外伝その314『日本軍の残光6』


――扶桑艦隊は新兵器と未来兵器のてんこ盛りでヴェネツィア海軍を翻弄、大半を海の藻屑にした。戦艦は撤退したのを除けば、撃沈は二隻だが、時代相応の兵器での戦果としては上々であった。また、義勇兵にとっては南太平洋沖海戦以来の大戦果であった。逆に言えば、航空支援が無い艦隊の運命を妙実に表したとも言える。ヴェネツィアは戦艦が二隻、巡洋艦五隻、駆逐艦六隻と、それなりの数の艦艇を航空攻撃で一挙に喪失した。造船能力が大国に劣るヴェネツィアは、領土はそれなりだが、肝心の工業生産力はロマーニャより多少高い程度であるため、かなりの痛手だろう――


「ヴェネツィア海軍は航空戦力が無い。船の数はあるが、もう奴等の時代は終わったって事だな」

黒江が眼下に見るは、戦艦アンドレア・ドーリア。ミサイルで致命傷を負わせられ、必死の抵抗虚しく沈んでいく。それを黒江はヴェネツィアの落日と表現する。史実イタリアの第一次世界大戦の未成戦艦『フランチェスコ・カラッチョロ級戦艦』があれば、秘匿されているだろうが、超大和型戦艦が現れし時代にあっては、艦隊決戦で役には立たない。扶桑は紀伊の喪失で、ポストジュットランドタイプに見切りをつけ、新戦艦に切り替えているのがその証明だろう。

「これで、ヴェネツィアは主力が合流しても怖くないってことですか?」

「アメリカの超弩級戦艦に対抗するために進化してきた日本戦艦だ。遠距離戦はこっちのもんだ。奴等の砲は遠距離前提の砲じゃないから、殴り合いは断然有利だ」

「そういうものなんですか?」

「イタリア戦艦は無理を重ねて、外洋に出てきてるんだ。遠距離だとこっちが優位にある。地中海で戦うのが前提の海軍と、外洋海軍の日本とは基礎が違う」

ヴェネツィアもロマーニャも、地中海の番人が前提条件であったため、航続性能に制約が強く、ティターンズ提供の浮きドックでの整備、洋上補給でどうにか外洋に漕ぎ出している状況であるが、扶桑は核融合炉が主動力になりつつあるため、以前のように、航続性能に悩む必要は無くなっている。そのため、戦略的自由度は敵軍より格段に上であると言える。

「それはそうだけど、油断は禁物だよ」

「お、のび太。ダブルスペイザーで来たか」

「光量子駆動だから、速いしね。リベリオン本隊とは、あと三日もあれば接触する。そうすれば混戦になるよ」

「奴等、有に数百の機体をいつでも投入できるからな」

「す、数百ぅ!?」

「マリアナ沖じゃ1000機を運用してるんだ。数百で済むなら御の字だ」

「そうなったら、未来装備フル活用でトントンさ。あいつらは基本的にM2のシャワーだから、紫電改や烈風は何回も耐えられない。だから、陣風を急がせたんだよ、綾香さんは」

「陣風は20ミリに耐えられるように造らせたからな。米軍はジェット機の時代まで、20ミリ砲は好まないから、充分だ。」

「……なんか、信じられないわねぇ。別々の世界の勢力がこの世界の日本とアメリカに肩入れして、代理戦争をさせてるようなものでしょ?敵は『利用されてるだけ』って気づいてないんですか?」

ルージュが疑問を口にする。もっともな疑問だが、それには語弊がある。リベリオン本国はティターンズの思惑を知った上で、国民がそれを選択したのだ。第二次世界大戦につきものの『人種差別問題』。それが表面化し、リベリオンの支配層の白人が『黄禍論』を信じていた事もあり、戦争を『黄色人種と白人種の最終戦争』と捉えていた事もあり、戦争は凄惨極まりない様相を呈していく。

「あからさまに高圧的だし、バカでもわかるよ。だけど、敵の支配層の白人はこの時代、心の内に隠してるだけで、白人至上主義者が多かったんだ。日本人を心の内で見下す連中も政治屋に多いんだよ、ルージュ。時代背景考えれば当然だが、次の戦争は史実通りに凄惨になるだろうさ。敵の政府の誰かしらはは殲滅戦争を目論んでるし、ティターンズはそれを煽ってるからな」

「そんな!一つの国を滅ぼす戦争なんて…!」

「太平洋戦争はそうなりかけた。日本もその報復代わりに、国家機能の喪失は狙うだろうから、恐らくは核兵器を使わない分、長引くだろう。下手すると、10年だ」

「嘘ぉ!」

「アメリカを落とすんなら、ハワイを落とし、西海岸を落とし、五大湖の工業地域を黙らせないといかん。それでワシントンとニューヨークを制圧する。パナマ相当の運河は規模が史実より小さくて、制圧しても影響は小さかったからな。史実と違って、運河を抑えた以上敵の航路は南米周りルートだから、楽観していいはずなんだがな。日本はヒステリー起こして喚くんだから、始末に負えないぜ」

黒江も嘆くように、日本の一部世論は太平洋戦争の報復を叫び、リベリオンのすべてを粉微塵に粉砕しようとしている。この当時、リベリオンとの和平の機会を、防衛省は『太平洋艦隊を真珠湾で粉砕し、リベリオン西海岸に上陸したタイミング』と見込んでいたが、結局、異論が処方面から出た事から『五大湖の工業地帯の破壊、東海岸二大都市の制圧』に流れていく。そして、太平洋戦争が見込まれる事での防大の任官拒否も『前線配置が見込まれる』ことで傾向が強まっていることから、既に職業軍人である扶桑出身者をその代わりに自衛官に任ずる事も再び、増加し始めている。この問題は『防大卒の肩書をほしいが故に確信犯的に任官拒否する』行為が横行している事が背景にあり、良心的兵役拒否と絡んで、政治的に揉める要素があるため、既に職業軍人としての勤務実績がある扶桑の軍人(プリキュア出身者含め)を自衛官としても遇する規則を明確化することで、人材の穴埋めを図った。従って、64F隊員は全員が地滑り的に『航空自衛官』(幹部自衛官)としての地位が与えられ、活動できる事になる。

「あ、お前ら。航空要員ってことで、航空自衛隊に籍が自動的に入ったから、今度からはのび太の世界で『自衛官』と言えるぞ」

「え、本当ですか?」

「武子から通達が入った。日本側での手続きが終わったそうだ。はーちゃんも入隊手続きしておいたそうだから」

「なんで空自なんですか」

「そりゃ、空中戦が空自の担当だからだよ。敵の撤退を確認次第、空母に戻る。敵の救援があるかもしれないしな」

日本連邦軍としての活動なので、本来は双方の組織で活動可能なのだが、ガチガチの職業軍人である扶桑軍人を戦後の『自衛官』として遇するのを嫌がる世論がわずかながらも存在する日本側の政治的調整が難航していたのである。それがようやく完了し、扶桑軍人も大手を振って、日本で行動できるようになったのである。とりあえずは安堵する。日本も新領警備の兼ね合いで野党が妥協したのだろう。


――航空攻撃は30分ほどであったが、その30分でヴェネツィア海軍の別働隊は壊滅状態に陥った。戦艦二隻、巡洋艦四隻以上が海の藻屑となったわけだ。一同の眼下では、戦艦ジュリオ・チェーザレが大火災を起こし、火災が弾薬庫に回ったか、大音響とともに、まっ二つに割れて沈没していっている。旧式とは言え、改装済みの戦艦を二隻失う事はヴェネツィアには痛手である。――

「敵艦隊は撤退したか?」

「はい、統括官。後続の駆逐艦と輸送艦は取って返したように変針しています。追撃なさいますか?」

「いや、主力がいなくなれば、イタリア駆逐艦と輸送艦は烏合の衆だ。それに、過剰な追撃は日本側に『虐殺』と謗られる危険もある。ここは帰投する」

早期警戒管制機に問い合わせ、敵艦隊の撤退を確認した黒江は帰投を明言する。過剰な追撃は政治的に謗られる危険性があるからだ。こうした政治的制約は『戦術の自由度を削いでいる』と批判が大きかったが、日本の事情に配慮する必要があったからだ。しかし、太平洋戦争で史実の阿波丸事件と同じような出来事が起こったことで、リベリオンの輸送船団の殲滅指令が出されるのである。この指令は後の太平洋戦争の終戦直後に、リベリオン本国の復員船に使える船が殆ど払底しているという、別の問題を引き起こす事になるのである。

「あっさり終わりましたね」

「第二次世界大戦の水準の防空網でジェット機の群れには対抗できんさ。今のは、ほんの遊びみたいなもんだが、アメリカ軍相手はそうはいかん。覚悟しとけ。雨あられと砲弾が飛び交うからな」

VT信管が無くとも、米軍の防空網はスコールのようなものである。日本軍が大戦後半に悩んだように、零戦や隼は愚か、銀河と飛龍も一瞬で粉微塵になるほどの威力を持つのが米軍の防空網の威力である。黒江はヴェネツィア海軍との戦闘を『遊び』と表現しつつ、リベリオン本国軍との戦闘を格が違うと表現する。

「それに、今のお前達の実力じゃ、南斗五聖拳や北斗系の拳法に無力だ。連中は超人の域に達しているからな。それより格下の相手に手もなく捻られただろ」

「うぅ。スーパー化しても、普通に鍛えただけの人に圧倒されるなんて、思わなかったですよぉ」

「お前らは変身で基礎能力値を引き上げているに過ぎない。それに元から強い奴が極限まで体を鍛えば、あっさり超えられる。それは理解しろ。素手でMS壊せる拳法がある世界の連中とやり合うには、お前らの基礎を鍛える必要がある」

黒江はごく普通の少女(現役時)の基礎能力をスーパーヒロイン級にまで引き上げるプリキュアの力をそう評価する。仮面ライダー達も変身後の基礎値を様々な方法で引き上げていたため、特訓の必要性を説く。もっとも、この場にいる者達も、現役最終時よりは強くなっているが、経験則に基づくものなので、如何なる相手とも戦えるよう、鍛錬を続けてきた歴代の仮面ライダー達には、基礎戦闘力で水を上げられているのだが。

「基礎を引き上げるって事ですか?」

「そうだ。そうでなきゃ、この海千山千の状況は生き残れん。歴代の仮面ライダー達は特訓で強くなってきた。お前らもそうする時が来たという事だ」

この後、プリキュア達は黒江によるしごきを受けることになる。歴代昭和仮面ライダーの基準なので、ものすごく危ない方向なのだが。





――帰還後――

「ひぇ〜!ドラえもん君からどこでもドア借りたからって、南洋島の平原でジープ飛ばして、追いかけなくてもぉ〜!?」

どこでもドアで南洋島の南部にある大平原に行き、そこを変身前の姿で走らせ、ジープで追っかける黒江。プリキュア達はかつてのオールスターズ戦で似た場面を経験した者達が多いため、黒江がノリノリでジープをかっ飛ばしてくるのに大慌てながらも、ツッコミを入れる。しかし、生前に戦っていた経験は生きているし、体がウィッチと化していることもあり、変身前の状態でも、五輪トップのスプリンターより遥かに早かったりする。

「轢くようなポカはしねぇよ。ちゃんと避けてる限りはな。お前ら、オリンピックの金メダリストより速いタイム出してるぞ〜」

「え、本当ですか!?」

「ウサ○ン・ボルトより数段速いタイムだ。だが、まだまだだぞ」

ジープと一定の間隔を保てている一行。少なくとも時速40キロ以上は出ている。黒江からすれば『どん亀』だが、常人以上の速度ではある。人間の構造的な速度限界は50キロ前後であるので、それに極めて近い速度を出している事になる。素体の身体能力の反映か、生前より遥かに速くなっている者もいる。

「つか、どこまで走らせるんですかー!?」

「横浜一周くらいの距離だ。そこまでいくと、旅館がある。そこで一泊する」

「そう言えば、響は?」

「奴は仕事だよ。疑似ワルキューレのボーカルでもあるからな。あおいの奴が対抗心もやしてたが、何でだ?」

「ほら、先輩。あの子、ロックバンドしてるって言ってたじゃないですか。それに、響って、歌が訓練でグッとうまくなったじゃないですか。生前はピアニストだったけど、歌手としては……、うん。才能無かったですから」

「多分、美雲・ギンヌメールの因子も得たからじゃないかな。あいつの歌があそこまでなったの。彼女自体、プロトカルチャー時代の歌い手の誰かの『クローン』らしいし」

シャーリー(北条響)は美雲・ギンヌメールの因子も持っていたらしく、因子を目覚めさせる形で歌唱力を得た。生前はピアニストであったが、歌唱力は無かったらしいのが、のぞみの口から明かされる。

「かなあ。どうも、響の歌が次元を超えて届いて、いちかちゃんとあおいちゃんを巻き込んじゃったみたいで」

「フォールドクォーツとかも使ってるからな。それで届いたかもしれん」

「フォールドクォーツ?」

「ある生命体とかから取れる、ドラえもん世界の希少鉱石さ。次元を超えて歌を届ける力があるから、あの次元震はそれで起こったかもな」

「歌の力で、戦争が終わる…か。あおいはそれを聞いて、張り切ってましたけど…」

「それができるようになれば大したもんだが、ミンメイやバサラの領域に達するには、偉い時間がかかるぜ。素質はあるが、まだ磨いてない原石だぜ、あのガキは」

りんに黒江は答える。立神あおいは『原石』であるが、どこまで伸びるかは未知数だと。つまり、『サウンドウェーブシステム』への適正が確認されたのだ。当人もFIRE BOMBERや歴代の歌姫達の存在と活躍を聞かされて奮起しており、(シンフォギアのように、歌を戦闘のエネルギーにするものもあるのにも驚いている)北条響/キュアメロディが先行して、影武者とは言え、歌手活動をしていることへ対抗心を見せている。また、ドキドキプリキュアのキュアソード/剣崎真琴、プリキュア5のキュアレモネード/春日野うららがアイドルをしている事は知っているため、その方面でも対抗心があるようである。

「そういえば、あのガキ、うららや剣崎真琴に対抗心があるみたいだったが?」

「たぶん、うららと真琴ちゃんが歌手兼アイドルなのに対抗心があるからじゃ?」

「あ、それあるかも。方向性は違うけど、うららちゃんも真琴ちゃんもCD売れてたから」

「歌はハートだ。焦る必要は無いと思うぜ?」

「それに、先輩だって、その気になればデビューできるじゃないですか?」

「お袋が某歌劇団に俺を入れたくて、英才教育した名残りだよ。広報に頼まれてるが、事変後の事もあるから、乗り気になれねぇだけだ」

「先輩への手のひら返し、事変の生き残りの間で有名ですからね」

「そんなに?」

「一回転くらいしてるんだよ。一時は技の名前が『西洋的』だからって、時の上層部が疎んじてたんだから」

のぞみが肉体に刻まれている記憶から、りんとラブに説明する。黒江は色々な要因もあって、事変後に冷遇された。だが、外国や日本での勇名に扶桑のほうが驚き、国家元首の昭和天皇の寵愛もあり、大慌てで扱いを変えた。それが現場での軋轢を生んでしまったため、黒江の扱いは『世界最強級のウィッチ』ということで落ち着いた。折しも、カールスラント系ウィッチのスコアが『参考記録』にされ、実スコアが大きく落ち込んだ事との兼ね合いでもあった。カールスラント系ウィッチの士気が崩壊寸前になった事での代替が扶桑の古参の持ち上げであった。ロシアによるドイツへの嫌がらせの結果である。急に持ち上げられた古参兵の行き場も64Fの役割である。また、予備役編入予定になったカールスラント系将校も実質的に扶桑の戦力と見做されている。(エースたちについて、カールスラントが内政干渉まがいの質問状を出し、逆に日本連邦が、バダン絡みの恫喝じみた回答をしたという)

「何よそれ」

「国粋主義的な考えの産物だ。その名残りが排除され始めてるから、海軍航空が義勇兵に頼る事になったんだ。俺らの界隈、14〜17くらいの層が働き盛りって見做されてな。仕事サボってるのも、その辺りの連中になる。サボってる連中は怖いのさ。自分達は黄金時代の連中に劣るって見られてたのに、その連中にとっちゃ、ある時突然、上の連中がカムバックして、居座るのは我慢ならなかったんだろうが、一過性のものだ。直にわかる。俺らの代が色んな事を処理してることが如何に楽か…」

「普通は考えませんよ。全盛期終わった年齢の人がその時のパフォーマンスを維持してるってのは」

「世代交代の摂理がどうのいう連中は、野球選手とかの例で考えろっての。一時代築いた選手から世代交代した奴が、プレッシャーに負けて伸びなかったってのは枚挙に暇がないんだし」

りんにそう返す黒江。黒江たちの代が面倒事を処理している事は現場に良い影響を与えているのは事実であった。当時は芸能人やスポーツ選手の徴兵や召集が矢継ぎ早に免除(既に軍役についていれば、召集の即時解除)されていき、軍部の人材確保が困難になっていたため、ウィッチも自動的に事変世代が『屋台骨』を担うのが常態化した。結局、扶桑ウィッチ平均年齢の高齢化は確定したと言ってよく、この時期には平均で24歳にまで高齢化していた。また、前線指揮のために昇進を留め置かれていた大佐達が次々と、『准将』に昇進し始めたため、その最上位に位置づけられる黒江が中将待遇になり、階級章も中将のそれをつけている。(准将が増加したため、逆に佐官が不足する事態になったが…)ただし、旅団編成の増加に伴い、准将が宛てがわれたため、結果的にはポスト確保に繋がったという。そのため、ミーナは編成上の501司令であるが、実質はレイブンズと赤松の決定事項に判子を押すのが仕事となった。また、実質は『中間管理職』と化しているため、出撃回数がグンと増えたという。

「それもそうですねぇ。でも、のぞみがなんで大尉なんです?」

「素体になった奴が大尉昇進間近の中尉だった事もあるが、プリキュアのリーダーだった事を俺が参謀本部に伝えたためだよ。相応の扱いって事だ。二年間戦ってたのは、お前らが最後だろう、りん」

「確かに…」

「ラブの代からは毎年ごとに交代してたろ?2018年を超える頃には、某M78星雲人も真っ青な人数に到達して、ギネスブックに載ってる。お前はその年以降のプリキュアがいない世界の出身だそうだが」

「ええ。たしかに、あたしの生前の記憶だと、キラキラプリキュアアラモードが最後のプリキュアだったんです。つまり?」

「2017年の時点で、歴史がのぞみの世界とは枝分かれしてるんだろう。のぞみには少なくとも、それ以降のプリキュアとの共闘の記憶がある。各平行世界のプリキュアの捜索と救助を急いでいる理由は、敵がお前らへの見せしめに、プリキュアを倒して回ってる事への対処だ。はーちゃんたちは『帰る場所が無くなった』から、みらいとリコものび太に受け入れてもらう事になるだろうな」

はーちゃんが野比家に定住した理由は一つ。『帰る世界が、守るべき世界が跡形もなく滅ぼされた』事も関係しているので、みらいとリコも同様の措置が取られる事を示唆する黒江。また、『ココ』(のぞみの想い人)が転生後にのび太の養子になる関係で、のぞみもいずれは野比家への定住を望むだろうことは、りんも悟っている。のび太はモテモテである。

「でも、のび太君の家って、大丈夫なんですか?かなり狭いし」

「あそこから立ち退くよ。あそこ、元々は借家でな。街の再開発の関係で立ち退くんだ。その時に駅前の新築マンションに移転して、フロア一階まるごとを買うから、むしろ広くなった。G機関がそういう風に仕向けたんだけどな」

ラブの心配は杞憂である。野比家は2007年以降は駅前の巨大マンションに移転し、以前の数倍の広さを持つ様になり、それ以後は富裕層と見做されていく。新・野比家とそれ以降は区分されるからだ。特訓をしつつ、このような会話でほぐしてやるのも黒江の育成術であった。ただし、プロジェクトそのものは本郷猛の言葉もあり、かなり急いでおり、無事の確認されたキュアラブリーとキュアフォーチュンを呼び寄せる事は確定事項である。予想外は大洗女子の廃校問題であり、芳佳に文句を言っていたりする。(芳佳は文科省に言ってくれと返したが)

――その時のやりとりはこちら。

「宮藤ぃ!どーいうこったぁ!」

「あたしに言われても困りますよ〜、黒江さん。並列存在化してるから手は出せないし、うららも、くるみも予想外だったんですし…」

「なんとかできんのか!」

「せいぜい、スキャンダルを煽って、大義名分をこちら側に与えるしか方法がないですって。文科省は『あの時』、うちのメソットの分散化を望んでたんですから」

「それはケイが仕込んできたそうだが、何をするんだ」

「簡単ですよ?世間に文科省の矛盾を垂れ込めばいい。それだけで文科省は政局に利用されるのを恐れて、現場に責任を押し付ける」

「島田流はどうするんだ?」

「島田愛里寿には可哀想ですけど、悪役になってもらいます。西住流もこれでいずれは分裂する火種を抱えるし、連中はパーシングとセンチュリオン、カールを使ってるんです。美希ちゃん(ダーリジン)はチーフテンを偽装して使おうかって」

「やるなあ、ダーリジンのくせに」

「カチューシャ(やよい)も戦後のT-55を使うとか言ってきてますし、うららはM48を持ち出すとか。偽装して」

文科省の非道にかなり怒っているらしく、外装に偽装を施した戦後型戦車を持ち出す事を内々に相談しているプリキュア勢。ノンナが協力者であるため、車両調達には苦労がないらしい。

「JSの後期型にしとけと、やよい、いや、カチューシャに伝えとけ。所詮はセンチュリオンとパーシング。後期型JSなら問題はない。T-10重戦車でもいい」

「伝えときます。ありすちゃんとマナちゃんには?」

「マナ、つまりエリカか。言っとけ。レーヴェかE75でも使えと。ありすはみほだろ?特に問題ないな」

「OK」

「あ、エリカって事は…大丈夫かよ。性格が違いすぎるだろ。マナは明るいが、エリカはキツめだろ」

「マナちゃん、かなり苦労してるみたいですよ?声のトーンもまるで違うし、エリカはツンデレですからね」

マナのほうが地になっているため、エリカの演技は大変に苦労するもので、ありす(みほ)に裏でペコペコしまくっている。ただし、その世界のまほがその変化を敏感に感じ取り、ポーカーフェイスを取り繕う裏では、にやけまくっていて、発作寸前である。(ミーナのほうは既に発作が発症済みであるため、ありす(みほ)は状況を楽しんでいる)

「ん、そう言えば…、カエサルがくるみって事だろ?そうなると、普通に強くないか?」

「ええ。普通に怪人と戦ったとか言ってましたよ」

「地面を陥没させられたはずだよな。ミルキィローズとして。そうなると、うららは射撃が上手い以外は変わってなくね?」

「前世でガン=カタの役があったとかで、ガン=カタできるとか?ワルサーP99を二丁、隠し持ってるって」

「どこから手に入れたんだよ…」

プリキュア5、ドキドキプリキュア、スマイルプリキュア、フレッシュプリキュアの一部が転生した戦車道世界。黒江がツッコむように、春日野うららがワルサーP99を隠し持っている事は大いにツッコミどころだ。

「さあ?美希ちゃんはチーフテンを持ち込んで、ヒャッハーしたいそうで」

「無理だろ、色んな意味で!」

ダーリジン/蒼乃美希はチーフテンを偽装して持ち込み、大学選抜の鼻を明かしたいそうだが、チーフテンをセンチュリオンにどうやって偽装するつもりだろうか。

「いくら一年間も苦労したからって、チーフテンで無双しようなんて。よほどマチルダ教やチャーチル教に頭来てんだな…」

「まあ、いつも途中でボコボコにされるし、聖グロ。センチュリオン使われるのがカチンときたんでしょう。うららはM48を使うとか言ってるけど、バレそうな」

「砲身のマズルブレーキは外すように言え。戦中型にマズルブレーキはついてない」

「はいな」

プリキュア達の偽装作戦。それは戦後型を戦中型に偽装する事。殲滅戦というルールを押し付けられた以上はこちらも裏工作していいと言うことだと。教官の自衛隊員の目を誤魔化すため、あらゆる偽装を考えているらしい。

「待ってください」

「ミーナか。聞いてたようだな」

「はい、最初から。センチュリオンを使わせればいかがです?聖グロには。それとサンダースにはM46を」

「大丈夫か?」

「車両はこちらから送らせる手もあります。それに、M46であれば、エンジングリルが違うくらいであとは26と同じですから、バレないかと」

「お前にしては協力的だな?」

「あの試合、大学選抜には義はありません。島田愛里寿の裏にいる文科省が諸悪の根源であります。自分は休暇を取り、実戦のイロハを教え込みます」

「ここは間をとって、スーパーパーシングですよ。あれなら45年に完成してる」

「大丈夫か?」

「ティーガーUを撃破するパーシングなんですから問題ないですって。改造の設計図でもサンダースに送ります?」

「いや、確か、M48に更新するとか言って、出荷されずに、工場で埃かぶってる車両があるはず。パットン将軍に提供させて、送りこもう。春日野うららへは、いいプレゼントになるだろう。パーシング・ジャンボも送ってやろう」

ミーナ(まほ)の提案で、その日の内に『スーパーパーシング』、『パーシング・ジャンボ』が戦車道世界に送り込まれ、改造されて戦車道の試合で使用される。また、ダーリジン(美希)はセンチュリオンが黒江達から提供されたため、センチュリオンを使用し、活躍。また、うららはスーパーパーシングを使用。ノーマルのパーシングを狩りまくり、大学選抜をきりきり舞いさせたという。これが試合前にできる、黒江達の介入の限度であった



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.