精臭漂う部屋、そこに置いてあるベッドの上で二人の男女が寝ていた

「ねぇ、尻尾君」

ふと女性の方が少年に話しかけた

「何ですか?」

「尻尾君はこのつまらない世界をどう思う?」

「どう思うって……」

質問の意味が分からず、回答に困る少年

だが、そんな少年の答えを聞く前に女性は言葉を続ける

「この世界には意欲が無い」

「?」

「ISを開発して、凄いんだぞっていう事を見せつけた」

「はい」

「でも、その後が問題だった。世界はISを超える凄い兵器を作るでも無く、ISの開発ばかり……緩慢な技術の振興をISで加速させようとした結果がこの様だよ」

「………」

女性の浮かべた表情は落胆

「はっきり言って、尻尾君の世界の方が余程楽しいよ。国では無く企業が支配者だから利益を求める為に常に進化を続ける。戦争も経済の一つ。まぁ、食べ物が天然じゃないのが残念だけどね」





彼女の言葉を思い出し、少年は呟いた

「束さん、貴方は……」

その目はディスプレイに映し出されている謎のISを見ていた

事は少し前に遡る





クラス対抗戦当日、第二アリーナでは第一試合が行われようとしていた

噂の新入生同士の戦いともあって、観客席は満員

入場料を取っていれば一儲け出来ただろう

そしてアリーナの中心では、二人の人間がISを展開させて対峙していた

世界で二人だけの男性IS操縦者の一人、織斑一夏

転入早々、二組のクラス代表の座を奪った中国代表候補生、鳳鈴音

両者の距離は僅か五メートル程しかない

「一夏、今謝るなら少し位痛めつけるレベルを下げてあげるわよ」

「雀の涙くらいだろ。そんなのいらねぇよ。全力で来い」

一夏は集中して注意深く鈴の挙動を警戒している

唯の一般人だった彼女が僅か二年で代表候補生になるまでの実力がある

自分の弱さを自覚している一夏は慢心も油断もしない

互いに全力で戦う真剣勝負

試合開始のブザーが鳴ると共に、二人は同時に動いた

ガギィンッと金属同士がぶつかり合う音と共に、一夏の握る雪片弐型が物理的な衝撃で弾き返される

即座に一夏は三次元躍動旋回を駆使して、鈴を正面に正面に捉えた

「ふぅん。初撃を防ぐなんてやるじゃない。けど___」

鈴のIS『甲龍』の武装、青龍刀の様なブレードを両手に二振り展開するとバトンの様に回す

刃に持ち手が付いた様なブレードから繰り出される斬撃が、様々な角度から一夏に襲い掛かる

「くっ!」

雪片二型で一閃を捌けば、もう片方の斬撃が別の角度から襲い掛かる

「づぁッ!!」

不安定な角度で防御した為、体制を崩す一夏

そこへ変幻自在な斬撃の嵐が追撃してくる

「そらそらそらそらぁ!!」

「くそっ……」

ひたすら防御に徹する事でダメージを受けずにいるが、長くは保たないだろう

“このままじゃ消耗戦になるだけだ。一旦距離を取って”

「甘い!」

そんな考えなどお見通しと言わんばかり鈴が声を張り上げると、浮遊している『甲龍』の肩の装甲がスライドし、中心の球体が光る

「がッ!?」

瞬間、一夏は目に見えない衝撃の拳に殴り飛ばされた

慌てて暗闇に傾きかけた意識を取り直す

「今のはジャブだからね」

だが、鈴の言葉と共に放たれた次の一撃が襲い掛かる

「ぐあっ!」

シュヴァンツとの訓練の賜物か、咄嗟に直撃だけは避けた一夏だが吹き飛ばされて地表に叩き付けられた



「『衝撃砲』……実際に見るとこんな感じなんだ」

ピットからリアルモニターで戦闘を見ていたシュヴァンツが成程なと言った様子で呟いた

「『衝撃砲』?」

箒が聞きなれない言葉に首を傾げる

「『衝撃砲』とは空間に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃自体を砲弾化して撃ちだす『ブルーティアーズ』と同じ第三世代型兵器ですわ」

セシリアは説明するが、箒は聞いておらず苦戦気味の一夏を見ていた

「……実際に目にして見るのと、知識だけじゃ違いますね」

「『百閧ヘ一見にしかず』ですわね」

「良く知ってますね」

「ええ、日本語の学ぶ時に少々」

セシリアの言葉に少年は感心した




「良くかわすじゃない。衝撃砲『龍砲』は砲身も砲弾も見えないのが特徴なのに」

鈴の言う通り、『衝撃砲』は砲身も砲弾も見えないという厄介な武装だ

更に真上、真下、真後ろまで展開して撃ってくる

しかし砲身も砲弾も見えないからといって回避方法が無い訳では無い

結局は『砲』なのだ

その引き金を引いて撃つのは扱う人間だ

武器が見えないのならば、扱う人間を見れば良い

最初の頃は一種の虐めにも思えたシュヴァンツとの訓練だが、そのその成果は出ていた

“目線から射線を予測しろ。シュヴァンツとの訓練を思い出せ”

始めは見慣れぬ兵器に戸惑っていたが、すぐに冷静になって対応していた

鈴の目線が自分を捉えた瞬間

“来る!”

即座に回避した直後、彼の居た空間を見えない砲弾が通り過ぎた

「ああっ、もう!逃げる事は上手いのね」

「散々アイツのスパルタ教育を受ければ嫌でも上手くなるさ」

イラついてきた鈴の挑発に乗る事無く、余裕そうに返す一夏

「へぇ、結構余裕そうじゃない」

「お前程でも無いさ」

鈴の言葉に軽口で返す一夏

彼は少年や千冬の言葉を思い出していた




「『バリアー無効化攻撃』?」

聞き返すと千冬が小さく頷く

少年との戦いの後、一夏はどうして少年のISが展開していたバリアーを切り裂けたかを考えていた

普通の一太刀を浴びせた時は弾かれたのに、刀身が開いたレーザーブレードの時は切り裂けた

これはどうしてか?と『雪片』の使い手だった千冬に聞いたのだ

「『雪片』の特殊能力が、それだ。相手のバリアー残量に関係無く、それを切り裂いて本体に直接ダメージを与える事が出来る。そうするとどうなる?篠ノ之」

「は、はいっ。ISの『絶対防御』が発動して、大幅にシールドエネルギーを削ぐ事が出来ます」

「その通りだ。私がかつて世界一の座にいたのも『雪片』の特集能力による所が大きい」

さらりと言う千冬だが、かなり凄い事である

何せブレオンで世界一に輝いたと言う事なのだから

「って事は、俺の一撃が当たってたらシュヴァンツに勝ってた?」

「それは無理だな」

「ぐはッ!!」

微かに抱いた希望は即座に消された

「こいつのISは次世代機で非常識な堅牢さを誇っている。例え粒子バリアーを突破しても、その次に装甲、更にバリアーの三段構えだ」

「何それ反則すぎるんですけど」

『インフィイット・ストラトス・ネクスト』の性能に泣きたくなった一夏

「話が逸れたな。『雪片』の特殊攻撃はエネルギーを大量に必要とする。つまり自分のシールドエネルギーを攻撃に転化する欠陥機だ」

「欠陥機!?」

ぎょっとする一夏と目を見開く箒

はぁ、と横に居た少年が溜息を吐くと説明を加えた

「言い方が悪いですよ織斑先生。欠陥機というより完全攻撃特化型ですよ。例えるなら某ポケット怪物の『かたやぶり』+『もろはのずつき』に近いですね」

「 あ〜 」

合点がいった様な一夏

「例えるなら『白式』『ズガ○ドス』『ラム○ルド』に近い」

「お、おお……?」

ACFAで例えるなら

戦い方は『リザイア』の『ルーラー』又は『真改』の『スプリットムーン』

燃費や攻撃のコストは『トーティエント』の『グレイグルーム』

「『雪片』は本来拡張領域用に空いている筈の処理を全て使っている。その威力は全IS中でもトップクラスだ」

「つまり一夏さんに求められるのは一撃必殺な性能を生かした戦い方。懐に潜り込んで一撃入れる操縦技術です」

「成程………」

これからの方向性を見つけた一夏はこれからどうすべきか考えていた

「一夏さんはブレオンの戦い方を極めればいいんです」

「お前なら出来るさ。何せ____私の弟なのだからな」

少年と千冬に言われ、一夏は

“そう言われたら何が何でもやるしか無いだろ?”






それから少年と箒の訓練は近接戦闘に特化した戦い方の練習となった

全てを一振りの太刀に任せた戦い方を極める為

鈴はセシリアの様に直情的な動のタイプでは無く、戦いでは冷静になる静のタイプである

今の一夏と彼女との間にどれだけの差があるのか分からない訳では無いが、負ける気は無い

“気持ちで負けたら勝てるものも勝てなくなる”

「鈴」

「何よ?」

すぅ……と真剣な表情になり一夏は言った

「本気で行くぞ」

明らかに雰囲気が変わった一夏

「な、何よ……そんな事、当たり前じゃない…とにかく格の違いって奴を見せてあげるわよ!」

一夏は鈴が衝撃砲を放つ前に距離を詰めようと加速体勢に入った

一週間、少年の訓練で叩き込まれた技能『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』

出し所さえ間違わなければ代表候補生や格上相手でもある程度渡り合えるモノだ

ちなみに少年の機体には『クイックブースト』という『瞬時加速』を行う機能を搭載しているらしい

ただし使用者にかかるGが洒落にならない

「うおおおおおお!!」

『瞬時加速』による奇襲は一回しか使えない

代表候補生は同じ手が何度も通用する相手では無い

だからこそ、この一撃に全てを掛け『雪片弐型』の単一使用能力『零落白夜』を発動させる

「___________ッ!!」

予想だにしていない攻撃、だからこそ奇襲といえる

その攻撃に鈴の表情が驚愕に染まる

即座に対応できない所を見ると、やはり実戦慣れはしていない様だ

硬直した鈴へ一夏の一撃が届く直前

「「!?」」

突然の大きな衝撃がアリーナに響き渡った

ステージ中央からは煙が上がっており、そこに居るナニカがアリーナの遮断シールドをぶち破って入って来たらしい

「な、何だ?何が起こって……」

突然の事態に困惑する一夏へ、プライベート・チャネルで鈴からの声が届いた

『一夏、試合は中止よ!すぐピットへ戻って!』

ステージ中央に熱源。所属不明のISと断定。ロックされています


「ッ!?」

『白式』からの警告を理解したと同時に、一夏は咄嗟に回避行動に移った

直後、粒子ビームが彼の真横を通り過ぎた

「おいおい、セシリア以上の出力のビームじゃないか」

『一夏、早く!』

鈴の焦った声が聞こえる

「お前はどうするんだよ!?」

「あたしが時間を稼ぐから、その間に逃げなさいよ!」

「逃げるって……女を置いてそんな事できるか!」

「馬鹿!アンタの方が弱いんだからしょうがないでしょうが!」

「くっ……」

全くもってその通りな事実に一夏は悔しさで歯噛みする

すると襲撃してきたISが姿を現す

『全身装甲(フル・スキン)』で腕が異常に長く、右手には四つの六連ガトリング砲、左腕には巨大な砲が付いていた

「……お前、何者だよ」

『…………………』

当然ながら相手は答えない

代わりに橙色に輝くビームが答えと言わんばかりに一夏に放たれた

「くっ!?」

慌てて回避する一夏

『織斑君!鳳さん!今すぐアリーナから脱出してください!すぐに先生達がISで制圧に行きます』

真耶から通信が入る

彼女の言う通りここは撤退するしか無いのだろうが

「__いや、先生達が来るまで俺達で食い止めます」

敵がアリーナのシールドを破って来た以上、観客に被害が及ぶ可能性があると言う事だ

「いいな、鈴?」

「はぁ……足手まといにならないでよ?」

鈴もやる気は十分な様だ

「ああ、そっちこそな!」

『ふ、二人共!?だ、駄目ですよ!生徒さんにもしもの事があったら__』

真耶が言いきる前に敵のISは突進してきた

それを回避する二人

「ふん、むこうはやる気満々みたいね」

「そうだな」

二人は互いに得物を構える

「あたしが龍砲で援護するから、あんたは突っ込みなさいよ。武器、それだけでしょ?」

「その通りだ。じゃ、行こうか」

キン、と互いの武器を切っ先を当てると二人は時間稼ぎをすべく、敵に向かって行った

ジャキンと構えられた四連ガトリング砲から大量の弾丸が放たれる

まともに浴びれば穴開きチーズ所か、粉々に粉砕してしまうだろう威力の弾雨を一夏は冷静に掻い潜っていた

「口径がデカい分、威力も洒落にならないなッ!!」

構えられたガトリング砲が衝撃砲によって逸らされた隙をついて、切り伏せようとする

しかし、敵機は一瞬にして一夏の視界から消えた

「なっ!?消え__」

「一夏!横!!」

鈴の声が聞こえた瞬間、ゾクリと背筋に奔った悪寒

考えるよりも早く、一夏は瞬時加速を使って回避していた

「ぐ、おおおおおおおおッ!!!!」

急激な加速によるGで内臓が圧迫され、意識を失いそうになるもISの操縦者保護機能によって意識を保たれる

瞬間『白式』の脚部に緑色のビームが掠めた

追撃をしようと敵はガトリング砲を構えるが、鈴の衝撃砲が阻止する

「一夏、大丈夫!!?」

「ああ、何とかな……」

予想以上に強敵に二人は苦戦は免れないと思うのだった





「プロトタイプネクスト………」

千冬の隣にいた少年が呟く

「あれに心当たりがあるのか?」

「ええ、まぁ。ですが今の一夏さんでは倒せない事も有りませんが、苦戦するでしょうね」

「先生!私にIS使用許可を!すぐに出撃できますわ!」

セシリアは救出に向かおうとするが

「そうしたい所だがな……これを見ろ」

千冬が端末を操作するとアリーナの情報が表示された

「遮断シールドがレベル4に設定……?しかも、扉はすべてロックされて____あのISの仕業ですの!?」

「その様だ。これでは避難する事も救援に向かう事も出来ないな」

落ち着いた調子で話す千冬だが、良く見ると苛立ちを抑えきれない様子であった

その時、少年の声が響いた

「_____僕が出ます」

「行けるのか?」

千冬が聞き返すと少年は頷いた

「ええ、少し強引な方法ですが。それにこういう時の為に来たんですから」

その言葉に真耶とセシリアは驚きの表情を浮かべた

「いいだろう。出撃を許可する」

「了解しました」

「私も行きますわ!」

セシリアもついて行こうとするが

「お前はダメだ。オルコット」

「な、何ですって!?」

ガーンとショックを受けた様な表情になるセシリア

「お前のISは一対多を相手にするに向いている。多対一ではむしろ邪魔となる」

「そんな事は有りませんわ!この私が邪魔だなどと___」

「ヘイズ、僚機としてオルコットは必要か?」

「えっと、その……僕、一人で大丈夫です」

「そんな!」

少年の言葉に止めを刺されたかのように、床に手をつき落ち込むセシリア

「セシリアさんを危険な目に遭わせたくないだけです。決してセシリアさんが足手まといと言う事ではありませんから。ね?」

一夏と違って少年はフォローも上手なのだ

「うう……そうですの?」

「ええ、だから待っていて下さい」

「分かりましたわ」

するとセシリアは少年にキスをした

後ろで真耶が顔を真っ赤にして慌てる声が聞こえたが、すぐに悲鳴に変わった

ついでに殺気が後ろの方からビシバシ伝わってくる

「何している、ヘイズ。緊急事態なんだぞ?早く行かないか!!」

「す、すいません!!」

殺気だった千冬に気圧されて、少年は逃げ出す様にバヒューンと駆け出して行った

「さて、オルコット。少し聞きたい事があるんだがいいか?(訳:答えなければ殺す)」

「\(^o^)/」

違う意味で修羅場であった







「くっ!!」

一撃必殺の間合い

だが、一夏の斬撃は回避されてしまう

これで四回目である

「一夏、馬鹿!!ちゃんと狙いなさいよ!」

「狙ってるっつーの!!」

普通なら回避できない速度と角度で攻撃していると言うのに、敵のISは馬鹿げた出力のスラスターで瞬間移動したかの様に視界から消える

いちいち視界から外れるので厄介極まりない

更に弾速が早い橙色のビーム、弾速が遅い分威力が高い緑色のビーム、接近すればガトリング砲の弾幕

高火力の攻撃に二人のISはじわじわと削られて、一夏の方などシールドエネルギーが二桁になっていた

その時、爆破音が響き渡った

「っ!?」

「何!?新手!?」

土煙の中から飛び出してきたのは白い『全身装甲』のIS

「シュヴァンツ!!」

「遅れました。後は任せてください」

一夏と鈴の隣に並ぶと、両手に装備していた巨大なパイルバンカーを戻し、新しい武器を展開した

「あんたのISも変わってるわね」

鈴が少年のISを見て、正直な感想を話す

「鈴さん、大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ」

「良かった。無事でなによりです」

その言葉に照れてそっぽを向く鈴

「シュヴァンツ、アイツは……」

「大丈夫ですよ、一夏さん。後は僕一人でやりますから」

「一人でなんて無茶だ。俺も戦う」

「一夏さんはギリギリでしょう?引き際は大切ですよ」

少年に諌められ、一夏はしぶしぶ退く事にした

「負けるなよ」

「ええ、任せてください」

一夏は鈴を連れて下がって行った

「さて、本気で行きますか……」

少年はこの時だけ学生から傭兵へと変わる

人類の行く末を担う首輪付きの獣として、人類種の天敵となり得る存在として

「ミッション・スタート」

少年のIS『ストレイド TYPE-AALIYAH』のバイザーの奥に光るモノアイがギラリと敵機を捉えた

「プロトタイプネクスト『ARETHA』……」

少々、因縁っぽい物がある少年は両手にアサルトライフル『MARVE』とマシンガン『MOTORCOBRA』を展開すると『ARETHA』に向かって突撃した

何故にか流れ出したBGMと共に歌いながら

「I've already fallen.」

ビームの弾幕を小刻みにクイックブーストを吹かしながら回避して行き、背後の武装、分裂ミサイル『CHEYENNEO2』とプラズマキャノン『TRESOR』を的確に撃ちこんでゆく

消える様な高出力クイックブーストで回避したりするARETHAだが、少年もクイックブーストを使った方向転換『クイックターン』を駆使して即座に対応していた

「I can't drive my head.」

更にガトリング砲の弾幕をブーストを吹かしながら回避して行くと、両手の武装で弾丸を叩き込んでゆく

クイックブーストを使い、ARETHAの横を通り抜けて背後からプラズマキャノンとミサイルを放つ

「 It's that I fall in you. Fall in you.」

またもや一瞬で消えるARETHA

距離を取ると左腕の砲からビームを連射してくる

多段クイックブーストを使って、自在に動き回り周囲を回る様に動きながら攻撃してゆく


「ぐあッ!!」

接近して両手の武装で攻撃を加えていると、凄まじい閃光と共に少年が大きく弾き飛ばされる

ARETHAの試作型アサルトアーマーである

これは通常のネクストとは規模が違い、広範囲のコジマ爆撃と言っても良い

「……痛いな」

『ストレイド』と少年はAMSによって繋がっている為、装甲が傷つけられると、その痛みは彼にも伝わる

「けど、負けはしない」

クイックブーストを駆使して、弾雨を回避しながら攻撃を続けて行く

「旋回性が悪い筈なんだけど、これはちょっと……」

ARETHAのは旋回性能が悪いのだが、ISとなっているこれは上半身を回転させることで解決している

互いにクイックブーストで高速移動しながら撃ちあい続ける

ミサイル、プラズマキャノン、コジマキャノン、アサルトライフル、マシンガン、ガトリング砲

様々な火器の攻撃が飛び交う戦場

「凄ぇ……」

一夏は少年が本気で戦っている光景を見て、声を漏らした

今まで一夏は少年と訓練していたが、そのどれもが手加減されていた

決闘の時も全力を出していた様子は無かった

初めて見る少年の実力は、余りにも凄い光景だった

『瞬時加速』を使って、目にも留まらぬ速さで戦場を縦横無尽に飛び交い、相手の攻撃を回避しながら攻撃してゆく

しかも敵のISの方も自分達の時よりも攻撃精度が別物になっていた

使ってこなかった武装もあった

「あいつ、あんなに強かったんだ……」

鈴も呆気にとられたかの様な表情で戦場を見ていた

すると少年は宙から一気に二段クイックブーストで懐に潜り込み、展開したレーザーブレードで敵の胴体の装甲を斬り裂き、爆散させた

「『二段瞬時加速』ってマジかよ……」

とんでもない戦いに一夏達は呆けるしかなかった

「ふぅ」

二人の元に戻って来た少年がISを解除した

「お前、凄い強かったんだな」

「まぁ、色々ありましたから」

くすり、と微笑む少年に思わず一夏と鈴は赤くなる

「さぁ、戻りましょう」






少年が戻ると、なにやら真っ白になったセシリアと不機嫌そうな千冬がいた

「よく戻ったな」

「千冬姉、その……心配かけてゴメン」

「織斑先生だ。馬鹿者」

一夏の言葉を咎める千冬だが、今回は出席簿アタックも無いし、表情もどこか柔らかい

「それと、ヘイズ」

「はい?」

「お前には感謝している」

「あ、はい。どうも」

どこか照れたような千冬の言い方にくすりと微笑んでしまう

「これから忙しくなるだろうから、私は行く。後は山田先生に任せる」

「はい、分かりました」

そう言って千冬は部屋から出て行こうとする、が

「ああ、それとヘイズ。お前には後で聞きたい事が沢山あるからな」

その声は不機嫌そうで、どこか嫉妬混じりの声だった

まるで他の女性とセックスしたのがバレた時のスミカの様な……

「_______ッ!!」

そこまで考えて、少年はセシリアの方を見て、気が付いた

“あ………”

少年は色々と覚悟を決めないといけない気がしたのだった






IS学園の地下空間で少年は千冬と謎のISについての話していた

「あのISについてだが」

少年はそれに答える

「あれは僕の世界の機体プロトタイプネクスト『ARETHA』です」

「プロトタイプ、と言う事はお前の機体の試作機と言う事か?」

「ええ、そうですね」

ARETHAについて少年が説明して、質問をした

「ARETHAはAMSの負荷が致死レベルなんですけど、操縦者はいたんですか?」

「いや、あれは無人機だった」

「そうですか……おそらく犯人は」

「束、だろうな」

二人共、こんなことが可能な人物は束しかいない

やれやれとトラブルメイカーの彼女の事を考えると溜息しか出なかった

「それと、だ。ヘイズ」

「なんですか?」

「オルコットを抱いたな?」

その質問に少年は正直に答えた

「はい……」

「詳しい事は一応聞いているが……褒められたものでは無いな」

「その、すいません」

何も言えなくなり千冬に謝る少年

「最低限、避妊だけはしろ。妊娠させたとなれば国際問題になる」

「そこら辺は大丈夫です」

「それにお前、そろそろ発情期だろう?」

「あ〜、はい」

「教師として、不純異性交遊は推奨できないからな……その、だな」

千冬が紅くなりながら続ける

「わ、私が、だな……相手になってやる……だから手当たり次第に手を出すな」

そう言って顔を背ける千冬

そんな彼女を可愛いと思った少年は

「分かりました」

そう言って千冬とキスをした




その頃、一夏と少年の部屋では

「わ、私が優勝したら付き合って貰う!!」

新たな爆弾が投下されていた

物陰からひょっこりと飛び出している動物の耳

「むふふ〜良い事、聞いちゃった〜」

また一波乱ありそうだった




ベランダで少年は月を見上げながら束との会話を思い出してから、呟いた

「貴方はこの世界で国家解体戦争を起こすつもりですか……?」

彼の言葉は夜の闇に消えて行くだけだった



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