in side

 さて、今俺達は生体マグネタイト協会を探している。
このまま町の外に出るのは明らかに自殺行為だし、装備を調えたい。でも、お金が微妙すぎる。
というわけで、ヴィクトルさんが言ってたとおりに生体マグネタイト協会で換金してもらおうと思い――
「あ、ここか」
 町の人に聞いたおかげもあって、あっさりと到着して中に入ってみる。
「ようこそ、生体マグネタイト協会へ。ここへは何用で?」
 と、応対してくれたのは軍服みたいな服を着て、左目に眼帯を着けた男……なんだけど、悪魔に見えるのは俺の気のせいか?
「あ、その……換金をしたいのですけど……」
「お、どうやらサマナーのようですな。このコードをCOMPにお繋ぎください」
 と、渡されたコードをGUMPの空いている接続口に差し込む。あ、ここでGUMPの構造を簡単に説明しとくと――
GUMPは銃の形をしたCOMPだというのは前に話したけど、銃の部分はいわゆるモニターとキーボードになる。
本体はというとこのGUMPとコードで繋がった大きめの手帳を厚くしたような黒い箱だったりする。
つまり、この黒い箱さえあれば、モニターとキーボードは何でもいいということになるわけだ。
それはそれとして、男はモニターを見て――
「ふむ、現在は308MAG(マグネタイト)あるようですが、どのようにいたしますか?
なお、換金の際は10MAG以上からお願いいたしております」
 308? さっきと違うような……あ、ミュウを出しっぱなしにしてたから、その分が消費されたのかな?
ともかく、ヴィクトルさんの言うこともあるし――
「じゃあ、150残して換金をお願いできますか?」
「わかりました。そうなりますと1MAG辺り215マッカとなりますので、33970マッカとなります」
 ええと、思った以上にもらえるんだなぁと思う反面、それって高いのか安いのかわからない。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いや……思った以上にもらえるんだなぁ〜と……」
 とりあえず、思ったことを口にしてみたんだが、男はなんかうなずいてたりする。
「ああ、初めての方ならそう思うかもしれませんね。
生体マグネタイトは悪魔の活動エネルギーとしてでなく特殊な道具の生成の際にも使われますが、その為には高濃度の生体マグネタイトが必要なのです。
ですが、この世界が生体マグネタイトで満たされているとはいっても自然に溜まるにはあまりにも時間が掛かります。
他に抽出する方法としてはサマナーの方が集めた物もございますが、サマナー自体の数が少ないのが現状でして……故に高額になっているのです」
「サマナーの数が少ない?」
 男の人の言葉に首を傾げる。こんな世界だからサマナーは多いと思ったが、そうじゃないようだ。
「実を申しますと、ヴィクトル様がこの世界に来るまでサマナーはいないも同然でした。
すなわち、ヴィクトル様がサマナーの力をこの世界に持ち込んだのですが……
あの方は業魔殿の秘密を知った者にしかサマナーの力を与えておりませんので……ですので、サマナーの数はさほど多くはないのです。
まぁ、サマナーの方もそれほど多くの生体マグネタイトを持ってこられないこともありますが……
おっと、これはサマナーの方に話すことではありませんでしたかな?」
 苦笑混じりに話してくれるが……話を聞いてると、どうやらゲームとはかなり違うらしい。
まぁ、早々ゲームと同じ世界があっても困るけど。いや、すでにゲームの世界じゃんとかいう意見はスルーさせてくれ。
ともかく、高い金額で換金出来るならこっちとしても助かる。装備がどれくらい掛かるかわからないし。
「じゃあ、それでお願い出来ますか?」
「わかりました。しばらくお待ちください」
 男が応えると、装置を操作してから手提げ金庫みたいのを開いてお金を抜き取っていた。
あ、紙幣もあるのか。まぁ、全部金貨だと持ち運びが大変だろうし、当然なのかな?
「お待たせしました。33970マッカです。お確かめください」
 出されたお金を受け取る。紙幣は2種類、金貨は4種類あった。日本のお金と同じかな?
金貨は大きさが違うだけだけど、紙幣の方は金額は当たり前だが、描かれてる肖像画が違う。
千マッカがなにやら女性で1万マッカが青年の姿なんだが……誰が誰なんだかわからない。
「あ、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。またのご来店をお待ちしております。なお、生体マグネタイトの残量にはお気を付けください。
生体マグネタイトが無ければ、悪魔は生きてはいられませんから……」
 な〜んて、見送りを受けながら店を出る。さてと、お金は手に入ったし……
「ね〜、お腹空いた〜」
「悪魔でも腹は減るんだな」
「当然でしょ。あ、あそこで食べていこうよ」
「あ〜、はいはい」
 ミュウが指さした先には某有名バーガー屋にどことなく似ているハンバーガー屋だった。
ええと、マジであの店じゃないよな? なんて、冷や汗を流しつつその店に入り、ミュウに文字を教えて貰いながら注文。
ちなみに俺が頼んだのはハンバーガーとポテト、ドリンクのセット。ミュウも同じ物だけど、ピクシー用に小さなサイズになっている。
うん、これを見ても某有名バーガー屋とそっくりなんだけど……マジで同じ店じゃないよな?
店名が『マークド・ナールドス』なんて、いかにもパクリ的なもんだけど、一緒じゃないよね?
 ともかく、そこで腹ごしらえを終えてから町の人に場所を聞いて道具兼武器屋へ入った。
あの場所に行くとなると必然的に悪魔と戦うことになるしな。装備を調えるのはゲームの基本でもあるし。
「すいません。この銃の弾が欲しいんですけど……」
「はいはい。これだと……1カートン100発で1000マッカになりますが、いかがなさいますか?」
 ふむ、思ったよりも安いんだな。じゃあ、他にも買っておくか。ナイフじゃ刃が短くて……これはどうかな?
長すぎないし、見た目的には頑丈そうだし、握り手を守るようにもなってる。
あ、着てるのと同じシャツとジーンズがあった。もしもの着替え用に買っておこう。
お! あのジャケットカッコイイな。よし、あれも買っておくか。それと……なんだこれ?
なんか薬っぽいのと、やや透明な緑色の石が置いてあるけど……
「なぁ、ミュウ。これって何?」
「ん? 治療薬と魔石よ」
「治療薬はわかるとして……魔石ってどう使うの?」
「砕けばいいのよ。そうすれば込められた回復の魔法が掛かるってわけ」
 ほ〜、便利なもんだな。でも、砕くってことは割れやすい物なのかな? 触った感じは簡単に割れそうには見えないけど。
とりあえず、治療薬と魔石は10個ずつ買っておいて……魔石用になんか入れ物が欲しい所だけど……
うん、この空き缶なら良さそうだなベルトに付けられるみたいだし。これと……荷物入れ用にリュックとウェストポーチも買っておくか。
「ええと、これも一緒にお願い出来ますか?」
「はいはい。全部で18500マッカになります。すぐにお使いになりますか?」
「はい。お願いします」
 そんなわけですぐさま装備……の間に銃のマガジンを7個と銃を入れるホルダー。後、弾丸をもう1カートン買う羽目になったけど。
これは買った物を身に付ける時にわかったんだけど、マガジンに弾丸を詰める作業って結構大変だったりするんだわ。
町に来る時に悪魔に襲われた後、少し間があってから再び襲ってくるのとすぐさま襲ってくる時があった。
すぐに襲われてたりしたら、マガジンに弾丸を詰め込む暇はまず無いし……そんなわけでいつ襲われていいようにとマガジンを買い足したわけ。
弾丸の1カートン追加はマガジンに弾を込めると足りなくなったからだ。
ホルダーは銃をポケットに入れておくと不安という理由で、ベルトに付けるタイプのを購入。
 そんなわけで装備完了。ベルトには銃と買ったケースに収まった刃物(名前は文字が読めないからわからん)にGUMPを下げ――
ウェストポーチには弾丸を詰め込んだマガジンを入れ、ウェストポーチを繋ぐベルトには治療薬と魔石を詰め込んだ缶を下げておいた。
んで、ジャケットを着込み、予備の弾丸と着替え、使わなくなったナイフを詰めたリュックを背負う。
なお、ナイフは抜き身だと明らかに危ないので、ケースを新たに買う羽目になったけど……そんなおかげで残り金額は1万千マッカほど。
この後のことも考えると残しておいた方がいいかなと思ったけど……
「そんじゃ、行こうか」
「いいけど、日が落ちる前に戻った方が良いよ。夜は悪魔の本領が発揮されるしね」
 早速出発って時にミュウからそんなことを言われる。そういや、ゲームの悪魔は月の満ち欠けに影響されてたっけ?
それの関係なのかな? ともかく、日はまだ高いけど……うん、夕方になりそうだったら戻ればいいか。無茶して死ぬなんてのはごめんだし。
「わかった。日が暮れそうになったら町に戻るよ」
 そう答えて、俺達は町の外に出るのだった。


「だあぁぁぁ!! しつこい!?」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!?」
 思わず叫びつつ悪魔に向かって買ったばかりの刃物を振り落とす。
その一撃を受けた悪魔は砕け散った。たく、町から出ると待ってましたとばかりに悪魔が襲ってくる。
で、俺はというと右手に刃物、左手に銃を持って戦ってます。
片手で銃を撃つのは結構キツイけど、かといって戦ってる最中に持ち替えるなんてのはちょっと無理。
なので、どうしても撃ち漏らしは出るけど……まぁ、しょうがないか……
それに慣れてきたこともあってか、1回の襲撃で1体か2体の悪魔は倒せるようになってきた。
まぁ、死にたくないしな。必死にもなるって。
ちなみに未だにミュウの方が強いけど……だって、やっぱりというか倒してる数はミュウの方が多いし――
「大丈夫?」
「ああ、なんとかね……」
 ミュウに答えつつ、魔石を砕いて回復する。
使ってみてわかったんだけど、魔石ってのは傷だけじゃなく疲れを取る……つまり、体力の回復も出来るみたいだ。
なので、かなり疲れたら使うようにしてるんだけど……これならもう少し買い足せば良かったかな?
でも、町から結構離れちゃったしな。そんなことを思いつつ、GUMPを開いてみる。
GUMPにはオートマッピング機能もあるけど、マッピングされるのは歩いた道筋のみ。
また、その範囲もGUMPから数m程度までなんで、ちゃんとしたマップにするためにはかなり歩き回らなきゃならない。
まぁ、この辺りはゲームと同じかな。で、マップの方は俺が歩いたと思われるのとは別のマッピングがあるけど……
これって前に持ってた人のかな? そういや、あの人……あのままにしちゃったけど……うん、考えないでおこう。
 ともかく、銃も撃ち尽くしたんでマガジンを交換する。残りのマガジンは6つか……どっかで弾丸込めないとヤバイかな?
後、悪魔を倒すとアイテムが落ちる……なんてのはやっぱりゲームの世界での話かと思いきやそうでもない。
ただ、魔石とかじゃなく……なんか、羽根とか爪とか棒キレとか……うん、明らかにゴミっぽいよね?
でも、思わず拾ってしまう。いや、なんかの記念になるかと思って……そんな時だった。
「ほっほっほ。もしや、おぬしが噂のサマナーさんかの?」
「おわ!?」
 いきなり声を掛けられたもんだから、思わず銃を向けてしまう。その先にいたのは……なんか、ぼろ切れを纏った小さな悪魔がいた。
「おや、驚かすつもりはなかったんじゃよ。最近、サマナーなるもんが現われて悪魔を仲魔にしてると聞いての。
興味があったんで声を掛けてみたんじゃ。どうじゃ? わしを仲魔にせんかの?」
 なんてことを悪魔に言われる。どうしようか……今の所は俺とミュウとでもなんとかなってるけど……
うん、弾丸を込める時に守りがある方がいいだろうし……いいかな?
「じゃあ、お願い出来るかな?」
「ほっほっほ。こちらこそよろしく頼むぞい。地霊ノッカーじゃ、よろしく頼む」
 合意を得たんで、GUMPを操作してノッカーと名乗った悪魔を仲魔にした。
「良かったじゃない。これで戦いやすくなったんじゃないの?」
「ま、そうかもな」
 なんてことをミュウと話しつつ、ノッカーを召喚するためにGUMPを操作する。
さっき見たマップだと、あの場所まではもう少し掛かるみたいだし、危険を避けるにもその方がいいかな?


 で、あれから目的地に再び向かっていた俺達は、更に仲魔を1体増やしていた。
「その場所まで遠いのか、サマナー?」
「うん、あとちょっとだな……」
 と、仲魔に冷や汗混じりに答える。なんでかというと、次に仲魔にしたのはタンガタ・マヌという妖鳥という種族の悪魔。
実は俺がボルテクス界に来て初めて襲われた悪魔と同じ奴なんだよ。なので、また襲われないかとビクビクしてたり。
まぁ、タンガタ・マヌの他の悪魔と一緒になって襲ってきたけど、他の悪魔は倒されて自分1人になった時に命乞いしてきたんだよ。
俺はただ元の世界に帰れればいいだけなんで見逃すことにしたんだが……それに感激したのか、仲魔になると言い出したんだよな。
あれとは別人(?)とはいっても、同じ姿をした奴が命乞いをした挙句、仲魔になると言い出した時はすっごく複雑な気分だった。
まぁ、戦いの方は役に立ってるから助かるけどね。
 それはそれとして、目的地まではあとちょっと……というか、この高台の上にある。
なんとか登れる所はないかと歩き回り、勾配は急だけど階段見たくなってる所を見つけた。これなら俺でも登れそうだと早速登ってみる。
「ほっほっほ、らくちんじゃわい」
「いや、なんで背中に乗る?」
「ほらほら、文句言わないの」
「いいよね、飛べる奴は!」
 なのに、なぜかノッカーは俺のリュックの上に乗ってたりする。思わず文句が出たら、ミュウからんなことを言われたが……
お前、飛べるじゃん。タンガタ・マヌも飛べるし……なんか、そっちの方が楽っぽいよ、見た目的にはさ!
なんて文句が出つつもなんとか登り切り――
「む!? なんだ貴様は!?」
「はい?」
 なんか、天使っぽい奴と出くわした。いや、なんでさ?
「く、人間ごときに邪魔はさせん!」
「なんだぁ!?」
 なぜか、いきなり攻撃される。流石に避けたけど、なんで攻撃されるのさ!? 俺、なんかした!?
「ちょっと待て!? なんで攻撃されるの!? 俺、何もしてないぞ!!」
「黙れ! それならばなぜ悪魔を連れている! 大方、我らが目的を知って邪魔をしにきたのだろう!?」
「何!? その言いがかり!?」
「そうよ! 私達はそこにある物に用があるだけよ!」
 文句を言ったら、とんでもないこと言われたよ!? 目的って何さ!? 俺、帰りたいだけなんだけど!?
で、どうやらミュウもあの悪魔の言葉にカチンと来たようで、あの悪魔の後ろに見える穴を指さしながら言い返していたんだけど――
「ふ、語るに落ちたな。あれに用があるということは、我らの邪魔をするということだろうが!」
 なんか、勝手なこと言われてるよ!? 明らかにこっちの話聞くつもり無いじゃん!?
後、話ながら攻撃するのやめてくんない!? いや、避けるけどさ! 避けないと危ないよ! 明らかに今までの悪魔と威力違うし!?
「どうするのじゃ? あっちは話を聞くつもりが無いようじゃが?」
「ああも〜……やるしかないか!」
 ノッカーに聞かれて、仕方なく刃物と銃を構える。俺はただ、元の世界に帰りたいだけなのにぃ〜!?
「そこをどけぇ!」
 駆け出して、刃物を振り落とすが……今までの悪魔と違って、持っていた剣であっさりと受け止められた。
「ふん! 甘い、な!?」
 勝ち誇る悪魔だが、間髪入れずに銃を向けたことに驚く。なんとかしたくて、思わず体が動いただけなんだけどね!
ともかく、引き金を引いて、って……ええ!?
「味な真似を!」
「おぐ!?」
 なんと避けられた挙句、あっさりと押し返された。ていうか、今のを避けるか普通!?
おかげで無様に地面に倒れる羽目になって――
「死ね――」
「アギ!」
「ぐお!?」
 倒れた所を狙われるものの、ミュウのおかげでなんとか助かった。
「ちょっと! あれは流石に強すぎるわよ!」
「わかってる! とにかく、魔法で攻撃してくれ!」
「しょうがないのぉ……ブフ!」
「了解。ブフ」
 ミュウに言い返しつつも立ち上がり、仲魔に指示を出す。
「ぐお!?」
 と、ノッカーとタンガタ・マヌが放った魔法がなぜかおっきな氷を生み出してぶつかっていく。そのおかげで悪魔を吹き飛ばせたけど……
「て、今の何!?」
「わかんない! でも、魔法が重なったように見えるけど……」
 ミュウもわからないみたいだが、偶然にしろ今のが出来るのなら――
「頼む! 今のをもう一度やってくれ!」
「と言われてものぉ……しょうがない。ブフ!」
「ブフ」
 ノッカーとタンガタ・マヌがまたもや同時に魔法を放つと、またもや2つの魔法が掛け合わさって大きな氷を生み出し――
「ぐぅ!?」
 が、今度は防がれた。流石に二度も受けてはくれないか。
「なめるなぁ!?」
「おわぁ!?」
「きゃあ!?」
「おおう!?」
「ぬお!?」
 どうやら頭に来たらしい悪魔が衝撃波を放ち、それにあっさりと吹き飛ばされる俺達。
ああ、くそ……本気でつえぇ〜……
「くぅ……貴様ら……ただでは殺さん!」
 て、こっち来た!? 起き上がりたいが間に合わ――
「アギ!」
「ぐお!?」
 そこにミュウが魔法を放ち、それが悪魔の顔に当たる。ナイスとばかりに立ち上がる俺。
「貴様ぁ!?」
「きゃ――」
「な!?」
 と、悪魔がミュウに向かって剣を振り落とそうとするが、そこに俺が刃物を振り落として悪魔が持つ剣を叩いた。
剣を叩けたのは本当に偶然。流石に落とせなかったけど、今はそれで十分だった。
「うおおぉぉぉぉぉ!!」
「ぬお!?」
 そのまま体当たりして悪魔ごと倒れる。起き上がるのは……俺の方が早かった。
「な!?」
 間髪入れずに悪魔の顔に銃を向け――
「ぐががががが!?」
 そのまま引き金を引き続け、顔面にありったけの弾丸をぶっ放す。
当然、すぐに弾切れを起こしたけど……悪魔の方は顔中穴だらけになり、そのまま砕け散ってしまった。
「はぁ……はぁ……ああ、助かった〜……」
 と、そのまま大の字になって倒れる俺。倒せたというよりも助かった……というのが本音だ。
なんというか、こっちも命懸けなんだ。相手も本気で殺すつもりで襲ってくるし……怖がってたらまず間違いなく殺される。
でもまぁ……俺だけだったら、ただ殺されるだけだったろう。ミュウがいなかったら、ここに来れなかっただろうし。
そう言う意味ではミュウに感謝しないと、なんてことを考えつつミュウに顔を向ける。
「あ、翔太……大丈夫?」
「ああ……助かった。あんがと……」
「いや、私も助けられたわけだし……」
 お礼を言うんだけど、なんかミュウからお礼を言われる。いや、俺の方が確実に助けられたんだけど……ていうか、かなり。
なのに……ミュウさん、なぜに恥ずかしがりますか? 顔まで赤らめて?
 まぁ、いつまでも寝っ転がっていられないので起き上がり、魔石を砕いて傷と体力を回復してから立ち上がる。
んで、銃と刃物をしまい、深呼吸し――
「よし、行くぞ!」
「ああ、うん!」
 ミュウの返事を聞いて、俺は穴へと触れた。瞬間、体の感覚を失い――
すぐに体の感覚が戻ると共に見慣れた光景へと変わった。俺が歩いてきた歩道がある、あの場所へと。
「あは、あは……あはははははは……」
 それがわかって、俺は膝を付きながら笑っていた。帰って来れた。ただ、それが嬉しくて笑っていた。
良かった、元の世界に……帰れた……帰れたんだぁ〜!!
なんて、叫びたくなるのだが……精神的な疲れのせいか、今はただ笑うしかなかった。


 この時、俺は思いもしなかった。倒した悪魔が元でとんでもない事に巻き込まれるなんて……
いや、帰れたんだから終わりだと思ってたんだよ。そうではなかったと気付くのは、次の日である。



 あとがき
というわけで、主人公帰還。でも、終わりじゃありません。
次回はいよいよヒロイン登場します。そして、再びボルテクス界へ。
一体何が起きようとしているのか? 次回をお楽しみに〜



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.