外伝その356『愛、力、勇気』


――プリキュアのもとへ馳せ参じた如月ハニー/キューティーハニー。彼女はキュアミント/秋元こまちの姉『まどか』の転生体であり、Gウィッチ達の有する空中元素固定能力のオリジナルと言える空中元素固定装置を有する生体アンドロイドである。戦闘能力はプリキュア達に若干ながら優っており、ハニーブーメランとシルバーフルーレを駆使し、敵軍を蹴散らす。声は似ているが、おっとり系のこまちと方向性の違うハキハキした性格であったまどかが生まれ変わって、キューティーハニー化している事に困惑のルージュ。

「あ、あのぉ…。こ、こまちさんにもし会ったら、なんて言えばいいんですか?」

「あの子はそういうの好きだから、大丈夫よ、りんちゃん。むしろ、かれんちゃんは卒倒ものね」

「た、確かに〜。でも、どうしてこうなったんでしょうか」

「運命のいたずらって奴よ、のぞみちゃん。あたしだってまさか、キューティーハニーになるなんて、思ってもみなかったもの」

「前の時は菓子職人でしたっけ」

「和菓子のね。それがどこをどうしたか、キューティーハニーよ。幸い、あなた達と会うまでに時間があったから、パンサークローと戦って、能力を覚えたわ。如月ハニーとして生活してるけどね」

「かれんさんが聞いたら、目回しそうな経緯ですね」

「こまちは小説のネタにするわよ。あの子、子供の頃からそういう事が得意だったから」

「あ、ああ――」

「ただ、同位体と会うことになるでしょうから、どのタイミングで出会うかは予測出来ないと思うわ。貴方達がパワーアップしなかった世界だってあるでしょうし」

「可能性はいくつもあるってことですね。わたしがそうなように」

「そういう事。私、キューティーハニーもシスタージルと相打ちになる世界があると思うし、デビルマンに至ってはハルマゲドンに至る世界が多い」

「そう考えると、あたし達が旧コスチュームのままでエターナルと戦った世界もどこかにあるって事ですか」

「平行世界は分岐点の度に生じるから、可能性は無限大に等しいわ。あらゆる可能性があると言っていいでしょうね」

キューティーハニーのいう通り、平行世界は無限の可能性を秘めている。マジンガーZEROの因果律兵器はその可能性を任意に出現させるため、魔法つかいプリキュアは魔法攻撃を封じられ、敗北したわけだ。それを悟るドリームとルージュ。

「その因果を操る奴がいて、フェリーチェを悲しませた……。考えただけで胸クソ悪くなってくる…」

「あんた、沸点低くなったわね…」

「自覚あるんだ。どうも、錦ちゃんの影響がね…」

「あんたがガチでキレたの、現役時代は二回くらいしかないわよね、ナイトメア相手に一回、エターナル相手に一回…」

「うぅ。覚えてたんだ」

ルージュのいう通り、ドリームが怒ったことは二回あり、いずれもココ絡みかつ、一回は激昂して我を忘れる勢いであった。また、ルージュは知らないが、のぞみ個人として、25歳当時、生まれたばかりの長女を誘拐された時に激昂し、キュアドリームとして犯人を叩きのめした出来事のことも思い出したらしい。

「それと、ルージュ。実はわたし個人の経験だけど、わたしは25歳と27歳の時に子供産んだんだ。ココのことを好きだったのを本当に自覚したのは、それ以降なんだ。わたしはね…」

「嘘、あんた…」

「現役時代はまだ子供だったから、ココのことが好きっていうのがわかんなくて。本当に自覚したのは子供を産んだ後になるんだ。キスまでしちゃったから、信じてもらえないんだよね」

ドリームは『自分は二人の子供を産んだ後で、ココの事を本当に好きだったと自覚したが、後の祭りだった』とし、青春時代の生き方で後悔が生じた事が全ての歯車が狂い始めたきっかけであった事、そしてその後悔もさることながら、教師生活が多忙すぎて長女と向き合う時間が取れなかった事で、長女が自分を憎むようになってしまい、遂には自分の後を継いだ次女と殺し合うことになってしまった顛末を話した。ルージュは思わず、感情的になってしまう。

「どうして、どうして…、みんなに相談しなかったのよ!?」

「みんなに頼れなかったんだよ。りんちゃんはその時期は家族の病気で憔悴してたし、うららは女優、こまちさんは売れっ子作家、かれんさんは医学生…」

のぞみは安易に仲間へ頼ることをしたくない気持ちが成人後は強かったが、それが長女と次女の対決に繋がってしまったことを後悔している。後輩のキュアエール/野乃はなが先に子を設け、立派に子育てをしていた事が一種の呪縛と化してしまった面もある事も語り、キュアマーチがキュアフォーチュンに言ったように、『応援は人の心を縛る事もある』実例になってしまっていたのだ。

「それにね。はーちゃんの後輩の野乃はなって子から応援されたけど、それが自分をがらんじめにしちゃったのも事実なんだ。だけど、あの子の応援に応えたくて無理して…その挙句の果てに…」

「自分なりに、って所が抜けちゃったのね?」

「はい」

「暗がりに立ち竦んでる子を無理矢理引き摺り出そうとしても余計に傷付くだけ。その子は貴方の背中を押すつもりで言ったと思うわ。だけど、灯りを灯し道を照らし、先を進んでみせる誰かが必要な子もいる。貴方はそんな存在に縋れなかった」

「軽はずみな応援は、誰かを潰しちゃうって事ですか、ハニーさん…」

悲しげな顔のルージュ。ドリームが直面した出来事は自分の出身世界では起きず、HUGっとプリキュア以降のプリキュアは生まれなかった。ドリームの全てを理解できない自分へ歯がゆい思いがあるのか、ルージュは現役時代より温厚で、仲間思いになっている。

「時にはね、時には明かりの用意だけして傍で見守るのも必要な時が有るのよ。野比のび太くんが子供の頃にドラえもん君がそうし、ことはちゃんにのび太くんがそうしたように。時に暗黒は安らぎを包み、時に光は白き闇となって全てを塗りつぶす、正邪と光陰は同じに在らず、時に光は邪な白い闇となり見るべきものを覆い隠す。不動明さんが言っていたわ」

ハニーは言う。デビルマンから言われたことを。不動明も自身の行動が牧村美樹への愛に縛られた結果、それが不幸な結末を迎えた世界が数多く存在したことで気が狂いそうになったが、彼女への愛が彼を救ったのも事実だ。ハニーもパンサークローへの憎しみが肥大化し、それがもとで愛する者を全て失う世界があることを自覚したため、悲しみを受け止め、受け入れて慰めてくれる存在の重要性を知っている。ドリームが生前の後半生に得られなかったのは、その存在なのだ。のび太の父『のび助』が直属の上司である部長からのパワハラを受け、その不満を酒の力を借りてぶちまけ、見かねたのび太とドラえもんが存命中の頃の祖母に会わせ、父が部長から受けたパワハラでの精神的苦痛を祖母が受け止め、慰めてくれた事で『大人という存在の寂しさ』をシニカルに話しあった事があるが、それと同じである。のび太は祖母の薫陶を受けたおかげで、他人の悲しみを真に理解する事ができる。そこがことはと調が惚れ、彼を心から敬愛するようになったところだ。

「貴方は誰にも縋れなかった。応援が足かせになった。私達(ヒロイン)だって、完全無欠じゃない。誰かに縋りたいことは山程ある。時には八つ当たりすることだってある。大切な人に甘えたい時だってある。それはたとえ、どんな存在であっても同じ。オリンポス十二神でも、ね」

「わたしは……強くあろうとした。我慢もしてきた。だから、今度は……このチャンスは……」

「私もそうでした。みらいとリコを倒され、モフルンも失ったこの手は空っぽでした。プリキュアでありながら、何一つ大切な人たちや大切な思い出を守れなかった。そのショックで、私は数ヶ月以上、この姿を解除できませんでした。だけど、のび太は私を受け入れてくれた。空っぽなこの手に温もりを、思い出を与えてくれた。だからこそ、私は戦えるのです、ドリーム」

「フェリーチェ……」

フェリーチェ/ことははドリームにはっきりと述べた。のび太は全てを失い、空っぽになった自分に温もりと思い出を与えてくれたと。のび太にときめいた時期もあった事が分かるその一言。精神的ショックで変身を解除できなかった時期がある事を赤裸々に語る。フェリーチェの姿のままでいた時期は数ヶ月以上だったため、寝ぼけてのび太の布団に入り込んだ事もあり、のび太は調と併せて、世の男子が羨む状況を味わった事がある事も暗示された。

「どんな時でも、見守ってくれる誰かが居る、その事を心に刻めるだけで、何かあっても、時間がかかろうとも、再び立ち上がる事が出来るきっかけにはなります。私と調がそうだったように」

「ん、ちょっと待って。フェリーチェ、寝癖悪いって聞いたことあるわよ、もしかして…?」

「は、はい。何度か」

「うくぁぁああ〜!なんて美味しいはな…」

「り、りんちゃん?」

「のび太さん、子供の時にフェリーチェに添い寝されてた事があるって事よ、アンタ!!」

「え、えぇ〜〜っ!?」

「つ、つい癖で……。寝癖悪いんで、みらいに別室に移されてた時は平気だったんですけど、その時は寂しくて…」

「な、な〜〜!?」

そこでのび太本人がタイミングよく電話をかけてきた。定時連絡の時間だったからだ。

『他人からしたら羨ましいかもしれないけど、義理とはいえ、『妹』だよ?変な気起こせる筈も無いよ、それにぼくは、ガキの頃からそんなに度胸良くないしね』

「のび太くん、みらいちゃんとリコちゃんに殺されるよ?」

『モフルンに弁護は頼んでる。その時は不可抗力だし、ボクも何回かペットが布団に入ってきた事あるからね。ピー助、知ってるかい?あいつなんて、夜中に公園の池から出てきて、ボクに頬ずりしたかったんだから』

「たしか、フタバスズキリュウだよね。ピー助って。あれ、フタバスズキリュウは陸に上がれないんじゃ…」

『あいつは21世紀以降の調査で、正確にはスズキリュウ近縁の新種だった事が分かったから、大丈夫』

ピー助はフタバスズキリュウから派生して進化していた新種であったと言うのび太。その当時はフタバスズキリュウとされ、出木杉も当時はピー助をフタバスズキリュウと断定していた。のび太はその後、何回かピー助と再会し、白亜紀の日本列島付近を泳いでいる。もちろん、当時は日本列島の体をなしていない。分裂しつつある半島といくつかの島からなる群島にすぎなかったが。

『ピー助以外にも、何回か経験がある。だから、そういう時は寝てやる事にしてたんだ。フェリーチェにされた時は驚いたけど、寝言で色々と言ってたしね』

「は、はは…。その時は寂しくて、怖くて…。時代まで違ってましたし」

「なんというシチュエーション……。くぅ〜、世の男子が羨ましがる事この上ないじゃない〜!!」

「元の姿に戻れたのは三ヶ月くらい後でして…。調が修行中だったんで、変身してるほうが多くて。コミケの売り子もしました…」

「へぇ…!?」

「先輩から聞いたよ、フェリーチェ。荒稼ぎしたんだって?」

「アニメが放映中にやるんですよ、綾香さん。だから、その年は三倍くらい荒稼ぎしたって」

「先輩もやるなぁ」

「今度はあたしも混ざろうかしら」

「ハニーさん、大丈夫ですか」

「なーに、如月ハニーの姿なら大丈夫よ」

「で、フェリーチェ。サークルの配置は」

「秋雲さん曰く、壁配置が当たり前だそうで。去年(2018年冬)は川内さんを駆り出して、荒稼ぎしましたから」

「あんたら、何話してるんですか」

『ま、そうカッカしない。君だって、現役時代の不人気を払拭できるかもしれないよ?』

「声をネタにしないでくださいよ。弟にさんざ言われてたから…」

「いや、そのネタなら、私達全員が該当…」

「あ〜〜〜〜!!」

ルージュは某人気忍者漫画のネタは勘弁と公言しているため、それに触れるが、フェリーチェ、ドリームもそのネタにピタリな事を指摘され、ショックで大声をあげる。ルージュはコミカル担当だったため、転生して、ますます健在である。フェリーチェとドリームも苦笑いだが、ルージュはコミカルのドツボにはまっていく。黙っていれば美少女だが、コミカルな事に巻き込まれる&ツッコミ属性を持つため、変身していても変わらない。

『君は生まれついてのコミカル担当だねぇ』

「好きでやってないんですって…。仕事、終わったんですか」

『ああ。熱海で数日温泉に入ったら、そっちに戻るよ。デモンストレーションの打ち合わせもしたいしね』

「笑いが取れる時は取っておいてそんはねぇよ、その代わりいざと言う時にバッチリキメられる様に精進怠らないこった」

「あ、先輩。来たんですか」

「一応、武装してたし、ストライカーは履いてなくても飛べるしな」

「先輩はチートの代表みたいなもんですね」

「そのかわりに戦果を求められるけどな。超常的な戦闘ができるってだけで、のび太とつるんでるのを謗られるしな。超万能な転生者様達に丸なげしてもいいってな。ったく、基本ステータスがバカ強いだけでゲームが完全クリアできるか?」

『連中は安全地帯から動物園の猛獣を見るような感覚なんだろうね。パワーを持つヒーローやヒロインのたちの引き立て役あるいは駒がボクって事で。やれやれ。ああいうのが掌返しするんですよ。負けるとね』

「力で物事全ては解決しない。そんな事、歴史上いくらでも存在するってのに」

「力に頼るものは力によって滅ぼされる。23世紀のある独裁国家の指導者が言った言葉です」

『ズォーダー大帝か。あの男も力に頼った挙句に最後はテレサさんに滅ぼされた。因果応報だけど、僕たちだって、冒険の時は知恵と勇気で乗り越えてきた。ボクとドラえもんが魔界に行った時は、僕のひらめきで逆転の糸口を掴んだ(魔界歴程の完全解読)し、鉄人兵団の最初の戦いの時はミクロスが閃いたってカミさんがね…』

「あー、子供の頃、ビデオで見た!のび太君、その時、大ざるとこじかのクイズ出してたでしょー!」

『イライラしてて、ミクロスに意地悪な問題出したのさ。のぞみちゃん、知ってたのか』

「子供の頃、レンタルビデオで見たことあるもんー!すっごーい、あれ本当だったんだ!」

『言っとくけど、ザンダクロスの人工頭脳はジュドだからね?』

「うん、分かってるって」

ドリームはのび太の冒険のいくつかをアニメ映画として見ており、それが本当の出来事であると語られるのに子供のようにはしゃぐ姿を見せる。のぞみの本質は錦と融合しても、意外に現役時代と変わらないらしい。

『話すと長くなるんだ、僕の冒険譚。25回くらいしたし、僕自身、ドラえもんが壊れるのに二回は遭遇して、一回は死んだしね。後でゆっくり話そう。妖怪、宇宙ガンマンと地上げ屋、犬人類、小人…なんでもありだったよ』

「あれ、一回、レジスタンスしてなかった?」

『ああ、ピリカ星の時ね。あの時はメッセンジャーの役目を引き受けたんだけどね、しくっちゃって、あやうく銃殺さ。だから、クーデターの行く末はその時に見てるよ』

「のび太さん、死線潜ってきてません…?」

『西洋ファンタジー、西遊記、レジスタンス、クーデター打倒、魔王討伐…そんじょそこらのラノベよりよっぽど死線は掻い潜ったつもりさ。ギラーミンとの対決は人生で一番に緊張したね』

「うわぁ〜!あ、あとで話して〜」

「ドリーム、戦闘中だって!…すみません」

『いいさ。今度の定時連絡の時に話してあげるよ。この回線は連邦評議会持ちだしね』

「ほら、ね?」

「…やれやれ」

いたずらっ子のようなウインクのハニー。ドリームがのび太の話に食いつき、長話をするのを窘めようとするルージュだが、ハニーの言った事の意味をここで理解し、ため息をつく。のび太はこうした会話術を大人になる頃には駆使するようになり、ゴルゴと異なるアプローチでの暗殺を行う男として知られる。のび太との会話はウィッチのセラピー的側面も強く、連邦評議会からも長話が黙認されている。のび太にフェリーチェが抱く親愛、のび太少年期にその姿のままで添い寝をしてしまった『失敗』も含め、幾分、天真爛漫な素が出てしまったと思われる事も話した。ドリームも素は現役時代とそれほど変化がなく、子供っぽさが残っている様子が分かる。また、件の野乃はなは2005年生まれであり、のぞみやりんとは12歳前後は離れている。その生年月日では、ブラックとホワイトが現役の時代にはまだ赤ん坊であった計算であるため、プリキュアとならなければ、第一世代プリキュアと第三世代プリキュアはけして会うことはない年齢差であると言える。お互いの世代が違うのだ。

『のぞみちゃんの問題は大きく分けると、教師生活がブラックすぎて、子供たちをかまってやれるほどの暇がなかった事。もう一つは恋愛感情の自覚が遅すぎた事、子供が捻くれて、ダークプリキュア化した時には亡くなっていた事だね。かなり遅くに覚醒して、若返ったとも取れるし。士さんから話を聞く限り、プリキュアになると、肉体の細胞が活性化されるから、どんなに歳を重ねていても、10代まで若返るらしいしね』

のぞみが死亡した後に起こった、二人の実子による戦い。その時期にはのぞみの実子も、既に子を持っておかしくない年齢になっていたが、覚醒でお互いに14歳当時にまで若返っており、次子がシャイニングドリームとして姉を倒し、以後は第二世代のプリキュア5のリーダーになった事が確認されている。それが示され、複雑な表情になるドリームとルージュ。

「わたしがどうにもできなくなったタイミングで子供たちが殺し合う。虚しくなるよ…」

『それは君個人の介入できない問題だしね。多くの世界では起こらないようだから、かなりのレアケースのようだ。この世界のようにね』

のび太の言う通り、この世界は慰問目的も兼ねて存在するはずの『航空魔法音楽隊(ルミナスウィッチーズ)』が戦況の都合で必要とされなくなり、その代わりに強大な戦闘能力を持つ者か、戦場のど真ん中で歌を歌う根性がある者が求められる。これはリン・ミンメイからワルキューレまでの歴代の歌姫達の存在が伝えられた事による意識の変革である。のぞみが経た経緯はレアケースである。はなの存在を意識するあまりに、結果として、『英雄』になれても、家庭的には破滅を迎えてしまったという。はなが聞いたら自責の念に駆られかねない結末である。レアケースとは言え、後輩の応援が結果として、先輩をがらんじめにしてしまったケース。はなは現役時代、『人の心を縛るな』と啖呵を切ったり、反発する事があったが、結果として、自分ははぐたんを育てたおかげで、実際の子育ても順風満帆であった事が『共闘した先輩』を苦しめてしまった事は『応援は時として呪縛になり得る』事の証明である・。その事もあり、のぞみははなの事を羨ましく思うと同時に、『目指したけど届かなかった、なれなかったもの、母性の理想像』として見ているらしい。もっともはなも壮絶ないじめの被害者であった事があるため、その過去と向き合った事で自己を肯定したが、のぞみは逆に、自分の子供に自分の生きた証を否定され、心が壊れてしまった。それが誰かを守るという深層心理の肥大化を引き起こしていると言えた。

「わたしはなれなかったな……、あの子みたいに……、キュアエールみたいに…」

「キュアエール…?」

「いちかの後輩のプリキュアだよ。のぞみはキラキラプリキュアアラモードの後もプリキュアが生まれていってる世界の出身だからな。史上初の出産したプリキュアでもある」

「嘘……」

「私とドリームはその子と一緒に戦った記憶がありますが、ルージュ、貴方は」

「ないわ。あたしは2017年の大戦が全てを決した世界の出身だもの。その後のプリキュアなんて考えもしないわよ、フェリーチェ」

「その大戦、詳しく聞き取る必要があるな。今後のためにもな」

「わかってます」

ルージュはドリームと別の世界が故郷になる。そのため、2017年頃にオールスターズと全ての邪な者達との大戦が生起していたと度々語っており、黒江が仮面ライダーディケイドにその調査を依頼しているという。

「さて、そろそろ来るな」

「先輩、何がです」

「北の空を見てみろ」

「!?」

一同が空を見上げると、Gフォース所属の航空兵器が続々と現れる。スーパーXVを護衛するメーサーヘリ、塗装の塗替えが終わり、出撃してきたF-4EJ改(状態が良好な個体)などが編隊を組んで飛来、爆撃態勢に入っていく。ド派手な航空支援である。人道的に、メーサー兵器や冷凍レーザーはどうかという批判が来そうな気もするが、敵は機銃掃射で無辜の民を狩るような者。情け容赦はいらない。

「ゴ○ラと戦うつもりなの?あれ」

「対学園都市用に秘匿されていた兵器で、まんまそれな兵器だよ、ハニー。それを松代から引っ張り出した。日本の指揮下を離れさせたから、好きに動員できる。日本側は死傷者が出ると、次の予算の削減で脅す連中が多いし、平和ボケが続いてるしな」

「日本は本当、平和ボケね」

「自分たちに火の粉が降りかかんなきゃ顧みないし、認めようとしないもんさ。特に戦後の日本人はな」

黒江も実感したように、日本人は戦後は揉め事が起きると、起こした者を迫害し、『臭いものに蓋をする』事で抹殺しようとする。のぞみの後輩のはながいじめられていたのもそれである。友人へのいじめを諌めようとして、自分にターゲットがシフトしたからである。国防に関しては、『国を滅ぼしたから』と言うことで疎んじている。米国の手前、自衛隊は置いたが、存在を顧みない時代が続き、ベレンコ中尉亡命事件などのエポックメイキングな事件が改善の大義名分にされたり、災害で存在意義が見直されるなど、少しづつは変わってきている。しかし、日本連邦の樹立で反軍勢力が息を吹き返し、扶桑でテロ行為を行うなどしたため、ウィッチの社会的地位が大きく揺らいでいる。その兼ね合いでルミナスウィッチーズは本格活動前に凍結され、戦闘力の低いウィッチの行き場が裏方仕事しかなくなるという弊害も生まれた。フェミニズム的観点からの批判は高給であったり、階級をすぐに上げる点だったため、第二世代のレイブンズの時代には危険手当という形で給金の金額は維持され、昇進も45年時に任官済みの世代ではないウィッチは緩やかな昇進速度となっている。その代りに戦功に応じた勤務裁量権の付与が当たり前になり、この権利が大きいほどエースと見なされるようになっていく。

「ウチのガキの時代になると、勤務裁量権が戦功昇進の代わりになってるようだが、この時期に日本のフェミニストが騒いだ結果の産物だってんだから、笑うに笑えん。連中は後世まで影響を無駄に残すんだから、始末に負えねぇ」

「確かにね。未来になってゼントラーディが攻めてくるまで、その種の論調は生き延びるのよね。無駄に声の大きい連中はいつの時代もいるし、風見鶏みたいに保身に走るのもいる。人間のサガよ」

「ああいうのが平等の皮を被った差別主義者ってんだ。連中のせいで悪影響が生じて、戦闘能力の低いウィッチは裏方へ回すしかなくなった。その分を俺たちで補わねぇとならん」

『君達は一騎当千を求められてるのさ。転生してるからってのはもちろん、プリキュアであったり、英霊だったりするし、綾香さんと智子さんみたいに、黄金聖闘士に叙任されてる人もいる。僕に中傷が来る分には構わない。ガキの頃は怠け者だったのは本当だし、その分、後ですごく苦労したからね。おふくろを安心させられたのは、大学に補欠合格した時だしね。目に見えて強いと、そこに目が行きがちになるんだ。プリキュアだって、無敵ではないだろうに。追いつめられた事は何度もあるだろう?』

「絶対に戦いたくない相手とも、無理矢理に戦わせられた事あるしね。あの時に自覚してれば良かったよ」

『ああ、お菓子の国でのキスシーンかい』

「うん。あの時はまだ子供だったから、自分の中の気持ちが分からなかったんだ。だけど、大人になった後で、ココの事が好きだって自覚した。その時には全てが終わってたけどね。今なら、はっきり言える。わたしはココと添い遂げたい。今度こそは幸せになってみせる。あの子の、キュアエールの応援を裏切りたくないから」

『コージも同じ気持ちだそうだ。挙式は太平洋戦争の最中にあげることになるよ。いいかい』

「うん、ありがとう。ココに伝えてくれる?」

『…ああ。それじゃ。はーちゃん、頼んだよ』

「うん、分かった」

のび太の通信が切れると、ルージュが微笑ましい表情でドリームの肩を叩き、激を飛ばす。

「がんばりなさいよ、のぞみ。この先、どんな事があっても、あたしはあんたの味方。何があってもね。元の世界じゃ別れの挨拶もできなかったけど、今回は…」

「ありがとう、りんちゃん。わたし…、これでやっと…、自分が何を欲しかったのか、何が大事なのか…わかったよ。わたしは戦う。戦って…、今度こそはココと添い遂げる」

のぞみは前世以来の気持ちにようやく、明確な答えを見出した。子に否定されたショックが尾を引き、防衛本能の肥大化を招いていたが、45歳ののび太の養子になっていた青年の一人が生涯でたった一度の恋愛相手の転生体である事を知らされた。もはや、生前の二人の間にあった壁は存在しない。ここで『彼』との婚約を明言する。しかし、ここで一つの事に気がつく。

「あ!のび太くんの養子に、ココが人間に生まれ変わってるって事は…?」

「私の義理の姪になりますね。私はのび太の妹ですから…」

「あー!!こまちさんやかれんさんに会ったら、なんて言えばいいんだろう〜!」

「やれやれ、これで一件落着…かな」

「そのようね」

顔を見合わせ、お互いに微笑い合うルージュとハニー。のぞみの幸せを応援しつつ、関係者として応援する事を互いに誓う。この婚約は芳佳/ハッピーと抱き合わせの形で、扶桑国内のクーデターの処理が終わった後、『世紀の二大カップル、誕生!!』という形で新聞社に流れ、扶桑新興の『経産新聞』が第一報を伝えたという。


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.