外伝その421『超大和型戦艦の威力』


――海戦は総合的に地力で勝る連合艦隊が次第に優勢となり始める。モンタナ級戦艦は防御力重視の設計であったが、それを更に打ち破るために開発された51cm砲は期待通りの破壊力を発揮していた――


「すげぇ。敵の戦艦が燃えてやがるぜ」

「51cm砲を造らせて正解だな。45口径46cmのままじゃ苦戦したろうし」

モンタナ級戦艦の一隻が51cm砲弾にバイタルパートを貫通され、可燃性の塗装か何かに引火したか、大火災を引き起こした。

「綺麗サッパリ貫通するなぁ」

「そりゃ、大和型を超える口径と重さの弾丸がマッハ3くらいでかっ飛べばな」

超大和型戦艦の第一陣『播磨型戦艦』はこの時、三隻が実戦に投入されていた。『手頃なサイズ』の超大和型として六番艦までの建造が予定されているが、ニューレインボープランへの切り替えで変更の見込みであった。日本は扶桑が大和型とその系譜に属する戦艦を多数保有する意義を自らの尺度では推し量れなかったが、リベリオンが史実の大和型以上の大艦を多数用意していた事が判明したため、ようやく、その理由を把握した。扶桑といえど、大和型以上の大戦艦は同時に多数は作れない。地球連邦軍に委託し、一隻あたりの質で相手を超えるしか選択肢がない。モンタナ級戦艦は紀伊型戦艦以前の型式を寄せ付けない戦闘力を持ちつつ、量産されてくるからで、大和型であろうと原型のままでは苦戦は必至である事から、さらなる強化型の開発は必要だったのである。また、日本側から『日本の装甲板は欧米製装甲板の半分の防弾性能しかない』という怪情報も出回った事から、信濃と甲斐で目論見られた『装甲厚の削減』(軽量化のために10ミリ薄くする計画)は潰えた。扶桑は風評被害対策も兼ねて、さらなる防御力強化のために未来技術での作り変えや新造が行われたのだ。

「超大和型って、風評被害対策で用意させたんだろ?あたしらリベリオン人からすりゃ、馬鹿げたサイズだぜ。空母でもないのに」

「日本側が戦艦を時代遅れって言うからさ。それであんなのが生まれたんだが、アイテール級空母と同サイズのも用意中だからな。それは宇宙戦艦規格で造られてるから、日本の望む性能がある。SFの見すぎなんだよ、連中は」

「言えてるぜ。同位体が見たら腰抜かすぜ?あの近代武装」

「ミサイルランチャー、CIWS、RAMだもんな。パルスレーザーにCIWSは置き換えが検討中だ」

「21世紀でも現役で通用するぜ?まったくもって、これこそ過剰性能だぜ」

「あながち、そうはいえんよ。航空機がジェット化すりゃ、まだまだ増強の余地がある。」

超大和型戦艦と近代化された大和型はまさに世界最強の戦艦部隊であった。それと互角に渡り合える艦隊はそうはなく、モンタナ級戦艦やアイオワ級以外では、ナチスの大戦艦たちが挙げられる。黒江をして『SFの見すぎ』というのは、超大和型の保有につけられた条件が『史実坊ノ岬沖海戦と同等以上の敵航空戦力を単艦で撃退する対空力と対潜能力があること』という、この当時の軍事常識から大きく逸脱したものであり、計画を潰すために突きつけられた無理難題であった。これは大砲屋で知られる宇垣纏をして『馬鹿げている』と言わしめたほどであったが、扶桑が未来技術のフル活用であっさりなし得てしまい、条件を達成してしまったので、引っ込みがつかなくなったのである。(設置されたCICの能力がいずも型護衛艦やまや型護衛艦をも上回る事も大きいが)播磨型の装甲である超合金ニューZによる耐弾性能は凄まじく、40cm砲弾の近距離からの20発の被弾にもびくともしない。それは日本が求めた『無敵の戦艦』の偶像の具現化だが、他国からはあまりに単艦性能が高すぎるために『過剰性能』と揶揄されている。だが、戦艦に対多数の交戦能力と万能性を求める日本側としては、『並のイージス艦を上回る能力がなければ、戦艦を敢えて保有する必要はない』というシビアな結論があり、それを黙らせるための過剰性能でもあった。

「日本はなんつってんだ?あの戦艦」

「やれとはいったが、ここまでやれと誰が言ったって腰を抜かしてる。連中は80年代の頃のアイオワと同程度の能力を想定していたみたいだしな」

「そりゃな。戦艦を移動砲台って、自分達の常識でたかをくくってたら、史実の大和の上位艦が出てきたんじゃ、連中の顎は外れるよ」

大和を全てで上回る大戦艦の相次ぐ就役は日本国の関係当局を震撼させた。扶桑の余裕ある財力の象徴と取られたからだ。史実の大和を圧倒的に上回る戦闘システムを持ち、なおかつ、主砲口径でも勝る。そんな化け物が相次いで就役し、八八艦隊型以前の戦艦たちを代替し始めた。ウィッチ世界特有の事情を鑑みても、純粋な砲台目的に供するのなら、二桁も維持する必要はない。扶桑皇国は『艦隊決戦』のためにそれらを整備したのだ。紀伊型戦艦に代わるワークホースとして。

「おお、ここまで衝撃が来るたぁ…。流石は51cm。富士ほどじゃないが、大和よりすげえや」

一同は上空の直掩に移っているが、流石にこんな艦隊決戦の場に航空戦力を介在させる野暮な真似はしないようで、空中は安全な見学の場も同然であった。

「先輩〜」

「お、休憩を終えてきたか。って……その包帯だが…どうした?」

「あたしが巻いてあげたんですよ。敵とやりあったみたいで」

「実はさっき、同期の奴に会って。敵側についてたんで、ステゴロでやりあったんです」

「そうか。今後、そういうケースは増えてくだろうから、のぞみは覚悟しとけ」

「了解」

キュアドリームとキュアハートは地上空母の情報を伝えられた後、ドリームが戦いで切った額などに応急処置を施され、ひとまずの休憩を挟んで、戦線に復帰した。この時は二人とも最強形態だ。

「凄いですね、この光景……」

「ユトランド沖海戦以来の大海戦だ。よく見とけ。古典的な水上戦闘の花形を」

黒江はZプルトニウス越しにそう言う。航空戦力が介在しない大艦隊同士の大海戦は確かにユトランド沖海戦以来であった。戦闘の様相そのものも古典的な水上戦闘のいい見本と言えるもので、フレッチャー級駆逐艦がミサイルで撃退されたり、陽炎型駆逐艦や夕雲型駆逐艦が敵戦艦の両用砲の餌食になったりするが、連合艦隊の主力艦艇そのものは未だ健在である。ややあって、敵戦艦部隊の最後尾になっていたアイオワ級戦艦の一隻が複数の51cm砲弾に各部を撃ち抜かれ、大爆発とともに船体が見事にへし折れ、轟沈した。弾薬庫に飛び込んだ数発が大爆発を起こしたのである。

「フッドみてーに轟沈するなぁ、アイオワ」

「なんで、あんなあっさり」

「弾薬庫に弾が入り込んだんだろ。フッドもそれで沈没したしな。アイオワは自分の主砲にも耐えられんからな。その点、モンタナは改良型で大和とほぼ同等だから、体力勝負になる」

「お互いに第一次大戦中の頃の決戦距離になってるから、敵はモンタナで凌ぐつもりだね」

「大和の系譜相手に、アイオワでこの距離は死に行くようなもんだしな。今のアイオワには数千人が乗ってたろうから、リベリオンは前途ある若者を数千人失ったことになる」

アイオワ級戦艦は大和やそれ以上の戦艦に対しての安全距離は小さい。その見本のように、先程の姉妹艦は轟沈していった。戦艦の運用経費は高額であるが、後年の原子力空母ほどではない。一隻あたり、数千人が死のうとも、どうということはない。それがリベリオン本国側の冷徹な判断であった。

「先輩、実況中継してどうするんですか?」

「お前らは海軍を知らんだろ?俺は統括官になった後、海自の幹部学校に通ったり、乗艦してるからな」

「そりゃそうですけど。あたしだって、欧州で長門に乗った経験が〜……」

「乗っただけだろ?その類のなら、俺達の代はみんながあるよ」

「そいやそうだったぁ〜…」

黒江の解説を聞く形で、一同(のび太、シャーリー、キュアドリーム、キュアハート)は任務を遂行しているわけだが、ドリームは『錦として、欧州で長門に乗艦した記憶』を引き合いに出すが、補給のために着艦して客人扱いされただけだ。対する黒江は自衛隊で『統括官』への拝命後に海自の幹部学校に通って講義を聴講する、統括官として護衛艦に正式に乗艦して勤務していた経験を持つため、その気になれば海軍への転科も夢ではない。黒江は教え方も上手く、航空自衛隊でもすぐにその方面で頭角を現した。教導の上手さに目をつけた教導群が一本釣りを繰り返し、2011年頃に内定した。だが、扶桑との交渉を動かすための材料として、統括官就任が翌年に決定されたため、教導群所属は一時の事に終わった。教導群の懇願もあり、二年は教導群主体の勤務形態ではあったが、正式な所属は半年に満たない。黒江は自衛隊内部では『旧軍人出身』と同義という時代錯誤の存在であるが、かつては次期幕僚長と目された人物の同位体なために『扱いにくい』とされつつも、現場での人気がある。そのため。思い込みと入れ知恵で黒江の幕僚長就任への道を閉ざした革新政権はクーデターを恐れ、窓際ポストも同然の職(彼らの認識)に追いやったのだが、連邦の成立で統括官という職が重要ポストになった事で、長期政権化を恐れる革新政党と警察系防衛官僚は黒江の長期政権化を政権批判に利用しようとしたが、代えるべき次のポストがないのと、他の扶桑出身自衛官は黒江ほどの出世は果たしていないため、いずれも後任にできないという事情により、黒江は統括官として在任して八年目。長期政権である。(統括官という職そのものが正規の指揮幕僚課程を修了しながら、幕僚監部入りできなくなった黒江への一種の救済措置であったためもある)

「ま、綾香さんは子供の頃の僕でも分かるように説明してくれるから、聞いといたほうがいって」

「あれ、先輩。その手の手腕あるんですか」

「俺は元々がテスパイだったからな。解説が上手いって、防大や陸士の同期の連中に言われてる。それで教導群にもいたことがある。一時期だけどな」

「先輩、自衛隊で偉い立場なんですか?」

「ああ。将官になった。俺はスピード出世だったからな。それで扶桑側で大佐待遇に留められなくなったから、一悶着あってな。准将になった。この作戦が終われば、俺、智子、ケイ、武子は中将に特進して、子爵だそうだ」

「叙爵ですか!?」

「お上が俺らを気に入ってるし、華族の新陳代謝を気にしておられる。若い俺らが叙爵されれば、日本も文句は言えんよ」

「いいなー。あたしなんて、夢のまた夢ですよ。当主は姉貴(この場合は中島小鷹を指す)だし」

「俺だって、家の当主は兄貴だぜ。俺達は手柄立てりゃ、子爵までは道が開けてるからな」

ウィッチ世界では、ウィッチに与えられる最高の名誉として、終身華族(外国での一代貴族に相当)に叙爵されるという事項が明治期に決められたが、次の大正期に『ウィッチの一族に連続で国家功労者が生じた場合に備える』という名目で永世華族になる道ができた。功ある一般人が華族になることはブリタニアなどを手本にして設けられた制度である。日本の華族と違い、扶桑華族は一族の誰かどうかが軍人か赤十字奉仕をする事が求められるという特徴があり、昭和期には名誉のみで実権を伴わない階級へとなりつつあった(制度の廃止がされなかったのも、明治期にあった特権が昭和期には半分以上が廃されていたり、華族社会が日本での虚飾に満ちたものではなく、欧米同様の血を流すのを伴うものであった事によるものも理由だ)事で日本も手出しをやめたのだ。

「日本は嫌な顔しません?」

「日本と違って、一族の誰かどうかがに軍人か赤十字への奉仕が義務付けられてるから、向こうも腰抜かしたよ。欧州じみてるって。だから、困惑したんだ。一般階級でも、官吏や軍人として功を挙げれば、終身華族(一代貴族)、場合によれば永世華族に出世できる事でもあるからな。日本だと、武家と公家、一般階級出身で対立があったが、扶桑は元の生まれに関わず、軍人か赤十字で汗水たらす事が義務だから、連帯感があるからな。だから、黒田家が分家の末端のあいつに継がせることにしたんだよ。針の筵だったからな」

形の上では、日本にも新華族という者がいたのだが、家柄などを重視する日本では『新参者』と蔑まれる立場であったため、日本での華族制度は半ば自壊していった。だが、扶桑ではお互いに血を流しあって構築していった制度なため、昭和期には特権の段階的廃止で名誉階級化が進んでいたものの、尊敬を抱かれる階級であり、日本の華族よりも本質的には英国の『爵位』に近い。また、黒田家が嫡男を廃嫡し、その代わりに分家の息女を添えた事は日本からすれば信じられない事で、黒田の御家騒動で扶桑での華族の維持に必要な義務としての兵役がクローズアップされたわけだ。扶桑の華族維持の涙苦しい努力を目の当たりにした彼らは気まずくなり、華族制度の存廃から手を引き、軍隊の軍縮や人員整理に関心を移す。この行為が扶桑中堅ウィッチの反感を買い、クーデターに至るわけで、クーデターの鎮圧は扶桑ウィッチ社会の衰退のきっかけとなる。クーデター鎮圧後の粛清人事が国民の萎縮を招いたからで、太平洋戦争での実質的な数的主力は義勇ウィッチとなる。Gウィッチの酷使と、ウィッチ社会の衰退は日本の先入観による扶桑への介入も原因にある。Gウィッチはこれからの戦乱における酷使の対価としての『特権』を認められるわけだが、ダイ・アナザー・デイから既にそれは始まっていた。

「その流れで、ウィッチに許されてた社会的特権が徐々に廃止されることになったが、俺達は例外になる見込みだ。酷使する事への対価だそうだ。だが、これは当面は発表を控えるように言ってある」

「あたしらは特権を行使できるのに、一般ウィッチの社会的特権が段階的にも無くなる流れなんてのは不味いですからね」

「特権ったって、優先的に休暇が得られるとか、給料がいいとか、最新鋭機の優先配備、自由勤務権が公式に付与されるだけだがな。ミーナの一件で、『次の世代』からは階級の昇進を遅くするそうだし、今の速度の昇進に預かれるのは芳佳の代までになる。それに反発して、クーデター起こしたら、自分で自分の首を締めるようなもんなんだがな…」

扶桑は軍規改定までに入隊済みのウィッチの昇進速度の維持に配慮し、改定後の軍規対象を芳佳らの更に次の代からにしたが、早合点した層がクーデターを起こしたため、芳佳の代以前の者にも適応されることになる。つまり、46年に佐官と尉官になっていた世代の昇進速度が全体的に緩められる一方、45年次に大佐であった者が規制緩和で准将へと任じられるという釣り合い取りがなされる。しかし、その一方で、せっかく育成した中堅がクーデターで多くが辺境へ追いやられたため、その代わりを義勇兵で賄うことになった事で、ウィッチ育成のノウハウが現場から失われる事が懸念されたため、ウィッチの新規募集のみは縁故採用も認められていく。黒江の懸念通り、扶桑ウィッチは自分で自分の首を絞めたことになる。

「これからどうなると思います?」

「日本はサボタージュとクーデターで介入をしようとするよ。間違いなくね。多分、君たちを酷使すればいいって考えだろうけど、君らの定年は年代的に、この時代から40年後の1980年代の半ばだからね。それまでに次の世代を見つけるのが責務だって考える人も出てくると思うよ」

「40年か……長いなぁ」

「長いようで短いもんだよ?次の世代にウィッチの公的な行き場を残さないとね。軍人への職業差別意識が持ち込まれた弊害でウィッチへの差別意識が芽生えて、それが世の中に出てきても、影響を最低限のしたいだろうし、軍の長老たちは」

この時代に芽生えたウィッチへの差別や軍への職業差別意識は1950年代後半に絶頂を迎えるが、それから間もなくしてのベトナム戦争勃発で萎み始める。のび太はその未来を予見していたと言える。なお、その次の世代である次世代ウィッチの一人であり、芳佳の子『剴子』が年頃になり、軍に入るのは60年代半ばの頃だが、ベトナム戦争はかなりの長期戦であったため、大戦経験者のキャリアの後半のかなりを占めるほどに泥沼化した。第三世代宮藤理論型ストライカーを決戦兵器として投入出来たのは1960年代の終わり。それまでの間、大戦世代が屋台骨として三度も戦線を支えたため、MATの代替役としての承認が遅れたと嘆かれたという。

「でもさ、歴史が普通の流れに近づいてるのなら、太平洋戦争が終わっても朝鮮戦争に当たる事変が起こるじゃん?それでたぶん……ベトナムだよ?地獄じゃない」

「事変とナムとの間にアルジェリア戦争も入るかもな。ティターンズとその背後にいる色んな連中のせいで、この世界の歴史は東西冷戦時代に突き進んでるんだ。太平洋戦争に勝てても、東西冷戦時代をなぞった道筋を辿る。ある意味じゃ、ティターンズよりも、その背後にいる連中のせいで東西冷戦に流れが引き戻されたのかもな。日本を覇権国家にしたくない世論を持つ21世紀世界のどこかの国か、軍隊の再興バカみたいに恐れる一部の連中か……」

「先輩、それって……」

「これは俺とのび太、ドラえもんの推測にすぎんから、公にするなよ、ドリーム。状況証拠はあれど、物的証拠はまだ乏しいからな」

黒江とのび太、ドラえもんは薄々と、ティターンズに援助を行う組織の中に『21世紀世界で日本の中興を恐れるロシア連邦、中華人民共和国』が含まれている事に気づいていた。また、日本連邦の旭日そのものが統合戦争への重大な伏線の一つとなるであろうことにも。日本連邦の成立は東西冷戦時代に確立されしパワーバランスを乱すものとして、直近の敗戦国となったロシア連邦や、日本の中興を快く思わない中華人民共和国からは特に敵視されている。その二カ国はティターンズに援助もしかねないと黒江たちは見ていたが、リベリオン軍にAK-47が出回っているらしき証拠となる鹵獲品を得たことで、半ば確信となった。とは言え、それだけでは物的証拠に乏しく、連合軍も調査中の段階である。

「下じゃ映画みたいな海戦をしてるってのに、あたしたちは政治の話かぁ」

「重大だぞ、ドリームにハート。チャイナマネーやロシアンマネーがティターンズに渡ってみろ、あいつらなら、その金でアーセナルバードやらグレイプニルやらを作りかねん。ガルダ級とゴーストができた世界の出身だしな、連中」

「あ、思い出した!先輩、連中は地上空母を!!」

「ラブリーとスネ夫君が目撃したそうです。ヘビーフォーク級やビックトレーと隊列組んでたそうで……」

「なぬ、そっちか!?ドリルミサイルでも積むつもりかよ、連中は!」

64Fに立ち塞がる、新たな強敵『地上空母』。その存在が知れ渡ったのである。連合軍の爆撃ウィッチ部隊は存在意義証明のために攻撃を開始するが、地上空母は無人機とTIMコッドを中心にする小型戦闘機を積んでおり、この時、既に先発の爆撃ウィッチ部隊を壊滅させてしまっていた。爆撃ウィッチ部隊は命と引き替えの体当たりすら敢行して攻撃を実施したが、結果は惨敗もいいところであった。

「ん、サンダーボール(統合参謀本部の暗号名)からの緊急電だ……。バカ野郎、逸りやがって!!」

「どうしたんです、先輩?」

「どっかの爆撃ウィッチ部隊がそいつにやられた。特攻もやったそうだが、壊滅だそうだ…。本部でこれから善後策の協議だそうだが、あれ相手に戦力の逐次投入はバカのやることだ。一気にカタをつけるしかない。だが、詳しい情報がないことには…」

まだ、黒江たちのもとには地上空母の推測されたスペックは通達されていない事がわかる。地上空母の存在は連合軍や連邦軍を震撼させ、たとえハッタリでも、巨大車両を空母にできるという一つの事実は連合軍と連邦軍の反攻計画を大いに狂わせ、連合軍がせっかく海で優勢になり始めたのにも関わず、それを祝えなくなったのである…。





――この海戦でウィッチは制空権維持でもなく、主に哨戒にのみ駆り出されていた。小人数のウィッチを圧倒的多数の敵機に向かわせたところで焼け石に水であるからだ。F6FやF4Uなどの新鋭機は事変当時の怪異よりも強力な火力を誇り、対実弾の防御ノウハウも失伝して久しい時代であったため、ウィッチ・ハンティングを確立させつつあったリベリオン本国軍との戦闘の矢面に立たせるわけにもいかなくなりつつあった。時空管理局の魔導師の防御すら貫通しえる『弾芯を魔導殺しの純鉄で精製した特殊弾』が現れ始めたからで、その対策までの時間稼ぎの意図もあり、ウィッチ同士の空戦は懸念ほどは起こる事はなかったが、地上空母、魔導殺し弾。この二つの脅威は確かに存在する。のび太達はどう立ち向かうのだろう――


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