外伝その358『連合軍の悲哀』


――連合軍としては本来、Gウィッチ達に特権を与える意識は平等性の観点もあり、最初は低かったが、扶桑の新規志願者が壊滅的に減った事、日本の意向もあって、扶桑で戦意高揚キャンペーンが実質的に行えなくなったり、軍需より民需を優先する日独の横槍で兵器の補充さえも事欠く始末であるため、なし崩し的に認め、人事バランスを取るために『Sウィッチ』という枠組みを設ける事になるなど、混乱が続いている。プリキュア・プロジェクトが実行され、歴代のプリキュア達が相次いで、扶桑皇国とその影響下の国々の軍籍を与えられたのも頷けるほどであった。兵器鹵獲も盛んに行われ、戦場に放棄されたM24軽戦車は状態のいい放棄車両を鹵獲し、修繕の後に自由リベリオン陸軍や扶桑陸軍へ配備される事になり、黒江が手配した戦車回収車がピストン輸送で戦車を運んでいく。Gフォース所属の車両だ――


「統括官、これで25両目です」

「うむ。自由リベリオンがほしいと言っとるから、多めにサンプルを送れ。今回の事で、敵はウォーカーブルドッグに切り替えるだろう。湾岸戦争のT-72並に壊れてるのも多いしな。しかもプリキュア相手にな」

「しかし、プリキュアに変身すると、仮面ライダーもかくやの身体能力に飛躍するのですな」

「細かいパラメータは代によるらしいが、基本的に身体能力は歴代で大差はないそうだ。ステータスは昭和ライダー級になるが、クロックアップやアクセルフォームとかの加速能力には対応できん。今後はその土俵に上がらせるように特訓させる」

「昭和ライダーはそれらに対応できるのですか?」

「元から加速装置を持ってるし、更にクロックアップの仕組みをライダーマンが解析済みだ。アクセルフォームも言ってみれば、時間制限ありの加速装置みたいなものだ。加速した世界に入るのは、そう難しくはないさ」

「今後、ウィッチの軍事利用は縮小する方向に向かうでしょう。そのためのプロジェクトなのですか」

「そう、そのためだ。防衛費を減らせと騒ぐ連中が多いだろ?例の東二号作戦が政治屋の横槍で潰されて、111Fと112Fになるはずの連中が丸ごと宙に浮いただろ。あれで南洋に軟禁状態になったから、連中の不満が極大だ。各地に送り込んで、何とか作戦参加記章をもらえるようにY委員会の議題に出す」

黒江がY委員会の議題に取り上げると言った『東二号作戦』の参加予定部隊の扱い。明野教導飛行師団と常陸教導飛行師団の結成そのものが取り消された事で、出荷されずに宙に浮いた機材が工場に並び、それを受領するはずの人員も有に数個戦隊分が遊軍化してしまった。元々、教育と作戦行動を常時並行するつもりが、その発令が無かった事になってしまったため、人事的混乱が多々、発生した。宙に浮いた人員の受け入れ先として、64Fが指定された事も部隊規模の規模の肥大化に繋がったが、一箇所への集中に懸念が生じたため、50F、47F、244Fを再整備し、それぞれ役割を分担する事になり、空軍司令部は64F、50Fを外征、47Fを後詰め、244Fを本土防空の精鋭部隊として指定し、即日中に空軍部隊として再編成した。64Fは外征部隊とされたために『腕利きだが、アクの強い人材のたまり場』と上層部も認識したため、501や44JVを含めた部隊の連合という形で落ち着いている。

「ですな。内局の勘違いで混乱を招いた以上は参加賞代わりの従軍記章は必要ですし…」

「他戦線の穴埋めも必要だからな。最悪、俺たちでここは持たせられるが、他はそうはいかんからな」

「先輩、捕虜を集めました〜」

「よーし、一列に並べさせろ。Gフォースの兵員輸送車で収容所に送る。俺たちから逃げなかった勇気ある連中だ、丁重に扱え」

戦闘が終わった後、捕虜を兵員輸送車で収容所に送った後はその処理を黒江の自衛隊での副官に任せ、部隊は駐屯地への帰途につく。


「フォーチュンからフェリーチェにメールが入ったけど、みらい、さっそくパニクってるわよ」

「まぁ、フェリーチェ…はーちゃんの学生生活の写真見たらねぇ」

「この戦役で戦功を挙げれば、華族になれるそうですよ、私達」

「華族ぅ?太時代的な響きね」

「仕方ありませんよ。華族自体が武士時代の支配階級の温存的意味合いが大いにあったし、四民平等の観点から反対があった。日本は21世紀時点の皇族以外を臣籍降下させた上で、華族廃止の強硬論も検討したようですが、上手く行っている身分を廃止して、個人主義が広がりすぎる事を嫌う世論がこの世界の扶桑は強いし、イギリスを手本に近代化したんで、ノブリス・オブリージュの意識が強いんです」

「ノブリス・オブリージュぅ?何それ?」

「高貴なる者の義務って意味だよ、ルージュ」

「ああー…って、なんでわかんのよ」

「あのさ、ルージュ。こう見えてもさ、教師してたんだよ、一度は」

「ごめん、本当に忘れてた」

「あー、ひどいよ〜!」

ドリームは生前、国語教師であった。だが、一応は粗方の教科で教師になれるように勉強していたので、ノブリス・オブリージュの意味を理解している。あんまりすぎるので、涙目である。教員免許を小学校、中高専科教員の双方を取得していたとも取れ、努力の後が垣間見れる。

「まぁまぁ、ドリーム…。で、その兼ね合いで、勲功華族の敷居を下げる事で妥協したんです。あまり露骨だと、今度は内政干渉になりますからね」

「そうよ。日本と扶桑は似て非なる存在だもの。明治以降、皇族軍人も前線に出てる時点で察するべきなのよね」

「どういうこと、ビート」

「この世界だと、身分を問わずに少女がウィッチに目覚めるけど、王侯貴族に生じた場合は民衆の盾になる事、手本になる事が求められてきたのよ。この世界のフランスで革命が起こっても、王侯貴族に代わって支配層になった軍人やブルジョア層にウィッチが生ずると、ノブリス・オブリージュが求められた。要するに、この世界は『誰かが否応なしに義務を負ってでも戦わないと、国が維持できない』のよね」

「この世界の中国が滅んだのと関係あるの?」

「たぶんね。明朝は…、いえ、中華王朝は末期には腐敗が蔓延る。一種のお約束よ。そこを怪異に突かれて、あっさりと滅んだそうよ。日本でいうところの近世に入る頃の事だったらしいわ」

「中国が滅んだのに、どうして扶桑は無事なのよ」

「海があったからよ。だけど、大国だった明朝が李氏朝鮮諸共に滅んだのに危機感を持った織田幕府は秀吉や家康に命じて、積極的に外征を行わせたそうよ。その結果、扶桑は広大な領土を手に入れた。支配層は相応に血を流す。それがノブリス・オブリージュよ。だけど、フランスは下剋上で王政と貴族を廃した。だけど、支配層には義務を課す。その矛盾をこの世界のフランスは突かれて、政治的に追い込まれたって奴よ」

「ブルジョア層と軍人が王侯貴族に代わる支配層に変わっただけだしね、あの辺のフランス。血で血を洗う時代…血生臭すぎてね」

「スカーレットが言ってましたが、中央政府は倒れたけど、地方貴族が割合、善政を敷いてい(ネウロイとの戦いも関係して)たから、地方領主は存外に生き残ってたって」

「王政が腐敗してても、地方レベルは善政を引いているケースは多い。恐らくはそれで領主は動乱を免れたし、ナポレオンもその後の共和制も手出しを控えたんでしょう」

「この後はどうなりますか、ビート」

「これは私の推測だけど、おそらく、怪異に吸われて減った金属資源を外地で補おうとするけど、日本連邦に助けを乞う独立派は多いはず。金属資源の確保や植民地支配の継続で近い将来、この世界のフランスは扶桑と一戦を交える。そして負ける。太平洋戦争で兵器が一気に戦後の水準に飛躍する扶桑に対して、統治機構もバラバラに散らばってたのが寄り合い所帯で纏まって、本土が荒れ放題のフランスに兵器を更新する余裕があると思う?それで戦後の兵器を持った状態の百戦錬磨の扶桑に勝てる?答えはノーよ」

「シビアね」

「現実はそんなものよ。私は転生先が『ある星間国家が戦闘用に作り出した種族』だから、余計にそう感じるからかもしれないけどね。『誰かが否応なしに義務を負ってでも戦わないと、国が維持できない』事が身に染みてるのよ、この世界は」

「私達の生前より戦いが身近っていうか、他人事じゃない世界ねぇ」

「中国が明朝時代に李氏朝鮮諸共に滅んだ時、戦国大名達も天下統一が成った事に安堵し、海外進出に血眼になったように、人間と怪異の生存競争の面があると思うわ。『敵を知り、己を知れば百戦殆うからず』ってヤツ。でも、有名な孫氏の名言をマルセイユは知らなかったのよね。ツッコまれる前に周りが教えたけど。」

「ま、ヨーロッパの人達、中国が明朝の頃に滅んでれば、そんなに興味ないでしょ?」

「あの子、ケイが仕込んでたわ。あれを知らない軍人は他の世界にはいないし。ゼントラーディの私でも知ってるのに」

キュアビートはクラン・クランでもあるので、その状態で面識が予めあり、マルセイユは危うく、赤っ恥を晒すところであった。仕方がないが、マルセイユは自分に関係しない分野に疎いところがあり、孫氏を知らないなど、赤っ恥なくらいの無知さも持ち合わせていた。そのため、今回は圭子が覚醒し、黒田がアフリカに在籍していた時期はみっちりと仕込まれた。圭子が荒い口調に変貌した事で、涙目で『なんか怖いんだけど〜!』と訴えるなど、どうにも情けない側面を見せまくっていた。また、自身の覚醒で酔えなくなってしまったのを大いに残念がるなど、残念キャラが定着しつつある。また、マルセイユが本来、担うはずの奔放キャラを圭子自身が担ったためか、マルセイユは他世界よりは大人しめの振る舞いである。ただし、圭子経由で山本五十六の『宴会なんてな、酔えなくたって飲めなくたって雰囲気に乗っちまえば良いんだよ』という言葉を知ったため、酔えなくなっても酔ったように振る舞うなど、演技力も習得している。ただし、前史以前に見られた鼻っ柱の高さは無くなっており、黒江達の部下としての立場の範囲内で頑張るなど、謙虚な振る舞いもしている。フレデリカ曰く、『ケイの武勇伝にビビってるのよ、ハンナは』との事。マルセイユが圭子を振り回すどころか、逆にマルセイユ達を大いに振り回し、タトゥーとトゥーハンド暮らしを満喫し始めた頃には、マイルズ、フレデリカ、シャーロットといったアフリカ戦線の仲間も大いに困惑したという。(例としては、マルセイユが覚醒する前、書類仕事を押し付けて飛ぼうとしたところ、『なーにふざけてんだ、オイ。書類くらい自分でしやがったらどうだ、バァーカ』とぶちかまし、マルセイユとライーサを凍りつかせた。覚醒前なら、軽く受け流して行かせるのだが、覚醒後は三白眼で睨みつけ、突き返す。髪型もショートボブからポニーテールに変え、非番時はタンクトップとホットパンツ姿なので、大いにライーサやシャーロットを困惑させ、マルセイユは覚醒するまでは大いにビビっていた)圭子は数度の転生で定着しつつあった『お母さんキャラ』に嫌気が差し、心機一転でトゥーハンドキャラにスロットルを入れ、突っ走った。それでついた渾名が複雑である。史実での『扶桑海の電光』は広報向けのもの(当事者の間では、智子の異名と勘違いされているが)に変わり、実際の戦線では『扶桑海の狂気』、『扶桑海の狂犬』である。国内の部隊では『扶桑陸軍の狂気』でだいたい通じる有様である。もちろん、クラン・クランにもそれで接していたため、圭子のキャラは『やさぐれトゥーハンド』と認識されている。圭子が本来は温厚であるのを知ったのは、黒江と親しくなり、プリキュアになった後の事だ。圭子自身、元の温厚さに戻すつもりはなく、トゥーハンドで通すとしているが、元々の面倒見の良い面は自然と出ており、それが真美が変わらずに仕える理由だ。なんだかんだで黒江の面倒を見るなど、以前の通りのお人好しさは残っているところも真美に気に入られていたりするため、圭子にとって、トゥーハンドは好戦的な素がもっとも出せる振る舞いであるのだ。

「そう言えば、ケイ先輩って、まだ仕事なのかな?もう一週間以上だよ?」

「Mr東郷に付き添ってるそうだから、まだかかるって言ってたわ。私もゼントラーディ系パワードスーツで手伝おうか?なんて言ったんだけど、声が似てるからって断られたわ」

エレンはクラン・クラン時代と変わらず、クァドラン・レアを乗機の一つとして確保しており、圭子を手伝おうとした事を話す。ただし、エレンはトーンの高低はともかく、圭子と基本的な声のトーンが似すぎており、東郷が懸念を示したので、見送られたという。

「え、ビート。クァドラン・レアをまだ持ってるの?」

「クォーターがそのまま軍に編入された関係でキープしてるのよ。VF-22も持ってるわ。ゼントラーディ系は私にはしっくりくるのよ」

「てっきり、VF-25Gを引き継いだかと」

「それも考えたけど、色々あってね」

エレンに戻った後は、『VF-25Gを引き継ぐ事よりも、新たな自分を見つける』という目的を見出したため、VF-22を回してもらったという。憧れのミリア・ファリーナ・ジーナスの愛機というのも理由だという。

「綾香は気に入らなかったようだけど、あれはいい機体よ?確かにOTM多めだけど、安定性は19系よりいいのよ?」

「先輩、22は動きに違和感あるからって言ってたなぁ。19は一応、在来の航空力学の延長線の設計だし、小回りは25より効くし…。まって、ビート。えーと、あの人はどうなったの?幼馴染だったっていう」

「あいつは大怪我を負って、入院してるのよ。私のプリキュア化が起こって、無我夢中でバジュラを倒してね。なんとか致命傷は避けられたわ。撃墜されたけど」

「先輩から、TV版から劇場版ルートに行ったってんで、てっきり…」

「私も無我夢中だったのよ。胸の奥が熱くなったら、キュアビートに戻ってたのよ。記憶もね」

「つまり、その人を失いたくない気持ちが生前の記憶と自我を呼び覚ましたの?」

「そうなるわ。病院にいるあいつにネタにされたけどね」

「わたしと同じだ…。わたしも天姫が爆発で吹き飛ばされた時にフラッシュバックが一気に起こって、最後にみんなの笑顔が浮かんだんだ。それで無我夢中で変身してた」

「どうやら、記憶の覚醒は守りたいって感情を強く抱くと起こるみたいね、私達は。貴方と違うのは、私はゼントラーディの誇りを持ってたからか、最初から混じり合ったみたいで」

「わたしは錦ちゃんの要素が斑みたいに出るんだ。それとまだ融合途中みたいで、記憶が時々、混濁するんだよね」

「仕方ないわ。錦って子の意識がまだ現実を受け入れてないんでしょう。記憶の混濁はその子の意識が体を動かそうとする時に起きると思って」

「う〜…困ったなぁ。同じこと二回もしちゃったみたいで、マーメイドに医務室で見てもらえって」

「あ、今、調が困ってる子と同じ状態ですよ、それ!」

「綾香から聞いたわ。桜セイバーと立花響でしょう。恐らくはね」

「多重人格に近い状態だろうけど、お互いに折り合いをつけなきゃ、解決は無理よ。信念も考えも真逆だからね」

ビートはそう推測しているが、立花響の場合は『多重人格』に似ており、立花響の意識は沖田総司の意識にかき消されずに存在している。一般的な多重人格と違うのは、もう片方の意識も覚醒状態であるが、何ら介入が出来ない状態である。そのため、沖田総司の殺人マシンぶりを自らの目で目の当たりにするという、精神的な拷問に近い状態に置かれているが、肉体を動かせないため、何ら影響を及ぼせられない。調はセブンセンシズでその声を聞いてみたが、意識だけではどうにもならず、誰かに助けを求めているという。響の確固たる自我が災いしたとも取れる現状で、響Cの言葉を伝えたくても、意識が表面化できないのでは、セブンセンシズでも不可能である。魂が二個あるのか、人格としての英霊化なのかは判別がつかない状態らしく、如何に聖闘士でもその識別は不可能である。もっとも、黒江も調も救出にあまり乗り気でないのは、迷惑をかけられた期間が長く、調もはた迷惑な目にあったからだろう。だが、小日向未来への手前、何らかの形で救出せねばならないだろうとは認識している。だが、その手立てがない上、沖田総司の人格は立花響を呑み込むつもりである。それを防止し、ペリーヌとモードレッド、トワのような状態にするのが最善の方法だろう。おそらく、立花響は『親しい人間や自分の居場所を失う事を極端に恐れる』、『その手に何を持たないからこそ、他人と手を取り合える』という信念から、『新選組の大義のためには、どんな虐殺も辞さない』、『斬りあいなんて気合が全て、生きるか死ぬかでしょう』という沖田総司とは相容れないだろうとも推測されていた。沖田総司も『他所の価値観に興味は無く、武士道や騎士道にも冷めた視線を持つ』思考であり、幕末の時代における『殺人マシン』である。また、不意打ちであれば、円卓の騎士を瞬殺できると明言するなど、幕末期の人物らしい合理的思考である。ただし、緋村剣心と生前、病状が悪化し始めていた時期に出会ったが故に、万全の状態で決着をつけたかった思考もあるなど、ごく僅かに剣士らしさも持つのだが。

「これから、どうなるんですか」

「色々なイベントのフラグが折れてるから、なんとも。この時期は本来、芳佳と少佐の魔力喪失が起きるはずだけど、そもそも、そのイベントが成り立たなくなってるわ。501もアニメと違う編成だし、日本とドイツに振り回された挙句の果てがこれじゃね」

「アニメだと、別の部隊だもんなぁ、わたし。それがこの世界だと同じ部隊だし」

「アルダーウィッチーズ、噛ませ犬的風潮ありますからねぇ。米国の横槍もあって、解散になったって」

「マーメイドが残念そうにしててね。人員の手配をしようとしたら、501への合流指令だったって。確かに、軍事的リソースの集中ってのは大事だけど」

「史実343空の事例もありますし、精鋭は一箇所で運用する。戦線が各地に散らばっているのならともかく、一箇所に敵が集中してるなら、そこにありったけの資源を集中するのは間違ってはいません。反発が起きているのは、他の戦線をおざなりにしていると考えているから、でしょうね。」

「これから、長く苦しい道が待ってるわよ、貴方達」

「特訓積んできましたから、それは大丈夫です。ストナーサンシャインも撃てますし」

「あ、そのことだけど、みらいちゃん、めちゃくちゃ驚いてるって」

「でしょうね。特訓如何によっては、クロックアップもできるということです」

「クロックアップ、かぁ。平成ライダーにいたなぁ、そんな名前の能力持ってんの」

「綾香いわく、私達は将来的に元帥らしいわ。軍隊と縁を切れなくするためのものね。日本側は反対したらしいけど、元帥にしちゃえば、身分が終生、保証されるからってんで押し通したらしいわ」

「元帥、か。日本は太時代的な位って反対したけど、結局は存続したんだよね?」

「元帥位を持つ大将を従わせるために、階級としての運用を再開するそうです。まだ、日本側の書類処理が終わっていないので、正式にはまだですが」

「元帥?SFとか映画でよく聞く単語ね」

「大将より偉い階級か、最高位の軍人の称号よ。あるいは国家元首への名誉称号。どれも合ってるわ。日本は最高位の軍人の称号であったり、昭和初期までの天皇の軍事的指揮権の象徴だったけど、階級にする事で、自衛隊の自衛官がなめられないようにしたのよ」

「なるほどねぇ。ピーチは?」

「捕虜を整列させてるよ。今回は割に少ないってさ。逃げたのも多いし」


――ビート、ルージュ、ドリーム、フェリーチェの四者が語り合うように、ウィッチ世界は『誰かが否応なしに義務を負ってでも戦わないと、国土が維持できない』という問題がのしかかる。ウィッチはどんな大国であろうと、生ずる人数は人口比ではけして多くはない。ましてや、移民国家であったリベリオン合衆国は原住民以外のウィッチ発現率は低い。扶桑系移民や欧州系の一部の血統に頼るしかないため、分裂と今後の戦いで更に減るだろうことは予測されている。自由リベリオンは扶桑に亡命してきた軍隊の集まりだが、ドラえもんの作った南洋新島、第二新島を新天地とし、軍隊とその家族、技術者、気骨ある一般市民も集まって、扶桑の一地方自治体扱いになっている。少年のび太達が帰る前に行った最後の仕事は彼らの住居確保、南洋新島群(21世紀までに鉄道道路併用橋が敷設され、南洋本島と繋がったという)の整備であった。青年時の裏仕事も含めての功績から、のび太に扶桑爵位の襲爵の勅が下ったのは、ダイ・アナザー・デイが終わった直後のことである。ちなみに、扶桑は多数派である親ブリタニア派と親カールスラント派が近代化後に派閥抗争をしてきた歴史があり、40年代では後者が優勢気味であった。また、カールスラントの制度を扶桑が真似たところも多々あり、坂本が『カールスラントを模範にして発展した』というのも間違いではない。その親カールスラント派を日本が完全に解体しようとしたため、カールスラントが阿鼻叫喚になっており、カールスラントから嘆願が行われるに至った。その兼ね合いで派閥の完全な解体はできなかったが、首魁と目された東條英機の国外追放だけは強行された形である。(バード星に移住した後に銀河連邦の事務官として再就職し、銀河連邦の一官僚として生涯を終えたとの事)大島大使や木戸幸一、松岡洋右などの大物も次々と失脚したため、『これでは、同位体の行いを理由にしたリンチだ』とする同情論も同じく、高官が次々と失脚していったカールスラントから生じた。結局、騒ぎが収まった後はカールスラントは兵力と人員不足に陥り、扶桑は反戦プロパガンダで国内に厭戦と悲観論が広がり、以後の戦争遂行に支障を来す事になり、太平洋戦争の長期化に繋がるのである。Gウィッチは血の献身を求められ続けるが、その一番のきっかけはこの時代に広まった反戦的な政治風潮だった。その流れは将来的な予算削減として、『ウィッチ兵科の廃止』を目指す風潮に発展するが、竹井退役少将(マーメイド/竹井の祖父)の功績の否定に繋がる事を憂慮した昭和天皇の意向もあり、『竹井少将(死後、天皇の勅で中将へ昇進)の存命中は兵科を維持する』事で妥協される。実際、現状のウィッチ教育は簡略化されており、希望者にのみ士官教育を施すというものであった。だが、戦況の変化と日本連邦化で『簡略化された教育』では大きな不都合が生じたため、ウィッチの最低階級を少尉に引き上げ、全員に士官教育を施す事になった。もちろん、前線は兵員不足であったために反対論が強いし、あくまで下士官であることを望む者もいたが、昇進辞退回数で人事考査に引っかかり、排除されそうな者も多く、昇進は問答無用であった。特務士官枠がカールスラントにも設けられたのは、士官になる事を望まない者を士官扱いするためのもので、主にロスマンのために設けられた。ロスマンはこれでとうとう辞退できなくなり、渋々ながら特務士官になった。ロスマンは以前と異なり、スケバン風のキャラになっていたため、服装もバンカラ風の学ランをカールスラント軍服の上から羽織っている風のものに変わっている。精神療養のために『紫電改のマキ』世界に送り込んでいたための変化で、本人も楽しんでいる。坂本はこの施策に『未熟な連中を少尉になどはしたくはないが…、時代だな』と、元は水兵上がりらしい、時代がかったコメントを出している。坂本にとって、少尉という地位は官報に載る名誉ある地位なのだ。ダイ・アナザー・デイでは、戦功以外に政治的意味合いでの昇進もなされたが、戦功による昇進が大々的に行われたのは、ダイ・アナザー・デイが最後である。(以後も特に顕著な戦功を立てた場合にのみ行われるが、珍しくなる。)――





――歴代のプリキュア達が軍務についている事は非難も出たものの、覚醒前に既に士官であった者も複数いる事、軍務につける事で身分保障と安全確保を兼ねるという説明がなされた。日本警察の幹部層からは『プリキュアの戦闘は仮面ライダーと同じ扱いにできたのに』と嘆かれたが、現場にいる世代が、主として70年代に運用された『暗黙の了解』を知るはずはないし、知らない世代と知る世代とでの揉め事になる可能性が大である。それを避けるためもあり、日本連邦軍人(日本では幹部自衛官扱い)として扱うのがもっともベターな選択であった。元から軍籍を持つ者も多いため、渡りに船である。プリキュア達の内、素体の人物が軍人であった者はその人物の軍籍と立場を受け継ぐ。そうでない者は『次元漂流者』扱いで地球連邦の戸籍が作られ、次いで、連合軍構成国の戸籍が作られる扱いである。連合軍は通常ウィッチの補充が政治的に多大な支障を生じたため、Gウィッチを酷使するしか選択肢が無くなっていく。本来、Gウィッチは部隊の中枢・幹部として各地に分散配置する構想だったが、ミーナ(覚醒前)が揉め事を起こした事で、現役中堅組との混合編成実験は失敗したと見做された。(ミーナの大尉への降格はこれが理由である)これが64Fの新選組が古参とGウィッチで占められる要因であった。現役組の無知が予想以上だったためと、サボタージュの大規模発生が全てを決した。人的補充も覚束なくなり、兵器も無い。地球連邦軍とスーパーヒーロー/ヒロイン、スーパーロボットが戦線を維持する流れになっており、スーパーヒロイン枠に食い込んでいて、なおかつ軍籍を持つ者は『ウィッチの模範』として、前線で戦う事を求められる。こうした政治的横槍がダイ・アナザー・デイの長期化を招いたのは事実であり、陸戦兵器の不足でリスボン攻略作戦が延期になるなど、予定が遅延しまくっている。ただし、敵の死傷者数は万単位に達しているはずであるため、万単位の死傷者数を物ともせずに作戦を行えるリベリオン軍の物量と医療に驚嘆の声が相次いでいる。この一連の戦闘で厳密な意味でのウィッチが大勢に影響を及ぼせなかった事(それ以上の力を持つ魔導師が活躍している事を考えれば、皮肉な現実であった)が各国にウィッチ兵科の解消を検討させる材料になった。この流れはGウィッチの活躍で一定の歯止めはかけられたが、完全に堰き止めるまでには至らず、扶桑においては1950年代以降に起こった『竹井少将の死去』でウィッチ兵科は名目上、『発展的解消』され、ウィッチは『ウィッチ特技証保有者』という特技証保有の空中勤務者及び、機械化歩兵を単純に差すように変容していく。二代目レイブンズはその後の時代の人間であるので、パイロット技能の訓練を受けているし、濃密な軍事教育を施されている。彼女たちから見れば、反G派とそれに近い考えの者は『一時の反発で、ウィッチの将来に暗い影を落とした馬鹿者達』である。ダイ・アナザー・デイ当時は高町なのは、フェイト・T・ハラオウンのような魔導師、攻撃魔法こそ使えないが、強大な魔力を有するキュアフェリーチェがスポットライトを浴びており、10代のほんの短い間しか、力を振るえない通常ウィッチたちの間に『永続的に強大な魔力を奮える』者への嫉妬が渦巻いていたと言える。




――二代目レイブンズの時代には、1945年当時の動きに関しての一部の情報が秘匿されていた。その世代が社会で何事もなく生きるためか、当事者間で後世に伝えられるのが憚れた部分が存在する。二代目レイブンズはその調査を21世紀のウィッチ世界の国連軍から依頼されており、半分はその任務を果たすためにダイ・アナザー・デイに参戦していた。21世紀頃には、当然ながらその世代も社会的に老人と見なされる年齢層になっている事、Gウィッチ達もその頃には天山峰に隠居し、俗世から離れていた事から、正確な記録を残すために、大戦中の『Gウィッチの身内かつ、後継者』である彼女たちは任務を申し付けられていたのだ。ウィッチ世界では、この時代に起こった対立の詳細は後世では伏せられている事が二代目レイブンズによって伝えられている。『45年当時に適齢期を迎えた、あるいは迎えつつあった世代が終戦後に社会で肩身の狭い思いをしないように』という配慮なのだと悟ったのはすぐである。実際、数年間のウィッチ志願数の低調は軍部に多大な打撃を与えており、Gウィッチを酷使する事で戦乱期をくぐり抜けたものの、1946年から1952年までの扶桑の『ウィッチ発現休眠期』がウィッチ兵科の存続の可否に影響を与え、予定通りに兵科の廃止が行われた。そのため、扶桑皇国のGウィッチたちの最終的な軍歴の兵種は『機械化航空歩兵/機動兵器パイロット』と記されている。また、伝統的にウィッチたちの立場が強いはずの扶桑が兵科の廃止の方向に傾いたことは各地に衝撃を与え、これがダイ・アナザー・デイのサボタージュの継続に影響を与え、結果論でいうなら、各国のウィッチ兵科廃止論に大義名分を与えたという皮肉な結果となった。また、その延長の議論として、日本には、扶桑天皇に与えられし大権を廃止させ、自分達と同じ『象徴天皇制』にさせようとする動きがあったが、流石に内政干渉になるために頓挫したという。これは当時の扶桑軍人の多くが『事変中のクーデター事件などの『1930年代政変』の終息に昭和天皇の言葉が作用したため、天皇/皇室の国家緊急権の行使に肯定的であった事も関係しており、内務/外務官僚、華族に至るまでの親独派の実質の粛清人事と社会的抹殺への不満がその次のクーデターを引き起こすという予測が扶桑の津々浦々まで知れ渡っていたからだ。なんとも言えないが、結局、日本は扶桑に改革を迫りつつも、扶桑が拒んだ事項も多いということだろう。――



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