外伝その409『ユトランド沖海戦の再来7』


――キュアマカロンは北郷章香でもあるため、軍隊階級はプリキュア達の中ではもっとも高い。便宜的にプリキュア達に指示を与える立場であったため、作戦の指示は基本的に彼女が出している――


「野比のび太氏からの推薦があった。ハート、ダイヤモンド。君たちを前線に出す。ラブリーとフォーチュンは天測航法の訓練が間に合わないので、今回はバックアップに回す」

「天測航法かー。空軍なのに、なんで海軍の戦いに駆り出されるの、マカロン」

「自衛隊で言う統合任務部隊という奴だよ、ハート。今は空海の違いくらいでグダグダ言えん時代を迎えているんだ。それに、陸の制空権を維持せねばならんのだよ」

「なんか、その姿で真面目に言われると、調子狂うよ、マカロン」

「最近はよく言われる」

苦笑いするキュアマカロン。北郷としての口調を用いている時は仕事モードである。猫のような気まぐれさを持つのが彼女の持ち味だが、仕事ではそうはいかないため、北郷としての生真面目で実直な人柄として振る舞う。また、最近はプリキュアとしての能力はあまり用いず、北郷章香としての剣技を戦闘の主体にしている。

「エースなど、最近は折衝役ばかりで、愚痴ってるよ。転生後は時空管理局の協力者だったようでね。なのは君を叱ってもらったが、彼女、ふてくされてしまってね」

「そりゃそうだって…」

キュアエース/円亜久里はなのはの親友であるアリサ・バニングスに転生していた。また、彼女は『前世でキュアソード/剣崎真琴がスケジュールの都合で辞退したドラマの主演に抜擢され、その時にキュアレモネード/春日野うららと共演した』と語り、のぞみやなおと同じ世界を生きた円亜久里である事が判明しており、のぞみを喜ばせている。また、キュアエースとしての変身時間の限界が解消されている関係もあり、最近はキュアエースの姿を保って行動している。わざわざ子供の姿に戻っての変身をするあたり、こだわりがあるらしい。なのはもさすがに親友がプリキュアになった事を認めたが、自分がキュアアムールでない事をまだ悔しがっている。

「ラブリーとフォーチュンはまだ洋上戦闘に耐えられない。雁渕から報告を受けている。君たちはその点、その技能を持つ」

「転生先での事情と、前世で空中戦の経験あるからね、私と六花は」

キュアハート、ダイヤモンドはエンジェルモードなどで空中戦の経験があるためと、転生先での経験とを併せて、天測航法技能がある。(キュアダイヤモンド/菱川六花は転生先が航空会社令嬢の婚后光子であったため、キュアハート/相田マナは戦車道世界で逸見エリカであるため、ヘリや航空機の操縦技能を身に着けている関係も大きい)ラブリーとフォーチュンは海上の飛行経験が現役中に無く、洋上戦闘をこなすようになるまでには今しばらくの錬成を必要とすると判定され、ダイ・アナザー・デイの重要局面である大海戦には参加しないこととなった。海戦への参加メンバーはドリーム、ピーチ、メロディの『プリキュア三羽烏』以外はキュアハート、キュアダイヤモンド、キュアフェリーチェ、キュアマカロンの七人となった。

「それと……ドリームのことだが、お前たちに気をつけてほしい事がある」

「へ?何を?」

「タイムテレビでわかったことだが、ルージュがテロリストの爆破テロに巻き込まれて…記憶喪失になる」

「え!?」

「しかもそう遠くない内に、だ。あいつはルージュに依存心を抱いている節があるが、それがそのショックで破綻をきたすのだ。その爆破テロから、ルージュが身を挺して人々を守ったんだが、その時に何かしらの外傷を負うらしい。そのショックで記憶喪失になった。それがきっかけで、ドリームは精神不安定に陥ってしまう。その時になったらフォローをしてやれ」

「わかった」

「頼むぞ」

「なんとか回避できないの?」

「それは私も考えてね。回避しようと何通りかタイムテレビで可能性フラグ弄って観察しても、何故かどこで記憶喪失が起こる運命なんだ。一番ひどいパターンはドリームを庇って爆発に呑まれるってパターンだ。外傷が少ないパターンで妥協せざるを得ない。もちろん、あいつには内緒だが」

キュアドリームの危うさは前世の不幸に由来する。幼なじみであるキュアルージュが一種の安全ピンではないかと、黒江たちは推測しているが、推測は的中していた。他のオールスターズもそれはなんとなく悟っており、フォローをしようとしていた。

「最悪、ルージュがそれで亡くなり、ドリームが闇落ちして敵味方構わずにフォン・ブラウンを消し飛ばすパターンさえあった。あいつの覚醒を促すしかないが…」

「どうするのよ、マカロン」

「黒江くんは『兎に角、死にフラグだけは潰しとくから後はプリキュア組で頼みまっせ』と言ってきとる。ルージュの完全覚醒に必要なイベントが記憶喪失かもしれんな…」

「ドリームの弱さが日本から叩かれてるけど?」

「弱さをヒロインが持っていても、それは罪ではない。プリキュアだろうが、誰かにすがりたい気持ちはあるからな」

マカロンは北郷章香として、人の心の真理を突く。『弱さ』をヒーローやヒロインが見せる事を一部の過激論者達は否定するが、プリキュアは力を持つ事以外はごく普通の少女であるため、『大人』である仮面ライダーやスーパー戦隊に比べて脆さがある。特にドリームは元来は少年のび太のような少女であったため、それが自覚なきコンプレックスになっている。そのコンプレックスとの相乗効果で、キュアルージュという安全ピンが外れてしまうと、いったいどうなるのかは『戦友たち』でさえも予測が難しいという問題があった。ドリームの出身世界特有の事象までをカバーしろというのは、さすがの彼女らでも無理がある。

「あの赤い服の精神力でなんでも吹き飛ばす不死身の男でさえも守れなかった者のために涙を流した事があるし、仮面ライダーでさえ、全ては守れたわけではない。玄海老師、モグラ獣人、電波人間タックル……。それにのび太氏たちも救えない運命だったメカトピアの少女がいたし、海底鬼岩城の時はバギーが…」

憤慨するキュアマカロン。前世と異なり、北郷としての熱さを持つため、かなり人間味あふれる姿を見せる。マカロンがここまで憤慨するのも珍しいが、流石に『強大な力を持ち何百年も生きる存在には不要だ!愛だの友情等で友人という人形を使ったごっこ遊びに興じてないで敵を殺せ』という誹謗中傷が舞い込んだ直後だったので、不機嫌になっている。のび太の存在否定にもつながるのがわかるため、普段は温厚なフェリーチェですら、『今すぐそいつのIPアドレス調べてください、ストナーサンシャインで消し飛ばします』と激昂している。しかもその時に持っていたコップを握りつぶすほどに。


「愛も友も捨てろと言うなら、真っ先に人類を見限るよ、愛され敬われるから戦う意味があるんだ、便利な道具位にしか思われないなら国ごと滅ぼして一人で生きる方がマシさ」

「だよねぇ。フェリーチェが怒ったのもわかるよ」

「彼はレイブンズの不屈の闘志に敬意を抱いてるし、姉として慕ってる側面もある、その辺が力しか考えに無い連中には読めてないのさ。それを愛玩動物だの、養豚場だのと屁理屈だの言われる筋合いはないよ」

さしものプリキュア達もリーダーシップを自然に取れるピンクチームの筆頭たるドリームの精神面のフォローに苦慮しているのがわかると同時に、温厚なフェリーチェですら激昂するほど、誹謗中傷がエスカレートしている。それは警察関係者にパイプがある黒江に伝えられ、公安委員長の命を受けた公安警察が極秘に動くに至る。黒江は青年のび太の参戦以後に酷くなった誹謗中傷を鑑み、警察を動かそうとしたが、色々なしがらみで遅れ遅れになっていたが、度を過ぎているとした公安委員長の鶴の一声で捜査が始められる。のび太の存在は政府としても『ゴルゴ13への抑止力』という観点から重要視しており、公安委員長の命令を極秘に容認する。2019年時の公安委員長は黒江が懇意にしている義勇兵の息子であったのも理由だ。もちろん、公的には『名誉毀損で提訴』を行うのであるが、なにかかしらのハッタリも必要とし、黒江は公安委員長にハッタリを頼んだのである。元号が令和に変わろうとする時代、日本は一般国民のつゆ知らぬところで騒動になっていたと言える。






――のび太はドラえもんから黒江達用の機材を受け取り、アンドロメダ級戦略指揮戦艦(アンドロメダ級は『アース(のび太の地球)』では外征艦隊の総旗艦とその護衛として建造される『ワンオフモデル』である)『メネシス』の格納庫に用意した。可変戦闘機やコスモタイガーに準じた内部構造を持つようにレストアされた『F-20』戦闘機である。同機はかのF-16より安価で高性能を謳って開発されたが、実績のない新型機であった事などを理由に輸出戦闘機としての任を果たせずに終わったことで知られる。だが、その潜在ポテンシャルは評価されており、キュアメロディ(シャーロット・E・イェーガー)が強請ったのだ。現存する機体をドラえもんがひみつ道具でコピーし、そのコピーを更にレストアすることで先行の10機分を用意し、納入したという経緯であった――


――『メネシス』格納庫――

「ヒュー〜♪よく用意したな、こいつを」

「ドラえもんがカリフォルニア・サイエンス・センターに行って、こっそりコピーしたのさ。相当に大変だったとか言ってたよ」

格納庫に駐機されている『F-20』。中身はVF時代のものに変えられたが、外見はそのままであるため、SFじみた外見のコスモタイガーなどに比べれば『ミリタリーチック』である。カラーリングは日本軍特有の暗緑色の迷彩であるが、それは武子の出した条件らしい。

「武子の条件か、この塗装」

「そうだよ。僕は洋上迷彩を薦めたんだけどね」

「かーっ、あいつめ。変に頑固だな。とは言うものの、誤認を避けるためだろうな」

この頃、ジェット機時代の低視認性塗装はウィッチが怪異と誤認し、誤射する事例が続出していた。F-35などはその形状などから、遠目からは怪異と誤認されがちであるため、史実第二次世界大戦と同じように『インベイジョンストライプ』を描く事が自主的に行われるなど、意外な苦労も多い。扶桑は自衛隊のF-2で行われる青系洋上迷彩への塗り替えを行っていないが、これは同士討ち防止の意図が大きく、暗緑色を基調とした迷彩が扶桑軍機の特徴とウィッチに認知されているからである。(1945年当時のストライカーユニットは敵味方識別装置を持たない。後年のジェットストライカーには内蔵されているが、1945年当時の技術では実機はともかくも、ストライカーに搭載できる代物ではない上、防弾板すらも重し扱いで外される風潮があったため、空中での敵味方識別は目視、魔眼などの手段に頼っていた)

「ウィッチの誤射、増えたもんねぇ」

「F-35とかは誤射されやすいんだよな。インベイジョンストライプを書く羽目になったとか、米軍が困惑してたぜ。キャノピーとかあるんだぜ?それに色が灰色だから、気づけと言いたいぜ」

「ま、この時期、ジェット機そのものが新兵器だし、勘違いするウィッチが多いのは分かるよ。後で処罰されるのは気に入らないだろうけど」

「誤射な事には変わりないしな」

この時期、ジェット機が戦場を飛び始めたはいいが、高射砲部隊や各国のウィッチ部隊の誤認事件が頻発していた。同位国側から問題視され、揉める事案も生じたため、全軍にジェット機の実用化が布告され、同位国の持ち込んだ機体についても周知が図られた。ウィッチとしては、通常戦闘機が花形になりつつある時勢は鼻持ちならないだろうが、それまでの機体より飛躍的に高性能化した『F6F』や『F4U』は愚か、ごく少数ながら『F8F』も現れている時代にあっては、いくら威力が上がっていても、通常は7.92ミリ銃〜12.7ミリ銃、良くてそれらを二丁しか携行しない傾向の空戦ウィッチの火力では、20ミリ砲弾でも中々落ちない米軍系戦闘機を撃墜するのは至難の業であり、高火力武器、あるいは能力で容易に対応できる64F(その傘下に収まった501)以外の部隊は苦戦が常態化しつつあった。64Fでさえも難敵としているのが『P-47』で、時代相応の通常装備では、接近戦以外に対応策がない。そのため、魔導誘導弾の使用も同機には許容されているほどである。(ある日、バルクホルンがMG151/20を50発も撃ち込んだのにも関わらず、平然と飛び去られたという出来事も起こっていた)

「バルクホルンがジャグと出くわして、マウザーを50発も撃ち込んだのに、ピンピンしてて、悠々と逃げられたとか愚痴ってたぜ。あれには魔導誘導弾がいるな」

「そのためのこいつさ」

「こいつの機動力は俺たちじゃなきゃ、手に余るからな。機銃は?」

「パルスレーザー二門に変えてある。この時代の装甲なら、巡洋艦くらいまでなら容易に貫通できるよ」

「サンキュー。」

F-20の機動力は当代屈指だが、その機動力を活かすには、高いG耐性を持つパイロットが必須となる。テスト中に三機の試作機の内、二機が墜落した理由もそこにあるため、後年にウィッチ世界で実機が制式採用された際も扶桑では『大戦期以来のベテランパイロットに搭乗資格を与えられる』扱いのエースパイロット専用機扱いであったという。64Fにのび太とドラえもんが与えた機体のアビオニクスや耐G装備はVF準拠の高度なものだが、それでもエースパイロットで鳴らす者に与える処置がされたため、如何に同機が設計当時としては高度な機動力を与えられていたかが分かる。

「シャーリーが喜ぶぞ」

「同位体からして惚れ込んでたしね」

そう言った事を話す二人。

「ところで、お前。最近は表に出ないよな」

「カミさんがうるさくてね。そろそろ30を迎えるから、フィクサーになれって言うんだよ。ま、倅も生まれてるし、気持ちは分かるけどね」

「お前のカミさん、昔から気が強いからな」

「共働きなんだし、ある程度は我慢してほしいね。ダブルスペイザーでここ二週間は出るようにはしてるよ」

青年期以降、のび太は長年の付き合いからか、黒江とタメ口で話すようになっていた。また、過去の大冒険とドラえもんとの日々の経験蓄積値で戦闘機操縦技能を得ているため、ダブルスペイザーを借り受け、強行偵察などを勝って出ている。偵察目的とは言え、敵陣深くに潜り込むため、度胸のいる仕事である。

「東郷は今日も派手に敵の輸送列車の爆破をしたってさ。たぶん、ウィッチ同士の戦いはそんなに起きないよ。ぼくと東郷が1000人単位で減らしたし、リベリオンはネイティブのシャーマンを嫌うから、じきにウィッチの『弾切れ』を起こすよ」

「サボタージュはその懸念も大きかったからな。リベリオン海兵隊の連中をブートキャンプからやり直しさせようかって話もある。俺が演習でちょくちょく顔合わすアメリカ海兵隊の日系移民の将校もため息ついてたぜ」

「問題になってるの、旧ノーブルのリベリオン系の子でしょ。やれやれ。軍人なのに、そのくらいの覚悟もないのかい?」

「パットン親父に煽ってもらってる。屁理屈込めてるやつが居たから、怒鳴ったとか言ってたぜ」

「そういう手合はめんどいよ?ぼくなんて、ヒーローでもなんでもないけど、家は守ってるよ」

「誰しも、お前みたいに常に前を向けるわけじゃねぇさ」

「ばー様との約束があるからね、ぼくには。あれがぼくの原動力さ」

のび太は常に一歩づつ前を向く。遂には神々に愛されるようになるが、これは敬愛する亡き祖母との約束を死期に至るまで貫き、転生後も守っている(転生の前後は別人扱いなので、同時に存在できる)からだ。のび太の精神面での『強さ』を象徴する、彼の亡き祖母の言葉は以下の通り。

――ころんでも、ころんでも、ひとりでおっきできる強い子になってくれると…、おばあちゃん、とっても安心なんだけどな…――

のび太はその言葉に『ぼく、ダルマになる。約束するよ、おばあちゃん』と返した。結果として、そのやり取りが祖母との生前最後のやり取りになったため、のび太のその後(転生に至るまで)に影響を与え、彼の子孫たちにも家訓という形で伝えられている。これは妹分の調、義妹のことはにも形を変えて伝わり、のび太の養子となった『コージ』(ココ/小々田コージの転生体)と結婚する事が内定しているのぞみにも伝わり、その後の時間軸における彼女の再起に一役買う事になる。 




――扶桑皇国はこの時期、官庁主導で航空機生産能力の多くを新型機に割り振られ、既存機の補給パーツ生産をおざなりにしたため、前線では現地改修が横行していた。大半は前線の声に折れた日本の手で高精度化されたものが出回ったが、キ44Vのみはリベリオンのエンジンのライセンス生産を前提に生産されていたために生産再開が頓挫し、キ84の『完全戦闘機化』で置き換えが決まった。史実の乙型相当の武装を施しての量産だが、主翼部の根本的再設計を必要とするために開発に時間がかかる。この時の『航続距離を切り詰め、攻防力を高める』選択は扶桑軍には不評だが、時勢は武装面での高性能化が志向されるのがトレンドになっていたため、最終的に容認された。これはウィッチが対人戦では宛にできないと見た各部隊の要望でもあり、ウィッチ閥はダイ・アナザー・デイが長引くにつれ、政治的立場を失っていく。これに気がついた者たちは自主的に元の部隊を離脱し、64に加わるため、上層部は対応に苦慮した。彼女らが自分らの立場が危うくなった事に気がついた時、既にダイ・アナザー・デイの重要局面は始まっていた――





――海戦で戦う第一航空艦隊(第三艦隊)のウィッチは坂本と西沢が掌握していたため、64Fとの関係は良好であり、この戦でのほぼ唯一の『64Fに好意的』なウィッチ部隊であった――

「黒江先輩」

「板谷か」

板谷茂子。第一航空艦隊(第三艦隊)の制空隊隊長であり、武子の小学校の後輩にあたるウィッチである。山本五十六を批判していたことで知られるが、制空隊の隊長としての技能は本物で、坂本も高評価している後輩と語っている。

「ガキ共の訓練は完了しております。いつでも出撃可能です」

「そう逸るな。貴様らは空母直掩と制空を同時にこなさなくてはならん。ガキ共の統制に気を配れよ」

「ハッ」

ちなみに彼女は制空隊隊長と第一航空艦隊参謀を兼任しており、階級は少佐。坂本の一期後輩にあたる。元は赤城に属していたが、赤城亡き後は大鳳に転属しており、近ごろは航空参謀も兼任するようになった。扶桑海軍は長らく、兵卒〜下士官がパイロット/ウィッチの主力層であったが、ジュネーブ条約の兼ね合いと自衛隊パイロットとの兼ね合いで士官扱いで完全に統一された。彼女もパイロットの初期階級の引き上げの反対論者であったが、自衛隊パイロットが最低でも『三尉』であるために止む無く従ったクチである。また、この時代の古参ウィッチは短縮課程で兵学校を出た者が大半であり、きっちり教育された自衛隊パイロットや幕僚より『質』が落ちると見做されていたため、彼女は自分達の受けた教育の是非に思い悩んでいた。黒江はその気持ちはわかるので、板谷に留学の話を持ちかけるのだった。



――この時期、個人の撃墜数などを公式にカウントしていなかったはずの扶桑海軍航空隊が対外的、政治的理由で撃墜王の存在に寛容な陸軍飛行戦隊に吸収されかけた事への落胆は参謀/飛行隊幹部層を中心に大きく、クーデター勃発の引き金となっていくが、皮肉な事にそれ自体が国家への反逆と見做されていく。また、クーデターに横須賀航空隊や陸軍航空総監部/航空審査部の構成員が多かったことにより、昭和天皇の意向で空軍に専任のテスト部隊を置かない時期が長く、64Fが特別編成で存続する表向きの理由付けとして、長らく使われるのであった――



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