外伝その416『海戦の本番3』


――海戦は空母戦が激しさを増していた。史実の戦訓で装甲空母の存在意義が消え失せたため、大鳳も露天駐機で限度一杯の搭載機を積んでいた。ウィッチは大鳳、翔鶴、瑞鶴では運用されず、雲龍型で運用されていた。これは近代化改修でジェット機を積んだら、搭載機数が半分以下に減ったからで、未来空母が動員される理由となった。また、未来世界の基準では三隻は平凡な軽空母でしかない上、大鳳は工期繰り上げのために、杜撰な工事がされていると疑われ、近代化改修が徹底的にされた影響で艦の基本設計に無理を強いている感が大きく、後継艦の建造が早期に計画されたのもその点が大きい。未来空母が動員された理由の内、大きな理由は近代化改修で搭載機数が想定外に減った(ジェット機はレシプロより大きいため)ことに連合軍が腰を抜かした事、敵がエセックス級、ミッドウェイ級のみならず、護衛空母を動員してきたため、戦力に数で大きな開きが開いていることである。未来空母を加えたとは言え、ブリタニアは大艦巨砲主義が史実より優勢であったため、空母部隊は無きに等しいほどの有様で、日本連邦の担当者が目眩を起こしたほどであった――




――連戦で消耗したブリタニア艦隊は扶桑連合艦隊に主力を譲り、一部の新鋭戦艦と空母を連合艦隊に加える形になった。これは連戦で主力の大多数に損害が生じたからである。日本連邦はこれを受け入れ、64Fの主力をエアカバーに用い、艦隊決戦に備えた。空母戦を戦い抜くほうが先決であり、それほどに空母戦は激しかった。ブリタニア艦は有力艦を送り込んだものの、近代化改修で搭載機数は減っており、目立った働きは見せていない。シービクセン改(機銃搭載に改良した)も少数配備であり、ブリタニアの宣伝ほどは活躍していなかった。対する扶桑も、主力三空母にF-8を搭載し、それを主要戦力としたものの、それは100機をちょっと超えるほどで、数的主力は雲龍型の大半に積まれたレシプロ機である。日本側からは『雲龍型では紫電改、天山、彩雲の運用は不可能』とされたが、扶桑は油圧式カタパルトを実装済みであったため、雲龍型でも紫電改や烈風の運用は可能であった。そこも日本の計算間違いであり、雲龍型を見くびっていた証であった――


――海上――

「あらよっと!」

黒江のZプルトニウスの頭部バルカン砲が火を吹き、レシプロ戦闘機を破壊する。哨戒を続ける黒江たち一同だが、レシプロ戦闘機を蹴散らしていく。あまりにも数が多いため、サブウェポンもフル活用であった。

「数、多くありません!?」

「敵は護衛空母からも出してきてるからな、100機落としても大勢に影響は出ないぞ。くそ、馬鹿みてぇに湧いてきやがる」

黒江もキュアハートもうんざりな敵航空戦力の物量。リ・ガズィ・カスタムのBWSの武器を撃ちまくっても数が減らないのは脅威そのものである。

「マリアナ沖海戦の絶望感を味わってる気分だよ、これは。みんな、攻撃機と爆撃機を優先して落とすんだ。攻撃隊さえ落とせば、戦闘機は任務を放棄して逃げ帰るよ!」

のび太は指示を飛ばし、自身は攻撃機や爆撃機を優先して落としていく。攻撃機と爆撃機は魚雷と爆弾を自衛のために投棄すれば、その時点で任務失敗だからだ。

「よし!」

黒江とキュアハートは機体に持たせているビーム・スマートガンとビーム・アサルトライフルを攻撃隊へ一斉射撃。攻撃隊は避ける間もなく、多くが蒸発していく。

「さあて、おまけだ!ビームコンフューズ!」

黒江はカミーユから教わった戦術『ビームコンフューズ』を使い、攻撃機/爆撃機を蹴散らす。

「敵は一部が逃げ出しましたよ、先輩!」

「MSにレシプロ戦闘機の攻撃力じゃ無力だしな。向かってくる勇敢な奴には敬意を払えよ、ドリーム」

「MSの武器はオーバーキルだと思いますけどね」

「仕方あるまい。こうでもせんと、敵は逃げねぇんだし」

「ウィッチは一向に上がってこねぇな」

「ぼくとシャーリーさんで護衛空母に打撃を与えたからね。それでだろうな」

「あれでウィッチ部隊が壊滅したかもな。対艦ミサイルで護衛空母に打撃を予め与えた時に死傷者出てただろうけど、ウィッチがいた空母だったか」

「ガキどもの大義名分はこれで消え失せたな」

サボタージュの大義名分であった『ウィッチ対ウィッチの空戦は海戦では、この時点で未だ 起きていなかった。対艦ミサイル攻撃で護衛空母がやられ、更にのび太とシャーリーの攻撃で護衛空母が撃沈した際に『戦わずして』壊滅していたからであった。これ以後、ウィッチ部隊のリベリオン本国軍での立場は儀仗的役目にまで徐々に堕ちていく他、連合軍でも部隊の整理と淘汰がこれから始まっていく。古参だけが戦場において重宝されることで、ウィッチ雇用の受け皿の縮小を恐れた中堅層だが、彼女らの多くは海戦に不参加であるなど、選んだ道そのものが悪手であり、彼女らが嫌った『Gウィッチの権威化』の決定打となったという皮肉がある。この時の中堅層は翌年のクーデターの失敗で保身のために三割がGウィッチ支持へ転向していくが、それ以外はMATに46年度から順次、転属していった。その人員の偏りが軍ウィッチの世代交代を20年以上も停滞させることに繋がったが、MATの隆盛には繋がった。MATの最盛期は40年代後半から60年代中までで、ベトナム戦争後は怪異の出現そのものが減ったことで衰退期に入っていく。大戦世代が高齢を迎える90年代半ばに『代替役』として認められるが、今度はMAT組織の存続が危うくなり、出身者の出資で再興が図られる。この時に至り、かつてと異なって、軍部との共存共栄を図る方向になったが、ベトナム戦争とその前の第二次扶桑海事変において、早期の怪異の鎮圧に失敗したことに責任を感じていた隊員らが組織再建の音頭を取ったからだった。

「これで軍部のウィッチ部隊はかなり淘汰されるだろうな。MATが栄えていくから、軍に入る奴もかなり減るし、雇用の受け皿となる部隊を敢えて維持する必要も来年以降は薄れていくからな」

「どうなると思います、先輩」

「俺たちの権威付けを急ぐだろうな。だが、中央の参謀達は不満に思うから、いずれ一悶着あるだろう。その時は弱みを握ってやるさ」

黒江の言う通り、48年以降に派遣された隊長代理達の戦死は中央の外聞的都合で布告は『中隊長』扱いでなされる。後期の二人はあくまで代理であることを受け入れていたため、Gウィッチのコミュニティと波風立てる事は避け、あくまで軍制上の代理であると割り切って動いていため、武子の復帰後も『中隊長』として残留できたのだ。このように、黒江達はこれからも色々な騒動が待ち構えているのである。

「あん、どーしたケイ」

「すまんが、はやてから伝言だ。なのはの処分が決まった。大佐止まりになるんだが、まーた問題発言しやがったから、反省文書かせる」

「のび太、お前んとこに放り込んでいいか?」

「戦いが終われば、ね」

キュアエースは圭子に伝えた。なのはが『空中元素固定で複製できるって伝えたんだけど…』と自分本位的な問題発言をしたと。キュアエースにさらなる教育が必要と判断されたなのはは、作戦後しばらく、野比家で再教育を行うことが決められた。はやての気苦労は如何なものだろう。

「あのバカ。んなんだから、『少し、頭冷やそうか…』がネタにされちまうんだぞ」

「お前も人選ミスったな」

「教導隊だからな。うかつだったぜ」

なのはの行為は結果的に時空管理局次元航行部隊教導隊の教育カリキュラム見直しに繋がり、教えられる側の面子に配慮した教育がやて主導で採択される。前身の『戦技教導隊』以来の問題点が浮き彫りになった形であるため、なのはに処分がなされた事で、教導隊は激震に見舞われた。『細かい事で叱ったり怒鳴り付けてる暇があれば、模擬戦で徹底的にきっちり打ちのめす方が良い』としてきた方針は異世界の住人である立花響には当てはまることはなかったからだ。

「綾香、私だけど、いい?」

「凛…もとい、はやてか」

「ごめんなさいね、戦闘中に」

「いや、構わんさ。で、あのバカの事か」

「ええ。先方には私が侘びといたわ。菓子折りまで買って…」

「ケチなお前にしちゃ珍しいな」

はやてはこの時期には『遠坂凛』としての自我が主体になっていたため、はやて本来の京都弁は鳴りを潜め、遠坂凛としての標準語が主体となっている。無論、凛としての腹黒さを持つが、普段は清楚な人柄を演じており、言葉遣いも普段は猫かぶりでしまくりで丁寧であるため、イリヤからは『リンは猫かぶりだから』と言われている。(二人からはリンと呼ばれており、転生した遠坂凛と扱われているのが分かる)

「流石に遠坂のうっかりの呪はついてこなかったから、そういううっかりの失礼はしないわよ?」

「前世は機械オンチだったからな、お前」

「誰から聞いたのよ!」

「え、イリヤとクロだけど?」

「あの子達……」

「ま、それはそれで、キュアエースからの具申だが、のび太が承諾してくれた。戦いが終わったら長期休暇取らせて、のび太んちで過ごさせるわ。子供の姿+BJで」

「いいバツね」

「お前はどうする?」

「時空管理局の再編の仕事があるから、今回はパスするわ。21年のコミケの時は呼びなさい。BJ姿で売り子してあげる」

「お前、絶対ツッコまれるぞ」

「それは自覚してるわ」

「ま、なのはには伝えたから、そっちにはフェイトになんとかしてもらって」

「フェイトのやつにラグナメイルでも与えっか?」

「ビルキスでも?」

「そそ」

「ヴィルキスだっけ、正しい発音」

「ええ。リコにはあれを与えといて。えーと、紅いやつ」

「ああ、あれか。了解。焔龍號だったっけ。あいつ、モフルンとみらいがいないとプリキュアになれねぇのが不便だから、今度乗せるわ」

「どうするの?」

「空中元素固定でヴィルキスと焔龍號を作るさ。あれの構造はフェイトがハマってたから、資料があるし」

「意外にあの子も見てるのね」

「そりゃ、アニメは普通に見るだろ。俺も話を合わせるために見まくった時期あるしな」

「それじゃ、なのはの件は頼んだわよ?」

「わかった。暇になったら、のび太んちに来いよ」

「休暇取れたら、ね。イリヤとクロによろしく」


はやてはその言付けを終え、通信を切る。世間話のようだが、組織の管理職としての苦労を共有しているため、なのはのような『問題児』は頭を悩ます問題なのである。

「やれやれ。あのバカは妙に問題起こしやがる」

「あの子は良くも悪くも時空管理局の教育に慣れてたからね。それが難点だね」

「あの一家は超人だしな。凡人、あるいは努力家の苦労が分からんのはサガだな…」

のび太にもそう評されるのが高町家の不幸である。一家のほぼ全員が超人で、比較的に凡人である母親の桃子もケーキ屋を切り盛りしているため、ある意味では凡人ではないし、若さを保っている。これも謎だ。最も、三兄弟全員の母親が彼女とも限らない世界もあるため、なのはは世界線によってはややこしいことになっていると言える。

「あの子、あたしみたいに力を持つ前は凡人だったとかいうけど、凡人じゃない気が」

「お前が言うと説得力あるな、ドリーム」

ドリーム/のぞみはプリキュアになる前、私立の学校には通っていた身でありながらも落ちこぼれに分類される生徒だったため、なのはの『平凡』という文句を信じていなかった一人である。運動部で鳴らしたなぎさや咲と違い、自分は『落ちこぼれ』だという自覚があったからだ。

「現役時代、部活追い出され女王で、手芸部と演劇部は三日でクビになりましたからね。プリキュアになってからですよ、自信持てたの」

「お前の才能は平時じゃ発揮できないものだったしな」

のぞみは歴代のピンクのプリキュアの中でも、戦うことで自分に自信をつけた最初のプリキュアだと自負している。転生しても戦いに身を投じたのも、そこに理由があるので、なのはの『平凡』という謳い文句を信用していなかった。なんとも世知辛い。プリキュアとしては顔役になるほどの存在感がある彼女も、現役時代以前は『落ちこぼれ』だったので、なのはは魔法に出会う以前から才能を持つのに、平凡と宣う点は我慢ならなかったらしい。

「僕も一般人だと言い難いから言えた筋じゃ無いかもしれないけど、なのはちゃんはこっちの『逸般人』だからね」

「それは同意だぜ。あたしも現役時代は体育以外はなぁ…」

「音楽はどうなのさ、メロディ」

「離れてた時期あるからなー。今は歌が上達したが、現役時代の歌唱力は聞かないでくれ。ピアニストだったしよ…」

「あたしも歌は駄目でさ…」

「お前の唯一の弱点だもんな、ハート」

「そーなんだよ。転生でよくなると思ってたのになー…」

キュアハートはジャイアンに例えられるほどの音痴であるため、そこはエアギターができるくらいの音感があるドリームのほうが上である。キュアハートは戦闘では最高クラスに強いが、歴代最悪レベルの音痴なのだ。

「お前、帰ったら大会のチームを率いるんだろ?試合、見に行くぜ」

「一年くらいで立て直せないのは言ってあるよ。チームの完全な立て直しはあたしの次の代に任すよ」

キュアハートは帰ったら、黒森峰女学園の新隊長としての仕事を抱えている。そこが彼女の複雑な立場を表している。最も、逸見エリカの立場になったとたん、短期間で戦車のあれこれを飲み込み、史実と異なり、西住みほ(四葉ありす)と互角に渡り合うなどの善戦を見せたなど、エリカ本来の人格の才覚を越えた行いをやってのけているが。

「その割に人気あるって聞いたぞ、お前」

「この体の本来の人格の子は癇癪持ちで、高慢なとこあったから嫌われやすかったけど、あたしなりに自由にやったから」

逸見エリカは癇癪持ちであったため、そこを突かれると脆かった。だが、相田マナは博愛精神を持つ上、天性のカリスマであるため、逆に部内に信者がいるほどで、その世界におけるまほからは『吹っ切れた』と認識されていたりする。

「で、エリカの声は出せるな?」

「トーンを低くすれば。ハッタリに丁度いいからね、あの声。電話とかで脅すのに使えると思うよ」

ハートとメロディは自分たちの声のトーンを低くすれば、『脅し』に使える事は認識しており、メロディはその声を上層部の恫喝に使う腹づもりであった。

「メロディ、お前がぶち切れた演技すると、アネモネか、むぎのんになるだろ」

「それいうなよなー」

「事実だろ」

黒江の指摘の通り、シャーリーは『ブチ切れた感じ』を出すと、声色が麦野沈利かアネモネになってしまう。色々な都合ではあるが、針が振り切れた場合は麦野沈利寄りになる。

「お前、原子崩し撃てるんじゃね」

「試してないけどな。よい子の教育に良くねぇし、あいつの口調。おしおきには良いかもな」

「ま、キュアビートもクランの大人モードの声色出せるから、キュアマーチのことで動いてもらったぜ」

「ああ。話に聞いた、やたらイキってる箒の幼馴染のことか」

「一輝にも小僧扱いされてたぞ」

「…一輝、まだ15だろ」

箒は聖闘士になった都合上、一輝と面識があり、迎えに来た時に一輝が一夏を『小僧』呼ばわりしたというが、一輝は聖戦終了時に15歳で、実は見かけより若い。雰囲気が老成している上、声色も亡きシュバルツ・ブルーダーに酷似しているため、年相応には見られない。圭子をして、実年齢とかけ離れていると言わしめるほどの風格は何かとネタにされている。

「あいつが小僧とかいうと、それだけでハッタリ効くんだよ。175cmある上、声に風格があるから、あいつが15なんて、初見で見抜ける奴いるか?」

黒江もそうだったらしく、今では、聖闘士としての先輩でもある一輝へ敬意を払っている節がある。黒江が自分から敬意を持つ者は珍しいが、一輝はその不死身ぶりが有名である上、神レベルの攻撃でも必ず蘇ることから、一輝は現在の先代黄金聖闘士の戦死時点で、聖域最強クラスの実力者と言える。

「次元によっては、一輝の奴、神聖衣を超える『真・聖衣』まで到達しちまうらしいからな。伸び代凄すぎだぜ」

「なんか途方も無い世界だなぁ」

「青銅聖闘士から黄金になった者が到達可能な領域らしいが、そこまでいくと、俺たちみたいに『神力』を扱える。人を超えた証だよ。義務、絶望、信頼、責務、守護、悔恨、後悔、鉄則。それらすべてを超えた先にある世界だ」

黒江はナインセンシズをそれらを超え、破壊した末に目覚める神域と説明する。エイトセンシズすら不可能だった『アテナエクスクラメーションをも超える力』を扱える領域であるという。つまり単独で並の黄金聖闘士数人分を凌駕するわけだ。

「先輩、なんかピンと来ませんよ」

「それでも、のび太とゴルゴは生き残れるから、カタログスペックや謳い文句は当てにするなってことだよ」

「すごすぎですよ、それ」

「ま、ティターン神族は黄金聖闘士でも本当は瞬殺可能だっていうことだし、 それに対抗する力となれば、な。それも避ける異能生存体ってのは極稀な資質なんだよ」

「ぼくがゴツゴーシュンジクを一回でも飲めば、宝くじの一等が当たるし、ロトくじもあたるのは知ってるね?。そして、戦闘になれば普通に、致命傷を絶対に負わない。どんな攻撃でもね。…と、まぁ、こんな感じさ」

「すっご〜い。ところで先輩。マーチの事ですけど…」

「口裏合わせを頼んどいたんだよ、千冬に。ビートを使って妙な口出しさせないようにしたが、辻褄を合わせねぇといかんだろ」

「みんな、そういうのに使えていいなー。あたしはただのレントン・サーストンか。どこぞの忍者二世だよー」

「お前、その声のほーが妖精さん的意味じゃ意表突いてるぞ?」

「それはそーですけどー」


「あたしはそういうのないからなー。」

ピーチはそのような覚えがないので、ある意味では寂しいようだ。最も、なぎさも成人後の声色ならば、某戦術予報士じみたものであるのだが…。

「初代のなぎさも某戦術予報士に似た声だしなー。ま、ホワイトも…」

「黒江さん。それは勘弁してくれ」

「ありそうだからな」

「うん…。そうなっちまったら殴りたくなるし、勢いよく殴る自信ある」

「気持ちわかるぞ」

「サンキュー」

「あ、なるほどー」

「ピーチ、お前。知ってたな?」

「ご、ごめん。アニメ、見ててさ…」


黒江が言及したのは『C.C』がどこかでギアスから開放され、別の存在に転生する世界の可能性であった。ありえることだが、C.Cが雪城ほのかに転生した場合、色々な意味でややこしい関係になるのは目に見えている。前世を思い出したのか、ムスッとしてしまうメロディ。

「メロディ、よっぽど腹に据えかねてたんだね、ゼロレクイエム…」

「たりめーだ!あんニャロ共、今度会ったら……」

ルルーシュ・ランペルージと枢木スザクをぶん殴りたいと度々言及しているキュアメロディ。紅月カレンとして、二人が共有した『ゼロレクイエム』の秘密は未だに納得できないという心中を見せる。

「さて、敵は退いたな。そろそろ。敵の打撃艦隊がこっちの主力とエンゲージするはずだ。乱戦に持ちこめと司令部には言ってあるが……。」


――海戦はいよいよ造船工学の生み出した大海獣の宴の時間が近づく。黒江とキュアハートのMSのレーダーには、連合艦隊と敵の打撃艦隊が会敵し合う距離になったことを示す光点が光っており、連合艦隊と敵打撃艦隊の第一ラウンドがいよいよ始まることが示されていた。

「艦隊は単縦陣形になり始めてる。打ち合いが始まろうとしてるな。上空援護に入るぞ」

黒江達は艦隊の上空に戻る。その間に連合艦隊は敵打撃艦隊と一戦を交えようとしていた。






――連合艦隊旗艦『富士』――

『総員戦闘配置、砲雷撃戦用意!!』

この頃になると、扶桑独自の号令は使われなくなり、代わりに地球連邦軍で使われる用語が輸入され、号令の簡略化が進んでいた。軍隊用語については共同作戦の都合上、地球連邦軍のものが優先されたのである。打撃艦隊は砲撃陣形を組み、敵艦隊と一戦を交える準備に入る。連合艦隊も敵も最初は20000m台で撃ち合うのはお互いに読んでいる。そのため、机上の空論であるアウトレンジ攻撃ではなく、最悪、至近距離での撃ち合いも考えられる。連合艦隊は自衛隊の艦艇を隊列から外し、直接打撃戦に耐えられる艦艇を揃え、撃ち合いに臨む。21世紀世界の住民にとっては映画の中の話でしかない『砲撃戦』。その先頭は大和型戦艦の後継者『三笠型戦艦』。600mを超える空前の巨艦の勇姿は日本が求めた『無敵の巨艦』の具現化であった。

『各艦は敵を確実に落伍されたし。砲撃準備!』

『敵艦見ゆ!距離は25000!」

『23000で砲撃開始だ、56cm砲ならば、通常の艦にその距離でも打撃を与えられる』

富士の56cm砲はこの時点で最大最強の艦砲である。3発もあれば、通常サイズの戦艦は戦闘不能に陥るほどとされ、播磨型を上回る砲力を期待されていた。が、意外にも敵が先手を打った。

『敵艦、発砲!』

「ほう。46cm砲に格上げしたか。だが、この距離ではそうそう当たらん」

三笠型の巨体は狙いやすいが、距離の誤認も起こしやすい効果もある。また、三笠型の装甲は56cm砲に耐えるようにできているため、一種の弾除け的役目も負っている。

「敵弾、外れました」

「そんなものだろう。砲術長、23000になったらご挨拶と行く。21000で全艦砲撃開始を下令する」

「ハッ」

小沢治三郎は慎重に事を運ぶ。史実でアウトレンジを行い、失敗したことが伝わったためか、慎重策を選ぶ。敵弾はどんどん飛んでくるが、敵にとっては初めての18インチ砲なので、照準修正に手間取っていた。連合艦隊が予想以上の高速であるため、微調整が難しいのだ。


「距離は?」

「23500であります、長官」

「全主砲塔の自動追尾装置、オン」

「自動追尾、開始!弾種、徹甲!」

三笠型『富士』の主砲塔が一斉に自動追尾で照準を合わせられた。CICからの遠隔操作である。そして、徹甲弾(2.5トン超えの重量を持つ徹甲弾)が装填され、仰角が自動調整される。

『撃ち方よーい』

『よーい!』

三笠型の主砲の準備が整って数分後、火蓋は切られる。

『撃ちー方、始め!』

号令がかかり、三笠型の斉射が行われた。小沢曰く、『ご挨拶』の一撃だ。砲弾は敵艦隊の周囲に多くが着弾し、敵艦を大いに動揺せしめる。その内の一発が敵アイオワ級戦艦のバイタルパートに命中し、一発で砲塔の一つをスクラップへと変えた。両用砲も余波でいくつかが吹き飛ぶ。

「一発命中、アイオワ級戦艦の砲塔に命中した模様」

「さすがはアメリカ艦。今の一撃で弾薬庫に引火せんか」

「砲塔をスクラップに変えただけですが、さすがの威力です」

「次弾装填だ。今度はどれかに二発以上当ててみせよ」

「ハッ」

CICでの緊張感あふれるやりとり。三笠型の56cm砲にも易易と屈しないところがアメリカ艦らしい頑強さだろう。連合艦隊の主力戦艦は最低でも50口径46cm砲対応防御であるため、体力勝負には自信があった。そのため、小沢司令部も余裕の一言であった。

「連合艦隊全艦、砲撃開始!」

「ハッ!!」

連合艦隊の全主力戦艦が一斉に砲撃を行い始める。雷のような轟音が断続的に響き、赤々と爆炎が煌めき、発砲煙が派手にたなびく。映画の一コマのようだが、古式の海戦の光景である。そして、20000m遥かの敵艦も撃ち返し、打撃戦が本格化する。三笠型はその巨体故に狙われまくるが、そのあまりに強大な装甲の前に尽くの敵弾は弾き返される。敵は20インチ級の砲が敵にある事の衝撃に打ち震えていることだろう。

「敵アイオワ級戦艦、炎上!クイーンエリザベスU号の砲弾が煙突をなぎ倒した模様!」

「でかした!どの敵艦だ」

「敵の七番艦の模様!」

「各艦、敵七番艦を狙え、落伍させろ!」

連合艦隊は自由リベリオンの要請もあり、敵艦の鹵獲も目的に含めていた。従って、隊列から落伍をさせることを優先したため、後方の敵艦から狙うという変則的戦法でセオリーの裏をかいた。アイオワ級戦艦が後列にいたのか、格上に狙われたことで設計時の弱点を次々と露呈していく。

「あ、敵艦が一隻、大きく傾斜していきます」

「砲弾が水線下でもぶち抜いたな」

「そのようです」

一隻の敵艦が落伍し、傾斜していく。56cm砲の水中弾が喫水線下に大穴を穿ち、それで浮力バランスを崩したのだろう。ダメコンを放棄するほどの大穴らしく、船足も止まり、戦闘続行不可能になった様子をモニターが映している。

「敵艦隊、突撃を継続。変針していきます」

「全艦、敵艦の頭を抑えろ。追うぞ」

「面舵いっぱーい!」

敵の平均速度は28ノット前後だが、味方は30ノットを超える。そこが連合艦隊の読みが正しかった表れであり、連合艦隊の快速性と耐弾性の両立の証であった。艦隊戦はお互いに接近戦に移行し始める。近代装備の云々の介在が殆どない純粋な砲撃戦は体力勝負でもあるため、消耗戦になる。連合艦隊が大艦巨砲主義を極めたのは、まさにこの局面のためである。

「アイオワ級戦艦を蹴散らすぞ、各艦は狙いを定めろ!」

連合艦隊と敵はお互いに艦隊規模での統制射撃を敢行した。電子装備と砲兵の練度差で味方が有利であり、アイオワ級戦艦で固められた後列部隊は10分ほどで反撃能力の半分を喪失する失態に終わる。火力に優る連合艦隊に蜂の巣にされたからだ。連合艦隊も相応に被弾はするが、装甲に守られ、細かい装備品は失うものの、バイタルパートに損傷はない。

「アイオワ級戦艦部隊を脱落させろ、撃てぇ!!」

大和が放ったこの斉射はラッキーなことに、アイオワ級戦艦のバイタルパートを貫通し、船体の内部で炸裂。弾薬庫に誘爆して大爆発とともに、アイオワ級の一隻の船体を真っ二つに引き裂く。今次海戦初の戦果であった。

「大和がやりました!!」

「うむ、日本側も溜飲が下がる思いだろう。これが古式の海の戦だ」

「超甲巡以下、護衛艦隊も砲撃を開始します!!」

海戦の華と讃えられた大海獣の宴。大和型戦艦の血族がその中心にいる事は日本側にとっては夢の光景であり、図らずも扶桑の国力の誇示に繋がっている。そして、その中にイギリス系の戦艦が混じっている事はあまり注目されず、むしろ、扶桑の秘密兵器『三笠型戦艦』の巨体とそれに見合わぬ快速と敏捷性がニュースになった。大和型戦艦の血族の本来の存在意義は『敵艦を薙ぎ倒す事』。それを現実にする扶桑皇国は大日本帝国の比でない国力がある。その証明であった。







――海戦は華々しくなるが、その裏で史実米軍機に淘汰された国産ジェット機を守ろうとする動きもあった。当時はメッサーシュミットMe262のパイロン懸架式がジェットエンジンの配置としてベターと信じられており、扶桑の『橘花』と『火龍』はメッサーシュミットMe262の模倣品であった。だが、模倣品なりに改善に心血を注いでいた者たちも多く、橘花は火龍とライン共有の都合で後退翼へ改良する動きがあったし、火龍は陸上邀撃機/襲撃機として、装備部隊が編成予定であった。だが、その努力をF-86戦闘機以降の次世代ジェット戦闘機が無にしてしまった。対重爆邀撃機としても、推力増強装置を標準装備する『F-104』と『ドラケン』の前には全く及ばないため、次期戦闘機(攻撃機)として量産される芽は完全に摘まれてしまった。一縷の望みをかけて、試作機を先行装備していた部隊がクーデター軍に与し、旧来型攻撃機を圧倒したものの、『ドラケン』部隊に完全に圧倒され、数機が生き延びるのみの有様であったことで技術者らの中には落胆の声が多かったが、結果的に胴体内蔵式ジェットエンジン機の優位性が発揮されたため、海軍系航空参謀の先見性の無さがやり玉に挙げられたが、時代相応の見識では最適解とされていたのと、胴体内蔵式はカールスラントが試作中であった最高機密であり、扶桑の海軍技官の知る由もないことだったことと弁護がなされたが、海軍技官らは結果的に自分らの見識が『未来に否定された』形であったことに強い衝撃を受け、少なからずの技師が他業種へ転じていく。これが国産戦闘機(脚)の開発力に影響が生じ、扶桑にも、この時代ほどの開発力は後世に無くなっていく理由であった。現場の強い要望により、開発ノウハウ維持のためもあり、震電のジェット化が承認され、第二世代宮藤理論の具現化に多大な予算が費やされるのである。これは第三世代宮藤理論の実用化の際も同様であり、宮藤理論の次世代理論の登場は『需要』が生ずる有事の際になされるのである。その序章こそは1945年に訪れた、第一世代理論の限界であったのである。――










――次元震パニックで予測された出来事の一つに『同位体同士の出会い』がある。それはウィッチ達のケースで最初に実現した。大方の予想通り、圭子以外はほぼ同位の存在であった。次にシンフォギア装者。これもほぼ同位の存在であり、シンフォギア世界で知られていたとある法則を覆す結果(同一人物の邂逅は起こり得ない)となった。プリキュア達はお互いに平行世界の存在であったケースが多いが、様々な要因で『同一人物の邂逅』は起こった。キュアアクアとキュアミントを連れてくる過程で出会った『平行世界の夢原のぞみ』がそうであった。彼女は平行世界の自分を救うためとは言え、仲間がその世界に赴くことに難色を示した。キュアフェリーチェはこの説得に労力を費やし、分身ハンマーを使い、その世界に水無月かれんと秋元こまちの分身を作ってまで、二人を連れてきたわけだ。その関係上、フェリーチェはデザリアム戦役以後は気苦労が増えたわけで、裏方仕事も多くなった。また、ドリームとは共に行動する内に姉妹のような関係になったと、のび太にも公言している。そこも彼女自身の同位体との差であった。また、元の世界での因果と切り離された結果、『キュアフェリーチェ』という、他の次元での自分から独立した存在となったことで、現役時代から気質が変化し、荒い言葉づかいも増加している――


――空母――

「フェリーチェ、あなた、現役時代から変わったって言われない?」

「のび太のところで20年近く過ごしましたから。それに、今はバリバリの武闘派になったと自負してます」

「20年ねぇ…。みらいが愚痴ってたわよ」

「仕方ないですよ、みらいは五年ほど、リコや私と会えない時間がありましたから」

「あなたは元から、それ以上は年取らないものね」

「ええ、まぁ」

キュアルージュはここのところは裏方に周り、のび太と共に、のぞみと、地球人へ転生した『ココ』(小々田コージ)の結婚の下準備をしていたり、個人的に勉学と特訓に励んでいた。後輩のキュアマーメイドの補佐に回ったりもしているが、空母で後詰めとして待機していた。

「あ、戦艦部隊が戦いを始めたようです」

「ドリーム達は?」

「上空援護に回っているようです」

「戦艦かー…。大昔の産物って思ってたけど、こうやって映像で見ることになるなんてね…」

「それは皆、そうですよ。私も『魔法つかい』のはずが、どこをどーしたのか、職業軍人ですからね」

立場上、空母のCICに出入りができる二人は戦況表示モニターで戦艦の勇壮な砲撃の様子を確認する。大和型の威容がこれでもかと拝めるわけで、日本戦艦の造形美を堪能(?)する。

「戦艦大和、いや、あの艦橋だと宇宙戦艦ヤマトのほーか…。それで喧嘩ねぇ」

「敵はアメリカですからね。これでちょうどいいくらいですよ」

「どこが…」

呆れるルージュだが、実際に、日本連邦が如何に技術でチートをしようと、それを捻じ伏せようとするほどの物量を送り込めるため、フェリーチェの言うことは的外れではない。日本では軍隊への冷遇傾向が強いため、従軍記章の新規発行にすら異論がある上、軍隊へのネガティブキャンペーンすらされているため、扶桑軍はウィッチの新規志願数は絶望的とさえ言われるほどの悪影響が生じている他、空軍部隊は自分で戦果を公表しないと、日本の一般人に『虚報』扱いされるなど、不利益も大きい。戦争を国民に『感じさせない』ための日本の努力は扶桑の戦時動員に支障を生じさせたと言え、扶桑ウィッチの世代交代の遅延を決定的にさせた一因とされた。その償いか、従軍記章の新規創設を認可し、難色を示していた金鵄勲章の新規授与の再開を容認する。それは事変世代への労い、政策に振り回された45年当時の新兵や古参への償いと言えた。



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