in side

「これはフォルマだな」
 なんてことをヴィクトルさんに言われるのだった。
さて、俺達は幻想郷で一泊したのち、紫や霊夢達に見送られながらボルテクス界に戻った。
「また、会えるといいわね」
 な〜んて、紫の言葉がすっげぇ気になったけど……で、穴を通って町に戻り、魔石などを補充をしてから業魔殿に向かった。
目的は悪魔合体。ついでに町に来る途中で仲魔にした悪魔がいたので、それを研究用にと渡そうと思ったのだ。
ちなみに悪魔合体の方は天使エンジェルと妖精ゴブリンを使い、天女アプサラスになりました。
え? なんで合体したかって? エンジェルがお願いしたからだよ。ゴブリンはこんな美人と合体できるなら喜んでと言ってたし。
まぁ、なにも思わない訳じゃないけど、俺としては本人達の意志を尊重したいというか……
で、研究用の悪魔を渡してから霖之助さんに言われたことを思い出し、ヴィクトルさんにそれを見せたら冒頭の結果になったと。
「あの、フォルマって?」
「うむ。フォルマのことはまだ多くはわかってはいない。ただ、悪魔達が持つ特殊な物質だというのは確かだがな」
 ふむ、特殊な物質ねぇ……でも、ヴィクトルさんの話を聞く限りじゃそれだけじゃ役に立たなそうな気が――
「厨房と警備室へ行くがいい」
 なんて、ヴィクトルさんがいきなりそんなこと言い出すけど、なぜに厨房と警備室?
「え? なぜに?」
「行けばわかる。メアリ、案内してくれ」
「はい」
 聞いてみるけどヴィクトルさんはそうとしか答えない。思わず理華と顔を見合わせてしまったよ。
でも、仕方がないのでメアリさんに付いていって、まずは厨房に着いた。
「あなた方がヴィクトルさんが言っていた方々ですね? 
初めまして。私は業魔殿シェフを務めます、カルマ・ウォード・村正といいます。以後、お見知りおきを」
「は、はぁ……」
「どうも……」
 なぜか、真っ赤なシェフ姿の……村正さんでいいか? その村正さんの自己紹介に呆然とする俺と理華。
ともかく、村正さんは見た目は日本人という感じだが……あれ? 確かゲームでもこの人出てなかったっけ?
「あの、それで……ここで何を……」
「ああ、そうですね。私はシェフを務めておりますが、こう見えても刀鍛冶でもあります。
昔、修行のために世界中を渡り歩いていた時にヴィクトルさんと出会ったことで、私は剣合体という技法を生み出しました」
「剣合体?」
 俺の疑問に村正さんが話していると理華が首を傾げた。
確か、それって……ある特定の剣を使って悪魔と合体させて剣にすることじゃなかったっけ?
でも、俺達が持ってる武器にそんなのは無いよな?
「ある特殊な剣を使うことで悪魔と合体させ、新たな剣とする技法です。ですが、このボルテクス界ではその剣は存在しません。
元となる剣を造るには特殊な技法を用いねばならないのですが、それがこの世界には無いのです」
 あ、やっぱりそうなんだと村正さんの話を聞いて思ったけど、それじゃあなんでここに呼ばれたんだ?
「ですが、このボルテクス界に来たことで、私は新たな技法を生み出しました。それが武具合成です」
「武具合成?」
 聞き慣れない言葉に首を傾げる。確か、ゲームではそんな物は出てなかったような……
「このボルテクス界に存在するフォルマという物質は単体では意味を成しません。
ですが、武具と合成することで武具に力を与えることが出来るのです」
「あの、それってどういうことですか?」
「言葉のままですよ。そうですね……戦っているとわかると思いますが、悪魔の耐久力は高いので普通の武器では通じない時があります。
ですが、普通の武器にフォルマを合成することで力を与え、その悪魔にも通じるようにすることが出来るのです」
 俺の疑問に答えた村正さんの話を聞いて、俺は呆気に取られていた。まぁ、それは理華もだけど……
だが、同時にそれってマジ? という思いでもあった。なにしろ、今の武器……銃ですら牽制にもならないこともあったからな。
それが本当なら、マジで助かるぞ。
「ですが、いくつか注意があります。まず、剣合体とは違い、武具に特殊な能力を付加することは中々出来ません」
 と、肩をすくめる村正さんだが、悪魔に通じるだけでも助かるしな。別に気にするほどでもないか。
「また、武具1つに付き合成出来るのは1回のみです。合成した武具を再び合成することは出来ません」
 ふむ、つまりやり直しは利かないってことか。その辺りは慎重にならないとな。
「それとフォルマをいくつか同時に合成することでより強力な武具を合成出来たり、時には特殊な能力を付加させることが出来ます。
ただし、フォルマにも相性があるのでなんでもかんでもというわけにはいきませんので、覚えておいてください」
 なるほどな。ということは、今度から倒した悪魔が落としたフォルマをちゃんと拾っておいた方が良さそうだな。
んじゃ、早速――
「あ、言い忘れておりましたが……私が合成出来るのは剣などの武器と防具のみです。
銃は別の者が担当しますので、銃の合成をご希望の場合はそちらに向かってください」
 村正さんの話にそうなんだって感想を持つが……刀鍛冶って言ってたしな。
銃は専門外ってことか……でも、刀鍛冶がなぜシェフを? 刃物を使うから?
「もう1つだけ。合成の際は代金を頂いております。また、場合によっては生体マグネタイトを頂くことがありますので」
「ああ、それくらいでしたら別に構いませんよ」
 村正さんにそう言っておく。まぁ、武器を買うもんだと思えば、安いもんだろうしな。
そういって、俺と理華は持ってた刃物を出した。ちなみに俺の刃物は新品である。
幻想郷の戦いでかな〜りぼろぼろになり、直せなくもないが時間が掛かると言われたので新品にしたのである。
その後、身に付けてた防具を渡したんだが――
「あ、えっと……私、どうしよう……」
 なぜか、理華が戸惑っていた。どうしたんだ?
「どうかしましたか?」
「いや、その……これ脱いじゃうと……ね?」
 村正さんの問い掛けに理華は恥ずかしそうにしていたが……
そういや、理華の防具はライダースーツみたいな物なんだけど、同時に服としても着てたはず。
それ脱いじゃうと下着だけになるんじゃなかったっけ?
「あ〜、なるほど……メアリさん、彼女に何か着る物を貸してあげてください。私はその間に武器の合成を行いますから」
「わかりました」
「それでは、フォルマの方をお見せください」
「あ、はい」
 村正さんに言われてどこかへ行くメアリ。その間に言われてフォルマを出す。
村正さんは俺が出したフォルマの中から1つを選ぶと、俺の刃物と一緒の台に置いた。
そして、村正さんがなにやら操作すると台が動き出し……落ちてきた物にプレスされた。ていうか、押し潰した?
が、落ちてきた物が上がったかと思うと、今度は左右から出てきた物に押し潰され……更にもう1回上から押し潰され……
押し潰した物が再び上がると、そこには刃物しかなかった。俺が使っていた刃物と形は似てるが、表面とかに文様みたいなのが刻み込まれている。
「どうぞ、お受け取りください」
「は、はぁ……」
 村正さんが刺しだした刃物を戸惑いつつ受け取るが……ひと言いいだろうか? 刀鍛冶……関係あるの?
なお、俺の防具と理華の刃物と防具も同じように行われ、俺は代金を支払うのだった。
ちなみに理華の防具を合成する際、理華はメアリが持ってきたバスローブに別室で着替えてから渡したのを言っておく。


 で、次にメアリに案内されて来たのは警備室に向かってる。ちなみに合成してもらった刃物と防具だが……ひと言で言うと軽かった。
そ、軽いんだよ。凄くって程じゃないけど、合成する前よりは軽くなったと感じられる。しかし、軽いと逆に不安になるな。
そんなことを考えてる内に警備室に着いていた。
「はい、あなた達がヴィクトルの言ってた子達ね? 私はラリー・ビンセント。業魔殿の警備員をしてるわ。で、もう1つのお仕事がガンスミスよ」
「ガンスミス?」
 で、そこにいたのは黒人風の女性だった。でも、服装を見てると警備員に見えないんだけど……ズボンはまだしも、なぜに革ジャン?
で、女性ことラリーさんの自己紹介に理華が首を傾げる。ていうか、俺もわかんないんだけど。
「まぁ、銃の整備士といったところかしら? もちろん、銃の合成も受け付けてるわよ。
あ、それで1つ言っておくわ。基本的には村正の所を変わらないけど、銃合成では最低で2・3日。長くて1週間くらい掛かるから注意してね」
「そんなに掛かるんですか?」
「あのねぇ……銃ってのは意外とデリケートなのよ。村正の所みたく部品はすぐに出来るけど、調整とかは必要なの。
それじゃあ、フォルマと合成に使う銃を出して」
 俺の疑問にラリーさんはため息を吐きながら答えていたけど……そういう物なんだなと思いつつ、言われたとおりにフォルマと使っていた銃を出した。
「はぁ……あなた達、今までどんな扱い方してたのよ? ボロボロじゃない……まったく、メンテナンスしないとダメよ?」
 と、なぜかあからさまなため息を吐かれてしまいました。いや、普通の人は銃にメンテナンスが必要なんて知らないと思うぞ。
俺らは一般人だし、銃もボルテクス界に来てから使ったんだぞ。だから、知らなかったんだってば。
「まぁ、いいわ……これだと3日で終わると思うから、3日後にまた来てちょうだい。代金はその時で良いわ」
「あ、わかりました。じゃあ、お願いします」
 ラリーさんに言われて頭を下げ、理華と一緒に業魔殿を出た。
「それで、これからどうするの?」
「ん〜……とりあえず銃が出来るまで探索でもするか? ただ、銃無しじゃな」
 で、理華と町中でこれからどうするかを話し合って悩む。銃の方は代わりの物を買えるだけの余裕はある。
幻想郷に現われた異界での戦いの際、霊夢達のおかげでかなりの生体マグネタイトを手に入れることが出来た。
そのおかげで魔石よりも高い回復力を持つ宝玉や、死者を生き返らせる道返玉をわずかではあるが買えたのである。
あ、ここで言っとくが、死者を生き返らせるといっても無条件でというわけじゃない。
肉体の損傷が少なく、死後からあまり時間が経ってない。他にもあるが、そういった条件がそろってないと生き返らせることは出来ないらしい。
だったら、意味があるのかと言われそうだが、この世界には呪殺という魔法がある。それを喰らえば、一発であの世行きなんだそうな。
だが、逆を言えばそれを喰らって死ぬということは、肉体の損傷が無いに等しい。故に生き返らせられる条件がそろう。
 それに呪殺対策をしておかなきゃならない。ていうか、今までそのことを忘れていたことに自己嫌悪していたし。
死んじゃったらどうなるか……ハッキリ言って考えたくもない。だから、もしもの為に買っておいたのである。
 まぁ、それはそれとしてこれからどうしようか? ん〜、一旦自分達の世界に帰った方がいいかもな。
なにしろ、幻想郷に行ったりしてたから、あっちに帰ったら夜遅く……なんてのもありえるし。
そうなったら、親になんて誤魔化せばいいんだよ……よし、帰ろう。そう思った時――
「待ちな。あんた、相川 翔太かい?」
「はい?」
 いきなり声を掛けられたんで振り返ってみると、その先には1人の女性がいた。
地面に付きそうなくらいに長いブロンドの髪に、黒いワンピースドレスを着た文句無しに美人と言える顔立ちの。
あれ? この人、悪魔じゃね? だって、耳とんがってるし。
「あんたが噂の……本当に若いんだね」
「あの、どちら様でしょうか?」
「ああ、すまないね。私は鬼女リャナンシーのリョカ。町で酒場をやってるんだ。実はあんたに頼みたいことがあるんだが……話を聞いてくれるかい?」
 女性ことリョカさんは俺を見てなんか驚いたように見えたけど、聞かれたら気を取り直して答えてくれた。
しかし、頼みね……なんだろ?
「まぁ、話を聞くだけなら……」
「そうかい。ここで話すのもなんだし、私のお店に来てくれるかい?」
「え? ああ、それでしたら――」
 リョカさんの話にうなずこうとして、理華が軽く肘で突いてきた。なんか、不満そうな顔をしてるな。
「いいの? そんな簡単に付いていって?」
「まぁ、そうなんだけど……とりあえず、話を聞いてから決めようよ」
 顔を近付けあって、理華と小声で話し合う。なにかあるんだろうけど、それを確かめておかないとダメだろう。
しかし、頼み事ね……でも、悪魔が頼み事って……それが気になるので、確かめようと思ったわけだ。
そんなわけで、俺達はリョカさんに付いていくことにしたのである。



 あとがき
さて、今回は翔太達に新しい武器を手に入れました。その威力は? というのは次回にて。
拍手の方で誰かに教わるの? もしくは人修羅化? なんて、質問もありましたが――
教わるという点はなきにしもあらず。ただ、修行ということはしません。
この時点では何がどうなっているのかも不明な点が多いですしね。
それに戦いが修行みたいな物になってますし。人修羅化は……まぁ、今はまだ内緒と言うことで。
というわけで、ボルテクスへと戻ってきた翔太達。リョカは彼らに何を頼むのか?
そんなわけで次回は翔太達が暴れます。なんでかはお楽しみに〜



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.