外伝その406『ユトランド沖海戦の再来4』


――扶桑連合艦隊の主力が前線でガンガン戦うことになったのは、いくつかの理由がある。まず、扶桑海軍の構想がエセックス級空母の大量竣工で破綻したこと、ワークフォースに位置づけていたはずの紀伊型戦艦がモンタナ級の登場で10年と経たない内に旧式化し、戦艦の型式を大和型以降の型式に統一する事が強く求められた事、M動乱で戦艦本来の目的を叩き込まれたために、対艦目的が戦艦の目的ではないと宣うウィッチ達が肝心要の戦で役に立たない(正確には対人戦闘において)という問題が突きつけられ、ウィッチの運用装備は各艦から外され、空母の場合は代わりに通常艦上機が積まれていった。ただし、雲龍型は日本が想定していた紫電改、もしくは烈風、流星、彩雲の三本柱の多数機運用に適さないとされ、当初は退役の予定だったが、信濃が戦艦のまま竣工し、大鳳も増産予定と聞いた日本が『縁起が悪い』といい、自身の望むような超大型空母に切り替えさせたために、大型正規空母そのものの整備が白紙に戻ってしまった。それを補うためのプロメテウス級の購入である。プロメテウス級は地球連邦軍の余剰品(海上決戦が起きなくなったのと、洋上海軍の役目が終わった)だが、洋上空母の到達点であるため、ある意味、日本が望んでいる全てを兼ね備えている。扶桑軍のの沖縄からの撤収すら議論されていた当時、扶桑軍は同級空母を洋上運用担当、海上プラットフォーム用に分けて購入。沖縄に二隻を停泊させ、海上プラットフォームとしての運用に徹しさせる事で、沖縄の基地問題を回避した。(基地の増設で経済的に潤うことを見込んでいた層は肩透かしを食らって、軍に抗議を入れた。軍は『土地は招来の開発で活用するし、日本側の圧力でもありますので…』と見解を述べた。日本側は扶桑の那覇市などに莫大な賠償金を払うことになる事を恐れ、同地などの再開発を行うことになった。軍も現地住民が望む軍事機能を、未来兵器であるMSなどで補うことを決議。ここで地球連邦軍製MSが64以外に始めて卸され、地球連邦軍の標準量産機『ジェガン』が扶桑軍に配備される事になった。ジェガンはフレーム構造かつユニット化された構造であるため、パーツの供給さえ出来れば、ウィッチ世界でも整備そのものは可能である。専用部品も多いガンダムタイプと違い、ジム系統は運用しやすいのが売りであるため、ミッションパックの整備と調達で手間がかかるジェイブスが嫌われたのも無理からぬ事である。サナリィが先導者である小型MSはバトロイドの普及による需要の低下と星間戦争における物理的強度の課題などがのしかかって主力の座を降り、『小型MSを造れる技術で大型〜中型機を作ればいい』という結論に達し、それに戦闘機のマルチロールファイターの概念を加えた完成形がマンマシーンであった――


――地球連邦軍にはMSという兵器区分が長年の仮想敵であるジオン発祥である事を快く思わない者も多く、彼らは『MS』に代わる新名称を造りたかった。建前としても、旧来型MSにない『ほぼ完全な飛行能力、小型MSに欠けていた武器の搭載量』を備え、それまでの運用思想を革新させるものなので、ハーロックから伝えられた『マン・マシーン』をそのまま採用した。既存ガンダムタイプを改装する形で頭数の確保と実験を行い量産機に適応していくという回りくどい方法でマンマシーンへの切り替えを図った。第五世代MSの運用思想はマンマシーンの直接的先祖と言えたため、開系譜上は第五世代MSの発展系に属すると言えた――





――格納庫――

「あれ、坂本少佐ってニュータイプだっけ?」

「今はな。だから、わざわざペーネロペーなんて取り寄せたんだよ、マルセイユ」

「ペーネロペー?クスィーガンダムでなくて?」

「ま、あれは過剰性能と取られたみたいでな。連邦政府の政権交代の時期とぶつかって、予算が通らなかった。次善の策だよ」

坂本は転生後はサイコミュシステムを稼働させられるようになったのと、ウィッチ引退を見越して、MSの操縦訓練を受けていたため、その乗機にペーネロペーを選んだ。大型機を嫌いそうな坂本だが、前世の反省で火力重視の傾向になったため、ペーネロペーを選んだらしい。ただし、クスィーガンダムの増加生産要請が地球連邦の政権交代とぶつかって却下されたための次善の策との事。マルセイユの保有するクスィーガンダムと並び、64Fは第五世代MSを二機も保有する事になるため、ティターンズの持つ旧式機には優位になる。

「ケチったな、連邦の参謀本部」

「まぁ、下手な小型機よりは、ペーネロペーのような大型機のほうが精神的には安心出来る。それに技術レベルが落ちると言っても第五世代の嚆矢だ。旧式機などは敵ではないさ」

ペーネロペーの追加生産機は坂本の要請で、旧日本軍航空機の迷彩に彩られている。肩に坂本のパーソナルエンブレムが描かれており、坂本は不本意ながら、クスィーガンダム受領までの繋ぎという事でペーネロペーを受領したのだ。

「まぁな。二年後、同位体にどう説明する気だ?アンタ」

「その時になったら考えるよ。どうも、私は烈風斬のくだりで周囲に老害っぽい振る舞いを見せて引かれて、内輪はともかく、周りには白い目で見られるみたいだからな。自分の行いとは言え。第三者として見せられると、我ながら、な」

坂本はアニメという形で自分が黒江達の行いが起きない場合に辿る道を見たらしく、自分で自分に引いたらしい節を見せた。

「まぁ、私も漫画で見て、身の振り方を考えるようになったからな。お互い様か」

「そうだな」

「アンタ、タバコを?」

「喉の薬だよ。加東からもらった。それに、欧州じゃタバコを咥えてないと、一人前に見られんからな」

「日本人の迷信だと思うぞ?それ」

欧州では18世紀ごろからか、『タバコを咥えてないと、一人前に扱われない』という風習があるというが、マルセイユはそれに心当たりがないので、苦笑交じりだ。Gウィッチは未来知識を持つ事もあり、完全な喫煙習慣は無いが、タバコ型の喉の薬は服用している。また、雰囲気作りにそれを咥えている事が多い。(マスメディアの目につかないところで、だが)

「そうか?まぁ、お前も考えておくんだな。私達は黒江達のように顕著な違いは持ち合わせておらんからな」

「言えてる。せいぜい、ニュータイプになったくらいだしなぁ、私は」

この時間軸より二年後の『次元震パニック』への対応は早いうちから部隊単位で対応が協議されていた。プリキュア覚醒組は顕著な違いが表れている(のぞみは対外的には、中島錦として生活しているが、部内では生前の容姿で通している)ので、説明は楽である。だが、一見して振る舞いが変わっただけに見えるミーナや、ウィッチ能力が最高レベルでありながら、プリキュア属性も持つ芳佳など、説明が困難な者もいるのがややこしさを助長させている。

「二年後、同位体が現れれば、私達は必ず聞かれる事が多い。それを想定して動けよ」

「わかってる。ケイは姿を変えてなければ、見かけは変わらんが、口を開くとガンクレイジーだしなぁ。一部の界隈じゃ嫌われるんだよな、ああいうの。キャラ崩壊とかいって」

「そりゃ、メディアで描かれているのは、その人物の一面だけだったりするからな。加東の場合は猫をかぶればいけるが、本質は荒くれ者だしな」

坂本とマルセイユはメディアで描かれている自分達のキャラを少なからず、対外的意味で演じている側面もある。圭子は対外的には元々の温厚な人格を維持したかのように振る舞っているが、部内では、隊きっての荒くれ者で通っている。また、日本向けに温厚な人柄を演ずる事は多々あるため、普段のガンクレイジーな態度は最近では、『若い時のやんちゃ坊主な自分を忘れないようにするための自己暗示的な行い』という側面も持つようになり、同情もされている。そのため、隊内の人望は随一である。


「のぞみも大変だぞ?前世で二人も子供産んで、定年まで教諭を勤め上げたのに、求められているのは若い頃のアホの子なんだし」

「あれは本人も望んで、そうしてるだろ。あいつなりの事情があるのだ。軍務に支障がないのなら、構わんさ。それに黒江が面倒を見ている。黒江はフランクだが、仕事はきっちりする奴だ」

のぞみ(錦)はプリキュア覚醒後は黒江の配下である事がここで明確に語られた。これはそれまでの上官だった竹井(海藤みなみ)はプリキュア覚醒後はのぞみの後輩に当たることもあり、かなりやりにくそう(プリキュア5とプリンセスプリキュアとでは、代がかなり離れている)であったため、大尉にした後に人事異動と言うことで、黒江が引き取ったのである。

「えーと、ジュンコはヤツの後輩になるのか?」

「黒江の話だと、かなり代が離れているらしくてな。醇子もかなりやりにくそうでな。私が武子さんに具申して、異動させた。それにペリーヌが持つ第三の魂と同期らしいから、それの釣り合い取りだ」

――本当は反対されたがな――

坂本はペリーヌの好意に転生後は気づいていたが、ペリーヌに宿る二人の『英霊』に配慮し、敢えて気づいていないふりをし、のぞみを黒江の配下にする対価として、ペリーヌを竹井の配下にする形で隊内で人事異動させた。この事はモードレッドとトワも把握しており、坂本が自分の好意に気づいているのを知らないのは、ペリーヌのみだったりする。ペリーヌには反対されたが、『奴のもとで政治を学んでこい』という殺し文句で送り出している。なんとも言い難いが、隊から離れるわけではなく、上官が変わるだけなのだ。

「なるほどな」

二人は昼を格納庫で過ごすことになったが、愛機のサイコミュシステムの調整を入念に行うためだ。二機のサイコミュシステムはνと同型だが、サイコフレームは積まれていないため、調整にνより時間がかかる難点がある。そのため、サイコフレームの搭載が検討されていたが、展望は不透明であった。(機体反応速度が上がるのと、サイコミュ兵器の使用時の負担が減るため)。






――連合艦隊は稼働艦を捻出したブリタニア艦隊と合流した。戦艦が主力扱いであるブリタニアを時代遅れと揶揄する日本のマスメディアの声もあるが、連合艦隊とて、空母機動部隊の近代化が立ち遅れているのと、おいそれと空母を失えないとする事情から、戦艦が先頭に立った陣形を取っている。扶桑が誇る超大型戦艦(日本では超大型護衛艦扱いである)らが輸形陣を組む形で空母を守護している。戦艦や超甲巡の外観の基本レイアウトは大和をベースにした艦艇なので、外観的意味では『個性がない』との不満が囁かれている。これはそれまでの日本戦艦の特徴だったパゴダ・マストが廃され、塔型艦橋へ世代交代した事、近代化で艦橋周りのデザインが基本的に宇宙戦艦ヤマトと同デザインになり、SFじみた外観になったからでもある。また、超大和型戦艦が極端に大型になったのは、日本側が『集中防御の弊害』を捲し立て、集中防御よりも完全防御を推奨したからでもある。(その兼ね合いで未来世界の超合金を用いた構造が採用された)日本は高をくくり、最強の防御力を条件に、超大和型戦艦を造るのを容認したら、核兵器でも沈まないバケモノになった。これはまったくの予定外だった。しかし、逆に言えば、『どんな攻撃にも耐えうる移動要塞』を手に入れたも同然である。『未来技術の恩恵で、21世紀時点の如何なる金属で造るよりも砲身命数が長い』主砲を持ち、史上最強級の艦砲射撃ができる事はメリットである。(敵が史実の大和に匹敵する防御力を備えた戦艦をポコポコ量産するという日本にとっての『珍事』が起こったため、その対抗で保有が許された)






――ブリタニアは戦艦大国であり、当時の第一線級戦艦だけで10隻以上(キング・ジョージ級、ライオン級、セント・ジョージ級、クイーン・エリザベスU級)を有する一方、その維持費の捻出のため、史実より空軍の爆撃機保有数は少なく、空母機動部隊の状況は悲惨であった事は英国、日本の当局を愕然とさせた。英国が提案し、通した『旧式戦艦の空母への改装』は当座凌ぎの策であり、クイーン・エリザベスU級として建造準備中である二隻分を転用して、近代的大型空母を建造する事も決議された。だが、日本連邦軍でさえ、完全なノウハウ取得に五カ年計画で臨んでいるものなので、いくら英国が空母を保有し続けてきたと言っても、ノウハウ伝授には時間を要する。そのため、空母機動部隊はブリタニアの最精鋭部隊のみが帯同している。日本連邦軍は自前ではプロメテウス級の定数を満たせないために懇願し、それに応え、未来世界の地球連邦海軍で暇を囲っていた空母艦載機部隊を載っけて、プロメテウス級の定数を満たす始末であった。だが、練度は本物であり、海での戦いに関しては連戦連勝の連合海軍であった――





――富士 CIC――

「ブリタニアの哨戒機より打電。敵艦隊、捕捉。敵は戦艦七、大型空母八、護衛空母と護衛艦多数を従え、こちらへ向かっているとのことです」

「ご苦労。あと何日で戦闘に入る?」

「敵艦隊は足の遅い護衛空母に足を合わせてますから、あと三日半ほどは敵艦載機の行動半径ではありません」

「よし。潜水艦隊に打電し、足止めをさせろ。もう三日くらい時間がほしい。いくら未来装備といえど、千機を超える艦上機はいっぺんには捌ききれんからな。護衛空母を標的にするように通達せよ」

「ハッ」

連合艦隊旗艦『富士』では、小沢治三郎連合艦隊司令長官が指示を下していた。小沢はその強面と裏腹に、戦では慎重なタイプであり、日本からは『あ号作戦の失敗を繰り返すのでは』との懸念も強かったが、小沢は同位体の失敗を研究していた事、ウィッチ世界では史実のネガ要素がないのもあり、真の名将であった。ちなみに、小沢は一年後のクーデター発生でに伴い、連合艦隊の管理責任を取り、連合艦隊司令長官を辞す。その後、なんだかんだで連合艦隊司令長官の名は存続する事になり、後任は山口多聞が抜擢された事で、結果的に史実で叶わなかった人事が現実となる。

「空母戦闘群は護衛空母を叩いた後に戦闘を開始させる。いくらプロメテウス級があろうと、数では不利だからな、我々は」

「潜水艦隊は上手くやってくれるのでしょうか」

「わざわざ、日本から大枚を叩いて購入したのだ。そうでないと困る。敵はリバティ船がない分、こちらに若干の利があるし、史実規模のパナマ運河がない上、地球連邦軍が電撃的に抑えている。おまけにブリタニアの別働隊が陽動作戦に出ている。いくら旧式艦主体とは言え、空母もつけとるから、ただではやられまい」

小沢はブリタニアの第二艦隊の犠牲を作戦に織り込み済みであった。第二艦隊の旗艦は歴戦艦のウォースパイトであり、その僚艦はヴァリアント。史実ではパッとしない戦歴であるが、ウィッチ世界では武勲艦であり、旧式とは言え、ブリタニアの意気込みが伝わってくる。ブリタニアは新鋭戦力を主力艦隊に配し、消耗しても良い旧式を第二艦隊に配置した。艦齢も進行しているため、ブリタニアは捨て駒と見ているのが読み取れた。

「体裁は整えたが、ブリタニア第二艦隊は旧式艦揃いのオールドネイビー。世界最高を誇った海軍にしては情けない。司令官に同情するよ」

参謀の誰かが零す。

「艦の年式で戦は決まらんさ。旧式とは言え、ブリタニアの熟練者の操艦するフネなのだ。少なくとも俺はアテにしているがね」

「……失礼しました」

「まぁ。我々とて、金剛型を使い倒したクチだ。人のことは言えんさ。こうして、黒江くんらの人脈の恩恵に預からなくては、今の時代にこんな先進装備は得られんからな」

参謀を諌め、小沢は戦況モニターに視線を移す。第二艦隊が交戦に入ったのだ。







――戦端を切った第二艦隊。ウォースパイトを旗艦としたブリタニア艦が当時の新鋭艦に敢然と挑んだ。砲の射程、装甲共にリベリオンが圧倒的に優位にあったが、なんと、下馬評を覆し、ウォースパイトとヴァリアントは奮戦していた――

「どうせ徹甲弾は弾かれるのだ!榴弾で上部構造物を焼き払え!」

ウォースパイトの38.1cm(42口径)連装砲が吠え、榴弾を撃ち出す。艦長と司令官の判断で『格上に徹甲弾は通じないから、榴弾で上部構造物に打撃を与える』という戦法を艦隊規模で行っており、敵戦艦を沈めるというよりは『戦闘継続困難に陥らせる』方向で交戦していた。

「ラミリーズ、被弾!」

報告が入る。330mmの前盾を持つ同艦の38.1cm(42口径)連装砲塔の一基が被弾し、発砲不能に陥った。当たりどころが良かったため、弾薬庫までの砲弾の貫通は免れたらしい。

「クソ、やはり、敵の命中率は上のようだな!」

「電子装備の差でしょうか」

「未来装備でも無い限り、それほどの差は無いはずだ!撃ち返せ!」

ブリタニア艦隊は序盤から火力差に苦しめられるが、砲弾の命中率そのものは敵と互角であり、敵のアイオワ級戦艦の一隻の両用砲が吹き飛び、ボフォース機銃を基部ごと粉砕しつつ、火災を起こさせるなどの戦果を挙げている。敵も律儀に水上砲戦に付き合ってくれている僥倖もあるが、ウォースパイトは予想外に善戦した。


――第二艦隊の主力火器の38.1cm(42口径)連装砲が咆哮する。敵に比すれば格下の武器だが、口径が小さい分、装填速度が早い(特段の近代化改修が施されていない限り、戦艦の発砲速度は観測データと乗員の練度などに左右される)同砲から放たれる砲弾は敵艦にジワジワとダメージを与える。敵主力の18インチ砲の観測はなんとも大ざっぱであり、折角の砲と電子装備も宝の持ち腐れ感が強い。――

「我々は戦闘に勝つことが目的ではない。各艦は退き際を心得ておけよ!護衛艦を消耗させ、敵に一打を与えればいい!」

艦隊司令官の激が飛ぶ。ウォースパイト達の役目は敵の撹乱と小手調べであり、戦闘に勝つことではない。栄光あるブリタニア海軍軍人としての誉である『艦隊戦』を戦える事そのものが彼らの幸せであった。

「あ、デヴォンシャーが被弾!炎上!!」

重巡洋艦のデヴォンシャーが被弾し、炎上して、落伍していく。そして。

「ルビー、轟沈!!」

ダイヤモンド級戦艦の一隻『ルビー』がまっ二つにへし折れ、轟沈する。金剛型の中間形態と似た姿であり、金剛型の本国仕様とも言えるダイヤモンド級は前大戦時から1920年代にかけて竣工した。大半が予備艦になっていたが、一部は現役に戻された。その内の一隻であったが、同艦は最も改修が遅れ気味であったのが災いし、史実のフッドさながらの往生を遂げてしまったのだった。これは敵の主力が45.7cm砲を備え、ダイヤモンド級のいかなる箇所の防御を貫通できるという点がダイヤモンド級に死を与えたのだ。

「バカな、ルビーは戦艦だぞ!?それもこうもあっさりと!?」

流石に司令官も動揺する。奇しくも、リベリオン製18インチ砲の威力を証明した瞬間であった。(フッドも似た経緯で轟沈しているので、18インチ砲艦の攻撃は14インチ砲艦に容易く致命打を与える事だけでなく、ラッキーヒットが弾薬庫に当たれば、誘爆で沈んでしまうほどの性能差が横たわる証明である)






――敵旗艦『ニューハンプシャー』――

「ハハハ!!ブリテン共のオンボロ艦などは敵ではないわ!!叩きかけろ!」

リベリオン戦艦部隊の司令官は鼻歌交じりに指令を発し、ダイヤモンド級を仕留めた感慨に浸るまでもなく、敵に猛攻撃を加えよと司令する。リベリオン艦は被弾に強い。その自信もあってか、ウォースパイトの奮戦を破砕せんと猛攻を仕掛ける。リベリオン艦隊は変針し、敵艦載機(ブリタニア海軍)の攻撃を自慢の防空網であしらい、ブリタニア艦隊を粉砕せんと、迫る。それを悟った第二艦隊も変針する。それは事前の作戦通りであり、第二段階の攻撃、つまり、戦艦の二大艦娘(大和、長門)と護衛の二水戦の艦娘が撹乱のために参陣した。

「提督、あ、あれを!」

「おのれ、扶桑は噂通りにマリンウィッチを有しておったか!」

双眼鏡でその姿を確認したリベリオン艦隊司令は憤慨した。マリン・ウィッチ。要は艦娘をウィッチの新種と各国は勘違いしたわけだ。リバウ攻防戦当時に活動が確認されたのみであるのもあり、Gウィッチ以上におとぎ話も同然に見られていた。恐るべきはその火力。サイズに見合わないほど強大であり、大和と長門の第一打はなんと、アイオワ級戦艦の装甲をぶち抜き、主砲塔の一つを盛大に破壊する。

「征くぞ、大和」

「はい、長門さん!」

日本海軍のシンボルであった二大戦艦の化身はここに参陣の狼煙を挙げた。武人気質であるので、武人と周囲に尊敬されるが、実は甘党でかわいいものとアイスに目がない長門、凛々しい大和撫子な容姿だが、実際はかなり精神的に幼く、ウォーモンガーかつ、某K参謀殺すウーマンな大和。コンビとしてはチグハグだが、二代の連合艦隊旗艦が駆けつけたのと同義である。リベリオン艦隊はこの第二陣に思わぬ苦戦を余儀なくされる事になる。



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