外伝その435『激闘6』


――ダイ・アナザー・デイを通し、のび太はサポート役に徹した。自分が『主役』ではないからだ――

「のび太、お前。いいのか?」

「子供の頃みたいに、ただ目立つだけが仕事じゃないさ。何事も支える役は重要だよ」

のび太はダイ・アナザー・デイ後半期は青年期の彼が少年時代の自分自身と交代する形で参陣していた。そのため、のぞみたちは子供時代ののび太とこの時には面識は出来なかったわけだ。

「それで、お前が子孫に作らせてるガンダムだが……」

「ガンダムXさ」

「お前、マジで作らせてるのか?」

「技術的素地は整ってたしね。サテライトキャノンの元になる戦闘衛星もあったし、フラッシュシステムの元になるニュータイプの派生的な能力も旧ジオンの記録で確認されてる。調ちゃんにはバスターランチャーを渡してあるから」

「お前、空間歪める気か?」

「仕方ないでしょ。自衛隊はろくに機甲兵器出さない上に渋ってんだから。五式中戦車まで生産中止しようとしたの、知ってんでしょ?」

「試作段階であった副砲を取っ払って生産させてる上、90ミリに換えてあるの教えてやったら、防衛装備庁の野郎どもは屁理屈こねやがったからな。M動乱で充分に鉄の猛獣の脅威を思い知ってるつーの」

M動乱はそれまでの扶桑陸軍の戦車への認識を吹き飛ばすには充分なものだったが、中戦車に過度の大口径砲を持たせることを嫌う派閥はいたが、結局は日本がその派閥を滅ぼし、ダイ・アナザー・デイでM26が現れたため、他国も重戦車と新型中戦車以外が戦力外通告されているのである。ブリタニアも『コメット巡航戦車』が戦力外通告を英国より受けているなど、踏んだり蹴ったりである。扶桑は黒江の抗議で四式改と五式改の生産は継続されたが、74式は車体装甲が大戦型運動戦を想定していないため、四式と五式は早晩の旧式化が想定されたので、10式のライセンス生産が早期に持ち上がったわけだ。その繋ぎはどうしても必要であった。機動戦闘車が語感の関係で『自走砲』ではなく、『テケ車』同様と見做され、稚拙な運用で損害が大きかったために減産(改良型開発のため)の見通しであったことで、扶桑は手っ取り早く戦闘車両を増やすため、自衛隊車両以外の国産車の開発を諦め、ブリタニアがセンチュリオンに次ぐ主力として採用予定である『チーフテン』を採用。それに独自の改良を加えて場繋ぎを行うことになり、前線の機甲兵器不足を補うために生産を急いだ。これはブリタニアと数百年来の同盟国である故であった。

「チーフテンを極秘に生産させてる。直に出回るはずだ」

「渋いね」

「ま、第二世代で一番頑丈な戦車だしな。74式は太平洋戦争になっても出回るのは遅いだろうし、その間に10式のほうが先に出かねん。今は数がいる。MSは今はうちでしか扱えんし、いくらチハや九五式軽戦車に慣れてたとは言え、機甲本部の参謀や、呼び出した戦車兵や参謀を会議の場でつるし上げするか?中学生のいじめじゃあるまいし、ガキみてぇな事しやがる。チーフテンのことは部外秘だ。バレたら、平時の感覚で妨害工作されるからな」

「わかってるさ」

扶桑軍が独自の動きを取り始めた理由は、日本の横槍で兵器調達に支障を来たした上、参謀を会議の場で公然とつるし上げし、精神的に潰す事により、前線の参謀不足が組織運営に支障が出るレベルに達していたからである。また、機甲兵器の不足は(ウィッチ装備が重視されていた事もあり)致命的ですらあり、本土から四式と五式改の全生産分を回しても、1000両もいかない有様であった。そのため、他国製戦車を現地購入する事は公然と行われており、ティーガーとセンチュリオン、コンカラーは特に好まれた。また、鹵獲したM26パーシングを修復し、史実M46パットンに改良して使用する部隊さえあった。敵はどんどん送り込んでおり、M4だけでも6000両以上の圧倒的物量。更にM26が新戦力として加わるという陣容であり、既に1500両以上がスクラップになっていながら、全く減らない敵の物量に絶望する連合軍機甲部隊。自衛隊のパンツァーファウスト3やカール・グスタフは数が不足している上、対戦車ミサイルは大戦期基準の軍団を撃破するほどの弾数がない。連合軍は英米から対戦車兵器の供与を相次いで受け、欧州の前線でそれを消耗するという状態であった。それを以てしてさえ、敵の進撃は止められず、欧州は鉄の棺桶だらけの地と化しつつあった。

「他の戦線には犠牲になってもらうしかないと参謀本部は結論付けた。他の戦線はスーパーロボットにどうにかしてもらうそうだ。欧州にすべてを賭けるのはわかるが、この分だと、欧州のあちらこちらが鉄の棺桶で埋まっちまうぞ」

「M4だけで1500台はスクラップに変えたけど、敵はあと10000両以上残してるよ」

「マジかよ?クルスクの大戦車戦が二回できるぞ!?」

「しかもこれ、『今ある数』だからね?」

「クソッタレ、宇宙怪獣と戦ってる気分だぜ…」

黒江はのび太からの情報に腰を抜かす。敵戦車隊は有に万単位で控えているというからだ。これは当時の連合軍の遠征軍の機甲部隊の総数を遥かに超える規模であるからだ。

「オデッサの戦いじゃあるまいし…」

「連邦軍も部隊を増強するって。陸軍はジムV、宇宙軍もグスタフ・カール部隊を送り込むって」

「ジムVかよ。もっとマシなMS、陸軍にはいないのかよ」

「ジェムズガンじゃあれだし、実体弾への耐久度は旧式の大型機のほうが高いんだってさ」

「だからって、今時、ジムVかよ」

「仕方ないさ。アクア・ジムや水中型ガンダムが未だ現役の海軍よりマシだよ」

ジムVはこの頃には『三世代は旧式のMS』と扱われ、宇宙軍からは退役している。とは言え、陸軍では未だに主力機である。これはジェガン以降の世代の機体が宇宙軍に優先配備されたためで、陸軍最新のジェムズガン(とは言え、これも旧式機だが)は耐弾性が不安視されたため、遠征部隊に配備はされなかった。そのため、ジェイブスやフリーダム(ジェガン改装の機体)を有する宇宙軍や空軍との質の差が大きいと言わざるを得ない。陸軍は流石にまずいと思ったか、倉庫に眠っていたRX-78の増加生産機を近代化改修。一年戦争中に研究されていたが、実物の製造は中止された『陸戦用フルアーマーパーツ』を改めて建造、装着させて投入するという涙ぐましい取り繕いを行う始末であった。これはRX-178以降の次世代ガンダムは宇宙軍の装備であり、陸軍の要地防衛のために数少ない高性能機が取り置かれてしまったからで、宇宙軍と空軍にガンダムがいるのに、陸軍にはいないというメンツ論の問題であった。とは言え、ガンダムタイプの存在感は大きく、実態以上に圧力となっているのも事実だ。

「どうする?」

「小型機はV系以外は整備に一手間かかるから、大型機で空襲をかけるよ。リ・ガズィカスタムを借りるよ」

Vガンダムとその系統機(ガンイージ含む)は整備性が高いが、リガ・ミリティア解散後は現存数が多くないため、再生産も行われているが、ロンド・ベルにさえ回らない始末なので、ダイ・アナザー・デイでは殆ど出回っていない。その分、可変機が重宝されている。黒江とのび太はこの日、整備が終わっている有り合わせの可変MSを使い、後方の物資集積地に奇襲を敢行した。それを聞きつけたグンドュラ・ラルも輸送機を使って現地に急行。高官に内定済み(当時)の身でありながら、御坂美琴の同位体として覚醒めたために得た能力を駆使し、二人の攻撃を支援した。





――物資集積地は一つや二つではないが、味方の兵器配備の時間稼ぎのために攻撃するというのは有効な戦術である。特にM粒子散布下では『奇襲』は有用であった。当時のリベリオン軍には突撃してくる可変機に有効な火砲が一切なく(高射砲程度の口径の実体弾では、ガンダリウム合金には傷すら負わせられない)、逆にリガズィカスタムの巡航形態のメガ粒子砲で高射砲陣地が掃討される始末であった――

「ありったけの実体弾をばらまけ!いくらアメ公の生産力でも、物資集積地を潰しゃ、一週間は動けなくなる!」

黒江はこの日、二機での攻撃のため、ZZ系統の中でも最大最強の『ジークフリート』を重MS大隊から回してもらい、使用した。

「なんだ、あのZZは!?」

「通常のダブルゼータより10m以上はでかいぞ!?」

第一次ネオ・ジオン戦争当時、地球連邦軍は曰く付きのサイコガンダムに代わる『真っ当な』大型MSを求めた。当時に内部の派閥の一つであったエゥーゴが製造準備中のZZガンダムの設計図を流用し、『サイコガンダムに代わる要塞的MS』として一定数を生産した。これが『ジークフリート』である。要は通常サイズに収めることを諦めたダブルゼータだが、サイズ拡大で内部容積に余裕が生じたり、装甲強度は強化されたので、攻撃性能や防御力は遥かに増している。リベリオン軍のあらゆる攻撃を物ともせず、ミサイルランチャーやダブルバルカンを一斉射したりして敵を蹂躙する。

「撃て!!なんとしても食い止めるんだ!!」

敵の155mm榴弾砲や105mm榴弾砲やら、203mm榴弾砲などの当時のリベリオン陸軍のあらゆる野戦砲が必死にジークフリートへと撃たれるが、所詮は第二次世界大戦レベルの野戦砲。ガンダリウム合金の多重空間装甲の前には砲兵隊の一斉射撃も無力そのものであった。

「効果なし…!?」

「馬鹿な!?これだけの砲の一斉射撃を寄せ付けないというのか!?」

敵の砲陣地からの砲撃は『地面を削る』とも言われるレベルであったが、ジークフリートには蟷螂の斧にすぎない。砲撃が止んだ瞬間、砲陣地の指揮官は愕然とし、膝から崩れ落ちる事になった。ややあって、彼は砲陣地ごと『ダブルビームライフル』の光芒に飲み込まれて戦死する。原型機から遥かに口径が拡大されたため、ラー・カイラム級戦艦の主砲をも超える出力のメガ粒子砲じみており、もはやライフルどころか『大砲』と言っていい代物である。

「ヒュウ♪ゴキゲンだぜ」

全長30mを有に超え、サイコガンダム級の体躯を誇りつつも、機動力は技術進歩などのおかげでサイコガンダムの比ではないジークフリート。ダブルゼータの基になった計画自体はGPシリーズの頃からあったが、当時の技術では『机上の空論』とされていた。だが、サイコガンダムなどが実現した後、サイコガンダムの方向性が人道的意味で危険という事で破棄された直後に当初の計画が蘇り、当時に最新型のガンダムであったダブルゼータの基本設計を流用して完成した『機動要塞』なのだ。

「のび太、小うるさい雑魚の飛行機は任せる。俺はこの集積地を徹底的に破壊する」

「そいつの火力は要塞攻撃用だしね」

「頼んだぞ」

「アイアイサー」

のび太はBWS形態のリ・ガズィカスタムで敵機を落としに上空に向かう。その時。

「おもしろいことしてるじゃないですか、おふた方」

「グンドュラ、いや……『美琴』か」

「どちらでもいですよ。今の体は紛れもなく、『グンドュラ・ラル』なんですし」

「その割に常盤台の制服着込んでるな?」

「立場上、軍服じゃ抜け出せませんからね」

グンドュラ・ラルは14歳当時の御坂美琴より8cm以上も長身である上、年相応に整った体を持つ。常盤台中学の制服がかなりぱつんぱつんであるのが見て取れるので、似合ってないとしか言いようがなく、コスプレにしか見えない。しかしながら、御坂美琴としての電撃は健在である。

「伊達にレベル5だったわけじゃないって見せてあげる!」

グンドュラ・ラルとしての容姿はそのままだが、口調や声色は御坂美琴のそれに切り替わる。動きも御坂美琴としての大胆なものへと一変する。彼女を加え、三人は戦場を支配していく。第二次世界大戦レベルの軍隊では相手も務まらないと言わんばかりの蹂躙ぶりは華々しい。少しづつでも戦況を好転させようとする彼らなりの努力であった。









――学園都市とロシアとの戦争でロシア軍による大規模通商破壊作戦の結果、それに巻き込まれた海保は多くの巡視船と人員を喪失。それから10年近くが経った2020年頃になっても再建は遅れていた。これはその間に起こった様々な事件で政治的意味での『無力さ』が露呈した結果、国民の不信を買った事、海保上層部の暴走による扶桑への損害の補償に海保の巡視船が用いられた事が理由であった。海援隊の責任者への殴打未遂事件で各方面から白眼視され、更に船がロシア戦後は不足し、扶桑の全領域の警備までは色々な意味で不可能であったため、海援隊の編入を目論んだが、海援隊は『民間軍事会社』であったため、2010年代後半の頃の海保長官は激高し、事もあろうに、吉田茂の前で公然と殴打しようとした。当然、彼とそのイエスマンであった直接の部下達は罷免されたわけだが、事件が世間に露呈すると、海保は一気に非難を浴びる羽目に陥った。『坂本龍馬の子孫が運営する組織に手を出した』からだ。ただし、海援隊の装備が『日露戦争から第一次世界大戦前後の装備』であった事は公営化で問題視される事になり、近代化が図られるが、旧式戦艦の代替物が軽武装の巡視船であることは扶桑との交渉の結果、数隻で取りやめられ、解体予定であった紀伊型戦艦『近江』を近代化改修して回すことで手打ちにした。(初代三笠を取り上げる代わりとされた)当面の問題は公営化で海軍と完全に一体化する事、近代装備の使用に際しての再教育であった。海援隊は1947年度に『海上護衛総隊』に編入されたが、一気に近代化される事による再教育は大規模になるため、実戦に駆り出されるのはまだ先の事であった。扶桑はこうした物的変革が一気に訪れる一方で、カールスラントを崇拝する派閥が陸海軍軍人や政府官僚などを問わずに解体されたことで混乱が却って発生したため、結局、バダンとの交戦の関係もあり、カールスラントとの関係がは以前より冷却化していくのだが、一定の歯止めはかけられていく。外交上、一定の関係の維持は図られていくわけである――








――アリシア・テスタロッサ。フェイトの実姉だが、たいていの場合、フェイトがなのはと出会う頃には死亡している。アリシアは改変後の時空では『ハートキャッチ!プリキュア』のキュアブロッサム/花咲つぼみの転生であった。これについては、のび太達もノーマークであったので、なのはとフェイトからの通報で公になったというべきである――

「ブロッサム。どうして、プリキュアに戻ってた事を妹さんにも黙ってたの?」

「妹に迷惑はかけたくなかったんですよ、ラブリー。子供の頃は母さんのことでゴタゴタがあったし、ブロッサムへの変身能力が戻ったのも、M動乱の時だったんです。驚かせちゃいましたけどね」

「だいたい想像つくよ」

「アリシアとしてはとうに二十歳超えですから、義理の甥っ子と姪っ子が大きくなった時に何か言われそうなのは覚悟してます」

「あー…。確かに」

フェイトの義兄のクロノ・ハラオウンはM動乱の頃には二児の父になっている。キュアブロッサムは『フェイトの姉』であるので、クロノ・ハラオウンの子どもたちとは間接的に縁戚になる。その関係だ。キュアラブリーはその辺りの事情を聞いているので、同情する。

「私も、好きでプリキュアに戻ったわけじゃないんですよ。それに……結果論ですけど、純粋に『アリシア・テスタロッサ』のままでいられれば、どんなによかったか。だけど、世界の願いが私に宿命を思い出させた。妹ばかりに責任や『母の犯した咎』は背負わせるわけにもいかないのも事実です。私にキュアブロッサムの力が戻ったのは何かの運命だと思ってますよ」

シリアスに決めるキュアブロッサム。ギャグ属性がかなり強めのピンクプリキュアであるが、決める時は決めるのだ。

「それに……、次元世界のどこかには、えりかとゆりさんがいるはずです。会えた時に顔向けできるようにするつもりです。立場上、戦いでは協力はあまりできませんけど、私もプリキュアオールスターズの一員であるのには変わりないですから」

ブロッサムは決意を伝える。本職が時空管理局の研究員(非戦闘職)である都合も絡み、戦闘ではあまり協力はできないが、チームの残る二人に顔向けできるようなことはしたいと。

「ブロッサム……」

「ドリームを……のぞみさんのことは気をつけて見ててください。表面上は以前と同じように見えますけど……、私達には計り知れない何かを抱えているように感じるんです」

「うん。それは分かってる。前世の事もあるから」

「知ってたんですか?」

「ドリームには現役時代や『前世』で恩義があるんだ。のぞみちゃんには口止めされてたんだけど、つぼみちゃんには話しておくよ」

ラブリー/愛乃めぐみは神妙な趣で話を切り出した。自身の前世はドリーム/夢原のぞみの前世と同じ世界であった事、前世で、のぞみと野乃はな(キュアエール)が対立してしまった事をきっかけにプリキュア間の世代闘争が起こってしまい、それがもとでプリキュア間の連絡や連携が崩れてしまい、キュアエールはその世界線では、その闘争を起こした罪を償うため、ある時の戦いでドリームを敵の攻撃から庇ったが、敵の呪いのせいでキュアエールの姿で昏睡状態に陥ってしまった。ドリームは自責の念に駆られ、自身が引退を決意するまでの歳月を戦い続けたことを教える。

「エールは覚醒めたんですか?」

「のぞみちゃんが引退して、亡くなる時に覚醒める兆候が見られたってことは聞いてるけど、それ以上は。あたしもその頃は娘にプリキュアを代替わりさせてたし…」

「……そうですか」

「それと、今の現役時代に立ち直らせてくれたのは、のぞみちゃん、ラブちゃん、響ちゃんだからね。同位体って奴だと思うけど、あたしは恩返しがしたいんだ。たとえ、この場にいるあの子達にその記憶が無くてもね。だから、その事に乗るよ」

「ありがとうございます、ラブリー」

「乗りかかった船だもの。こうなればね」

ラブリー(愛乃めぐみ)は『受けた恩はきっちり返す』という任侠道を心得ていた。歴代プリキュアきっての暴れん坊とも言われる彼女、意外な事だが、目上を立てる時は立てる事を高レベルでこなせるという『処世術』を持っているのである。とは言え、普段は割にフランクであり、キュアブロッサムへタメ口を聞いている。

「ドリームはその事を気にして…?」

「わからない。現役の後半に『歪みになった』と思う要素ではあるんだけど、決定打じゃない。娘さんのグレぶりが直接の原因だと思うんだけど…」

「娘さんが?」

「のぞみちゃんも言ってたでしょ?ダークプリキュアになったって。大人になったのぞみちゃんにとって……、事もあろうに、自分の子供、それも嫡女がダークプリキュアに目覚めるのは『あってはならない』ことだし、『受け入れたくない』事実だった。あたしはそのことを知ってるんだ。娘に呼び出されて、その子どもたちの戦いを目の当たりにしたから」

愛乃めぐみはのぞみが知らない『その戦いの結末』を知っていると明確にする。その戦いは『キュアドリームの立場を継いだ次女が実姉を手にかけざるを得なかった』結末を迎えた。『プリキュア・スターライトソリューション』を以て姉を倒す妹。のぞみが生きてさえいれば、絶対に止めようとしたと、めぐみは言う。つぼみ(ブロッサム)も月影ゆり(キュアムーンライト)とダークプリキュアのことがあるために衝撃は大きかった。

「皮肉って、ああいうことを言うんだね。母親を否定しようとして『歪んだ』姉を、かつての母の生き写しに育った妹が母親の名のもとに討つってのは。……やるせなかったよ。のぞみちゃんが知らずに逝ったのだけでも良かったと言うべきかな…?」

「その戦いは貴方だけが…?」

「世に知られてるプリキュアオールスターズのメンバーとしては…ね。だから、のぞみちゃんにも言えなかったんだ。」

先輩であるのぞみを強く気遣うめぐみだが、のぞみも『そうなること』は死の床につく時には悟っていたと後々に告白する。それ自体よりも『自分がかまってられなかった事が長女を歪めてしまったのでは?』と長女の子育てに失敗した事が心の闇の一つを形作り、教師生活の現実と理想(指導係からのいじめもあったらしい)のギャップに耐えられなかった事が自分の承認欲求の肥大化に繋がったと、エターニティドリームへの覚醒後に述べており、少なくとも、ダイ・アナザー・デイからそう遠くない内に、かつての自分を客観的に見る機会がある事がわかる。

「のぞみさんは何が原因で……?」

「一つは第三者から見てもブラックすぎる、教師生活の実態がのぞみちゃんの抱いてた理想と違いすぎた事、もう一つは子供が事もあろうに、ダークプリキュア化して、自分の敵になった事、最後はエールを自分の不注意で昏睡状態に陥らせちゃった事への自責の念だろうね。その責任を取って死ぬつもりだったんだろうけど、キュアエトワールがそれを止めたんだ」

「のぞみさんは……死に場所を?」

「20代の頃にその戦いがあってからはね…。いたたまれなくてね。それを求めてる感じで…りんさんがそれで取り乱してて」

めぐみははっきりと『前世でのある戦いで、自分のミスでキュアエールを事実上の再起不能にしてしまった事』はのぞみの十字架になってしまい、生涯に渡って罪の意識を持っていたと口に出す。転生後に『好意はあまり持っていないような口ぶりであっても、彼女(キュアエール)を認めているような感じ』を醸し出しているのぞみの真意はその事件を繰り返したくないという思いにあることを。

「どうして、そんな回りくどいことを」

「前世でプリキュアオールスターズを割っちゃったことの罪の意識だろうね。表面上はいけ好かないって雰囲気を出しておいて、言ってる事を細かく分解して考えてみると……。人によってはツンデレって捉えるだろうね」

「響さんははっきりといけ好かないって言ってますし、その辺の兼ね合いかなぁ…」

「たぶん。響ちゃん、ガサツだけど、姉貴分肌だからね。事の発端がはなちゃんにあるからかも」

「本当ですか?」

「はなちゃんが第一世代に抱いてた不満をあることがきっかけでぶちまけたのが、事の始まりなんだ。細かい内容は覚えてないけど、第一世代プリキュアの根幹を否定しかねない爆弾発言だったのは確かだよ。のぞみちゃんを擁護したプリキュアの殆どは第一世代のメンバーだったし」

はながどのような発言で第一世代プリキュアの神経を逆撫でしてしまったのか?それは定かではないと明言する。ただ、はなは第一世代のように『敵を倒す』つもりで戦っていたわけではないので、その方面だろうとは目星をつけている。一種のジェネレーションギャップとも言えるが、第3世代のプリキュア達が『プリキュアとしての本来の有り様』を見失い、メタ的意味で初代がアンチテーゼとしていたはずの『セー○ー戦士』達へ逆に近づいてしまっている事への警鐘を鳴らす目的で対立を選んだのでは?めぐみはそう解釈している事を明言する。立場上、自分の属する第二世代は難しい位置づけであるからで、そこもキュアラブリーの立場の苦しさがあった。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.