外伝その362『連合軍の悲哀5』


――ブリタニアは結局、出し惜しみしたグローリアスウィッチーズの練度が44戦闘団と64Fより劣る事で、各国への面子を潰された。64Fの練度は45年当時では最高無比で、本土で引きこもっていたグローリアスウィッチーズは世代交代の進行で練度が結成時より下がっており、予定より訓練生を減らしたとは言え、練度は最盛期の6割にまで低下していた。基幹幹部も高齢化しており、結果的に64Fから『物見遊山』と揶揄されるに至った。だが、予備役を再召集してまで隊員の大半を精鋭で固めた64Fの陣容は当時としても、他に例がなく、特に『実戦部隊にも関わず、予備部隊にも新人がいない』という点で奇異に見られた。日本と扶桑の政治的駆け引きの末に成立した部隊なので当然といえば当然だが、当時のA級ウィッチ(扶桑)の6割以上が集まった事もあり、グローリアスウィッチーズといえども霞んでしまう。部隊内での『若手』さえ、豊富な実戦経験を有するのは、世界でも類を見ない。編成の大義名分は所謂、特殊部隊である。これはグローリアスウィッチーズの立場を危うくするため、キングス・ユニオンは図らずしも、面子丸潰れである。しかし、部隊練度の低下は時と共に自然と起こるものであり、どうにも出来ない。そのため、扶桑のGウィッチとRウィッチの多さは特異な現象だった。ブリタリアはRウィッチの政策に消極的だったが、事変当時のエースの高齢化が既に始まっていた扶桑の例を鑑み、増強に乗り出した。ブリタリアが秘蔵していたエース達も皆、高齢化していたからだ。だが、当然、成功もあれば、失敗もある。ミーナは覚醒前、私心と侮りなどから黒江たちを冷遇したが、上層部の抱いていた構想を叩き潰してしまった格好になり、その責任を取る形で大尉に降格させられた。覚醒後は坂本への好意は好感程度に留まるようになり、覚醒前に持っていた政治的野心も捨てている。政治的理由での降格であるため、戦功を立てて未来世界への留学を終えれば、ペナルティは無くなる。ミーナは200機撃墜という輝かしい実績も参考記録扱いにされたため、その実績と覚醒の確認で降格が大尉に留まった(当初は少尉にまで落とす事も確実視されており、強すぎる制裁でウィッチ全体の士気が極限まで下がる事に危惧が出たため、大尉で妥協された)。下士官まで落とすほどの罪ではないからだ。また、あまり落としすぎても問題が生ずるため、妥協的に大尉で決まった経緯がある。罪状も『無知』だったからだ。また、佐官になっていたハルトマンやバルクホルンも留学の人事は大尉待遇でいいとしたため、作戦中は『佐官任務の大尉』という待遇に落ち着いた。その一方で、レイブンズは『挙げてくる戦果が通常のウィッチのレベルを超えているため、階級は限界まで上げて、好きにやらせる』という方針で固まった。日本の人事介入を避けるため、レイブンズは限界まで上げた。そのため、三人して将官である。将来的に元帥も約束され、如何に日本の目論んだリストラ策が恐れられていたかがわかる。また、功ある佐官が次々と准将になっていったのもこの時代で、民間からの突き上げでの予算削減を恐れた人事部がとにかく手当り次第に昇進させたからだ。これは降格も珍しくなかったウィッチ界隈では珍しい事で、黒江、智子、圭子は20代で元帥が約束されるという異例の事態だった。前例を重視するお国柄である扶桑では、黒江達が如何に天皇陛下の寵愛を受け、事変の英雄として鳴らそうと、少将への若年での昇進を拒む論調が強かったが、日本の民間層と政治の突き上げがそれをぶち壊した。華族廃止論とも絡んだため、結局、元よりも高い『中将』にする事が政治的に選ばれ、黒江達は自衛隊でも空将待遇で落ち着き、将官ながら、第一線の空中勤務者かつ、勲功華族という事になった。Gフォースを指揮するに当たっての勤務階級案もあったが、自衛隊に合わせる形で、中将になったのだ――




――扶桑同様、オラーシャも混乱した。統合戦闘航空団の統合と再編成、国土の縮小による影響力減退で軍事的立場を失い、頼みのサーシャも日本人の暴漢に襲われ、片目を失明。地球連邦軍の医療で視力は回復したが、心に重大な傷を負い、地上勤務を余儀なくされる、サーニャには亡命されるなど、踏んだり蹴ったりであり、連合軍からも脱退を仄めかしており、皇帝はすっかり意気消沈である。ロシアがオラーシャから分裂した国々を軍事介入を仄めかして恫喝するなど、連合軍の結束は崩壊寸前であった。キングス・ユニオンも一枚岩ではないため、軍事行動をイギリスが抑えにかかるなど、圧力をかけており、実質的に日本連邦が連合軍の体裁を整えるしかなくなっていた。この時代以降、扶桑は軍事的・経済的に連合軍の屋台骨と化していき、超大国としての負担に耐えるため、経済施策の強化に勤しむようになる。扶桑は南洋本島からの収入、新島群の地代でかなりの利益があり、それで経済発展の土台を早期に築けたからだ。カールスラント、オラーシャ、ガリアの軍事的衰弱は連合軍という組織そのものの形骸化を進め、キングス・ユニオンもブリタニアの財政破綻を避けるため、軍事的大規模派兵を控え、兵器売買などでの貢献に切り替えていく時代になるため、日本連邦はウィッチ世界そのものの意思として、超大国化を望まれるに至り、日本連邦内部での主導権争いは一旦の決着に至る。――





――ダイ・アナザー・デイの当初予定が壊れ、長期戦になったため、あちらこちらの陸上で兵器不足が顕著になってきていた。日独がパーツ供給を断ったため、鹵獲兵器すら運用せざるを得ない状況に陥っていたからだ。鹵獲したパーシングをM46へパワーアップして運用する例すら確認されているため、産業保護の観点から、要望が多かった『ケーニッヒティーガー』の生産は再開され、パンターは強化型の開発が継続されることにはなった。日本連邦はセンチュリオンのエンジンを独自に換装し、速度を引き上げる改造を進めさせ、コンカラーについても、エンジンの強化と追加装甲の装着が進められ、日本連邦の保有戦車は40年代の防御思想から飛躍したものとなっている。また、史実の戦車戦のノウハウが伝わったため、連合軍は機甲戦力運用ノウハウについては、リベリオン本国を上回った。この時に、既存兵器に代わるモノとして、戦闘ヘリや携帯式地対空ミサイルが一気に普及した事が陸戦ウィッチの活躍の場を狭め、ウィッチによる対地攻撃のリスクを増大させたのも事実であり、その変革においても戦い続けた者のみが後の世で勇者と讃えられるのである。それらはウィッチの変化だが、一方で、現在進行形で他者に肉体を事実上、乗っ取られ、その事に苦悩する者もいた。

(なんで、なんで、体が言うことを聞かないの?どうして…?)

立花響は目覚めると、自分の体が言うことを聞かない状況に陥っていた。自らの手に『何も握らない』と決めたはずの手に武器を持ち、相手を斬る。まるで抵抗できない何かが自分の体を操っているかのように。意識のみが『何かに閉じ込められている』状態であった。その悲鳴は誰にも届かない。意識の中でシンフォギアを纏って『壁を壊そうとしても』弾かれるだけであった。

(なんで貫けないの!?たとえ意識だけになったとしても、私の中なんだよ!?どうして!?)

彼女の肉体は沖田総司の意識が表層化しており、主導権は沖田総司の手にあった。彼女の意識は侵食された状態であり、そのビジョンは彼女に立ち塞がる壁というイメージで表されており、シンフォギアを意識の中で纏い、壁を貫こうとしているが、弾き返され続けていた。スラスターを全開にしてのインパクトパイクでの最大衝撃を与えても弾き返されるのだ。信じられない思いだった。意識の中で苦闘を行う立花響。その状況がどうにかなるには、まだしばらくの時間を要するのだった。





――ダイ・アナザー・デイ当時、扶桑皇国への日本側の左派勢力の干渉で軍組織へのネガティブイメージが流布され、軍隊の大規模リストラも目論みられた。だが、この干渉には現地調査も行われない不手際も多く、薩摩などの解体で太平洋共和国から猛抗議を受けるという、まさかの状況に陥った。軍部はそこで名誉挽回を図り、日本に巡視船の提供を受け入れさせ、修理可能な金剛型戦艦の修理と太平洋共和国への提供を合意させた。(この時に扶桑向け新巡洋戦艦の建造が代替艦として認められ、基本は大和型戦艦をベースにする事とされた)ダイ・アナザー・デイの解決につながらない事項ではあったが、巡洋戦艦もアイオワ級戦艦に近い重武装タイプ、超甲巡のようなポケット戦艦タイプ(特大巡洋艦というと、政治家にツッコまれ、船を作れないため)に大別されていく。また、戦艦の主砲で60口径以上は非実用的という論説もあるが、アイオワ級やモンタナ級以上の火力を求めるにあたり、65口径砲にたどり着いたという。また、大和型戦艦の主砲も60口径砲への換装も進むが、これは史実の大きさの大和型戦艦では、より反動の強い45口径51cm砲の反動に完全には耐えられないからであった――


「エーリカさんの作業、やっとおわったぁ〜」

「そのまま海の方に行くぞ」

「先輩、そのままでいいんですか?」

「俺が気分転換で変身してるのは、みんな知ってるよ」

「綾香の趣味なのよ、これ」

ドリーム、ビート、フェリーチェはエーリカのブロマイド撮影を終えると、そのまま、海軍の要請による浮きドックの視察に向かった。黒江曰く、これが休暇前最後の仕事だそうだ。黒江は調の姿にはしょっちゅうなっているので、シンフォギアを着たままでも、Gフォース関係者は問題なく応対する。黒江が変身することは彼らにとっては周知の事実だからだ。

「そう言えば、わたしの昔の姿にもなってましたね」

「姿は真似られるが、必殺技は撃てないから、そこで躓いたけどな。へそ出しで、よく風邪ひかなかったな、お前」

「変身してましたし、そこは」

黒江は姿を変えられる能力を身につけているため、階級章付きの身分証を常に携帯している。この時はシンフォギアを着たままなので、首から下げている。

「浮きドックに行くのに、ヘリですか?」

「バルセロナの近海に設置してるが、バルセロナの港から多少は離してあるんだ」

大和型戦艦や超大和を整備可能な超巨大な浮きドック。これは元はプロメテウス級空母やその後継艦用に用意されていたものだが、洋上海軍の縮小で宙に浮いていたものが持ち込まれたものだ。23世紀では洋上海軍の役目が終わりつつあったため、処分予定だったが、ウィッチ世界では好評であり、ダイ・アナザー・デイでは建造された全てが持ち込まれている。大和型戦艦すら、ドック入りできる港が欧州にはあまりないからで、大成功であった。

「先輩、どうしてオスプレイで行くんですか」

「浮きドックの外側にヘリポートがあるからさ」

一同はオスプレイで現地に向かった。Gフォースには米軍提供のオスプレイが配備されているからで、実地試験名目である。米軍は日本で流布されるオスプレイのネガティブイメージを払拭したい狙いがあり、Gフォースに提供した。操縦はビートとフェリーチェがしている。

「ビートとフェリーチェで操縦大丈夫ですかね」

「ビートは飛行教官資格持ってるプロだし、フェリーチェは学生のころ、のび太がスネ夫のツテを頼って、飛行機とヘリの操縦を覚えさせてる」

「のび太君って、色々させてますね」

「あいつ自身、空中戦の経験とか、タケコプターでプテラノドンとチェイスした経験も豊富だからな。俺も初めて会った時分にゃ翻弄されたよ」

「のび太くんって、冒険の時、何を使ってたんですか?」」

「主にスモールライト、ショックガンに空気砲だって言ってた。あいつのカミさん、スーパー手袋でゴリラとかオランウータンをノシたらしーぜ」

「わーお……」

「カミさん、ガキの頃は清楚な風に装ってたけど、実際は暴れん坊でな。ゴリラをぶちのめすくらい負けん気あるんだよなー」

『ショックガンは殺った殺られたにならないから気楽で良いんだよ、普通の銃でも殺さない当て方出来るけどね』とのび太は語るが、クイックドロウでは、ギラーミンとの対決が有名で、零コンマの差が勝敗を分けたとのこと。のび太が射撃で絶対的自信を持つ理由はギラーミンに勝ったからで、実際の銃でものび太は西部開拓時代の伝説となっているが、ギラーミンは宇宙のガンマンであったので、のび太に確固たる信念をもたらした相手という。

「のび太はギラーミンに勝った事が自信につなかったってよく言ってる。宇宙の殺し屋相手にサシで勝負して、勝った。古風な決闘でな。映像化されていないのが残念だよ」

「漫画なら見たことあるんですけどねー」

「あと、のび太、大きくなってからは自分で西部開拓時代の後期に行って、楽しんできてるんだ。途中からはーちゃんも同行するようになって、今じゃチリコンカルネを料理できるらしい」

「みらいちゃんとリコちゃんに言わなくていいんですか?」

「写真があるから、どうせ気づくさ。マーチには説明役になってもらおう」

「なんか、さっそくカクンカクンされてましたよ、みらいちゃんに」

「まー、あいつは現役時代、14から19まで魔法世界やはーちゃんと切り離された生活を送ってた経験があるんだ。のび太と20年いた事にジェラシー感じるのは分かる」

「あれ、どう説明するつもりかなぁ。ドラ・ザ・キッド君が撮っちゃったとかいう、のび太くんの布団に潜り込んで寝ちゃってるフェリーチェの写真…」

「のび太はモフルンに弁護を頼んでるとかいうが、あいつ、魔法でのび太んち壊しかねんなぁ」

朝日奈みらいが野比家でパニックになっているのを想像し、ため息の黒江とドリーム。みらいは実際にラブリーに羽交い締めにされて止められるほどに混乱しており、キュアマーチも説明に苦慮しているのは目に見えている。

「あれ、みらいちゃんとリコちゃんはいつの時代に?」

「2019年。あいつらの過ごした時代に近いあたりだから、違和感はないはずだ。お前は2007年から2008年が現役だろ?2019年だと、覚えてる奴がいるかな…」

「だ、大丈夫ですって。わたし、現役時代は人気だったし、オールスターズでも出番多かったし〜……」

のぞみは変則的な形でだが、二年を戦い抜き、現役引退時にはベテランの域に達していたプリキュアの一人である。スプラッシュスターに声がつかない作品でも、声付きの出演歴が多かった事がアイデンティティの一つなようだ。2018年の『オールスターズメモリーズ』の筋書きを変えさせたことはネット界隈では既に有名で、第一期プリキュアの三代目の特権を使ったとネタにされている。実際は実物が出現したので、映画の広告宣伝費が節約できると意気込んだアニメーション制作会社と配給会社の妙策であり、ドリームの存在はシナリオ作りの一助になっただけだが。

「去年のオールスターズ、シナリオが変わったの、お前の存在のおかげだって言われてるもんなー。しかも、初期みたいに目立ってるし」

「だ、だって、いくら初代だからって、いつも、なぎささんとほのかさんがおいしいところ持っていっちゃうし!偶には目立ってもいいじゃないですかー!」

「風見さんみたいに、番組乗っ取れるしなぁ、ブラックとホワイト」

「仮面ライダーV3は自重してないじゃないですかー!」

「本人曰く、ヒーローにはカタルシスが必要なんだと」

風見志郎は後輩の助太刀に入る度に後輩より目立つことこの上なく、一度、新命明から借りた服で日本に帰国した事もあることが語り継がれる男である。お得意のバイクでの手放し運転での変身も披露し、誰と一緒に戦おうとも目立つとネタにされる。プリキュアと共闘しようと、お得意の風見節は冴え渡り、『おいでなすったな』、『トイヤ!』、『ブイスリャ!!』などの往年の名調子を見せ、完全に場を支配する。

「あの人は目立ちたがり屋なんだよ。生来。体操選手として将来を嘱望されてたし、仮面ライダーになってからはオートレースにも精を出して、仮面ライダーで一番にオープンな職についてるし」

風見志郎はオートレーサーであるが、意外にも学生のころは体操選手で、オリンピック強化選手入り間違いなしと謳われた。V3として改造された後もその特性は変わらず、パワー寄りのテクニックタイプの改造人間になっている。私用バイクもナナハンであり、本郷より大排気量を好んでいた節がある。

「ま、三代目だからって、あの人を意識するのは分かるぞ。咲もいないから、お前が最古参だし」

「でも、V3、当たり負けする事も多いって」

「あの人、現役時代も相性が悪い改造人間とやりあって、一敗地に塗れた事も何度かある。だから、戦いにはストイックなんだよ」

「お前、現役時代に一敗地に塗れた事少ないからなあ」

「完全に負けそうになったことは数える程度なんです。だから、逆境に弱かったのかなぁ。あ、アハハ…」

自嘲するドリーム。逆境に立たされた経験は意外に少ないため、それが後半生の挫折に繋がったと後悔しており、その事が現在の切り込み役を自ら買って出る理由だと示唆する。なんとも言えないが、ドリームは自らに七難八苦を望み、精神的強さを身に着けようと躍起になっている。

「山中鹿之介みたいに、月にただ願っても、心の強さは身につかない。その姿で、大人ののび太のとこで過ごしてみたらどうだ」

「な、なんでわかるんですか」

「顔に書いてあるぞ、どアホ。のび太とマーチには言っといてやるから、作戦が終わったら、俺がもっと鍛えてやる」

黒江はドリームに更なる修行をつける事を予告すると同時に、変身した姿でススキヶ原で過ごしてみろという。黒江が少なくとも、三つの姿を使い、修行と遊びを兼ねていたように、フェリーチェ、マーチ、ラブリー達に続いて、のぞみ/ドリームも同じような修行をしろという事だ。のぞみは錦の立場を実質的に継承したため、大尉の階級章をつけている。それに見合うだけの修行をのび太、ドラえもんズと共につけるという。修行に関しては、少年のび太はタッチしていない。保護者の立場になれる青年のび太が監督責任を負っており、修行は原則的に『のび太が大人になった後の時代』で行われる。のび太は23世紀以降は転生した『ノビ少尉』として、それより過去の時代(21世紀など)ではもちろん、のび太として、Gウィッチのサポートを行っていく。大人のび太は『主役だけが能ではない』との持論を持つため、創世日誌の冒険のような『第三者』的視点からGウィッチに物申す事も多い。黒江達はのび太から、色々なアドバイスを受ける事で、前史での失敗を乗り越え、政治的立場の確立に成功しつつあった。ただし、日本からの誹謗中傷対策として、『僕が君達と戦ってみせれば、ひとまずは収まるはずだよ』と、デモンストレーションを行うことで同意している。


「先輩、楽しんでません?」

「俺はのび太んとこで、綾波レイのプラグスーツ姿とかで小遣い稼ぎしてるからな。調にもシンフォギア姿で修行させた。あ、一回、キュアアクアの姿になった事あるぞ。防大同期の子持ちに頼まれてなー…」

「え、かれんさんに承諾取ってないですよね」

「あたりめーだ、どうやって取るんだよ。自動的に事後承諾になるよ。その時になったらよろしく」

「えー!」

「変身した姿で日常生活送るってのもオツなもんだぞ」

「先輩、なんかのバトル漫画の影響受けてません?」

「受けてないと言えば嘘になるが、合理的だぞ?フェリーチェも変身が数ヶ月解除出来なかったおかげで、言動の幼児性が和らいだしな」

「変身した姿で日常生活かぁ。」

「シンフォギア世界に飛ばされてた時にバイトしてたのもある。この姿でコスプレ喫茶でバイトしててな。その方が気づかれなかったしな。後でブーブー言われたけど」

「当たり前ですって」

「あとで真田さんに聞いたら、変身による興奮状態が抑制されて自然体で戦える様になると説明されたよ。調はそれに気づいたのと、ギアからバックファイア受ける身じゃ無くなったからだし、フェリーチェは精神的に大人になりたいって事で、変身姿でいるほうが多かったな。学校以外は」

ことはは流石に言動の幼児性を気にするようになったのか、学校以外では変身姿で過ごすようになっており、それに合わせる形で、めぐみといおな、なお(ラウラ)はプリキュア姿になっている。

「あ、そのフェリーチェがのび太くんと添い寝した事あるってバレたみたいで、マーチがカクンカクンされてますよ、首根っこ掴まれて、ほら」

「……モフルンの説明に期待だな」

キュアマーチがみらいに首根っこ掴まれて、カクンカクンされている様子がキュアフォーチュンからのメールで報告されたが、マーチとしても、のび太から聞いていることしか回答出来ない。どうやら、パニックになったみらいはラブリーでも押さえきれないらしい。また、ことはがのび太の父親の養子扱いで野比家の籍に入り、戸籍上は『野比ことは』になっている事、それによって、のび太の義妹として、中学〜大学までを卒業済みである事も知らされ、大混乱のみらいはキュアマーチを散々にカクンカクンしており、パニックになっている。ラブリーによる制止にも関わらず、である。(ちなみに、真田志郎は黒江にこう言っている。『衣装が精神に及ぼす影響というのは思いのほか大きいそうでね、変身ヒーローの衣装に似せた服を着た子供が興奮や攻撃的性向を示すのは経験的にわかるだろう?そういう興奮や正装した時の緊張なんかは普段から着用して慣らす事が出来るんだ。だから制限が無いのならば、変身した状態で長時間過ごし生活するのは精神を安定させる訓練として妥当ではないかと私は考えるよ』との事で、精神鍛錬の一環として行っている。過去には、なのはとフェイトも同様の訓練を受けており、他世界より落ち着きが比較的に見られるようになった理由である)





――今頃、モフルンが『のび太ははーちゃんのお兄ちゃんモフ、はーちゃんが一緒に寝てるのに気付いた時は起こさない様に気をつけて寝直してたモフ』と、みらいに細かい事情を話しているだろうが、のび太とほぼ20年も家族同然に過ごし、自分が事情もあって見られなかった『高校生〜大学生姿のことは』をのび太が堪能したという事実の衝撃で、完全に正気を失っている。モフルンの説明や如何に。そして、なぜ、『先輩達が室内でも変身したままなのか』。その事に気づくのはいつであろう。――

「みらいちゃん、パニクってるなぁ」

「ラブリーの羽交い締めでも押さえきれんとは。意外に爆発力あるなぁ」

動画では、キュアラブリーが必死に止めようとしているが、混乱したみらいがマーチをカクンカクンという擬音が似合うそうな勢いで振り子のように振り回しており、マーチはグロッキー状態だ。リコは戸惑うばかりで役に立たず、マーチに『リコ、パニクってないで、みらいをとめろぉ〜!』と叱責されている。動画はそこで終わっているが、モフルンが止めそうである。みらいはモフルンの言うことで我に帰る事が多いからだ。

「キュアミラクルだろ?みらいは。お前、共闘経験は?」

「ないんですよ。みらいちゃんのオールスターズデビュー戦の時、捕まって」

「あ、マリンにアホかー!って言われてた時か」

「ラブちゃんと響は戦えたけど、わたしは情けないことに」

「お前が最後にオールスターズで戦ったのはHUGっとの現役時代か?記録に残ってる中じゃ」

「ええ。なぎささんとほのかさんにおいしい場面持ってかれましたけど」

「それが原因か〜?」

「恥ずかしいんですけど、いつもおいしいところ持ってくから、偶には…」

「初期は目立ってたろ」

「センターポジは私の指定席だったのにー!」

「お前、意外にこだわりあるのな」

「二年くらい主人公だったの、わたしが最後なんですからねー!」

「お前、恋愛する、二年も主役だったから、初代に次ぐ主人公補正がかかるんだよな。スーパー化もお前からだし」

「ですよー!わたしのすぐ後がラブちゃんだから隠れがちだけど、スーパー化はわたしが元祖なんですよー!」

「ま、それはアピールしていくんだな。お前、小遣い稼ぎにサーフィンでもしたどうだ?美遊でも誘って」

「エイラに睨まれましたよ」

「ぶっとばせ、許可する。カットバックドロップターンだ」

「あんにゃろ、後でアイキャンフラーイの気分を味あわせてやる〜!」

のぞみは美遊と仲がいいが、エイラがジェラシーを燃やしたため、黒江から『カットバックドロップターンで肝を潰せ』との許可が出た。のぞみは太平洋戦争前までにサーフィン界にデビューし、大会でいきなり入賞を果たす事になるが、それは別の話。一方、エイラは強力なライバルの相次ぐ出現にうろたえており、姉のアウロラにおもちゃにされている。また、サーニャが本名を名乗らなくなった事に不満を見せたが、『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』として生きろうとするサーニャの意思は尊重しており、美遊とのぞみ、クロをライバル視していた。その事も部隊でのネタの提供元になっているが、エイラはその自覚がなかったりする。それを話している間にも、一同を乗せたオスプレイは浮きドックに設置されているヘリポートに近づきつつあった。ドックには小修理中の大和が入渠しており、M動乱での艦尾延長などで290m級に拡大したその偉容を休めている。大和の入渠は細かい装備の修理もあって、意外に手間取っており、黒江はその視察を連合艦隊から依頼されたのだ。

「お前に、改造された大和を見せてやれる絶好の機会だ。それと、工事担当の工員にはサービスしとけよ」

「はーい」

注意事項を伝えられ、頷くドリーム。目的地の浮きドックにはもうじきだった。



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