外伝その339『プリキュアと英雄たち7』


――黒江から引き継いだ聖遺物の霊格。調は調査で訪れたシンフォギアC世界の面々に実質、引き止められている状態であった。説明のしようがないのだ。クラスカードやインストール、インクルードはシンフォギア世界の知る概念の尺度で図ることは不可能であった。扶桑陸軍軍服姿の調はその世界のSONGに引き止められているも同然の状態で、如何に前例がない『同一人物同士の並立』とは言え、実質的な軟禁も同然であった――

「どうして、調ちゃんはそっちだと、私達と別れたの?」

「道は違えど、歩む方向は同じ。共依存の関係でいる事に嫌気が差したんです。それで思い切って、SONGを抜けたんです」


調はC世界の面々へは事務的対応ながら、質問にはきちんと答えていた。平行世界の日本軍の将校になった理由、シュルシャガナを元の世界から持ち出し、そのまま使用している事、シンフォギアを凌ぐ聖遺物そのものである聖衣を纏う事が自分の『フルポテンシャル』であることなどを伝える証拠として、ススキヶ原でシンフォギア姿のままで買い物にいく時の様子を捉えた写真を提示する。

「月読、どういうことだ、これは。それと、質問への同意書だが、なぜ名字が違う?」

「別世界じゃ、元住んでた世界の法律は適応されないでしょう?それに、今の私はシンフォギアの展開時間に制限がなくなった体です。いざという時の身体保護のために使ってるまでです。それと、名字は変えました。その方がわかりやすいからと、PCで一発変換できますから。それに、シンフォギアを使いながら生活ってのはオツなものですよ?心象変化は実験してませんけど」

C世界の自分自身より成長した体躯、高めの声(現在の黒江とほぼ同じ)の調A。名字を改名した事への回答と、シンフォギアを戦闘目的以外に用いる事に怪訝そうな顔を見せた翼Cの疑問に答える。

「この世界でも堅物なんですね、翼さんは」

「からかうなッ!こちらは真面目に…」

「時には、ジョークの一つでも言うべきですよ?どこの世界でも武士道に被れてるんですね」

「翼さんの振る舞いって、どこでもこんな感じ?」

「私が見てきた世界はそうです。武士道というのは、戦国が終わった後の江戸期に言われ始めたものなんですけどね。実戦じゃ、武士道がどうの言ってられませんから」

「しかしだ、もののふとしての心構えは必要だろう?確かに近代の職業軍人からすれば、精神主義と謗られるだろうが…」

「天羽奏さんが亡くなったから、自分を律し、戦士であろうとする。それが貴方の選択って事ですか」

「そうだ。…だが、片翼の翼になろうと、夢は追い続けているぞ。奏もそれを望んでいた」

「貴方の家の呪われし宿命を振り切るために、ですか?」

「そこまで知られているのなら、告げないという選択肢はない。……そうだ。風鳴の家の呪われし宿命。それを振り切るための名を、お父様は与えて下さった。お前は暁やマリアと別れてまで、何を選んだ?」

「自分はなんなのか?なぜ、今の師匠になる人と魂が感じあったのか?なぜ、私は10年近い時間、別の世界で生きることになったのか?その答えを見出すこと、共依存じゃない意味での居場所を自分で作りたかった。それでその人の誘いに乗って、皆と別れたんです」

調Aは古代ベルカで10年ほどを過ごした。その時に何があったか。その10年が原因で、故郷の世界における切歌と疎遠になり、響との折り合いはいいとは言えなくなった事を交えての身の上話をした。あくまで、『第三者』として、物事に接する分にはいいのか、響Cは気まずそうな顔になった。話を聞いていた調Cは不満げな顔を見せた。切歌とマリアを(ひいてはマリアの妹であったセレナも)を切り捨てる形でSONGを去り、別世界の日本軍人になる必要があったのか。似た人生を辿ってきたはずなら、どうして、その選択をしたのか。その不満が顔に出ていた。

「簡単に言えば、代役から元の役を譲られても、代役の良かった面まで引き継げない、そんな舞台に私の役が無かったのが切っ掛けなのでしょうね」

「そんな理由で、マリアや切ちゃんを切り捨てたの!?」

「月読!」

「言わせてください!どうして貴方は……どこの馬の骨とも知れない人に従ったの!?」

「私と同質の魂の持ち主だったんだよ、その人は。その人と会うことで、私は力を得た。そして、聖遺物の霊格をオリンポス十二神が一柱『アテナ』から授かった」

調Cはそれを聞いてたじろぐ。魂の感応と、オリンポス十二神の実在。聖遺物の霊格を授かったという一言。ありえないような事だが、別世界の自分との邂逅が成っている以上、オリンポス十二神の存在もあり得ない事ではないからだ。

「それに切り捨ててはいませんよ、皆さん。再び会うことを約束したし、互いの居場所を知らせてない訳じゃ無いから、何時でも連絡出来るようにしていましたし、直接合わないようにしていただけで」

「なっ……」

「案ずるより産むが易し、この右腕に宿りし聖遺物の霊格をお見せします」

その証拠と言うべきもの、右腕の聖剣を披露した。特殊合金製の立方体を用意してもらい、離れたところから手刀を放つ。すると。

「なっ……アームドギアでも容易ではない強度の特殊合金を……、一瞬で鎌鼬の如く斬り伏せただと……」

「聖剣・エクスカリバー。アテナより授かりし聖剣です。そろそろ、私を帰してくれませんか?任務中なので」

「うむ…。司令もそうしたいらしいが、エルフナインがな」

「何を調べる必要が?」

「お前も知っての通り、お前が使った力のことだ。異端技術で説明がつかんものなど、想像だもしなかったのだろう」

「そんなこと言ったら、オリンポス十二神を守護する闘士(聖闘士、冥闘士、海闘士など)、異端技術をまったく使わなくても、思いで無限の力を発揮する戦士達(歴代のプリキュア達など)の出現、過去の英雄が蘇ってきてる現象の説明だってつきませんよ。ガングニールも『グングニル』の英語読みだし」

「確かにな。立花にしてみれば、納得いかんだろうが、ガングニールは槍、エクスカリバーは剣だ。本来は比べるべきものではない。しかも、哲学兵装を超える『概念兵装』であり、神造の武器そのもの。ガングニールを上回って当然だ」

「異端もなにも、神授の力ですよ?科学や錬金術どうこうのレベルじゃ、なにも解りませんよ。そもそも神器を扱うなら、その力を解放するなら、原典の名称を正しく用いなければ、その力の真なる解放なんて夢のまた夢ですよ」

「…別の私の気持ち、分かります。どんな時も相手を貫いてきたガングニールが概念そのもので上をいくナニカにねじ伏せられる怖さ、振るっただけで、何物も斬り伏せる剣……。その私は、ガングニールを信じた。信じすぎたんだと思う…。ガングニールをねじ伏せられる『エクスカリバー』を『居場所を奪う』って思ったと思う。当事者だったら、私も似たような事は考えたと思う。そっちの私の代わりになるかはわからないけど、ごめんね」

「元の世界の響さんに伝えておきます。それと、その人に連絡取っていいですか?上官で、個人的な師匠でもあるんで」

黒江に連絡を入れたわけだが、その黒江は戦闘中であった。

『こっちは戦闘中だ。それで良けりゃ。で、帰れそうか?』

『エルフナインが帰してくれないんですよ。迎えを寄越してくれますか?』

『プリキュアのガキ共を迎えに行かせる。そっちのエルフナインにゃ気の毒だが、情報量過多にして、パニックにしないと無理っぽいな。アリシアも休暇が取れたそうだから、数日以内に到着の見込みだ。それを待って寄越す』

『分かりました』

『帰ったら、広報部が待ってるそうだ』

『連中も現金なものですね…』

『仕方ねぇ、俺達は反G派に敵視されてるから、若いお前はプロパガンダにちょうどいいんだと』

『迎えは三日以内に?』

『アリシアが着き次第、ただちに送り出す。到着自体はすぐだ。のぞみへ出す、最初のお使い代わりだ』

調は黒江に連絡を入れ、迎えを手配する。黒江は強引に連れ帰る事も考え、歴代のプリキュア達を『初めてのお使い』代わりに送り込むと告げる。黒江はのぞみ、ラブ、りん、北条響、ことは、つぼみ(アリシア・テスタロッサへ転生)の六名を送り込むつもりであった。そこにアストルフォ(アコ)/ミューズも強引に加わった7人がシンフォギアC世界に向かう事となる。(エルフナイン(A)も同行して。黒江は通信しながら、量産型F91のツインヴェスバーで5機目のアッシマーを撃墜すると、ドリームにその旨を伝え、任務を変更する事を告げた。シンフォギアC世界は、調がクラスカードとインクルードした宝具で光明結社の大本を叩いたため、他の世界では死を迎えるはずの面々も生き残った。宝具を召喚し、好きに行使できるインクルードは、シンフォギア世界で『完全聖遺物』とされたそれが、『先史文明が神造兵器を自分達の技術でコピーした兵器』にすぎないという事実を否応なしに突きつける。(つまり、鋼鉄聖衣と同種)シンフォギアA世界の立花響の暴走は自分が必要にされなくなる恐怖、自分が受け継いだガングニールの存在の否定(杞憂だが、グングニルの変質したものであるという点では、ある意味ではシンフォギア世界における色々な神話と伝説の否定ではある)に怯えてしまい、更に調と切歌の関係を黒江が好き勝手にかき回した(響Aはそう認識していた)事への子供じみた反発が複雑に絡み合ったものであった。







――ティターンズの侵攻部隊は多大な損害を出し、撤退していった。黒江はその場でフェリーチェとドリームに指令を発し、二人はアリシア・テスタロッサ/花咲つぼみが来訪し次第、調を迎えに行くことになった。その翌日、ミッドチルダより、歴史改変の効果で存命したアリシア・テスタロッサがやってきた。その自我は花咲つぼみ/キュアブロッサムであり、プレシアの魔力の才能は受け継がれなかったが、『プリキュア化した』ため、結果としては妹とイーブンになったと言える。

「お久しぶりです、皆さん。ウチの妹がお世話になってます」

「つぼみちゃん。どうして、フェイトちゃんのお姉さんに?」

「それはまだよくわかりません。でも、生まれ変わっても、プリキュアをまたすることになるなんて、思いませんでしたよ」

フェイトの13歳前後の頃の容姿に瓜二つのアリシア・テスタロッサ。妹が長身なのに対し、あまり背が伸びなかったのがよくわかる。精神面は花咲つぼみ/キュアブロッサムであり、プリキュアとしての席次は北条響の一期先輩、ラブの直接の後輩にあたる。そのため、意外にプリキュアとしては、『えらかった』りする。

「ま、それはあたしらも同じだ。お前が来たんだ。ピンクカルテットは再結成できるぜ」

「あの時のアレですね。今回はのぞみさんもいるし、チーム名変えましょうよ」

「ありがと〜、つぼみちゃん!」

「で、どーすんの、みんな。ある程度は集まったけど、ローテーション的に7人が限界よ?」

「軍隊階級はあたしが一番上だが、席次は真ん中だからな。のぞみ、お前がリーダーやれ。りんとアストルフォ、それとあたしが補佐する。書類上はあたしが指揮官になるけど。切り込み役はのぞみとラブの役目だぞ」

「わかった」

「あたしとのぞみちゃんは、その方が似合ってるからね」

「はーちゃんの護衛は私が」

「頼んだわよ、つぼみ」

「はいっ」

「戦闘は起きる前提で組み立てておこう。アルカノイズはあたし達にとっちゃ怖かないが、一応、変身しておこう。連中を驚かせても不味いしな」

「現地の情勢はどうなの?」

「これが、あいつから黒江さんに報告されてる事柄だ。目を通しとけ」

シャーリー(北条響)が印刷したレジュメが部屋に集まるプリキュア一同に配られる。生前と姿が違う者が数名は居れど、皆が歴戦の勇士である。64Fに集まったプリキュア関係者は欠員が多いが、『5GOGO』〜『魔法つかい』までの代であった。これは『アラモード』の二人は直接戦闘向きのプリキュアではない事、『ハピネスチャージ』の二人は修行中である兼ね合いもあった。戦闘時のリーダーは最古参ののぞみが務め、実質的な取りまとめは北条響が務める。チーム名は仮名だが、黒江考案の『プリキュア・ドリームシフターズ』が有力である。

「みんな。生まれ変わってからいきなりで、ごめん。みんなの力をわたしに貸して」

「何いってんの。昔からみんなは一蓮託生、プリキュアになった時から、代は違っても、みんな『ともだち』でしょ?」

「りんちゃん」

「そうだぜ、お前はお前だ。現状の最古参だからって気負うなよ」

「響……!」

「そうですよ、生まれ変わってもプリキュアなら、戦いましょう。それが私達の使命なら」

「つぼみちゃん…」

「のぞみちゃんらしくないよ?いつもの台詞はどうしたの?」

「ラブちゃん…!そ、そうだね!みんな、調ちゃんを迎えに行くよ!けってぇ〜い!」

『おー!!』

ちょっと潤んだ目ののぞみは、若かりし頃の口癖を口にする事で、凹み気味であった自らを発奮させると同時に、真に現役時代の頃の気持ちに戻った。これ以後、のぞみは精神的に安定し、かつての現役時代に気持ちが若返り、振る舞いが往時に近づき始める。りんと北条響は次第にであるが、弾けやすい気質ののぞみとラブにはーちゃんのツッコミ役兼、お目付け役になっていくのであった。






――シンフォギアC世界はA世界と違い、介入の程度が軽度であるため、光明結社の戦い以外は『史実』通りに事が運んだ世界であった。だが、調Aが見せた力はあまりに強大過ぎた。光明結社の戦い当時は風鳴家周りに不穏な動きが出始めている頃であり、当主である訃堂も行動を起こし始めていた時期であった。調Aは太平洋戦争における職業軍人という職歴の威光で、風鳴訃堂を封じ込んだ(訃堂はC世界においては、2010年代の時点で100を超えているものの、流石に明治生まれではあり得ない。聖遺物の力を得る、何らかの措置で老いを一定で止めたとしても、太平洋戦争の佐官以上ではあり得ない)ものの、不穏な情勢であった。そこも、調Aが未だに帰れない理由であり、黒江が歴代のプリキュア達を送り込み、訃堂がプリキュア達を手元に抑えようとした場合、太平洋戦争時の高官達、場合によれば、東郷平八郎や坂本龍馬の威光を用いることも検討されている。(如何に訃堂が2010年代で100を超えていたとしても、山本五十六や山下奉文などの太平洋戦争時の指導層よりも上はまずあり得ないが、最悪、日露戦争の指導層に近い年齢層であることも考慮に入れられた)のぞみと響には『最悪、東郷平八郎元帥か、坂本龍馬の遺志』を使えと黒江は告げており、風鳴訃堂の年齢が個別世界でバラバラである事を示唆している。そのため、プリキュア達にも『最悪、明治の元老の威光を使え』という指令が下ったのである。――









――かくして、シンフォギアC世界に転移した歴代プリキュア達は黒江と調の保護者であるのび太の命を受けて、調を迎えに赴いた。ちょうど調AがC世界の都合で戦いに駆り出されていた時に転移してきたため、ビルの上に7人が並び立つ構図になっており、7人ライダーさながらのかっこよさであった。

『調ちゃん、迎えに来たよ!!』

「皆さん、丁度いいところに!」

「なんだよ、あいつら!まるでアニメみてぇな格好してやがる!?」

「あの、クリスさん、人のこと言えます?」

「るせぇ!そっちだと、ツッコミ属性持ってるのかよ!?」

「周りにツッコミされる側の人多いんで」

「くっそ、属性が違いすぎるぞ!」

調Aと共に戦っていたクリスCがツッコミを入れるが、突っ込み返される。他の面々は呆然としてしまっていたが、7人のプリキュア達は不思議とヒロイン然とした何かを感じさせる。登場したと同時に個人別の名乗りも行ったためだ。

『大いなる希望の力!!キュアドリーム!!』

『情熱の紅い炎!!!キュアルージュ!!』

『ピンクのハートは愛あるしるし!!キュアピーチ!!』

『大地に咲く一輪の花、キュアブロッサム!!』

『爪弾くは荒ぶる調べ!!キュアメロディ!』

『爪弾くは女神の調べ!!キュアミューズ!!』

『あまねく生命(いのち)に祝福を!!キュアフェリーチェ!!』

「なんてテンプレな名乗りだよ。TVのヒロインものじゃねーんだぞ…」

呆れ顔のクリスだが。

「でも、あの子達、すごくカッコいいよ〜、クリスちゃん」

「うむ。日本では名乗りというのは重要な文化であってだな……」

「こんな時に文化談義してる場合じゃないでしょ!貴方達、時代がかった名乗り挙げてどうするの!?相手はアルカノイズよ!かっこつけてたら……」

「加勢しに来たんだよ、マリアちゃん。私達」

「ち、ちゃん!?わ、わたしはハタチ超えてるわよ!」

「マリア。あの人達はね。見かけは若いけど、みんな、いい年した大人だよ。軍人とか、研究者で…」

「!?ど、どういうこと、調!?」

調Aから事の次第を聞かされ、驚愕するマリアC。同時に、ドリームにちゃんづけで呼ばれ、狼狽する。切歌Cと調Cはあまりの衝撃に開いた口が塞がらず、言葉もない。

『みんな、行くよ!!』

『YES!』

ドリームの号令一下、7人はビルから跳躍し、装者達の前に降り立つ。ドリームを中心にしての隊形で並ぶ7人のプリキュア。5から魔法つかいまでの代から選抜されし混合チーム。ちなみに歴代混合チームの指揮はブラックか、ピーチが指揮を執る場合が多かった。チームとしての序列では三位にありながら、ドリームは現役時代に混合チームを率いる機会がなく、ピーチが務めるケースが多かった(あるいはメロディとの二本柱)ため、ドリームの現役時代の夢が一つ、長い時を経て叶った事になる。

『プリキュア・ドリームシフターズ!!』

『ここに参上!!』

オールスターズではないため、チームとしての名乗りも特殊なものになる。ちなみにのぞみが提案した『ドリームスターズ』と『スーパースターズ』は第三次オールスターズ世代のプリキュア達に使われており、一同が行く前のレジュメに記されしチーム名の、黒江が考えた仮称がプリキュア・ドリームシフターズであった。チームの仮称は他にもあるが、勢いでドリームが選んだのがそれらしい。歴戦の勇士らしい威風堂々たる風格を皆が備えていたり、ビルの上で全員が名乗りを挙げてからのドリームを中心にしての跳躍も雰囲気作りに一役買っていた。SONGの移動司令部もさぞかし、この劇的な歴代プリキュアの登場に驚き、ざわめいていることだろう。更に驚くべきは、シンフォギアを纏っていないのに、アルカノイズに触れても炭化しないどころか、装者達が驚くレベルの強さを各々が見せた事だろう。

『プリキュア・ミュージックロンド!』

『プリキュア・ラブサンシャイィィン・フレェ――シュ!!』

『プリキュア・ドリームアタァック!』

ドリームは代名詞と言える技『シューティングスター』を修行で自ら封じているため、以前に使っていた『ドリームアタック』を現役後期以降の姿で使用した。そのため、挨拶代わりの必殺技の三連続攻撃に加われたのも事実だ。プリキュアの力はシンフォギア世界の摂理の影響を受けないため、普通にノイズ(アルカノイズ含め)と戦える。また、プリキュアという戦士としての色々な加護もあり、ノイズの解剖器官の働きも無効化されている。そこが黒江が『最悪、プリキュア達で装者達の代理は務まるよ』と言い、A世界の装者をダイ・アナザー・デイの戦場に全員を集めた意味はこの時の光景に集約する。

『行くよ、ピーチ!』

『うん!』

『光よ!』

『風よ!!』

ドリームとピーチは二人の先代であるSplash Starの二人から託されし精霊の力を試した。精霊の力を発動させた場合、二人は高速飛行を可能にし、それぞれ、先代のプリキュアたるブルーム(ブライト)、イーグレット(ウェンディ)の使っていた力の属性を得られる。この場合、咲/ブルーム(ブライト)の役割をのぞみ/ドリームが、舞/イーグレット(ウェンディ)の役割をピーチが担う。二人は先輩の力を借り、シンフォギア装者も唖然とする領域の三次元戦闘を披露する。ピーチはゲッターサイクロンを思わせる突風での吹き飛ばし攻撃を、ドリームは光弾を撃ったり、目くらましからの徒手空拳を空中で披露する。自分の元々の力でないためか、ピーチがいるときにのみ使用する。

「はぁああああっ!」

「おおおおあああっ!」

二人が雄叫びと共に、バトル漫画さながらに可視化されたオーラを纏う。そこからの格闘攻撃でアルカノイズを有象無象の如く蹴散らしてゆく。

「あの方達はなんなのだ、月詠…?」

「見ての通り、戦士ですよ。元はそれぞれ普通の女の子だったけど、ある時突然に『世界を救う戦士になってくれ』と言われたり、成りゆきでそうなっただけの、ね。みんながそれぞれ死線をくぐり抜けてきた猛者ですよ、翼さん。敬意を払ってくださいな。世界を救える女の子達なんですから」

「お前とて、そうではないのか?」

「私はそうじゃありませんよ。守りたいと思った友達(オリヴィエ)を…、その友達の国(ベルカ)を守ることもできなかった亡国の騎士。ただ、それだけですよ」

調Aは自身の仕えし古代ベルカが、結局は自分の存在の有無と関係ない次元の問題で滅んでいった経験から、どこか自嘲的ですらある。自分を亡国の騎士と表現し、どこか哀しげな雰囲気を時たまであるが、垣間見せる。武士と騎士。東西は違えど、騎士道も武士道も根幹のものは同じ。哀しげな背中に、翼Cは調Aが彼女なりの騎士道精神を持っていて、その心のままに動いている事を知り、翼Cは共感するものがあるのか、感動したのだった。

「なんデスと!?歌を歌ってもないのに……」

「有無を言わさずにアルカノイズを……?嘘…」

調Cと切歌Cは歴代のプリキュア達が自分たちの知る法則を真っ向から無視している事に、そうとしか言えなかった。A世界の立花響はガングニールがさんざ圧倒されてきたショックもあり、自分の存在意義を否定しかねない存在には表面的には『友好的』だが、戦闘時に敵意(新選組の沖田総司の因子である、陰険な気質の顕現でもあるが)を垣間見せ、周囲の顰蹙を買っている。

「あんたら、下がってなさい!プリキュア・バーニングストライク!」

ルージュがファイヤーストライクの進化版をぶちかまし、切歌Cと調Cに向かってきたアルカノイズを消し飛ばす。戦場は完全にプリキュア達のものになっていると言える。

「プリキュア・ルージュ・バーニング!!」

本来はタクトが必要な技だが、パワーアップにより、その前身となる技同様の使い勝手になり、掌から炎を打ち出す。もはや、アルカノイズなどは有象無象に過ぎなかった。

「伊達に、何度も修羅場潜ってきてないっての!」

SONGの面々が茫然自失に陥るほどの強さを見せる歴代のプリキュア達。そして。大物が現われ、響Cが突撃しようとするが、それをドリームとピーチは制止し、スパイラルスタースプラッシュの態勢に入る。

『精霊の光よ!!命の輝きよ!!』

『希望へ導け!!二つの心!!』

『プリキュア・スパイラルスタァァァ……スプラァァッシュ!』

ドリームとピーチはスプラッシュスターの二人から力を授かった。その力でアルカノイズの大物を倒す。更に。

「よし、あと一体だぞ!」

「ここは私に!」

残った一体をフェリーチェが光子力の力を駆使し、雷雲を呼ぶ。広域放射型の電撃。その名も。

『ゴッドサンダー!』

広域放射型の必殺技『ゴッドサンダー』(Gマジンカイザーやゴッドマジンガーの技)を繰り出し、完全にノイズを一掃する。あまりに劇的かつ、常識が消し飛ぶ戦闘であった。しかも、装者が最後まで戦うまでもなく決着がついてしまった。A世界では、黒江達の戦闘の結果、シンフォギアの存在意義に疑問符がついてしまった結果、黒江の出した派遣話に乗ったが、C世界ではどうであろうか。











――こうした、プリキュア達の獅子奮迅の活躍は日本連邦のウィッチ新規採用の抑制を始めさせ、戦闘要員でないウィッチの職場を縮小させる選択が軍事費抑制に執心の日本財務省や防衛省背広組などの主導で決められた。だが、普通教育現場から放り出された候補生達と軍派遣のエクスウィッチの教員の雇用問題も噴出したため、ウィッチ候補生の多い学校は高等工科学校に改組し、軍の教育機関化が為されたが、全部の軍籍を持つウィッチ教員の受け皿にはなり得なかったため、希望者をRウィッチ化させて前線の補充要員とし、再訓練を課す事が行われた。その結果、逆に人件費が倍増してしまうという目論見と逆の結果を招く。扶桑ウィッチの発現が休眠期に入った事もあり、日本からの義勇ウィッチがどんどん増加。45年夏の時点では、数十人単位で入隊した。しかも、人員の質は思った以上にいいため、扶桑は生え抜きウィッチの減少を義勇ウィッチで補うようになり、生え抜きウィッチの立場を脅かすに至る。扶桑の不幸はウィッチ発現の休眠期に大戦争がぶつかったためでもあり、反G閥が後世で『売国奴』『非国民』とまで罵られる原因でもある。生え抜きウィッチの多くを軍から『奪い』、事変世代を前線要員として酷使せざるを得ない状況に追いやった事、軍隊を政治的に窮地に追いやり、予備人員の乏しい状態のせいで、大戦争に既に引退したはずの世代のウィッチを駆り出す事に繋がった事。日本が軍事費抑制政策を扶桑に強制しようとしたのも原因だが、内輪もめがその隙を与えたのは否めない。その結果、戦時を理由に、各国が中止に傾いた東京五輪、札幌五輪は軍部高官、政府高官を更迭してまで、開催を押し通した日本側の意向もあり、1948年に開催の方向で強行される事もあり、各国軍部はそれまでの怪異の抑えに苦心し、スーパーヒーロー達にそれを依頼し、五輪に臨む事になる。その事からも、扶桑反G閥は味方のはずの保守派からも恨みを買う事になったという――



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