外伝その365『連合軍の悲哀8』


――連合軍は同位国の政治圧力もあり、智子に莫大な慰労金を支払うこと、宝飾・剣付スオムス白薔薇勲章頸飾を授与した。その功に報いるという形だが、スオムス上層部の政治的保身的意味合いも含まれていた。大仰な授与式が執り行われたのもその一環で、ウィッチとしては用済みとされていたはずの世代が異常な強さを維持していた事は、驚きを以て迎えられた。10代の少女を軍で抱え込む事ができなくなり始めた時代にあっては、当時に戸籍上は21歳であった智子が『若者』扱いされるという状況であった。ジュネーブ条約が人材雇用の足かせになり、当時に軍学校に在籍中の世代は実戦に出る際の年齢が引き延ばされ、扶桑においては『任官済みの世代も士官学校卒業から勤続七年〜十年ほどの勤務実績がない状態で退役した場合、士官学校の学費を返還してもらう』という規定が設けられたため、本人達よりもむしろ、『行き遅れになる!』と、20で退役して嫁に行かす事を当て込んでいた農村地域の親達が困惑する事態に発展した。長く軍人を続けると、一般社会に溶け込むのが難しくなる弊害があり、海援隊がその受け皿になっていたが、海援隊が国営化する事で軍からの転職が難しくなると見込まれたため、そこも親世代を困惑させた。志願数が壊滅的になったのは、扶桑本土においては軍歴は『花嫁修業の箔付け』と見なす風潮が一般人には強かったこと、退役後にどこかへ嫁入りするケースが当たり前なことが覆されるのを農村地域が異常に恐れたからでもあり、農村部でウィッチに覚醒した途端に父親の命令で納屋に監禁されたケースも多く出たため、太平洋戦争が差し迫りつつあったのと、東京五輪の返上が日本の強い意向でできなくなった(河野一郎議員が1940年時には反対派だったのに、1964年時には五輪担当大臣になったことが槍玉に挙げられたり、杉山元元帥が反対意見を議会に出していた事が叩かれ、彼の元帥位剥奪・少将への降格が取り沙汰されたほどの騒動になった)ことでの外聞もあり、天皇陛下による玉音放送も容認され、それが流された途端に『不敬罪』を恐れた農村部の人々に『集団就職』が促されるが、監禁のショックからか、その場で自決した者も多く、全体的に質が悪いものでしかなかった。本来は少数であるべき『日本からの義勇兵』がむしろ第一線に供給される新ウィッチの主流になっていくという皮肉な状況に陥る。扶桑軍部はこの流れに困惑し、東京オリンピックで巷に流布されたネガティブイメージの回復を狙い、21世紀のプロ選手に遜色ない実力を誇るGウィッチたちで五輪女子代表を固める(当時、扶桑では女子が五輪に出るという発想はそれほど普及しておらず、富裕層が趣味で行うか、才能を偶々に見いだされた者が富裕層の援助で出る程度であった)意向を固めた。プリキュア達も含めて、1948年東京大会の代表選手とすることを45年の段階で決定。女子参加競技の多くは彼女達の掛け持ちでどうにかすることとなり、扶桑側の女子選手のおおよそ7割がGウィッチで賄われる事になったという。――



――扶桑は国内で軍部がその政治力を徐々に削られ、議会の意向で行動が左右される『シビリアンコントロール』への変革はクーデターが頻発した情勢もあり、反感も多かった。江藤がGウィッチ覚醒で、どうにか免れた事の一つに『文民統制への無理解による罷免』がある。経験上、皇室による国家緊急権の強力な支持者である江藤は一時、危険人物と見做されたが、事変を佐官として経験した者は皆、皇室の国家緊急権保持の支持者であることが判明した事で、新憲法では『内閣総理大臣と国防大臣の承認のもとに発動され、国会での事後承諾が行われる』形で妥協的に残されることになった。また、事変時のクーデター、ウィッチクーデターで海軍将校が主導する立場であることに日本側は驚く羽目になり、海軍航空隊の組織としての再建が意図的に遅らされる遠因となり、太平洋戦争では、それを理由に、空軍との統合運用で海軍の作戦行動が賄われる事となる。(カールスラント空軍と海軍の縄張り争いを反面教師に、洋上の作戦行動時には海軍の指揮下に入るという規定になった。実際、ダイ・アナザー・デイ当時の時点で64Fは便宜的に連合艦隊の指揮下で洋上戦闘を行っているからである)日本の世論には扶桑軍の軍縮を無理にでも押し進めようとする声もあるため、旧式戦艦の第一線運用が妥協的に諦められ、航空戦艦や上陸支援艦への転用、あるいは海援隊への譲渡が行われ、第一線の戦艦は大和型戦艦とその系譜で統一される事になる。その過程で雲龍型も複数が海援隊に譲渡され、海援隊は有事には『海上護衛総隊の指揮下で行動する』事が決められ、どうにか『新体制』に目処が立ちつつあった――





――ドック入り中の大和を視察し、ひと通りの説明を受けた黒江達。大和を離れ、オスプレイで駐屯地に戻る。そこで休暇を無事に迎え、欧州に戻ってきたのび太と再会した。――


――駐屯地――

「やっと休暇だぜ。のび太、ジャイアンから差し入れだって?」

「ほら、この間のラジオでブロッサムとハッピーがジャイアンに差し入れを頼んでたろ?その返答代わりだって。あいつのおじさんが田舎の住職でさ。その伝手で手に入れた野菜と果物を大量に送ってくれって頼まれてね」

ジャイアンは成人後、実家を継いだ後に自分の店舗『スーパージャイアンズ』を22歳頃に開業。28歳頃には経営も軌道に乗り、跡継ぎとなる長男『ヤサシ』(ジャイチビ)も儲け、成功を収めていた。この頃からジャイアンはスーパーの経営者としての威厳をアピールするため、ちょび髭を生やし始め、のび太とスネ夫にネタにされている。同じく、スネ夫が髭を生やし始めるのは30代頃である一方、のび太は栄達しても髭は生やさないが、裏稼業とも密接に関係していたりする。(のび太は老年期に至るまで髭は生やさなかった)

「ジャイアン、大学はどこだっけ」

「経営学部のあるとこさ。家が街の再開発で傾いたのを期に一念発起して苦学して出て、起業したんだ。そうしたらジャイアン、任侠的な面があるからか、大成功。今じゃ若き経営者として有名だよ」

「わ〜、この果物、いい鮮度だぁ!もらっていいですか?」

「ああ。好きにしていいよ。あ、あいつから『倅にサインを送ってくれ』と頼まれててね…」

「え〜〜!見てるんですか、ジャイアンさんの息子さん!?」

宇佐美いちかは驚く。自分たちがプリキュアであることが知られている世界の事は聞かされていたが、初めてそれを実感したようだ。

「貴方達はつい最近のプリキュアよ。それくらいはむしろ当然よ。近頃は五年で一昔というから、ねぇ」

「ずいぶん悲観的だな、ビート」

「私達で8年前、プリキュア5で12年前になる時代だもの、のび太くんのいる世界。あおい、あなたもそのうち分かるわ。歳を取ったなぁって感じる時が」

キュアビートは自分達の現役時代である2011年頃から8年が過ぎた時代である、2019年での自分達の知名度を何気に気にしているようだ。立神あおいは『年寄りじみてる』と苦笑するが、いちかとあおいは、2017年当時で14歳(現役時代から逆算して、2002年前後の生まれ)と『若い世代』のプリキュアであるため、昭和の終わりに生まれたのび太とほぼ一桁ほどの差しかない古参の『第一期プリキュア達』の感じている『年月の経過』はまだまだ実感出来ないようだ。

「ほんとだよー。わたしとルージュなんてさ、二年も戦ったけど、そこから12年も経った後なんだよー。なんかこう…、ピンとこないんだよね」

「あんたら、言うことババ臭くね?」

「君も、あと4年くらいすれば分かるよ。僕なんて、そういう経験多いよ」

「のび太君が体験したたま○っちブームの時、わたしとルージュは幼稚園の頃で、いまいち覚えてなかったりしてるからね。そういうもんだって」

「そそ。君らの世代はインターネットだって、昔は電話回線使ってたの知らないだろう?そういうもんだよ」

「そう言われてみると……」

「貴方達は地力を鍛えないと、戦線に出せないわ。ドリームとピーチですら、武器を壊すほどの激戦だもの」

「うん。参ったよ。フルーレを修理してもらったけど、武器は借りてるままだもん。先輩達は好きに武器作れるけどさ〜」

「そう拗ねるな。お前だって、やろうと思えばできるぞ。俺は技と武器を事変ん時にやりすぎて冷遇食らったし。ケイはキチガイ扱いだぞ」

「ケイ先輩ははっちゃけすぎですよ。トマホーク振り回すわ、ゲッターマシンガンやらレーザーキャノン…」

「ヤツはストナーサンシャインとシャインスパークも躊躇しねぇからな。お前のシューティングスターも型なしだよ」

「突進技で鳴らした身としては対抗心メラメラですよ」

「二年目から、だろ?」

「いいじゃないですかぁ!今じゃ、わたしの代名詞なんですから!」

「しかし、フェリーチェもお前の技を撃てるらしいしなぁ」

「えぇぇ――っ!?う、嘘ぉぉ――っ!?」

「20年も時間があったんだ。特訓で会得したとか言ってた」

「うぁー!ますますピンチだよー!メロディにスターライトソリューション使われたと思ったら、今度はフェリーチェ!?」

「その、なんだ、ドンマイ」

ドリームは素を垣間見せる。ギャグじみているが、ドリームにとっては大問題らしい。一同はドッと笑いに包まれる。

「お、そうだ。のび太。扶桑本土の様子はどうだ?」

「不穏な空気があるね。連合艦隊にも、条約派/航空派の軍人が主導権を握りつつある現状に不満を持つ軍人は山程いる。日本が次の戦争で『捨て駒にしたい』と言って謀殺しようとしてる軍人も多い。海軍じゃ、栗田健男中将と宇垣纏中将がその候補だよ」

「同位体の選択のせいで死を望まれるってのも哀れなもんだ。多くの将兵を餓死させたり、疫病で死なせた報いと言うだろうが、それはそれを起こした奴の責任で、この世界のそいつらの罪じゃないのにな。だから糾弾されんだよ、連中」

黒江はシニカルな物言いだが、的は射ている。日本は自分達を一度、破滅に追い込んだ『軍人』を冷や飯食いに落としたいが、ウィッチ世界の風土と情勢が否定してしまった。日本人の起こした騒動は最終的にオラーシャに大損害を与え、ブリタニアとカールスラントの権威を地に落とす事となった。カールスラントはドイツによって軍縮が行われている事もあり、連合軍からはほぼ手を引いてしまい、国際協力の言い訳が立つ程度の少数の部隊を申し訳程度に残しているにすぎない。ブリタニアも経済破綻を恐れるイギリスの意向で軍事行動の縮小に傾いており、扶桑に負担を強いる世論が各地で沸騰している。扶桑は日本とその点で対立し、64Fを興し、Gフォースを結成させる事でどうにか折り合いを日本につけさせたが、教育部隊から戦闘要員を抽出し、戦線に送り込む、教育部隊を戦闘態勢に移行させる『東二号作戦』が日本の官僚に潰された混乱は大きく、作戦の取り消しで『遊軍化』した人員が二個飛行戦隊の規模に達し、全員が情報漏洩が恐れられて、事実上の軟禁状態に置かれるという異常事態に陥った。この異常事態に軍部は空軍設立を理由に、再編された50F、47F、244Fの三つに遊軍化していた人員を割り振ったが、ある年齢より上の古参の多くが最前線の64F勤務を望み、その兼ね合いで64の部隊規模は航空軍規模に肥大化。ベテランとエースパイロットの溜まり場と化している。扶桑の『A級ウィッチ』の過半数は同隊に集められ、戦っていた。それには軟禁状態に置かれていた人員を慰め、戦功を与えて宥め、反乱を抑止したい扶桑軍部の意向が大きい。

「俺たちが陸戦も兼任する羽目になったのは、日本の連中の勘違いや思いこみに由来する。維新隊の連中も今頃は陸戦に駆り出されているはずだ。まったく、五式戦闘脚の改造と新規生産が追いついて、マウザー砲をもたせりゃ、ジェットはともかくも、レシプロはこわかねぇんだがな」

「日本って、戦闘機の液冷エンジンに拒否反応がありません?」

「ある。史実の飛燕の稼働率と上昇限度の記録から、液冷エンジンを切り捨てて、空冷一本槍だ。史実の記録だと、それは間違っちゃいないが、アフリカが持ち込んだ機材は整備パーツの備蓄がないのを理由に、模倣元の液冷エンジンを積んでる。それを行った整備兵はメーカーの技術者から、しこたま怒鳴られたそうだが、パーツが届かないんだから、仕方ねぇだろう」

「整備兵には災難ね」

「おまけに、ミーナへの不満も溜まってたからな。奴に直接に詫びさせたよ。整備兵の不況を買って、意図的なエンジントラブルで殺された飛行兵の話を戦友会から聞いてるからな。俺たちが整備を大事にしてんのは、連中のおかげで戦えるって知ってるからさ」

「ミーナは今は整備に気を使うけど、前は噂になるくらいだったもの」

「坂本と俺たちで止めさせた。男を思い出すって私的な理由をもっともらしい大義名分で覆い隠すのは卑怯だからな。今回は坂本とケイに任せた。坂本は渋ってたが、演技でも『汚いものを見るような目』をすりゃ、あいつは精神的に暴走する。まほの精神を目覚めさせる呼び水にゃ過激だったがな」

ビート/エレンの耳にも、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの整備兵冷遇の噂は届いていた。坂本もそれをミーナの精神的成長の観点から憂慮し、一か八かのGウィッチ化を起こさせた。そして、覚醒後は一転して『中間管理職』を気楽だと言って憚らず、感情的な面が消え失せ、政治に全く興味のない実直な実戦肌の将校と言った印象を与える。シスコンを発症した以外は『ほぼ完璧』である。のび太も今の人格のほうを『裏がない』と好いている。

「今のほうが僕としても、腹を探らないで済むから楽だよ。まほちゃんは口数が少ない代わりに行動で示すタイプだ。今の64の気風に合ってる」

「同感だ。前はあいつに嫉妬されて、裏をかかないとならなかったが、今は中間管理職として『いい仕事』をする。下がった階級も数年で元に戻るだろう」

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ(現在は事実上、西住まほ)が大尉に降格したのは政治的意味での懲罰が含まれる処置であり、留学を終えば『禊は済んだ』として、階級を佐官に戻す手筈である。のび太としても『腹の探り合い』をしなくていいとし、まほの実直な人柄を評価している。また、指揮官先頭の日本的な気質も64の気風に合っていると評した。実質、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの記憶を持つ西住まほであると言うのが、今のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの全てであった。表向きはカールスラント人(ドイツ人)だが、心は日本人なのだ。

「俺たちは戦果を求められるが、その代わりに勤務は自由だ。日本の連中のせいでこれ以上の増援は望めん。スーパーロボット、スーパーヒーロー達と協力して、この戦に勝たなきゃならん。『ウィッチ全体を守る』ためにもな」

「非肉なもんですね。出る杭は打たれるの理屈で先輩達を迫害したら、自分達の立場が危うくなったからって、わたしたちや先輩達の力に頼るなんて」

「世の中はそういうもんだよ。僕だって、大学に入った時、周りの目が変わったし、親父もおふくろも『好きに金を使え』って言ってきた。あの時は心の内で毒づいたもんさ」

のび太としても、大学に入った途端に両親が放任主義に転換した事は快くは思っていなかったようだ。のび太も聖人君子ではないため、こうした人間臭さは持ち合わせている。ただし、のび太の両親は『息子を大学に入れる』事が人生の最終目標だったため、のび太が30代間近の時代には老境を迎えた事もあり、実年齢より上に見える外見(髪が白髪)である。わかりやすい老い方だが、のび太の大学卒業と就職は二人を『ご隠居』と変えたのだ。

「のび太は厳しく管理されてたしな。高額な玩具は俺達やドラえもんが用意したし」

「おふくろの教育方針だったからさ。おふくろは伯父さんから戦後直後の困窮期を聞かせられて育ったから、僕に贅沢をさせない方針でね。高校から緩和され始めて、大学で解禁さ」

のび太は高校生辺りから金銭的な意味での枷が外れた事、母親の玉子の教育方針の変化で趣味人と化し、成人後はモータースポーツなどに傾倒気味だ。小遣いの制約がなくなり、就職後に高級取りになった事、静香ものび太の趣味に寛容であるなどの要因で、成人後は趣味人の側面を持つ。スネ夫の人脈で『物』が相場より安く手に入るようになったのも関係している。

「のび太、貴方のミニ、相当に弄くってるわね?」

「アレは大叔父の遺品でもあるんだ、ビート。大叔父は若い頃、ミニでのレースに出たがってたからね」

のび太が仕事で使うミニは往年の『ミニクーパーS』をレストアしたもので、小回りが効くことから重宝している。欧州にも再度持ち込んでおり、十字砲火を突っ切るつもりらしい。

「はーちゃんが大きくなってからは、はーちゃんにせがまれて、ドライブに行くことも増えたよ。箒だと、あまり遠くまではいけないしね」

「なんか、皆さんも大変ですねぇ」

「大人になるってのは、そういうもんだよ、いちかちゃん。世間体をある程度は取り繕う必要も出てくるのさ。うちの親父がそうだったしね」

「そーなんですか?」

「いちかちゃんも、大きくなれば分かるよ」

「しょんなー!子供扱いしないでよ、ドリーム〜!」

のび太は子供時代の童心を維持している一方、年齢相応の大人としてのシニカルさも併せ持つ。いちかは正真正銘の14歳であるので、キョトンとしているが、精神面で大人になっているキュアドリームとキュアビートはのび太に同意した顔だ。

「ほい、できたぜ、スイーツ」

「ああ、ありがとう。あおいちゃん」

のび太は28歳/子持ちになっても依然として甘党で、チョコレートパフェが好きなままである。50代に若干ながら体形が肥えたのは、その頃には青年時代ほどは派手な仕事をしなくなり、黒幕然とした指示役が当たり前になったからである。この場にいる一同の全員がチョコレートパフェ好きであるらしい。

「のび太くんはどうして、チョコレートパフェを?」

「僕がガキの頃の話さ。旅行も渋るような親父とおふくろも、偶にデパートでおもちゃを僕に買い与えて、最後に食事する昭和じみた方法は好んでた。その時に食べたものの一つだったのさ」

「なんか昭和じみてるよなぁ、昔から思ったけど。俺の頃から進歩してなくね?」

「人間のやることはあまり変わらないって事だよ」

「お子様ランチ、好きだったんですよ、のび太」

「フェリーチェ、報告は終わったか」

「ええ。のび太は子供の頃はお子様ランチを食べてて」

「子供のうちしか食えないしさ、食べておこうと思ったんだよ」

「あー、それってあるあるだよねー!」

のび太はお子様ランチが子供時代の好物だった。それはフェリーチェ(ことは)も知っている事で、ドリーム(のぞみ)、いちか(ホイップ)も一度は頼んだ経験があるらしい。

「あれが生まれたの、俺が10位の頃だから、俺は食う機会が数えるくらいしかなかったんだよな」

「えー!?」

「俺、1921年くらいの生まれだもん。そりゃ、お子様ランチの極初期の味を覚えてるって。親父が連れて行ってくれたり、兄貴達がおごってくれたりしたから、小学校の内に5回くらいは食えたんだよ」

「そういえば、この世界は第二次大戦のころだっけな。そう考えると燃えてきたぜ。絶対的アドバンテージあるじゃん!知識的意味で」

「でもよ、材料があるか?」

「この時代になると、お菓子もだいたいの基本は固まってるから、よほど凝った奴でなきゃ作れるさ。コーラはあんだろ」

「俺が上に頼み込んで供給してもらってるが、最高司令官がコーク党(ドワイト・アイゼンハワー)でな…」

「えー!ペ○シないのかよー!」

「仕方ないだろー、ドワイト・アイゼンハワー大将はコーク党で、軍の制式飲料にしてんだぞ」

「ペ○シのほうが味のバリエーションあるじゃん!」

「そりゃ数十年後の話だろー!キューカンバーは頭おかしーぞ!」

「あずきはどうなんだ!アンタの見解を……」

「何、これ…?」

「さ、さぁ…」

あおいと同レベルの言い合いをする黒江。それに呆気に取られるキュアビート。苦笑いしつつも、ツッコミを放棄するキュアドリーム、キュアフェリーチェ、宇佐美いちか、のび太。このような童心旺盛なところが黒江の人気を裏付けているのである。駐屯地では変身した状態の歴代プリキュア達がそのまま食事を取る事も多く、そうした場面が見られるのも、Gフォース勤務の魅力であり、自衛官垂涎の的であった。しかしながら、各部隊の精鋭クラスしか配属を許されない新設部署であることから狭き門でもある。自衛隊内部では、ほぼ外局に近いMATと並び、扱いの難しい部署であるとも認識されており、Gフォースに関しては黒江に扱いが一任されており、意外に多忙を極めている。防諜も兼ねて、基本的に調の姿で行動するため、各国の情報機関も概要は掴んでいない。Gフォースの詳細は同盟国の米国と英国以外には大まかな概要しか通達されず、各国情報機関を悩ましていく。メーサー兵器やメカゴジラ、スーパーXVはSFじみているため、各国の軍部は学園都市の事実上の解体からか、日本のプロパガンダと捉えていたが、実際は本当に実現させている。この現場と会議室の認識の相違がアメリカ合衆国の没落に至るまでの予兆の一つであるが、21世紀時点では誰もそれに気づいていない。アメリカ合衆国という巨人の黄昏は少しづつ幕を開けていく。そんな時代が2019年であった。



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