは半数が幹部の若手から中堅時代の部下だった者で、通常なら戦闘隊長を務められる者ばかりである。日本側がそういう編成を求めたのもあり、かつての明野飛行学校、横須賀航空隊が霞む陣容に成長している。各地で行き場を無くした古参がわんさか集まったため、部隊の平均年齢は24歳で、錦(のぞみ)程度の軍歴では『若造』扱いである。これは日本に343空の伝説の信者が多く、44戦闘団のような部隊を予算確保のために欲しがった事が理由に挙げられ、当の源田でさえも政治的に反対できなかった。歴史的には、ジオンのキマイラ隊と、地球連邦軍のロンド・ベルのアイデアの起源が64Fにあたる。整備兵も各地のトップが集結させられ、軍需産業の強力なバックアップという点では、キマイラが組織概要的には近いだろう。そのため、建前上の上位編成を作る案が出ているが、組織の柵に囚われない部隊を日本が求めたのもあり、交渉は難航中だ。(実質、源田の直属航空隊であるため、本当に上位編成は建前上のものでしかないのだが、日本の一部から『誰かがいたずらに消耗させてしまう』という反対が生じた)501航空軍を実質的に取り込んだのだから、部隊の持つ権限を最高位にするというのは内定していたのだが…。


「で、部隊の編成は?」

「今んとこ、ロンド・ベルに習っての独立外殻部隊化が有力視されてる。だけど、他の国のエースを入れてるから、カールスラントが嫌がってね」

この時期、64Fは外殻独立部隊として運用し、実質的に軍編成から独立した航空軍とする事が日本側に推されており、扶桑もロンド・ベルの存在から、容認する声があった。しかし、内部にカールスラントのトップ10の多くが入っているため、カールスラント空軍系の将軍達が反対論を出している。ドイツの強引な人員削減で反ガランド派の多くが失脚していたカールスラント空軍は、トップ10の上位が自分達の都合で動員できなくなる事を恐れた。マルセイユ、ハルトマン、バルクホルン、ルーデル、ミーナ、ラル…。トップ10の過半数が同部隊に集められた上、ガランドがG機関のために総監の座をラルにぶん投げる緊急事態。カールスラントは窮していた。しかし、ロシア連邦による『撃墜数の精査』という名目の嫌がらせで士気が崩壊寸前であったという窮状でもある。その渦中にいる、元JG52出身者の体裁維持のため、結局、ヨハンナ・ウィーゼまでも501に供出する状態で固定された。また、日本連邦が事実上の国際連盟(後の国際連合)の盟主に君臨したため、ダイ・アナザー・デイ中の行動は承認された。また、この頃には、主だった501在籍のカールスラントエースたちは予備役編入願いを一斉に出し、南洋島にコミュニティーを作る勢いで住居を購入している。また、扶桑皇国も義勇兵として扱うように手筈を整えており、義勇兵を戦線で用いるため、太平洋戦争を『連合国の戦線である』と理由付けするために、艦娘達が暗躍している。その必要がないのは美遊・エーデルフェルト(リネット・ビショップ)で、公的に太平洋戦争に参戦したウィッチは同盟国のウィッチである彼女とビューリングのみだ。また、ペリーヌは今回、『ペリーヌ・クロステルマン』としては動かず、『紅城トワ/キュアスカーレット』、『モードレッド』として太平洋戦争に参戦すると智子に告げている。

「盛り上がってるな?アコ、のぞみ」

「響。いちかちゃんとあおいちゃんの扱いは決まった?」

「あたしがあおいの面倒を、みゆきがいちかを引き受ける事になった。つぼみからはフェイトを通して、『来れそうにない』ってさ」

「そっか、つぼみちゃん、今はフェイトちゃんのお姉ちゃんの立場だっけ」

「そうだ。今は時空管理局の研究員で、どうしても休暇が取れないんだと」

花咲つぼみ/キュアブロッサムはアリシア・テスタロッサに転生し、フェイトがその生命を救った事で覚醒を遂げた。フェイト曰く『ロリ姉』で、子供の頃からあまり成長せず、12歳当時のフェイトに瓜二つの容貌を保っている。キュアブロッサムへの変身は年齢が20を超えた後で目覚めており、聖闘士になった妹ほどではないが、プリキュアとして、生前は上回る実力は持つ。当人は妹と違い、ノリがいいために『プリキュア・ピンクカルテット』の再結成に乗り気だが、休暇が取れずに、ダイ・アナザー・デイへの参戦は見送った。

「あいつ、あたしに電話で泣きついてよ。あたしに言われてもなー…」

「ご苦労さま。ところで、アコ。どうして変身したままなんだよ」

「理性が元の姿だと飛んじゃうから、理性が必要な時はプリキュアになってるんだよ。それに、アコとしては、どうみても小学生じゃん」

「そいやそーだな…」

「最近の小学生はボクの転生前と大して身長変わらないし、ベリー達が大学選抜との試合で来れないしさ。変身しっぱなしってのは悪くないさ。アラモードの二人はサポート要員で使うのが吉だし、りんは肩撃たれて、今は医務室だよ」

「しっかし、変身した姿でジャンクフードかよ」

「ボクの転生前には無かったし、アコとしては小学生だったしさ。こういうのしてみたかったんだよね♪」

「お前なぁ…」

呆れる北条響(シャーリー)。ルッキーニが手がかからなくなったのは朗報なのだが。

「ん、どうしたの、響」

「のぞみ、エイラの顔見てみろ…」

響がため息をつくので、理由をのぞみが聞くと、原因はエイラであると告げる。イリヤの事でエイラが突っかかってくるのだと。

「うわっ…。凄い顔だよ〜。なんかやった?」

「してねーよ〜!単に黒江さんから、イリヤとクロの面倒見ろって言われただけだよぉ!」

「もしかしてさ。サーニャとしては、エイラと同室だったのが、急に別室に変わったのが気に食わないんじゃない?エイラって、サーニャのこと好きだったみたいだし」

「イリヤとクロの関係を話したほうが良くないか?このままじゃ、ずっとあんな調子だよ?」

「どー説明すりゃいいんだよぉぉぉ!」

「四人部屋にする予定だよ。エイラには俺から話す。美遊にやらせると、夢幻召喚で基地壊すからな…」

「先輩。…で、なんですか。その牛丼」

「みゆきに作らせたヤマト亭の看板メニューだぞ、これ」

黒江はみゆき(芳佳)に牛丼を作らせたようだ。この日はねぎたまバージョンで、ヤマト亭では水曜日限定のメニューだという。宇宙戦艦ヤマトは食事も上手いので、黒江はみゆき(芳佳)を修行に行かせ、そのメニューを作れるようになった段階で呼び戻している。牛丼はその一端だ。また、スイーツはいちかが来た事でレパートリーに広がりができたと喜んでいる。

「いちかの奴、パティシエでしょ?みゆきの奴、何させてるんすか?」

「スイーツづくりだ。自衛隊での俺の部下の一人が実家が喫茶店で、スイーツ喫茶で鳴らしてるらしくて、修行させてる」

宇佐美いちかは普段は厨房が戦場になる。みゆきの部下扱いになったのは、料理担当をさせるためでもあり、黒江の計らいで、自衛隊での部下(実家がスイーツで鳴らす喫茶店)をつかせ、修行させている。

「美遊に試食をさせようかと思ったが、あいつ、イギリスだから、まともなスイーツ食った経験がねぇから、トワにさせる。クリーム使うケーキとかはフランス人のほうが批評できるだろ?」

「イギリス人が聞いたら憤死するよ?あいつら、自分がまずいものしか食ってないって分かるの、21世紀の話だし」

リネット・ビショップとして、世の人々の考えるスイーツを食べたのか?そう考えた黒江は、元はガリアの富裕層の出であるペリーヌ(紅城トワ)にいちかのスイーツの批評をさせるつもりである。

「うーん。フランス人はバタークリームかカスタードクリームだよ?人選考え直しなって。そりゃ、美遊はあれなのは分かるよ?スコーンとかしかないしさ」

「かと言って、マルセイユやトゥルーデに頼めるか?無理だろ?ミーナかねぇ。日本人の舌になったし」

「西住流が洋菓子食うと思う?」

「うっ!……。参った、そこまで聞いてねぇ」

「大丈夫とは思うけどね。普通に接待とかでもらってるだろうし。いくらミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとしての味覚が変でも…」

「お、ちょうどいい。おーい、まほ〜」

「何でしょうか、閣下」

「新入りのケーキの批評を引き受けてくれるか?」

「いいでしょう。母が接待でもらってくるケーキを、父がおすそ分けしてくれてましたから」

「分かった。今日の夜、ここに来てくれ。立会人もいいか?」

「構いませんよ。自分はケーキにはうるさい方なので」

精神がまほなため、容貌はミーナのままだが、口調と声色はまほのものである。服装も黒森峰女学園のパンツァージャケットにカールスラント軍式の改造を加えたもので、航空兵に見えない。どうみても戦車兵にしか見えないと評判であり、偶然に出会う士官学校の同期に『お前、いつから転科した?』と真顔で言われることも増えたという。

「そりゃ良かった。で、その格好、どうみても戦車兵だな?」

「ウチの学校のジャケットを取り寄せて、改造しただけなのですが?」

「ま、ドイツ系は似てるからいいが、同期からはツッコまれると思うぜ」

「降下装甲師団に研修はいきますよ、そのうち。戦車道と実戦は違いますから」

「パーシングはどう思う?」

「ケーニッヒティーガーで充分だと、自分は考えます。熟練した戦車兵であれば、パーシングをアウトレンジできますから」

「ドイツの反応は?」

「ヒステリックに過ぎます。ティーガーはアインスの時点でも、徹甲弾を新型に変えたシャーマンの攻撃に耐えられるのですよ?それに戦車を無理にぶつけず、航空近接支援が使えるなら、そちらの方が有効でしょう?」

「スツーカのG型や九九式襲撃機のようにな。ただ、日本はああいう近接航空支援にヘリを使いたがってな」

「ファイアフライやスーパーシャーマンでも使われなければ、アインスの正面は抜けませんよ。歩兵の支援も入りますし」

「史実のアフガニスタンでソ連が泣いた理由は、携帯式対空誘導弾のせいだし、熟練したウィッチなら、フリーガーハマーを見越し射撃でヘリに当てて来そうだと言ってるんだがな。それに、ヘリは燃料食うから熱核タービンでも使えなきゃ効率悪くて使いたくねぇよ」

「制空権確保は余裕なのだから、スツーカのG型とか九九式襲撃機でも良いくらいなんですがね。シャーマンなら」

「A-10を米軍に頼んで、持ってきてもらうか?F-16だと、なぜか騒ぐ連中いるし」

「どうせ、軍事的無知な輩の戯言でしょう?21世紀のMBTだって、天蓋に37ミリ砲が当たればお陀仏ですよ」

「九七式とかだと一発で木っ端微塵だぜ?F-16の機銃掃射でも。まったく、戦中の機銃掃射の光景を求めてんのか?コルセアやヘルキャットの」

「日本のそういった輩の戯言は聞き流したほうがいいですよ。相手にしたら疲れるだけです。常識がよくて、二次大戦で止まってる連中ですよ」

「本土にキ102のラインがまだ残ってたと思うから、それを使わせるか?九九式は武装が弱いし」

「複座戦闘機の配備を日本が承認させますか?」

「かと言って、今や武装が豆鉄砲の九九式襲撃機を酷使はできないぜ?」

「あのさ、スカイレーダーを転用すりゃ良いんじゃね?二〇ミリ砲持ちだし、キ102を襲撃機として配備させるような日本じゃないだろうし」

「それだ!!」

キ102。陸軍がこの時期に実用試験に供していた双発戦闘機で、襲撃機転用が予定されていた。しかし、双発レシプロ戦闘機という分野があまり成功例がないため、制式採用は絶望的であった。

「スカイレーダーなら、エンジンを鍾馗にも回せる!まほ、パットン親父に電話だ、電話!ケイの名前出せ」

パットンは圭子に弱みを握られている。ブロマイド関連のコレクションのことだ。圭子は覚醒後、パットンをそれで顎で使っており、モンティも最近は智子のことで手綱を握ったという。ロンメルは元から協力的なため、三将軍では、モンティが一番に圭子に怯え、パットンは悪友、ロンメルはポーカーで貸しがあると常々言っている。

「パットン将軍ですか、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐であります。ハッ、加東閣下から急ぎの伝言でして。今、黒江閣下に代わります」

「あ、パットンのおっちゃん?俺。ケイから伝言〜。ウチにスカイレーダーを売ってくれるよう、アイクに頼んでおくれよ」

「何、我が軍のスカイレーダーを?よし、ケイにはブロマイドの借りがある。今、扶桑の統合参謀本部にいるから、アイクに打診する。日本の防衛省にも話を通すか」

「形式上でいいよ」

「日本もスカイレーダーは欲しがっとるはずだ。流星改の後継を探しとるしな。ワシとルメイが戦線の要望を受けて、アイクに伝え、アイクが日本の首相に言えば、横槍はないだろう」

「頼むよ。あ、空母部隊が九七式の代替で使いたいって事だから、先に戦線にあるの供与してくんない」

「あとで、ニミッツかハルゼーに問い合わせてみる」

扶桑海軍は流星改を大型空母に配備した段階で生産が一時ストップのため、天山の代替は愚か、九七式艦攻すら更新途上という惨状となっていた。流星は当時としては高性能であるが、生産ストップの影響でラインが天山諸共に停止してしまった。史実と違い、元から雲龍型航空母艦に油圧式カタパルトがあったので、雲龍型航空母艦でも運用は可能であったし、胴体に500〜800kg爆弾1発か、魚雷を積むのは、二次大戦当時としては標準値であった。この事から、スカイレーダーが如何に流星を旧式化させるオーパーツであるかが分かる。尾張航空機(愛知航空機相当)は流星の翼のパイロン設計への変更を急いだが、スカイレーダーが黒江達の後押しで採用されるのである。予備部品が枯渇した天山の代替として、自由リベリオンから同機が、ルシタニア攻略に備え、即日で供与されたという。

「多分、即日で決めてくれるだろうし、お礼にニミッツを今度、トムキャットでも乗せるか?」

「心臓発作起きますよ?ハルゼーなら行けるかと」

「あのおっさん、パイロット出身だっけ?」

「資格ないと空母の艦長になれませんよ、米国だと」

「そうだったか。…あれ、艦長してなくね?」

「部隊の長はしてましたし、空母の初代ビックEに座乗してたんですけどね」

「エンタープライズに座乗してたな、そう言えば。21世紀の後継の式典に出たがってるとか」

「本人の名前、駆逐艦なんですけどね」

「スプルーアンスも同じだろ、その理屈だと」

実際はサラトガで艦長の経験があるウィリアム・ハルゼー提督の話題になり、彼の代表的座乗艦のエンタープライズの事が出る。果たして、ハルゼーが21世紀の次期エンタープライズの式典に出られたかは定かではないが、ニミッツの方は、ダイ・アナザー・デイ中に21世紀米軍のニミッツ級、フォード級に乗艦する機会を得られたという。米軍の扶桑への兵器供給の寛容さは市場開拓の意図もあったが、カールスラントへの示威も多分に入っている。そして、フォード級に積まれたF-35Cはグラーフ・ツェッペリン級の維持に失敗したカールスラントにこれ以上ない屈辱感を与え、同国の航空産業の再活性化のきっかけを与えたとか。また、カールスラントが鹵獲していた同級の近代化に際して、扶桑は有償援助で電磁カタパルトを与え、カールスラントは鹵獲艦の改修(扶桑からの購入艦は実戦で使われなかった)で空母運用を勉強するのだった。



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